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シナリオ詳細

世にも恐ろしい拷問劇~ガーリックバターわさび醤油の魔力~

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「フフフ。天下のイレギュラーズと言えど、こんなものか」
 暗く、冷たい地下に『貴方達』はいた。
 その身には鎖が施され武具は取り上げられている――それは何故か?
 目の前にいる貴族に捕らえられてしまったからだ。
 事の始まりは、目の前にいて不敵な笑みを浮かべているリック卿の『闇』を暴いて欲しいという依頼を受けた事。リック卿は善政を敷き民にも慕われている人物だ――が。一方で屋敷の秘密の地下牢を隠し持っているという噂もあった。
 その地下牢で何か残虐な事をしているのではないかと。
 忍び込み、事実を確かめようとしたイレギュラーズ達。
 ――しかし待ち受けていたのは多数の警備兵。情報が漏れていたのか完全に包囲されてしまっており――そして幸か不幸か『貴方達』は目的の地下牢へと入れられてしまった。
 やはりあったのか地下牢は。
 わざと抵抗せずに捕まってみせた甲斐があったと言うものだ。しかしここではたして何が行われているのか……思考していれば件のリック卿が目の前に現れて。
「さぁ一体どこの誰からどんな目的の依頼を受けたのか吐いてもらおうか。
 いや……この際だ。依頼主よりもローレットの秘密でも吐いてもらおうか、ククク……」
「――そうそう簡単に我々が屈するとでも?」
「フッ。そう強情であってもいい事はないぞ……吐かないならばこちらも手段は選ばん」
 まさか――拷問か? 誰かの脳裏にその言葉が過った。
 この地下牢……よく見れば所々に赤い『何か』が付着している――これらはこの牢に入れられた『犠牲者』のモノかもしれないと思考を馳せた、と同時。
 リック卿の手に握られるのは一つの皿。
 あれはなんだ――考えている間に皿の上に載せられし蓋が開かれれば――

「どうだ――これぞガーリックバターサーロインステーキ・お好みでわさび醤油を添えて、だ!」

 そこにあったのはお肉だった。
 焼きたてなのか端の方で肉汁が弾ける音がし、蓋が開かれたが故に閉じ込められていた香りが周囲に満ちる――ほんの微かに掛けられし特製ソースの芳醇なる煌めきが鼻を擽り、唾液腺を刺激。数秒経てば肉の弾ける音が落ち着きつつあるが、だからこそ揺蕩う湯気の先に在りし至高の肉の姿をありありと見せていて……って
「フッ――どうだ。これは我が屋自慢の秘伝のソースをも用いた究極の一品が一つ……あっ、わさびは私が裏の庭で栽培してる自家製をいろいろがんばってつくりました。えっへん。という訳でこれを食したければ――話してもらおうか」
「え、いや、お肉って……拷問は?
 数々の針とか器具を用いた阿鼻叫喚の部屋じゃないのここ?」
「なっ、針だと!? ふざけるな――そんなの使ったら怪我するじゃないか!!」
 全く常識で物を考えたまえよ! ってなんか怒られてるんだけどどうして?
 ……ただなんとなく分かってきたんだけど、もしかしてリック卿って。
「さぁそれよりどうする~~~? このステーキをこのまま冷やしてしまっていいのか?
 ククク。それとも君たちの目の前で食べてしまおうか……
 でも一人で食べるのは寂しいから早く君たちの秘密を吐いてほしい」
 ――只の料理好きなだけの善人なのでは?
 あ、よーく見るとこの地下牢に付着してるのってトマトっぽいな。前に調理かなんかした時に付着しちゃっただけなのかな……依頼主って確か隣の領主で『幻想の貴族で闇がないなんてそんな馬鹿な事ある筈がない! 探ってきてくれ!』っていうなんか疑心暗鬼に囚われてた人だったし……全て只の誤解なのでは? なんでこんな怪しい地下で料理してるのかは知らないけど。
 ともあれステーキはガチで美味しそうである。
 ぐぐ、ぐぐぐ。ちょっと、ちょっと屈するぐらい良いんじゃないだろうか? そうだ、そうだよ。これは脱出の為。隙を窺う為にちょっと屈する必要な屈しなだけであって……本当の屈しじゃないから!
「あっ。もしかしてお肉ダメな感じだった? 麵料理を用意しようか? それとも和風? 中華が良かったかな。ええい! 君たちが屈するまで私も諦めないからな!!」
「くっ。この程度の拷問で屈するものか……!
 デザートにアイスが出てくるまで――絶対に屈しないからな!!」
 なんか隣が調理室らしくそこへと駆け込んでいくリック卿。
 まぁその、一応。一応これ依頼なので、リック卿の屋敷の地下には(無害な)地下牢がありましたってとにかくローレットに報告に戻らないといけないんだよね。うーん、どうしよう。やっぱりちょっとぐらい屈してもいいかな……? なんか出してくれそうだしね、コレ。
 葛藤するイレギュラーズ。隣の調理室から聞こえてくる軽快なる調理音と美味しそうな匂い。
 今――イレギュラーズとリック卿の間で、なんだかよく分からない戦いが始まろうとしていた!

GMコメント

 世にも恐ろしいごーもんの時間です! ご縁があればよろしくお願いします。

●依頼達成条件
 無事に屋敷を脱出する事!(なお、拷問に屈しても良い)

●シチュエーション
 皆さんはリック卿の屋敷に地下牢があるのではという調査依頼を受けてきました――色々あってわざと捕まった(或いは素で捕まった)皆さんは地下牢に入れられてしまいました……そして世にも恐ろしい拷問劇が始まろうとしていたのです――ッ!

 なおその拷問って言うのは美味しそうな料理を、手に届かない所(牢の外)に置くっていう拷問です。牢の外ではステーキとかが美味しそうな匂いを漂わせながら……しかしやっぱり皆さんの手の届かない所に置かれています。

 そう――これは拷問に屈した者だけが食べる事が出来るのです!!
 そこいら辺リック卿は甘くありません。情報を吐かない人物に食べさせる事は――絶対にないのです! なお。依頼主の情報でなくてもなんか自分だけが知ってる秘密の情報っぽいのを教えるだけでもOKみたいです。例えば以下の様な情報でも構いません。

・ユリーカのおむねはない。
・練達では同人誌がブーム。
・自分の領地の名産品は●●

 なお。武器も取り上げられてるんですけど隣の部屋にあるらしいです。(教えてくれますし、鍵は付いてません) なんか秘密の情報教えてくれたらご飯あげるし、最終的には『また来てね!』って普通に帰してくれます。
 皆さんは超速度で屈してもいいですし、或いは『屈するもんか!』ってしても良いです。とにかく最終的にちゃんとローレットに帰れればOKです!

●リック卿
 幻想の貴族の一人です。善政を敷いている人物で、民からの信頼も厚い人物……
 しかし幻想の貴族でそんな善政家など――! 何か隠してる闇があるのでは? と疑われ、彼の身辺の調査依頼が出されました。なんでも秘密の地下牢があるという噂があったのですが……

 真実は只の料理好きなだけの人物。和洋中なんでも作れるらしいです。
 地下で料理してるのはメイドとかにバレると恥ずかしいから……(*ノωノ) なんていう理由らしいですが、とっくの昔に周辺の人物たちにはバレまくってます。普通に只の善人です。
 彼は拷問と称して己が料理を振舞ってきます――!

 ちなみに振舞われる料理は例えばステーキ・尋問用かつ丼・バター醤油ポテト・塩枝豆・アイスクリーム・パンケーキ……などなどです。書いてる私もお腹空いてきた。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 世にも恐ろしい拷問劇~ガーリックバターわさび醤油の魔力~完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年08月31日 23時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
希う魔道士
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘いかおり
時任 零時(p3p007579)
特異運命座標
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
甘い筋肉
橋場・ステラ(p3p008617)
斬城剣
囲 飛呂(p3p010030)
特異運命座標
杜里 ちぐさ(p3p010035)
少年猫又

リプレイ


 イレギュラーズ大ピンチ! こっそり潜入した筈なのに、美味しそうなにおいにひっかかって捕まっちゃった! これから一体何をされちゃうんだろう――!(※『ミルキィマジック』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)のあらすじ!)

 牢内に漂う匂い。肉焼ける音が精神に呼応する――

 このような……このような策を弄するなど、くっ!
「何と卑劣な人間でしょう……応じれば料理に屈する卑しい女と思われ応じねばそう思われたくなくて痩せ我慢する浅ましい女と思われる……どちらに転んでも地獄。かくも究極の選択を突きつけてくるだなんて! これだから人間種はッ――!」
「フフフ何とでも言うがいい……あ、ハンバーグもあるよ?」
 くぅ! と必死に抗うのは幻想種の『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)である――誇り高い幻想種である彼女は……こんな卑劣な策に屈したりなどしない!
 そうだ……人間種如きには及びもつかない幻想種の高い知性を用いればこのような状況の打破だってすぐ思いつく! えっ? その割にあっさりヘマして捕まったって……? ち、違う。あれは全て計算の内であって……人間種には理解できない計算をしたんですー!
「うぐぐ、そうだ! 俺だって屈しないぞ! いやそもそも牛肉より鶏肉の方が好きだし、わさびは苦手なんだよ! そういうのを配慮してない時点で……この企みは企画倒れしてるんだ!」
「あ、じゃあわさび抜こうか。チキンステーキ用意するね、バターレモンでいい?」
「うーんいやどれかというと唐揚げがやっぱり捨て難……違う! いやわさび抜かなくていい、ある方が美味いって人もいるかもしれないし! え? いやまだ屈してないって!」
 同時。アリシアと同様に屈さぬという意志を見せるのは『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)だ。正直美味しそうな匂いに既に食欲君は白旗を挙げている状態なのだが、大本営たる脳が降伏を拒絶している。
 屈しない……決して屈しないぞ唐揚げが出てくるまで……!
「そ、そもそもなんでこんな地下で料理してるんだ!
 衛生環境大丈夫なのか!!? そんな怪しい料理怖いだろ、理由もわかんない状態で!」
「ええ!? これは只、人を使う筈の貴族が料理なんて他の人に漏れたら恥ずかしいから……(*ノωノ)」
 なんだこの人ホントに何???
「ウウ、なんて恐ろしい事を考えるにゃ、リックキョウ……
 拷問辛いにゃ……でも、僕は屈しないにゃ! 絶対にゃ!!」
「そうだよ! 幾らガーリックバターサーロインステーキ・お好みでわさび醤油を添えてなんていう料理が出てくるからって……この程度じゃあボクの秘密は話せないね! ふふん!」
 だが耐えているのは『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)とミルキィも同じだ――ッ! この程度でイレギュラーズを懐柔出来ると思ったら大間違いだぞ! 屈さない! そう、誰一人として屈するもんか!
「……でももし鶏ササミのお刺身を用意出来たら情報を提供しないでもないにゃ」
「ふっ。そういう事も想定してササミの刺身も用意してあるよ――! お客様の笑顔の為に色んなモノを用意してるからね何でも言ってくれ!」
「ホントにゃ!? 鮮度や安全性も確保されてるにゃ!? ま・さ・か……あるにゃ!?
 わかったにゃ。屈するにゃ。実はローレットのオーナーはイケメンでモテモテだけどろくでもない男とも言われてるにゃ」
「ち、ちぐさ君――!!?」
 もはや侵入者扱いもしてないリック卿。鶏ササミのお刺身……それは猫や猫又にとって至高にして究極の料理。それを出されてしまったのならばどこに抗える理由があろうというのか! リックキョウ万歳にゃ!
「駄目だよ、イレギュラーズの結束を見せないと!
 こんな、ステーキだけの拷問に屈するなんて……」
「あっ。そういえばデザートはアイスクリームがいい? パンケーキ? ガトーショコラとかもあるよ?」
「あ、えっとね! 実は練達の再現性東京では今タピオカが流行っててね……あ、そうだ、とっておきの秘密なんだけど、ボクはねいつもお菓子作る時に……ゴニョゴニョ……(企業秘密)」
 すぐさま鞍替えしたちぐさを非難するミルキィだったが、デザートの存在に二秒ぐらいで屈した。今の所最高速度ですね! さぁという訳で屈した人達にはお食事タイムです。
 ミルキィにはジューシーなステーキから。
 柔らかな肉が口の中で踊り舌の上で跳ねる――
「うん! とっても柔らかいし、このワサビ醤油がさっぱりしてて最高! ああ~~蕩けてしまうよぉ~~~! え、なにこれ自家製コーラ!!? この炭酸で自由に割っていいの!?」
「んな~~~これはとっても柔らかササミにゃ~~~至高の一品ってやつだにゃ~~
 良質なタンパク質……本能が……本能が屈してしまうにゃ~~~~!」
 思わずコーラの出来に感心してしまうミルキィ。甘さに炭酸の強さ……そしてコーラスパイスの風味……これはシュガーランドでもなかなかお目にかかれないクオリティだ! リック卿……なんとも恐ろしい人物が眠っていたものである! ちぐさなんて猫だったらもうヘソ天状態ですよ!
「ふふふ。これで二人は屈したね……さぁ他には熱い内に屈する人はいないのかな?」
「あ、屈します。はい、屈しま~~す」
 絶品の味わいに体が溶ける様な至福に包まれているミルキィたち――に続いて、勢いよく挙手するのは『特異運命座標』時任 零時(p3p007579)だ。こら! 相談中では絶対に屈さないって言ってたでしょ! なにまた最高速度の屈し記録してるの!
「いや、だって考えてもみてよ――出来立てが美味しいに決まってるじゃないか。
 つまり、屈した時に得られるアドバンデージは、早ければ早い程良い。
 ――これは真理じゃないか? あ、秘密はそうだね。僕は実は尻尾が敏感でね……少し触られただけでもゾワってしちゃうとかそういうのでもいいのかな?」
「いいよいいよ! そんな個人の秘密にしておきたいような内容を話してくれるなんて……君は良い人なんだなぁ……」
 もはや耐える耐えないではなく『いつ屈するか?』の視点で話しているよ零時!
 だがどうせ屈するという観点では――彼の言う事は一理ある。食事、それは他の生き物の命を糧にして自らの命を繋ぐ行為……料理とは、それを少しでも豊かなものにするためのもの。
「だというのに、一番美味しい状態で食べないなんてそれは食材に対する冒涜だよ。
 いいかい? 人はね、決して『美味しいもの』には勝てないのさ――」
 なんかすっごいキメ顔で言ってるんですが、屈してますからねこの人!? あっ、ちょっと! めっちゃ柔らかいお肉にそんなゆっくりとナイフを入れて! あ、あ、あっ――!!


 駄目だダメだ! 既に半分脱落してるし、こりゃもう駄目だよ駄目! 残ってるメンバーだって『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)と『甘い筋肉』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)……あ、ダメですねこれ解散!
「ちょっと待って今なんか凄い失礼な地の文が流れた気がする!!」
「そうですよ! 拙達はまだ屈する判定すら入ってないんですよ――お腹空いてきたので早く判定に入ってください!!」
「……ハッ! イツノマニ、オレハ、コンナ所ニ!?」
 抗議してくるステラ達。一方で(甘い匂いに勝手に釣られて自分からはいった)プリンはようやく周囲の状況を理解し始めた――牢屋・ステーキなどを食べる者……なるほど、これは!
「――拷問カ! ダガ、甘イッ!! 拷問ノ方法ヲ間違エタナ!」
「な、なにぃ!? 私の拷問のどこが間違っているというんだ!!?」
 全てだよ、とマトモな人がいればツッコミ入ったかもしれないがそれはともかく。
 ジュウジュウと音を立てて香りを漂わせるステーキ――なるほど悪くない匂いだ。肉質も良い……強力な一手なのは認めよう。しかし!

「オレハ! 食事モ! 睡眠モイラナイ『プリン』ダカラダ――ッ!!」

 完全生命体プリンの主張――!
 たとえどんな食事を出されてもプリンが屈する事はない。だって根底からして『食欲』がないのだから……ステーキで釣ろうとしたって無駄なのだ無駄ァ! ぬかったなッ!!
「そ、そんな! 僕のステーキが……負けたというのか……ううっ」
「ハッハッハ、プリンノ完全勝利ダナ――アッ、チョットマテ。
 テーブル端ニ在ル、ソノ黄色ノ物体ハ――」
 うなだれるリック卿――の背後にあるモノに、プリンは気付いた。
 彼の指が震える。そう、そこに在ったのはなんと――黄金色に輝く、完璧なプリン!
「オマエ良イヤツダナ!! ハッハッハ! ナンデモキケ!!」
「ええ、いいのかい!? やったぁ!」
「あぁぁぁいいなぁ、食べれるのうらやまし……いやまぁプリンはそうなるんじゃないかって思ってたけど……まぁ、もとい負けないぞーぉなかすいたぁ」
 プリン貪るプリン。教えた秘密は『ご飯とプリンは合う!』らしいが、それは絶対プリンの好みなだけだと思う。だがこのプリン敗北展開は当選した時点で見えていた未来だ……この程度でヨゾラは臆さない! ステーキ『だけ』なら屈さない!
「大丈夫かい? 無理は体に良くないよ……軽めの屈しでステーキ食べておこ?」
「うぅぅぅでも、ここで屈したら今までどうして耐えてたのか……」
 軽めの屈しってなんだろう。コンビニ行くみたいなノリで言ったな。
 そんな逡巡しているヨゾラに――声を掛けたのは――
「いいかい。よく聞くんだ……僕は屈した。けれど、これは体が屈してるだけだからセーフだ。心とか……魂とかは……屈してないから、ギリギリセーフって事なんだよ!」
「な、なんだって――!!」
 零時だ。戯言にも程があるよぉ!
「ほら……今の内だけだよ……殆ど抵抗なく切れちゃう絶品ステーキ……ナイフを入れた瞬間から肉汁が溢れ出してきてね。濃厚なガーリックバターにわさび醤油の風味がいいアクセントになってて美味しいな……いらないんだったら食べてしまおうか」
「そうニャ……ちょーっと優しそうなパンツが好きなオス? がいるとか、ちょっと怖そうな黒い猫のお兄さんとか看板娘が沢山いるとか……そういう事を吐くだけでいいにゃよ? さぁ……どうするにゃ……?」
 零時にちぐさ、完全にリック卿側からの回し者だコレ!
 だからヨゾラも遂に屈する。大丈夫ちょっと屈するだけだからと――
「エアツェール領は猫沢山で名産品が猫おやつで、領主の館にどこまであるかわからない地下があるんだ。なんでも一度迷い込むともう出られないとかいう噂も……あぁぁぁ料理おいしい……幸せ……!」
「へーすごいなぁ!」
 リック卿『すごいなぁ!』で終わらせちゃっていいんですか……!
 ともあれ別に嘘をついている訳ではない。領主――つまりヨゾラ自身――館の地下に図書館があるし、どこまで広がっているのか分からないのも事実だ。猫が迷って出られなくなると悲しいから一部以外封鎖してるだけで……あーパンケーキ最高!! フォー!!
「ぬぁー! すみませんご飯ってありますか? え、御代わり自由? ホントですか!
 じゃあとりあえず次は拙の秘密の番なんですけれど……」
「あ。お腹空いたでしょ? とりあえず食べながら話そうよ」
 リック卿。せめて秘密聞いてから! と思うんだけど、まぁステラもいい加減お腹空いてきたので……! ていうか今日はうっかりお昼ごはんも食べ損ねていたのだ……空腹という最高の調味料がある状態でどうこうできません。
「一応気を紛らわせようと頑張ったんですよ? この地下牢、別にリック卿が作ったものではないのかなぁ……とか。以前の領主から引き継いだ可能性とかありますし、えっ!? 中華もあるんですか!!? 麻婆豆腐お願いします麻婆豆腐!」
「麻婆豆腐だね、任せてよ得意料理なんだ!」
 沢山頬張るステラ。出てくる青椒肉絲もおいしい~~♪
「あぁ~絶品ですね本当に……あっ。そうそうこれは秘密なんですが、拙は豊穣に領地を頂いてまして……これはまだ内緒なんですが、今は特産品の開発をしているんです、何だと思います?」
 じ・つ・は、とステラは溜めて!
「なんと――バウムクーヘンなのです!
 鉄帝製のオーブンを輸入したりと……あっ、秘密ですよ! 拙達だけの秘密です!」
「なんだってバウムクーヘン!? それは作った事ないよ、すごいなぁ!」
「……てかマジで思うんだけど、別に問題ある人じゃないよなこの人」
 同時。頂きますと礼儀正しく手を合わせながら唐揚げに屈した飛呂が一言。
 どう見ても普通の良い人である……これやっぱそもそも依頼の勘違いなんじゃと思い始めて。
「――あっ。そういえば秘密だったな、秘密……そうだな……俺この仕事、まだ始めたばっかで……スマートにかっこよく決めて、報告書に書いてもらいたかったのに捕まって……内心めちゃくちゃ落ち込んでる……俺なんでこんな恥ずかしいこと話してんだ……
 なんか美味いもの食わなきゃやってらんねぇ……」
「うう、僕が捕まえちゃってごめんね……そういえば唐揚げにレモンっている?」
 レモンを無遠慮に最初からかけたりしないよ、苦手な人もいるからね!
 落ち込む飛呂。励まされる飛呂。
 ――しかしこれでイレギュラーズは――『一名』を除いて皆屈して――

「フ。フフ……しかしやはり人間は愚かですね……」

 瞬間。その『一名』が再度口を開いた。
 その人物は――幻想種・エルシア。
 余裕をもった笑みが開かれ、その視線はゆっくりとリック卿を見据えており。
「何――?」
「私を炎遣いと知っての駆け引きですか? 肉など幾らでも保温できますし……何でしたら今すぐこの場で肉を消し炭にして差し上げてもいいんですよ? 丁度いい感じに焼けているあの肉……ほんの少し火力強めたらどうなるかお分かりですね? 台無しにしても――よろしいんですね!」
 き、貴様――!
 その発言に立ち上がったのはむしろイレギュラーズ達だった。敵は誰なんだ。あっ、皆様からの視線痛い。でも視線なら体力減らないから大丈夫ですね……本当に肉を消し炭にしたら私が資料閲覧制限でモザイクに変わる様な状況にされそうですけど。
 故に――エルシアは目で訴えるのだ――
『私が本気を出したら人死にが出ますよ、解放する方が得策ではありませんか?』
 下手をすると死人が出るぞ――勿論死ぬのは私ですが。
「ふふ……この地下室を死臭で満たしたいのであればお好きになさればいいんですけれどね」
「うう! なんてこった……僕にはそんな事……できないよ……!」
 Winner『エルシア』!
 仲間数名から壮絶なブーイングを受けながら解放される彼女――! リック卿がかわいそうだろ! あくまー! この幻想種―!
「うるさいですね! どうしても秘密を教えろと言うのなら……卿だけに白状しましょう」
 瞬間。エルシアは泣き崩れるリック卿の耳元で。

 ――本当は泣きたくなるほど怖かったんですよ!

「言ったら卿の秘密も言いふらしますからね! あーお腹空きました!! 頂きます!」
「うん! 沢山あるから一杯食べてね! 御代わりもあるよ!」
「あー! なら拙も! 拙もお代わりします! 酢豚美味しいです!」
「プリン!! プリンヲ、バケツデ!!
 アッ、リック卿! 余ッタ料理……持チ帰ッテモイイカ!?」
「ササミのお代わりが欲しいにゃ~~!」
 和気藹々。ステラにちぐさがお代わりを所望し。
 そして一応『調査依頼』であることを思い出したプリンは。依頼主に証明の為に料理を持って帰ろうと画策する。リック卿『いいよいいよ!』と言ってくれてるので……
「コレヲ食セバ……全テ分カル筈!」
 天啓轟く! そのまま料理が語ってくれるだろう。
 リック卿にやましい所など一つもなしと!
 鮮度を保ちてローレットへと持って帰ろう。そして説得しよう。これを食べろと。食べれば分かると。クエ。イイカラクエ――ッ!!
「へー! このパンケーキ、クリームチーズを入れてるんだ! なるほど、ボクも勉強になるねー……ねぇねぇ今度から時々来てもいいかなぁ? 一緒に作ろうよ! 結構癖のある味になるんだけど……ゴルゴンゾーラと蜂蜜の組み合わせとか、試したいレシピもあるし!」
「ホントかい!? 是非歓迎だよ! よろしくね!!」
 ミルキィとは特に気が合った様だ。パティシエ同士の調和だろうか――
「しかし。これだけ料理が出来るんだから、地下じゃなくてちゃんと日の当たる所でしたらどうだい? それだけの腕は努力とか重ねてきたんでしょ――それが恥ずかしいとかありえないからね」
「うう。しかし貴族としての色々が……」
「きっと他の面々にももうバレてるよ」
 吐息一つ。零時は零してリック卿へ伝える様に。
 何も恥ずかしがる様な事はない――胸を張ればいいのだと。
 とにかくこの後武器も返してもらって、お土産も貰って意気揚々と皆はローレットへと帰還を果たす。
「いやー良い人だったねぇ、秘密の地下牢もすごいし! 僕も料理してみようかなぁ」
 ヨゾラが言うような『あー美味しかったなぁ』という感想と共に。

 いやー今日はとても酷い拷問を受けてしまったイレギュラーズ達であったとか!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 滅茶滅茶お腹空いてきたッッッ!!!

 書いてて楽しかったです。ありがとうございました!!!

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