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シナリオ詳細

<Closed Emerald>招かれざる猫は消失点を真似て

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『翡翠』の国境封鎖が完了しようとしている、それに伴い「余所者」、所謂バグNPCやそれに類する異常存在が闊歩しはじめ、各地の大樹を傷つけている。
 それに伴い、『大樹の嘆き』が大量発生。辺り構わず暴れまわっている――。
 翡翠内部への突入に成功したイレギュラーズが穏健派の幻想種から聞かされたのは、概ねそのような話であった。
 つまるところが、彼女らは意図せずして自らの首を絞め上げたことになる。そればっかりはどうしようもないが、イレギュラーズ達には今これから、事態の悪化を抑える行動が可能である。
 あるのだが、一部のイレギュラーズに対し穏健派の幻想種ですらその視線は冷ややかだ。その理由は至って単純かつ、『バグ』の悪辣さを思い知らされるもので……。


「ぶにゃぁご、にゃご、にゃぁ……あー、いいやもう面倒臭ぇ。こことあっちと、あとはそっち? 猫使いが荒いぜ、たく……」
 猫の鳴き声を模して何度か鳴いた影は、即座にその仕草が面倒くさくなったのでやめた。それどころか、猫の姿を晒すことも追々面倒になるので、『やめた』。今しがた声がしたところには、なにもない。
 否、何者かがいるのかもしれないが、表向きはただ、森の風景の一部である。
 だが……。
 ばりばり、ばりばり。
 森からは、そしてそれぞれの『大樹』からは何者かが樹皮をひっかく音がする。ほんの数ミリの深さの、樹皮を遠巻きに見れば分からぬ程度の傷はしかし、その数が限りなく増え続けることでその不可解さを増していく。
 無論、大樹とてやられ放しでは何れ朽ちる。半ば反射的に生まれ、現れたのが『大樹の嘆き』と呼ばれる生命体……それらは大樹によって、そしてその他の数多ある要素に拠って姿を変える。この日『バグ』の襲撃を受けて顕在化したそれらは、広葉樹の葉を折りたたんで作った小人のような姿をしていた。
 それらは小さいながらも圧倒的な膂力を以て木を引っこ抜いて振り回し、『バグ』を周囲の自然ごと叩き潰すべく暴れまわる。だが、刻一刻と変貌する自然は『そのどれもが彼が化けた時の自然ではない』。
 本来の彼が持ちうる特性通りであれば一瞬で解ける変化も、代わり続ける自然に於いてはまったくもってデメリットを被らない。
 だからこそ……だからこそ、彼は誰からも見つかることはないだろう。
「なに人のカッコと能力パクってんだよこのスカタンが」
 だが、『バグ』は『本人』――にゃこらす(p3x007576)の声に反応したように変化を解き、転がるようにその場に現れた。
「ミーと似たようなナリで好き放題されてんのクッソ腹立たしいんにゃ。にゃこらす」
「オウ」
「何気安く呼んでやがる」
「……面倒臭エにゃユー達! 同じ名前で反応されるといよいよ区別が……いや付くにゃ。その悪趣味な赤いオーラとか見間違えようがねえにゃ」
 同じく現れたぱぱにゃんこ (p3y000172)が彼の名を呼ぶと、本人とバグが諸共に声を返すから面倒くさい。
 更に言うなら、バグの側はやや赤みがかったオーラをその身にまとい、強者ムードを醸し出していて非常に、こう。ウザい。
「『火星天』だ」
「は?」
「『天国篇第五天 火星天の徒』、にゃこらす・R。そこの不出来なオリジナルと一緒にされちゃ困るんだよ」
 『火星天』にゃこらすはそう告げると、周囲の風景に歪に同化するかのごとく姿を消す。
 入れ違いに現れたのは、にゃこらすよりふた回りほど小さい猫らしきモンスター……おそらくは配下だろうか。
 見れば『大樹の嘆き』達も此方を見ている。逃げるという選択肢は、当たり前だがありそうになく。
「デカい啖呵切ったんだからぱぱにゃんこが何とかしろよ!」
「オリジナルだろうにゃユーは! 責任取れにゃあ!」

GMコメント

 なんだよ「R」って。雑すぎんか。

●成功条件
・大樹の嘆きの全滅
・子ゃこらすの全滅
・にゃこらす・Rの撃退

●にゃこらす・R
 『パラディーゾ』と呼ばれる、ログアウト不可になったイレギュラーズのアバターのコピー体です。委細後述。
 にゃこらすは『天国篇第五天 火星天の徒』に座すらしく、BSを蒙りにくい状態にあります。
 アクセスファンタズムを改変した能力を有し、どういうわけか「風景の差分に化けることで周囲に溶け込む」ようなことを一例としてやってのけ、その上その状態で戦闘すらこなせます。卑怯……。
 そうでなくても元より防技が高く、強力なMアタックだの「呪い」「致命」付与スキルだの、兎に角嫌がらせ性能全一みたいな能力。
 なお、こいつがガチで戦おうとすると到底NORMALの域ではなく、努力目標とかでなく普通に色気を出さないほうがいいです。
 状況が圧倒的不利になれば勝手に消えます(撃退成功)。

●子ゃこらす×10
 にゃこらす・Rの配下。かなり小さいにゃこらすみたいな姿ですがHPはそれなり有し、ひっかきによる流血BSの付与などを行います。
 なお、数体の連鎖行動による「共鳴撫鳴」(神特特)はかなり強力です。

●大樹の嘆き×15
 葉っぱの小人タイプ。怒りの感情を非常に強く顕在化させています。そのため周囲の樹木だろうがなんだろうが手当たりしだいに武器にして襲いかかってきます。
 攻撃手段はその時々でかわりますが、非常に物理攻撃力が高いことは間違いなさそう。反面、火炎系列BSには通常よりかかりやすく、持続時間が延長されることがあります。
 それはそれとして数に頼って無差別に襲いかかってくるので、十分注意して対処してください。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●重要な備考
 <Closed Emerald>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
 <Closed Emerald>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
 但し、<Closed Emerald>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

●『パラディーゾ』イベント
 <Closed Emerald>でパラディーゾが介入してきている事により、全体で特殊イベントが発生しています。
 <Closed Emerald>で『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Closed Emerald>招かれざる猫は消失点を真似て完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月09日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

すあま(p3x000271)
きうりキラー
カイト(p3x007128)
結界師のひとりしばい
にゃこらす(p3x007576)
怪異狩り
モモカリバー(p3x007999)
桃剣舞皇
うるふ(p3x008288)
銀河を狩る獣
スイッチ(p3x008566)
機翼疾駆
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)
しろねこぎふと

リプレイ


 自分の同じ顔した奴が増えることは別に感慨もひったくれもねぇんだよ、正直。……慣れっこだし。
 けどさぁ、お前ら見てると単純に腹立つんだよな――
「……って赤い目の方が言ってたんだけど。多分、昔の自分見てるような『地雷』で嫌なんだろうなー」
「俺もアイツと同一視されるのはごめん被りてぇよ。てかRってなんの略だよ!それくらい教えろよ火星天!」
 昔何処かで聞いた言葉を諳んじ、『結界師のひとりしばい』カイト(p3x007128)は呆れ気味に首を振る。自分の姿をしたなにかが自分と違う人生を歩み、結果として自分よりも……どうにもならない未来に直面する。そんな物を見せられて、正気で居られることなどなかろう。それを『青目』で言うのだから手に負えない。或いはドッペルゲンガーを見ると死ぬ理屈は、その擦り合わせができぬ者が身投げをするからなのか……そんなことは、パラディーゾとかいう存在が自分の姿で『R』などと付け加えているのを目の当たりにした『バケネコ』にゃこらす(p3x007576)には関係なかった。返事したら一発ブン殴るんだけどな、って彼は思ってた。
「テメェがにゃこらす・Rならこっちはうるふ・Rだ!! やったるぞ!!!」
「アバターの無断複製・姿の無断利用・悪事……許せない事が多すぎる!」
 『アイアンウルフ』うるふ(p3x008288)が火星天に向けて挑発を繰り返す傍らで、『しろねこぎふと』ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)は目の前で繰り広げられる敵の所業に怒りを露わにしていた……ように見えた。パラディーゾという存在の複製、それが自分に向けられたらと思うと虫唾が走る。仲間がそうされた事実が、何しろ許せない。
「うーん、猫がいっぱいというと可愛らしい状況に見えるけれど実体は真逆なんだよね……」
「猫はもとを辿れば捕食者、森にとって益かというと難しいですが。今回は明白に敵ですね」
 『可能性の分岐点』スイッチ(p3x008566)はわきわきと手を動かして子ゃこらす達に視線を向けるが、その悪意マシマシの顔(にゃこらすに悪いが)を見るとヤバさがよくわかる。『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)はそんなスイッチとは対照的に、猫に対する興味は薄いようだ。両者に共通して、目の前のアイツらは森にとても悪そうだなって意見は一致している。爪とぎにも限度ってもんがあるのだ。
「我が名は"桃剣舞皇"モモカリバー! 悪を許さぬ戦士だ! たとえ電脳世界であろうと、自然破壊は悪の所業! 悪事は私が止めてみせる!」
「そうだよね、大樹も怒るよね……でもあの嘆きは怖いね。ファルカウがあんなもの出したら国ごと吹き飛ぶかも?」
「それは考えたくはないな! 許せん!」
 『桃剣舞皇』モモカリバー(p3x007999)の堂々たる宣言に応じ、『CATLUTONNY』すあま(p3x000271)は鎧さんの腕の中でうんうんと頷いた。自然から生まれたのに堂々と自然破壊してるあの小人集団なんなんだって感じもするが、それだけ怒りに燃えているということだ。すあまの指摘をうけ、モモカリバーの義憤は弥増した。頑張れ負けるなモモカリバー。
「俺はお前ってデータから生まれたナニモノかだよ。お前とは分かりあえない」
「おっと馬鹿話に乗っちゃうんデスネ」
 にゃこらす本人(?)より幾ばくか低いトーンで語る火星天の声めがけ、うるふは見ずに銃弾を叩き込む。手応えなし。大凡のあたりはつくが、さりとて当てられるほどの精度は期待できない。本当に嫌なパラディーゾだ。
(思考を止めるな、チェス盤をひっくり返せ。俺がアイツで、そこまで強力な擬態ができれば『今そうした』。オーケー、あいつの意図に追いついてやる)
 にゃこらすは火星天の声とその後の流れを見て、やっぱりな、と笑みを見せた。擬態できるなら、声を出しても避けられるほどなら、俺だって撹乱しようとする、と。
「にゃこらす、あの火星天面倒くさい性格にゃけどアレもユーのせいかにゃ?」
「うっせえよ! 気にしてんだよこっちは!」
 その思考を遮るようなぱぱにゃんこの言葉は、なかなかに鬱陶しい。
「赤い目の方を『出して』もいいけど、庇ったりはさせられないからな……ま、1人守れれば御の字ってことで」
 カイトは己の能力を自覚した上で、それでもなお守れる相手はいる、と思い直した。場合によっては『分身』にも使い所があるかも知れない。そう考えれば気も楽だ。
「とにかく、敵は殲滅する……!」
「正義の為に、我が剣を振るおう!」
 ねことモモカリバーは互いの得物を軽く打ち合わせ、隣り合わせで敵の襲撃に備える。怒り顕な木の葉の小人達は、彼女らの情緒などおかまいなしに襲いかかってくる。……その末路についても知らないほうがいいくらいに。


(環境破壊は気が引けるが、勘弁してくれよ……!)
 うるふはトイガン状の得物に特製弾を装填すると、相手を見るや見ざるやの反射速度で引き金を絞る。吐き出された弾丸は大樹の嘆き達目掛けて飛んでいくと、地面を中心に激しい火柱を上げて燃え盛る。火に弱いならナパーム弾。R.O.Oでも混沌でもない世界でさんざ行われた焼き討ちの手法だが、翡翠でやるだけに罪の意識はとみに大きい。
 大樹の嘆きは炎にあえぐように身をひねり、しかしうち何体かは怒りに任せ倒木を持ち上げ突っ込んでくる。明らかに体躯と持ち上げるサイズが不釣り合いなそれは、目測が狂いかねないものだ。
「全体進めの要領でまとめて突っ込んでこないのは、賢いのか愚かなのか判じ兼ねますね」
「子ゃこらす達のこともあるから、『賢い』のかな。……遠い相手は君にお願いするね」
「囲まれる立場だから、確実に相手を倒していかないとだね。……言うほど簡単でもないよね?」
 黒子は燃え盛りながら突っ込んでくる嘆きを無視し、あえて遠くで(燃えつつも)子猫と牽制しあう相手に闇旋を放つ。渦巻く闇は不用意に近づいた嘆きと子猫を巻き込んで傷を増やし、燃え跡をじくじくと浸食していく。
 他方、ほぼ背中合わせの位置にあったねこは正面から近付いてくる個体に肉球の柔らかな一撃を放つ。柔らかくても、優しくはない威力で。
 スイッチはねこ達と距離を取りつつ身構える子猫たち、その一体目掛け鋭く切りかかり、距離をとる。傷は浅いが、思いがけぬ位置からの思いがけぬ攻撃は、相手の意表を突くに十分だったといえよう。
「このモモカリバーの刃で、ことごとくを寄らば斬る!」
「鎧さん、あそこの敵だよ!」
 モモカリバーとすあまは、それぞれ逆方向から襲いかかる子猫と嘆きめがけて迎撃し、できるだけ多くの敵を捉えるべく立ち回る。モモカリバーはその言葉に違わぬ剣の冴えで、すあまは鎧さんの移動に任せた攻撃偏重の戦い方で。咄嗟に放たれるすあまの攻撃は、技術を伴わないものも凄まじい悪意を滾らせているから恐ろしいというか。
「お前達が倒したいのは俺だろ? 御主人様の偽物だもんなぁ!」
 にゃこらすは黒子に襲いかかる子猫達の眼前で猫騙しを繰り出し、二重三重の意味で相手のヘイトを集めることに成功した。視線を目まぐるしく動かして敵の、そして火星天の挙動を探る彼の脳はショートしそうな速度で回転を続けているが、それでもまだ、きっと足りない。
「動きを止めれば殴りたい放題、ってな。強かろうが、戦えなきゃ意味がないんだぜ」
「…………!!」
 カイトの一撃に巻き込まれた嘆き達は、己を縛る謎の力に抗おうと身を捩らせる。だが、それが無意味なことはカイトが最も心得ていた。大丈夫、多少の予定の狂いはあるが十分に戦えている。戦えている、はずなのだ。
「カイト、気を緩めるな! 多分そっちに」
「ああ、火星天(オレ)だぜ」
 にゃこらすは煙を上げそうな思考の果て、『仲間に擬態する』ことよりも簡単で、手っ取り早い方法に辿り着いた。
 そして、それを告げるより早く。カイトは火星天の爪に目を傷つけられ、鼻先を引っかかれ。敵を判別するすべを、一時的に奪われた。
『目の付け所は最高だぜ、青目。オマエ本当にいやらしいぜ』
 嘆きの一体に偽装していた火星天は風景に溶け込んで消えると、敢えてべらべらとまくし立てる。動いている。敵がいる。円陣を組んだイレギュラーズの外側で、虎視眈々と爪をといでいる。
「治療はミーが全力でやるから、ユー達は殲滅最優先にゃ。ヤツが死んだ面子と入れ代わろうってんならまあ、問題にゃいだろうにゃ」
『うっせえ猫だな、やれるもんなら』
「やってやるにゃ。こいつらが」
 子猫達で動ける個体が互いに唸り声を上げて喧嘩するような素振りをみせる。それが連携攻撃の兆候とみてとった一同は互いに守りを固め、ちらりとぱぱにゃんこに視線を向けた。火星天の煽りがウザいが、彼らがその程度で集中を切らすはずがない。――考えろ、攻め切れ、そして死ぬな。


「これって猫の共食いになるかな? なるかも」
 すあまはもふもふ、と鎧さんがハントした子猫にかじりつきながら自分に問いかけ、そして理解を示した。多分大丈夫だろう、倫理的にはモザイクものだとおもうけれども。
「奴ら連携に長けてやがる、行動潰さにゃ切れ目が無くなる……で、できれば巻き込みを避け」
「構わねえよ! 俺ごとやれ!」
 うるふにも常識というものは存在する。仲間を巻き込もうなんて、とてもじゃないがやりたくない。だが、にゃこらすはそれを是とした。現に、さっきから倒れても倒れても立ち上がり、近づく敵の前に身を晒している。あの小人達の猛攻をしても。
「にゃこらすさんを巻き込んで、にゃこらすさんが小さくなったようなのを狙う……いやすっごくやりづらいね!?」
「大丈夫です、にゃこらす様を殺せる敵は、私が知る限りここにはおりません。私は『危険』だと感じていませんから」
 スイッチは雷を帯びた剣で子猫らを纏めて切り裂き、にゃこらすから自分へと狙いを向ける。その際ににゃこらすも斬っているのだが、すぐ立ち上がる姿に憧憬すら覚えた。なお、黒子はその状況をしてなお冷静に攻撃を繰り返す。こころなしか、攻撃の精度が先程より上がっているが。そのせいで、一方的にやられる個体が増えてきているが。
「ごめんよ……! でも、残り少なくなって固まろうとしてるからこっちのほうが……!」
「まー、なんとかなるにゃろ。にゃこらすもちゃんと癒やすからユーは気に病むんじゃないにゃ」
 ねこはにゃこらすやスイッチを巻き込んでしまう事実に心を痛めつつ、しかし思考停止はしなかった。治療技術を持つ故に逡巡することは幾度かあったが、そのたびにぱぱにゃんこが「いいから攻めろ」って肉球を振っている。現にちゃんと治療しているらしい。だからこそ、遠慮なく力をふるえるのだが。
「これで子猫は打ち止めです。あとはあの馬鹿馬鹿しい膂力の小人だけですが」
「ねーねー、今回は諦めて仕切り直した方がよくない?」
 黒子の冷静な、それでいて冷酷な敗北勧告にあわせ、すあまは挑発するでもなく純粋な疑問符として火星天に問いかける。何処で聞いているのか、或いはまた小人に紛れているのか。噛み付いてやろうかという威嚇も込みだったことはいうまでもない。
「……チッ、気合の足りねえ連中作っちまったぜ。いいか、今度はこうはいかねえぞ! 俺はオマエより、もっと考え抜いてやる――覚悟しとけよ!」
「おーおー、口だけは一丁前じゃねえか。精々悪知恵働かせな。そん時は俺が殺してやるよ」
 火星天の悔し紛れの声とともに、悪意に満ちた気配が霧散する。
 そして、小人達は戸惑うように数度周囲を見回してから、イレギュラーズをあらためて敵対勢力と見做して襲いかかってくる。
「なんてイウカ、嵐みたいデシタネ……湿っぽかったデスし」
「悪は去ったが……釈然としないな! この怒りに応えてやれば少しは気が晴れるだろうか? 晴れるだろうな!」
 去っていった火星天の声の方角を見て、うるふは顔をしかめた。自分の分身ともいえる相手が、自分を湿っぽい感情で逆恨みするのはどうにも気持ち悪いナ、と改めて思う。
 モモカリバーは勝利か敗北か、でいえば勝利なのだが、フラストレーションがちょっとだけ溜まっていた。目の前の剛力たる小人に正面から立ち向かえば、このもやもやもなんとかなるのだろうか?
「僕は絶対イヤだよ、あんなの」
 ねこは改めて、心からの嫌悪を籠めてつぶやいた。

成否

成功

MVP

すあま(p3x000271)
きうりキラー

状態異常

なし

あとがき

 仲間に化ける? いえいえ、雑魚に紛れ……いや仲間にも紛れてると思うぞ? 思うよ?

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