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シナリオ詳細

<半影食>夙夜夢寐

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゆめかうつつか
 寝ても覚めても、君ばかり。愛しい愛しい。『私』の事は忘れないでくださいよ。

 足下から鳥が立った。開いた口も塞がらない。血相を変えて、息を飲む。
 先輩ったら、どうしたんですか? 驚天動地って感じの顔をして、毒気も度肝も何もかも抜かれたような顔をして。
 目なんて飛び出して、疑って白黒しちゃって、ああ、それはもう目はまん丸になって一泡吹いているじゃないですか。

 大丈夫ですよ。先輩。
 先輩の先輩による先輩のための現川 夢華は先輩のためにちゃぁんと案内してあげます。
 此処が何処かって?

 異世界ってやつですよ。
 先輩にとっては混沌が異世界だって? ふふ、そんな可笑しな事を言わないで下さいよ。
 二の句も告げない先輩に可愛い可愛い現川 夢華が教えてあげます。
 夏にぴったりなホラー経験って青春だって事を!

●怪しくないいんとろだくしょん!
「やあやあ、R.O.Oのヒイズルと希望ヶ浜の繋がりを探しているんだって? うんうん、なじみさんも気になってたんだ。
 そしたら、なじみさんの友達の夢ちゃん……あ、現川 夢華ちゃんがね、皆と調査をしたいらしいんだけど、どうかな?」
「どうかな、と言われても……危険じゃないのかい?」
 問うたシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)に綾敷なじみは「大丈夫だよ、たぶん」と曖昧な返答を返した。
 再現性東京2010街希望ヶ浜。
 現代日本を――東京を――模倣して再現して作り上げたこの世界は『怪異』も『ファンタジー』も存在して居なかった。
 外界を徹底的に遮断して、当たり前の日常を作り出している此の地では、練達の国家プロジェクトであるProject:IDEA『R.O.O』で研究員が大量に閉じ込められる事件を面白おかしくワイドショーで放映している。
 名付けて『佐伯製作所大量行方不明事件』である。それに伴う都市伝説や噂が夜妖を産み出し、異世界を作り出した、というのだ。
 意表を突かれた顔をして越智内 定(p3p009033)は「なじみさんはまだ僕のアバター見てないよね?」と問うた。気になったのは美少女になりきっている自分を彼女が見ることだった――が「なじみさんは見てないけど、夢ちゃんは」の枕詞で愕然とする。
「先輩は秘密にしておきたいんですか? 駄目ですよ。先輩の秘密は私の秘密。私と先輩は元は一つのモノだった。
 ええ、人間というモノは誰しもがそうなのです。そうでなくっちゃいけないんですよ」
「なんだかそれって、ミミズとか微生物みたいな感じだよね」
「ああ、もうなじみさんも夢華さんも『無駄口』を叩かない! ほら、……あ、あの、イレギュラーズの、シキさん達が困って……」
「「照れてるの?」」
 女子二人に翻弄されている定はこほんと一度咳払いをした。
「ああ、ご紹介が遅れました。初めまして。先輩の先輩による先輩のための現川 夢華。気軽に夢ちゃんとでもお呼び下さい」
 黒髪のロングヘアーに無ヶ丘高校の制服を纏った夢華――実のところ、彼女は『無ヶ丘高校の何処のクラスなのか誰も知らない』不思議な存在なのだ。なじみに言わせれば「知らない方が良い」らしいのだが。
「私と共に建国さんの異世界に行きましょう。いいえ、いいえ、簡単な散歩ですが。
 そちらの先輩が気にしている事も少しは見ることが出来るかも知れませんし?」
「……私?」
 シキの問い掛けに夢華は頷いた。
「行ってみれば、わかりますよ」

●『異世界』
 建国さんと呼ばれる日出神社を入り口に、異世界へと入り込めば希望ヶ浜の景色は2010年のものよりも幾許か古びたように感じられる。
「なんか、昭和だね。しかも戦後?」
 定は教科書などでも見ることの出来る高度経済成長期を思わせる空間を思い浮かべたのだろう。夢華は「そうですね」とさらりと返す。
「ここは……普通の希望ヶ浜と違っているね?」
「そうですね。先輩達を私は豊小路の深いところにまで連れてきましたから。
 嗚呼、忘れていました。あの音呂木さんから預かった鈴です。決して無くさないで下さいね。お願いします」
 夢華に渡された鈴がちりん、と涼やかな音を立てる。
 さて、来てみれば分かると言われたが――何処へ向かっているのだろうか。
 東京は東京でも少し遡った時代を歩いている違和感は『ヒイズルと呼ばれたR.O.Oのワールドが大正時代をモチーフにした』事と何か関連があるのだろうか。
「……夢、さん? あの――彼処に誰か」
 シキが指さしたその先には、黒髪の女が立っている。

「黄、龍……?」

 りん、と鈴が鳴った。
 其処に立っていたのは神威神楽の守護神霊の一柱、『黄龍』と呼ばれる存在であった。
「――ま、夜妖が『何かを取り組んだ』のでしょうけれど。さあ、先輩達。
 この豊小路と呼ばれた道は何処に繋がってるのでしょう。
 駆け上りたいところですが、どうやら『あの幻影』は邪魔をしてくるみたいです。一つ一つ、倒しましょう?」

GMコメント

夏あかねです。豊小路を辿って。

●成功条件
 ・守護幻影『黄龍』の撃破
 ・元の世界に安全に戻ってくる

●守護幻影『黄龍』
 外見は黄龍(p3n000192)の女性形態です。長い黒髪に金の龍の眸を持った美しい娘です。
 言葉は話しませんが聞いた覚えのある声音でくすくすと笑っています。
 その戦闘方法は攻めに極振り。非常にタフなアタッカーです。どうやら、今回は彼女を倒しきらねばならないようです。
 黄龍を撃破することで『豊小路』の入り口が広がり、少しずつ情報が得られるようです。
 また、黄龍の撃破を完了しない場合は豊小路を進むことが出来ず夢華の『いたずら』で外部に強制的に出てしまいます。

●現川 夢華
 越智内 定(p3p009033)さんの関係者。年齢不詳、無ヶ丘高校(なじみの通う高校)の制服を着ていますが詳細不明。
 飄々とした態度を取る不思議な少女です。彼女はどうやら『普通の人間』ではなく『夜妖』に類する存在のようですが……。今回の案内役です。

●豊小路(入り口)
 日出神社(建国さん)と呼ばれた異世界の入り口となった神社の周辺の道は『豊小路』と呼ばれています。
 夢華曰く、無数に存在する豊小路の中でも正解を辿れば、こうして『守護幻影(へんなもの)』と出会うことがあるそうです。
 この入り口を広げておくことで調査が円滑に行え『ヒイズル側』との共通点を得ることが出来るかも知れません――

●日出建子命
 ひいずるたけこのみこと。建国さんとも呼ばれる国産みの神様です。親しまれています。
 日出神社は希望ヶ浜の各地にも存在し、其れに纏わる史跡も多くあります。それが出入り口のようです。
 ひよの曰く無害で普通の神様の筈ですが……。

●Danger!(狂気)
 当シナリオには『見てはいけないものを見たときに狂気に陥る』可能性が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <半影食>夙夜夢寐 完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月10日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
サイズ(p3p000319)
カースド妖精鎌
武器商人(p3p001107)
闇之雲
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
アクア・フィーリス(p3p006784)
憎悪の澱
金枝 繁茂(p3p008917)
夜妖<ヨル>を狩る者
越智内 定(p3p009033)
なけなしの一歩
フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)
百合花の騎士

リプレイ


 辿る道はうつつかゆめか。傍らに存在する少女は常と変わらぬ笑顔を浮かべて。無ヶ丘高等学校の制服に身を包んだ黒髪の娘は迷うことなく、澱みもなく、川の流れの如く穏やかに、そして単純に歩を進め続けて居る。
「待って」
 その背に声を掛けた『凡人』越智内 定(p3p009033)は『異世界』の空気には馴染めないと肩を竦めて。出来ればこんな場所に短いスパンとは言わず、何度もやって来たくなかった彼は「夢華さんはしっかり下がっておいてくれよ、怪我なんてされちゃ堪らないからさ」と窘めるように現川 夢華へと振り返り――ふと、思い出す。
「と言うか元は一つのモノだったってどういう事だい!? 僕に顔も知らない一卵性双生児の『妹』でも居たって言うのかい!?」
「いやだ、先輩ったら。そんなにも妹萌えだったりするんですか? 妹という語彙の部分だけ強調し、赤線を引いて、重要だと声高に叫ぶほどの」
 軽口を繰り返す夢華と定の様子に小さく笑みを零したのは『百合花の騎士』フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)。その鈴なる様な柔らかな笑い声に定の背筋がぴんと伸びる。
「うん、はい、ごめん、ごめんなさいそんな事言ってる場合じゃあないよね」
「いいえ……この様な特異な空間でも日常を忘れずに居るのは良きことですわ。ですが、ややこしい事に巻き込まれて仕舞ったのも確かなよう……」
 フィリーネの視線が豊小路――『建国様』の程近い場所に存在する小道の通り名だ――へと向けられる。射干玉の長い髪に金色の光を湛えた瞳が細められる。此方を値踏みするように眺め見遣るそのかんばせは。
「……どういう、ことだい?」
『龍柱朋友』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は困惑の中で、唯一といった風に言葉を絞り出した。ヒイズルと希望ヶ浜。その両者に存在する繋がりは少しずつにでも見えては来ている。それでも靄掛ったかのよう印象は拭えなかった。豊小路を辿れば真実へ辿り着けるはずだと考えていたというのに。
「……君が出てくるとは思わなかったよ、黄龍。
 きっと私の知っている黄龍じゃない。ただの幻影かもしれないけど、それでも……戦いたくはなかったな」
「何を云う。稀人との逢瀬を喜ばぬとは奇怪な娘――いや……そうか……『吾』との逢瀬を厭うのか? シキ」
 その声音で名を呼ばれるだけで。シキの眉間には深く皺が刻み込まれた。耳を貸さない方が良さそうだと囁く『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)に彼女は小さく頷いて。
「成程ね、あれがシキさんの友達の『幻影』か。どうして練達に居るのか……いや、R.O.Oによる影響か侵食かはわからんが……どちらにせよ『夜妖』なんだろ?」
 ならば斬るだけだと告げるサイズの傍らで夢華は「良き判断です。非常に合理的且つ独善的。そうでなくてはいけません」と楽しげに笑う。
「ええ、だって、希望ヶ浜では精霊であろうとも、妖精であろうとも、化物であろうとも、何だって夜妖(いてはいけないもの)ですから」
「……」
 出自も理解出来ぬ少女の告げたその言葉にサイズはぴたりと手を止めた。希望ヶ浜は特異な地だ。故に、彼女はそう称したのだろうが――シキが躊躇う分、己が戦わねばならないとやる気を漲らせて。
「あれ。深い所なのに『昭和』なんだねぇ。この間、鈴を納めた影響かね?」
『闇之雲』武器商人(p3p001107)が問えば夢華は首を振る。「どちらかといえば、元から此処はこの様な場所なのでしょう。鈴のお陰でこの風景が『外にまで出てきていない』と言う事でしょう」と朗々と語る。
 そうして何かを知っているかのような口調で語らう夢華のかんばせをまじまじと眺めて居た『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は囁いた。
「なじみ――猫鬼の次は、御主が案内人という訳か。この手の事は、"夜妖なら分かる"という事かな?」
 少女は答えない。答える口を、言葉を、脳を持たないかというように何も知らない顔をして、柔らかに笑みを零して。


 武器商人は出掛ける前にひよのに日出建子命についての神話を確認した。それは良く在る国作りや国産みの物語であったのだろう。だが、『豊底比女』に関する記述は希望ヶ浜では見つからない。そして、カムイグラ側でもそうした情報は存在して居なかった。

 ――そもそも、希望ヶ浜は『作られた』土地ですからね。都合が良い夏祭りのスポットとしての『建国さん』のお話を使用したのではないでしょうか。

 日本の夏には祭りが付き物だ。誰も彼もが地域の夏祭りの『主神』が誰かなど気にせずに遊びに出掛けていることだろう。その『舞台装置』としての神様が何ものかによって利用されたに違いは無い。
「ここまで詳細な黄龍の容貌が、噂として流れているとは考え難い。やはり、これはR.O.O経由で情報が流入していると見るべきか」
 呟いた汰磨羈の言葉に『憎悪の澱』アクア・フィーリス(p3p006784)はそれ程似ているのかとぱちりと瞬いて。
「黄龍……聞いたことは、あるけど……よく、知らない。目の前に、いるのは、偽物……なんだよね?
 じゃあ殺そう……迷うだけ、ためらうだけ、無駄なの……こんな、気持ち悪い場所……わたしも、あまり居たくは、ないの」
 恐ろしい気配がすると身震いをするアクアに「そうだよね」と柔らかな声音で返した『太陽の沈む先へ』金枝 繁茂(p3p008917)はしっかりと黄龍の幻影を双眸へと映し込んでいた。
「気付けば異世界で黄龍様似の夜妖との楽しいお散歩も始まったばかり、穏やかじゃないよね。
 こんな所にいると俺が私で無くなっちゃう、あれ?撲だっけ?あぁハンモだハンモだった。
 とりあえず行ける所まで行ってみようか。大丈夫、鈴の音は今も聞こえているよ」
 ――まるで、自分を失うような。
 そんな奇妙な気配を感じながらも繁茂は『カムイグラの神霊』を――ソレを模した幻影を眺め見る。
「倒すべき神の真名は本当に『日出建子命』か? 観測しに行くとするかね。ヒヒヒヒ……」
 笑う武器商人の声を聞き、黄龍は「吾を倒すのかのう、小さき子達よ」と愉快そうに目を細めて囁いた。
「倒したくなんかないさ。戦いたく何かも。けれどね、黄龍。……君がそこにいるならば」
 シキは瑞刀を、彼の神霊の友人の名を、力を、守護を纏った宵闇の刀を携える。その背に声を掛けるサイズも小さく頷いて。
 行く手を遮るならば、倒さざるを得ないのだと。
 するりと靱やかに前線へと飛び出す汰磨羈の冷たき霊刀に五行に寄り形成された魔力が乗った。
「此奴はあくまで幻影、偽物だ。黄龍の姿を盗んだ不届き者と思えばいい」
 いつかの可能性をその身に降ろせば、神秘的な破壊力が黄龍の眼前へと眩くも届けられる。白銀のレイピアを引き抜いたフィリーネはその切っ先に魔力を乗せて。
「申し訳ありませんが、そこは力づくで通してもらいますわ!」
 堂々たる騎士として、そして、戦場を支える白百合として。白き百合花の聖譚曲(リリィ・オラトリオ)は戦場を支えるべくして福音と化す。
「夢華さんに聞いて分かるか分からないけれどさ、豊穣の大精霊、それも一番ヤバイのが此処にいる訳?
 幻みたいなモノだったとしても襲い掛かって来るのはおかしいだろう。
 これじゃあまるでヒイズル側の黄龍が僕らの邪魔をしようとしているみたいじゃないか!」
 呻いた定は『反抗的』なブロッキングバッシュの構えを採った。このメンバーならば、自分がやれることは知っている。たかが知れている事だからこそ、それに努めるだけだと青年は開き直って少年の如く叫ぶ。
「こちらから干渉するなら分かるぜ、でもさ、作られた側が現実に干渉し始めたとしたら……そりゃあダメだろう!
 倒す事で状況が好転するかは分からないけれど、やるしかない! 因みに、僕はヒイズル側の邪魔なんてしてないぜ! 言いがかりだ!」
 堂々と叫んだ定にシキは頷いた。馬鹿正直に『竜』の攻撃を受け止めてやるほどに優しくはない。ガンブレードを背負い、勢いよく振り下ろす。
 大顎が作り出され、シキは黄龍の眼前にまで迫った。
「ねぇ黄龍、私ね。どうしたらいいかわからないの。何処に走ればいいかわからないんだ。
 例えゲームの中でも神光は大切。でもROOの黄龍も瑞も傷つけたくない。だから……」
 ああ、現実の彼ならば答えてくれるだろうか。導いてくれるだろうか。屹度、可笑しそうな顔をして云うのだ。

 ――シキよ。主は直向きに走れば良い。疲れたならば吾の元で休む。それで良かろう? 人とは間違える生き物なのだ。主の心のまま正直に。

「――だから、君の幻影を倒してでも知らなきゃいけないことがあるんだ!」
 シキが地を蹴った。続くように至近へ迫ったサイズの鎖が音を立てて伸びる。複製したそれが黄龍の動きを阻害する。
 その姿がブレた。倒したのだろうか。そう呟いたシキに繁茂は「こんなに簡単に倒れるかな」と呟いて。
 彼の『眷属』が現われる可能性もある。それ故に、消耗を出来る限り避けたかった。サイズが気配に気を配ったのと同様に、アクアは周囲を見回して。
「一回倒しただけじゃ、全然物足りなさそうな感じがする……
 ここにいる間は黄龍を見つけて倒すことだけを考えて、他の事は気にしないようにするの。
 調査とか、した方がいいんだろうけど……何が起こるか分からないのが、ちょっと怖い」
 ぶる、と体を震わせた。敵は一人であろうとも、それで『それ自体』を倒した感覚が無い。幾らでも襲い掛かってくるかのような不安が其処には横たわって居る。
「――来るぞ!」
 汰磨羈が直感的に感じた気配に。武器商人は「諦めの悪いコだね」と囁いた。
 金色の気配と共に、先程までの女人ではない男の姿を用いた黄龍が小さく笑う。姿は一定ではないその神霊はその力を分けイレギュラーズを迎え撃とうとするのだろう。
「まだまだ遊んでくれるであろう?」
「遊ぶ、……遊ばないわけには、いかない、んだよね」
 アクアの呟きに黄龍の唇に笑みが乗った。
「無論――『外に出(いず)る吾』に主らを刻みつけて貰わねばな! それは道になろうて。のう? 『シキ』」
 呼ぶ声に、唇を噛み締める。シキの身へと叩き付けた衝撃は金色の――何時の日か、その身に受けた彼の神霊の猛き一撃。
「強さも黄龍様と同じでないにしても回復し続けるだけで手いっぱいだね……!
 それでも、微力であっても、皆を守る一筋の陽光になるはずだから……この手は止めない!」
 繁茂は懸命に支えることを選んだ。酷い頭痛が、身を襲う。ソレが唯ならぬ気配である事を知っている。
 黄龍との応戦が己の体を見知らぬ場所から痛め付けているかのような不安。かたちにもない『苦痛』がその体をなぞり締め上げる。
「私は――あれ、俺は――あれ?」
「繁茂さん! 大丈夫かい!?」
 定の声に繁茂は「いけない、いけない、ハンモはハンモだったね」と微笑んだ。まるで彼が『この場所と親和性』があるかのような。鬼人種のその体を苦しめる黄龍の笑い声に定が「くそ」と呻いて。
「先輩は怖くはないんですか?」
「怖くないのかって? そりゃあ怖いさ。
 人間のヤンキー相手ですら足が震える僕だぜ? 殺意をぶつけて来る相手が怖くない筈がないさ」
 夢華を背に護る様に立っていた定は小さく笑う。それでも、怪我をするフィリーネを見て見ぬ振りするほど、仲間に護られて胸を撫で下ろせるほどに、弱い儘ではいられなかった。
 手を離さないで――そんな約束を無碍にする男、『ダサ』いだろ!
 故に、定は走り出す。支えるフィリーネの盾が黄龍の放った衝撃波を押し返し、武器商人の黄金神界の不滅闘法が一撃を叩き付ける様を横目に見遣る。
 フィリーネが「隙です!」と声を上げれば武器商人は「さあ、叩き付けておやりよ」とシキを急かして。
 そうだ。『それ』が本物で在るわけがない。
 その身に刻みつけて、『陽』出るその場所へ、続くしるべを見つけるだけだ。
「私が何をすべきなのか。どうすればいいかを考える為に――だからここで、おやすみなさい」


 一行は豊小路を辿る。コレが何処まで続いているのかと眺めるサイズは「先は見えないな」と小さくぼやいた。
「確かにそうだねぇ。何処まで行ったってこの街並み……ああ、コレを『辿っていけば』時代が逆行したりするのかい?」
「先輩、希望ヶ浜は『作られた2010年』なんですよ。私が、過去の風景を知っているわけ、ないじゃないですか」
 にこりと笑った夢華は否定はしていなかった。それが肯定であるかどうかは少しばかり考え得る部分があるが武器商人は成程、と小さく呟く。
 希望ヶ浜という場所には過去は多く存在して居ない。作られた場所で有る以上、その地に『本来の日本』のような歴史が根付いているわけではないのだ。
「……この先に広がる世界がヒイズルと同じ『時代風景』であったならば?」
「どういう、こと?」
「日出建子命という神は希望ヶ浜に『設定』された存在なのだろう。それと変化したヒイズルの『諦星』が重なったならば……」
 アクアは首を捻る。汰磨羈は直感的にはっとしたように呟いた。

 ――別々の神様が『何処かで一つに成り得る』?

 夢華が笑う。くすりと笑みを零して、飲み込むように。せせら笑うわけではない。ならば、この推測は正解か。
 昭和時代を思わせる僅かなレトロ。それが、道を進む度に大正時代の――ヒイズルの帝都の如き姿を変えたならば。
 本来ならば存在しないはずの豊底比女を迎え入れる土壌を『現実世界に存在する日出建子命』が作り出している可能性とてあるのか。
「そもそも、本当に倒す相手は『日出建子命』なのかい?」
「はい、本当にそれは存在して居るのでしょうか」
 武器商人とフィリーネに繁茂は「居るよ」と返した。その眸が何処かを見ている。まるで愛らしく微笑む彼ではないような冷たい硬質の声音は地を這うように囁いて。
「建国さんはいる。けれど、豊底さまは『現実には居ないはずだった』」
「ふふ、そうですね。ええ、そうです。『豊底比女は話には乗れど現実世界には未実装』ですものね」
 夢華の含みの或るその言葉にアクアは首を傾いで振り返る。サイズは「未実装ってゲームの様な言い方だな……」と小さく呟いた。
「夢華さんは、何か知っていらっしゃるのですか」
 フィリーネの問い掛けに夢華は「私は知っていることだけを知っている。なじみんも言っていたでしょう。先輩、夜妖(ばけもの)は夜妖(ばけもの)のルールで生きているんです」と笑みを浮かべた。
 背筋に走る薄ら寒さ。にんまりと微笑んだ彼女をまじまじと見遣った繁茂は「あの先には何があるかは知ってる?」と問うた。黄龍を倒せずにいれば、彼女の悪戯で帰還させられる――と言うのは方便だ。とどのつまり、命を危機に晒すつもりはないと言うだけなのだろう。
「さあ」
「何の意味もなく夜妖が黄龍様の姿を真似ていたとは考えにくい、だからこの豊小路には私たちが考えるよりも深く神咒曙光と繋がっている何かがあるんだろうね。今繋がりがわからなくても次の誰かが見つけられる様に豊小路の情報を私は、私? 俺は夜妖を倒す前と倒した後の違いを覚えておこう。俺? あぁ頭が痛いな……」
 ぶつぶつと呟いた繁茂の傍らに夢華は立っていた。アクアは「分からないことだらけ、なの」と呟く。
 現川 夢華が何ものであるか――それ位のことはデータベースを探れば幾らだって出てきた。だからこそ、彼女がこうして自身らの傍に居ることが妙な心地にも感じて汰磨羈は「ストップ」と彼女の歩みを止めた。
「それ以上『近付く』のはやめて貰おうか」
「先輩、どうかしたんですか? イヤだなあ、可愛い後輩ですよ」
「……いいや、コレは聞いておこうかと思ってね。リミットは? 探索を無尽蔵に行えるわけじゃないだろう。
 それを『教えてくれる』事位はするはず。その為の案内役でもある。そうだろう?」
 そうでなければわざわざ彼女を案内役には据え置かない。そう告げる汰磨羈に武器商人は「そろそろだろうねぇ」とからりと笑った。
「花冠の子に近付いたのはどうしてだい? 『現川 夢華(バンシー)』のお嬢さん」
 武器商人に夢華はくすくすと笑った。その性質は死の傍らに。死期の迫った者に寄り添う曰く付きの夜妖。彼女は「リミットです」と朗らかに笑うだけだ。まるで、此方の警戒など何も知らないというような顔をして。
「無実で無名で無垢で無知、挙げ句の果てには生には無頓着で無遠慮な、そんな私の優しさを受け取って下さいますか? 先輩」
 彼女にサイズは肯いた。多少の狂気になど慣れているとしても、気をつけて確認せねばならないはずだ。
「欲張りは、命と引き換えかな? 随分とお高い出費になりそうだ」
 囁くシキに夢華は微笑んだ。
「『再現性東京(アデプト・トーキョー)』――この先に存在する『時代』はどこなんでしょうか?」
 遠く、鈴の音が響いた音を聞いていた――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 豊小路、辿った先には……?

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