PandoraPartyProject

シナリオ詳細

霊樹の村、神舞の祭にて

完了

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いつもの
「皆、お仕事を」
 と、炎堂 焔 (p3p004727)が言った瞬間、ヴァイオレット・ホロウウォーカー (p3p007470)は、
「え、厭です……」
 と眉をひそめたのだ。
「まだ何にも言ってないよ!?」
 と、焔が目を丸くするのへ、ヴァイオレットはこほん、と咳払い。
「あ、いえ、申し訳ございません……焔様のことですから、てっきりまた、こう、裸エプロンを着せられて恥ずかしいチアダンスを踊るとかそう言う系統の話かと……」
「まって!? ボクってそんな話ばっかりしてる!?」
「自覚ないの、あなた……」
 リア・バルツァーレク (p3p004937)がそう言うのへ、焔が、んー、と唸った。
「確かに、ボクは変な依頼を持ってくることはある……けど毎回じゃないよ! 稀によくあるくらいだよ!」
「言葉の意味がよくわからないのですが……」
 クラリーチェ・カヴァッツァ (p3p000236)は苦笑し、
「ええと、今回はどのようなお仕事なのでしょうか?」
 些かの諦観なども見せつつ、そう言う。
「ええっと、ね! 今回は――」
 焔が説明するのを聞いて、エルシア・クレンオータ (p3p008209)は、ほう、と声を上げた。
「霊樹に捧げる舞……ですか」
 焔が言うには、深緑の迷宮森林の奥、とある霊樹を抱く小さな村で、この時期、霊樹と、霊樹に宿る精霊に奉納する舞を披露する祭りが開かれるのだという。
 小さな村ながら、その時期は観光客も多く集まる、村をあげてのお祭りだ。
 さて本題だが、この祭りの踊り手が、練習中のアクシデントにより負傷してしまったというのだ。新たに踊り手を募るには時間がない。そこで、ローレットに踊り手を務めてはくれないか、と言う相談が来たのだという。
「良いですね。神聖なものような気がします」
 エルシアが言うのへ、焔は頷いた。
「そう! 神聖な! 踊りなんだよ!」
 強調する焔に、リアはなんか嫌な予感がした。
「そうやって神聖な~とか、伝説の~みたいなのがついてるのに限って、ヤバい奴な気がするのよね……」
「そんなことないよ! 仮にあっても稀によくあるくらいだよ!」
 焔の擁護に、アルテミア・フィルティス (p3p001981)は苦笑する。
「まぁ、再現性東京ならまだしも、深緑でそう変な事は起こらないと思うわ」
 すっかり再現性東京=ヤバい所、と言うイメージがついている気もするがさておき。
「深緑の、神聖なお祭りの踊りでしょ? きっと、普通の奴よ。
 まさか、ベリーダンスしたりリンボーダンスしたりポールダンスしたりするようなことは絶対にないわよ。ね?」
 と、アルテミアが微笑みながら言うので、
「そうですね。まさか深緑でベリーダンスしたりリンボーダンスしたりポールダンスしたり、ましてやそれが深緑で録画されて放映されたりとか、そういうことは起きないですよね!」
 と、ウィズィ ニャ ラァム (p3p007371)も言う。あはははは、と朗らかな笑い声が浮かぶ中、とりあえず、依頼への参加を決める一同であった――。

●いつもの
「この衣装でベリーダンスをしてもらいます。リンボーダンスしたりポールダンスしたりもしてもらいます。精霊様の力によって録画もされていますし放映もされますのでよろしくお願いします」
「やだーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
 祭の実行委員がそう言うので、ヴァイオレットは思わずそう叫んでうずくまった。
 現地に到着した一同を迎えたのは、案の定、案の定な事態であった! まず、「これが舞い手の着る衣装です」と手渡されたものがヤバい。葉っぱ。葉っぱである。掌よりちょっと小さいくらいの葉っぱが三枚。
「これが霊樹と一体化するための神聖なる衣装です……あ、大切な所はちゃんと隠れますのでご安心を」
「ご安心をじゃないですよ! ひっぱたきますよ!?」
 ウィズィがキレた。
「まぁ……困りましたね。流石の私も、この衣装であられもないダンスを踊るのは、正直、無しよりのなしです」
 エルシアが虚無の表情でそう言う。
「そう言うと思っていました。毎年踊り手もキレます。ですが、ご安心ください! 此方の、舞い手が飲む霊樹の樹液なのですが、飲めば程よく酔っぱらって何もかもどうでも良くなります! ついでに翌朝にも残らず実にクリーンです!」
「危ないお薬とかじゃないの、それ」
 アルテミアが頭を抱えながら言う。
「大丈夫です! 合法ですから!」
「この世界には真っ当な祭りは無いのですか……?」
 クラリーチェが天を仰いだ。リアはこめかみに手をやりながら、
「で? さっき録画がどうとか言ってたけど?」
「はい。精霊様は見た記憶を投影する能力を持っておりまして! 定期的に村ではその記憶の上映会を」
「焔ァ!!」
 リアが叫ぶ! 焔はぴょん、と木によじ登りながら、
「ちがうよ、こんな事になるなんて知らなかったんだよ~!!」
 と叫んだ。
 要するに。
 いつもの奴です。

GMコメント

 これはリクエストシナリオなので、洗井落雲は何も悪くないです。

●成功条件
 祭を完遂する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度は『炎堂 焔』です。
 いつもの奴です。グッドラック。

●状況
 深緑の、霊樹を抱くとある小さな村。此処では毎年、霊樹と、それに宿る精霊に奉納する『神聖なる衣を纏った神聖なる舞』と、それに伴う祭が催され、一年の一つの観光資源となっていました。
 しかし、今年の踊り手たちが、練習中のケガにより負傷。踊り手がいなくなってしまいます。この危機に招集されたのが、皆さんイレギュラーズです!
 皆さんは神聖なる衣装(大切な所をギリギリ隠せるくらいの大きさの葉っぱ)を纏い、神聖なる樹液(飲むだけで酩酊して色々大胆になるやべー奴)を飲み、神聖なる舞(ベリーダンスとリンボーダンスとポールダンス)を舞うのです!!!!
 ちなみに、樹液は飲まなくても大丈夫です。けど、飲んだ方が色々失くせて楽だと思います。
 見事舞を踊り切り、神聖なる儀式を完遂しましょう!
 ちなみに、精霊はこの祭りの記憶を保存し、ことあるごとに空中に投影することができます。いつでも見返せます。よかったね。

●ダンスについて
 以下の好きな奴を踊ってください。

 ベリーダンス
  エッチな奴ではないですが、腰やお腹を大胆にくねらせた、妖艶な舞が特徴なダンスです。
  一番恥ずかしくないですが、一番目立つ舞台で踊らされるので、一番衆目にさらされます。

 リンボーダンス
  上体をそらして、水平に渡された棒に接触しないようにその下をくぐる踊りです。
  普通ならば恥ずかしくは無いですが、皆さんが着ている衣装を思い出してください。

 ポールダンス
  直立したポール(棒)を使って、回転、倒立、上り下りを駆使しながら艶やかに踊るダンスです。
  普通ならば恥ずかしくは無いですが、皆さんが着ている衣装を思い出してください。

 創作ダンス
  上記の三つじゃ満足できねぇんだよ……私たちは再現性コスプレ同好会だから! 再現性コスプレ同好会の意地を見せてやる!
  ってなったら好きな創作ダンスをお踊りください。

 以上となります。
 それでは、皆様のプレイング、お待ちしてます……!

  • 霊樹の村、神舞の祭にて完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年10月20日 22時05分
  • 参加人数7/7人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 7 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(7人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
咲き誇る想いは
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心

リプレイ

●お祭りの始まり
 ――この日、祭の控室はものすごく重い空気に包まれていた――。
 今回の被害者を紹介しよう。
 『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)。
 『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)。
 リア・バルツァーレク ……じゃなかった、『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)。
 『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。
 『影を歩くもの』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)。
 『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)。
 そして主犯を紹介しよう!!
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)!
 以上だ!
「ち、違うよ! ボクのせいじゃないよ!
 ボクもこんなことになるだなんて知らなかったんだよ!
 皆が練達は嫌だっていうから深緑のお仕事探して来たのに!」
 仲間達全員の視線を一身に受けて、焔はわたわたと手を振った。仲間達が囲むのは、大きな木製のテーブル。その上には、葉っぱにしか見えない衣装と、ドロッとした、シロップのような液体が入ったコップが置かれている。これは神樹の樹液であり、怪しい液体とかではない。合法である。
「……いえ、情報精度『炎堂 焔』を信じた私達も愚かでした」
 と、ちょっと毒舌気味なクラリーチェは、眼鏡をはずしている。
「って言うかその情報精度何? なんで項目新設されてるの?」
 焔が言うのへ、クラリーチェは頭を振る。
「ええ、ええ。仮にも奉納舞ですので、奇祭に見えようが粛々と」
 と、頭では理解している。理解している。が、納得はいかない。
「前回プールで酷い目に遭ったのも今回も、焔さんとアライグマが原因……。あとでお仕置きですね、これ」
「そうね、アライグマのせいよね」
 リアがこほん、と咳払い。が、クラリーチェはじろり、と視線を送る。詳細は省くが、クラリーチェを盾にして難を逃れようとした経緯が、リアにはある。
「……悪かったわよ、クラリー。えーと、まぁとにかく。状況を整理……するまでのことじゃないわよね。いつもの奴よ」
 リアが言うのへ、アルテミアが頭を抱えた。
「少しでも焔さんを信じた私が馬鹿だったわ……やっぱりロクな依頼じゃなかったッ!!」
 うー、と唸りつつ、頭をぶんぶんと振る。
「ええ、この運命は視えていました……視えていたのに、どうしてワタクシは焔様についてきてしまったのか……」
 ぼんやりと天を仰ぐヴァイオレット。木製の天井が遮って空は見えない。
「それにこの衣装……! ええ、別に、ワタクシの身体は元より悪人を釣るための疑似餌なれば。
 高露出な装いなど今に始まった事でもありません……って思いこもうと思いましたけれど! 無理です! 露出がどうこう以前に、これは服ではありません! 葉っぱです!」
 おっしゃる通りである。
「……この、衣装にって渡された葉っぱ、微妙に皆サイズが違うんですよね」
 ウィズィが言った。それからしばらく、言葉を飲み込んだ。しばし悩んだ末に、樹液の入ったコップを手に取ると、一気に煽った。
『あっ』
 皆が声をあげる。ウィズィはこくり、と喉を鳴らして樹液を飲み込む――もうこれで怖いものはねーぞ。
「ヤバい所がギリギリ隠れるサイズの葉っぱです。つまりこれは、こうみんなのお胸のこれ」
 と、ウィズィは指で丸を作った。詳細は省くが、これは界隈でも議論の分かれる話題であり、詳細は省く。これは本当に戦争が起きそうな話題です。
「このサイズが如実にわかるって事ですよね、ええ、わかります。だって危ない所がギリギリ隠れるサイズの葉っぱ……そのサイズがそれぞれ違う……ええ、わかってます。わかってますよ。洗井がそう言うフェチだってのはね……ちっちゃい方が好きなのかおっきい方が好きなのかはわかりませんが」
 違う、それは誤解だ。
「ちなみに私の葉っぱはちょっと大きめでした」
「もう出来上がってるっ!!!」
 アルテミアが頭を抱えてうずくまった。やばい。この樹液はヤバい。一杯飲んだだけでこの理性のぶっ飛び具合! もうこれを飲んだらどうなるのか分からない……!
「いやよ! いくら女子だけだからってそう言う……そう言うトークするの!」
「待ってアルテミア! 多分ここまで出来上がってそう言うトークする奴はそうそう居ないはずよ!?」
 リアが叫んだ。
「くっ、誰ですか私をこんな破廉恥な奇祭に呼んだのは! うそ、しってます、焔さんですね!」
 エルシアがたまらず立ち上がって叫んだ。
「偶に深緑の森に入っても郷に従えない知性が不自由な方々を憐れんでみせている私には、「破廉恥だから嫌だ」なんて害悪余所者ムーヴをする訳にはいかないじゃないですか……! これ! 深緑のお祭り……つまり深緑の伝統! 私も涼しい顔で「あらあら、深緑の伝統に従えない余所者はこれだから。燃やしますか?」と言わなければ……言わな……ううっ……」
 エルシアが口元を抑えて震えた。笑っているわけではない。泣いているのだ。と言うか、どうして深緑でこんなことになってしまったのか。
「飲もう」
 と、焔が声をあげた。
「飲もうよ……樹液を」
「本気ですか?」
 ヴァイオレットが声をあげた。
「もう飲まないと……これ話進まないよ。この時点でリプレイ文字数2200字くらいだよ?
 このままだと、本編に進む前にリプレイの文字数が尽きる自信がある……!」
「できれば本編に進んでほしくないのですけれど。待っているのはリンボーダンスとかですし」
 ヴァイオレットがげんなりした様子で言うのへ、焔は頭を振った。
「ううん、ボクたちは、ローレットのイレギュラーズなんだ!
 世界を破滅から救うため、依頼をこなさなきゃならない! パンドラを! 貯めなきゃならないんだ!」
「その考えには賛同するけど、どうしてもっとまともな依頼を持ってきてくれなかったの……!?」
 アルテミアが正論を吐いた。
「それは……ともかく!」
 反論できなかった。
「いいです。飲みましょう」
「クラリーチェちゃん!」
 クラリーチェは、ほう、とため息をつきつつ、コップを手に取った。
「ええ、仕方ありません。こうなれば行くも地獄退くも地獄。いっそのこと、飲んで……忘れてしまいましょう。
 ほら、リアさんも。リアさんの、ちょっといいとこみてみたーい」
「くっ……わかったわよ、クラリー。飲めばいいんでしょ飲めば」
 リアもコップを手に取る。
「不安なら、いっせーのせ、で飲みましょう」
「……ワタクシは辞退させていただきます」
 ヴァイオレットが言った。
「その……アルコールの類は、ええ、洒落にならないので」
 その言葉に、仲間達はかつての依頼の報告書を思い出し――頷いた。
「じゃあ、ヴァイオレットさん以外で」
 アルテミアが言うのへ、
「えっ、もう一杯飲んでいいの!?」
 と、ウィズィが目をとろんとさせていったので、
「ええ、もうこの際、お代わりもあるわよ」
 と、テーブルの上にあった小樽の中にあった樹液を注いであげた。
「じゃあ、いくよ、皆いっせーの、せっ」
 焔の音頭に合わせて、皆一斉に、コップの中身を煽る――。
 ――――――。
 ――――。
 ――。
「ぷひゃー! あまくておいしいねぇ!
 なんりゃかたのしくなってきちゃったー!
 あっ、ヴぁいおれっとちゃんだぁ。どーんっ! どお? ちゃんとのんでりゅぅ?」
 焔がべろんべろんに酔った様子でそう言うのへ、ヴァイオレットは蒼い顔をしながら頷いた。
「え、ええ。楽しんでます……」
「おいしいからいっしょにいっぱいにょもう! ほら、おかわりふたりぶんくだしゃ!」
「うふふ、なぁんだかたのしくなってきました~♪ これからみんなぁ、ダンスおどるのよねぇ~。たのしみぃ」
 アルテミアがとろとろの笑顔で樹液を飲み干す。そう、この場はすでに地獄であった。べろんべろんに(合法的に)酔っぱらった乙女たち――その中で正気を保っていたのは、ヴァイオレット。そしてエルシアだけだった。
「……飲むふりをしてすべて吐き出しておいて正解でしたね」
 涼しい顔で持ち込んだお茶を飲むエルシア。ヴァイオレットはSOSの視線を送ったが、巻き込まれたくないのでエルシアは頭を振った。
「無理です。諦めてください」
「そんなぁ」
 ヴァイオレットに絡む焔。
「うーん、ばいおれっとちゃん、コップがからだよ! ボクのじゅえきがのえにゃいってのきゃ!」
「ろれつが回ってませんよ! 焔様!!」
 と、程よく場が地獄めいていた所で、がらり、と部屋の扉が開いた。祭の実行責任者の人が、笑顔でこちらを覗いていた。
「いやぁ、皆さん。縁もたけなわですが、そろそろ演舞のお時間です」
「はい、わかりました。すぐに参ります」
 と、エルシアが頷く。
「……じゃあ、行きましょうか」
 エルシアがハイライトの消えた目で言うのへ、ヴァイオレットが頷く。残りの酔っぱらいたちも、へにゃっとした笑顔で、
『おしごと、がんがるぞー!』
 と笑っていた。
「……飲んだ方が幸せだったのか。果たして……」
 エルシアが独り言ちる。その答えは誰にもわからなかった。

●神舞のとき
 イレギュラーズ達が踊る神舞――ぶっちゃけて言ってしまえば、今年はベリーダンス、リンボーダンス、ポールダンスの三種目のことである。
 それぞれの会場に向かうべろんべろんに酔っぱらったイレギュラーズ達。会場には多くの観客たちが詰め寄っていて、皆樹液を飲んでいたのでべろんべろんでわけのわからないことになっていた。ヤバい空気が漂う。
「燃やしましょうか、この村」
 エルシアが、ベリーダンス会場で呟いた。燃やしてもいいかもしれない。こんな村。誰も困らないはず。
「まぁまぁ、エルシアさん。たまにはこういうのもいいと思いますよ~」
 ふわふわのクラリーチェが言う。言うまでもないが、二人の格好は葉っぱのアレです。酔っぱらった歓声が響くのへ、クラリーチェは演台からふわふわと手を振ってみせた。
「うふふ~、私運動の類は苦手なのですが、精一杯踊りますね~」
「……まぁ、良いのですが。
 ええ、そう……人なんて、全て可燃物と思えばいいんです……どうせ何時でも燃やせる相手なら、私に害を与えない限り、何をされたところで構わないでしょう?」
 エルシアはすわった眼をしながら、そう言った。やがて音楽が流れ始めると、クラリーチェはふわふわと、エルシアは少しだけ緊張した面持ちで踊る。
「……要は、こちらに視線を向けなければいいわけです……と言うわけで、契約精霊の皆、共に踊りましょう」
 エルシアは、自身の契約精霊共に舞う。それは意外にも、神秘的な雰囲気を醸し出していた。これで服がまともであったなら、確かに神舞と言っても問題はなかっただろう。
「うふふ、エルシアさんもがんばってますね~。私も……」
 と、クラリーチェも一生懸命お腹をくねらせて踊る。正気であったらこんなことはしないだろうが、何せ今は樹液入りである。
 しかし、ベリーダンスは体力の消耗も激しい。クラリーチェ、エルシアの吐息も次第に荒くなる。えっちぃ。
「……これが終わったら、焔さんを燃やしに行きましょう」
 決意を込めるエルシア。
「うふふ。段々楽しくなってきました~」
 クラリーチェが妖艶に笑う――会場のテンションは最高潮に達していた。

 一方、リンボーダンス会場には焔の姿があった。紅潮した頬と、とろんとした瞳で、客席に向けてを振るう。
「そりぇでぇ? ぼくはりんぼーだんすっていうのをしゅればいいのぉ?
 そんにゃのかんたんらよぉ!」
 ふん、と胸を張る焔。そんな焔の前に、二本の棒と、その間に横に渡された棒、要するにリンボーダンスセットが配置される。
「えー、つぎはこれのしたをくぐりゅのぉ? だいじょぶ! やれりゅよ!」
 と、焔は思いっきりのけぞった。同時、BGMが鳴り響く。観客席には正面から見られているわけだが、葉っぱが大切な所はちゃんと隠しています。
「よ、よっ、と」
 ぽん、ぽん、と身体が上下する。観客たちは歓声をあげた。はたしてその時間は十数秒と言った所か。ゆっくりと見せつけるようにバーをくぐった焔は、元気よく両手をあげて、
「どぉ? ちゃんとみてたぁ?」
 と小首をかしげて見せる。客席から激しく歓声が上がるのを、焔は満足げに頷いた。さて、これで終わりではない。バーが一段階下がると、再びBGMが鳴り響いた。
「おっ、またやるの? おっけー! ふふ、おわったらリアちゃんのところにいこっと♪」
 そう言って、また焔はぐっ、とのけぞった――。

 さて、ポールダンス会場である。ポールダンス会場には、残る四人の乙女が参戦しており、会場のボルテージも始まる前からうなぎのぼりである。
「ZZZ……え、なに、もう朝……?」
 寝ぼけ眼でウィズィに引っ張ってこられるのは、リアである。
「リアさんそんなとこで寝ちゃダメでしょ!
 全くリアクォーーツってやつは全裸になるとすぐ寝ちゃうんだからもう」
 ぶつくさと言っているウィズィ、一見まともそうに見えるが、目の焦点が合っていないので完全に酔っている。
「で、なによぉ、ウィズィ、こんなところまでひっぱってきてぇ。
 え、ポールダンス? するの? いいよ~しょうがないわね~~~」
 えへへ、と笑うリア。一方、ここまで引っ張ってきたウィズィはけらけらと笑いながら、
「そ、この……棒の周りで……くねくねくるくる~~……ってやるの!」
「えへへ、たのしそう~」
 リアが笑う。一方、アルテミアも程よく上気した表情で、ポールの前に立った。
「えっとぉ、わたしはポールダンスをすればぁいいんですね~?
 こう見えて身体わ柔らかいのでぇ、大丈夫ですよぉ」
 と、身体柔らかく、I字バランスなどを金せて見せるアルテミア。もちろん大切な所はギリギリ隠れているのでコンプライアンスは大丈夫だ。その柔らかな肢体に、観客席からは驚きの声が上がった!
「……此処が地獄ですか」
 唯一素面のヴァイオレットが蒼白の表情で言った。いかがわしい。何もかもが。そしてその場に自分もいるという事実が。いっその樹液を飲んでしまえばよかったのだろうか……いや、酩酊するともっとひどいことになりかねない。これは正しい選択だった。そう思うしかない。
「……で、では皆様、始めましょう」
 ヴァイオレットの言葉に、三人は『はぁい♡』と頷く。かくして繰り広げられるのは、ポールダンスである。ポールダンスとは、その名の通り、垂直に立ったポールを利用して踊るものだ。例えば、ポールに抱き着くように身体を寄せて、空中で身をよじらせて見せる。身体をフルに使い、ポールと一体化したオブジェのように振る舞うのが基本だ。ただでさえ、身体の線を強調するその踊り、しかも今着ているのは葉っぱである。
 必然――その絵面は大変いかがわしいものであったが、踊ってる奴も観客も酩酊しているので、もうその辺よくわからなくなっていた。それが幸いと言えば幸いだろう――素面のヴァイオレットはもう、心が死にそうになっていたけれど。
「んふふふ! ほらほらくるくる~!
 って滑っ……ふぎゅ!? んん? 何この柔らかい……あわわ、アルテミアさんのお尻!?」
 ウィズィが顔面を突っ込んだのは、アルテミアさんのお尻である。アルテミアさんはあらあら~、とか笑いながら、
「わっとと、ウィズィさん大丈夫ぅ? 樹液飲みながらだったからぁ、皆こぼれちゃったぁ~」
「もう、アルテミアさんったらぁ、身体べたべたよぉ。べたべただからぁ、なんかアルテミアさんの胸から変なの取れちゃったぁ」
「そうぉ~? 私もリアさんの胸からなんか取れちゃったからおあいこね」
『あはは♡』
「ここが地獄です……」
 一同から若干距離を取りながら、ヴァイオレットが言った。もうわけわかんない事になっていた。
「あー、リアちゃん、はだかだー!」
 言ってはならないことを言いながら、焔がやってくる。リアはその声に気づくと、こう、すごく嬉しそうな笑顔を浮かべて、
「焔~、こっちこっち!」
 と手招きをするのだ。焔はぴょん、とリアに飛びつくと、そのまま強くリアを抱きしめた。
「えへへ、焔焔ぁ~~~。
 焔ってくっ付くと暖かいよね~。
 ふふ、あたしね貴女には感謝しているのよ。
 どんな時でもあたしと一緒に居てくれて、暖かい音色であたしを包んでくれて……。
 だから、あたし、貴女の事…………すぅーzzzz」
「えへへ、ボクもリアちゃん舐めると甘い味がするから大好き~~」
 かみ合ってない会話をしながら、二人が抱き着いてポールの下で寝っ転がった。気づけば、合流したクラリーチェも交えて、ポールの下はなんかこう、葉っぱも散ってとんでもないことになっていた。誰も彼も酩酊していたので気づかなかったが、あんまり細かく描写すると大変なことになるので、みなかったことにしよう。
 さて、焔を燃やしに来たエルシアの契約精霊が、「どうします? これ?」みたいな感じでエルシアを見たから、
「……良い話っぽくして終わりでいいんじゃないでしょうか」
 と、そう言ったので、宴もたけなわですがこの話はこの辺りで。
 めでたしめでたし。


 その後、完成した報告書を見ながらイレギュラーズ達が頭を抱えることになるのは、また別の話である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ぼくはなにもわるくないです。

PAGETOPPAGEBOTTOM