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シナリオ詳細

<モスカ漫遊記>翠露への道筋

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 コン=モスカ。その名は海洋に縁のある者ならば聞いた事ぐらいはあるだろう――
 かつて絶望の青と呼ばれたその大海を神聖な地として信仰していた者ら。そして海洋王国大号令において海往く者らに加護を与えた一族……かの滅海竜との戦いでも大きな役割を担い、悲しき『別れ』がありながらも英雄譚として後世に残る詩が紡がれた。
 そして絶望の青は静寂の青と呼ばれるようになった――訳だが。
 それで『終わり』という訳でもないものだ。
 絶望が晴れれば全ての歩みが止まる訳でもない。
 静寂たればそれが終着点か? 否、否……
 コン=モスカの物語は続いていく。
 詩が未来に残る様に、生者の歩みもまた同様に――

「あー……のぉ、ドラマよ。この辺りは深緑の……どの辺りなのじゃ?」

 そしてコン=モスカ祭司長たるクレマァダ=コン=モスカ (p3p008547)は今、大自然の中にいた。
 ――深緑だ。深緑に広大に広がる迷宮森林の中に彼女はいる。
 何故なのか? と問われればそれは彼女自身の望みというか……己が見聞広めるための一環とでも言おうか。混沌各国の世相に触れたき彼女は供としてフェルディン・T・レオンハート (p3p000215)とイーリン・ジョーンズ (p3p000854)を連れ、故郷たる海洋を出発した。
 途中、突然発生した嵐に呑まれ船の舵が聞かなくなった時はあわやともなったが。
 四苦八苦の末なんとか陸地に辿り着いた彼女らは現地にて待っていったドラマ・ゲツク (p3p000172)を案内人に大自然の都、ファルカウを目指して突き進んでいる真っ最中である――が。
「ええと、そうですねぇ……それなりに南の方、とでも申しましょうか。
 ファルカウまではもう少しかかりそうです」
「行けども行けども自然ばかり、ね。まぁ深緑って言うのはそういう所だけど」
「どうされました祭司長。もしかしてお疲れですか――少し休みましょうか?」
「ええい。違わい違わい! ただ少し先が気になっただけじゃ!」
 変わらぬ景色。進めど進めど木々が生い茂っている地では、自分がはたしてどれだけ進めているのかも分からなくなりそうだ。慣れたドラマにとっては、しかと進めているのは分かっているのだが。
 ともあれ深緑に詳しき彼女の案内の下、彼らは進んでいる。
 彼女の豊富な知識は道中であろうとも泉の様に湧き出でるものだ。
 木々の一つ一つ、小さな植物、動き回る小動物の名すらクレマァダらに案内すれば海の国とは異なる大自然の気配を存分に感じるものであり――
 そしてイーリンが周囲を窺い、フェルディンがクレマァダを気遣う様に休憩を勧めれば……その時。
「……むっ? あれはなんぞや? 木の下で何か集まっている者がおるが……」
 クレマァダが気付いた。左手側の奥で、何やら人の影が見えたのだ。
 何をしているのかと目を凝らしてみれば大樹の根元で何か作業をしている様だが、あれは――
「……! あれは、密猟者……いえ密『樹』者ですねッ」
「――密樹者? それは一体?」
「たしか聞いたことがあるわ。深緑には色々と珍しい木があるのよね……で、それは色んな素材になったりするのよ。武器とか家具とか文字通り色々ね――だからこうして深緑に忍び込んで、樹を狩っていく奴もいるんだとか」
「ええ……まさかファルカウも近いこんな所にまで潜り込む者がいるとは思ってもいませんでしたが……ッ!」
 見たドラマが口走った『密樹者』なる存在――
 疑問符が浮かんだフェルディンへ補足するようにイーリンが呟けば、確かに複数の男たちが木の根元で持っているのはノコギリの類であった。永い時を経た樹木は神秘性を身に纏う事もありそれは高価な素材ともなり得る……
 しかし自然を友とする深緑が、木々を切り倒すのをそうそう簡単に了承などするものか。
 だから奴らはこうしてこっそりと行動をしているのだろう。
「そもそも下手をすれば『嘆き』が発生するかもしれないというのに……
 いえ、とにかく今からでは警備隊を呼ぶのもきっと間に合わないでしょうね」
 奥歯を噛みしめるドラマ。
 彼らのその行い――正しく悪。
 この場に遭遇したのはただの偶然ではあるが……見過ごせぬ!

「待てぃ! 罪なき木を己が欲望の為に傷つけんとするなど……恥を知るのじゃ!」

 故に往く。クレマァダの号令と共に密樹者の眼前へ、さすれば。
「な、なんだぁテメェら!! 警備隊のクソ共か!?」
「控えろ! この方を誰と心得る!」
「先のコン=モスカ祭司長、クレマァダ=コン=モスカ様であらせあられるわよ!」
「まだ辞めてないんじゃが!! 勝手に『先の』とか付けるのやめてくれるかの!!?」
「……紙吹雪でも撒きましょうか? 深緑なりの紙吹雪ならすぐ出来ますよ」
 盗掘者達の眼前に飛び出る一団。
 クレマァダを中心に、イーリンとフェルディンが両脇に控えて。その背後ではドラマが紙吹雪――代わりの葉吹雪一つ。深緑仕様の演出あらば。
「ええい! コン=モスカだかコーン=トーストだか知らねぇが! 見られちゃこちとら只で帰せるかよ! 者共、やっちまえ!! 奴隷商人共に引き渡せば高く売れそうだぜ!!」
「誰がコーン=トーストじゃ!! 貴様らこそただで帰れると思わぬ事じゃ――ッ!!」
 衝突する。これも一つの世直しが為――いざ参らん!

GMコメント

 リクエスト有難うございます! 祭司長の道筋、深緑より!
 以下詳細です!

●依頼達成条件
 密樹者達を壊滅させよ!

●フィールド
 深緑国内、迷宮森林の一角です。ファルカウまであと少し!
 ある大きな木――大樹とも言うべき樹を狩らんとしていた一団がいました。その手にはノコギリなどなど明らかなる伐採道具があり、言い逃れなど出来ない状況な事でしょう。
 周囲は木々に囲まれていますが、動きにくいという程ではありません。

●敵戦力
・密樹者×8
 ノコギリやらなんやら沢山の伐採道具を身に着けている者達です。
 貴重な樹を切り倒し、それを各国で売る事を生業としているのだとか……
 基本的に前衛が多いようですが、二名だけ魔術を行使する後衛型の様です。
 自然に対する敬意なんてないぜ。炎の魔術だって使っちゃうぜ!

 無事に倒すことが出来たら警備隊に引き渡してもいいですし、とりあえず縛り上げた後に警備隊に引き取りに来てもらってもいいでしょう――いずれにせよ首都ファルカウはもうすぐです。

●備考
 上手い事密樹者達を倒せたら、そのままファルカウまであと少し歩を進めてもいいかもしれません。大自然の中に存在する都には、そこでしか見られないような書物などにも溢れている事でしょう――
 海洋の外、深緑という国が如何なる世相の地なのか。
 知れるはやはり首都たるその地かもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <モスカ漫遊記>翠露への道筋完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年10月30日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
※参加確定済み※
フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
※参加確定済み※
エマ(p3p000257)
こそどろ
志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
※参加確定済み※
メリッカ・ヘクセス(p3p006565)
大空の支配者
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
※参加確定済み※
赤羽 旭日(p3p008879)
朝日が昇る

リプレイ


 海洋と言えば深緑から見て、遥か東の海に浮かぶ国家である――
 だからだろうか、コン=モスカの名を聞いても奴らがピンと来ていないのは。
 ましてやコーン=トーストなどと間違えるとは……というかコーン=トースト……
「コ、コーン……コ、コーンって……うっふぉ、か、ふ……まずい、むせ、むせて……!」
「ひっひっひ、ずいぶん美味しそうな間違えられ方をされましたね――後でコーン=トースト頼みましょうか! 深緑なら美味しいレストランもありますよね!」
「ええい貴様ら!!!!! 笑うておるのではないわ!!!!!
 誇りある我が家名で遊ぶな!!!!! なにをツボに入っておるのか!!!!!」
 ころす!!! いや奴らだけをじゃが!!! と、魂の奥底から叫ぶのは『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)だ――
 その背後側では『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が腹の奥底から沸き上がらんとする感情を抑えるのに必死中! 同時、軽快なる笑みを浮かべているのは『こそどろ』エマ(p3p000257)である――だって美味しそうだから仕方ない! コーンにトーストは最強ですよコーン=トースト祭司長!! あ、間違えた!!
「ああ、また祭司長がお怒りに……まぁ、今はともかく彼らを大人しくさせるとしようか」
「こんなトコロまで密樹者が侵入しているとは――ええ、逃す訳にはいきませんからね」
 キレる祭司長。しかし、なにはともあれ眼前の連中をまずは叩きのめさねばと『放浪の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)と『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)は敵を見据えるものだ。
 彼らの手にあるのはノコギリなどの伐採道具……この深緑にこのようなモノを持ち込むなどいい度胸だ。
「このような者達は、どこの国に行っても一定数いるんだろうね。まぁ良いでしょう、我々モスカのちりめん問屋と出会ってしまったのが運の尽き――いや、むしろ幸運だったのかな? ちょっと反省してもらうとしようか。勿論、その体にね」
「今ちりめん問屋とか言わんかったか???
 おい、ちょっとこっち見るのじゃ。おい!!!!!」
「さ、祭司長、御静まりを!!」
 ブチギレ祭司長。抑えるのは『上級大尉』赤羽 旭日(p3p008879)だ――
 海洋の祭司長がいらっしゃるというのに海洋軍人が働かない選択肢があろうか。例え異国の地なれど関係ない……あの騎士様みたいにかっこよく前にではって女の子を守るなんてことは出来ないけど、も。

「アイアイマム!」

 オーダーがあるならば女王陛下の名の下に。不埒なる輩は殲滅せん……!
「洒落臭いわ!! おうお前らやっちまえ……!?」
「いやはや――刃を向けられては穏便に納められませんし、もう見過ごせませんね」
 であればと密樹者も歯向かう意志を見せるもの、だが。
 瞬間。背後より彼らを襲ったのは『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)だ。
 そう、祭司長らがコーン=トースト漫才をしていた間に彼女が気配を殺しながら回り込んでいたのだ。木々の間に隠れ、姿も見えぬ様に。さすれば逃走経路も防げよう――あれらのやりとりはあくまで注意を引くためのものだったのだ! ですよね、祭司長?
「大人しくお縄に付いて頂く事にしましょうか」
「"バレなきゃ犯罪では無い"とはよく言うけどもね、だからこそバレちまった以上は大人しく罪を認めて然るべき処罰を受けるべきだね? ああこの状況に至っても尚、逃れようってんなら……酷いよ?」
 虹の如く煌く雲が力を奪う様に密樹者達を襲う――が、更に追撃を駆けるのは瑠璃だけでなく『大空の支配者』メリッカ・ヘクセス(p3p006565)もである。蛇の如くのたうつ雷撃が彼らを呑み込み焼き尽くさん。
 バレないように犯罪を行うのは、まぁ百歩譲ってソレは良い。
 ある意味でその言葉はその通りだからだ。でなくば、完全犯罪だの未解決事件だのなんて概念は存在しない……だが、逆に言えば『バレた』なら、彼らの非は明らかという事でもあり。
「ひーひー……さ、さてっと。いや、船旅の苦労も吹っ飛ぶ感覚に身を委ねてる場合じゃないわね……いやぁホントに。名前はちゃんと覚えてもらわなくちゃ」
 しかし安心せよと、腹がよじれる感覚が落ち着いてきたイーリンは思考する。
 万が一殺してしまえば名を覚える者がいなくなってしまう――
 そう考えると『殺さない理由』はあるのだから。
 さぁ貴方達には覚えてもらおうか。この歩みを。海洋より至った、道標の一つを。
 ――では往こう。
「神がそれを望まれる!」
 跳躍、一閃。
 深緑の首都を前に、小さな……しかし見過ごす事は出来ぬ戦いが――始まろうとしていた。


「私は幻想種の魔術師、ドラマ! 警備隊では無いですが、貴方達を裁かせて頂きます!
 ――誰一人と逃しませんよ。この森で木々を傷つける事の意味を知っていただきます!」
 さて。名前を間違われた祭司長は当然怒っているが、しかしそれとは別の怒りを携えているのはドラマであった。深緑に生まれ育った民の一人としてこのような暴挙が許せるものか――
 彼女が見据えるのは特に火の魔術を使わんとしている者達である。
 あれを放たれれば木々が苦しんでしまう。で、あればやらせる訳にはいかぬと。
 周囲を保護する結界を張り巡らせながら――注意を引き付けんと前へ、前へ。
「我が名はフェルディン・レオンハート――
 今なら、ちょっと懲らしめるだけで済むよ。かかっておいで?」
「ひっひ。さてさて、火遊びをされても困りますし……さっさと片を付けましょうか!」
 次いで、フェルディンもまたドラマと同様に木々を保護する結界を展開。
 そのまま正面より彼らからの敵意を引き付けんとすれ、ば。二人の引き付けの間隙を縫うのが――エマである。
 前進、跳躍。木の幹蹴っ飛ばして三角飛び。狙うはやはり魔術師か――
「殺さず倒す、なんて器用な真似は出来ませんので……
 ああでも降伏はいつでも受け付けておりますよ。えひひ。
 ――なので、助けてほしかったら間に合わなくなる前に言ってくださいね」
 直後、一閃。掠め切る我流の暗殺剣が奴らの身を喰らわんと貪っている――
 警備隊に引き渡すのは別に死体でもいいのだ。
 そちらが『助かる』かは、どれだけ諦めが良いかに掛かっているのだとそう述べて。
「クソがぁ! 散れ、散れ! 狙われるぞ!!」
「そうはいかないよ――俺の足から逃げられると思ってるなら、甘いが過ぎる!」
「警告はしたからな。……言うてそこまで酷いことする積りは無いんだけどもね? 兎に角大人しくしろってことで。それまでの痛みは必要経費って事で――納得してもらおうか」
 であれば敵も対策してくるものだ。メリッカらの雷撃は敵のみを対象として放たれる魔術……であれば固まるは愚策と。故に散ろうとして――しかしそうそう簡単に逃したりなどはしない。
 驚異的な機動力を宿す旭日は瞬時に追いつき速度のままに一撃叩き込めば。
 メリッカは雷撃から続いて見えぬ一閃を。遠くへ逃れんとしても無駄だ――
「――樹海という言葉を知っとるか、お主ら」
 そして直後。新たな紡ぎを見せるのは――クレマァダだ。
 樹の海と書いて樹海。それは正しく大自然が紡ぐ『海』という事。
 樹もまた海と同じく生命をはぐくむものであるのだ……
「それを貴様ら易々と荒らしおって……不埒者どもめが! 覚悟は出来ておるのじゃろうな!」
 故にこそ怒りの感情が奥底より湧き出でる。
 海は汚させぬ。その喉より震わせる一つの歌を紡ぎて――彼らの精神を根底より叩きのめそう。
 深淵に眠り待つ神を言祝ぐ歌にて。
「なんだこいつら、つええぞ!!? 何者だテメェら!!」
「ああ、自己紹介が遅れたわね。私はスケさん……
 なんだけど、皆好き勝手呼んでるわよね、私のこと」
 密樹者達が明らかに動揺する――ただ密樹の現場を発見されただけであれば、発見者を叩きのめせばよいと思っていたのだ。が、しかしいざ戦闘になってみれば尋常ならざる強さだ――
「だから好きに呼べばいいわ。いずれにせよ貴方達の未来は変わらないのだから」
 そして追い打ち駆ける様にイーリンの一撃が彼方へと。
 襲来した魔力の塊が剣として全てを貫く――どこへ行こうと届くのだと言わんばかりに。
 奴らの視野を狭くさせる。動揺させ、そして精神が折れた奴から各個撃破していこう。
「エマ! そっちはどう? 縛るついでに財布も持ってっていいわよ」
「あー馬の骨さん! 私のことはお気になさら――えっ!? お財布ぶっこ抜いてイイんですか!? やったー! ほらほら皆さん早くお縄につきましょーね!! で、どこですか財布は? ここですか~?」
「や、止めろ――! 俺のなけなしの財布が――!!」
 ついでに茶目っ気も少しばかり混ぜておこうかと。倒れた密樹者にイーリンの許可を得たエマの魔の手が忍び寄る――! いやあああ身包み剥がされる――! ていうか今エマ、イーリンの事を馬の骨って言った?
 ともあれ戦闘は序盤からイレギュラーズ優勢であった。
 密樹者達は伐採道具を用いて必死の抵抗を見せるも切り抜けるには程遠い。火の魔術を使う者が真っ先に狙われ集中攻撃。逃げようとしても旭日やメリッカが警戒しているし、そこへと更にクレマァダの放つ海嘯もあらば――正に進退窮まっている。
「森を人質に――などと考えないでくださいね。こちらはいざとなれば……行いますよ?」
 そしていよいよやけっぱちになったとしても無駄だと瑠璃は言うものだ。
 いざいざ森に火を放ちその間に逃亡……などと。或いはその仕草を見せて牽制などと。
 なんならこちらが先に上手く使ってさしあげましょうか――当てぬ様にしつつ。
「まぁ、ドラマさんに怒られたくもないので必要でなければやりたくないですが」
 苦笑しつつ、瑠璃は――密樹者の首を撫ぜるような一撃を齎すものだ。
 一撃、加えて離脱。
 それで倒れればやはり縛り上げよう。彼らには彼らの犯した罪を理解してもらう為に。
「ひ、ひぃぃぃなんだお前らはあああ!!」
「鎮まれ! 静まれッ!! 此方におわす方をどなたと心得る!」
 であれば恐慌状態に陥る敵もいるものだ――
 故、その瞬間を見据えたフェルディンは速度の一撃を紡ぎつつ、言葉を投げる。
 クレマァダを中心に、その両端を固める様に布陣すれば!
「恐れ多くも先の大号令に重責担われた海洋のコン=モスカ祭司長にあらせられるぞ!」
「そう! 決してコーン=トースト祭司長じゃないわ――その魂に刻んでおきなさい!」
「もうええのじゃそのコーン=トースト説は!!!!!」
 フェルディンに続き、イーリンとクレマァダが言を並べる――
 さすれば、彼らの一喝に呑まれ完全に戦意を喪失する密樹者達。
 彼らの伐採道具が地に転がる――音がした。


「ごめんってばクレマァダ。ふふ、でも今度から偽名を使う時に良いんじゃない?」
「はっ? コーン=トースト祭司長とでも名乗れと? なんで我がそんな名を!!?」
 散々からかった……いや現在進行形のイーリンにクレマァダが抗議。ええい、こやつも海嘯に巻き込んでやればよかったか! お怒りの祭司長だが、ともあれ。
「よーし、これでとりあえず全員かな。
 こいつら担ぐのは俺の仕事でしょ。任せておいてよ」
「ええ。ですがその前に――枝を折ったら腕一本、と行きましょうか」
 ヒィ! 旭日が全員を縛り上げ、さすればドラマがにっこりとした表情のまま――彼らを脅すように。まぁ実際『そう』してもいいのだが、今回に関してはもう二度とこんなコトをする気が無いように怯えさせるに留めておこうか。
「そうなりたくなければ少し位情報を吐いてもらいましょうか。
 こんな大樹――切り倒してからどうやって運ぶ気だったのです?
 それにどこで誰と取引するつもりだったのか」
「ひ、ひぃ!! 待ってくれ、俺たちは知らねぇんだ……ただ、ラサだか鉄帝だかどっかに馬車に乗せて運べって言われてただけで……」
 故にその圧を助長させるように瑠璃が事情聴取も。
 再発防止の為の策は重要だ。官憲に突き出すのはその後でも大丈夫だろうと。
「ま、こやつらの処遇とやらは法の手で行われるべきじゃからな。後は警備隊にでも任せるとしようかの――個人的にはこの手でぶちころがしてやりたいところじゃが、通すべき筋目というものがあるわい」
 であればと。クレマァダが続いて見据える先は――真なる大樹。
 ファルカウだ。
 さて『元々の予定』の通り行くとしようか。回り道をしてしまったが、目的地はあそこだ。
 歩めば見えてくるかの国の首都――
 見渡す限りの木々。嗅覚を擽る香りは道端の綺麗な花からだろうか?
「話には聞いておったが……これは凄いのぉ! 流石は大自然の国家じゃて」
「ふふ。特に幻想種はここでは不思議な繋がりを感じる事もあるんですよ。知っていますか? ……幻想種は古い時代にファルカウから生まれ落ちた、そんな伝説がある事を」
 皆を案内するドラマ。ここは幻想種たる彼女にとって庭の様なものだ――
 そして彼女の口から紡がれるは、幻想種とファルカウの関係。
「それは伝説であるとされていますが、私は事実であると考えます」
 だって、ここはまるで母の揺り篭だ。
 幻想種にとっての安息の地。
 幻想種にとって……帰るべき場所であると魂が感じている様な気がする。
「のぅ」
 故に、クレマァダは問う。

「……のう、お主ら。この国は、好きか?」

 ドラマに。そして――皆に。
 ほんの一時なれど感じたこの国は、と……
「自然の迷宮もあるし、好きよ。少し道から逸れたところにある手付かずの遺跡なんて……っていうのは、ちょっと不純かしら。でもこの空気は好き、静かで――そう。『生きてる』って感じがするから」
 であればイーリンはこの国に見える未知に高鳴りを感じて。
 そしてそのままドラマへと視線を齎せば。
「この国が好きか、ですか? 勿論、大好きなのですよ!
 改まって理由はと問われると……少し困ってしまいますが。
 ただ……やっぱり『ああ、ここなんだな』と。説明し辛い感情が――湧き出るんです」
 この地の民と言えるドラマは少し照れくさそうに。
「そうですね、しっかり答えられるほど見識は深くありませんが……
 自然に囲まれ、共に歩む国――穏やかな雰囲気も含めて、ボクは好きですよ。
 この地にしかない……『息吹』と言いましょうか。感じ入るものがあります」
 フェルディンは感慨深そうに、天に連なる程に巨大な大樹を見据えて。
「うーん、まぁ嫌いじゃあないと言いますか、縁遠い国なんで普通ですと言いますか。あ、でも匂いは悪くないですね。衛生的とはちょっと違いますが、清廉な感じはします――偶に遊びに来るなら悪くないですね、ひひひ。財布も頂けましたし」
「財布はちょっと突発的な事態であっただけであろうが」
 エマはズボンのポケットにある、ほんの微かな膨らみに満足感を得ながら。
「んーどうだろう? 正直なところイマイチなじみが薄い地域だから……回答は差し控えさせて欲しいかな。僕としてはむしろこう、祭司長側というか。いや、祭司長並に偉いとかそういう話ではなくてさ?」
 メリッカはコホンッ、と咳を一つ。
「……うん、これを機に見聞を広めておきたいかなという気持ちはある。折角にも来たんだしね」
 そして、この広き自然の果てを見据えるものだ。
「私も同様に。まだ詳しくは知らないので好悪を論ずる域には達していないかと。法や慣習、交流の開かれ度合い、衣食住の環境など、判断基準はありますから……ああ、ただ。とりあえずは旅行者でも入れる温泉などがこの先にあれば、かなりポイント高くなりますねえ」
「温泉――たしかあった筈ですよ。ちょっと離れた所ですけれど、秘湯と呼ばれる場所が」
「おやではいきなりのポイントアップです」
 瑠璃は知り得る情報を整理し、この国の魅力を頭の中で巡らせて。
「好きと言えば好きかな。木の上を飛ぶにも下を飛ぶにも、景観的にはここまで見事な樹海はないだろうし。自然に囲まれてるのは落ち着くね。ただ……歯切れが悪いのは、波の音のほうが落ち着いちゃうからかな。はは、やっぱり海の生まれには海が一番――なのかもね」
「成程。確かに……海の者には海の者の感性があろうな」
 そして海洋に縁ある旭日は樹海を認めつつも――海に恋しき念を一つ。
 皆が皆感じ入るものがあるものだ。
 この地に。普段とは知らぬ地に。己が未知に。己が既知に。
 ――やはり知らねばならぬ。もっともっと己が知覚の更に先を。
「ドラマ。どこかに図書館などはあるかの? 書物の類に触れてみたく思うが……」
「なるほど――お任せください。それでしたら絶好の場所がありますので!」
 故に、往こう。
 自らの知見を増やすべく。木々と共にあるのならば……紙。植物と共にある文化であるソレに触れればもっと増やせるかもしれぬと思考をするものだ。海の傍では羊皮やらの方がもちが良いものだが、海ではないこの国ならではに――
 歩みを進めていく。
 日向の微睡のような波打ち際とも、すべてが静止する海の底ともまた違った。
 永い時を感じる場所へと。

 翠露への道筋を。一歩一歩――歩みながら。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 混沌の世相。まずは深緑の道より……
 物語の一端と成れれば幸いです。

 リクエストありがとうございました!

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