シナリオ詳細
<半影食>影虚ろの命
オープニング
●<半影食>影虚ろの命
9月に入り、今迄のうだるような暑さが段々と和らぎ始める頃。
練達の一区域、希望ヶ浜は相も変わらず日々が過ぎては去り、日常が繰り広げられている……そんな雰囲気の漂う街角。
「……ふぅ……」
疲れ気味なサラリーマンの男性が、コンビニで何かを買い、出てくる。
コンビニ袋には……恐らく帰宅後の夕食。
仕事帰りに自炊をする様な元気も無く、コンビニ飯で住ませたくなるのは、まぁ……分からなくも無い事。
だが、そんな彼が遭遇するのは、数奇な事件。
「はぁ……早く帰って、飯食べて、寝よ……」
スマホを弄りながら、ポツ、ポツ、と灯りが灯された街路を歩く……前は見ていない。
でもいつも通り慣れた道だから、身体に染みこんだ帰り道は問題無く帰れる筈。
だが、暫く歩いて、家の前に着いた筈……顔を上げると。
『……え?』
目の前にあるのは自宅……ではなく、まるで剣と魔法のファンタジー世界に出てくるような、石造りの小振りな建物。
『おかしい……ここに、俺の家があった筈なのに……え、えっ……!?』
更に周囲を見渡すと、全く見覚えの無い石造りの建物が立ち並ぶ光景。
その光景に狼狽している所に、更に空に輝く月。
ただ、陽側がじわじわと月を奪い返すという、奇妙な食を見せる月影。
『なんだよ、何なんだよここはよ……!! 俺は、帰りたいだけなのによ!!」
段々とその感情が苛立ちへと変わり、叫ぶ彼。
……そんな彼の負の感情を感じ取ったのだろうか、遠くの空から聞こえてくるのは、鴉の鳴き声。
『カァー、カァー……!』
その鳴き声は、段々と近づいて来きて……彼の周りを取り囲む。
『この……俺をバカにしてるのか!? ふざけんじゃねえ!!』
更に怒り、コンビニ袋を落としながら、拳で殴りつける彼。
しかし鴉はひらりと躱し、更にカァカァと鳴いて挑発。
挑発しきって、完全に頭に血が上った彼は暴力を振るうが……普通の鴉で無い彼らは、それを容易く躱して行く。
そして……一匹の鴉が、彼の隙を突いて脳天からダイブ。
『ガ……ッ……!?』
そのまま地面へ崩れ墜ちた彼の上に着地した鴉。
……次の瞬間、鴉の身体は僅かに発光し……彼の身体へと吸い込まれていく。
そして……。
『……ガハハハ……コロス、コロスゼェ……!!』
目が血走り、その身は闇と共に黒い羽に覆われた彼が立ち上がる。
そして、そんな彼の周りに先ほど迄反旗を翻した鴉達が集結するのであった。
●
「皆さん……今日もここに来て頂けたのですね? では、早速ですが……お話聞いて貰っても、宜しいでしょうか?」
と、偶然カフェ・ローレットを訪れた君達に向けて、音呂木・ひよのが声を掛ける。
そして、早速。
「皆さんも知っての通り、ここ、希望ヶ浜での悪性怪異:夜妖<ヨル>の活動が最近活発化しています。その理由は今迄無害であった神が、現世に急速的に影響をおよぼしている、という現象が起きているから、というのはもう知っていらっしゃいますね?」
「ですが、この現象と共に別世界のR.O.O『帝都星読キネマ譚 第二幕』が始まったのです。同時に、この希望ヶ浜に『奇妙な月』が隠れるという現象が発生しました。皆既月食と言えばそれまでですが……ですが、徐々に日が月を喰らうかのような動きは、説明出来ません」
「『侵食の月』と、希望ヶ浜に現れた『異世界への門』……何らかの関係はありそうですが、詳細は分かりません。ですが、異世界の門の先にはこの希望ヶ浜とは全く違う光景が広がり、迷い込んだ人達に幻惑を見せています……そして、その幻惑に発狂し、夜妖憑きとなってしまう人も出現してきてしまっているのです」
「皆さんに集まって貰ったのは正しくそこです……どうやらこの異世界に迷い込んだ一般人の方が、夜妖憑きとなってしまった様なのです。夜妖がつけいる隙が何故起きたのかは分かりませんが……彼を放置しておく訳には行きません。皆さんの力で、どうにか彼を救出してきて頂きたいのです。皆さん……宜しく御願いします」
と、頭を下げるひよのなのであった。
- <半影食>影虚ろの命完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年09月23日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●怒りの鉄槌
9月となり、日中の暑さが和らぎ始めるここ、練達が一区域、希望ヶ浜。
平々凡々な生活を過ごす一般市民達が生活を営み、仕事をし、人々の不平不満が事件となってニュースになる……でも、大きな事件になる事は無く、人々の記憶に刻み込まれては忘れ去られていく世界。
……そんな世界を過ごす、何の変哲も無いサラリーマンの男性が……夜妖に疲れてしまうという事件をひよのから聞いたイレギュラーズ達。
「うーん……確かに疲れて帰ってきたら家がなくなってたってのは辛いよね! 会長なら泣いちゃうぜ!!」
サムズアップしながら笑みを浮かべる『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)。
そんな彼女の言葉にああ、と肩を竦めながら『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)と『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)が。
「全くだ。仕事帰りに異変に巻き込まれるとは同情するね」
「ああ! 仕事が終わって、食うもん喰って酒飲んでねる! それを目前でぶち壊されたって言うんなら、まぁ怒りたくなる気も解るぜ!」
仕事終わりの疲れを取るための、ほっとする一時……誰しもが持つ日々のルーチンの中で、邪魔されたくない一時。
その一時を邪魔された男性が、夜妖に憑かれてしまったというのが今回の事件。
勿論ただ単に邪魔するのではなく……彼を見覚えの無い不可思議な世界へと引き釣り込み、悪夢を見せた上で夜妖が取り憑くというコンボを今回の夜妖達は仕掛けてきたのである。
「……でも、カンザキさん……やはり、こう、ストレスが溜まっていたりしていたのでしょうか……?」
そんな事件を聞いた『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)は、怒り狂い夜妖化したのかもしれない、という話にふと思う。
勿論怒りという事は、冷静な判断力を失っている状態であり、心の隙が生じているタイミングでもある。
夜妖達が鋭く、この様な心の隙間を狙っているとしたら……この様な被害は、イレギュラーズ達が感知出来る他にも、多発しているのかもしれない。
「確かに、私も以前、同じような人を救出した事があるんだよね……その時も、鴉が取り憑いて、一般人が夜妖になっていたのよね……鴉が人に取り憑きやすいみたいな伝承があるのかな?」
小首を傾げる『空に願う』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)だが、それに。
「ふむ……古来より、月と狂気は深く結びつけられるものではあるが、よもや、ここまで露骨な形で顕現する事になるとはな……思って居る以上に、限界近くまで来てしまっているのだろうか?」
顎に手を当て、思慮するのは『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)。
それに『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)が。
「確かに……最近この希望ヶ浜で起きている事件は、月が赤かったりと、普通は見ない色をしていますしね。不可思議な力が月に影響をおよぼしているか、それとも逆なのかは分かりませんが……」
と言うと、『清楚にして不埒』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)と錬が。
「うーん……そうね。それ以上にこの依頼……すごく違和感があるんだよね……R.O.Oの方で起きている侵食騒ぎもあるし……もしかして……?」
「そうだな……今回の異界が趣が違うのは確かな様だ。調査が必要かもしれない」
と、そんな二人の言葉にうんうんと頷く茄子子が。
「そうだね! 早く夜妖憑きと、変な世界から解放してあげないとね! ほら、みんなこっちこっち!!」
と仲間達を急かし、イレギュラーズ達はひよのから聞いた場所へと急ぐのであった。
●怒りと力
そしてイレギュラーズ達は、ひよのから聞いた場所へ。
「さて……ここの辺りの筈だが……」
と先頭を歩く汰磨羈が、周りを見渡しながら歩く。
今の所は、何の変哲も無い練達の街並みの光景が広がっており、先の方向に視線を向けても、その街並みは変わらない。
「見渡す限りは、普通の街並みなんだよね……確かひよのさんが言うには、ファンタジー世界に出て来る様な街並みだって言ってた筈だけど」
とミルヴィが小首をかしげると、それに茄子子も。
「うんうん! 和から洋って所かな!? ここは間違いなく和だよね! どこから洋になるのかな? 歩いてれば見えてくるかな? 犬も歩けば棒に当たるって言うしね!!」
いつもどこでも元気溌剌な茄子子。
ともあれ、異世界への侵入方法ははっきりとしていないので、兎に角この辺りを歩き続ける他に手段はないので、暫しの間、歩き続ける。
……すると。
「……ん? あれ? 街並みが、変わりましたね」
迅が立ち止まると、今迄横目に眺めていたはずの、希望ヶ浜の街並みが不意に洋な街並みへと変わっていた。
立ち止まり、振り返ってみてもそこには希望ヶ浜の街並みは無く、同じ街並み。
「……本当に今回の異界、随分と趣が違いますね。今迄は和風な雰囲気ばかりでしたが……」
とステラが呟くと、ヴェルーリアは。
「そうだね……今回は場所も特殊だし、カンザキさんを救出後に調査も行いたい所だね。取りあえず、視界は確保しておこうか」
と言いつつ、己が身体を僅かに発光させ、周囲の視界を確保。
すると、遠くの方から。
『カァー、カァー--!!』
『っ、おい! 近づいてくんなよ! カァカァ鳴きやがってうっせえんだよ!!』
鴉の鳴き声と、大きな叫び声を上げる男の声。
「……あっちの方か? 皆、行こう!」
と錬が先行し、その声の方向へと駆けて行く。
数分駆けると、薄暗い光景の中で鴉に襲われる男の姿。
『くそっ……ふざけんなっ!!』
頭上を飛び回り、おちょくる鴉達に対し、拳を振り上げる男……と、そこに別の邦楽から、急降下して特攻を仕掛ける鴉。
まるで気絶するかの様にその場にバタン、と倒れこむと……すぐにむくり、と身を揚げて、その身に鴉の羽がざわざわっ、と生えていく。
「早速取り憑かれたか……本当、何時の時代になっても、ストレスは大きなトラブルの元だな、まったく」
やれやれ、と溜息を吐く汰磨羈に、ステラが頷きつつ。
「では……拙は鴉共の迎撃に当たらせて頂きますね」
と己が周囲に茨の結界を展開させると、それに汰磨羈が。
「注意は忘れるなよ? 奴らの身体は漆黒……この闇に紛れるのも容易いだろうからな」
と注意喚起すると、ステラはニッ、と笑みを浮かべ。
「大丈夫です! 闇に紛れる、上等じゃありませんか!」
と言いつつ、タント様のパワーで強化された発光で、周囲を煌々と照らす。
灯りが周囲に展開されると共に、先陣を切ってヴェルーリアが。
「鴉さん、こっちだよ!」
と、己の身体の発光を更にパワーアップし、敵の注意を引き付けつつ、更に怒りでターゲットを己に固定する。
勿論鴉は20匹とかなりの数が居るので、ヴェルーリアだけで全てを引き受けるには難しいだろう。
「取りあえずカンザキさんの対処については、皆さんにお任せします! 僕は怒りを逃れた鴉を倒して行きます!」
と声を上げた迅が、ヴェルーリアの傍らを越えて、薄暗闇の中を飛び回る鴉へ追撃し、更に錬と汰磨羈も。
「俺と二人で手分けして惹きつけて行くか」
「分かった。ならば私も戦列に加わろう!」
と鴉対峙の戦列へと加わっていく。
鴉達に対しては、錬とヴェルーリアが怒りを引き付けつつ、迅と汰磨羈が一匹ずつ討伐して行く作戦。
その一方で、残る仲間達はカンザキ……というか、カンザキだった夜妖をターゲット。
「会長さん、ちょっとタイミングを合わせて貰える?」
「あ、うん、了解だよ!」
息を合わせる。
そしてまずは茄子子が停滞の呪術を発動し、カンザキを足止めすると続いてミルヴィが。
「これで完全に動きを止める!」
と、二刀の剣を交叉し、集中した状態から踊るような足の運びで駆け抜け、敵に麻痺と呪縛を与える一閃を叩きつける。
そして、動きを一時的に封じられたカンザキに対し、ステラが。
「氷槍、霧氷魔、潜り抜けたその先は……残念、拙の腐食結界がお出迎えです!」
と横一線に生み出した氷槍を一斉に射出し攻撃。
『グゥ……クソ、ガッ!!』
と、攻撃を受けたカンザキが反撃の拳を振り落としてくるが、その一閃はブライアンが身を持ってカバーリングしつつ、鋼の驟雨を敵の体に集中砲火する。
そしてイレギュラーズ達の攻撃が一巡した後に、次々と攻撃を嗾けてくるのは鴉。
発光で灯りを灯したお陰もあって、闇の中から不意撃ちを撃たれるような事は無く、彼らの攻撃を落ち浮いて対処していく。
鴉達の攻撃が一巡した頃には、様々な所を飛び回っていた鴉達も、カンザキの近くにある程度の数が集結。
「なるほど、奴の習性は鴉そのものの様だな。ここまで集まるのが御上手とはな……!」
「ああ。だが集まって来るなら好都合。次は纏めて薙ぎ払う!」
汰磨羈と錬がそう言いつつ、次手においては式符より氷の薙刀を鍛造し、周囲一帯を薙ぎ払う。
中々強力な一閃により、次々と討ち倒されていく鴉。
『クッ……ザケヤガッテヨ!!』
半ば鴉の夜妖に支配されているからなのか、恨み節を叫ぶカンザキ。
……そんな彼の言葉にミルヴィが。
「心半ばまで侵略されているみたいね……」
静かに瞑目。
とは言え……彼は声を掛けても聞く耳を持たない状態。
先ずは鴉を倒し、夜妖達の影響を最小限にした上で倒せば、助かる可能性はあるだろうし……それをひよのも望んでいる筈。
「厄介ですね……兎に角鴉を急いで倒しましょう!」
と迅の言葉にイレギュラーズ達は頷く。
そして鴉に対峙する者達は力を合わせ、20匹の鴉共を確実に一匹ずつ仕留めて行き……時間はかかりながらも、全て、仕留める。
「良し。スイッチするぞ、体勢を立て直す!」
と錬が声を掛けて、一気に体勢をシフト。
カンザキの周囲を完全に取り囲むと共に、ヴェルーリアが。
「痛いと思うし、後で話を聞かせて貰いたい人にやることでもないけど、正気に戻って! 神気閃光!!」
至近距離で神々しい光を放つ。
それに対抗するかの様に、カンザキはその身の鴉の羽を四方八方に飛散させて、体力吸収を無差別に攻撃する。
だが、ダメージを喰らった仲間を鋭く見極めた茄子子が。
「いたいのいたいのとんでけー! できればあっちの方にー!!」
と福音を奏でて仲間達を即座に回復。
「回復助かる。さぁ……更に攻勢を強めていくとしようか。弟子が張り切っている手前で、遅れを取る訳にはいかないのでね?」
と汰磨羈はちらりとステラに目を配りつつ、その手の妖刀に力を込める。
そして、その刀から放つ雷撃の一閃。
闇を劈くその雷撃を喰らいし夜妖は、苦悶の叫び声を上げる。
「結構効いているみたいね! なら、そろそろトドメを刺させて貰うわよ!」
とミルヴィは敵へと接近。
そして芸術的な二刀の剣舞を舞い踊り……敵に苦痛を感じさせる事無き不殺の一撃を放つ。
『……グ……ゥァ……』
その一閃を喰らった夜妖は、小さく苦悶の呻き声を上げると共に、そのまま前へ臥して倒れる。
そして……その身を覆いし黒き羽は、まるで憑き物が取れるかのごとく、彼の身の周りに散り乱れた。
●狂いの先
「……さて。どうやら終わった様だな」
戦いを終え、息を吐き武器を収める汰磨羈。
改めて灯りを目線に合わせ、周囲を見渡すと……希望ヶ浜とは似ても似つかぬ世界が広がっていて。
「……しかし、ここまで街並みが変わるとはな。異人館の再現、という訳でも無いのか?」
と汰磨羈は首を傾げる。
確かに周囲の風景は、希望ヶ浜地域には無いものの、テーマパークとかでは見た事が有りそうな世界観が広がっている。
しかし、それが町中に突如として現れ、制御出来ない状態で無差別に人々を迷い込ませるというのが今の状況……一般人が被害に逢うとなっては、看過出来る状態とは言えないだろう。
「……取りあえず、カンザキさんが目を覚ますまで、少し時間が掛かるだろうし、少し調べようか?」
とミルヴィは、眼を閉じて意識を集中。
音を出して、周囲の空間が本当に実在するものなのかを調査。
更に、どこからか手に入れた偽書『ヨルの払いかた』を開き、周囲の空間と怪しい月、眩しい月、鴉の記載を紐付けて確認しようとする。
それら情報が紐付くような答えは導き出せないが……ただ、強く感じたのは違和感。
更に錬も、月を見上げて……何か感じ取れる事がないか、を調査。
「……月閃やこの騒動に関わりはあるのだろうか? 何がわかるだろうか? それを月触と言っていいのか、それとも鴉やらの子とを考えれば、日蝕が転じているのだろうか?」
と錬が考えると、それにミルヴィが。
「どうなんだろう? 以前に経験した怪異のような、何度死んでもやり直せる場所だったり、どこかゲーム的……再現性東京のリアリティを高める為に、現実と仮想の混在がなされている空間……それが、R.O.Oのシステムを使った、再現性東京の正体、とかなのかな?」
確かに、この再現性東京で起きている事件と共にR.O.Oの方でも事件が発生しているのは事実。
その関連性ははっきりとはしていないものの……R.O.Oと、現実世界どちらにおいても活動しているイレギュラーズ達からしては、何かあるのでは、と思うのもまぁ自然な事。
ただ……それ以上の情報は手に入れる事が出来ず、不明瞭な事がどんどんと積み重なる。
「難しいですね……確定出来る情報もありませんし、後はカンザキさんが目を覚ますのを待って、覚えてる事がないか聞きましょうか」
迅の言葉に頷き、彼が目を覚ますまで周囲の環境、状況などを事細かに記録に留めていく。
……彼を倒して数十分位が経過した頃。
『……う……』
ぴくっ、と身じろぐ彼。
「あ、もうそろそろ起きそうだよー、みんな集合ー!!」
様子を見ていた茄子子が仲間達に声を掛け、彼の周囲に集合。
『……ん……う……?』
再度身じろぎ……ぼんやりと目を開く彼。
「ん、大丈夫?」
と茄子子が声を掛けると。
『……んう……? …………はっ!? な、何だっ!?』
飛び起き、その場から離れようとするカンザキ。
そんな彼に、ヴェルーリアは申し訳無さそうな表情で。
「さっきはごめんね、カンザキさん。疲れてると思うけど……もし、何かあってこうなったか思い出せそうなら思い出して貰えないかな? 大丈夫、心の中で思って貰うだけでいいから。口に出す必要はないよ。御願い……」
とヴェルーリアの言葉にきょとんとしつつ、思うだけで良い、と言うから、彼は……思い出そうとしてみる。
……でも、それが彼を再び狂気に陥れてしまうトリガーになってしまう可能性もあるので、錬と迅は、二人をしっかりと観察。
(「見過ごさないようにしないといけないな。木乃伊取りが木乃伊になっては困るしな」)
ひよりから、狂気に陥る可能性もあるから注意してくれ、と言われた。
狂気に陥った事を思い出せば、再び狂気に陥る可能性は十分にある。
……そんな懸念を抱くイレギュラーズ。
しかし彼は思い出そうとするも、突如この世界に迷い込んでしまった事のみで、それ以上の事は記憶に無く。
「……問題ありません。では、帰りましょう。お疲れでしょうし、ね?」
とステラが優しく声を掛け……そしてイレギュラーズ達は正気を取り戻した彼と共に、帰路につくのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
<半影食>、夜妖化シナリオに参加頂き、ありがとうございました!
安眠等を邪魔されたら、誰だってキレちゃいますよね?
まぁ、彼も少しキレやすかったから、その心の隙を突かれたのかもしれませんね……。
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
希望ヶ浜から繋がる様々な異世界……石造りの洋風な景色が突然目の前に現れたら、驚きますよね……。
●Danger!(狂気)
当シナリオには『見てはいけないものを見たときに狂気に陥る』可能性が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●侵食度
当シナリオは成功することで希望ヶ浜及び神光の共通パラメーターである『侵食度』の進行を遅らせることが出来ます。
●成功条件
会社帰りのサラリーマンの『カンザキ』さんを夜妖憑きの状態から救い出す事になります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●周りの状況
今回の舞台は、イメージはイタリアの様な、レンガ造りでオシャレな街角の様な世界です。
とは言え会社帰りにお疲れモードで帰宅する彼にとっては、帰宅中にそんな事件に巻き込まれてキレてしまっています。
そしてそんな心の隙間を夜妖が突いて、夜妖憑きとしてしまった様です。
幸いな事に周囲はある程度広さもあるので、戦う分には申し分ないでしょう。
とは言え敵となるのは夜妖憑きの彼と、彼を補佐するように動く鴉達で、空も自由自在に扱える敵となります。
また周囲はかなり薄暗いので、視界確保にも重点を置く必要が有ります。
尚、夜妖憑きの状態においては、彼は言葉は解しますが、決して靡くことはありません。
また彼を救出するには気絶させた上で、周りの鴉共を倒す必要があります。
●討伐目標
・祟り憑きの鴉が取り憑いた夜妖憑き x 1人
夜妖が取り憑いてしまった『カンザキ』さんです。
夜妖によって引き上げられたのか、怨みによって引き上げられたのかは分からないものの、その拳から繰り出される一撃は凄く強力な攻撃力を持っています。
又、鴉の羽を使い、身を羽に包ませることでの防御力上昇、及び羽を飛散させ、刺さった相手から体力を吸い取るという効果を持った特殊攻撃があります。
単体としての戦闘能力は、イレギュラーズ二人で一人正対出来る、と言う程度ですが、非殺にしないと死んでしまいますので、その辺りをどうするかはよく相談してみて下さい。
・闇に紛れし死狩人『命狩鴉』x20匹
漆黒の羽に身が覆われた鴉達です。
攻撃力、防御力は並程度で、体力は少し低めの様です。
ただ深夜の刻故に姿形はかなり見辛い環境ですので、攻撃の回避力は高いでしょう。
攻撃手段は嘴によるつっつき攻撃が軸となります。
ただ数が多く、同じ一人のターゲットに集中しやすいという属性を持って居る様なので、集中砲火でまたたく間に体力0、という事にならない様ご注意下さい。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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