PandoraPartyProject

シナリオ詳細

海だからって忍んでる場合じゃない!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ザザ――――ン。

 寄せては返る波の音を聞きながら茫然とその場に立ち竦んでいたのは忍集団『暦』の一人霜月である。
 頭領始めとする暦の面々およびイレギュラーズで豊穣のビーチにバカンスに出掛けると聞いて霜月は真っ先に準備を行った。
 そう、例えば。

「はいはい、日焼け止め持ったァ? 奥方は浮き輪忘れずにね。あ、ほら、お弁当はどうする?
 唐揚げと、サンドウィッチ、え? 鯖の味噌煮ィ? いやいや、弁当だって言ってるでしょーーー?」

 絶好調に母上モードでやってきたのだ。だが、霜月は皆の世話を焼いて引率のお母さんとしてやって来たわけではない。
 美女を見に来たのである。屹度、豊穣のビーチでは大和撫子も数多く居るはずだ。彼女たちを見にやってきたのだ。

「ねェ、あれって何だと思う?」
「聞くな……ああ、何だろう……聞かないでくれ……護衛の筈なのに接近に気付かなかった……死のう……」
 問うた霜月に肩をがっくりと落していじける師走。そう、彼等の前には可笑しな存在が居たのだ。
 見張りの水無月を心配するナナシの声が聞こえる。其れさえ遠い。何せ、彼も気付かなかったのだ。
 “ソレ”の存在に――
「わたくし達で頭領を助けなければなりません。行けますね?」
「……ああ。のんびりとかき氷を楽しむ予定も崩れた。此れが終わったら、練乳いちごを頼む」
 言ってる場合かというナナシのツッコミが聞こえた気がするが、彼等は頭領と、可愛い部下、そしてイレギュラーズを救う為に戦う事を決意したのだ!

 ―――――――――
 ――――――
 ―――

「ああああッ、駄目だってェ!!!!!!!!!!!」
 霜月は叫んだ。星穹 (p3p008330)は「どう致しましょう」と水着姿でその様子を眺めていた。華やかな西日の色を閉じ込めたパレオが風で揺れる。南国を思わせた髪飾りは夏風と、霜月の叫びに揺らめいた。
「どう致しましょう」
 同じ言葉が、もう一度繰り返される。
「ねえねえ、鬼灯くん。皆さん。蛸さんがにゅるんってしているのだわ! 大きいのだわ!」
「ああ、そうだね。章殿。とても大きい。粘膜が霜月をべたつかせているようだけれど、前に言っていた『夢』が叶えられそうだ」
「本当に!? お祭りみたいなたこ焼きを作りたいのだわ! 帝さんにも分けてあげたいし、晴明さんにも……」
 夢のようにうっとりと微笑む章姫、そしてそれを腕に抱いて居た黒影 鬼灯 (p3p007949)。
 浴衣や水着を着用し、ビーチでバカンス、夕涼みには小さな村の縁日に出掛ける計画でやって来た。
 だが、突如としてビーチに巨大な蛸が乱入したのだ。見張り役であった水無月とナナシさえ気付かぬ手腕、この蛸、ただ者ではないな?
「くっ、玄、構え――――ああああ!?」
 流星 (p3p008041)が指示をする前に玄が蛸にぬるっとされてぽいっとされた。ナナシが心配そうにその様子を眺めている。
 行くしかないのか。あのヌルヌルして居て、服も脱がしてきそうなちょっぴりご都合主義な蛸の元へ。
「ど、どうしよう。お兄ちゃん達がヌルヌルしてお洋服が脱がされそうになってる……!」
 慌てる逢華 (p3p008367)は下駄が砂を脱ぎ捨てた。黒いレースの靴下も邪魔に思える。足に絡み付いた薄浅葱の浴衣姿でお兄ちゃんと叫ぶ。
「あたし、こういうの何処かで見た事ある気がするのよね?」
 城火 綾花 (p3p007140)はうーんと首を傾いだ。バニー風の水着姿であわよくばビーチで営業モードでも良かったというのに顧客は巨大な蛸一匹だ。
「あ―――――ッ」
 触手にぶん回される水無月の声が響いた。
「……見なかったことに、」
「できそうにないのだわ。ほら、アイツ、こっちを見てる」
 無かったことにして帰宅したかった伏見 行人 (p3p000858)にコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)は残念ながらと首を振った。
 浴衣であろうと水着であろうと、蛸は夏を楽しむものを容赦しない。
「ッ―――ぬ、脱がそうと、するな……!」
 アーマデル・アル・アマル (p3p008599)のその言葉を聞いて行人は理解した。

 ――あ、この蛸。最後は食べれるけどソレまでにアレでソレでコレな目に合う奴だ。

GMコメント

 こんにちは。たこ焼きは家で大量に作って二日分くらいのご飯になる方の大阪人、あかねです。

●成功条件
 章姫「たこ焼きを沢山食べたいのだわ! だから、あの蛸さんを倒してからたこ焼きにすると良いと思うのだわ! 駄目かしら?」

●豊穣のビーチ
 高天京から少しばかりの距離。穏やかなビーチです。どうやら夕涼みの頃には近くの村で縁日があるようです。
 そちらに参加する前にビーチで皆で遊ぶ予定でした。所がドッコイ、蛸乱入!

●たこくん
 蛸です。とっても大きくて章姫にいわせれば「すごいのだわ!」です。雌雄はわかりません。蛸です。
 ぬめぬめとして居て、脱がしに掛ってきます。ですが、やらしいことがしたいわけではないのです。
 日焼け止めを塗ってあげたい。そして、スキンケアをしてあげたい。
 あわよくばボディクリームも丹念に塗って美肌にしてあげたい。ただ、それだけなのです。
 PPP倫に沿った描写がなされます。安心して下さい。紳士です。

 ・男女変わりなくぬめぬめしてくれます。
 ・紳士的にボディケアしてくれます。
 ・結構サービス精神旺盛なので「こんな事になったらどうしよう!?」とか叫ぶとその通りにしてくれます。
 ・これだけは駄目ー!と叫ぶとそれはしません。優しい蛸です。
 ・ある程度満足したら皆さんを解放して「さあ倒せ!」と言う姿勢を取ってくれますので皆さんは攻撃を叩き付けて下さい。
 ・倒した後はたこ焼きやその他蛸料理でお楽しみ下さい。お刺身だとお口の中でぴくぴくしてくれます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はXです。
 関係ないんですけど、小学校六年生の頃のインターネットの授業で間違えて開いた同人サイトが私のルーツだと思います。
 グッドラック!!!!!!!!!!!

●でんじゃー
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない社会的だったり心の死亡判定が有り得ます。
 特に霜月さんあたりを執拗に狙っていく予定ですがオススメの人が居れば声高に叫んで下さい。

 リクシナだから誰も逃げられないね。たこくんもたのしみにしてるよ。

  • 海だからって忍んでる場合じゃない!完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費250RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
※参加確定済み※
城火 綾花(p3p007140)
Joker
※参加確定済み※
黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家
※参加確定済み※
流星(p3p008041)
水無月の名代
※参加確定済み※
星穹(p3p008330)
約束の瓊盾
※参加確定済み※
逢華(p3p008367)
Felicia
※参加確定済み※
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
※参加確定済み※
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※

リプレイ


 ザザ――――ン。
 海らしい効果音を聞いて、早速の夏の行楽であると認識して居た筈であるのに。何も分からぬ無垢な章姫が「鬼灯くん! 大きい蛸さん! 凄いのだわ!」と喜ぶ声だけがビーチに聞こえて。
 普段ならば「ああ、そうだね、章殿」と答える『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)も思わず「えっ、大きすぎんか……?」と呟くほどの巨大な蛸が底には鎮座していた。
「空繰舞台の幕を……降ろしちゃ……ダメですか……」
「降ろしたら部下の身がピンチになりそうだけどな……」
 そうぼやいた『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)は屹度、画面の端であんなことやこんな事になる未来が待ち受けているのだろう。屹度。
「蛸か」
『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)がそう呟けば、『Felicia』逢華(p3p008367)も何かに思い当たったように遠い目をした。
「……去年の夏、いたんだ。男の服だけ溶かそうとするヤツ。今年、別件が現れたという噂は聞いたが、まだいたのか……」
 アーマデルの呟きに逢華は「まーたこう言うタイプかぁ」という感想を抱いて居た。
「……神無月お兄ちゃん。安全圏まで行って見てた方が面白いと思わない? 逃げちゃおうよ」
 逢華の精神衛生上、『神無月お兄ちゃん』は死守しておかねばならないのだと。執拗に狙われて「駄目だってェ!!! ちょっとォッ!!」と大騒ぎする霜月の様子を一瞥して彼女はそう言った。
 何処に行くの、と首を傾げる章姫(純度100%。完全に気遣う眸)に神無月と逢華は動けずに居た。奥方は、たこ焼きをご所望なのである。
「えぇ……なんなのこのたこぉ……こんなん放置してたのビーチ管理者?
 えぇ……あの人――あ、奥方様ね? うんうん、顔が怖い奴がいる――何言ってるの……たこ焼きどころじゃないんだけどぉ? まぁいいわ、ぶっ飛ばしてタコ料理にしてやりましょ。仕事の時間ね」
 任せなさいと胸を張った『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)に「凄い目に合ってる人が居る」と指さすのは『Joker』城火 綾花(p3p007140)。最初から犠牲者になっている霜月を哀れむ眸で見遣った綾花は『先に犠牲になってしまった忍者』を囮に使おうと考えていた。
「うっわぁ……しっかし凄いの来たわねー、せっかく一夏の最後の思い出作ろうと思ったらコレ?
 随分と締まりが悪いと言うか何というか……まぁでもアレさえ倒せば後はどうってことないのよね。無事で済むといいんだけど……」
 もう一度言います。『先に犠牲になってしまった忍者』を囮に安全域から戦おうとしたのである。
「暦の監視網に気取られずに侵入する蛸など、どう仕留めれば……って水無月殿ぉ!? くっ! 水無月班、流星! 参る!」
 先に犠牲になってる水無月に『黒き断頭台』流星(p3p008041)は悔しげに叫んだ。水無月の救出が叶えば追加戦力になる筈だ。
 例え、触手にぶん回されていようとも、せんしてぃぶであろうとも! 水無月の顔面は何時も変わらず攻撃力が最高値なのだ。
「師走先生、師走先生! 宜しいですか、此処に居る人間は皆敵です。人の皮を被った悪魔です。私達だけでも先に逃げましょう!
 あんな蛸、まともに戦ったところでぬるぬるぬめぬめの餌にされるだけです。
 多分心の死亡は避けられませんし……ほら! 行きましょう、霜月先生には悪いですが此処で助かるのは私達です!」
 霜月を犠牲に助かる気満々の『星雛鳥』星穹(p3p008330)は声高に叫んだ。恥じらいなんて空中神殿に捨ててきた。
 この際、逢華と同じく、霜月を犠牲にして逃げ伸びるしかない。信じられるものは師と己だけ!
「はいはい暦頑張って!! 章殿がたこ焼き食べたいって、帝と晴明殿にあげたいって言ってるよ!! もっと頑張って!! そんなんじゃ世界取れないよ!!」
 練達特製のハンディカメラ(耐水性!)を手にしていた頭領に目を剥いた流星と星穹は水無月と師走を救わねばならない、と。
 ――例え、頭領のご希望を無視してでも! 救わなくては鳴らない命が其処にある! そう、実感したのだった。


 綾花は皆の真後ろに立っていた。そう、それは別に誰かに蛸を押しつけたいわけじゃ無かった。少しでもリスクを減らしておかねば役に立たないからである。
「まずは足を無力化する為に距離をちょっと待って足がやたら伸びてくる!?」
「そう、この足がやばいんだってッ!」
 一番蛸に絡み付かれている霜月の言葉に綾花「どこまで伸びるの!?」と驚愕したように後退った。彼女等が攻防している間に、しょんぼりモードの師走を連れて逃げ出したい星穹。
「師走先生、師走先生! 良いんです、あれは特異的な存在ですから!」
「……護衛なのに、あんな蛸足に掴まれて……」
 がっくりとしている師走。物憂げな師走先生も素敵――とは言っていられないのがこの状況だ。
「神無月お兄ちゃん、こっちだよ! 急ごう。メンタルケアは神無月班出出来るんだから、僕達が無事じゃないと!」
「ええ、そうですね。ケアの為に一度離れましょ――」
 神無月が逢華に同意した刹那、「あッ!」と鋭く響いたのは綾花の叫声であった。
「離して、離しッ」
 日焼け止めを投げ付けた霜月が綾花を庇い更にヌルヌルになって奥へと連れ去られていく。
「ああ―――!?」
「し、霜月殿ー! 食事の恩は返しきれない……ここは俺が食い止める、早く逃げ、」
 アーマデルが勢いよく飛び込み霜月の手を掴んだ。感涙する霜月。何故かいの一番に執拗に狙われる霜月。そして、それを庇おうとするアーマデル。
 タコは許しませんぞと言わんばかりにぬるりとアーマデルに掴みかかった。うんうん、男子の水着は脱がせ易くていいですね。
「こいつ……いかなる故あって脱がそうとする。なんだこいつ手慣れてるぞ。まさか……背後にその手の特殊嗜好の組織が……?」
 ぞわ、と背筋に走った衝撃。モンスターらしくない紳士的なタコ。その腕が触手ですと言わんばかりににょろにょろと伸びて蛸料理にしてやるつもりのコルネリアへと迫っていく。
「そもそも着衣を破ろうとするんじゃなくて。丁寧に脱がそうとするのがおかしいだろこれ。
 脱がそうとするな(ぺちっ)……脱がそうとするなというのに(ぺちっ)」
 ――尚、ぺちっとアーマデルがする度にタコは「えへへ、ゴメンね~」とでも言わんばかりに嬉しそうに身じろぎするのである。
「 こいつ……わかっててやっていやがるな……?! 見られるのはそれほど恥ずかしくないが、脱がされるのも、脱がされたヤツを見るのも、恥ずかしいぞ!?」
 ぐいぐいと攻防するアーマデル。水着を脱がされまいと懸命に戦う彼はこの場に恋人がいなくて良かったと切に、そう思うのだった。
「ぎゃーーー!!! なに! なんなのぉ!! 水着取ろうとすんな!! この! この!!
 すっげぇぬめぬめして滑る……! 脱がされ……!? いけません! いけませんよ!!
 アタシの扇情的な姿が世に晒されたらいたいけな青年たちの情欲が爆発してしま……おい、たこ、おい、ボディクリーム、ちょ、塗りすぎ、肌見えねぇ、イエティみたいになってるイエティみたいに」
 水着を脱がされて横たえられたコルネリアは懸命にボディークリームを塗り塗りとされていた。まるでイエティのようにこんもりと。そう、こんもりと。
「どういう意味? 加齢? 加齢による肌の潤い足りないって?」
 タコの足があっち、と指さしたのは綾花である。丁寧に水着を脱がす紳士的な蛸はぬるりと水着を取り上げて大事なところは見えないように腕で隠して居る。
「ちょっと待って、ぬるぬるしてまともに身動きが取れない……! って、やだ! もしかして水着脱がされてる!?
 しかもゆっくりと、大衆に見せつける感じに! うぅ……恥ずかし、見ないでぇ……裸を晒されるなんて、お嫁に行けなくなる……><。」
 水着は流されないように置いてくれた紳士的な蛸君。それでも、その吸盤が肌に吸い付いては離れてを繰り返す。
 優しく触り続けられれば綾花も悩ましげに身動いだ。蛸に好き勝手されているのに、足先にもぴんと力が入る。
「体中をそんなに這い回らせて、何がしたいのよ。ひゃんっ……力加減も絶妙で、ぬるぬるも相まって……やめ、て……耳は、感じやすいのよぉ……分かってて、そんな攻めてるの……? あ、だめ、ひゃ、あっ、何かク――」
 ――ソレと比べたコルネリア。そんないかがわしい事をされるのではなくボディケアをされている。
「そりゃぁぁ周りのわけぇ奴らに比べればねぇ! カサカサですよぉ! でもまだまだあたしだってねぇ!! イエティアタック!!! はぁ……はぁ……アタシだってまだ若いし……」
 タコ君は「そんな君も好きだよ」とでも言うようにスキンケア用品をプレゼントしたのだった。


「霜月! 良いぞ! 蛸に気に入られてるぞ! はい身体くねらせて! あっ、頭巾と口布取られてる……まあ、いっか」
「良くないってェ!!!!!」
 叫び声が響くが頭領は気にしない。腕の中の章姫にこんなの見せれないからねと言わんばかりに後方での撮影班である。
「ッ、タコは狭い岩場の隙間などに隠れる習性があり、壺がその隠れ場所の条件を満たすらしい。つまり壺を用意すればって今更無理だよな知ってたこの野郎」
 心頭滅却して蛇と触手がにているなんて言う現実逃避をするアーマデルに「逃げてェッ!?」と叫んでいる霜月。頭領は此れは売れるな等と考えるのであった。
「表情艶めかしく! いいよ、セクシーだよ! 豊穣レディの視線独り占めしてるよ!!」
 その一方で冷静沈着なベテランで美学を愛する流星は奥方へのたこ焼き献上のために、懸命に戦っていた。
「貴方の笑顔があればどんな苦労も報われる。危機が迫るならば俺が体を張って守ろう」
「頑張って欲しいのだわ!」
 ――頑張れる。章姫の声援を背に、流星はマンモスにだって組み付いた根性で果敢に挑み続ける。
「っ、さあ観念して、んん、美味いたこ焼きに!」
「……気をつけろ!」
 手を伸ばした水無月が流星の体を後方へと弾いた。其の儘、蛸の足に彼が連れ去られていく。「水無月殿!」と叫ぶも虚しく、蛸はいい顔の男を連れ去っていった――
「水無月は国宝の顔面活かして!! あ、ナナシはこっち戻ってきなさい危ないから。
 豊穣レディ曰く『総攻めの顔』とか言われてたけどなんか役立つのかな頭領わかんないな。そう! 嫌そうな顔をしつつ! 触手に撫でられて嫌そうな顔しつつ頬を染めて!!」
 叫ぶ頭領の声に、水無月のひょずようが苦痛に歪んだ。流星は頭領の『ヤバさ』をひしひしと感じている。玄のぬるぬるを拭い、水無月を救う為にもう一度蛸に挑む。こんなにも真剣な忍対戦――なのに相手はタコだ!
「二度も遅れを取るなよ、あいぼ―――うッ!?」
 脚を掴まれてぐん、と流星が持ち上げられる。彼女は少女らしい体のラインを隠す為に肩や腰の内側に布を仕込んでいた。さらしで胸を潰しても居る。
「――ひゃっ!?」
 ずるずると引き摺られる星穹は「な、なんで捕まって……せめて師走先生だけでも……待って先生諦めないでせめて足掻いて!!!!」と師走に叫んだ。
「つめたい……っ待って、だめ、だめ……水着は、たいせつなものだから、汚さないで……! あれ、汚れてない……むしろ綺麗にパレオが畳まれている……?」
 蛸は「これ大切な物なんでしょ」と言わんばかりにパレオを綺麗に畳み水着を優しく脱がそうとしていた。
「ならまぁ……まぁ。おとなしくしておくのが、吉……? ぬるぬるして、ぬめぬめで……感触は最悪だけれど、身体は預けても大丈夫でしょう」
 優しく水着を脱がしてタオルを巻かれた様な気がする。紳士的なタコ君がそっとアロマオイルを塗ってくれているようである。
「……しかもなんだか、だんだんきもちよくなってきた……ん……ねむ……ふぁぁ……ん……おやすみなさい……」
 ゆらゆらと揺り籠のように感じ始めた星穹。その前にぐいっと押しつけられるように落された流星は「ぎゃっ」と少女らしからぬ声で叫び――蛸によって晒しを奪われその発達の良いお胸をタコ君にのみ晒すのだった。
(くそ、この蛸……秘密にしておきたいなら俺だけが見とくぞみたいな顔をして――!)


 星穹が戦線を離脱し――守りたかった師走先生と言えば、どうにも穏やかな笑顔で蛸を受入れていた。
「師走! ……えっ、なんかすっごい慣れてる感出てるんだが? えっ、なに?」
「実は……」
「51番目の元カノが身体からぬめぬめ粘液出してたから慣れてる?? えっ、貴殿の元カノ遍歴どうなってんの?」
 大変おモテになる師走は直ぐにフラれるためにぬめぬめ粘液の彼女こと『りりちゃん』を思い出して切なげな顔をしていた。
 皆がやられていく中で無事に少し距離を取っていた逢華は「汗掻いちゃったね」と溜息を吐いた。「暑いですね」と笑った神無月も突然のことで汗が滲んでいるようである。
「それにしても暑いね、浴衣は一旦脱いでしまおう」
「脱いでも宜しいのですか?」
「んー? この下は水着だから大丈夫だよ。元々この浴衣は脱ぐつもりだったんだ……よ………
 ってまってなんでこっちに来てるの?? まだ着替え途中! 手伝い? まってまって!!」
 お着替えしようねと言う勢いで迫りくる蛸。どうやらアーマデルや綾花は色々あって開放されたらしい。
「きゃあああああああ! 助けて!! 霜月お兄ちゃん!?! 頭領さま!?!? あとそっちで終わった良かったって顔してる人たちも!!」
 逢華がぐん、と掴まれる。助けてと叫べども色々あって一番酷い目に合った霜月は「もう無理ィ」と笑うだけだ。画面の端できっと酷い目に合う行人の分まで霜月が肩代わりしたのである。
「大丈夫ですか、今助け――」
「待って神無月お兄ちゃんは来ないで!! 私のことはいいから神無月お兄ちゃんだけは逃げて!! 逢華のお願い聞いて!! ねぇ!」
「で、ですが――!」
「逢華は大丈夫! PPP論が逢華を味方してくれます!んっ。待ってさすがにそれはやばいぃぃ。あっ……だめぇ、ってかこんなとこで『夜花』しなくていいよね? こういう時に使わなくってどうするのって……そのために技術学んだわけじゃないです!」
 誘惑も性的魅力もそんな裏のお仕事みたいな顔をして頂きたいわけじゃないと逢華が懸命に叫ぶその間へと割り込むように神無月が飛び込んだ。
「部下を弄ばないでくださいっ! このお馬鹿さんがっ!!」
 叫ぶ神無月に「神無月お兄ちゃん、いや、そんなァッ!」と逢華が叫ぶ。触手に塗れる神無月は酷く苛立ったような表情をし乍ら紳士的なタコに甘んじていた。
「神無月! うわ、心底嫌そうな顔してるな……いいぞ、一部界隈に需要あるぞ!
 神に愛された神聖な神主が触手にぬめぬめにされるってどんな気持ちだ! 悔しいか! その気持ちを忘れるな!!」
「この瞬間ほど、頭領を呪おうと考えたことはなかったでしょう」
 ――因みに、その様子を見ながらコルネリアは呟くのだ。「なんでアタシだけボディクリームな訳?」と。

「よく寝ました……肩も軽いしお仕事が捗りますわね、これ。一応逢華達は嫁入り前ですし、情けない姿は見られたくない方も居ますし……敵を倒して証拠隠滅すればいいと思います。
 ほらこう、なんか。うん。こう。心の問題だと思います。師走先生、顔色が悪いようですが……大丈夫ですか?」
 起き上がってきた星穹に師走は何も言わなかった。鳥渡元カノを思い出しただけなのである。
「ふぅ……じゃ、茶番はこのくらいにして――さてよくも俺の部下を弄んでくれたな。さっさとバラしてやるからそこを動くなよ」
「鬼灯くん、格好良いのだわ!」
 実はタコに何もされていないし、部下を撮影して楽しんでいただけの鬼灯であるが、最後はしっかりとキメるのが頭領の役割なのである。
 こうして、無事に倒された巨大タコは可愛らしい浴衣に着替えた流星がしっかりと章姫の為にたこ焼きにしたのだ。
「お肌の調子が良いのですよね。ぬめぬめって効くのかしら。さぁ、あとはこれを食べて帰りましょうか」
「ううっ……ぐす。神無月お兄ちゃんが無事で良かった……」
 涙を流している逢華を宥める神無月も蒼白い貌をして居る。
「はーぁ……酷い目に遭ったわ、もうタコは懲り懲りよ。それはそれとして、お刺身美味しいわねこれ……」
 お刺身にされたタコをぱくりと食べながらぬるぬるする水着を身につけた綾花は苛立ちの余り叫んだ言葉を思い出した。
 ――こんの変態タコ! 大衆に恥を晒してただじゃおかないわよ!!
 実は一番衆目に晒しそうなのが鬼灯のハンディビデオなのは言わずもがな。
「口の中で跳ねてる、跳ねてるんだけど、新鮮を通り越してないこれ!? それにしても酷い目にあったわ……肌はクリームで潤ったけど心が乾いた……」
 コルネリアは溜息を吐いた。たこ焼きをもぐもぐと食べていたアーマデルはハッとしたように云った。
「成程、辛い事も苦しい事も、ぐっと飲み込む、食い物だけに。食ったら忘れるんだ、いいな? …あいつには内緒だぞ……」
 ――屹度、イシュミルさんなら気付いてますよ。多分、直ぐ後で。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おつかれさまでした。
 コルネリアさんが「たこさん見たら言い捨て」とタコのことを「たこさん」って言ったのがかわいいなっておもいました。

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