シナリオ詳細
<Closed Emerald>Caracole
オープニング
●
翡翠の国。自然を友とするかの国の厳戒態勢は頂点に達していた。
昨今迷宮森林を中心に『大樹』が脅かされるという事件が起こっていたのだ。
大樹と言っても首都としての役割をも担うファルカウの事ではない――それ以外でも永い時を生き、神秘性を伴った大いなる木の事を『大樹』と呼ぶことがあるのだ。勿論その大きさはファルカウに及ぶ程ではないが……しかし一介の人間からすればいずれも巨大であるに違いはない。
――それらが何者かにより『折られる』事件が多発していた。
自然を汚す行為。
いやそればかりか……大樹に危害を加えるのは危険な行為でもある。神秘性を伴った大樹は自らの危機に際し断末魔を挙げ――『大樹の嘆き』という精霊の様な魔物の様な存在を放出する事もあるからだ。
ソレは周囲全てを敵とし、更地にするまで止まらない。
幻想種も自然もなにもかも……破壊するまで。
それ故に原因であろう『余所者を追い出せ!』という機運が高まっており……
「リュミエ様。国境線の封鎖がほぼ完了したと報告が……」
「そうですか。ありがとうございます」
そして遂に国境線が迷宮森林警備隊により封鎖された――
まぁ封鎖と言っても物理的な壁を築いた訳ではないし、神秘的な結界が張られた訳でもない。国自体が本当に隔絶される様な領域での封鎖など、もし行えるとするのであれば何かもっと根本から異なる超常の力が働いた時だろう……
――ともあれ。各地に配備された迷宮森林警備隊が目を光らせ、現地の友好的な精霊らも協力してくれるのであれば外からの侵入者を徹底的に見つけることが出来る。
事実上、外からは隔離されたと言っていい状況だ。
――現実の『深緑』も排他的な所はあるが、ここまで国を閉じる政策がスムーズに進んだのは、やはり過激ぶりが現実よりも激しいが故、か。
報告に来た警備隊に礼を述べ――リュミエは下がらせる。
ひとまずこれで国内の混乱が収まればいいのだが、と。
「カノン。各地の……大樹の嘆きはどうなっていますか?」
「――幾らかまだ発生が確認されてるみたい。
でも、それはまだなんとかなる……私達巫女が出向いて、大樹と心を繋ぎ合わせれば」
そしてリュミエが次に視線を向けたのは、己が妹たるカノンだ。
彼女は本を好み、そして『大樹の嘆き』に関する研究も行っている。彼女の自室には多くの研究資料が残されている程に――そしてカノンの見解によれば『大樹の嘆き』は、止める手段は一応あるとの事だ。
要は『大樹の嘆き』は怒り狂っている。ならば心を交わせ、落ち着く様に諭せばよい。
無論、そんな手段そう簡単に出来る事ではない……深緑の、いやR.O.Oでは翡翠の巫女として認められるほどの者でなければ、嘆きに攻撃され傷を負うだけだろう――故にリュミエやカノンなどが出向くしかない。
それは大変な労力だ、が。しかし。
「それでもこのまま手をこまねいていては翡翠に大きな傷跡が残ってしまいます。
――カノン。手分けをして各地に出向きましょう。
警備隊も連れて、いざ余所者を見かけた時は打ちのめす様に……」
『おやおやおやおや~~~それは随分と悠長な事ですねぇ』
瞬間。リュミエの言葉に割り込む様に響いた『声』があった。
それはおどけて、或いはふざけているかの如き口調――と思っていれば。
いきなりに。リュミエらがの視界の端に現れたは奇抜なる男。
「こんにちハ! ――ワタクシ、ピエロのバンビール。今日は国境線に警備隊の数を割くなんて事をしちゃったファルカウのお偉いさんたちの所に遊びにきちゃいまし・タ!」
それはバグNPCとしてイレギュラーズ達の前に幾度と姿を現した――『ピエロ』
あちらこちらで暗躍している影が一つである。それが、ファルカウの内部に直接現れている……リュミエ達にとってはピエロは初めて見たであろう存在であり、斯様な事情は知らないだろう、が――
「……成程。貴方が昨今の『余所者』の一人という訳ですか。
このような場所にまで来るとは――いい度胸をしていますね?」
分かる。コレは、悪意があってここに来ていると。
そしてこのような派手で目立つ男――とても翡翠の住民ではない。
ならばこの男こそが『余所者』だ。大樹を傷つけている者だと直感している。
……逆に言うとソレは別に証拠あっての事ではないのだが、関係ない。翡翠は現実の深緑よりも遥かに過激な国家であり――いやそうでなくとも、厳戒態勢にあるこの状況で不審な者など即座に『対処』されようとおかしい事ではないからだ。
リュミエが魔力を収束させる。
同時に、異変に気付いた警備隊が部屋へとなだれ込んできて――
「あらあらら~~!? なにこの胸部の自己主張が激しい女! いきなり攻撃仕掛けようだなんてェ、正気!? ――ここはファルカウなのよぉん」
が。それでもピエロの余裕は崩れない。
なぜならば――良くも悪くもここは彼らにとっての信仰対象、ファルカウなのだから。
下手な事をすればファルカウ自体が傷つく。魔術など放てばどうなるかなんて……
とぉぉぉお!? 撃ってきた!? 撃ってきたよこの幻想種マジか!!?
ピエロの体を掠める魔力の一撃。うそぉん!?
「この程度で我らがファルカウは揺るぎません――
後でしっかりと治癒魔術を施し、許しを請いますので」
眼がマジだ~~そうかそうか、ピエロビックリ!!
だけどね。
「それならそれでちょいとばかし都合もいいですねぇ」
「……なんですって?」
「あたしゃねぇ。此処に来た理由は好奇心からなんですよ」
ソレはずっと考えていた事。
迷宮森林に生えている大樹ですら――強い『大樹の嘆き』を生じさせるなら。
「――こいつを叩き折ったらどーなるんでしょうねぇ?」
世界最大の樹木であろう、このファルカウなら――?
にやけ面のピエロの言。さすれば『貴様ッ!!』と叫んだ警備隊の一人が憤怒の形相と共にピエロへと弓を放つ――が。
「んふふ~のふ~!!
まぁまぁ待ってくださいよ、今日はスペシャルゲストもいるんですからぁ!
こういうのはみんなで楽しみましょうね!
はい、くわぁも~~ん! きうりん! 天の力を見せつけてあげちゃってクダサーイ!」
「人使いがあらいなぁ、もう! 後でたっぷりお給料払ってよね、ピエロ君!!」
瞬間。ピエロがマントを翻せば――其処にいたのは一つの植物。
否。それは『きうりん』だ。
バグNPCらによってログアウト・ロックされた彼女がコピーされ、生み出された――バグNPCらの尖兵にして精鋭のトランプ兵。
パラディーゾ。
「――姉さん!」
直後。きうりんの一撃が狙ったのは――この場の長たるリュミエだ。
が、その一撃が直撃する寸前。カノンが姉を庇う様に――射線に割り込んで――
●
「侵入者だと!? そんな馬鹿な!!」
「急げ、余所者を見つけたら全て殺すんだ!! リュミエ様が危ない!!」
にわかに騒がしくなるファルカウ内部。慌ただしく動いているのは警備隊の者達だろうか――? その一角にいるのは愛の妖精ラブリーザントマンだ。
「うわー! な、ななななんていう事ですぞ……!
リュミエ様達は大丈夫ですぞ!? これはまずいですぞ――
ど、どどどどどどうにかせねば……!!」
生じる闘争の気配――に。思わず体が震えだしている。彼はこの世界ではほとんど戦闘能力などない個体なのだ……敵がいても自らではどうしようもない――
と、想っていたその時。
「なんだこれは――一体なんの騒ぎなんだ?」
眼前。現れた存在があった。
それはイレギュラーズだ――先程、国境は封鎖された……と言ったが。新イベント<Closed Emerald>開催に伴ってサクラメントが特殊に解放されたのである。それ以外にも封鎖前になんらかの依頼により国境を突破していたイレギュラーズもいよう。
それらがファルカウにまで辿り着いたのだ。
無論、まさかこんな騒ぎが起こっていようとは思っていないかったが……しかし。
「……んっ? あ、貴方達は――イレギュラーズですぞ!!?
お、お願いですぞ!! 今、このファルカウは……敵に襲われているんですぞ!
リュミエ様達をどうにか――助けてほしいんですぞ!!
はっ! そ、そうだ! そうすれば余所者が全て敵という誤解も解けるやも……!」
事の仔細はザントマンより聞くことが出来た。
この騒ぎは『余所者』の襲撃があったという事――リュミエが危険であるという事――
そして敵の狙いは『このファルカウそのもの』でもある事。
ファルカウが傷つけられれば……もしかすればここでも『大樹の嘆き』が発生するかもしれない。世界最大の樹木にして極大の神秘性があるこのファルカウが傷つけばどうなるか――それは誰にも分からない。
無論、巨大であるからこそそうそう簡単に『嘆き』など生じないだろうが。
しかし放置していれば何がある事か……
「分かった――内部の案内を頼めるか?」
「構いませんが、私は戦えないですぞ!?」
「ああ、近道が分かるだけでも十分で――」
と、その時。
ザントマンと話していれば――奥の方から何か視線を感じた。それは。
「……ザントマン。その人たちは、誰?」
「……あっ、まずいまずいまずい! あれはクラリーチェ嬢ですぞ!!
み、皆さん早く逃げて!! 彼女は――」
一人の少女。それは――クラリーチェ・カヴァッツァ。
現実の、ではなくR.O.Oの……翡翠に住まう一人の幻想種だ。
そして彼女は『翡翠らしい幻想種』と言うべき人物であり――
「それは外の人達よね?」
刹那。クラリーチェに殺意が宿る。
『どうしてここに余所者』がいるのかと。騒いでいるあの余所者の仲間か――?
「……殺してあげるわ」
「待て! 俺たちは……話を聞け!」
「いいえ必要ない」
こんなものを許容するからファルカウが混乱するのだ。
『警備隊』の仕事の一環として、封鎖完了の報告に来ただけなのだが……
よもや、こんな害虫駆除の仕事が入ろうとは。
「喋りたいなら虫の様に――地べたを這いずり回りなさい」
跳躍する。森林警備を行うルドラ・ヘスの副官たる彼女は、強く、鋭く。
「うわー! 止めるですぞクラリーチエ嬢――!!
み、皆さんここは私が抑えるので、早くリュミエ様を――!!」
叫ぶザントマン。身を呈してクラリーチェからの壁となれば、その内に駆け抜けよう。
どうにも話を聞いてくれるような感じではなさそうだ……
恐らく他の警備隊も似たようなモノであろう。
「やれやれ。護らないといけないのに向こうからは攻撃がくる、か……!」
――嫌らしいクエストだ。
だが、このクエストをクリアする為にも今は走ろう。
この奥にいる『ピエロ』達を撃退すれば、騒ぎは収まるだろうから――
- <Closed Emerald>Caracole完了
- GM名茶零四
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年11月10日 22時35分
- 参加人数10/10人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(10人)
リプレイ
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轟音響き渡る。
衝撃がファルカウを微かに揺らしている――いやあくまでファルカウの一部を、だろうか? ともあれ現実の深緑同様信仰対象としても見られているファルカウへの攻撃をしようなどと……『奴ら』は随分と無茶苦茶やるようだ、が。
「とりあえず、まずは近寄らない事にはなんともね――ザントマン!
早速だけど道案内お願……無理? ならごめん頑張って!!」
「うっザントマン……まさかこんな所で会う事になるとはな」
しかしそれを食い止めんとする勢力――つまりはイレギュラーズ達が近くに居るのであればこの戦況が奴らの思い通りに進むとは限らぬものだ。先頭突き走るは『灰の流星』グリース・メイルーン(p3x000145)であり、彼女の言は後方のザントマンに向けられる。
――ザントマン。現実の世界ではイレギュラーズの、いや世界の敵として立ちはだかった存在。
此処にいる『奴』は決して現実の『奴』とは異なると『竜空』シラス(p3x004421)は頭では分かっているのだが――しかし、別人だと分かっていてもこの場でもう一度ブチ殺したくなってしまうものだ。
あの行い、忘れがたし……
だが今は前へ進みべきだとシラスは堪えるもので、さすれば。
「ク、クラリーチェ殿落ち着かれて!
ここはまずは侵入者を倒すことが先決では、うわイタッ――イ!!」
「どいてザントマン。連中を庇うなら殺すわよ」
件のザントマンはクラリーチェ――と言ってもR.O.Oのだが――
とにかく殺意の塊とも言える彼女を止めるのに必死であった。
彼女を行かせればきっとイレギュラーズ達の邪魔をしてしまうから、と。
(あれがこの世界の『私』…なるほど。頭の固そうなところは似ていますね)
同時。駆けながらも様子を見据えているのは『彼誰-かわたれ』パンジー(p3x000236)である。それこそ本人……『クラリーチェ・カヴァッツァ』のアバターであるパンジーは、自らの姿に思う所はある。傍目から見たあの姿……魂の色には、しかし。
「ザントマンさん。リュミエ様達のいる場所は?」
「任せるってのなら、目印教えろ! さくっと! ハリー・アップ!」
「え! えーと、とりあえず騒ぎのある方に向かえば恐らくは……リュミエ様、ほらあの通り過激ですので! 侵入者とかいようものなら、自らで迎撃にいくでしょうし――ってぎゃああ早く早く私もそう長くは保ちませんぞ――!」
それは『後』かと思考して、往く。『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)も言葉を重ね、微かながらもリュミエ達がいるであろう地の情報を得れば。
「ザントマン! 死ぬ気で踏ん張れ! お前が一秒長く持ち堪えるだけ、この国の命が伸びると思うのだ! できるできるお前ならできる! やれば出来るのだと信じろ!! 心に熱を灯す事こそが重要だッ――!」
「いやあああああ!! どうしてこんなにこき使われるんですぞ――!!
私、前世で何かしましたですぞ――!!?」
したよ、思いっきり。
『闇祓う一陣の風』白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)がザントマンへと激励かけて――さぁ目指すは戦場へ。シラスは鋭敏なる方向感覚を働かせ、迷わぬ様に歩を進めていく。
「よっしゃあ! とりあえず急がないとね、さぁ行こうかリアナルくん! 無限の彼方へー!」
「はいはい、振り落とされない様に――気を付けておけよな!」
そしてその道を共に往くは『音速の配膳係』リアナル(p3x002906)と、彼女に運ばれるようにしながら周囲を警戒する『雑草魂』きうりん(p3x008356)であった。攻撃が放たれようときうりんが身を呈して盾となれば進行に問題ない。
急ごう。立ち止まればやがて後方からクラリーチェが追いついてこよう。そうでなくてもピエロ達が暴れている今、時間を無駄にするわけにはいかないのだから……Teth=Steinerもまたドローンを用いて周囲の偵察と警戒を。
「チッ。この先に警備隊がいやがるぞ――余計なモンに付き合ってる暇は無ぇんだよ!」
「極力関わらないようにしていきたいですね……
この状況で懇切丁寧に説得している暇はなさそうですし……!」
が、その偵察の目に映るのはピエロよりも警備隊の方が先であった。
それも当然か。ここは彼らにとっての本拠……混乱が生じながらも動いているのであれば、警備隊はあちこちに展開しているが必然――だけれども彼らに構っている暇はないと『優帝』いりす(p3x009869)は思考する。
究極的には警備隊は敵ではないのだ。いや彼らの側からすればピエロとそれ以外の『外の者』の区別などつくまい……故、彼らにとっては己らも攻撃対象であろう。助ける行動をとったとしても、現実よりも遥かに過激とされる翡翠の者ではどう反応されるか。
見つけられれば反射的に弓矢も放たれるもの。
しかしこちらが警備隊を攻撃しても事態は収束しない――
全ての元凶はあくまでもこの世に蔓延るバグ……この場においてはピエロらなのだから。
故にシラスの背に乗る彼女の視線の端に警備隊が映りても関わらぬ様にする。
「な、なんだお前達……さてはお前達も侵入者かッ――!?」
「どいて。貴方達の『外』って何――? 翡翠の内で誕生したか、しないか?」
それでも幾らかは彼らの方に発見されたりもするものだが……しかし。
グリースは刺激しないように迂回しようとする行動をとりながら、言を重ねるものだ。
「――ねぇ、そんな事で内と外を分けてしまったの?」
彼らの視線には見知った者か、そうでないかの色しか浮かんでいない。
――くだらない答えだと。くだらない意識だと。
怒り滲ませ。放たれる弓矢あれど、その軌跡を己が銃で撃ち落とせ、ば。
「まさか、いきなり本丸に乗り込み大将を狙うとはな。大胆不敵とはまさにこのこと」
更に往く。警備隊の多くがこちらを発見する前に。突き進むのは――
「だが、不運であったな。
この白銀の騎士ストームナイトが、たまたまファルカウにいたのだから!
私がいる限り、リュミエ殿にも、ファルカウにも、この国の何にも――危害は加えさせん!」
ストームナイトであった。
開かれた道筋。その先に感じる戦闘の気配が色濃くなれば、この戦いの中心であると肌にも感じるものだ。故に彼はその場に飛び出すと同時に――己が名を高らかに告げる。
騎士が此処に至ったのだと。
闇祓うこそが使命。彼女の魂が輝き、さすれば。
「ん、ま! 現れましたネェ、イレギューラズゥ!!
ホント、美味しいタイミングで現れるんですからぁ!」
踏み込む。それはピエロの懐へと。
相も変わらず飄々とした様子だが――これ以上はさせぬ、と。更には。
「というわけで早い再会だけど殴りに来たぜ、バンビールのにーちゃん!!
覚悟してくれよな! 一発、ぶん殴るまで止まらねぇっ――てやつだかんな!!」
『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)もピエロの顔面に一撃ぶち込むべく跳躍するものだ。植物と意志を交わし――と言っても、外の者を敵視する自然が多ければそう多くの情報は得られなかったが――しかし植物らが『危険視』している存在の方角を感じ取れ、ピエロらの方角を推察できたのだ。
空を飛翔し、窓の外を真っすぐに通りて。
激突する。ストームナイトと合うタイミングの一閃があら、ば。
「ん~~~まっままま! リピーターのお客様なんて、ピエロか・ん・げ・き……
盛大に歓迎してあげましょうね、きうりんさん!!」
「えー。日光浴に忙しいんだけど、ピエロだけで働いてくれない?」
「次の給料日のお給料上げるから!!」
「わーい! 覚悟しろイレギュラーズッ!!」
しかしピエロらも反撃に転じてくるものだ。
傍に在るのはパラディーゾの『きうりん』だ。ログアウト・ロックした際にコピーしたバグ陣営の尖兵……その外見は正にきうりんそっくりであると言えた。その中身がどう考え行動しているか、今の所は知れぬ――が。
「……うわぁほんとに私が居る! 気持ちわりぃ!! どっかいけ!」
「うわぁなんだお前、私じゃん!! どうなってんの気持ちわりぃ! ピエロ、任せた!」
「アナタ尖兵役割の癖に私にお仕事投げてくんのどうなってんですかねマジで!!?」
しかしいずれであろうと本物のきうりんには関係なかった。ええい、いやそもそもなんで私が翡翠を助ける側なんだ……? 私も翡翠の土地耕したりしてたし、普通に耳長とは敵対してるのでは……
そんな感じの事を忙しなく思考しているきうりん(本物)だが、突如として彼女の脳裏には神算鬼謀が閃いた――
あれ? これまで翡翠でやった悪いこと全部あっちのきうりになすりつければ、私は英雄になれるんじゃね?
「覚悟しろ悪のきうり!! 善のきうりがお前を討伐するぞ、うぉ――!!
まぁまずはそこの色白ピエロと周りの警備隊からなんだけどね!!」
一歩間違えれば翡翠ブラックリスト入りしていた筈のきうりん。が、全てをうやむやにする策が閃けばもう迷いはなかった――まずは周囲、ピエロらと相対していた迷宮森林警備隊に治癒の施したる青果を与えん。
凝縮された生命力が彼らを癒していくのだ……さすれば。
「――貴方達は何者ですか」
ピエロを滅さんとしていたリュミエが語り掛けてくる。
彼女から感じるのは『敵意』だ。突如として眼前に現れたイレギュラーズ達は……彼女にとって『見知らぬ者』達。現実程『外』に対して理解を示していない彼女は己が内に魔力を収束させつつ――イレギュラーズ達を纏めて吹き飛ばすか否か、思考したのは数秒。
その、狭間に。
「待って。攻撃しないで――私達は味方だよ」
言葉を零したのは『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)だ。
「私達はイレギュラーズ、今だけはどうか貴方達と一緒に戦わせて。
私達の目的は貴女や、翡翠ではない……あのピエロなんだ」
「そう思わせておいて、我々の後ろを突く戦術でない保証は?」
「――残念だけど、ないね」
ネイコは感じる。リュミエからの『敵意』を。
一つ言葉を間違えればこの国の大魔導の使い手たる者が敵に回るかもしれない――
だけど。
「だけど。こんな状況で自ら敵を増やすのは違うでしょう? 今こちらを攻撃する余裕があるの? 協力じゃなくても、互いに攻撃を行わないって言うだけでもいいんだ。それに――」
言葉を縮みこませればその時点で全ては決する。だから常に。
「それに――私達は助けてって言われて此処まで来たんだ!」
重ね続ける。思いを、意思を、その魂を。
許せぬのはこの事態を画策したあのにやけ面の道化師。
その思いに偽りはないのだと――深緑の巫女に伝わる様に。
重ね続けるのだ。どこまでも、どこまでも。
●
警備隊は各地でバグ・エネミーの対処に当たっていた。
ピエロの放った彼のバグ(虫)達は悪意をもってファルカウに進軍する――それを食い止める為に。そしてリュミエもまた魔力によって応戦や治癒を行っていた。が、彼女自体は強敵と思われしピエロへの相対を優先していて。
「――よっし。とりあえずの治癒はこれでいいだろ。
本当はもう少し本格的にやった方がいいんだろうが……この場では、な」
同じ頃。ピエロらとの交戦範囲に入ったリアナルが真っ先に向かったのはカノンの下へとであった。ピエロに襲撃され、負傷した彼女の傷を癒すべく……勇気を届けるが如き配達物を。しかし――
「はぁ、はぁ……ぐっ、貴方、は……?」
「あんまり喋らない方がいいぞ。まぁ安心しなよ――味方だから」
傷の治りが、遅い。情報に聞いてはいたがこれ程とは……
治癒に繋がるあらゆるが阻害されているかの様だ。
謎は多い。ただ、間近でコレを見た身としては、まるで……
「何がなんでも破壊してやろう、なんていう意志を感じるな」
「ああ。意外と言えば意外だな……軽薄そうなピエロ野郎に似合わねぇ執念ぶりだ」
それは確固たる決意が如くの『何か』を感じる。それは共にカノンの治療へと訪れていたシラスも察する程であった……彼の治癒術を含めても尚、カノンの傷を感知させるには足らぬ。
――だがあのピエロが何を考えていようが簡単に引き下がってなどやるものか。
癒手としてやることはやるしかないと、リアナルは息を切らすカノンから戦場の前線へと視線を移すものだ。同時にシラスはこの状態のカノンへと次なる撃が紡がれぬ様に、彼女の前へ。射線を区切り、彼女の身を庇わんとする――
「着いた――! 行きましょう、まずは押し込まれてる状態から拮抗へ。そして優勢へ!
少しずつでも押し返していきましょう!! 敵はかなり多いですよッ!」
「思い通りにはさせんぞ、バグ共め……! 幾万掛かってこようとも退くものか!」
そしてかの前線ではパンジーやストームナイトが既に攻勢を仕掛けていた。
敵はピエロときうり――だけではない。ピエロの召喚する『バグ』共も、だ。
正に文字通りのバグ(虫)の姿をした連中はファルカウを食い荒らさんとするが如くに押し寄せている――近くの警備隊なども善戦しているが、しかしピエロが湧かせるソレらはどれほどの数がまだいるのか数え切れぬ程だ。
だからパンジーは纏めて狙う。ピエロと、バグらを纏めて。
放たれる一撃が薙ぎ払う様に――次いで、パンジーの一撃が過ぎ去った後にストームナイトが踏み込むものだ。
「貴様を打ちのめせば他は只の有象無象であろう。覚悟ッ!!」
「あららららら、騎士気取りですか格好良くて忌々しいですね~~! 死んじゃいな・サーイ!」
ストームナイトの剣が風を纏う。それは敵の数が多ければ多い程に暴風が如き勢いへと変じ――ついには雷撃すら招来しよう。その力を用いて狙うは只一点、ピエロのみ。
――だがピエロもストームナイトを迎撃する。
人差し指で指差す先へと放たれるのは、光の一閃――つまりは。
「ん~~~ビーッム!! あーらほいさっさっさっさのさ~~!!」
「チィッ!」
ピエロの言う通りそれは『ビーム』であった。
連射される光撃。数多を貫くソレが直撃すれば只ではすむまい――
頬を、脇腹を掠めるだけで痛みが走る。着弾すればまるで爆発が如き衝撃も発生し……
「ったく無茶苦茶やるな、にーちゃんよ! 何があればそんなに自然を燃やすなんて出来るんだ!」
さすればルージュが往く。相手の攻撃は無茶苦茶な筈だからと、殊更驚きはしない――
重要なのは、相手が如何な攻撃をしてくるか、よりも『こちらの攻撃が通じるか』だから。
「オイタが過ぎるなら、ぶん殴っちゃうぜ!! ってな!!」
「お~~~こわいこわいこわい! やってごらんなさいな小娘ェ!! あ、イタイ!! イタイっつってんでしょ手加減しなさいよ、あ、すんません手加減してくださいお願いしま、ぶべらッ!!」
故に彼女は全霊の一撃をピエロへと放つものだ。
自らの身体を強化した上で、必ず当てる意思をもった――一撃を。
飛び蹴り。腹へと打ち込めば、そのままで顎に掌底一閃。身体を捻りそのままの勢いに足を払えば、揺らいだ所の首筋へ踵を落とす蹴撃。仕上げに上段足刀の一撃――いずれもが肉を打ち骨に響く感触を伝えてくる。
効かない、という訳ではなさそうだ。如何なバグ的存在と言えど無敵ではない、という事か――?
しかし。
「イ・タ・イ――って言ってるでしょぉ!? もう、お仕置きですよ!!」
最後の蹴りを放った直後、ピエロがルージュの足を掴む。
その目は今の攻勢をもってしてもなお、折れてなどいない。全て直撃したにも関わらず依然としてその体力には余裕があるという事か――その結果を脳髄が瞬時に理解すれど、ピエロはその瞬時の間にルージュを振るう。
その小さな体をまるで棒切れの様に。地面に背中から打ち付ければ、全身を衝撃が襲い。
そのままルージュの足を折らんと力を込めて――だが。
「そうはいかないよ……! この国をそっちの好きになんて、させないんだから……!」
ピエロの腕へと銃撃が着弾した。
痛みに、微かに揺らいだ刹那があらばルージュが脱出する――それはいりすの放った一撃であり、攻撃用に改造されたピーコン弾だ。マーク用だった光が、電波が、妙に眩しく熱く痛みを伴って。
「そーんな遠くから失礼なガキですねぇ。討っちゃいます・ヨ!」
だからこそピエロはお返しとばかりに光撃をいりすの下へと。
狙撃手は厄介だからと吹き飛ばすように連射する――
同時に、いりすも一歩も退かず撃ち返すものだが。乱射する銃撃がピエロを狙いて。
「ピエロー! まだまだ後ろから来てるぞ、気を付け――んぎゃ!!」
「よぉ、偽きうり! 野菜の偽装表示は良くねぇって教わらなかったかぁ!?」
だがピエロを狙っているのは多くのイレギュラーズだ。
常にあの道化師を打ち倒さんとする闘志があちらこちらより――きづいたパラディーゾのきうりが言を飛ばすが、それを封じたのがTeth=Steinerであった。速攻とも言うべき速さできうりを押さえつけ、ピエロから引き離さんとする。
「産地偽装なんてしてないよ! 私は純真無垢なきうりだよ! 信じて!!」
「ハッ――口ではなんとでも言えるわな! だが見逃さねぇぞ出荷停止処分にしてやる!」
そのまま交戦。パラディーゾの一角であるきうりの能力値は謎に包まれているが、しかし誰かがコレを押さえねば勝利には繋がるまいと理解している。故に雷撃の魔術を展開し、極大の一閃を紡ぎて――消し炭にしてやらんとすれば。
「うわー! 焦げちゃう焦げちゃう!! ――なんてね」
見事、直撃。しかしきうりは揺らがない。
その細胞が活性化している。超速度の再生がきうりの身を常に新生させているのだ。
否。それ所か――
「それじゃあ行ってみようかきうりんマーク2、マーク3、とんでマーク5!」
分裂している。なんだこれは。
これがパラディーゾの――『原動天』としての力の一端か? きうりんそっくりの個体達が増えているのだ。『再生と増殖の権能』とも言うべきそれは、バグであるが故にこそでもある。
そしてコピー・きうりん達は翡翠の大地から栄養を、いや大地の魂を吸い取りて自らの力を増さんとする。
「おいおい産地偽装どころか遺伝子組み換えもアリかよ! ――潰し甲斐があるこったな!」
とはいえあくまでもパラディーゾたる本体は一体。それを潰せば纏めて伐採する事も可能であろうとTeth=Steinerは推察すれば――至るバグ・エネミー達諸共薙ぎ払わんと、呪雷の魔術を解き穿つ。
混沌とする戦況。ピエロがバグを放ち、ビームを放ちて全てを焼き尽くさんとし。
きうりがその動きをカバーすべく立ち回る――
それに立ち向かうはイレギュラーズと翡翠警備隊だが、彼らの連携は取れていない次第だ。守りが分散した所でトップ狙い。ふざけている様できっちりと考えているこの戦術……
「敵は強力、数も多いし底は見えない。決断の時は今だけだよ、リュミエさん」
「我々に背中を見せるというのですか」
「信用できなくても、これなら利害の判断で動けるでしょ?」
だから早めに潰さねばならぬとネイコは往くものだ。
リュミエにもう一度だけ声を掛け、狙うは――ピエロへと。
邪魔立てするバグ・エネミーは斬り捨て、Teth=Steinerが辛うじてきうりんを押さえていれば障害はない。リュミエらを心の奥底まで説得する暇なくば、前に出て彼らと戦う光景を見せる事こそが――無限の言よりも遥かに説得力があろうと。
「先日は招待どうも。
でも、私達を使って悪い事をした落とし前はキッチリつけさせてもらうよ?
――覚悟は出来てるよね?」
「あらぁん! ネイコちゃんじゃありませんか!! どうしました、また遊びます?
一緒に火遊びしてくれるなら大歓迎なんですけれど?」
「それはちょっとね遠慮させてもらうよ。代わりに……」
踏み込む。と同時、ピエロの指先がネイコを向いて。
放たれる光撃が彼女に死の気配を灯させる――
けれど恐れない。恐れれば恐れる程にその死の気配は後ろ髪を掴んでくるのだから。
「――そのにやけ面をぶっ飛ばさせてもらうよ!!」
だから――薙ぎ払った。
輝かしきエフェクトが刀に纏いて全てを吹き飛ばさんとする。
ピエロも、周囲にいるバグ・エネミーも――全てを。
「ピエピエ! どうしてこんな事するんだよ! 私との友情はどうしたんだよ! そんな偽物に騙されないで! 正気に戻ってよ!! ピエピエ! 私との日々を思い出して! あの砂浜を一緒に走った思い出――忘れちゃったの!?」
「はっ! 砂浜の、思い出……!!」
さすれば更に押す為にイレギュラーズのきうりんが言の葉を投げかけるものだ。
思い出してピエロ――一緒に過ごしたあの光景を――
そう。あれは数年前、皆で出かけて楽しかった砂浜での思い出があるじゃないか! だから――
「いや、そんなもんないんですけど」
「贅沢だなぁ。なんでもいいじゃん、私に都合のいい正気に戻って! ほら早く!
じゃないと胸囲バラすぞ!! いいのか!! 120ってバラすぞ!!」
「すんごい遠回しに表現したいんですけれど――シャブでもやってらっしゃる!?」
あれ。ピエピエって最初から敵だったっけ……まぁいいや!
自らの存在感を誇示するようにきうりんは往く。敵性対象にただの餌食であると刷り込ませるが如き存在感をピエロへ……その動きを抑え込まんとするのだ。無論、ピエロも反撃してくるものだが胸囲の秘密を盾に更に前進する。
体力を削られようとも知った事か。免疫を向上させ絞り出すように――耐える!
「――リュミエ様、聞かなくてもいいけど聞いてください」
同時。グリースは語る。
それはリュミエへと。魔術を放ち、接近してくるバグを撃ち落としている彼女へと。
「この戦いが終わったらお茶でもしませんか?
えぇ、いい場所を知ってるので。案内だけをお願いできればと思います」
「――いい場所を? なぜ、貴方がこの国の内部の事を知っているのです?」
「はは――なぜでしょうね。それこそ『どこか』で縁があったからかもしれません」
言いながら、零すのは笑みの色だ。
口の端が自然と綻んだのは――グリースが想起したから。
現実を。虚構との差異を。何もかもが似ていて、しかしどこか違うこの世界……
だけど、いるんだ。
彼女達は。
――だったら。
「もう二度と、違う場所だろうと関係ない」
何もかも失わせない。何もかも手遅れになんかさせない。
大樹だけではない。僕は、貴女たち二人の――
「嘆きごと止めてみせる……だから!!」
全てが終わったらどうか、お茶をしましょう。
どれだけ振り返っても辿り着けない過去よりも。
これからどこまでも往ける――今日と明日の話をする為に。
だから、彼女は降り注がせる。弓を引き絞り、その手に抱く意思はどこまでも願いと共に。
明日の道筋を切り開くための一閃を――放った。
●
クラリーチェ・カヴァッツァは怒りに満ちていた。
なぜか外の者を庇い立てるザントマンを打ちのめして突破し、向かうは戦場へ。
――外の者など誰も許せない。許してはいけない。
今、この国に舞い込んでいる惨事だってそうだ。『奴ら』がいなければ――
「起こらなかったのに」
ファルカウが傷ついている。この程度でファルカウの魂が揺らぐことはないだろう、が。
そういう問題ではない……あの偉大なる大樹が傷つける様な者がいるという事自体が許せないのだ。
だから往く。誰も彼も……この大自然を侵す『害虫』共を殺す為に。
魂の一片たりとも許さない。全ては同胞を護るために――
そしていざ、渦中の戦場へと踏み込め、ば。
「ヘイヘイ、偽きうりビビってるぅ? 来いや来いやァ!
どうしたよ、やっぱ農協通してねぇ野菜なんざ噛み応えがねぇってかぁ!!」
まず視界に飛び込んできたのは大量のきうりに奮戦するTeth=Steinerだった。
全身から多量の出血が見られ、片腕に至っては動いていない。負傷したが故か肩から先に力が籠められぬ様であった――しかしとにかく徹底的に偽きうりを抑え込む。隙にはさせぬと奮戦すればするほどに他の戦域が有利になるのだから。
「んもう、どいつもこいつもしつこいですねぇ!
――そろそろ纏めて薙ぎ払って差し上げましょうか!」
「ッ! 来るよ――躱して!!」
しかし段々とその行動に苛立ってきたのかピエロは直線的に放っていた光を――横へと一閃。最前線でピエロと相対していたネイコが思わず声を荒げるも――一瞬、後。
着弾線より生じるは大爆発。
偽きうりやバグ・エネミー、警備隊らも纏めて薙ぎ払うそれは多くを吹き飛ばして。
「俺達は敵じゃあない、あのピエロ野郎を追ってきた! 今この場だけでも信じてくれ!
――分かるだろ! あいつらは翡翠の外でも滅茶苦茶をやってる!
だから今ここで、奴らを食い止めなきゃならないんだ!!」
だが。だからこそ今この時にと言葉を放つのはシラスだ。
カノンを庇い直撃を貰うも、一撃では退場せぬ。
そして流血伴いし姿にて紡がれる言葉は――どこか、不思議と胸を打つものだ。
「そして強い、俺達が力を合わせないと勝てない! だから今だけでいいんだ!
――共に戦おう!! 一緒に戦えば、必ず勝てるから……!!」
「んんん空虚ですねぇッ! 現実に家があるアンタらが何を言おうが空しいんですよぉ!」
再び治癒の術を放つシラス――に対して、ピエロが狙い打つ様な一撃を。
シラスの首を抉る。流血が喉を塞ぎて声が出ない――
が。そこへと癒しの力が紡がれた。
それは、シラスの死を止めるには至らぬ。けれど。
「はぁ……は、ぁ……ッ……これで、痛みは少しは、マシになる……よね……」
それを放ったのは――カノンであった。
「勘違い、しないで、ほしいけれど……傷を癒してくれた、借りは返すだけだから……!」
「――十分。互いの敵が認識出来れば、それだけでもな……!」
つまりそれは今後カノンの支援が受けられるという事。彼女の治癒がイレギュラーズ達にも至るのであれば――被害は更に少なくなるはずだ。であればリアナルも往くものである……自らを強化し、勇気の配達物を配りて。
カノンの支援を始まりとして警備隊の動きも多少変わり始めている――
イレギュラーズ側に放つ弓もあったものだが、それが主にバグ・エネミーへと。
混沌としていた戦況がやがて二色に染まり始める空気を感じていた。
バグ陣営と、そうではない者達へと。
――協力し合えているとは言い難い。連携した動きがある訳でもない。
それでも確かに、ほんの少しずつだが……
「あはぁ~ん!? なんですかソレ。翡翠の国は過激が売りでしょぉ!!?」
「ダメじゃんピエピエ!! やっぱさっき纏めて吹っ飛ばしたのがいけなかったんじゃない?」
「まっさかぁ~あの程度でお遊びですよお遊び♪ いいからアナタも早くこっち来なさいよ!」
それはイレギュラーズ達が徹底して警備隊側から攻撃を受けようと反撃せず無視した事。
積極的に元凶たるピエロへと攻勢を仕掛ける姿を見せた事。
そして治癒の術などを振るえる者が多く、粘り強い戦いが出来たという相性の良さも起因していた。業を煮やしたピエロの一撃が放たれたのは、奴らの自爆などではなくイレギュラーズらの行動があってこそに紡がれたのだ。
だが、ある程度の結束が見えてもバグらは強大。
大量のバグ・エネミーに加えて偽きうりとも合流されれば厄介だ。だから――
「――そうはいかんな」
ストームナイトが割り込むのである。
偽きうりを主にせき止めていたTeth=Steinerが倒れようとも、それで終わりではない。彼女の放つ暴風はより鋭さを増しており――薙ぎ払うような太刀筋から放たれる衝撃波が全てを吹き飛ばす。
「リュミエ殿、そしてこの場にいる翡翠の国の方々よ。見ての通り、私はこの国の者ではない――だが、他者を傷つけ、苛むことを喜びとする者に対し怒りを持つこの気持ちは、貴殿らと同じだ!」
そして同時に言の葉をこの国へ。
今は、この戦闘の間だけでいい、共に並び立つことを許されたい――
戦おう。歩みを共にしよう。
真の敵が誰なのか、貴殿らも分かっている筈だと。
「何を勝手な事を」
が。翡翠の国を守らんとする過激な者にはその熱弁すら雑音に捉える者もいる――
その一人がクラリーチェだ。『害虫』が人の言葉を介して人を惑わさんとしている。
かの者達の力など必要ない。翡翠の国は翡翠の者達で守るのだ。
ピエロらも、ストームナイトも。
纏めて狙いすまさんと彼女は弓矢を構え――た、その時。
「何をしているの」
そのクラリーチェへと言葉を紡がれた。
ほんの微か、怒りの色が滲んだその言葉の主は。
「いい加減にして! 誰が敵で、誰が味方なのか状況を把握して頂戴! 私たちが信じられないなら、あとで好きにすればいい。けれど、今は駄目。貴方達が守るべきは、誰なのか――その為に何をすればいいのか、わかるでしょう!!」
「何を――あなたに何が分かるの!」
「ええ私には分かるわよ。『貴方の全て』が!」
パンジーだ。バグ・エネミーへと撃を放ち、そして『クラリーチェ』へ。
叱りつける様に言うものだ。
外のものを敵と見做す、排他主義がそのまま服を着ている――『クラリーチェ』へ。
「貴女は、この国が外と交わるのが嫌なのね。……それとも、怖いの?」
その言葉は、どうしてかクラリーチェの心を突くように。
……ええだって世界で一番、きっと理解できるのだ。『私』だけが。
確かに『外』の人たちは『私の全て』を壊したわ。だけれども。
だけれども――私は外を恨まなかった。だって。
私は『すべてを諦めてしまった』から。
瞬間。パンジーの瞳に浮かんだ感情の色は何だったのか。
怒りではない。それは、滲み出る様なソレは……
「あなたは――」
「……貴女は私の分まで外を憎めばいい。だけど今ではないの。それは分かって」
その心の在りようを、私は止められない。
止められない――けれど。大事な事を見失わないで。
刹那。そのパンジーへと放たれたのはピエロの光。
「なーにが『私の分まで外を憎めばいい』ですか! 無意味無意味無意味なんですよそんな事ォ! この虚構の世界で生み出された全てのモノはむーいみ!! 何を抱こうが何を想おうがただの0と1ィ――消え失せなさい!!」
「逃げ――」
パンジーは近くに居たクラリーチェへと手を伸ばす。それは引き寄せる為ではなく、被害から突き放す為の動作で――直後。彼女の身体全てを吹き飛ばす爆風が生じれば、パンジーは跡形も残らぬ。
一方のクラリーチェは吹き飛ばされども、身は無事。
「くっ――この、害虫が……ッ!」
壁に打ち付けられ、しかし即座にピエロへと矢を放つ。
幼いとも言える年齢だが、彼女の技量はルドラ・ヘスの副官として相応しい程であり。崩された体勢を即座に直して放つ一閃たるや精密にして俊敏――であれば。
「バンビールのにーちゃん! にーちゃんはなんだ、この世界を恨んでんのか!?」
続けざまに動くのはルージュだ。
クラリーチェの弓矢をピエロは迎撃す。が、迎撃に使った一瞬に距離を詰めたルージュは全力の一撃と共にバンビールへと声を飛ばす。まだだ。まだもう少し立ち続ける。相手の特性をもう少しでも丸裸にするまでは――ッ!
「どうであれ――生まれた世界だろ!」
「――黙れ小娘ェッ! 我々が作りモノであると悟った時の絶望の何が分かるか!!」
瞬間。ピエロの口調が――変わった。
「我々が何をしようとも空虚であり!! 愛しい者らすら無意味の一片であり!! 天寿を全うしようとも全ては只の虚構であり、電源が落ちれば欠片屑も残らぬ事の恐怖が――分かるか!」
それはまるで色白の仮面が剥がれ落ちたかの如く。
刹那の瞬きではあったが確かに……ピエロの声色は変質していた。
それは――ルージュの言によって見えたピエロの奥底であったのかもしれない。
ルージュは……この世界を。R.O.Oの世界を愛している。
何故ならここだけが『私』の世界だから。
しかしピエロにとってはこの世界が、こんな世界が己の生きる世であることが――
刹那。ルージュの一撃はピエロのナイフにより受け止められる。どこから出したのか分かりもせぬが……しかしとにかくピエロは体力と攻撃力がイカれているのだけは分かった。そして。
「それでも――悪意を持って周りに迷惑をかけることを楽しんでいるでしょう、貴方は」
「例えどれだけの想いがあろうが――他者を蹂躙していい理由になるものか!」
そこへいりすとグリースの一撃が到達する。
ピエロによって放たれた爆撃が如き光撃により二人の身も限界が近いが――しかし一歩でも。少しでも奴に傷をつけるのだと、踏み留まる。例え死してももう一度戻ってくることがイレギュラーズには叶うのだから……
「ただ少し意外ではあったよ。余興とか好奇心とか、そういう事を言うと思っていたからね!」
「あぁ別に好奇心もなくはないですよぉ! 実際、このファルカウが叩き折れたらどうなるか~ていうのは気になってた所ではありますしねぇ!! ――どうせ最終的に世界を滅茶苦茶にするなら盛大に! 派手にいっきましょうよ――!!」
「世界を滅茶苦茶にして、一体何をするつもり?」
「――――私の生まれた意味を刻み込むんですよぉ」
胸元に受けるグリースらの撃――大分打ち込んでいる筈だが、ピエロは顔を歪めない。それは道化師としての笑顔を保つプライド故か。それともまだまだ余裕があるのか。
いずれにせよこのままではまずい。イレギュラーズの被害は大きく、彼らだけでは――!
「させませんよ。ファルカウへのこれ以上の被害は許しません」
しかし、刹那。リュミエの魔力が放たれる。
それはバグ勢力にだけ。虫の姿をした者らを薙ぎ払い、そして。
「これは――傷が癒えていく――?」
「貴方達の処遇は後で決めましょう。あの道化を討ち果たした後に――」
リアナルが気付いた。イレギュラーズ達にも治癒の力が行き渡っている事に。
それはリュミエが限定的なれど彼らを味方と認めたが故か。
ともすればリュミエは外の者への不信から、イレギュラーズとピエロが疲弊しきった後に纏めて掃討しようかとも頭の片隅で思考していたのだが……もはや払拭された訳だ。少なくともイレギュラーズ達は悪ではないと。
「ラッキー! 耳長の癖にやるじゃん!!」
さすればきうりんらが往く。そして警備隊も完全に味方側へとなれば段々と形勢が変わるものだ。
いやそればかりではない。死したイレギュラーズ達もサクラメントから復帰し始めて。
「行くぞザントマン! この国の為――体を張れ!」
「いやあああああもうおうち帰るですぞおおおお!!」
その中の一人がリアナルであった。同じ程度のタイミングで再ログインを果たした者達――と、もののついでにザントマンも働かせるため、引き摺ってでも連れてきた。え、何? 私はボコボコにしてないからね? これはもう全部クラリーチェが……
ともあれ警備隊も仲間として動くのであればなんの憂いもなく全力で駆けつけられて。
「さぁて――散々やってくれたな。やり返させてもらうとするぜ……倍返し所じゃないけどな!」
「どうであれ俺様達のやる事は、何時だって変わらねぇ。
先のピエロ共みたいなクソふざけた奴等から世界を守る――ただ、それだけだ」
駆けつけたシラスが竜の息吹でピエロを薙がんとし。Teth=Steinerも雷撃を紡ぎて敵を追い詰めていく――ピエロの放つ光撃や、偽きうりの分裂体もまだまだ多く残っている、が。
翡翠側との連携さえ取れてしまえばどうとでもなる。
強大な魔力を宿すリュミエや、疲弊しているがカノンの支援もあり。
クラリーチェも――思う所はあれどピエロを優先的に攻撃すれば十分以上。
後に倒れし、いりすやグリースらも戻って来れば復帰し。きうりんも、用意していたきうり(馬)によって駆けつけて戻ってこれた。倒れようとも必ず奴らを倒すと――そうすれば。
「アチチチッ!! こいつはちっとまずいですねぇ……もぉ仕方ない!
帰りますよきうりんさん、出直しです!」
「ほい来た! さー帰ろうかねー!」
最早形勢は不利かとピエロらは撤退を選ぶものだ。
「……カノンまで傷つけておきながら、逃がすとお思いで?」
「んふふ~のふ~この世界は虚構であれば幾らでも抜け道なんてあるもんですよぉ。
それに我々にだけ構ってる余裕がおありですかぁ……? バグをバラまいてますよぉ!」
「――リュミエ殿! 街に向かう個体がいるようだ!!」
リュミエが更に巨大な魔力をピエロに放つ、も。ストームナイトが気付いた。
バグ・エネミーらが攪乱の為か各地に散ろうとしている。あれらではファルカウが揺らぐことはないだろうがしかし、民にまで被害が出るかもとしれねば放っておくわけにもいかぬか……!
そしてまだ戦力があるのであれば――ピエロ達も逃げ道はあるのだと言い放って。
「んでは、また近い内にお会いしまいょう――そろそろ幕も近いでしょうしねぇ、アディオス!」
「ぴえぴえ、給料頂戴!!」
「帰ったらね!!」
「逃がす、かぁ! こんな嫌らしいクエスト作っておいて――冗談じゃないよ!」
直前。通路の影に消えんとするピエロらを――ネイコの一閃が貫いた。
アイタッ――! という声が響き、しかし同時に気配が消失していく。
逃げたか……だが、まぁいい。今はファルカウの受けた被害も確認する事が重要だ。少なくともリュミエ達にとってはそうであれば。
「――礼を申し上げましょう。皆さんのおかげで、ファルカウの被害も軽微の内に終わりました……尤も。国境が封鎖されているのにどうしてここにいるのか、という問題もまたある訳ですが」
そして、リュミエはイレギュラーズへと語る。疲弊しているカノンへと寄り添いながら。
「……まぁ、その辺りを深く問う気はありません。助けていただいたのは確かなのですから」
「そうでしょ! 全部あのピエロときうりが悪いんだよ! 土地耕したのとかも色々……」
「土地……? いえ、ともあれ国境を閉めたことで裏を突かれたのであれば。
些か今後の方針に関しては、皆でまた協議する必要があるかもしれませんね――」
「では」
『あっ、やべ』という感じで自らの口を手でふさぐきうりん――はさておいて。
国境の封鎖を解くのかとストームナイトが問おうとすれ、ば。
「皆さんに感謝する事と、それはまた別問題です。
――ただ。感謝している事だけは確かであると、述べさせていただきます」
同時。リュミエが仰ぐはこの国の大樹ファルカウ――
全てを見守る様に鎮座するその樹が無事な事には、純粋たる安堵の息を零すのであった。
クラリーチェはやはりまだ、些か怪訝な目を特に――外の者には向けているが。
今は残ったバグも倒さねば同胞が危険だと駆けていく。
そしてかの大樹が無事なのは……目の前にいるイレギュラーズ達によるもの。
外の者への認識をあまりに固めるのは彼らを排する事にもなるかと――思考するものであった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
クエスト、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
翡翠の国で蠢いていた陰謀は辛うじて頓挫しております――
彼らがこの先どうするのかはともあれ。<Closed Emerald>の一幕はこれにて。
ありがとうございました。
GMコメント
●クエスト達成条件
・大樹ファルカウのダメージがある一定を超える前に
・リュミエ・フル・フォーレが重傷を負う前に
全ての敵勢力を撃退する事。
●フィールド
翡翠国家首都ファルカウ――その内部です。
なんとバグNPC達がファルカウに直接攻撃を仕掛けてきました!
ファルカウ内部は混乱に陥っています!
敵の目標はリュミエ、そしてファルカウそのものの様です。
とはいえファルカウは世界最大の大樹であり、攻撃されようがそうそうダメージを負うようなモノではありません。そもそもからしてあまりにも巨大すぎる大樹であるので、ある程度は蚊が刺した程にも感じないでしょう。
なお。ファルカウが傷ついた場合に『大樹の嘆き』が発生するのかは不明です……
●NPC
・リュミエ・フル・フォーレ
翡翠の巫女、翡翠の長たる幻想種です。
大魔道を操る、魔術師としても優れた人物です。ピエロらの攻撃を弾き、ファルカウや周囲の幻想種を護りながら戦っている模様です。あと、妹を傷つけられちょっぴり怒ってます。ええ――ちょっぴりですよ?
・カノン・フル・フォーレ
リュミエの妹たる幻想種です。
きうりんとピエロの一撃により負傷しています。重傷なのか、かなり苦しそうです。
朦朧としながらも周囲の者達やファルカウに治癒魔術を行う支援を行っています。
・クラリーチェ・カヴァッツァ
R.O.Oのクラリーチェ・カヴァッツァさんです。
この世界において森林警備を行うルドラ・ヘスの副官たる地位に付いており、優秀な人物であると目されます。今はザントマンに邪魔をされていますが、すぐにボコボコにしてまた侵入した(と思っている)皆さんを討ちに追いかけてくるでしょう。
『外の者』は全員容赦しません。
――だって外なんて、ろくでもない所なんだから。
・ザントマン
愛の妖精。戦闘能力はほとんどありませんが、耐久力だけは尋常じゃなくあります。
クラリーチェさんを押し留めてますが、やがてボコボコにされるでしょう。
・迷宮森林警備隊
あちこちにいます。主に弓を扱う者が多いようです。
バグ勢力に対して攻撃を仕掛けていますが、イレギュラーズも外の者だと認識すれば攻撃を仕掛けてくる恐れがあります……
●敵戦力
『ピエロのバンビール』
至高天(エンピレオ)を名乗り、バグNPCの一人です。
常におどけた口調の謎の男。バグNPCが故か、あらゆる数値もバグっており――つまり非常に強力な力を宿しています。「びーむ!!」とか言いながら光線を指先から生じさせたりしてます。
不思議な事に彼から攻撃を受けると『傷が治りにくい』様です。
治癒・再生能力の類が著しく低下する力を持っているのかもしれません……
また、その他マントを翻すとそこから謎の存在が様々に出てきます。
一言で言えば『バグエネミー』です。詳細は後述。
『きうりん』
楊枝 茄子子(p3p008356)さんのログアウト・ロック時にバグNPCらの介入によってコピーされた『パラディーゾ』の一人です。位階は『天国篇第九天 原動天の徒』
ピエロと共に暴れまわっています。楽しそうな様な、どこかぶっ飛んでいる様な……
きうりん(本物)と似たような戦い方をしてくるかもしれませんが、詳しい所は不明です。
他、『原動天』として何らかの能力を持っている可能性があります。
・バグエネミー×??
ピエロが召喚(?)したバグエネミー達です。
その姿は『虫』の姿をしてのが主な様です。
『バグ(不具合)でバグ(虫)を召喚……なんつって!』とはピエロの言。
きうりんと比べてあまり強くはありませんが、数が多いです。
警備隊などと交戦を繰り広げていますが、イレギュラーズを認識すれば勿論皆さんにも襲い掛かってくることでしょう。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●重要な備考
<Closed Emerald>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
<Closed Emerald>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
但し、<Closed Emerald>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。
●『パラディーゾ』イベント
<Closed Emerald>でパラディーゾが介入してきている事により、全体で特殊イベントが発生しています。
<Closed Emerald>で『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。
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