PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<祓い屋>薄紫の涼風

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夏が終わりを迎え、涼しい秋風が庭園の花を揺らす。
 縁側の日差しと心地よい風。
 燈堂本邸のリビングであまねとしゅうは寛いで居た。
 二人とも人間の姿ではなく、獏と馬のぬいぐるみになっている。

 しゅうはくりりとした目をリビングの恋屍・愛無(p3p007296)へ向けた。
「そうだね。今の所、大丈夫そうかい? 愛無君」
 愛無の手を掴んでいた『祓い屋』燈堂 暁月(p3n000175)が確認するように問いかける。
「ああ。問題無い。共存代償も微々たるものだ」
 獏馬の夜妖憑きとなった愛無の検診。愛無が獏馬の器として定着しているかの確認だった。
 愛無としゅうは相当に相性が良いのだろう。それこそ元の宿主である『刃魔』澄原龍成(p3n000215)以上に適合しているようだ。
「それにしても、この力は……」
「ああ、夜妖の力だよ。君はしゅうの能力に馴染んでいる。元々愛無君が『暴食』だからだろうね。けれどその力はあまり外では使わないように。もしも何かあったときに対応出来ないからね」
「外でというのは」
 首を傾げた愛無に暁月は『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)に視線を流す。
「廻の傍なら構わない。君達は互いに獏馬の夜妖憑きだ。つまり陰と陽だね。どちらかの生命力が枯渇した時に補えるように」
「だから、拠点を此処に移す話しになったのかね」
「そういう事だ」

 獏馬の成れの果て。しゅうとあまねは離れる事が出来ない。
 お互いを補い合わなければ、何方とも消えてしまう。
 自ずと愛無と廻も近くに居なければならないと言う事だ。
「まあ、練達に居る間は此処を拠点としよう。他の国に居る間も極力戻るようにする」
 それは獏馬の夜妖憑きとなった者の制約だから。

「私もここに住もうかな……なんちゃって」
「シルキィさんも一緒に?」
 少し照れた様に微笑むシルキィ (p3p008115)に廻が小首を傾げる。
 皆でわいわいとはしゃぎながら過ごす日々は、幸せに満ちているような気がして。
「そうなったら、嬉しいです」
 願わずにはいられないのだ――

 中庭にはヒガンバナとコスモスが咲き乱れていた。
 何処からともなく金木犀の香りも風に乗ってくる。
「今日は顔色がよさそうだね、燈堂君」
 中庭のベンチに腰掛けた眞田(p3p008414)は隣に座る廻の横顔を見遣る。
「はい! 大切なお勤めがあるので、体調を万全に整えてます」
 数日の内に月は満月となる。次の月祈の儀が来るのだ。
 その為に廻は規則正しい生活を送っているのだという。
「お勤め、ね」
 以前に黒曜が言っていた儀式の事を眞田は思い出していた。
 儀式がどのように行われるかは分からないが、廻の身体を蝕んでいる事は解る。
 本当なら今すぐにでも止めさせたい。けれど、きっと廻は其れを望まないだろう。
 眞田の親友は他人が傷付くのなら自分を犠牲にして耐えてしまう癖がある。
 それはある種の美徳ではあるのだけれど。歯がゆいと思ってしまう自分が居る。
「くれぐれも無茶をしないようにね」
 廻の頭を優しく撫でた大きな手。じんわりと伝わる温かさに廻はこくりと頷いた。


「ねえ、君は『獏馬』の宿主だよね? 君を斬れば暁月さんの憂いは晴れるかな? 獏馬は暁月さんが追ってたものでしょ?」
 剣先を龍成の喉元に突きつけるのは周藤日向だ。
 暁月の不調の原因を調べる為に周藤からやってきた少年。
 龍成は小さく息を吐く。
 夜妖憑きと対峙する事がこんなにも『恐怖を覚える』なんて思ってもみなかった。
 獏馬の存在は龍成の強さの象徴。それが無くなった今、目の前に居る化物を宿した人間に恐れを感じる。
 日向の剣尖がゆっくりと進み、龍成の首筋に赤い傷を残した。ひりつく痛みに唇を引き結ぶ。
 目の前の少年は誤解をしている。しかし、このまま愛無やしゅうの元へ行かせる訳には行かない。
 龍成は日向を真正面から睨み付けた。
「はっ、だったらどうだってんだ」
「やっぱり君が『犯人』なの? 何でそんな事するの!? 暁月さんの肩には何千という人の命が乗ってるんだよ。それが崩壊すればどうなるか、頭の悪そうな君でも理解できるよね!?」
 日向の怒りに満ちた金色の瞳が龍成を射貫く。純粋にぶつけられる怒り。悪意ではない憤り。誰かを救う為に発露する感情に龍成も覚えがあった。

「恐れ入りますが、日向様」
 龍成の首の皮を傷つけていた剣尖を押し返すのはボディ・ダクレ(p3p008384)の直剣。
「これを斬っても暁月様の憂いは晴れません。これはただの人間です。なんの力も無い」
「……」
 親友から突きつけられる事実に眉を寄せる龍成。彼の中にはもう獏馬は存在しない。
「確かに。この前見た時より弱くなってる……そうか、夜妖憑きじゃなくなったんだ。祓ったの? それとも愛想を尽かされたのかな?」
「てめぇな!」
「日向様? あまり龍成様をいじめてはいけませんよ」
 激昂する龍成の声に重なるように鈴なりの声が中庭に響く。
 真っ白な花嫁衣装を身に纏ったすみれ(p3p009752)が首を振った。
「あ、すみれだ。どうしたの? 遊びに来たの?」
 様子を見に来たすみれの周りを日向が戯れ付く。
「ええ。日向様が此方に滞在していると聞き及びまして。おやつを持って来ました。一緒に食べましょう」
「本当に!? 僕の為に持って来てくれたの? 嬉しい! すみれ大好き!」
「ですが、無闇に他所様へ剣を向けるのは感心しません。きちんとごめんなさいをしましょうね」
 すみれの言葉に日向は耳をピンと立てて、こくこくと頷いた。
 龍成へと振り返り頭を下げる日向。
「ごめんなさい」
「いや、別にいいけどよ。それよりお前も戦えんなら、稽古に来いよ。今日は道場が開放されるってよ」
「分かった。すみれが行くなら行くよ。じゃあ、また後でね」

「ほら龍成、傷を見せてみろ」
 龍成の顎を掴んで上を向かせるのはレイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン (p3p000394)だ。
「あー、痛え。優しくしてくれよ。お姉ちゃん」
「誰が姉ちゃんだ。煽るからこうなるんだよ。ほらよ、消毒と絆創膏は貼ってやったからそのうち治る」
 大きい絆創膏を抑えた龍成はレイチェルに礼を言って振り返る。
 そこには溜息を吐いた星影 昼顔 (p3p009259)とエル・エ・ルーエ (p3p008216)が居た。
「煽ってどうすんのさ龍成氏」
「エルは、見ててはらはら、してしまいました」
「いや、まあ流石に斬らねぇだろ。皆居たし」
 信頼されているのか、それとも馬鹿なのか。龍成は時々こういう無茶をするのだと昼顔は頭を抱える。
「先が思いやられるね。ボディ氏」
「……はい」
 昼顔はボディの肩に手を置いて視線を逸らした。

「そういえば龍成氏、弱くなったんでしょ? 戦い方分かんないんじゃない?」
 西棟の道場で対峙する龍成と昼顔。
 獏馬の夜妖憑きではなくなった龍成は弱くなってしまった。
「ぐ……お前、容赦ねぇな。相変わらず」
 だからこそ、この場に昼顔たちは集まったのだ。
 龍成を鍛える為に。
「俺は君みたいに突然強くなった訳じゃ無いからね。きちんと弱さを積み重ねた。良い機会だよ。君も今から弱さを積んで行こう。大丈夫、皆付いている」
「まあ、本番ぶっつけで弱い事を実感するよりは、全然いいからな」
「そうですね」
 口の端を上げるレイチェルにボディが頷いて。
「エルも協力しますのでっ! 頑張りましょう!」
「何だそれ。でも、皆ありがとな」
 世話焼きな友人達に龍成は眉を下げて笑った。

GMコメント

 もみじです。燈堂家で稽古。

●目的
・燈堂一門で訓練を行う
・散策、温泉、晩ご飯を楽しむ

●ロケーション
 希望ヶ浜南地区『燈堂一門』の敷地内です。
 稽古場として西棟の道場が解放されています。
 他にも大浴場のある南棟や暁月達の住まう本邸があります。
 中庭は季節の花が咲いています。

●できる事
 1つに絞っても、沢山の場面に居ても大丈夫です。
 絞った方がその場面での描写は多くなります。

【A】稽古
 西棟の道場で稽古をする事が出来ます。
 弱くなった龍成と手合わせをし訓練してあげる事ができます。
 龍成は急に弱くなったので、まだ力の使い方が上手くありません。
 暁月や廻、門下生とも手合わせする事が出来ます。

【B】お散歩
 燈堂家を散策します。
 南棟、西棟、東棟に中庭。そして本邸にも出入り出来ます。
 望めば地下牢や無限廻廊の座へも行くことが出来ます。
 縁側や暁月や廻の自室でゆったりとお喋りできます。

 中庭はとても広い庭園になっています。
 コスモス、リンドウ、ダリア、ヒガンバナが咲いて金木犀の香りもしています。
 散歩道があるので景色を見ながら歩いてみたり、ベンチに座りお話したり出来ます。
 南棟は食堂や温泉、大広間、遊技場があります。旅館といった風情です。
 東棟は門下生の個室や子供部屋があります。
 本邸の地下牢は薄暗いです。その奥に無限廻廊の座へと至る路があります。
 普段は閉じられていますが、暁月か廻を連れて行けば入る事が出来ます。

【C】温泉と晩ご飯
 稽古の後は温泉に浸かる事が出来ます。
 ゆっくりと広い湯船に浸かり疲れを癒しましょう。

 白銀が美味しいご飯を作ってくれています。
 皆でわいわい交流しながら、晩ご飯を食べましょう。
 お酒もあります。(未成年はジュース)
 一般的な家庭料理が振る舞われます。おふくろの味。
 豚の角煮や茄子の揚げ浸し、ほうれん草のおひたし、唐揚げ、ハンバーグ
 野菜炒め、酢の物、生姜焼き、大葉の包み焼き、お味噌汁など。

●NPC
○『祓い屋』燈堂 暁月(p3n000175)
 剣術を得意としています。稽古では竹刀を使います。
 簡単な回復が使えるようです。
 恋人の顔をしたしゅうとあまねが傍に居る事に、心が軋んでいます。
 暁月の不調は無限廻廊の力を弱めてしまうので危険です。
 そのせいで廻を人身御供とせざるを得ない状況にも追い詰められています。

○『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)
 稽古は観戦しています。手合わせも大丈夫です。
 満月の夜に行われる月祈の儀に耐えています。
 そうしなければ無限廻廊で封じている『真性怪異』繰切が出て来てしまうからです。
 しかし、人身御供とも呼ばれる儀式は確実に廻を蝕んでいます。

○『刃魔』澄原龍成(p3n000215)
 獏馬の夜妖憑きでした。
 今はその力を失ってただの人に戻りました。
 先陣を切って前に出て行くタイプです。
 ナイフを使った手数の多い攻撃を仕掛けます。
 急に弱くなったので、まだ力の使い方が上手くありません。

○周藤日向
 管狐の夜妖憑き。刀で戦います。
 イレギュラーズでは無いためパンドラを持っていません。
 暁月の不調の原因を調べに来ました。
 原因が分かれば、それを断ち切れと命じられています。

○しゅうとあまね
 獏馬の成れの果て。朝倉詩織(故人/暁月の恋人)と同じ顔をしている。
 暁月の不調の原因の一つ。
 最近はぬいぐるみの姿で居る事が多いようだ。

○その他
 燈堂家に住んでいる関係者がいます。
 門下生や三妖、夜妖などと交流する事もできます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <祓い屋>薄紫の涼風完了
  • GM名もみじ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年10月07日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談8日
  • 参加費300RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

鳶島 津々流(p3p000141)
四季の奏者
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
※参加確定済み※
恋屍・愛無(p3p007296)
戦飢餓
シルキィ(p3p008115)
繋ぐ者
※参加確定済み※
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
繰切の友人
※参加確定済み※
ボディ・ダクレ(p3p008384)
ぬくもり
※参加確定済み※
眞田(p3p008414)
スカーレットの闇纏い
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物
※参加確定済み※
すみれ(p3p009752)
薄紫色の栞

リプレイ


 コスモスの花弁が風に乗って青い空へと舞い上がる。
 同時に『四季の奏者』鳶島 津々流(p3p000141)の髪もふわりと揺れた。
 燈堂家のことは噂に聞く程度だったから、訪れる機会が出来て嬉しいと津々流は微笑む。
「どんな人が居るかな、どんなお家かな」
 楽しみだと目を細め中庭の景色に視線を上げる津々流。
「おや、津々流君も来てたのかい。ここの花は美しいだろう?」
 津々流の姿を見つけて歩いて来た『祓い屋』燈堂 暁月(p3n000175)は和やかに笑った。
「ここの中庭はとても素敵だね……! 風に揺られる秋の花々、金木犀の香りが心地いいよ」
「気に入って貰えて良かった」
「綺麗に手入れされていて、植物がみんな喜んでいるみたい。きっと庭師さんが素敵な人なんだねえ」
 燈堂家を彩る花は小さな夜妖達と夜妖憑きの庭師が手入れをしていると暁月が伝うのに、津々流は自分も用務員として花壇の世話をしているから気になるのだと告げる。
 ゆっくりと中庭を歩いて行く津々流と暁月。
 その暁月の横顔を津々流は横目で見遣る。
 何だか元気が無いように思うのだ。初対面の津々流でも分かる程に。
 中庭のベンチに座り、吹いてくる風を感じる二人。
「気分転換になるかわからないけど、こうして景色を見るのも良いと思うよ」
「そうだね。少し落ち着くよ」
「きっと、暁月さんには守らなきゃいけない大切なものがたくさんあって、大変なんだろうと思う」
「……」
 津々流はそこに存在するままの自然のように、暁月を優しい言葉で解していく。
「溜め込んだ想いが爆発しないように、ちょっとでも楽になってもらえたらなって。こう見えても聞き役は上手いんだよ、僕」
「ありがとう。津々流君」
 何でも無いゆったりとした時間。それは心身にとってきっと大切なひとときなのだろう。

 アジュール・ブルーの空が『Can'dy?ho'use』ハンス・キングスレー(p3p008418)の瞳に映り込む。
 思い出す景色があった。
 窓から差し込む陽光に塵が光彩を帯びて。ページの捲れる音と鳥の囀る声。
 縁といえるのかも分からない『誰か』との不思議な中らい。
 親しいかと問われれば、友人の内の一人には入るだろうかとハンスは青瞳を僅かに伏せた。
 気に掛けていなかった訳では無い。あの秘密の本で繋がれているからこそ、入れ込んでいる節はあるのかもしれない。単に顔見知りとしての様子見。
 ――儀式とかそういうの……心底、気持ち悪いけどね?

 月祈の儀。廻が満月の夜に行う大切な務め。
 他者から見れば儀式というもの自体、不可解で嫌悪と恐怖を抱くものだろう。分からないから不安が過る。『友達だから』眞田(p3p008414)は隣に座る『掃除屋』燈堂 廻(p3n000160)を見つめた。
 平気なのだろうか。
 この親友の為に自分が出来る事は無いのかもしれない。そんなものがあれば暁月が解決してるはずだ。
 迷っているだけ無駄なのは分かっているのだ。ならば、自分が出来る事はいつも通り振る舞うこと。
「あれ、ハンスさん?」
 廻の声に意識を浮上させる眞田。
「やあ廻くん。そういえばROO振りかな? あ、眞田さんも一緒じゃん! やっほぉ」
 手を振るハンスに眞田も同じように振り返す。
「あれ、ハンスさんだ。久しぶり~」
「眞田さんとハンスさんはお友達なんですね!」
 嬉しそうに目を輝かせる廻に頷く眞田。
「えっとね……最近一緒に遊んだんだよ」
「先日の依頼でお世話になったんだ」
 眞田と廻。何方とも仲良くなりたいからつい手を振ってしまったとハンスは眉を下げる。

「実は僕、この燈堂のお屋敷って余り来たことが無くって。もし良かったら案内してくれないかな?」
 ハンスが差し出した手を廻はぎゅっと握った。
「そういえば俺もまだ見てない所いっぱいあるな。燈堂君が一番好きな場所とか行こうよ!」
「はい! 色んな所ご案内しますね!」
 笑顔で立ち上がる廻に眞田は目を細める。何事も自分に関わる人々が楽しければ良いのだと。
 今この瞬間、自分とハンスと廻が笑っていられるなら、それで十分なのだ。

 ――
 ――――

 ハンスと眞田、廻は無限廻廊の座に来ていた。広い空間にびっしりと呪符が張られている。その一画封印の扉の向こうが月祈の儀の場所に当たる。
 足下から冷気が漂うようでハンスは眉を寄せた。

『――何だ。今日はまだ満月ではないぞ廻よ。そんなに我が待ち遠しかったのか?』
「……っ!」
 封印の扉の向こうから悍ましい声が響く。首を振って一歩後退った廻と彼の肩を抱きしめるハンス。
 二人を庇うように眞田が封印の扉との間に立った。
 まさか『繰切の声』が聞こえるなんて廻も思っていなかった。
 恐怖に廻の身体が震えているのが、抱きしめた肩からハンスの手に伝わってくる。
『くくっ……良い恐怖の感情だ。満月の夜が楽しみだ。ほら、地上に帰るがよい』
 その言葉が聞こえた瞬間、視界が暗転し。
 気付けば三人は本邸のリビングに戻って来ていた。

「おや。廻君達はどこから来たのかね?」
 馬のぬいぐるみを抱えた『双彩ユーディアライト』恋屍・愛無(p3p007296)は突然目の前に現れた廻達に首を傾げる。
「えっと」
「まあ、いいさ。どれ、うちの子を見てくれないか。ぬいぐるみになっても可愛いと思わないかね?」
 しゅうを高い高いしたあと廻の顔にむぎゅうと押しつける愛無。これは彼なりの気遣いだ。
「とはいえ現実逃避をし続けるわけにもいくまい。うちの子は可愛いが」
 問題は暁月の事だと愛無は小さく零す。何時までも見て見ぬ振りなど出来ないのだ。
 燈堂に住む事になった以上、もう『家族』なのだから。
 過去に何があったのか全てを知る訳では無いし、何を想って居たかも分からない。
 けれど、『そこ』が今の状況の原点に違いなかった。三年前、暁月が恋人の詩織を斬ったことだ。
 知るという事は『背負う』と同義。それが望んでいようといまいと。
「全くもって人の世というモノは厄介だ。敵か味方かだけならば、全てシンプルに事が済むだろうに」
 廻の心臓の上をトンと指差す愛無。
「何にせよ、僕には戦う事しかできぬのだ。戦って勝ち取る。戦って守る。戦って――喰う」
 今日の暁月の検診で分かった事だが。
 廻の生命力をあまねからしゅうに渡す事で愛無の能力が向上するらしい。
 リスクを承知で使うのならば、大きな力となる。
 戦う事しか出来ない暴食の怪生物にとって廻は名実共に『極上の餌』となったのだ。


「日向様は元気で可愛いですねえ。しかし無闇矢鱈と攻撃するのは控えましょうね」
 白い花嫁衣装から覗く美しい顔をこてりと傾けた『しろきはなよめ』すみれ(p3p009752)に周藤日向は素直に頷いた。
「警戒され新しいお友達ができなくなるかもしれませんし……それに、太刀筋や手の内を知られては為すこと全て回避されやすくなりますから。情報は力、そうでしょう?」
 すみれの言葉に日向は目をまん丸にして「うんうん!」と首を縦に振る。
「とっておきの刀はいざという時に振るい、それまではじっくりと動静を探るというのも、悪くないと思いませんか?」
「そうだね! すみれの言うとおりだよ! すごいねすみれ。僕、すみれの事とっても綺麗な人だと思ってたんだけど、それに加えて聡明だなんて素敵だよ! わー! すみれ大好き!」
 ぐるぐる周りながら進んで行く様はまるで子犬のようだとすみれは目を細めた。

 すみれは西棟の道場へ足を踏み入れる。
 体育館のような広さがある道場に保護結界を張り巡らせるすみれ。
「道場こわしちゃうぐらい暴れるの?」
「ふふ、念のためですよ」
 すみれは道場の中を見渡す。視線の先には『刃魔』澄原龍成(p3n000215)が居た。

「しっかし、『お姉ちゃん』ねぇ。姉貴じゃなくてお姉ちゃん。……変なモンでも食ったか? 龍成」
「んだよ。言葉のあやだあや」
 揶揄うように口の端を上げた『蒼の楔』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)に龍成はジトとした目で頬を掻いた。
「内科的な診療もした方が良いなら出来るぞ。専門は外科だが。まぁ、冗談は程々にして……」
 本題と行こうかとレイチェルは銀髪を掻き上げる。
「エルは、胸騒ぎがするのです。吹雪よりも、雪崩よりも、恐ろしいもの、です」
 眉を下げて胸を押さえる『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)の頭を龍成は優しく撫でた。
「胸騒ぎねぇ」
「ですから、心構えと、訓練は、大事だって、エルは思いました」
 エルは心の何処かでチリチリと渦巻く予感をなんとかしたくて此処へやってきたのだ。
 それは『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)も同じで。
「龍成氏と異世界に行った時から何かの予感はしてたけど。まさか大義の元、命を狙う奴が現れるなんて」
 昼顔はすみれと一緒に道場へ入ってきた日向に視線を送る。
「君が後悔しないよう、一緒に強くならないとね」
 昼顔は龍成の肩を力強く叩いた。重心が前方に揺らぎそこに待ち構えていたように『龍成の親友』ボディ・ダクレ(p3p008384)の手が龍成の頭を正面から掴む。
「まったく、貴方は変に無茶をする。心配になりますよ。……この前のお化け屋敷で怒った理由も分かりませんし」
 頭を掴んだままのボディの指を引っ張る龍成。
「てめ……言ってる事とやってる事ちげぇ!」
「とにかく、今回の特訓はより一層、鍛えさせて頂きます」
 ボディの隣に立った『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)が「そういうことなら」と腕を振り上げる。
「わたしも力を貸すよぉ、龍成君!」
 本格的な訓練にシルキィは念のため『エネミースキャン』で皆の体力を把握しておくつもりだ。
「誰かが危なくなったら「そこまで!」ってするからねぇ。思う存分やっちゃってぇ!」
 シルキィの合図と共に二手に分かれて訓練は開始される。
「龍成君には、わたしみたいな魔術使い相手の戦い方を身につけてもらうのが良いかなぁ?」

 道場へやってきた眞田とハンス、廻は龍成がナイフを振るうのを眺める。
「澄原君、頑張ってるな~。あの手数の多さは見習いたい……」
「……へぇ、なるほどね。龍成くん頑張ってんだ」
 ハンス達の声は津々流の耳にも聞こえて来た。
 道場を訪れた津々流は龍成達が訓練している様子を見に来たのだ。
「応援してもいいかな?」
「あ、じゃあ僕と一緒に観戦してましょうか。近づくと流石に危ないですし」
 廻と津々流は道場の壁に座り込んだ。
「彼には友達がたくさんいるみたいだし、頼ることも覚えて欲しいなあ……なんて。ごめんね、素人意見だよね」
「いえ、きっと頼るのって必要だと僕も思います。特に戦いは命のやりとりですし」
「そうだねぇ」
 あとで温泉や晩ご飯の時にでも教えてあげようと津々流は龍成の訓練に視線を移す。

「あ、暁月先生! ちょっと相談あるんだけどいいですか? 進路相談ってやつですよ!」
 眞田は訓練を見守っている暁月に手を振った。
「おや? どうしたんだい眞田君」
「先生。俺って、特別な力もないただの人間なんだよね。こんな俺でも何とか戦ってきて、そこそこ経験積めてるんだ。けど、このままじゃだめなんだ。適当なお遊びで刃物を振り回してるだけじゃ。……だから。俺達と手合わせしてくれませんか?」
 視線を上げる眞田に暁月は快く微笑む。
「ああ、勿論構わないよ」
 教え導く事が暁月の役目。教えを請われれば、断る事はしない。
 龍成達が休憩に入るタイミングで眞田とハンス、暁月は道場の真ん中に向かい合った。
「戦う事は大切だけど、無理をし過ぎても良くないからね。休憩がてら、見ることもまた訓練さ」
 ハンスの言葉に道場の壁際に腰を下ろす龍成。
「早くも再結成だね、ハンスさん!」
「おし、やろっか眞田さん」
 ハンスは暁月の間合いへと踏み込み蹴りを叩き込む。
「おぉ、凄いね。速度に乗せた威力とのバランスが良いよ。ハンス君」
 暁月に思い入れなどない。遠慮無しに、その心を暴いてみせたらどうなるだろうかとハンスは青き視線を上げる。けれど、知る事は踏み込むということだ。生憎とそこまでの興味を暁月に持ち合わせていない。
 ハンスには暁月の心が滑稽な程に揺れているように見えた。
 力を入れればすぐに折れてしまいそうな。
 そんな刹那の思考は眞田の動きに合わせて掻き消える。
 暁月の動きを追う為に闇を纏い。手にした短剣で竹刀の太刀筋を弾いた。
 戦力差を考えるならば一瞬で終わるかもしれないと眞田は思考する。たとえ一撃で終わろうとも構わなかった。暁月の研ぎ澄まされた剣尖から得るものは大きい。
「――っ!」
 眞田のナイフは暁月の竹刀を押し返し。されど、竹刀から力を抜くように重心を狂わせた暁月の片腕が眞田を捉え投げ飛ばされる。
「相手が同等の力で押し返すとは限らないから、駆け引きも覚えておくといい」
 倒れた眞田に手を差し伸べる暁月。
「ありがとう、暁月先生。ちょっと解決できました」
 立ち上がった眞田は嬉しそうに目を細めた。

「暁月様、今度は私とお手合わせ願いしても?」
 すみれは眞田とハンスが戦い終わるのを待って暁月に話しかける。
「練磨のため龍成様と模擬戦でもと思ったのですが」
 素敵な友人達が相手をしているようだからとすみれは微笑む。
「すみれ戦うの!? 僕も!」
「日向様は廻様と見学していてください、正座で。真剣を人へ構えた罰ですよ」
「……は、はぁい」
 廻の隣で背筋を伸ばして正座をする日向。
 日向が真剣を龍成に向けたのは彼なりの理由があるのだろう。
 もし、燈堂一門に関する誰かと戦おうとしているのならば、暁月や三妖、廻とて良く思わないはずだ。
 最悪の場合日向はこの燈堂で敵対し孤立無援になり、排除されてしまうかもしれない。
 夜妖憑きとはいえ、子供が策も無しに大人と真っ向から勝負を仕掛けるのは厳しいのだ。
 だからすみれは日向の為に、暁月の剣の癖を覚えさせたいとこの勝負を申し出た。
 暁月と日向は同じ刀使いだ。日向には暁月の不調や癖が見抜けるかも知れない。
 すみれの指先から魔力の粒子が空間に弾ける。
 暁月の竹刀を受け止めるすみれは、廻と小声で話す日向を見て目を細めた。
「嫌われてはいないようで安心しました」
「まあ、日向は私の従兄弟だしね。ちょっと『余所者』に対して過敏だけど、良い子だし。私達には嫌う理由は無いんだよ」
 龍成は燈堂の者ではない。『余所者』に警戒した故に日向は剣を向けた。
「いかなる状況であれ……日向様は私の友達ですから、彼の力になりたいのです」
「ありがとう。日向もすみれ君がいれば心強いと思うよ」
 まだ成人もしていない子供が単身養子に出され、あまつ別の家に来ているのだ。
 表には出さないが心細いに違いない。
「ふふ、ではあとでお菓子を一緒に食べましょう」

 愛無は暁月の前に立ち白い手袋を引っ張った。
「本気で構わんよ。僕も座標だ。そう簡単には死ぬまい。それに、しゅうとの力も確認しておきたい。どの程度のものなのか。何よりも、この手の事は本気でなければ意味がない」
 暁月は竹刀から『なまくら』へと持ち直す。
「構わないけど、一つ覚えておいてほしい。君が獏馬の能力をタガを外して使えば廻の生命力は消費される。その代わり明確に強くなる。言わば『ブースター』だね。使い所さえ見極めれば戦力になるよ」
「覚えておこう。さあ、きたまえ。『全て』喰い止めてやろう。僕にも退けぬ理由があるゆえに」
 暁月の剣先が愛無の皮膚を切り裂く。
「君は弱さを見せるわりには「助けて」とは言わぬよな。兄という立場。家長という立場。生来の性質か。何にせよ狡い男だ」
「狡いか……そういえば誰かにも言われたなぁ」
 返す刃を愛無の腕が捉え、伸びた黒指が暁月を刺した。
「君の元に集まった者は。君が育てた「家族」は、その程度なのか。だとすれば、その思い上がりも叩きのめさねばな」
 人は独りでは生きられないと愛無が吠える。
「そして家族とは支え合うモノゆえに。齢28なぞ、まだまだ子供。頼るべきはたよればよい」
 滲む汗が道場の床にぽたりと落ちた。
「……じゃあさ。お義兄さんとでも呼んでくれるかい?」
「何の話かね」
 突拍子も無い言葉に愛無は首を傾げる。
「まあ、そこは冗談だけど。一年前に約束しただろう……廻のリードをしっかり握っててくれよ。あれは儚すぎるからね。もし、私が居なくなっても歩いて行けるように。引き摺ってでも、ね」
「本当に狡い男だな君は」
 愛無は僅かな苛立ちを込めて暁月に黒腕を走らせた。


「じゃあ次のチームは、龍成さんと、星影さんと、レイチェルさん。もう1つは、ボディさんと、シルキィさんと、エルでどうですか?」
 休憩が終わった龍成達はチームを組み替えて訓練を再開する。
「エルは、後ろから、攻撃と回復を、頑張ります!」
 ボディと龍成を前衛に、シルキィとレイチェルが中衛、昼顔とエルが後衛という布陣だ。
「俺は龍成と得物が違うからな。戦い方はボディに任せて、連携の立ち回り方を見せるぜ」
 レイチェルは龍成の背後から魔法を解き放つ。
「手数の多さを活かし、敵の隙を付いて急所に当てる──だ。こっちに背を向けてる分、安心出来ないかもしれないけど」
「いや、まあ。そこは信頼してるけどよ」
 背を預けるというのは、そういう事だから。
「まあ、急所を突くのは寸止めだから安心しな。流石に危ないからなァ」
 レイチェルの言葉にエルがぷるぷると震える。
「今日は、攻めるお二人を、かちこちにして、足止めを、頑張りますよ! その間に、シルキィさんと、ボディさんが、どーんって、攻撃してくれるって、エルは考えましたから」
「ははっ、そうこなくっちゃな」
 エルの勢いにレイチェルが口の端を上げた。

「魔術使いには、範囲攻撃を得意とする人も多いんだよぉ」
 シルキィは両手に廻らせた糸を開く。
「庇ったり庇われたりしないのなら、あまり固まらないのがコツだと思うよぉ。なので今回のわたしは範囲攻撃オンリー!」
 天井から落ちてくる糸の螺旋を龍成はナイフで切り裂いた。
 その視界が開ける瞬間を狙うボディ。息つく暇も与えぬ連携。
 今まで独りで最前線に立ち、力を振るっていた龍成にとって、研ぎ澄まされたチームワークは理解の外にあるようだった。
「……くそ」
「龍成には私の速度や、武器の振り方、捌き方を五体で学んで欲しい。
 繰り出されるボディの木刀。今まで避け切れたであろう太刀筋に身体がついてこない。
「私の技術は殺人用、言うなれば的確に攻撃を叩き込む物です。きっと役には立ちます」
「痛ぇ」
 肩を押さえる龍成は咄嗟にその場から退く。エルが生み出した氷礫が降り注ぎ傷が増えた。
「……でも殺しは駄目ですからね」

「大丈夫だよ。龍成氏。僕達がついてる」
 転がる龍成の背を押すのは昼顔だ。
「そうだぞ。手数で捩じ伏せろ、相手に何もさせるな。攻めは最大の守りだ!」
 それを支えるようにレイチェルが魔術を展開する。
「龍成氏。人は例え弱くても。想いで強くなれる」
 昼顔は龍成とレイチェルの傷の具合を注意深く観察しながら言葉を繰る。
「弱い僕が戦えるのは、今、レイチェル氏や君が一緒に戦って支えてくれてるからだ」
 仲間が全力で戦えるように支えたいと強く願うから。
「僕はね。僕は……! 龍成氏の心身が傷つく事も何かあって後悔してしまうのも嫌だ!」
 龍成へ赤輝が降り注ぎ傷口を癒していく。昼顔の回復で身体が軽くなる感覚に息を吐く龍成。
「わりぃ」
 思う様に動かない身体。力を失い不安なのだろう。
「……だからこそ、君を支えたいなって思ってる。信じてよ。君が倒れなければ、諦めなければ。僕が絶対に回復してみせるから」
 そしてそれが。弱くなった龍成の強くなる理由の一つになればいい。
 だから動け。想いよ届け。
「まだ、諦めないで!」
「そうだぜ。ヤバい時は、味方をフォローしたり。逆に味方に守って貰うンだ。……死んだら終わりってのを忘れない様に。昼顔みたいな癒し手の力も大事だぜ」
 昼顔の言葉にレイチェルも頷く。
「龍成。……お前には俺みたいに弱い自分を呪い続ける無様な生き方はして欲しくない」
 何度も自分の無力さに嘆いただろう。レイチェルは過去の自分を自嘲するように瞳を伏せた。
「だから、大切な者を守る為にも。幸せを奪われない為にも。強くなってくれ」
 それは心配性な姉貴分からの切なる願い。

「そのままぶつかっても、とっても不利だと、思ったら、まずは皆さんに、頼って下さい」
 エルは龍成へ諭す様に投げかける。
「そうですね。私のこのダメージが見えますか龍成。攻撃一辺倒だと私のような状態になることを知って欲しい」
 龍成のナイフを受け流しボディは竹刀を突き入れる。そこに加えてシルキィの狙い澄ました逃げ場無き糸の斬撃が陽光を受けて煌めいた。
「意外と容赦ねぇな。シルキィ」
「大丈夫だよぉ! ちゃんと体力も見てるからねぇ!」
「多少は身を守るか、庇ってもらうか。防御についてもちゃんと考えて欲しい」
「回復をお願いしたり、攻撃を分担したり、色々出来るって、エルは思いました。そうすれば、切り開ける事も、チャンスもあるって、エルは知ってますから。なのでエルは、前で立つ方々を、支えられるように、後ろからしっかり攻撃を、当てていくのです」
 ボディの戦い方とエルの戦い方は全く違う。けれど上手く連携が取れている。
 独りよがりな戦い方をしてきた龍成にとってそれは新鮮に映った。
「何かあったら私が嫌なんです。無茶したいのなら、その無茶を通せるぐらい力をつけていきましょう」
 ボディは龍成の攻撃を逆手に振り回し投げ飛ばした。
「今は力が無くとも、そうなれるまで、龍成が満足するまで、何度でも特訓に付き合いますとも」
「……いてぇ」
「私は貴方の親友なのですから」
 昼顔とレイチェルに起こされた龍成は差し出されたボディの手を取った。


「廻君、少しお散歩に付き合ってもらっても良いかなぁ?」
 道場を抜け出して本邸までの道のりを歩いて行くシルキィと廻。
 コスモスのピンク色が視界に揺れる。
「一緒に住むって言った時……きっと、ちょっと、本気だったんだ」
「はい」
 ゆっくりと流れて行く風に花弁が舞い上がった。
「だから。『そうなったら嬉しい』って言ってくれて嬉しかったよぉ」
 満月の度に廻は傷付いていく。シルキィには何も出来ないけれど、せめて傍には居てあげたいから。
「もしも燈堂の皆や、キミが良ければ。わたしも暫く、ここにいても良いかなぁ……?」
 首筋から頬に掛けて血が上っていくのが分かる。
 廻の返答を待つ時間に、鼓動は何回鳴っただろう。返って来る答えを予想出来る程には、廻と思い出を育みともに過ごしたと自惚れているけれど。それでも他人に期待を曝け出す事は何時だって怖い。
「はい。勿論ですよ。僕はシルキィさんが大好きなので、すごく嬉しいです」
 手を取った廻がシルキィを優しく見つめる。陽だまりみたいなシルキィと一緒に暮らせるなんて夢の様だと廻は微笑んだ。

「まあ、でも本邸だと手狭になるね。個室は離れにしようか」
「わわ!? 暁月さん聞いてたのぉ?」
 突然降り注いだ声にシルキィは、顔を真っ赤にして繋いでいた手を離す。
 稽古も終わり皆が本邸までの道のりを歩いて来たのだ。
「離れは客室しか無いから食事や風呂は本邸を使う事になるけど」
 暁月は本邸から向かって右方向にある離れを指差した。本邸の近くには二つの離れがある。
「あっちの近い方の離れに廻とシルキィ君、愛無君の三人。その隣の離れに龍成とボディ君でどうだい? 龍成は実家、人が居なくて寂しいんだろう?」
「な!?」
 急に話しを振られた龍成は口を大きく開ける。
「廻から聞いたよ。さみしんぼだね」
「ちげーし! 勝手に決めんな!」
 地団駄を踏みそうな勢いで反論する龍成の隣。ボディがぽつりと零す。
「私と一緒は嫌という事ですか?」
「そ、そんな事言ってねーだろ!?」
「じゃあ、決まりだね。賑やかになるなぁ。……これで廻も寂しくないね」
 眉を下げて微笑む暁月が、急に消えてしまいそうな気がして廻は咄嗟に彼の袖を掴んだ。
「暁月さん?」
「うん? どうしたんだい? 嬉しくて泣きそうなのかな? 廻は愛無君とシルキィ君が大好きだからねぇ。よかったねぇ」
 子供のように頭を撫でられて『はぐらかされた』のに、少しだけ寂しさを覚える廻。

 龍成はボディの腕をひっぱる。
「なあ、嫌だったらちゃんと断れよ。暁月は結構強引だからな。引っ越しとか面倒だろ。他人と暮らしづらいとかあるからさ」
「逆に質問なのですが、龍成は私と一緒に暮らす事が嫌では無いですか? 私は生きている人間ではありません。共同生活で戸惑う事も多いと思います」
「別に気にしねぇよ。此処には色んなヤツが居るし。俺はお前と居ると楽しいんじゃねーかって思ってる。でも、これは俺の意見だ。お前は違うかもしれねぇだろ?」
 一方通行な押しつけは相手を傷つけてしまうと思い知ったから。廻を酷く傷つけ後悔したから、ボディは大切にしたいと龍成は思うのだ。
 こういうのは誰かの意志ではなく、ボディ自身で決めて欲しい。

「そうですね。私は――」

成否

成功

MVP

星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 龍成は訓練で心身共に少し強くなったようです。
 MVPは一緒に弱さを受け止めてくれた貴方へ。

 個別あとがき
 恋屍・愛無(p3p007296)
 検診の結果『獏馬の夜妖憑き』の能力を獲得していると判明しました。
 この能力とは総合的な能力の向上、思食みを含みます。
<祓い屋>シリーズでのみ効果を得ます(対の存在であるあまねの宿主燈堂廻が傍に居なければ効果が十分に発揮されない為です)
 また、しゅうとあまねを通し、廻の生命力を犠牲に能力向上が得られます。

 ボディ・ダクレ(p3p008384)
 燈堂家の離れで龍成と一緒に住む選択が出来ます。
 どちらでも問題ありません。

PAGETOPPAGEBOTTOM