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シナリオ詳細

特効薬を求めて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●怒りのハイエスタ
「逃がすな!」
「略奪者共に裁きを!」
 ハイエスタの部族は誇り高い。
 連合王国ノーザン・キングスにおいてハイエスタは誇り高く、勇敢であり誠実だ。
 だからこそ、悪人には酷く厳しい。
 特に、彼等を騙し利益を得ようとする者には特に、だ。
「ひ、ひい……だからこんな場所、来たくなかったんだ!」
 ハイエスタの一部族を騙して、この地方にしか生えない薬草を奪うだけの仕事。
 護衛付きの簡単な仕事のはずだったが、すでにその護衛は全滅。
 ハイエスタの部族自体も凄まじい戦闘力だが、特にそのリーダーたる「猛き炎のエルグラスト」の暴れっぷりが凄まじい。
 その巨体程のクレイモアを自在に振るい護衛を真っ二つに両断するその姿は、恐ろしいどころの話ではない。
「く、くそっ! こうなれば……!」
 古代文明の遺産であるという笛を吹く。
 いざという時に吹けば時間稼ぎが出来ると彼の主人に教えられたものだ。
 使うつもりもなかったソレを吹き鳴らすと……その瞬間、男はエルグラストに真っ二つに叩き割られていた。
「……笛を吹いていたが、仲間を呼ぶつもりだったのか?」
 笛ごと真っ二つにしてしまったが、一体どういうつもりだったのか。
 見下ろして気付いたのは、真っ二つの笛がまだ微かに鳴っている事。
 そして、地面を割って巨大なミミズのモンスターが現れた事だった。

●特効薬の材料は遥か遠くの地に
 新道 風牙(p3p005012)が手紙を受け取ったのは、その事件からおよそ数か月がたった後だった。
 闘技者グレイトホーン。鉄帝のマイナー闘技場で彼の移籍問題を巡る事件に関わった風牙だったが、その妹レイシーの薬代の為にグレイトホーンが戦っている事、そして明確な治療の見込みがたっていない事は、しこりのように残っていた。
 そして……そのグレイトホーンから届いた手紙の内容に、風牙は驚きの声をあげていた。
「妹さんの特効薬の材料が見つかっただって!?」
 しかも、その材料が足りないのだという。
 詳しい事情を聞くためにグレイトホーンの家に向かった風牙が聞いたのは連合王国ノーザン・キングスの名だった。
「……必要なのは雷神の恵みと呼ばれる薬草だ」
「雷神っていうと……ハイエスタか」
「ああ。似たような名前の薬草は多くあるそうだが『雷神の恵み』と呼ばれるものは1つ。ハイエスタの、とある集落の守る地の奥で生えているものだ」
 高山地帯の荒れ地の廃城を拠点に過ごす彼等だが、その廃城のさらに向こうに美しい湖が存在している。
 その湖の名前はさておこう。たぶん探せば10個くらい同じ名前が見つかる。
 ともかく、その湖の周囲に生えるのがその薬草だ。
 そのまま齧っても加工しても、なんか身体の調子がよくなる。そんな感じの効能として知られている薬草だ。
 しかし単体ではそういう効果であっても、組み合わせ次第で凄まじい効能を発揮することもある。
「だからこそ、手に入れたかったんだが……その目的の部族に余計な手出しをした商人がいる」
 そいつ自体は関与を否定しているが、とにかく目的の集落のハイエスタを徹底的に怒らせた。
「どうにも古代文明の遺産である『魔笛』と呼ばれるものを使用したらしい」
 魔笛。周囲のモンスターを呼び寄せるものだが、壊れているのか制御不能な事でも知られている。
 元から壊れているせいか物理的に壊しても鳴り続ける魔笛は、特殊な製法で作られた箱に入れて封じるしかない。
「その箱なんだが……コレと同様のものだ」
「何処から手に入れたんだ?」
「……レイリーが闇市で偶然安く買ってきてな。アクセサリー箱になっていた」
 本物であることは確認されているし、グレイトホーンはレイリーに新しいアクセサリー箱を買わされた。
 しかし、この箱は壊れていて機能を十全に果たすことができない。
 出来ないが……ハイエスタを騙した男が「箱」を持っていた事は分かっている。
 もしかするとハイエスタが回収しているか、押し寄せたモンスターの腹の中に納まっているだろう。
 とにかく、機能する箱をハイエスタになんとかして渡す事、そして「雷神の恵み」を手に入れなければならない。
「頼む、風牙。雷神の恵みを手に入れてきてほしい」

GMコメント

薬草「雷神の恵み」を手に入れましょう。
ただし「猛き炎のエルグラスト」とその一族はひどい人間不信に陥っています。
関係回復には慎重に気を遣う必要があるでしょう。

・今回の舞台
高山地帯に広がる荒野。奥にエルグラストとその一族が暮らす廃城があります。
その更に向こうが目的地の湖です。
荒野には壊れた笛と、その笛目指してやってくる巨大ミミズのモンスター、定期的に押し寄せるオーク達がいます。
また、笛のすぐ側で部族の戦士が数人居てモンスターを迎え撃っています。

・猛き炎のエルグラスト
巨大なクレイモアを扱う筋骨隆々の巨漢。
使う技は敵を真っ二つにする一刀両断と範囲攻撃の大旋風。
真面目で誠実ですが、凄く怒っている上に人間不信状態です。
笑えるくらいに強いです。
・エルグラストの部族
男女ともに戦闘民族。全員大剣を使います。人間不信状態です。

今回の重要アイテム
・笛を封じる箱
巨大ミミズの腹の中です。4匹居ますが、エルグラストに1匹真っ二つにされて残り3匹。

今回の敵
・巨大ミミズ×3
地中を自在に移動し、敵を叩き潰したり噛みついたりします。
全長10M、かなりタフです。
笛を持っているエルグラストの部族の戦士を狙ってきます。
一斉に襲ってくるわけではないので、正解のミミズがいつ襲ってくるかは完全に運です。
・オーク達
定期的に攻め寄せてきます。大体お昼頃くらいです。
笛を持っているエルグラストの部族の戦士を狙ってきます。

朝から夕方まではエルグラストの戦士が数人交代制で、夜から朝まではエルグラストが笛を持って荒野に立っています。
なので上手く時間帯を調整すればエルグラストに直接会えますが、初期状態が人間不信の為「夜に紛れて襲ってきたトンデモねえ奴」と判断される可能性が超高いです。

備考:エルグラストの部族の儀式
全ての武装を解除した状態で判定役と向かい合い、己の心の底から苦手とするものを嘘偽りなく告げる。
それにあえて挑戦し挑む心を見せることで勇気とする。
ただし「ホウレンソウが苦手だから食べます」とか言うと、判定役にホウレンソウを生で20kgくらい食べさせられることになる。吐いても許しちゃくれません。
なおちょっと苦手とか、どちらかというと苦手だとか、俺に苦手なモノはねえ、的なものはタブー。
その場合は儀式を知らない事にして挑戦しない方が良いでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 特効薬を求めて完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き
白妙姫(p3p009627)
慈鬼

リプレイ

●接触・昼
 ハイエスタの部族……猛き炎のエルグラストと、その一族のいる地へ『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)達は来ていた。
 今の時間は昼。全員で話し合い、この時間こそが適当であると決めた結果だ。
「なんぞ、事情が込み入っとるのう。ひとまず、信用を得ることから始めなければいけないようじゃ」
 『慈鬼』白妙姫(p3p009627)の言う通り、今回はそこから始めなければいけない。
 実際、前に彼等を騙した連中がいることを思えば、この時間こそが彼等の信頼を得るには良い……かもしれなかった。
 とにかく、まずは彼等からの信頼を得なければならない。
 特に「レイシーの病気を治せるかもしれないのか! よし、任せとけ! 絶対にその薬草持ち帰るからな! あの子が元気になったら、一緒に外へピクニックに行こう!」と今回の依頼人である闘技者グレイトホーンに告げてきた風牙からしてみれば、今回の依頼は絶対に達成しておきたいものでもあった。
「今後も定期的にその薬草が必要になるかもしれない。何としても部族の信頼を得て、友好を築いておかないと……」
「人間不信のハイエスタか……全く……その商人は余計な事をしてくれたね。なんとか信用してもらえればいいんだけど」
 雷神の恵み。そう呼ばれる薬草の事を思い、風牙が呟けばマリアも同意するように息を吐く。
 それさえなければ今回の依頼の内容は大分変わっていたはずだ。
 勿論、信頼関係は築かなければいけないだろうが……マイナスよりはずっとマシだったはずだ。
 そういう意味ではマリアの言葉はあまりにも、もっともなものだった。
「その為にも『魔笛』を封じ、「雷神の恵み」を手に入れる。『魔笛』を封じることで信頼を得て最終目標を達成したいね」
『空に願う』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は言いながら、今回の目標の1つである「魔笛」のことを考える。
 言ってみれば、その魔笛こそが今回の依頼内容を難しくしている原因の1つ。
 しかしそれだけに、解決すればある程度の信頼は取り戻せることが出来るとも思えた。
「苦しんでる美人を助ける為、良い所を見せる依頼だもんな! 紳士としては協力しないワケにはいかねーな! ところで件の妹サンってのはスタイル抜群の二十代だったりする? おっと! 石を投げるんじゃあないぜ! 下心じゃなくモチベーション維持の為だって!」
「やー、投げはしませんけど」
『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)から『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)はすすすっと距離を取る。
 嫌な事からすすんで逃げるのがモットーなしにゃこではあるし、ブライアンの言ってる事が可愛くなかったのだ。
「紳士バリアー!」
 他の仲間からも微妙な視線を受けて精神的バリアを張るブライアンではあったが……ブライアントとて、ただ無意味にナンパ精神を発揮したわけではない。
「これでも人の命が懸かってる依頼だと理解はしているんだぜ? だが気負いすぎは良くねえ。何事も適度に肩の力が抜けてるくらいで丁度良いのさ」
「そう言われるとそういう行動に聞こえるね……とにかく、失った信頼を取り戻す事は難しい。だから、僕達は行動を積み重ねて示すしかない」
「うん。『困っている人の治療のために薬草を少し分けてください』で本来は済む話だったのに」
 マルク・シリング(p3p001309)に『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)も頷き、再度の気合を入れ直す。
「経緯を聞いたら部族の人たちが不信感を持つのも仕方ない。彼らの信頼を得られるよう、がんばろ!」
 そして全員が頷きあい……エルグラストの一族のいる場所へと足を進めていく。
 武器を収め、敵意がない事を示しながら風牙たちは荒野のエルグラストの部族たちが見える場所まで辿り着く。
 勿論、いきなり近づきはしない。また魔笛を吹くつもりだと誤解されてはたまらない。
「おーい、すいませーん! ちょっとお話聞いて欲しいんですけどー! 争う気は無くてー! 定期的に来るモンスターについてお話があるんですけどー!」
 スピーカーボムを使って呼びかけるしにゃこに、エルグラストの戦士たちがピクリと反応するが……まだ武器は降ろさない。
 まあ、当然だろう。いきなり信じる方が変だ。
「たのもー! 私はマリア! 私達は君達を襲う巨大ミミズについて話したいことがあってきた! 敵意はない! 色々あって不信感があるのは理解しているが、話だけでも聞いては貰えないだろうか? 君達の信用を得るにはどうすればいいかな? 可能な範囲で従うつもりさ!」
 次にマリアが叫ぶが、部族の戦士たちは顔を見合わせ……そのうちの1人が叫び返してくる。
「まずは剣にて貴様等の潔白を証明するがいい! もうすぐそれを証明する機会が訪れる!」
 オークの事だと、マリアはすぐに理解する。
「分かった!」
 まずは、ということはそれだけでは信頼しないということなのだろう。しかし、話を聞いてくれない状態よりは一歩進んでいる。
 そして……地響きと共にオーク達が襲ってきたのをその場の誰もが見る。
 同時に響くは、戦士たちの雄叫び。
「来たぞ、オーク共だ!」
「押し返せ、何度来ても無駄だと教えてやれ!」
 5人の戦士が大剣を構えて走り出し、風牙たちもここで初めて武器を構える。
「いきなり信用はされないだろう事は分かってた。なので身をもって信用を勝ち取る!」
「うむ、まずは行動で示さねばの!」
 白妙姫も朧月夜を構え、全員がオークへと向かっていく。
「三下どもなんざ一瞥もくれずに拳で十分よ!」
 軽口を叩きながらブライアンもオークに殴り掛かり、そしてすぐにオークは殲滅される。
 これだけ人数がいるのだ。ブライアンの言う通り、三下相手の戦い程度にしかなりはしない。
 そして、エルグラストの戦士たちは大剣を担ぐとマリア達に話しかけてくる。
「戦いは見た。潔白はある程度証明されたと言える……再度、用件を聞こう」
「わたしたちは雷神の恵みと呼ばれる薬草が欲しくてここまで来たの。少しだけ分けてもらえないかな」
 病気の人を治療したいこと。必要以上に採取しないこと。それを含めてルアナが伝えると……戦士たちは互いに何かを話し合い、再度ルアナに向き直る。
「我々はそれを判断する立場にない。我等が長『猛き炎のエルグラスト』が判断するだろう」
「会わせてくれる……ということで良いのでしょうか?」
「それを含め長に伺いをたてよう」
 しかし、と戦士は言う。
「その前にもう1つ厄介ごとがきたようだ」
 地響き。それが巨大ミミズによるものだと察した全員が再度武器を構える。
「わたしたちも一緒に戦わせてほしいの」
「ああ。その剣によって武威を示すがいい」
 頷くルアナではあったが……地面を割り出てきた巨大ミミズには、涙目であった。
「歴戦の勇者だって、苦手なものはあるんだよ!!!!」
「それじゃ、お話の続きは全部解決してからにしましょう!」
 しにゃこも叫び、巨大ミミズに襲い掛かり……しかし、これもアッサリと撃破できてしまう。
 攻撃力過大。そんな言葉の似あう結果であった。
 そして……白妙姫はそのミミズの死骸を前に、戦士たちに語り掛ける。
「わしらは得意運命座標じゃ。薬が必要なことはもう言うたが……前に質の悪い商人が余計なことをしてしもうたことも聞いた。それで、なんじゃが……それを収める箱はどうも砂蚯蚓(サンドワーム)の一匹が腹に収めてしもうたらしいのじゃ」
「ふむ」
 聞くなり戦士たちはミミズの解体を始め、中から1つの箱を取り出す。
「これのことか」
 べとべとしている箱の中に魔笛を納めると……僅かに聞こえていた音が、全く聞こえなくなる。
「おお……」
「あの耳障りな音が消えた……」
 ざわめく戦士たちは、白妙姫へと振り向く。
「お前達は真実のみを語っている」
「行動も客人に相応しい」
「武による証明もなされている」
「長に今すぐ伝えよう」
 戦士の1人が凄まじい速度で集落へと走っていき……猛き炎のエルグラストとの対話の機会が設けられたのだった。

●エルグラストとの会談、そして
「戦士たちから話は聞いている」
 猛き炎のエルグラスト。その名に相応しい体格を持つ男は、風牙たちを前にそう話し始めた。
「まだ信頼できないなら、信頼を得られるまで荒野でキャンプを張る許可を貰いたいんだけど……」
「それには及ばん」
 フォルトゥナリアの提案に、エルグラストはゆっくりと首を横に振る。
「すでに武による証明はなされた」
「え、それなら」
「しかし」
 しにゃこの言いかけた言葉を、エルグラストは遮る。
「薬草を分けるとなれば、我等は友となる必要がある」
「友……ねえ。とはいえ、信頼関係は積み重ねる物だろ?」
 交渉事が苦手ではないが故に大人しくしていたブライアンがそう聞くと、エルグラストは頷く。
「そうだ。故に、信頼の儀式を積み重ねよう。我らと交渉に来たなら、儀式については知っているな? 3人選べ。それをもって友の証としよう」
 言われて、まずはルアナが進み出る。
「名は」
「ルアナ。ルアナ・テルフォード」
「ではルアナ。このエルグラストが見届け人となる。述べよ、お前の苦手は何だ」
 ルアナは自分の胸元に手をあて、語り始める。
「わたし、本当は大人なんだって。でも何故か、子供の姿になっちゃって挙げ句記憶もないの。大人の自分に戻るのが、とても怖いよ。引き換えに今の私がいなくなるような気がするから……でも。元の世界では勇者だって。勇気ある者だってことを思い出せたから。どんなに怖くても、本当に今の自分が消えることになっても、記憶を取り戻したい。人々を苦しめている魔王を討つために」
「……嘘を言っていない事は分かる。その時になればお前は言う通りに戦うだろう。しかしそれはこの場で挑むべき事ではない。お前の真の試練はその時だろう……だが、そのともすれば荒唐無稽にも思われかねん話をした勇気を俺は評価しよう」
「うん、ありがとう」
「お前の行く先にも雷神の加護のあらんことを。では、次の者は誰だ」
「ならば、僕が。僕はマルク・シリングです」
「よし、マルク。お前の苦手は何だ」
 言われて、マルクは全ての武装を外す。
「前衛での戦闘です。僕は術士で、いつも誰かの後ろで戦っている。前で攻撃の矢面に立つことは、とても怖い。けれど、命が掛かっているなら、その恐怖を乗り越えなきゃいけない。エルグラストの一撃を、装備なし・真正面からこれを受けてみせる。そう、死ぬほどの一撃でも、僕は逃げません。コレが今の僕が示す事の出来る、最大限の勇気です」
「その意気や良し!」
 叫ぶと、エルグラストは立ち上がる。
「もはや評価など語るまでも無し。殺しはせん。せんが……その勇気に敬意を表し、死なぬ程度の一撃を加えよう。見事受けてみせよ!」
「はい!」
 答えると同時、音すら置き去りにしてエルグラストの拳がマルクを吹っ飛ばす。
 バウンドすらせずに遠くへ飛んで行ったマルクを見送り、エルグラストはニッと笑う。
「マルク……いや、戦士マルク。お前の勇気をこの『猛き炎のエルグラスト』が認めよう! おい、誰か! 我等が友を早く助けてこい!」
 バタバタと走っていく戦士たちを見送りながら、エルグラストは風牙達を見る。
 あとは風牙か白妙姫か。
(……レイシーが治るんだ。オレのつまんねえ意地なんて、どうでもいい……っ!)
(ええい、こうなれば逃げも隠れもせぬ……!)
 2人が覚悟を決めたその瞬間、エルグラストはそれを押しとどめる。
「無用。ルアナとマルク。この2人の儀式をもって友と認めよう」
「信用してくれるってことかい?」
「しよう。これ以上の試しは俺が雷神に顔向け出来ぬ」
 マリアにそう答え、エルグラストは腰に吊るしていた包みを差し出してくる。
「雷神の恵みだ。持っていけ、その病気の者の治療に使うがいい」
「あ、ありがとう……!」
「マルクが目覚めたら伝えておけ。お前も確かに戦士だったとな」
 回収されてきたマルクは文字通り「死んではいない状態」であり、手厚い看護を受けたが……自分相手に「真正面から受ける」などと言い放った事が余程気に入ったらしく、目覚めたマルクにエルグラストは機嫌よく笑っていた。
「根っからの戦士ってことなんですねー」
「ははっ、最初から拳で語り合った方がよかったか?」
「やるか? 俺は歓迎するぞ」
 ニッと笑うエルグラストからしにゃことブライアンは目を逸らす。
 そうして笑い声があちこちで起こっていく。
 これでレイリーの病気も治るだろう。
 そして、エルグラストの一族との関係も改善した。
 それを思うと…・・・風牙の口元にも、自然と笑みが浮かぶのだった。

成否

成功

MVP

マルク・シリング(p3p001309)
軍師

状態異常

マルク・シリング(p3p001309)[重傷]
軍師

あとがき

コングラチュレーション!
見事に問題を解決しました!

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