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シナリオ詳細

<グランドウォークライ>立ち塞がるは、エメラルド色の騎士

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ギア・バジリカの進路を塞ぐ、エクスギアEX隊
「まだ飛んで火に入る夏の虫だとわかりませんか……総員、斉射!」
 無機質なパネルが並ぶコクピットの中で、手にしたチキンレッグにかぶり付きながら、若い男が呆れ混じりに命令を下した。
 すると、ピンクの結晶に覆われた大通りを封鎖するように展開している、赤い巨大ロボット――エクスギアEX『コザ』――の二十機ばかりが、迫り来る白いエクスギアEX十機ほどに向けたビームライフルのトリガーを引いた。
 コザのビームライフルから放たれた光条は、白いエクスギアEXに次々と突き刺さって、機体を爆発させていく。だが、それでも三機ほどが光条を回避し、あるいは耐え抜き、ビームサーベルを抜いてコザ達に斬りかからんとする。
「ふぅ……往生際の悪い」
 さらにチキンレッグをがぶりと噛み千切りつつ、男はモニターに映る三機の白いエクスギアEXに精神を集中する。すると、コザの後方にいるエメラルド色の全身鎧のような形のエクスギアEXの背面に、白い天使の翼のようなパーツが展開。その翼が羽ばたくと無数の羽根が射出されて意志を持つかのように飛び交い、白いエクスギアEX達に無数のビームを浴びせかけた。
 白いエクスギアEX達はその攻撃に耐えきれず、コザの列に届く前にいずれも爆発四散する。
「……こんなものですか。まぁ、いくら来ようともここは通しませんよ。
 ディアナ様の元で、私は面白おかしく生きるんですから」
 食べ終えたチキンレッグの骨をコクピット内のダストシュートに放り込んだ男は、敵がいなくなった大通りを映すモニターを舐めるように眺めながら、ディアナの元で送れるであろう贅沢な生活に心を躍らせ笑みを浮かべた。

●塞がれたディアナキャッスルへの道を開け
 『Rapid Origin Online』では、皇帝の殺害によって鋼鉄に内乱が発生すると言うイベントが始まっていた。その中で、DARK†WISHに侵されたシャドーレギオンを作りだし内乱を誘発させていた『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュの計画は、イレギュラーズ達の活躍によって崩壊。
 ディアナはこれに対し、持てる力の全てで鋼鉄首都スチール・グラードをシャドーレギオンの都市へと変貌させた。城はピンクの水晶で飾られたディアナキャッスルとなり、鋼鉄の主要人物達はその中に囚われ、スチールグラードは闇の力で創造された偽物達に牛耳られ始めている。
 ヴェルス率いる軍閥『ゼシュテリウス』は、これ以上愛する鋼鉄が穢されることは許すまじと、ギア・バジリカ初号艦でディアナキャッスルへ進撃せんとしていた。

「シャドーレギオン、ですか。話には聞いていましたが、自分のそれがいるとなると複雑な気分ですね」
 そのギア・バジリカの中で、進路を確保すべく先行したエクスギアEX隊が壊滅したとの報を聞いた『緑の騎士』ウィルヘルム(p3y000126)は、イレギュラーズ達の前で苦笑いを浮かべた。
 何故なら、先行したエクスギアEX隊を壊滅させたのは『Rapid Origin Online』におけるウィルヘルムの中の人、羽田羅 勘蔵のダークレギオンだったからだ。
 『無辜なる混沌』における勘蔵はローレットの情報屋となることで、生計の道を得た。だが、ローレットのない『Rapid Origin Online』において、平和すぎる世界の出で身体能力に劣るこの世界の勘蔵が生き延びる力に欠けるのは容易に想像出来た。
(……何とか生き延びる力が欲しいと言う願いを、捻じ曲げられてダークレギオンにされた、と言う所でしょうか)
 そうなった経緯が容易にわかるだけに、自身の暗部を見せ付けられた気分になって内心で嘆息するウィルヘルムだったが、何時までも自分の世界にいるわけにはいかない。気を取り直して、イレギュラーズ達に向かって説明を行っていった。
「――さて、お聞きのとおり、この世界における私の中の人のシャドーレギオンが、ディアナキャッスルへの道を塞いでいるようです。
 おそらく、このギア・バジリカで下手に強行突破しようとしても、敢えなく撃破されるだけでしょう。
 ですから、皆さんには既に配備しているエクスギアEXに乗って、塞がれたディアナキャッスルへの道を開いて欲しいのです」
 そしてどうか、この世界の私のシャドーレギオンを消滅させて下さい。そう内心で付け足しつつ、ウィルヘルムはイレギュラーズ達に深く頭を下げた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は全体依頼<グランドウォークライ>のうちの1本をお送りします。
 スチールグラードの大通りを塞ぐ、この世界の勘蔵のダークレギオン率いるエクスギアEX隊を倒し、ディアナキャッスルへのギア・バジリカの進路を確保して下さい。

●成功条件
 エメロード・キャバリエの撃墜

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 スチールグラードの大通り。時間は昼間、天候は晴。
 環境による戦闘へのペナルティーはありません。
 損壊を気にしないのであれば、大通り横の建物を遮蔽として使うことが出来ます(この場合、『保護結界』は効果を発揮しません)。

●初期配置
 イレギュラーズの最前衛と、コザ隊の最前衛は、機動力4による移動(副行動)で接近戦を挑める程度離れています。
 コザ隊は7×3の横隊を敷いており、横隊の最後列の中央にはエメロード・キャバリエがいます。

●勘蔵のシャドーレギオン
 『Rapid Origin Online』におけるウィルヘルムの中の人、羽田羅 勘蔵からディアナが創りだしたダークレギオンです。
 本来のこの世界の勘蔵は、苦しい生活の中でただ生き延びる力が欲しいと願っていましたが、ディアナによってDARK†WISHを抽出された結果、『Rapid Origin Online』の他のバグもあいまって手にした力をディアナの元で存分に振るい、贅沢に享楽的に生きたいと望むシャドーレギオンとして生み出されました。
 戦闘能力に関しては、次項にて合わせて説明します。

●エメロード・キャバリエ
 勘蔵のシャドーレギオンが駆る、エメラルド色をした騎士の全身鎧のようなフォルムのエクスギアEXです。
 戦闘能力として、火力と装甲(防御技術)、耐久力(HP)、EXFが高くなっている一方、命中、回避、反応、EXAはやや低くなっています。

・戦闘能力
  メガビームグレイヴ/メガビームライフル 神至範/神遠単 【弱点】【識別※1】【必中※2】
   柄と砲身が兼用になっている、主武装です。先端からビームの刃を出すのと、ビームを射出するのと、2通りの運用が出来ます。
   ※1:グレイヴ運用時
   ※2:攻撃ごとに、オンオフの選択可
  フェザービット 神/至~超/単~域 【万能】【識別】【多重影】【変幻】【邪道】
   背面に展開した翼から射出される羽根です。羽根の一枚一枚が、小型のビーム砲を搭載した自動攻撃装置となっています。
   攻撃範囲が広まるほど、【多重影】【変幻】【邪道】の数値とダメージは小さくなっていきます。
  リフレクター・シールド
   エメラルド色に輝く大盾です。
   この装備によって加算される防御技術については、【防無】でも完全に無視されることはなく、【弱点】も通常よりも低い減算率となります。
   また、防御技術判定成功時に限り、【棘】を有しているものとしてダメージを返してきます。
  自動修復(大) 毎ターン、HPが回復します。
  インヴィンシブル・フィールド(大)
   神秘攻撃に対して、防御技術が加算されます。
  飛行
   ただし、重火力重装甲コンセプトの機体なので、基本的にはあまり飛びません。

●コザ ✕20
 勘蔵のシャドーレギオンが率いる、量産型の赤いエクスギアEXです。
 火力と装甲、耐久力に長けていますが、回避にはやや劣ります。

・攻撃手段など
  ビームライフル 神遠単 【弱点】
  ビームサーベル 神至単 【弱点】
  頭部バルカン砲 物遠単 【多重影】【スプラッシュ】
   命中への補正は大きいのですが、威力はその分劣ります。

●超強襲用高機動ロボット『エクスギア・EX(エクス)』
 エクスギアEXとは大型の人型ロボットです。
 『黒鉄十字柩(エクスギア)』に附随した大型オプションパーツを超複雑変形させそれぞれの戦闘ロボットへと変形します。
 搭乗者の身体特徴や能力をそのまま反映した形状や武装をもち、搭乗者にあわせた操作性を選択し誰しもが意のままに操れる専用機となります。
 能力はキャラクターステータスに依存し、スペックが向上した状態になります。
 武装等はスキル、装備、アクセスファンタズムに依存しています。
 搭乗者のHPがゼロになると破壊され、多くの場合爆発四散します。
 搭乗者が装備する剣と同様の剣で斬りかかったり魔術砲撃をしたりと、搭乗するキャラクターによってその戦闘方法は変わるでしょう。
 もしお望みであれば、普段と違うデザインをオーダーしてみるのもいいでしょう。
 ※すべてが専用にカスタムされているため、別の人物が乗り込んだり敵のエクスギアを鹵獲し即座に使用することはできません。逆もまた然りです。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
 『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <グランドウォークライ>立ち塞がるは、エメラルド色の騎士完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年09月24日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

リュート(p3x000684)
竜は誓約を違えず
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
レインリリィ(p3x002101)
朝霧に舞う花
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
ファン・ドルド(p3x005073)
仮想ファンドマネージャ
カイト(p3x007128)
結界師のひとりしばい
アーゲンティエール(p3x007848)
魔剣遣い
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
Λ(p3x008609)
希望の穿光
ファントム・クォーツ(p3x008825)
センスオブワンダー

リプレイ

●立ち塞がる敵部隊を前に
 ヴィーッ! ヴィーッ!
「エクスギアEX、準備が出来次第、出撃させろ! 急げ!」
 けたたましいサイレンの音が響く中、ギア・バジリカの格納庫では作業員がバタバタと慌ただしく、エクスギアEXの出撃準備を整えている。
「発進準備完了、ベネディクト。何時でも出れるぞ!」
「了解だ! ベネディクト機、出撃!」
 自身の専用機としてカスタマイズされたエクスギアEXの、コクピットの中から『蒼竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)が告げた。作業員はそれに応じて、ベネディクト機をギア・バジリカから射出する。
(ディアナキャッスルへの道が塞がれた……ならば、取れる手段は一つだな。
 ――シャドーレギオン達を叩き伏せ、強引にでも道を切り拓く!)
 機体の射出によるGを身体に感じながら、ベネディクトはその意を固めていた。

「解ってはいたけど、流石は首都……この手の妨害は流石に多くなるか。
 ……王城への道のりは、意外に遠い?」
「まあ、まずは一つ一つ確実に解決していこう。
 この場を切り抜ければ、道も開けるはずだ!」
 自機の出撃を待つ間に、コクピットの中で『汎用人型機動兵器』Λ(p3x008609)がつぶやくと、『朝霧に舞う花』レインリリィ(p3x002101)が通信回線で励ますように語りかける。
 もちろん、Λもギア・バジリカの進撃を止めさせる気はない。モニタの向こうのレインリリィにこくりと深く頷いて、賛意を示した。
「ロボット……っていうのかな?」
 アレクシア(p3x004630)は、自身がいるコクピットの中を、改めてぐるりと見回してみた。何処を見ても、見慣れない機械ばかりである。
 正直に言えば、エクスギアEXに乗って戦うことに不安がないではない。だが、これを使わざるを得ない以上、そうも言ってはいられない。
(……思ったように動かせるなら、なんとかなるはず!)
 搭乗前に受けた説明によれば、エクスギアEXでの戦闘はサイズが大きくなっただけで、普段の自分と同じように戦うことが出来るという。ならば、それを信じて全力を尽くすまで。そう、アレクシアは思い定めた。

 十機のエクスギアEXは、ギア・バジリカから次々と射出されると、ディアナキャッスルに通じる大通りを塞ぐエクスギアEXの部隊の前に降り立った。
(混沌の鉄帝でも、なかなか見ない光景だねぇ。
 ロボに乗る機会なんてなかなかなかったから、このイベントは嫌いじゃ無いよ。ヒヒ!)
 『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)は、機体の頭部をぐるりと巡らせ、九機の味方を見渡す。
『ロボ いっぱい そーかん』
 その光景に心が沸き立った縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は、ついテレパシーを仲間達に送る。
 実際、乗り手各々の特徴が出たと言える様々なエクスギアEXが並び立つ光景は、壮観と言えた。その中には、『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)が搭乗する量産機『ヤマグチ』もあれば、『神の仔竜』リュート(p3x000684)が搭乗する四足を地に着けた竜の姿をした機体『オーバードラゴン』もあった。
「機体性能が全てで無い事を、ご覧に入れましょう」
 ファンは、機体の唯一の武装、エクスギアEXサイズの日本刀を抜刀し、敵エクスギアEX隊にその切っ先を向けて悠然と告げた。

「……ったく、『センス』だけは一緒なのに、中身が完全に闇堕ち成分じゃねぇか!?」
 ぼやくようにコクピットの中で叫んだのは、『結界師のひとりしばい』カイト(p3x007128)だ。カイトの機体は、『中の人』が設定した和風神職の装束がモチーフとなっている。一方、敵エクスギアEX隊のリーダー、羽田羅 勘蔵のシャドーレギオンの機体『エメロード・キャバリエ』は、『無辜なる混沌』の方の勘蔵がアバターに設定したエメラルド色の鎧騎士がモチーフとなっていた。
「闇堕ちパイロットって、割とやばいことしかしねぇのが定説だけどよぉ……コレは怖いわ……」
 ゾッとしたように言いながらも、カイトは自らが用いる結界の精度を高める『陣地』の構築を開始する。
「あら、勘蔵さん」
「……誰です?」
 知り合いに会ったかのように、『センスオブワンダー』ファントム・クォーツ(p3x008825)がモニタ越しに勘蔵のシャドーレギオンに語りかけた。が、勘蔵のシャドーレギオンは怪訝な表情を返すのみである。それも無理もないことで、勘蔵のシャドーレギオンはそもそもファントムとは初対面なのだ。
 その事に気が付いたファントムは、『無辜なる混沌』にいる本来の勘蔵、『Rapid Origin Online』における勘蔵、そしてこのシャドーレギオンの勘蔵の違いに数奇な分岐を感じつつも、礼儀として全力で迎え撃つことにした。
「占領なんて駄目っすよ? 鋼鉄だって美味しい食べ物屋さんがいっぱいあるっす!
 串焼きとかシチューとか、温かい料理がいっぱいッス! だから壊させないッス!!」
「別に壊しはしませんよ。作り手が、ディアナ様に忠誠を誓う私達の同胞に変わるだけです」
 リュートはそう叫んでみるも、勘蔵のシャドーレギオンからは、答えになってない答えが返ってくるだけだ。
(……これが、シャドーレギオン。DARK†WISHの力が生み出した影の尖兵か)
 その人となりや如何にと気になっていた『魔剣遣い』アーゲンティエール(p3x007848)だったが、リュートと勘蔵のシャドーレギオンのやりとりから、ある種の「話にならなさ」を感じていた。
「そこを、退いてもらえないか。……さもなくば、斬る!」
 ともあれ、今はスチール・グラードをディアナやシャドーレギオン達から奪回せねばならない。
 自らの理想を体現した、巨大な全身鎧と言った姿の自機『銀魔鋼断』を一歩前に進ませると、アーゲンティエールは大剣『アーゲンティエール・エクス』を構えさせて勘蔵のシャドーレギオンに告げる。だが。
「退くわけがないでしょう。貴方達が、ディアナ様を狙っていることは知っています。
 貴方達も、その後ろにいるデカブツも、この先には行かせませんよ」
 『エメロード・キャバリエ』がメガビームグレイヴのビーム刃を展開させ、その先端を『銀魔鋼断』に向ける。
(やはり、やらねばならぬか。だがこの白銀の執念、翠玉にとて遅れを取りはしない!)
 予想はしていた答えに、アーゲンティエールは覚悟を固めた。

●将を射んとすれば、まず『コザ』を射よ
「そんな騎士みたいな格好をしてるなら、後ろに引っ込んでないで相手をしてもらうよ!」
 最初に動いたのは、アレクシア機だ。魔力を矢と為して、弓で『エメロード・キャバリエ』に射かける。『エメロード・キャバリエ』は『リフレクター・シールド』で魔力の矢を受け、その一部をアレクシア機へと反射させたが、反射しきれなった魔力は雲のようにモヤモヤと、『エメロード・キャバリエ』に纏わり付いた。
「いいでしょう! 相手してあげましょう!」
 その様に怒気を露わにした、勘蔵のシャドーレギオンが機体の背部に翼を展開したその時。
「贅沢に享楽的に、とは言うけれど。『節度』ってのもございますからねぇ。
 ――やりすぎないように『徹底的に』咎めさせて貰いに来たのさ」
 『エメロード・キャバリエを囲むようにして、幾つもの楔が地面に打ち込まれる。一つ一つが結界であるその楔は、『エメロード・キャバリエ』の動きを封じ込み、さらに冷気で凍てつかせた。
「これは……小癪なことをしてくれますね!」
 機体の動作を封じられ、ギリッと悔しげに歯噛みする勘蔵のシャドーレギオン。
「確かに耐久力はある。だが、この俺のエクスの攻撃を防ぎれる装甲ではあるまい……!」
 その間に、ベネディクト機が敵エクスギアEXとの距離を詰め、エクスギアEXのサイズからしても巨大と言うしかない大太刀をぶぅん、と横薙ぎに振るう。勘蔵のシャドーレギオンが率いるエクスギアEX『コザ』は確かに装甲は厚く、耐久性は高い。だが、それもあくまで量産機としてはであり、ベネディクトの言うように尋常でない威力の攻撃に耐えきれるほどではない。
 それでも、ベネディクトの攻撃が一度だけなら、まだ『コザ』が耐え切れた可能性はあったかも知れない。しかし、ベネディクトは大太刀を切り返して再度横薙ぎに振るう。三列横隊で進路を塞いでいる『コザ』達の、最前列中央にいる五機が機体をほぼ両断され爆発した。
「……これはまた随分と派手なお出迎えだね? ここは盛大にお返ししてあげるよ」
 Λの有する機動魔導甲冑『黒麒』をモチーフとした漆黒の魔導重装『黒麒』が、射出口からドドドド、と立て続けに砲弾を放った。砲弾は二列目の中央にいる『コザ』目掛けて突き進んでいくと、次々と爆発して拡散し、辺りに呪印が仕込まれた弾子を撒き散らす。弾子を浴びた『コザ』達はダメージもさることながら、呪印の効果によって機体の能力をダウンさせられた上に、動作を制限された。
「『エメロード・キャバリエ』の援護に行かれると、厄介ですからね。
 仕留めるまでは行かずとも、釘付けにはさせてもらいましょう」
 続いて『ヤマグチ』が、最初は納刀したまま、二度目は抜刀してから、日本刀を横に薙ぐ。剣閃は前方へと飛翔する刃と化すと、Λが狙った『コザ』へと突き進み、その横にいる四機もろとも機体を斬り裂き、再度斬り裂いた。その上、Λの呪印とも合わせて、雁字搦めに行動を封じていく。
「では、我はその奥の動きを止めるとしよう」
 三列横隊の敵の、二列目までが深刻な被害を受け、あるいはかなり無力化されたとみたアーゲンティエールは、大剣『アーゲンティエール・エクス』を横薙ぎに振るい斬撃を飛ばす。斬撃の狙い自体は『エメロード・キャバリエ』だが、その目的は三列目の『コザ』の行動を封じることにあった。
 放たれた斬撃は『エメロード・キャバリエ』を中心とする三列目の『コザ』を巻き込み、機体を損傷させると同時に、その大半の動作を阻害した。
「二列目の中央に、斬り込むよ!」
 味方からの範囲攻撃による誤爆を防ぐため、レインリリィは通信回線で仲間達にはっきりと呼びかけてから、真っ直ぐ敵へと突き進む。
 宣言どおりに二列目中央のコザの前に到ったレインリリィ機は、燃え盛る業火が纏わり付いたレイピアで眼前の三機を薙ぎ払う。レイピアを受けた『コザ』三機は機体全体を炎に包まれると、既に損傷が深いこともあり程なくして爆発炎上した。
「それじゃ、ワタシは一列目の残りに当たるわね」
 ファントムはそう告げると、一列目の左端に残る『コザ』へと自機を進ませた。
 黒くスラッとしたフォルムを紫のラインで彩ったファントム機は、眼前の『コザ』に向けて右の拳を向けた。その指の一つを飾る指輪様の装飾から、紅い花弁が吹き荒れて『コザ』を包み込む。花弁に包まれた『コザ』は、突然のことに困惑した様子を見せた。
「これだけじゃ、ないのよ?」
 次いで、ファントム機は一列目の右端に残る『コザ』に右拳を向け、指輪様の装飾から弾丸を撃った。弾丸が『コザ』に着弾すると、その後を追うようにキラキラと金粉が舞い散り、『コザ』を包み込む。『コザ』は睨み付けるかのように、ファントム機にその頭部を向けた。
「……コザって、雑魚のことッス?」
『逆 狙って 名付けたかも』
 不思議そうに尋ねつつリュートが問えば、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧がテレパシーで答える。実際には、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が言ったとおりだが、流石にイレギュラーズ達を相手にしては雑魚同然でしかなかった。
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧機が、『エメロード・キャバリエ』を中心とする三列目に向けて、太刀を振るい斬撃を飛ばす。それに合わせる様にして、空中にジャンプした『オーバードラゴン』の口から、火炎弾のブレスが投下された。
 三列目の『コザ』は、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧機の斬撃によってほぼ致命的と言えるダメージを受け、『オーバードラゴン』の火炎弾によって止めを刺され、一機残らず爆発炎上した。

●『エメロード・キャバリエ』、撃破!
 程なくして、イレギュラーズ達によって勘蔵のシャドーレギオン麾下の『コザ』は壊滅させられた。残る『エメロード・キャバリエ』を撃破するべく、イレギュラーズ達は一斉に攻撃を集中させる。
 だが、『エメロード・キャバリエ』はイレギュラーズ達の想像より強固だった。並のエクスギアEXならとっくに数十機は撃破されていてもおかしくないダメージを受けていながら、なお平然としている。その間に、幾度かカイト機の結界を振り切って背中の翼から無数の羽根を舞わせて砲撃させたり、エメラルド色に輝く大盾で攻撃を受け止めて威力の一部を反射させて、イレギュラーズ達の機体に損傷を与えていた。
「享楽的に生きる在り方は嫌いでないが。
 守るべき民が、望むなら好きにそうあることができる未来を、我は望む。
 だから、我はここで君に打ち勝とう!」
「そんな未来、ディアナ様がもたらして下さる未来に比べれば! ……うぐっ!」
 『銀魔鋼断』の大剣『アーゲンティエール・エクス』が白銀の剣閃を飛ばせば、『エメロード・キャバリエ』は大盾『リフレクター・シールド』で剣閃を受け止める。
 だが、大盾でも殺しきれなかったダメージが『エメロード・キャバリエ』を襲い、コクピットにいる勘蔵のシャドーレギオンはアーゲンティエールの言葉に反駁しながらも、苦しげに呻いた。
『盾 嫌 なんとか したい』
「……でも、難しそうだね。ボクが、隙を作るよ」
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧機の攻撃は、絶大な威力を持つ。それだけに、『リフレクター・シールド』で受け止められてダメージを反射されるのは痛かった。故に『リフレクター・シールド』を『エメロード・キャバリエ』から引き剥がすべくその機を狙っていた縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧だったが、隙が見出せずにテレパシーでこぼす。
 ならばと、レインリリィが自機の右腕を射出し、手に持ったレイピアで『エメロード・キャバリエ』を貫かんとする。『エメロード・キャバリエ』は『リフレクター・シールド』でレイピアを受け止めるが、それはレインリリィの狙いどおりだった。
 『リフレクター・シールド』がレイピアを受け止めている隙に、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧機が『エメロード・キャバリエ』に肉薄し、太刀を突き立てる。機体の装甲を深々と貫き通され、勘蔵のシャドーレギオンはかはっと喀血した。
(……不思議ね。同じ勘蔵さんでも兄弟のような近くて遠い、違いがある)
 ファントムはそんな物思いに囚われつつも、味方機にエネルギーを供給するフィールドを展開。その間に、勘蔵のシャドーレギオンに問いかけた。
「享楽主義、悪くないと思うわ。なら、イレギュラーズに付いたほうがお得じゃない?
 つまりは、『楽出来る』わよ?」
「お断りですね。私は楽しく生きていられるのも、ディアナ様がいらっしゃってこそです」
 『無辜なる混沌』の方にせよ、『Rapid Origin Online』の方にせよ、本来の勘蔵が相手であれば、ファントムの説得は成功していただろう。だが、勘蔵のシャドーレギオンは、所詮はディアナが『Rapid Origin Online』の勘蔵から抽出し、都合のいいように創りだした存在に過ぎなかった。
 故に、勘蔵のシャドーレギオンからの返答には、勘蔵本来の気性よりも、ディアナへの歪んだ忠誠が先に出た。
「――話にならんな。我(オレ)の邪魔をするな」
「うっ!? 何ですかこれは!?」
 機体の損傷により、二足歩行の竜の姿になった『オーバードラゴン』が、掌から数発の魔弾を放つ。リュート自身も、尊大な覇竜へと転じていた。
 『エメロード・キャバリエ』は魔弾を『リフレクター・シールド』で受け止め、ダメージを反射したものの、魔弾の力によってそれ以上の力を奪われていた。機体から力を奪われた勘蔵のシャドーレギオンは、自身も脱力感を感じて困惑する。

 さらに戦闘が進むにつれ、『エメロード・キャバリエ』の損傷は隠し切れようもないほどに深まり、撃破も見えてきた。だが一方で、イレギュラーズ達の側も損傷に耐えきれず撃破される機体が出てしまう。
(随分と、皆をやってくれたよね! 私だけを狙ってきてれば、良かったのに!)
 『エメロード・キャバリエ』の攻撃を自機のみに絞らせきれなかった苛立ちを抱きつつ、アレクシアは自機に魔力の矢を生み出させ、弓に番えさせた。回避の技量に長けたアレクシアは、『エメロード・キャバリエ』が『メガビームグレイヴ』を”当て”に来るのを狙わせて、自身や仲間の被害を抑える心積もりだった。
 もし『エメロード・キャバリエ』の武装が『メガビームグレイヴ』だけであれば、アレクシアの狙いは成功していただろう。だが、無数の白い羽根として飛び交う『フェザービット』は、二人の技量の差を十分以上に補っていた。アレクシアにも攻撃を命中させられる以上、『コザ』を撃破され一対多を強いられている勘蔵のシャドーレギオンからすれば、広範囲に多数を攻撃出来る『フェザービット』を用いるのは当然の選択と言えた。
 ともあれ、アレクシア機が弓に番えた魔力の矢には、さらに膨大な魔力が注ぎ込まれ、濃密に凝縮されていく。弓から放たれた矢は、天をも貫く勢いで、猛然と『エメロード・キャバリエ』へと突き進んだ。あまりの矢の勢いに『リフレクター・シールド』による防御が間に合わず、『エメロード・キャバリエ』は直撃を受けてしまう。さらに放たれた二の矢によって、『エメロード・キャバリエ』の装甲はより深く穿たれた。
「戦いはまだ激化する。ならば、この様な場所で立ち止まれん! 閃け、夢幻白光!」
「――補助役が火力がねぇってのは定説として『正しくねぇ』からな。貰うもんはキッチリ貰ってくぜ!」
「うっ、うおおおおっ!?」
 竜の如き無視し得ぬ威圧感を漲らせつつ、ベネディクト機がエクスギアEXサイズの竜刀『夢幻白光』を閃かせた。アレクシア機の射撃から立ち直っていない勘蔵のシャドーレギオンは、続くベネディクト機の圧に意識を釘付けにされ、反射的に『リフレクター・シールド』で受けてしまう。だが、それは続くカイト機に対する、致命的な隙となった。
 結界を巨大な砲身として構えたカイト機が、冷凍を纏ったビームを放つ。大盾による防御がままならぬ『エメロード・キャバリエ』はビームの直撃を受けてしまい、機体のあらゆる部位がスパークを起こし始めた。
「そろそろ本気で征くよ? 疾風れ黒麒! 今が駆け抜ける時!」
「誤った力の使い方は、さらなる敵を呼び、最後には己を滅ぼす事に繋がります。
 『贅沢に享楽的に生きたい』のなら、貴方は方法を間違えた」
 それでもなお戦おうとする『エメロード・キャバリエ』に、漆黒の騎馬へと変形した『黒麒』とその背に騎乗した『ヤマグチ』が迫る。あたかも、人馬一体の騎馬武者の如く。
 『エメロード・キャバリエ』が『リフレクター・シールド』を構えようとした時には、すぐ側に肉薄していた『ヤマグチ』の日本刀が『エメロード・キャバリエ』のコクピットを貫いていた。
「……ディアナ様、バンザァァイ!!」
 コクピットもろとも貫かれた勘蔵のシャドーレギオンは、夥しい血を吐きながら絶命。一瞬遅れて、『エメロード・キャバリエ』は大爆発を起こし、四散した。
「我らに貫けぬもの無し、ですね」
 『エメロード・キャバリエ』の横を駆け抜けた『黒麒』の背で、ファンは『ヤマグチ』に後方を振り返らせつつ納刀させる。そして大爆発の様子を映すモニタに視線を向け、静かに、しかし自信満々に言うのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

アーゲンティエール(p3x007848)[死亡]
魔剣遣い
ファントム・クォーツ(p3x008825)[死亡]
センスオブワンダー

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。
 皆さんの活躍によって『エメロード・キャバリエ』と『コザ』の部隊は排除され、ディアナキャッスルへの道は開かれました。

 それでは、お疲れ様でした!

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