シナリオ詳細
再現性東京2010:猫耳尻尾はあやしくないよ
オープニング
●
――正純。聞いてほしいんや。
「ううん……」
『夏の思い出に燻る』小金井・正純(p3p008000)はまどろみの中にいた。
上も下もわからないような、漆黒の場所。導かれるように手のひらを伸ばすと、光がふわふわと寄ってきた。
何かが、自分に話しかけている……?
――詳しいことは言えんのやけど、このままだと、再現性東京は大変なことになってまう。
「そうなんですか?」
――でも、心配はないんや。
選ばれし者たちがおる。見ればわかるはずや。
そいつらと協力して、ちょちょいと――こう――世界を救ってほしいんや。
「夢、ですか……」
目を覚ました正純は頭上の違和感に気が付いた。頭が痛い。いや――なんか、あれだ、生えてる。
「こっち? こっちに行けばいいの?」
猫は、『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)をしきりに振り返りながら路地裏を進んでいった。追いついているのを確かめると進んでいる。クラリーチェの修道女のベールはみょいんと山が二つ。どういうわけかはわからないが、ある日起きたら猫耳と猫尻尾が生えていた。
かつて手当てしてやった猫だ。どこかへとクラリーチェを導いている。
「おお……おお……ありがとうございます……ありがとうございます……ありがとうございます」
『砕けぬ蒼翼』ハンス・キングスレー(p3p008418)はなぜか無為に祈られていた。飛び出した猫耳が花冠の片方だけをひっかけている。ずれた冠を『明日を希う』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)が直してやった。
通行人は「はあ……猫ちゃんたち、尊い……」というと去っていった。
うっかり道端を歩いていたら信仰を蒐集してしまった。よくあることである。
「これ、狼耳じゃないんだねー」
「狼耳がよかったかい? まあ、自分じゃ見れないんだけどね」
「似合ってるよ」
「……通行人にじろじろ見られるのはごめんだな」
「似合ってるよ」
「うん、いいんじゃないかな?」
『名無しの』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)にシキとハンスは真顔で頷いた。
尻尾で帽子をはねあげると、ニコラスは帽子を目深にかぶった。器用だ。
「どういうことだよ!!」
『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァーはもちろん猫耳が生えていた。
紫電もまた、朝起きてたらこうなっていたのだ。
獣種によく似た紫電はもはやなじみすぎて怖いくらいの耳であるが、それはいい、それはいいが(よくないが)『本体』までちょっと耳っぽい形がとんがっているのはなんだ?
抜きにくいことこの上ないのだが。
「どういうことなんだろうねこれ」
『どうだろうな』
『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)の頭にも、みょいんと猫耳が生えていた。
「よくわからないんだけど、ぴかーってなってこうなってて」
『ぼさっとしてるから……』
「こ、こいつだよ! こいつがえいってやったらこうなってたんだよ!」
犯人を見たのか。
注目が一斉に集まるが、『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)の提示する似顔絵……はなんらか、まがまがしいなんかだ。
「わからん……」
ニコラスは頭を抱えた。
「エルは思います。こたつはとてもあたたかいって」
『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)はこたつでごろごろしている。
「あ、お茶を淹れましょうか!」
すかさず甘やかす正純。
「悪いね。甘いものはあるかな?」
「おやつがありますよ。大丈夫。人間用です」
「クラリーチェさんのおかげでくいっぱぐれないね」
落ち着き始めるハンスとクラリーチェ。溶けるエル。
「待て待て待て、何とかしなきゃならねぇよな? オレはこのままは困る、ホントに!」
●どうしてこうなった
「うん、あやしくないよ」
『猫鬼憑き』綾敷・なじみ(p3n000168)はもとからである。なんならベレー帽にも耳がのっかり、尻尾も倍になっている気がするが、誤差の範囲だ。
「これだけいれば多数派だよ。いっそ世界が全部こうなったらあやしくなくなるんじゃないかな」
そっと猫耳メイドカフェのチラシや会員制猫耳尻尾クラブのチラシを並べるなじみ。
「お導きによると――猫らしい心をもって臨めば、夜妖は現れるとのことです」
正純がまっすぐに言った。
「猫らしく素敵なお洋服を着たり、語尾ににゃんをつけたりなどすると効果的かもとのことで」
「にゃーん」
あざといハンス。
「猫のことならばお役に立てると思ったのですが、猫になれとなると……」
クラリーチェはううん、と目を伏せた。
「身のこなしなら、まあ、なんとかなりそうなんだけどねぇ」
と、悩むシキ。
アリアの耳は音を見つけるたびにぴくっとそちらを向く。
「エルにはわかります、ぴったりのすきまは、とてもよいものです」
ティアがふりふりする猫じゃらしを目で追うエル。
ニコラスは「……」と尻尾を揺らす。
『引きずられてるよ』
「はっ」
ティアがはっとする。
このままだと精神まで猫に引きずられてしまいそうだ……。
- 再現性東京2010:猫耳尻尾はあやしくないよ完了
- GM名布川
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年09月12日 22時05分
- 参加人数9/9人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 9 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(9人)
リプレイ
●集え! 9匹のにゃんこたちよ
「心配いらないにゃ」
『戦神護剣』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)は堂々と仁王立ちし、ぐるりと皆を見渡した。
「個人的な嗜好を言おう。諸君。オレはケモミミが好きにゃ。
イヌもネコもキツネもタヌキもリスもウサギもネズミも好きにゃ。
これ以上話せば長くなるがとにかくケモミミ尻尾は素晴らしいものにゃ」
なるほど、猫耳尻尾はすばらしい文化なのだ。何も恥じることはない……。
「猫になれと言われたって、元々猫じゃないわけだし……」
『龍柱朋友』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は紫電の視線を感じて言い直す。
「にゃ、にゃあん」
「っ!」
ぷるぷるする紫電。
「な、なんだよ!!! 依頼だからなりきらなきゃじゃないか!」
(確かにROOじゃ猫にはなってるが……いや誰にも教えてねぇからROOと同じ猫耳に猫しっぽでもバレねぇよな? うん、きっと大丈夫)
『名無しの』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)はそっと頭に手をやる。確かに三角の猫耳がくっついている。これもROOの影響だろうか……。現実に浸食してきているというのだろうか……。
「これが……夜妖の仕業なのですね……」
ゴクリと息をのむ『未来を願う』小金井・正純(p3p008000)。「せやで……」、という星の声が聞こえた気がした。
「星の声の言うことは分かります。
首謀者は猫に並々ならぬ思いがあり、その結果こうなってるのでしょう。
いや、猫らしさってなんですか?」
猫になったことにより、精神も影響を受けているようである。
「……ぶなぁぁご。
フシャー!!! シャーーー! に? にゃー!! うなぁぁご。スヤァ」
「にゃにゃにゃ、なーななぁん」
ニコラスは鏡に向かって唸り、長毛種の猫耳猫しっぽを生やした『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)は、自分の尻尾を追いかけている。
正純にエルが頬を押しつけ、ニコラスが正純の装束のすその尻尾を追っている。
「ニコラスはなんか猫の動き慣れてるね?」
「!? 気のせいだろ」
シキの言葉に気のせいであってくれ……と念じるニコラス。
「……はっ。
エルは、夜妖さんを、頑張って、倒します。
にゃぁん」
「私もそれなりに落ち着く年齢ですし、ふつうに恥ずかしいんですけどあ、はい。やらなきゃダメ、なんですね。やります……にゃん」
「そのいきにゃん」
エルと正純に頷く紫電。
「……とりあえず天香の屋敷の方々に見られなくてよかったですね、ええ」
「今日の僕はニャンス・キングスレー、ということでね!」
『砕けぬ蒼翼』ハンス・キングスレー(p3p008418)はノリノリだった。実際、猫耳は似合っている。
「はて……。多数の猫を教会で保護し、日々猫たちに触れ合って参りましたが。
『自分が猫らしく振る舞う』日が来るとは思っていませんでした」
「もっと元気よく!」
ハンスに言われ、『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は言い直す。
「えと。思っていませんでした、にゃー」
猫よし。
うなずき合うハンスと紫電。
(な、慣れない。……ですがこれも神が与え給うた試練。いや。猫に関することならば喜んで受けるべき試練ですし)
「頑張りましょうにゃー」
シスターベールの中の膨らんだ耳の形に深く頷く紫電。
(若干窮屈です……うぅ)
「変わった依頼もやっぱりあるんだね」
『穢翼の死神』ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)は不思議そうに頭を触っていた。
『全くもって理解が出来んがな』
「まあまあ、面白そうだし良いんじゃ無い?
偶にはこういった依頼も」
『……好きにしろ』
「4月1日の幻覚が、僕とシキちゃんを猫らせろと囁いている……!」
「そうなの?」
「日和るな、逃げるにゃ!
行きますよぅ、ティアさんアリアさん!
目指すは猫カフェ、夢のにゃんこパラダイスです……!」
「はーい。……それにしても、描いた私さえ酷いと思うよ、このイラスト」
『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)
「絵が描ける時点で天才猫なのにゃ」
「味があって、エルは好きですにゃん」
紫電にとっては、天国である。
だからこそ。だからこそ……。
「悪用する輩はうらやm…こほん、許さにゃいにゃ」
紫電の拳はぷるぷると震えている。
「たとえシキの猫耳と尻尾がなくなるとしても夜妖の仕業とすれば許さにゃいにゃ!!!」
「これ紫電の仕業じゃないよね?」
「出来たらもうやってるにゃ」
そうだろうな、という納得があった。
(でもやっぱりシキにゃの耳と尻尾は触りたいにゃ……というかクッッッソ羨ましいにゃ……夜妖という監視案件じゃなければ手を貸してたにゃ……うっうっ……)
●選ばれし猫たちの会議
九匹のにゃんこたちは三組に分かれることとなった。
にゃんこラスとエルにゃん、そしてクラにゃんは路地裏へとやってきていた。
「猫たちが集まりそうな路地裏……うちの子たちもちょくちょく猫会議には参加している……にゃん、です」
猫会議。それは、ホンモノの猫しか許されない場所である。
「にゃんにゃん」
エルのファミリアーのサビ猫と三毛猫が寒いのかぺったりくっついている。猫たちが向かう先に行けば、そこで集会が開かれているはずである。
いかつい野良猫がじっとこちらを見ている。
「会議にゃボスが参加しているはずだ。上手く取り入るぜ」
と、にゃんこラスは塀の上に立ち、有利な位置を確保している。猫の習性をよくわかっていた。
「ふにゃーお」
「うにゃあああお」
「フンギャラニャオバリ」
「あっ」
すっと消えていったニコラスは首根っこを捕まえて戻ってきた。
「こういうのは下に見られちゃいけねぇにゃ。しっかり同格以上だって分からせにゃ」
なお、気迫だけの戦いだったためケガとかはしていない。
「私達は貴方達の仲間ですにゃよー」
にゃんこラスに敗北したのが照れくさいのか毛づくろいに移行する野良猫は、クラリーチェの言葉を聞いてうにーと伸びた。
警戒されないように静かに路地裏を移動する。猫は早足になった。
(行き止まりか)
(いいえ、このさきにあるはずですにゃん)
一見して行き止まりだが、クラリーチェが背伸びをすると……。
じ、とエルの目が辺りを見ている。
そこは、噴水を囲んだ猫のパラダイスだ。
「! にゃんにゃん」
エルのファミリア―がすでに席についていた。
「んー、んにゅー、にゃぁにゃぁ」
集合する猫たちで暖をとるエルにゃん。
(……はっ。猫を観察するのが目的じゃなくて、フリージアさんを探さねば)
なごんでいたクラにゃんがはっと我に返る。
「……そういや猫っぽくなっちゃいるが猫の言葉は分かるのか? いや猫の心で挑めばいけるかにゃ。猫の気持ちににゃるですよ」
「ところで、どんな会議をするんですにゃぁん?」
「にゃあああん」
なんとなく分かってしまった。
……フリージアは、どうやら猫クラブの会員らしいのである。
●猫クラブ『ちゅ~る~』
「こほん、ほらさっさとクラブに行くよ!
……い、行くにゃよ!」
というわけで、シキにゃんと紫電にゃん、純にゃんは猫クラブにやってきた。
「にしてもなんで猫耳尻尾が会員証に? 猫好きの人が多いのかにゃ
中で何があるかはわからないけど…ま、行けば分かるよね! ……よにゃ!」
『高級猫限定クラブ ちゅ~る~』という怪しい看板がかかっていた。
(一体どんなクラブなのか想像もつきませんが)
いまの正純はどこにでもいる猫耳猫しっぽの一般女性である。
「にゃ。何も変なことは無いし、猫のように気まぐれで俊敏に状況調査を行っても不審な点はないにゃ」
……結構つらい。
「合言葉は?」
合言葉???
「ケモミミは正義だにゃん」
ガードマンに対して、紫電がすらすらと答える。ガードマンが後ろの2人を見る。
「……け、ケモ耳は」
「正義だにゃ~ん」
「どうぞ」
ポーズをつけると扉が開いた。
「心配? なんで? だいじょーぶ、何があっても私が皆を守るからねぇ!」
「シキさん……じゃなかったシキにゃん……」
ちゅ~る~は見かけこそかなり怪しい雰囲気ではあったものの、中は結構普通である。置いてある衣装や服を除けば、であるが……。
眼福……。
(……はっ、いけないいけない。仕事に影響でるにゃ、平常心平常心……)
こらえる紫電。
猫クラブとは、いろいろな洋服や猫じゃらしなどが取りそろえられているクラブだった。
「……そうそう、猫耳パーカー! かわいいよね」
「わかるにゃ」
まっすぐにこっちを見てくる紫電。
「えっ、私も着るの? いいけどさぁ」
「にゃあにゃあ」
毛糸玉を蹴り飛ばすシキにゃん。尻尾をゆらゆらさせて近づいて、客が興味を示したらぷいっと目を逸らす。その猫っぷりに客と店員、紫電は釘付けである。
「自由で気紛れ、それが猫ってやつでしょ? なぁんて、にゃあ」
ぐっと拳を握りしめる紫電。心のメモリーに大切に保存する。
こんな光景を作ってくれるフリージア……。
(すっっっごいやりづらいけど仕事なので夜妖は倒すしかないにゃ。正直同志だと思ってるので本当に申し訳ないにゃ)
「! これは……」
正純は帳簿の上に乗って、ぺらぺらとめくっていく。大事な書類の上に乗るのは猫の習性であるため、何も怪しいところはない。ないったらない。「ンアア! カワイイネー!」との言葉で許されるのだ。
フリージアにゃんは、昼は猫喫茶でお昼寝している……らしい。
●猫喫茶『にゃんばらないっ』
「猫になり切るなんて楽しみだニャ~!
え、お仕事? やだにゃあ忘れてないよぜんぜん全く忘れてにゃいって!」
ニャンスを先頭に、猫喫茶に向かうアリアにゃんとティアにゃん。
「さあカフェに行くにゃん!」
意気揚々とカフェの扉を開けるのだが……。
「ーーって、猫耳猫尻尾メイドカフェ?
と、いうことは店員さんでオリジナルな猫さん達じゃない……?」
ショックを受けるニャンス。猫もいるが人の比率の方が多い。
「おかえりなさいませご主人様★」
「むぅ」
コレジャナイ感がある……。
自分の耳と尻尾に夢中で全然話聞いてなかったのが仇になった。一応、数匹猫がいることにはいるのだが……。
とはいえ、仕事は仕事であると割り切って、ここは猫になりきってみることにした。
(……どうやれば良いんだろ?)
「にゃー、にゃー、にゃうー、うにゃー、うなーん」
ティアは招き猫のポーズをしてみた。外を歩いていた客が90度直角に曲がって入店してくる。
『……』
人の趣味と言うのはまったく度し難いものである。
「まずは、かわいいお洋服……あれあります? 猫の着ぐるみ! ……やった、あったにゃーん!」
ひょこひょこと灰色の毛並みの猫さんになってみるアリアにゃん。なぜか耳もきちんと入った。
「全身で猫を体現するにゃん! お耳もあるから完璧だね!」
4足歩行をしてみるティアにゃん。ソファーに這い上がってみた。
「にゃうにゃぅにゃーん(おいしくなーれ)」
ケチャップでオムライスに肉球を描いていくのだった。
「あ、私もやるにゃん!」
やってきたアリアにゃんのケチャップで描いた絵は前衛的だったが、まあ猫だったらこんなものである。天才画伯だ。
「ティ~アちゃん! あそぼあそぼ!」
「にゃ~ん(遊ぶ!)」
寄ってきた猫に猫じゃらしを振ったり、ブラッシングしてあげたり、一緒にキャットフードを……。
「……ってこれはなし! 尊厳が失われちゃう><」
直前で思いとどまるアリアにゃん。
「あ~かわいい、癒される……溶けちゃう……」
「何しに来たんだっけにゃん?」
「あれ? 仕事? だ~か~ら忘れてないって」
『まあ、楽しそうだからいいか』
「うんうん、これも猫活だねっ!」
巻き込まれないようににこやかに距離をとっていたハンスではあったが……。
ついにふりふりの猫メイド服を差し出されてしまった。
「……え、僕も着ろって?
それはちょっといけないんじゃないかにゃあ……?」
もじもじするニャンスはちらちらと部屋を見渡す。
(こ、こうなったら……!)
「着るにゃん?」
「ここに来るまで懐いてくれた信者猫、もしくは猫信者ならどかんといます!
さあ皆、ごろごろにゃーんと撹乱するんだよぉ!」
「う、うわーーーー! 猫耳メイドの反乱だーーっ!?」
途端に大騒ぎになる猫喫茶。空にぴょんと逃げていたハンスであったが、その目に入ってきたのは……。
「はっ! アレはねこじゃらし!
身体が、変貌した本能が疼いて治らない……!!」
猫じゃらしを空へ跳ね上げる。デッドリースカイならぬ《フィーラインスカイ》……それは宙を舞う猫。
「猫は液体!
そう、猫ならば! 高いところに蹴り上げられて落とされても大丈夫!」
「あ~かわいい、癒される……溶けちゃう……。……ところで、夜妖さんはどこに出るんだろう?」
「そういえばそうだね」
『覚えてたんだ』
「なんか騒がしいけど、にゃんだろう?」
「にゃーん」
そして、ハンスの統治で暴れ回ったキャットタワーが崩壊し……。
「にゃにゃーん、みつかっちゃったにゃん!」
――フリージアが現れた。
●ネコ集合
フリージアは、ものすごい速さで逃げていく。
「待って!」
そこに降り立ったのは、ハンスである。
「……まあ、ぶっちゃけ、僕、言葉ではこんな猫々しくしてますがまだ本気出してないって言うか。流石に恥ずかったって言うか……うぅ」
魅力は十分。毛並みはつやつやである。儚き花の、上目遣い。
目を潤ませて、賢く、媚びて……。
「にゃー…みゃーみゃー。みゃぁ……。にゃお。みゃーん……オニャァ!」
「はにゃああ!? 猫尻尾フェザータッチにゃん!?」
硬直する夜妖。
ニャンスはしめやかに発狂している。肩が震えている。
「大丈夫ですにゃん」
「可愛かったにゃん」
「……もう! 何も怖くにゃい! です!」
そして、仲間たちがやってきた。
「見つけましたよ首謀者!
この耳と尻尾を!」
「?」
「ダメだあの夜妖、人語(?)には耳も貸しません!?」
「犯人だにゃ!?」
てちっと肉球をつきつけるシキ。
「! 危ない!」
庇う紫電。ほっぺにぷにっときた。
「危なかったかにゃ?」
「あ、ずるいにゃ!」
「まぁいいや! この自慢の肉球でもふもふぷにぷにしてやるんだからにゃ!」
「にゃー!」
「この鋭い爪でがりがり~もしてやるにゃ! なんか爪とぎにちょうどいい気がしてきたにゃ!」
「ふしゃー!」
正純は仲間たちの勇士を見て心を決めた。
「ハンスさん……! わかりました。私もとっておきを出します……。
くっ、ええ、分かりましたよ。やればいいんでしょう!」
「にゃにゃん!?」
「くらうにゃ!さっきクラブから盗、こほん。お借りしてきた鰹節で出来た矢を!! ここまで来るのに食べないように我慢した逸品! これで、貴方もメロメロにゃー!」
「はにゃーん!」
正純のかつおぶし矢に飛びつくフリージア。と、一部の仲間たち。
もはやてんやわんやである。
「こいつ倒せばこの状況も終わるんだな? さてもう一踏ん張りだ」
「そうだな。辛いけれどもやらなくちゃな……」
「猫会議に行けばよかった……」
落ち込む紫電とハンス。
「そういう踏ん張りかにゃん?」
突っ込むにゃんこラス。
「逃がさないにゃん!」
「にゃーーーん!」
紫電のねこまねきが逃走しようとするフリージアの注意をひきつける。ねこ尻尾まきつけが次々と潜る空き箱を看破して転がしていく。
「ううーっ」
「わがにゃはしでん! さあかかってくるにゃ!」
「にゃー! お仲間ですにゃ!?」
「正直ありがとうとは言いたい!」
「皆を元の姿に戻しなさい、にゃー!」
クラリーチェは猫ぱんちを繰り出そうとするが、いまいち近接攻撃には覚えがない。
ならば、とクラリーチェのしなやかな尻尾が猫をてしてしする。
「はにゃーーん!! ま、まけていられないにゃん!」
投げつけられたのは猫じゃらしだ。
「あっ猫じゃらし! うふふ」
ころころと転がってはっとするクラリーチェ。
「……そうじゃなくて! フリージアさんをなんとかするですにゃー!!」
「にゃうにゃう」
ティアはじっと後衛に下がり、猫ビーム(魔砲)を繰り出した。
「うー、にゃーっ!」
「普通の攻撃はきかないにゃん! って、これは!?」
伏せの構えからのうー、にゃーだった。全身が猫のポーズである。
「なぁーご」
手招きする様な、穢翼・白にゃんにより、猫の集中力は散っていく。猫になりきらねばフリージアは力が出せないのだ。
「ふしゃあああっ!」
ティアのその歌は狂気を蝕ませる猫のケンカの旋律である。
「にゃぅにゃっ!」
猫パンチが炸裂する。
服装は気にしてたら猫になれない。
「っ! いました……にゃん! 前は任せましたにゃん」
といいながらもエルはフリージアに突進していく。
「エルは後ろ……なんて行けませんにゃぁ!
だってだって、夜妖さんの、ふりふりが、気になって、仕方がないですにゃぁん」
「これはねこしっぽだにゃん!?」
顔をくしくし整え、ふりふりをぺしぺしする。
「!? あれはウサギだにゃーん!?」
つららを喚んで、一緒にがぶがぶ囓るのだった。かつおぶし風味である。
「にゃああああん!」
「???
なんだか、夜妖さんから、匂いが......っ?!」
フレーメン現象を起こして呆然とした顔で固まるエル。
「くらえ! 猫パン……」
ニコラスの一撃は猫じゃらしをかすめとった。
「はっ、ねこじゃらし……うずうずするにゃ!」
アリアもてしてしとそれに加わる。
「ちっ。猫じゃらしみてる場合じゃないにゃ。猫キッ……めっちゃふりふりしてる」
額を押さえるにゃんこラス。
「いや違う! 猫じゃらしなんかに振り回されてる場合じゃ。……場合じゃ。目の前でめっっちゃふりふりしてくれてる!! めっっちゃふりふりしてくれてる!! 我慢できねぇ! 俺はこれで遊にゃー! にゃーにゃーにゃー!」
紫電が足止めをし、ものすごい勢いでねこひっかきを食らわせる。居合術のひとつ。ひっこめた爪を瞬時に繰り出す技である。
「よしっ! いくにゃん!」
にゃんこラスの連続猫パンチがフリージアを追い詰めていった。猫猫猫……浮かび上がる絵柄はすべて猫に乗っ取られている。揃った絵札をめちゃくちゃにするように、尻尾が思い切りフリージアを叩きつけた。
「くらえ~必殺、にくきうぱーんち!」
アリアの連続の猫ぱんちがぺちぺちぺちとフリージアを叩きつける。
「にゃぁーん」
シキとハンスは背中を合わせ、必殺のポーズを決めた。
●アフター猫アクション
「……はっ、私はにゃにを……じゃなかった、何を!?
ま、まぁ解決したならよかった……!」
我に返ったシキは頭をそっと撫でる。まだそこには耳があるが、気配は弱くなっている。
「フリージア……夜妖の中では比較的いいやつだったな……」
きりっと仲間のもとに向かい、手を差し伸べる紫電。
「シキ。唐突だが撫で撫でさせてくれ」
「え?」
戦い疲れて寝てしまったエルをそっと膝に乗せるクラリーチェ。
「猫の気持ちが少しは分かったでしょうか」
「……一応記念に1枚自撮りしておきますか」
そっと自撮りする正純。うっかり遮那くんに送信しないように気をつけよう!
「ニコラス……あ、もういない」
そこには猫じゃらしの柄だけが残っていた。
ニコラスは速足でその場を去っていった。顔が赤くなっている気がするのは気のせいだろう。ぽけっとにはねこじゃらしの穂が入っている。
「……あ、猫耳も尻尾もない……」
しょんぼりと肩を落とすアリア。
「楽しかった様な気もするけど凄い疲れた気もする。
猫をもふもふしたい」
『また喫茶店に行く?』
「あ、私もいく!」
ティアとアリアは、カフェに戻って、猫耳カチューシャをつけて猫と戯れることにした。
「あ~し~あ~わ~せ~あ、延長でお願いします!」
「たまにはいいもんだね!」
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
おつかれさまでしたにゃん!
猫は正義です。
GMコメント
ケモミミは最高ですね。
●目標
・全力で猫になる
(そして夜妖:猫耳憑きを倒す)
●状況
練達、再現性東京……。
そこでは、夜妖に猫耳と猫尻尾をはやされた人たちが社会的に苦しんでいます。
●ロケーション
猫耳猫尻尾メイドカフェや、猫耳猫尻尾が会員証になっている謎のクラブ、猫会議に最適な路地裏などがあります。
敵は強大です!!!!! 入念に猫になって夜妖に挑みましょう。
●登場
夜妖:猫耳尻尾憑き<フリージア>×1
「はにゃ~ん! 猫耳尻尾かわいいんだにゃ~ん!」
猫大好き。すべての人たちを猫耳猫尻尾にするのが目的の夜妖です。
猫グローブによる連続攻撃が主。すばしっこいです。
【猫属性以外の攻撃は無効】か【極端に効きません】。心してかかりましょう。
※猫属性とは、猫になりきった猫による攻撃のことです。猫に対する攻撃ではありません。でも猫ならなんでもありなんだにゃん。猫って自由だし。
ねこじゃらし×10
空中を漂っている生きたねこじゃらしです。ふらふら揺れています。
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