PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Noize>Alert Alert…

完了

参加者 : 8 人

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オープニング


 練達の灯りは実に均一だ。
 蝋燭の焔に頼る事なく、かの地は電を我が物とし。
 夜でも輝く地上を作り出した。
 ――しかしそれらは練達のあらゆるを統制しているマザーがあってこそである。
 彼女に異変あらばそれは文字通り『あらゆる』に影響するという事であり……そして先日。マザーは『とある存在』――仔細は割愛するが――にウイルスが如き一撃を放たれ、ダメージを負ってしまったのだ。練達の中枢を担う存在が攻撃を受けるという最悪の事態……
「くそ――どうなってるんだ。メイン電力が停止しているなんて……」
「なんてこった……折角家で酒飲んで寝ようと思ってたのによ……」
 そしてそれは此処、練達の一区画の電力を担っている発電施設でも影響が出始めていた。
 今の今まで周辺地域の電力を生み出し、快適なる生活を生み出していた……のだが、施設が停止状態に陥ればその限りではない。単純に言ってライフラインに影響が出始めており、職員数名がなんとか元通りに動かぬかと点検に来た所である。
 そればかりか――外は大雨。
 この気象の荒さもまた、マザーの不調にともなう天候制御システムの異常とされている。自宅に閉じこもる者も多い中、電力の復旧は速やかに行われなければいけないだろう……
 まぁ、如何にマザーの制御下に置かれていたが故とはいえ、操作すれば自力運転は十分可能だ。
 電力が落ちた、暗き廊下を懐中電灯で照らしながら進みて制御室へと向かう――
 が。
『――お戻りください。
 警告します、侵入者に対しては緊急暴力が許可されています。至急お戻りください』
 その眼前に現れたのは――ロボットだ。
 警備用の巡回ロボット。人の様な姿をし、警備員の服装に身を包んでいるその個体は、本来であればこの施設を守護する正しき存在であった……が。マザーの不調に伴い、彼らの思考回路にも変質が見られていた。
 つまり故障だ。本来侵入者と職員を区別して判断する筈が、その機能が失われている。
 誰も彼もこの施設に入り込む愚か者たち。
 ――排除せねばならない。手に持つ電磁警棒がスタンガンの様に電流を放っており。
「ま、まて! 職員証なら此処に……」
『お戻りください。
 警告します、侵入者に対しては緊急暴力が許可されています。至急お戻りください』
「なんだ……?! おい待て、戻る! 戻るからその警棒を収め――」
 直後、警棒が振り下ろされる。
 制止も聞かず、逃げんとしてもその背を追って。
『お戻りください。警告します、侵入者に対しては緊急暴力が許可されています。
 至急お戻りください。警告が聞き入られない場合は緊急暴力が許可されています。
 ――通報します。周辺個体に通達。侵入者の排除を行ってください』
 更に周辺の、同一個体へと連絡を飛ばす。
 警告通りに戻っても関係ない。職員であるか、侵入者であるかも関係ない。
 ただ彼らは『侵入者を排除せよ――』という目的だけに動いている。
 目についた者に暴力を振るう、それだけの存在になっている……


「やれやれ……R.O.Oで騒がしい昨今だけど。
 どうやら虚構世界の事情だけ――という訳じゃなくなってきたみたいだね」
 言うはギルオス・ホリス(p3n000044)だ。
 練達は国家事業とも言えるR.O.Oのプロジェクトに力を割いている――が。どうにもこうにもそのR.O.Oの影響がマザーに及び、そしてそこから現実の練達でも異常事態が多発している……
 R.O.O内部ではログアウト不能になった者も出ているのだとか。しかし虚構の世界も現実の世界も放ってはおけない――そういう訳で現実側のイレギュラーズ達には、練達各地で起こっている事態の解決に向けた依頼が出されたのだ。
「聞いた人もいるかもしれないけれど、皆には電力発電施設に近付こうとする人物を無差別に迎撃してるロボットたちの排除を行ってほしいんだ。そうすれば職員が中に入れるらしいからね」
「数はどれぐらいいるんだ?」
「動き回っているのが十体。だけど、待機状態にあるロボットもいるらしい――まだ眠ってるロボットって言う所かな。侵入者を発見したりして警告が出されると目覚める個体がいるって事さ」
 場合によっては援軍もいる、という事か。
 しかし眠っている様な個体で、警告が出されて初めて起動するという事は……上手く待機状態のロボットを先に発見できれば奇襲気味に先制攻撃する事も可能かもしれない。或いはわざと起動させた上で引き付け、纏めて倒すという手法もあるだろうか――?
「やり方は任せるけれど、ただ依頼人からの条件でね。
 重要な部屋などの破損は可能な限り避けてほしいらしい」
 万が一、施設が破損し電力の供給が不能になってしまえば元も子もないからだ。
 壊しても大丈夫そうな一般的な通路や、休憩室といった部屋でならば派手に暴れても大丈夫だろうか――? まぁとにかく制御室っぽい部屋や、機械が沢山ある様な部屋ではあまり暴れなければ大丈夫ではあろう。
 さて。現の世界でも困った事態が発生している昨今。
 如何にしてロボットらを制したものか――作戦を練るとしようか。

GMコメント

●依頼達成条件
 暴走ロボットの全撃破。
(並びに、なるべく施設そのものには被害を出さない事)

●フィールド
 練達に存在する電力発電施設の一つです。
 周辺の地域に電力を提供していた……そうなのですが、マザーの不調に伴ってこの施設機能がダウンしてしまっているそうです。内部では警備用のロボットが暴走しており、点検もままならいのだとか。

 時刻は昼ですが、外は大雨です。
 施設内も電力が落ちており、非常に薄暗い状況と言えるでしょう。

 施設内でロボット達は常に通路を巡回し、時折各所の部屋に入って中のチェックもしている様です。待機状態にあるロボット達は、二か所の待機部屋に纏まって休眠状態にあるのだとか。
 重要そうな機材などは詰まっている部屋で戦闘などを行うと、被害が部屋に出るかもしれませんのでご注意ください。

●敵戦力
・暴走ロボット×10
 元々は施設の警備ロボットだったそうですが……侵入者と職員を区別する能力などが完全に失われている様で、無差別に攻撃を仕掛けてきます。電磁を纏った警棒を装備しており、この一撃は【痺れ系列】のBSと、稀に【麻痺】のBSを付与する事があります。

 また、侵入者を発見すると1ターン後に『侵入者アリ』というアラートを出す様です。
 これは近くに存在するロボットに援軍を要請する様なもので、一定範囲内のロボットが現場に駆けつけてきます。この範囲に待機部屋があると、待機部屋に存在するロボットも一斉に起動します。

・暴走ロボット(待機状態)×??
 基本的には上述の暴走ロボットと性能は変わりません。
 が、シナリオ開始時は二か所ある待機部屋にて休眠状態にあり、アラートを検知するか、攻撃を受けるまで一切行動する事はありません。また、アラート検知による起動だと即座に起動しますが、攻撃を受けた衝撃による起動だと3ターン程、戦闘準備に時間が掛かってしまうようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Noize>Alert Alert…完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女

リプレイ


 練達の叡智が牙を剥く。
 『ソレら』に守られていた者らにとってこれほど恐ろしい事はあるまい――
「警備の為の存在が、無差別に牙を剥くというのは……なんとも厄介な話だ。マザーの不調はどうやら想像以上に広範囲に渡っているようだな――電力生産の設備とはいえ、このような地域にまで異変があるとは」
 やれやれと言葉を零すように『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)は周囲を窺う。全てを統括しうる存在に異常が発生した時、同時に全ても『風邪』を引くという訳だ……一刻も早く対処するとしよう。
 故に頭の中へと地図を叩き込む。
 幸いにして職員達がおかしくなってしまった訳ではないのだ。依頼主から協力を貰えれば、今回はそのような事も可能――隠れられる場所はあるか、行きたい場所があれば最短の道筋はどこか。己が『書架』に刻みつつ進んでいれ、ば。
「つってもまさかゲームだと思ってたもんが現実にまで影響を出してくるとは……練達のお上様も予想してなかったんでしょうっスね」
「ここだけじゃなくてあちこちでも、似たような事が起こってるらしいんだよね……
 急いで解決していかなきゃ、取り返しがつかなくなっちゃうかも……!!」
 直後。自らの気配を消す様に移動し続けるのは『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)と『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)である。皆の視界確保の為に、焔は己が武器の先端に微かな灯りを宿して慎重に進む。
 同時に葵の脳裏に浮かぶのは――発端となったR.O.Oの事。
 かのゲームより出でたウイルスがマザーに浸食し、不調を。そして練達を統括するマザーの不調が練達全域に広がって……施設のダウン所か警備ロボットですらあのザマに。
 今はまだ各所で異常が見られる地域もあるという程度だが。
 そういった小さな火をも潰していかねば――いずれ大火となるやもしれぬ。
「……うっし、ひとまず目先の問題から解決してくっスか」
 ともあれ根底にあるR.O.Oの事はひとまず捨て置き、目前の現実に取り組むとしようか。
 軽く頬を叩いて集中するように。再度葵は前を見据えて――歩を進めて。
「クリア……だわね、扉の向こうは大丈夫。こっちには何もいないだわよ」
「まーったく。ロボットっても出来が良いんだか、それともポンコツなんだか」
 同時。『嫉妬の後遺症』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)が壁の先を見据える目にて敵がいないか探り『律の風』ゼファー(p3p007625)は足音を殺して気取られぬ様に注意する――
 見つかれば戦闘も止む無しだが、ロボット達を効率よく倒すためにはまず『待機部屋』の捜索こそが先決であるから。しかし、ロボットと聞けば……自己思考する人間と違って裏切らなさそうだから便利だとゼファーは思っていたのだが……全く、このような事態なるとは。
「ま、何事にも絶対なんて言えば――そうなのかもしれないけどね。ちょっとばかし期待外れだわ」
「なにはともあれライフラインの復旧も急務だろうからね~早々に片を付けていかないと、ねぇ」
「そうだね、一つ一つ確実に……照明が落ちてるし暗いから気を付けないとだけど」
 ゼファーの吐息。続いて言葉を口にしたのは『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)と『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)だ。ここを奪還せねば周囲のライフラインは閉ざされたまま……ロボットらの是非はともかく、まずは目前の事態を、と。
 故に。美味なるメロンパンをもぐもぐとオニキスが口に咥えていれば、暗きを見通す力を宿すものだ。決してどこまでも見通せる程強い効果ではないが、しかし少しでも視界を確保できるか否かは今後にも繋がってくる。
 そしてラムダも暗視の力と優れた五感を用いて――周囲を機敏に警戒。
 敵の接近を事前に察知し、可能であれば回避しよう。
 さすればイレギュラーズらの多くの探知能力が功を奏したか――敵の気配を発見されるよりも早く気付く事が出来るものだ。
 迂回し、やり過ごす。そうして目指すはやはり『待機部屋』であれ、ば。
「よし――ここではないか? 例の待機部屋、というのは」
 遂に辿り着いたかと『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は思考するものだ。
 華蓮が透視すれば、確かにそこには多くのロボットがいる――
 ただし全て動かない状態。情報通りの……休眠状態で、だ。
 であれば、奴らが起きる前に可能な限り叩きのめす。
 己が祝福より作り出した猫で周囲を監視させ、動いているロボットらの探知とすれば――
「では、行こうか――やれやれ。緊急停止手段などがあれば、力での解決以外の道もあったのだろうが……やはり、如何に優秀な存在があろうとも頼りすぎというのは宜しくないな?」
 練達内に生じた問題点に微かな苦笑いを浮かべながら。
 それでも今は秩序を取り戻すべく――部屋の内部へと突入した。


 休眠状態にあるロボット達は動かない。
 周囲においてアラートを検知すれば話は別だが――イレギュラーズ達の慎重なる歩みによって一切の気配を察知できていないのだ。故に、部屋の内部へと侵入してきた存在がいても尚、沈黙を保っていて……
「さぁ――そんじゃ、着実に潰していくとするっスかね」
 故に、奴らが起動する前に攻め立てる。
 葵の一撃は休眠状態にある一個体へと。奴らの耐久力はどれほどのものか、破壊は容易か――まずは調べたい所であったから。
 そして、直撃する。
 休眠状態にあるロボットは動きもせぬのであれば当然、全威力が届いて――激しき衝撃がロボットらの身を揺らす。であれば、異常を検知し立ち上がるものだ、が……その動きは決してスムーズではない。
 攻撃による起動ではエラーが発生しているのだ。
 起き上がろうとして転ぶ。
 何が起こったのか事態を把握する為か頭を揺らして周囲を探り、ならば。
「ごめんね! キミ達を見逃してあげる訳には――いかないんだ!」
「狂ってしまい、元に戻れるやも分からぬのならば……手段は一つしかないな」
 続けざまに焔とグレイシアもその隙を見逃さぬ。
 マトモに動く事も出来ぬロボットを穿つなど赤子の手をひねるより易いものだ。焔達の攻撃は全て余す事なく芯に響き、ダメージを甚大にさせていく。防御の姿勢を取る事すらしないのであれば破壊もかなり容易と言えよう。
 焔の一閃、グレイシアの一撃が奴らの身を砕く。
 ――とはいえ暴れていればロボットが衝撃によってたじろぎ、周囲の休眠ロボットへとぶつかってしまう事もあろう。さすれば起き上がる個体もいるもので……
「まあ、素敵なベッドルームですこと。
 ――枕がめちゃくちゃ堅そうで私はノーセンキューですけど」
「下手な真似して千客万来感謝感激雨霰は御免被るからね~サクッと確実に片付けないとね」
 そうなってしまえば後はどれだけ纏めて迅速に破壊できるかが重要になる。
 故に、ゼファーとラムダの一撃は奴らの多くを巻き込む様に紡ぐものだ。
 態勢が整う前に。混乱の中で仕留められるように。
 数がそれなりにいるが故に、中々すぐさまに殲滅とは出来ぬ――が。
「ま、皆で確実に狙っていけば――間に合いそうだね」
 口の端に付いていたメロンパンの欠片を口に運ぶオニキスが言の葉を紡ぎ。
 同時に魔砲たる一閃をもってして――薙ぎ払うものだ。ロボットが故か、ご丁寧に列を成して休眠状態なのであればその対象となる者らも非常に数多くなり、最大限の火力が最大の威力をもってして振るわれる……
「丁寧に……丁寧に狙って……当てていくのよ……頭だけを、狙って……」
「急ぐぞ。奴らがマトモに起動すればアラートが鳴り響く筈だ――その前に仕留めるッ!」
 直後には華蓮と汰磨羈も続くものだ。
 華蓮はまるで自らに言い聞かせる様に言の葉を零し、形成せし魔弾を射出する――
 病原の如く。例え機械の身であろうと浸食するが如き一撃を。
 躱させず、外さず。
 施設に余計なダメージを負わせる事が無いように狙いすましながら。
 であれば、頭部を揺らしたその身を汰磨羈は一閃す。
 陰と陽。激しく渦巻く霊気を剣へと収束させて成すは大霊刃。
「恨みも怒りもないが、見逃せんのでな」
 五指に力を。
 白銀色の大霊刃は万象を裂くように――敵を両断するものだ。
 さすれば機械仕掛けの人間より生じる激しい火花は、金属で出来ている身が故か……
 悲鳴上げる事すらなく滅びゆく人工物共。
 これにて、この部屋にいた者らは殲滅し終えただろうか――?
「じゃあ次の部屋に行こうかぁ……と、簡単に移れればよかったんだけどねぇ」
 しかしラムダがその時感じ取った。この部屋の方角へとやってくる存在がいる事に――
 その足音は人の者ではない。
 いや、元より職員がいない以上来る存在など警備ロボ以外いようものか。戦闘の騒ぎを聞きつけてやってきた個体がいたのか……奴らの自己知能がどれほどの性能かはしらないが、もしもこの部屋の状態を見れば侵入者アリとしてアラートを鳴らすかもしれない。
 ならば。
「出来ればもう一個の待機部屋も潰しておきたい所っスけどね――」
「その為には幾つかの手段が必要だね、例えば」
「今から来る警備ロボをアラート鳴らす前に倒すとかね!」
 手段は迅速に行わねばならぬと葵は態勢を整えるものだ。
 オニキスや焔が言った通り、巡回が至るのを止められぬのならば即座の破壊が一番。
 アラートが鳴る前に潰す。複数個体が接近しているなら難しい所もあるが、しかし最早隠密し続けられる様な状況でもないのだ――後は時間との勝負。ダメならダメで、ロボらと総力戦を行うだけの事ッ――!
「全く。忙しない事態に――なりそうだな」
 さすればグレイシアの耳も、巡回の足音が此処へ至るのを捉えるものだ。
 反響する音をも知覚すれば実際に近いのも分かる……
 息を整え。
 今正に部屋へ入らんとした警備ロボへと――強襲を仕掛けるのであった。


 侵入者アリ――侵入者アリ――
 アラートが発せられる。故に彼らは彼ら自身に与えられた役目を果たしに行くのだ。
「だめよ。どんな思考してようが、玩具は玩具箱へってことで」
 しかし無差別玩具となってしまったのであれば最早関係ない。
 警備ロボが振り上げた警棒に電流が宿り、高速で振り下ろされる――
 直撃すれば全身が痺れんであろう一撃。が、ゼファーは潜る様に懐へと飛び込んで。
「まとめてお片付けしてやるわよ。ブリキの兵隊さん?」
 蹴撃一閃。
 体幹乱し、拳。顎に剣撃そして――槍。
 いずれもが殺しの業。絶技にして紡ぐ絶死は全てを貫き、破砕の未来へと導かん。
『侵入者アリ――周囲の警備は集合してください』
『侵入者アリ――侵入者――』
「ええい。想定はしていたが、次々に集まってくるな」
「あわわわっ! でも、集まってくれた方が戦いやすくもあるかもね!」
 一体破砕。それでも電流警棒を構える警備ロボは未だ至る。
 ただ、屋外で戦闘をしている訳でなければ敵の進行方向は制限されるものだ――角より至れば、そこへ焔が奇襲するように全霊の一撃を放ちて。直後にはグレイシアの直死へ至る一撃が奴らを牙の中へ閉じ込める。
「巡回中の奴らを放っておいたら流石にこっちが先っスよねッ――!」
 更に葵の、敵を跳ね上げる一撃が見舞われるものだ。
 が、響くはAlert Alert.
 それはイレギュラーズ達を追い詰める音となるか。それとも機械達に断末魔となるか。
 ――幸いと言えたのはアラートが鳴らされても施設全域に響き渡る訳ではない。ある一定範囲のロボしか知覚されない故……待機部屋が遠ければ、まだ稼働してないロボ達は『そのまま』である確率が高かった。
 つまり、目の前のロボ達を早急に打ち倒しアラート発生を潰せば――
「もう一つの部屋も、さっきみたいに上手くできるかしら――」
 言うは華蓮だ。先程の待機部屋では攻勢に参加したが、ロボらとの本格的な交戦に至れば彼女が紡ぐのは癒しの祈り。
「祈りましょう……明日の皆の笑顔を。
 進みましょう……その祈りを、自らの手で叶えるために」
 それは皆の戦う活力を満たす優しき唄声――
 穏やかで暖かく。まるで子守歌が如き声より紡がれる祈りが皆へと満ちるのだ。
 痺れる身をほぐし、敵へと立ち向かう新たな力を湧き出させよう。
 ――さすれば皆の歩みは数度の戦闘を経ても尚衰えなかった。
「全く。練達の仕組みを再構築する為のいい切っ掛けになるだろうな、これは。
 安全だと。絶対だと。胡坐をかいていればどうなるかと骨身に染みたはずだ」
「中々、一度慣れた生活水準を変えるのは……難しいだろうけどね」
 ロボらを圧する。汰磨羈の刃は道を切り開き、オニキスの魔砲撃は何もかもを薙ぐ。
 単体しかいなければ魔術込められし弾頭を装填。
 それは標的の装甲を貫き炸裂するマジカル多目的高速徹甲誘導弾『ファントムチェイサー』
「耐えられるかな――? 君は」
 放つ。ロボの胸元を直撃し、内部より全てを凌駕せん――
 生じる爆発。しかし、それは周囲を傷つけぬ。なぜならば……オニキスと焔が周囲の意図せぬ損壊から保護する結界を張れば多少施設の被害は抑えられるはずだと常に力を張り巡らせているから。
 やれやれ。施設の損壊を気にしないといけないとは……なんとも面倒ではある。
 このような事態も全てはマザーに依存していたが為。
 最高技術に全てを委ねるのは効率的かもしれないが、リスク管理の面ではこうもなろうか。
 今後の練達の未来を想起しつつ――汰磨羈は進む。
「全く。利便性が発達しすぎるのも困ったものだね……と、ここかな?」
 瞬間。ロボらを倒し、追撃が来ないうちにと進んだラムダが見たのは――もう一つの待機部屋。中を見てみればまだ休眠状態にあるのか起動していない……アラート検知外で戦えていたという事だろうか。
「施設の被害は最小限……ていう縛りオーダーに応える為にも、急ごっかぁ」
「そっスね。後はここの連中を全部ぶっ壊せたら数える程度になる筈……」
「むっ――待て! まずい、奴らが――ッ!」
 ラムダと葵がタイミングを合わせ中に入――ろうとしたその時。
 グレイシアの耳が捉えるのは、一つのAlert.

『――侵入者アリ。侵入者アリ』

 駆けてくるそれは巡回の一体。そして響く警報の印。
 ――まずい。奴の警報で、待機部屋の者らが一斉に起動するッ――! 一つの待機部屋を潰せた時点で、その周辺で巡回らを殲滅する勢いで戦うのが最善だっただろうか? ともかく!
「そうはいかん――! ここまで来たら押し切らせてもらうぞ!!」
「玩具からガラクタへと、かしらね。さぁ来なさいよ纏めてスクラップにしてあげるわ」
 待機部屋へと火力を叩き込むのは汰磨羈とゼファーだ。
 起動――までの一瞬の隙間に先手の撃を奴らへと。さすればアラートによって起動した者と、ダメージによって起動――つまりは完全起動に若干の猶予が生まれた者の二つが生じて。
「さてっと。木偶の坊は木偶の坊のままでいてもらおうか――」
 直後にラムダが紡ぐのは掌握の魔術。
 逃げ場のない対象の自由を奪い去り、只の人形へと拵えよう――
 展開される気糸の斬撃が奴らの動きを束縛するように。
 そして、オニキスが全てを吹き飛ばす。
 彼らの電流警棒が襲ってこようとも、しかし数がもう左程でもないのだ。
 待機部屋には多くのロボが駐在しているが、二つあった部屋の内片方はイレギュラーズの優れた隠密ぶりによりほとんど抵抗も出来ずに壊滅。それが此処で効いてきたのだ。
 多少警棒の痛みがイレギュラーズの身を削ろうと華蓮が癒せば被害は少なくもなる。
「――ここは、退けないのだわ」
 そして、彼女は思考する。
 ――戦うというのはその瞬間だけの事ではないのだと。発電施設が傷付いて出力が落ちれば、その後誰かが不幸になるかもしれない。例えば病院に供給が無ければどうなる? そうでなくとも各種ライフラインが止まり続ければ……やがてどこかは命の事態に繋がるやも。
「もう私も子供じゃないのだもの」
 戦う時もただがむしゃらではなく。
 そういう事を知って臨まなくてならないのだわ――
 彼女の瞳には強い意志が宿っている。込められた魂には明日を祈る力強さが。
「さぁもう少しだけ――力を尽くしましょうか」
「うん! さぁ、そろそろ終わらせちゃうよ!!」
 彼女の治癒を受け取りながらロボの攻勢を押さえつけ――同時、焔は跳躍す。
 警棒と交差する槍が激しい金属音を鳴り散らし、しかし。
「これで、仕舞っスよ!!」
 焔が警棒を押し切り、ロボの身に届かせた直後。
 追い討つように葵の、死を紡ぐ一撃が――叩き込まれた。

『ガ、ガガ……侵入者、侵入……者……』

 さすれば、砕け散る最後の警備者。
 ――施設の被害は左程でもない。すぐにでもきっと電力を再開出来る事であろう。
「やれやれ、この界隈の騒ぎ……いつになれば収束して落ち着くのやらだね」
 であればラムダが吐息を零すものだ。
 ひとまずここでの騒ぎは収まった。しかし根底の問題が解決せねば、やがては別の何処かでも。
 平穏は一体いつになる事か――それはきっと、未来だけが知っているのであろう。

成否

成功

MVP

華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
 マザーの不調により始まった練達の異変……根本的な解決にはもう少し時間が掛かりそうです。
 それでも皆さんのおかげで、異変の一つは解決出来たことでしょう――
 MVPは敵の発見や戦線を支えた貴方へと。

 ありがとうございました!

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