PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<神異>ああ、偉大な母よここに来たりて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●虚構進撃
 R.O.Oのバージョンが3.0へと到達した。
 仮想世界の敵の攻撃は激しさを増し、練達のシステムを維持するマザーも甚大なダメージを受ける。
 その結果、練達国内のシステム維持力は低下の一途をたどり、あちこちでライフラインの断線や、ネットワークの不調など、あらゆる障害が街を包んでいる。
 ……それは、再現性都市も例外ではない。再現性東京2010街、希望ヶ浜。此処でも練達のシステム障害の影響は大きく、さらにR.O.Oに囚われた佐伯研究室の行方不明者たちも、その全てが帰還はしていないのだ。
 ――結果、人々の不安は加速する。そしてその不安に付け込む容易に、夜妖は脈動を続けていた……。

 希望ヶ浜学園、大体育館。此処には非戦闘員である教師、生徒、そして近隣の住民が避難していた。
 理由は、『大規模インフラ災害による一時的な避難』……であったが、当然のごとく、今希望ヶ浜を蝕んでいる『神異』から彼らを守るためのことであるのは、事情を知るものにとっては明白であった。
「……どうしてR.O.Oのことが、現実にも影響してるの……?」
 希望ヶ浜学園の、事情を知る女子生徒が言う。体育館内で避難者を世話するボランティアとしての役割を持っている一部の生徒は、こうして体育館内の様子を見ながら、外に輝く異形の月にため息をつく。
「分からないよ……怪異ってやつはほんとうに予想外だ。うまい事、ローレットの人達が解決してくれればいいけど。
 ……そう言えば、クロエ先生、校舎の方に誰か残ってないか見に行くとか言ってたけど、遅いな……」
 男子生徒がそう言った瞬間、体育館の何処かから悲鳴が上がった。慌てて其方へと言ってみれば、体育館の窓を指さし、一般人の女性が恐怖の表情を見せていた。
「い、今、そこに誰かが」
「人がいたんですか?」
 男子生徒が声をあげる。窓を開けずに、外を覗く……夜闇に包まれた校庭の景色は良くは見えない。
「分かりました、ちょっと外を見てみます。皆さんは、中で待機していてください。もし不審者でしたら大変ですから、外は除かないで。カーテン、かけておきますね」
 女子生徒がそう言って、窓にカーテンを駆ける。それから玄関に通じる扉を開けると、嘆息した。
「……逃げ遅れた人かな?」
「だったら入り口から入って来るでしょ? たぶん、夜妖。でも、体育館は今も結界を維持してるから、上級の夜妖でもなければ、入っては来れないはず」
 そう言って、鍵の描けられていなかった入り口の扉を開ける。秋の夜の涼しい風が身体を滑る。二人は懐中電灯を照らしながら、外を歩いた――途端、校舎がぐらり、と揺れた。
「地震……?」
 そう言って校舎を照らしてみるも、異変は感じられない……いや、違う。異変は、目の前で起きていた。
「……!?」
 女子生徒が、声にならぬ悲鳴をあげる。
 闇が、蠢いていた。無数の闇が、隆起し、形を作り、うねうねと踊り、そして人の形をとる。
「天啓です」
 と、影が言う。その影からまた影が生まれる。影から影が生まれ、影から影が生まれ、気づけば無数の陰が――いや、『くろいかおをしたひと』たちが、体育館を埋め尽くすように、うまれ出でていた。
「母です。母です。母です。母の呼び声。母はいます。母が来ます。この地に呼ぶのです」
「これ、前にローレットの人達が遭遇したって言う……!?」
「異界の住民だ! なんでこんな所に!?」
 ずず、とくろいかおをしたひとが蠢いた。その手に影をまとわりつかせ、振るうと体育館の外壁を殴りつける。
「母を呼びましょう。母を呼びましょう。貴方も手伝って。この地に母を。はは、はは、ははははははあ」
 奇妙なのは、その姿だけではなかった。彼らが知る報告によれば、このくろいかおをしたひとたちの言葉は全くの意味不明なものであり、内容を理解することなどは出来なかったはずだ。
 だが、今は、何となくだが、意思を理解できる。理解できるという事は、この場が、怪異に、異常に、近づいているという事だった。
「……まずい、体育館ごと、異界に取り込まれるかもしれない……!」
 男子生徒が声をあげると、女子生徒ととともに体育館に逃げ込んだ。
「aPhoneは……通じないかもしれない! 通信室の電話で、カフェ・ローレットに連絡を! 僕たちだけじゃ、これ全部には対処できない……!」
「わかった! 電話してくる!」
 女子生徒が声をあげ、通信室へと駆けこんでいく。男子生徒は頭を抱えながら、
「……結界も、いつまで持つかわからない……内部になだれ込まれたら、終わりだ……!」
 悔しげにうめきつつ、ローレットのイレギュラーズ達の増援を、待つことしかできなかった。

●くろいやみのむれ
 ローレットのイレギュラーズ達が現場に到着した時、体育館はすでに多くの『くろいかおをしたひと』達に飲み込まれつつあった。
 かろうじて内部に侵入されていないのは、設置されているという結界のおかげだろう。
 くろいかおをしたひと達が体育館の外壁に触れるたびに、明滅する光がそれを圧し返す。だが、その光は徐々に弱まっていて、このままでは結界の消滅は時間の問題に思える。
 もはや時間は無い! 今すぐ、このくろいかおをしたひと達の群れを撃滅しなければならない!
 イレギュラーズ達は意を決し、武器を取った。この窮地を、突破するために!

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 神異の事件。此方は現実の希望ヶ浜での事件になります。

●成功条件
 『くろいかおをしたひと』の撃退

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●Danger!(狂気)
 当シナリオには『見てはいけないものを見たときに狂気に陥る』や『反転に類似する判定』の可能性が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●侵食度<神異>
 <神異>の冠題を有するシナリオ全てとの結果連動になります。シナリオを成功することで侵食を遅らせることができますが失敗することで大幅に侵食度を上昇させます。


●状況
 R.O.Oの事件に端を発した、一連の事件。それは、真性怪異による、現実と虚構の同時侵蝕の結果でした。
 そんななか、希望ヶ浜学園の体育館に避難していた、生徒たちや付近の一般住民たち。この危機に身を震わせ解決を舞っていた所ですが、そこへ『くろいかおをしたひと』と言う怪異が出現。体育館を襲撃し始めました。
 このままでは、体育館ごと異界へと引きずり込まれ……予想のつかない事態に発展する恐れがあります。
 皆さんは、現場に到着したイレギュラーズとして、この『くろいかおをしたひと』達を撃破。体育館の安全を守ってください。
 作戦決行タイミングは夜。体育館の周囲は明るく、視界の確保は出来るものとします。

●エネミーデータ
 くろいかおをしたひと ×20
  くろいかおをしたひと、の名の通り、顔が黒く、闇で覆われたような外見をした人型の怪異です。
  意味不明な言葉を口走りながら異界に存在していましたが、昨今の異常に乗じ、現世へと現出した様です。
  体育館を異界へと引きずり込み、何かをたくらんでいるようですが……。
  基本的に、神秘属性の攻撃を行います。『窒息系列』を付与する攻撃や、『Mアタック』を持つ攻撃などを行います。
  能力値は低めに設定されていますが、数は多いです。孤立して袋叩きにされないように気をつけましょう。

 おかあさん
  さいしょはいません。呼ぶべきではありません。

●重要な備考
 <神異>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
 <神異>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
(達成度はR.O.Oと現実で共有されます)

 又、『R.O.O側の<神異>』ではMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。

 『R.O.O側の<神異>』で、MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 但し、<神異>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <神異>ああ、偉大な母よここに来たりて完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月02日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
白薊 小夜(p3p006668)
盲御前
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)
誰かの為の墓守
オライオン(p3p009186)
元神父
すみれ(p3p009752)
しろきはなよめ
杜里 ちぐさ(p3p010035)
少年猫又

リプレイ

●黒の契縁
「おかあさん、お母さんを呼びましょう」
「一緒に、一緒に行きましょう、さあ」
 黒い顔をした怪異たちが、体育館に殺到する。怪異が手を振るえば、影のような黒い、大きな何かが体育館に向って振り下ろされる。光が明滅し、ばちばちと火花を散らした。結界があるのだ。だが、怪異はそれを引きはがすように、なんども、なんども、攻撃を加える。
 怪異が体育館を攻撃するたびに、内部から悲鳴が上がる。事態を理解しているものは、敵の攻撃に。そうでないものは、突如体育館を震わせる『自然現象』に怯えているのだ。
「け、結界もあまり持たない……このままだと不味いな」
 男子生徒がそう呟く。
「ローレットの人に連絡はついたから、すぐに助けは来るはずだけど」
 女子生徒が言う。練達の異変により、多くのライフラインが異常をきたしていたが、有線電話の一部は繋がっていたらしい。少し前にカフェ・ローレットへ連絡がつき、すぐにローレット・イレギュラーズたちが向かうと連絡を受けていた……。

 一方、そんな状況の中、ローレット・イレギュラーズたちは希望ヶ浜学園の体育館前へと到着していた。
「……確かに。何か異様な気配を感じるわね」
 『盲御前』白薊 小夜(p3p006668)が言う。体育館に群がる、異常な何かの気配。それを小夜の敏感な感覚が察していた。
「情報によると、くろいかおをしている、とか。本当に黒い顔なの?」
「うん、見たまんまにゃ」
 『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)が、警戒するように尻尾を逆立てながら言う。
 怪異たちは人型をしていたが、特に顔の部分は黒い何かに塗りつぶされた様に真っ黒な顔をしている。表情も、感情も、まったく理解できないが、しかし怪異たちが言葉を発していることだけは理解できた。
「お母さんを呼ぶとか言ってるにゃ……わけわかんないにゃ」
「母……練達のマザー、いや世間を騒がす『神異』のことでしょうか」
 『しろきはなよめ』すみれ(p3p009752)が小首をかしげる。母、と言うワードにはいくつかの心当たりがある。が、怪異たちの言う母が、それに対応しているのかどうか、それを確かめるすべはなく、いや、『確かめない方がいい』だろう。
「そうであってもそうでなくても、呼ぶべきではない存在なのは確かです。
 未来を育む子どもたちの学び舎を、大人が護ってあげなくてはなりませんね」
「ああ、アンタの言う通りだ」
 『誰かの為の墓守』グリム・クロウ・ルインズ(p3p008578)が頷いた。
「ただ前だけ見ていればいい……これは理解しない方がいい案件だろうな。
 怪異との闘いにはよくある奴だ。気にせず、消してしまえばそれでいい」
 グリムの言う通りだろう。恐らく、敵のことなどを理解していては、倒すものも倒せない。それどころか、要らぬ精神的なダメージを受けかねない。
「……お客様ですか」
 ぐりん、と怪異が奇妙な動きで、その顔をこちらに向けた。ぐりん、ぐりん、ぐりん、と、怪異たちが次々とその顔をこちらに向ける。ある種統率された動き。それがあまりにも気持ちの悪いように見えた。ちぐさがたまらず、ふーっ、と威嚇する。
「にゃ、なんにゃ!?」
「どうやらこっちを敵と認識したようじゃのう?」
 『焔雀護』アカツキ・アマギ(p3p008034)が、にぃ、と笑った。そのまま構えると、両手の刻印が赤と青の輝きを放つ。夜闇に輝く2色の光!
「で、あれば都合がよい。此方に攻撃を裂いておる限り、結界は無事じゃ。
 奴らの狙いが結界の破壊であるならば、畢竟、妾たちが負けぬ限り、シンプルに奴らの目的を阻めるとうものじゃ」
 アカツキが不敵な笑みを浮かべる。そう、そうなればシンプルだ。防衛戦から殲滅戦に移行できる。
「そうね。あの子達の企みが分からない以上、こちらを狙ってくれるなら、とてもやりやすいわ」
 『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は、にっこりと笑いながら、その人形の瞳を怪異へと向ける。その眼にうつる、黒い顔の怪異たち。白のヴァイスと相反するような色。
「その分、絶対に負けられなくなったわね?
 ふふ、元々負けたりするつもりはなかったのですけれど。
 あなた達が何をしたいのかよくわからないけれど、おかあさま? は呼び出させないわ」
「何故あなた方は邪魔をするのですか。おかあさんが来れば、幸せです」
「訳の分からないことを言うな」
 怪異の言葉に、『元神父』オライオン(p3p009186)は冷たく言い放った。
「電脳を通して現実に影響を与える、か……この世界も複雑怪奇な事が多い。
 まぁいい、怪異には怪異。灰の獣の力存分に振るわせてもらおうか」
 その傍に侍る、ネメルシアス。オライオンの有翼獅子が、ぐるる、と唸る。
「邪魔をするのは、だめですいけません」
『だめですいけません』
『だめですいけません』
 怪異が、一斉に、ごうごうと言葉を紡ぐ。頭が痛くなるような感覚。神経をすり減らされるような声。怪異の声が、世界を汚染するように感じる。
「……このような怪異が現実に現出するとは。徐々に、侵蝕の規模が大きくなってきていますね……」
 『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)が、静かに構えた。続くように、仲間達も武器を構える。もはや、戦いは避けられない……いや、元より避ける気などは無い。この怪異を撃ち滅ぼし、この地に平穏を齎すのが、イレギュラーズたちのなすべき任務だ!
「ですが、怪異の好きにさせる訳にはまいりません。
 私達には守るべき人達がいるのですから……。
 必ずや守り通してみせましょう」
 沙月の想いは、仲間達も同じくするところだ。イレギュラーズ達は意を決すると、怪異に向けて走り出した! 迎え撃つように、怪異たちはぞわぞわとした気配を醸し出しながら、その手を陰へと変えて、通せんぼをするように襲い掛かってきた――!

●黒の衝突
 体育館内では、明滅する明かりと、振動、そして何か激しい音が外から聞こえてきて、内部の一般市民たちが不安の声を悲鳴をあげていた。
「だ、大丈夫です! 外で設備が故障してまして、電気と揺れはその影響、音は工事の音ですから!」
 生徒たちが声をあげて、必死に市民たちを落ち着かせる。が、生徒たちは、外で何が行われているのかを知っている。市民達の命を守るために、八人の勇者たちが、いま恐るべき怪異と戦っているのだ。
「……どうか、ご無事で……!」
 カーテン越しに外を見ながら、女子生徒が呟く。それは、イレギュラーズ達の耳には届かなかったかもしれないが、確かな、守るべきもの達からのエールであった。

 外では、まさにイレギュラーズ達と怪異たちとの壮絶な死闘が繰り広げられていた。
「びりびり痺れるにゃ!」
 誰よりも早く動いたのはちぐさだ。突き出した指、そこから放たれる一条の雷が怪異を貫き、その身体に電撃をほとばしらせる。
「お、お、お」
 感電したかのように呻く怪異だが、しかしその表情からは――当然ながら――ダメージのほどはうかがえない。
「うう。気持ち悪いにゃ。顔が見えないって、こんなに嫌な事なのかにゃ?」
 ぶるぶると身を震わせるちぐさ。表情視えぬ相手との闘いは、確かに気持ちの悪いものだろう。何か得体のしれないものと戦っているのだという事を、如実に理解させられてしまう。
「でも、斬れば失せるわ。それだけは真実よ」
 続いて飛び込むのは、白薊 小夜である。小夜は白杖から仕込み刀を抜き放つと、その言葉通りに怪異を切りつけた。ダメージに耐え切れなかった怪異が、水風船を破裂させるみたいに、ぱぁん、とはじけて、黒い何かを辺りに飛び散らせる。流血のようにも見えたそれは、小夜の服を汚す前に、空気に触れて消えた。
「さて、隅から隅までずずずいっと希い上げ奉ります」
 誘うように舞う。それはさながら怪異の夜に咲いた一輪の花か。小夜は敵を引き付けつつ、夜闇に刃の閃光をほとばしらせる。
 一方、敵を誘うは可憐な花だけではない。
「そっちは生者の領域だ。お前達が向くべきは死に近しい俺の方だ」
 死に近しいもの、いうなれば死の黒き花……グリムの放つ死霊が、怪異の精神をかき乱し、己の敵をグリムへと見定めさせる。
「邪魔をなさるのですか?」
「あなたは何故、おかあさんを?」
 口々に意味の分からぬ言葉を吐きながら、グリムに向って闇を振るう怪異たち! 振るわれた影の腕が、グリムの身体を突き抜けた瞬間、その胸の内委にざわざわとした何かが奔り、同時にひどい精神的な疲労がグリムを襲う。
「なるほど……ローレットの資料によれば、『窒息』や『Mアタック』に分類される攻撃か……」
 グリムが、自身の身体を蝕む虚脱感をそう評する。
「大丈夫かの?」
 アカツキが尋ねるのへ、グリムはゆっくりと頷いた。
「問題ない。攻撃を頼む」
「かしこまりじゃ! さぁて、沙月! 汝もついてくるが良い!」
 アカツキが駆けだすのへ、傍にいた沙月が頷き、
「ええ、構いませんよ。このような怪異、疾く現実よりご退城願いましょう」
 アカツキに続く。アカツキは跳躍、その両手を振るうと、赤い光が撃ち放たれた。空中に輝く赤い光、それが舞い散る焔のように大地に降り注ぎ、怪異たちを次々と炎に飲み込んでいく!
「はーっはっはっはっ! 再現性東京では久しぶりの妾の炎、たっぷりと味わうがよいわ!!
 正直気味が悪い相手じゃが……燃やせば燃えるみたいなのでオッケーじゃな!」
 言葉通り、怪異と言えど、アカツキの焔には耐えられまい! 怪異のうち数体が、ばちん、と炎の熱にはじけて消滅する! 残る敵はその身体を炎に焦がしながらも、しかし平然と――表情は視えないのだが――反撃! 陰の手が、アカツキの身体をずぶり、と貫いた。それは、精神的なダメージである。
「うう、気色悪いっ!」
「お任せください」
 沙月は反撃に転じた怪異に接敵する。敵には突然、沙月に距離を詰められたように見えただろう。距離感を見失わせる、沙月の眩惑の所作。そこから放たれる一撃が、怪異の腹を打ち叩く!
「確かに……打てば響く。怪異と言えど、滅せない事はありません」
 鮮血の代わりに、黒い何かが吹き出す。同時、ぱぁんとはじけて怪異が消える。
「お見事」
 くるり、と飛び込んできた小夜がそう言う。小夜はそう言いながらも、手近にいた怪異の首と胴体を泣き別れにして見せた。
「そちらこそ」
 沙月がくすりと笑った。闇夜に立つ、二人の和装の麗人。二つの花が、今この時、怪異の中にて咲き乱れ、アカツキの焔とグリムの死霊を背に、華やかに己が武を見せつけていた。
「皆々様ご足労ありがとうございます、……では僭越ながら舞をひとさし」
 怪異のただ中で、小夜は静かに笑む――。

●おかあさん、おかあさん
 体育館の中では今も不安は渦巻いていたが、少しずつ、何か『恐ろしい気配』のようなものが減っているのを、一般人たちも気づいていた。
 当然、希望ヶ浜学園の生徒たち……夜妖と戦うために教育されている彼らも、その気配には感づいている。落ち着く一般人たちを見ながら、しかしどこか不安をぬぐえないのは、生徒たちに共通するところであった。
「多分、敵の夜妖は減ってる……でも、なにか、強烈な不安がぬぐえないんだ」
 男子生徒の言葉に、女子生徒は頷く。
「そうだね……おかあさんがきてるみたいだし……」
 その言葉に、男子生徒は首をかしげた。
「なんだって?」
 しかし、女子生徒は目を丸くして、
「え? 私、今何か言った?」
 と答えるのみだ。
 侵蝕は、続いている……イレギュラーズ達の戦いも、まだまだ気を抜くことはできない。
 グリムと小夜、そして沙月を最前線に布陣し、イレギュラーズ達は敵の布陣の突破を試みる。実際、三人は良く敵を引き付け、そしてアカツキのように広範囲による攻撃が、着実に敵を減らしてる。
「さて、希望ヶ浜学園の生徒たちがいるならば、これもまた良い学びの機会」
 カーテンをわずかに開けて覗く学生の視線を感じながら、すみれは夜の闇を優雅に舞う。その手には何もあらず、しかし結界と守護の力は確かに存在している。その手が仄かに燐光を放つたびに、黒のキューブは怪異を飲み込み、その内に閉じ込めて消滅させた。
 ゆらり、ゆらり、とすみれが舞う。ふわり、ふわりと怪異は消える。
「さて、くろいかお。最初は些か不気味でしたが――今となってはそれもよいですね。
 苦しむ様子が見えないのなら、躊躇も慈悲もなく殺せるというもの」
 すみれが舞う。その一方で、ヴァイスもまた、闇の中にその白のドレスを翻し、踊る様に武技を見せつけていた。
「おお、おお、おかあさん、おかあさんがちかく――」
 怪異が言葉を紡ぐのへ、ヴァイスは顔をしかめた。
「……何がしたいのか、問わない方がよさそうかしら?
 こう言うのってわかっちゃいけない、って言うパターンがあるわよね?」
「ええ、ええ。知らぬ方が良い事も」
 すみれが言うのへ、ヴァイスは頷く。
「そうね、そうだわ! 今はとにかく、この子達にはお帰り願う事を優先しましょ!」
 ヴァイスがその手を掲げる。途端、周囲の自然……此処は学校であったから、周囲に植えられたイチョウの木や常緑樹たちが力を貸してくれた。緑の旋風がヴァイスの身体を通して発露し、怪異たちをなぎ倒す。
「お見事」
 オライオンが言うのへ、ヴァイスは少しだけ痛みに顔をしかめつつ、微笑んだ。
「少し無理のある攻撃だけれど、今こそが無理をすべきところだわ」
「同感だ。叩くぞ」
 オライオンが放つ裁きの光が、怪異たちを薙ぎ払う。聖光は怪異をたちを浄化するようにその身体を焼き、ずずず、と煙を噴き上げた。
「ああ、ひどい、ひどい」
 怪異たちが悲鳴をあげる。怒りをぶつけるように薙ぎ払われた巨大な影の手を、オライオンは、
「駆けろ、ネメルシアス」
 有翼の獅子に騎乗し、跳躍して回避する。
「このままのペースで行けば……」
 そう、オライオンが言った刹那。何か恐ろしい存在が、こちらを覗いていることに気が付いた!
「う……にゃ!?」
 ちぐさが悲鳴をあげる。その全身が総毛だつような感覚――!
「……どこですか? いったいどこから……?」
 流石のすみれも些かの焦りを見せながら、声をあげる。何処かは、わからない。だが、確かに、何かが見ている。
「おかあさん」
 怪異が言った。
「みてくださっています」
 ぞわり、と。
 すさまじいまでの恐怖が、イレギュラーズ達の全身を駆け巡った。
「だ、だめよ」
 ヴァイスが言った。
「こんな人を呼んでは、だめ!」
 それは、イレギュラーズ達の総意であった。
「結界は!?」
 アカツキが叫ぶのへ、グリムが頷いた。
「まだ持つ……早く、残りの連中を!」
 その叫びに、小夜と沙月が飛び出す。
「ここよりは、ただ斬る――」
「夢幻に消えなさい」
 小夜と沙月。刃と徒手。二人の武器が、怪異を打ち払う。残り、2体。うち振るわれる影の手。イレギュラーズの精神をそぐその一撃が、イレギュラーズ達の心の疲労を加速させ、それが『おかあさんの視線』をひどく強く感じさせる結果となる。
「全く、とんでもない化け物じゃ!
 ほれ、ちぐさ! とにかく撃つのじゃ!」
「わ、わかったにゃ!」
 アカツキとちぐさ、二人の放つ炎と雷が、残る二体の怪異を貫いた。焔に、雷に焼かれた怪異が、
「い、い、い、いぃ」
 雄たけびをあげながら突貫。陰の手が、二人を薙ぎ払う。
「うわぁっ!?」
「ちぃっ! いかん、止めるのじゃ!」
 悲鳴をあげつつ態勢を整えるちぐさ、そしてアカツキ。その言葉に応じたのは、グリムだ。グリムは残るうちの一体を足止めし、その動きをその身をもって止めて見せる。
「トドメを頼む」
「了解だ」
 グリムの言葉に、オライオンが頷いた。オライオンの聖光が降り注ぎ、怪異を浄化! 残り一! おかあさんがその視線を間近に! ああ、傍にいる――。
「ここまでよ! おかあさんなんて、呼ばせないわ!」
 ヴァイスが叫び、再度の緑の暴風を打ち放つ! わずかに逆らうように足を止めた怪異は、しかし耐え切れずに吹き飛ばされた。ぼう、と空に飛ばされたそれを、すみれのキューブが捕まえた。
「仕舞です」
 ぐっ、とすみれがその手を握る。キューブが怪異を飲み込んだ。
「おかあさん。ごめんな」
 そう怪異が呟いた瞬間、ばん、と怪異がはじけて消えた。同時、あの恐ろしい気配は雲散霧消し、ただ静かな学園の夜の空気だけが、辺りにあった。
「……終わったのね?」
 ヴァイスが呟く。
「ええ、おそらくは……」
 沙月がそう呟いた。
 冷や汗が、イレギュラーズ達の肌を濡らした。それは、敵の攻撃を受けたことによる精神の疲労、だけではなかった。
 長く異界と接点を持ったが故に感じた、おかあさんなる怪異の気配。
 それが、長らく怪異と接続したが故の悪影響なのだろう。
「……だが、あれの降臨は防げた」
 オライオンが言う。それだけは、確実だ。もう、この地に危険は無いだろう。
「とにかく、体育館の方に、状況を伝えにいきましょう」
 小夜の言葉に、仲間達は頷いた。
「そうだにゃ。みんな不安に思ってるはずにゃ」
 ちぐさがいう。
 果たしてイレギュラーズ達は、体育館の中へと向かう。
 そこには、安堵の表情で皆を迎える、学園の生徒たちの姿があった。

成否

成功

MVP

アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護

状態異常

なし

あとがき

 おかあさんはおかえりです。
 よかったですね。

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