シナリオ詳細
<大樹の嘆き>Natura est inimica
オープニング
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追え、逃がすな!
捕らえろ! 抵抗するなら殺しても構わん――ッ!
「はぁ、はぁ!」
森の中を駆けている。その背後からは追ってくる複数の存在……
ここは翡翠。その国境線に近い迷宮森林の一角だ。
周囲はどこまで続いているかのように錯覚する程広い木々と自然で囲まれている――その中で一人の女性が逃げる様に走っているのだ。年はまだかなり若く見えて、その服装は動きやすい軽装の冒険者、と言った所だろうか。
彼女はこの迷宮森林の中に珍しい遺跡があると聞いてやってきた。
無論目的は遺跡の探索……だが。その途上でいきなり襲われたのである。
魔物に? いやいや違う。あれは――迷宮森林警備隊だ。
「ううっ、まずい! このままだと追いつかれる……!!」
弓を放ち魔術を紡がれ物凄い速度で迫ってきている。
彼らは翡翠を護るレンジャー部隊であり、この辺りは彼らにとっての庭なのかもしれない……しかしどういう事だろうか。不法侵入者に怒っている――にしても随分と殺意が高い気がする。
いや……砂嵐の酒場にて何やら翡翠の『不穏な噂』は聞いていたが――あれが本当の事だったのだろうか?
あまりにも容赦のない追撃。
何度か彼らの眼から逃れる為、煙玉などの煙幕も投じているのだが――諦めない。いやそればかりか。
「ど、どうしてこっちの場所が分かるんだ……! く、くそう!」
どれだけ撒けたかな? と思って再び彼らの足音が近づいてくるのだ。
休息すら許されぬ身であればいずれ追いつかれてしまうかもしれない――
やむを得ず彼女は目指していた遺跡の中に逃げ込まんとする。
内部がどうなっているかは分からない。行き止まりばかりか、遺跡特有の罠があるか、魔物がいるか……けれどこのまま木々の中を走り続けても無駄だろうと意を決して。
「くそ、次はどこへいった!?」
「――隊長! 分かりました、この先にあるテトン遺跡です!」
そして迷宮森林警備隊も侵入者を追って遺跡へと向かう。
「情報をありがとうな、大丈夫だ――余所者なんてすぐに追い出してやるから」
同時。警備隊の隊長が礼を述べたのは……木々へと、だ。
そう――なぜ冒険者の位置が常にばれていたのか? それは木々が警備隊に味方したから。
彼らは自然と共に住まう者。自然を隣人とし、友人とする者達。
そして翡翠という国が外の者を許さぬのならば――この森自体もまた、敵と言えるのだ。
●
「ううん、翡翠の国の状況は知っているかい?
どうもあの国は鎖国政策を実行しようとしているらしいね……」
迷宮森林の近く――そこへと辿り着いたのはイレギュラーズ達とオームス(p3y000016)だ。鋼鉄の国や神光の国に次いで、今度は翡翠でもR.O.Oの……所謂かな『イベント』が始まろうとしているらしい。
それが『大樹の嘆き』と称された催し。
翡翠が余所者を排し、閉じこもろうとしている――それではどうにも困る者達がいるのだ。例えば微かながら翡翠のキャラバンと取引を続けていた伝承の貴族や、翡翠の貴重な技術などを求めし者達が。
「という訳で遊楽伯爵――まぁといってもR.O.OのNPCだけど――
彼から様子を見てきてくれないかと頼まれてね。ま、これもクエストって事かな」
「情報収集をしろ、と?」
「そうだね。そしてこの先で何やら冒険者が迷宮森林警備隊に追われているらしい……その人物を助けたり、或いは追っている迷宮森林警備隊を打ち倒して彼らから話を聞いたりすれば多少情報を得られそうかな」
一応『情報を少しでも入手する事』がクリア条件らしく、冒険者の生存の有無は関係ないらしい。敵として主となるのは警備隊だろうか……彼らは森に長けた者達。弓や魔術を用いて攻撃してくることだろう。
――だが最も警戒すべきはこの大自然そのものかもしれない、と。
「いいかい。翡翠っていう国はね、自然が友人だ」
ならば翡翠が余所者を敵と定めたのなら、自然も彼らに協力するだろう。
いや自然ばかりのみならず……精霊の類もそうかもしれない。
「周囲を見落とさない様にしようね。多分大きい木とか程、警備隊と意思の正確な疎通が可能になっているかもしれないから。そういうのは避けて、精霊の気配も感じたら注意しておくのが無難かもしれない」
とは言え小さい草や花全て全てと正確な意思を交わせる事が出来る――訳ではない、筈だ。だから目立って大きい木々などを主に注意すべきだとギルオスは紡いで。
「やれやれ。一体全体何が起ころうとしてるんだろうね……」
そして見据える。視線の彼方まで広がっている――迷宮森林を。
余所者を寄せ付けないかのような気配が、滲み出ている気がした。
- <大樹の嘆き>Natura est inimica完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年09月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「倒しちゃいけねぇ監視役があちこちに存在している中で情報収集しろってか。
中々に面倒くさい仕事を持ってくるじゃないか、オームスくんよ。
これは少しばかり罰を与えねばなるまいな。動くんじゃあないぞ」
「わわわ止めるんだ! もふもふするのは、くすぐったい感覚が~~!」
「やだ、なんか茶色いモフモフしたのがいるのです! よく燃え……もとい柔らかそう!」
翡翠の森。足を踏み入れながら『Lightning-Magus』Teth =Steiner(p3x002831)はオームスの球体に全力ハグ――至高のモフモフがそこにあったのだから仕方ない。猫吸いの感覚を味わいながら、しかし周囲の警戒も行っている。『爆弾魔』アレキサンドライト(p3x004247)もオームスの毛並みに心動かされるものだ――別の意味で。
ともあれTethの行っている警戒は、ドローンだ。
視界を共有せし文明の利器は高い位置を飛びながら眼下を見下ろして。
「それにしても……深緑……というより翡翠は閉鎖的と聞いてますが、にしても今回のは強硬策に見えますね。あまりに乱暴が過ぎるというか、手段が早すぎるというか……」
「ま、どこぞの領域に迂闊に侵入して追い回されるのは自業自得じゃが、今回は良い口実になろう! わしらは『救助』しに来ただけじゃからな、ウム。善意の第三者じゃ!」
同時。Tethから得られる周辺情報も得ながら『傘の天使』アカネ(p3x007217)と『きつねうどん』天狐(p3x009798)らも歩を進めてゆく。翡翠のあまりに性急的な行動には疑問を抱くアカネだがまずは依頼の為の行動をと、目前に注意を注ぐ。
どこかで助けを呼ぶ声が聞こえないかと――危機を感知する術を働かせ、天狐も周辺の状況を常に取得すべく音の反響を耳に捉えるものだ。微かな異変でも察知し、そして太い木々の類を避けて。
「森のあらゆる場所に監視カメラがあるようなものか……随分警戒しておるのぅ。本当に何があったんじゃろうな? ま、じゃが、それでこそワクワクするというものじゃ!」
いざやレッツゴー、ってやつじゃの!
往く。厳重に守られた場所であるからこそ得られるものは貴重であろうと。
周囲に注意はしつつ――歩みを進めていくのだ。
今日という日は自然という存在が『敵』の様なものだから。
「……R.O.O世界とは言え、故郷での異変となれば捨て置けませんね。自然を避けて進まなければならないとは、なんとも少し悲しい限りですが……」
その事実に『アルコ空団“蒼き刃の”』ドウ(p3x000172)は些か複雑な心境である。
普段は親しみをもって接する隣人の筈がこちらを敵視している……
やむを得ず、樹木を避けつつ目指すは遺跡だ。
念の為にと彼女が展開する音の遮断結界が足音を余分に漏らさぬ。
「それにしても大樹の嘆き、かぁ。偶然なのかな……」
「この間のクエストの続き? 違う? でも関係ないとは思えない単語よね」
その時。慎重に遺跡方面へと進みながら呟いたのは『大樹の嘆きを知りし者』ルフラン・アントルメ(p3x006816)と『月将』タイム(p3x007854)だ――彼女らは以前『大樹の嘆き』という言葉を知った事がある。
あの時のクエストと関係が――? 痛くて辛い、あの大樹の様な出来事が――?
「でも、なんだろ……なんか、嫌な予感がする……
うん……あっ迷い込んだ人を探しているだけだから、安心してね」
ただ。ルフランはなんとなし胸の奥で不穏なる気配を感じていた。
それがなんなのかはまだ分からないが、しかし。このまま放置してはおけぬと――周囲。小さな植物たちにも声を掛けながら進んでいれ、ば。
瞬間。眼前より至る小さな影があった。
小動物か――? 一瞬そう思ったものの、違う。あれは!
「精霊――! まって、まずはお話をしてみましょう。上手く行けば情報が得られますし、それに何より――話さないと何も分からないですしね」
見えた。それは、翡翠に住まう精霊だ――
であればと。まずはアカネが言葉を伴いて精霊と意志を疎通させんとする、が。
「おっと、問答無用ですか? 随分と好戦的ですね……!
ああいうのは報告されても面倒ですので消し飛ばしちゃいましょう!」
アカネが友好の意志を指し示そうとする前に呪文を紡ぎ始めた――故にアレキサンドライトが即座に看破し、即座にその手に爆弾を握る。幸いというべきか、一匹だけで行動している様だ――死にもしないようだし無力化してしまおうと。
投擲、直撃、爆発音。ついでに聞こえてくる不吉な呪われた声が響き渡る……
「……ドウ殿の音声遮断も相まって、排除には容易いしな」
であればと、他に同様の精霊がいないか。或いは大木がないかと『闇祓う一陣の風』白銀の騎士ストームナイト(p3x005012)は周囲を目視確認。戦闘音……に関してはドウが張り巡らせている結界により漏れていないようだ。
未だ注意は怠れねど、彼女のおかげで比較的戦闘の負担が軽くなっていると言えるだろう――後はどれだけ危機を回避できるかと、思考しながら。
●
「さて……なんとか着きましたが、急がねばなりませんね」
「ふっとい木々とかは避けてきたから漏れてはおらんと思うが、多少時間が掛かるのはやむを得なかったしのー。さてさて警備隊はどちらに進んでおるのか……」
テトン遺跡からは不穏な気配が漂っている――そこへとドウらは辿り着いた。天狐が耳を澄ませ、反響音を確かめんとすれば、おお響いている。問題は救助対象がどこに潜んでいるのかという点だが……反響音だけでは特定まではし辛いか。
「――進むしかあるまいな。なに、どうせ対話を主軸とするのだ」
眼を閉じ、むむむっと耳澄ます天狐――
しかしある程度だけでも分かれば良いと、言うはストームナイトだ。
イレギュラーズ達の方針は一致している。それは――警備隊相手には不殺を貫く事。
こちらからは絶対に手を出さない。故に。
「待って――! あたし達は幻想種だよ! この人達も仲間だから安心して!!」
ミーシャを追い詰めんとしていた警備隊へと接触する。
声の主はルフランだ。現実の幻想種の姿にて往く彼女は確かに同族の様に見え、そして。
「わたし達は荒らす気も戦う意思もありません。騒ぎを聞いて駆けつけました。
――お話出来ませんか。迷宮森林の警備隊さん」
「むむっ……何者だ貴様ら。騒ぎを聞いただと……?」
「もし大樹の嘆きを畏れているのなら、どうか話を聞いて。外の者を排除するだけで解決なんて、きっとしないわ」
タイムも同様に彼らへと語り掛けるものだ。
空気がピリピリと緊張している。正に一触即発という警戒心……
遺跡の隅に確認できたミーシャを、どうにか庇えないかと確認しながら。警備隊には敵意が無い事を伝えて、更にストームナイトも頭は低く、しかし誇り高く凛として――
「然り。我らとて、心持つ者に嘆いてほしくない。隣人には笑顔でいて欲しい。きっと何か、理由があるはずなのです。少しでもいい、違和感程度でもいい、思いつくことがあれば話していただきたい――それが解決の道へと至りましょう」
言葉を紡ぐものだ。共に手を取り合おう。冷静になろう、と……しかし。
「信用できんな――そもそも余所者を率い、庇い建てするなど同族であっても裏切り者に等しい! 大樹が折られる事件が発生している昨今、貴様らの様な者も等しく敵だ! 投降せよ。事情は牢獄の中で聞いてやる!」
「大樹が、折られ……待って! 違うの、そうじゃないの。私達は大樹の嘆きの声を……」
「やれやれ。聞く耳もたず……という所ですかね? 何が彼らをこうしているのだか」
ルフランが警備隊になおに声を掛ける――が。アレキサンドライトがこっそりと白き祈りを捧げて『敵意』を確認しようとしてみれば、おお。あちらこちらから敵意の反応ばかりではないか!
――まるで少し前の深緑を見ているかのようだ。
アレキサンドライトは懐かしさをどことなく感じてしまう。今も外の者を嫌う者もいるだろうが……ここまで明確に敵視するなど、中々。
「わぁ……なんていう強硬的な姿勢なんでしょうか。
これが今の翡翠のデフォルトなんですかね?」
彼らの闘志が見る見るうちに高まっていく。別の個所からは、班として分かれていた筈の警備隊の足音がこちらに接近してくる音も聞こえており――このままでは不利な位置で戦闘が始まってしまいそうだ。
アカネは彼らの血気盛んな言動に頭を抱えつつ、そしてTethは。
「――如何なる理由であれ。自分から暴力を振るうって事の意味は、分かるよな?」
覚悟しろ、と紡ぐものだ。
必死に呼びかけるタイムやルフランに耳を貸すつもりがなく、鎖国主義を貫くとは――自分達の方から敵対心を煽ってどうするつもりか。頭を冷やしてもらうとしよう!
警備隊の一人が弓矢を構えたのを皮切りに動き出す。
手を出すつもりはないが向こうから事態を武力に移行するというのなら。
「翡翠国内で進行する怪しき事態、このストームナイト、決して看過できぬ!
わが剣の輝きによって必ずや闇を照らし出してみせよう!
――故にまずは汝らが目を覚まさん。覚悟ッ!!」
少しばかり大人しくなった貰おうと、ストームナイトが高々と名乗るものだ。
反撃を開始していく。だが、その前に保護すべき対象もいる――それがこの遺跡へと入り込んだミーシャだ。オームスと共に敵陣が整う前に切り抜け、彼女の傍へと近寄ろう。
「ミーシャ、だったか。無事で何よりだ。
我々はこの国の調査に来た者。情報源として、君を保護しよう」
「た、助かるよ! 正直、もう駄目かと思っていた所だったんだ!」
知っている事は後で話すよ! とミーシャが言えば、オームスが護衛となりて戦おう。
――警備隊は集い始めている。班を分けている間に後ろから強襲なりをすれば各個撃破出来る機会でもあったのだが、しかし対話をこそ優先したイレギュラーズの姿勢はこちらからの攻撃などご法度であった。
これはやむを得なき事態。争いを起こすものではない証左として……
「しゃあ! 見るのです、これぞ秘伝の爆弾パンチッ! 友好の証です!」
直後。アレキサンドライトが思いっきり警備隊の頬を爆弾でぶん殴ってやった。
――えっ? ほら! 爆弾なのに殴ってるけど爆発してないのです、殺し合いの意思はないのです! てか、火を使ってくると引火するぜ? お得意の火を――使ってみな――
「……使えるもんなら、ですけどね?」
「くっ! ひ、卑怯な――!」
「失礼なッ! 誰がサイコパスやねん!」
そんな事いってな、そう紡いだ警備隊の逆頬にもう一発叩き込んでやった。
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炎を纏った弓矢が放たれる――深緑であれば信じがたい光景だが、ここは翡翠。
「むむむっ。でも、ちゃんと考えてきてたもんね……! いっくよ!」
故に驚くほどの事ではないと、ルフランは自らに炎を防ぐ加護を齎して。
同時に警備隊の眼を釘付けにするべく敵に光を放つ――
それは甘いキャンディとして手元に戻ってくるルフランの秘儀。
「あたしごと行っちゃっていいよ! だいじょーぶ!」
「これ以上は進ませんよ。行きたいのならば、我らを倒してもらおうか!」
そして同様に。ストームナイトもまた、不殺の意志を心掛けた一撃を放つものだ。
聖なる銀風を纏った刀身が輝き、敵を打つ――改心しないならもう一発、と。
「……人死にが出ては話し合いもままならなくなりますからね。いえ、それ以前に……」
咎人ではない同族に手を掛けたくはないのです、とドウは思考するものだ。
嵐の加護を身に纏い、影の刃を形成し――死角より一閃。彼らの行動力を奪わんと行動を重ねて……
「怯むな! 翡翠を、我らが自然を守るのだ! 隣人たる大樹を汚させるな!」
「……そうよね。貴方達は、ただ木々を護りたいだけなのよね」
さすれば隊長格らしき人物が周囲に声を掛け。
その有り様にタイムはふと呟きを零すものだ――
警備隊に味方している精霊が、木々がいるように。彼らの行いは強硬的なれど……翡翠にとっては正義に等しいのだろう。大樹の嘆きが発生して困るのは翡翠の人達。外からの干渉を警戒するのは当然と思えば。
「でも――いつか必ず皆で握手する為にも」
いたずらに敵対心だけを加速させる訳にはいかない。
故に放つ。足を前に踏み出しながら、拳に力を。込めた力を相手の身へ――
月華掌・雪嵐。
前衛担う警備隊の一人を叩き伏せながら、命は奪わぬ様に気を付けて。
「怯むな! 数ではこちらが上だ――包み込め!」
「そうはさせんよ。おぬしが中心になっておるのならば、おぬしを潰せばよかろう――とな!」
それでも警備隊は隊長格を筆頭にイレギュラーズ達に猛攻を加えていく。
遺跡の精霊らも加わり苛烈だが、しかし天狐は勝機を見ていた。
それは遺跡内部での戦闘が故に、数の有利を完全には活かし切れていない事。もう一つは――隊長格の姿を捉える事が出来た事。
己が運命を加速させ、幸運を己に齎せば往く。
荒々しい無数の攻撃を展開させ防御を突破するのだ。
乱れ打つ、その撃が幾つもの矢に穿たれながらも届きて。
「よし、陣形が乱れ始めました……! このまま!」
「ええ行きましょう――ッ! うらー! 友好的爆弾パンチ!!」
さすれば見えた陣形の穴に、素早くアカネが傘を食い込ませ暴風を発生させる。
これもまた殺さぬ様に細心の注意を重ねながら――更に傷を広げるべく、アレキサンドライトの爆発しない爆弾パンチで一人一人説得(物理)していけば数多の傷と引き換えに敵陣を完全に食い破るものであった。
「ば、馬鹿な。我々が……余所者なんぞに!!」
「なぁなぁ。その大樹ってのはなんなんだ?
何の理由もなく鎖国するって事は無ぇよな。そこんとこ教えてくれよ」
さすれば。そこへとTethが言葉で切り込んで往く。
残存の戦力を穿ちつつ、言の葉を向ける先は戦闘力を奪った隊長へと。
「何が嘆いてんだ? そして――『誰が』泣かせてんだ?」
「知らぬ! しかし、翡翠の民が大樹を害する訳がない……これは余所者の仕業だ! 現に大樹に近付く見知らぬ者を見かけたという報告も入っている! 故に余所者は全て捕らえるのだ!」
要するに、不審人物がいたから余所者を片っ端から狩っている訳か――
些か短絡的ではある。が、翡翠の民がわざわざ自然を傷つけるというのも確かに妙だ……それにミーシャの様に勝手に侵入する者がいれば尚更に。
「ね、ミーシャさん。正直に謝って許して貰おう? わたし達もお願いするから」
「あ、ああ……うん。分かったよ、今日の所は帰るよ。実際、砂嵐でも噂は出てたんだよね……翡翠でなんか妙な魔物だか精霊が出てるっていう話はさ。でもまさか排除されかかるなんて……」
さすれば、砂嵐より至ったミーシャが言を紡ぐものだ。
彼女の話だと、どうにも砂嵐も幾らか情報は掴んでいるらしい……流石は隣国と言った所だろうか? 『大樹の嘆き』とは魔物の様な精霊の様な不思議な存在であり、永き時を生きた大樹がなんらかの危機に陥った際に放出する存在で――
「さぁさ友好の為に美味しいうどんでもどうかの。喰らいたくば話してもらおうか……!」
「しっかし。マジで美味ぇな、天狐のうどん」
同時、ずぞぞ。Tethが天狐のうどんを啜り、体力を回復しながら。
捕虜たちにも振舞っていく――聞きたい事は山ほどあるじゃろうし、と。
「それにしても皆炎を使いますね……自然が燃えるから炎はあんまり好まないイメージが私にはあったのですけど……これは良いのです? これで嘆きが発生するのでは……?」
「何を言うか。翡翠のお国柄――炎を使うなんぞ昔からの事!」
アカネの疑問。されど、それは昔から(自然を燃やさなければ)どうでもいいのだと! おいおいおいそれでいいのか翡翠よ。深緑と違うなぁ。ともあれ……
「……害意が無いと、信じてはいただけませんか?
我々は閉ざされた翡翠の状況が知りたいだけなのです。お願いです、ほんの少しでも……」
「……む、ぐぐぐ。余所者への嫌疑で各地共に排斥の流れがあるというだけの話。
自然達も余所者をほとんど敵視している――貴様らがこの先進むのは容易ではないぞ」
であれば、ドウもまた言葉を紡ぐものだ。
それほどに翡翠は全体が過激な行動に出ているというのか。
……これは思った以上に『大樹の嘆き』が翡翠全体レベルで発生しているという事か?
一件や二件程度の事象で、流石にここまでの反応をする事はあるまい、と。
「『分霊』ティアーズ・テレマと……大樹の嘆きの声を聴いたよ」
そして言う。ルフランは『奴』と出会った事がある、と。
あんな悲しい声、もう聴きたくない。
「助けになるから、翡翠に何が起きてるか少しでもいいから聞かせてほしいの」
「……分からぬ。各地で斯様な事例があまりに多発している、という事ぐらいしか……それ以上の詳細を聞きたくば、ファルカウのお歴々なら知っているやもしれぬが……」
「ファルカウ、かぁ」
……翡翠にあたし、いるのかな?
ルフランは想像する。R.O.Oの世界には『己』がいたりもするならば。
もしかすれば――この世界の『あたし』が――どこかにいるのかもしれないと。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
翡翠では妙な事件が起こっている様です……警備隊から多少なりに事情を聞けたのは、皆さんが不殺を貫き被害を出さなかったからでしょう。さてさて内部ではどのような事件が起こっているか……それはまたいずれ。
ともあれありがとうございました。
GMコメント
さぁ。排他的な翡翠の国での物語です……
ご縁があればよろしくお願いします。
●クエスト達成条件
翡翠内部の情報を少しでも入手する事。
●フィールド
翡翠の国。迷宮森林という大自然の中です。
少し進んでいると『テトン遺跡』という石造りの古ぼけた遺跡が存在してます。
内部の構造は正確には不明ですが、あまり広くは無いようです。全体が全て石で作られていて、複数の通路と最終的に大広間が奥にある程度の模様。後述の冒険者はこの中に逃げ込み、警備隊が少し遅れて入っていくようです。
なお周囲の自然は何故か余所者を非常に敵視しています。
大きな木などは警備隊と意志を交わせやすいらしく、そういった者の近くを歩いてしまうと自然を順に伝って警備隊に情報が送り届けられて……しまうかもしれません。今回のフィールドはおおよそ敵に有利な点が多いです。ご注意を。
●敵戦力
・迷宮森林警備隊×??
迷宮森林を守護するレンジャー部隊です。幻想種のみで構成されています。
攻撃力などよりも『反応』や『命中』などに優れ、基本的に連携を重視しています。
強さはまちまちですが、隊長格が一人いて、その人物はレンジ2以内の味方の能力値を指揮によって上げるようです。反面、隊長たる人物が倒れれば一気に連携なども瓦解していくことでしょう。
テトン遺跡内部ではチームを複数に分けて行動し、侵入者の探索を起こなおうとするようです。
なお。現実の深緑と異なり炎の魔術を使う事にも躊躇いがありません。
その際は【火炎系列】のBSを付与してくる事があります。
彼らを打ちのめした後であれば話を聞きだす機会もある事でしょう。
・精霊×10
迷宮森林に五体。テトン遺跡内部に五体います。
彼らはどうも外の者を非常に敵視しているようで、攻撃を仕掛けてきたり近くに警備隊がいれば協力して余所者を排除してこようとします。理由はなんでしょうか……?
HPが減ると逃げ出したり、戦闘不能になると姿を保てなくなるようですが死にはしないみたいです。
精霊らが行使するのは神秘系遠距離攻撃、かつ炎の魔術です。
【火炎系列】のBSを付与してくる事があります。自然の精霊なのに……!
意思の疎通が可能かわからないので、情報が入手できるかは不明です。
●冒険者×1名
名前はミーシャ・ウェルド。テトン遺跡になにか珍しい者があると聞いてやってきた砂嵐からの冒険者です。
冒険者として平均的な実力をもっています……が、警備隊に追い立てられ、たまらず遺跡内部に逃げ込みました。現在は遺跡内部でどこか隠れる場所がないか必死に探している様です。もしも合流できれば協力出来るでしょう。
●オームス(p3y000044)
ギルオス・ホリスのアバターです。皆さんの支援をする為にやってきました。何か囮などやらせてみたい事があったら指示を頂けるとその通りに動きます。
攻撃時は周囲に浮かんでるミニオームス君を掴んで投げます。
●サクラメント
翡翠方面のサクラメントは停止状態ですが、クエスト開始と共に迷宮森林ギリギリのラインに特殊なサクラメントが一つ発生します。万が一死亡してもここから再ログインが可能です。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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