シナリオ詳細
<半影食>ねぶこはしょうてんがい
オープニング
●ねぶこはしょうてんがい
コロッケのいい香りと、肉屋のカウンター。
ショーケースとカウンターが一体化したそれの上にはキャッシュレジスターがおかれ、より上に視線をもっていくと『■■■■』と書かれている。いや、書かれているのだろうか。文字は確かにあるのに、うまく読むことができない。
あらためてショーケースを見ると、人の腕や足がキレイに揃って並んでいた。
「マジかよ」
かわったケースを手からぶら下げて立つ、金髪の女子高生。制服からして希望ヶ浜の生徒だろうか……。
ぶっきらぼうな口調で顔をしかめたあと、店から数歩後退した。
「やっぱアタシの知ってる肉屋……と同じ場所だよなあ。店ン中は似ても似つかねえけど」
読めない文字の看板をもう一度見て、また顔をしかめる。
更に空を見上げてみると、空は真っ赤に染まっていた。
――キイキイ
と、声がする。
咄嗟に振り向くと、本屋の入り口から、服屋の看板の裏から、他にもあちこち、いくつもの――人影のようなものが、こちらをのぞき見るのが分かった。
だが間違っても、人間なんかじゃない。
顔面が奇妙にねじれ、顔の中心へ渦巻きのように歪んだ、ピンク色の人型実体である。
女子高生は舌打ちをすると、回れ右して商店街から逃げ出した。
それを追いかけるように、一声に走り出す『ネジレモノ』たち。
●黒金魚と詫び証文
図書室の窓際には、まるい金魚鉢が置かれている。
レースのカーテンをおしてさしこむ昼の陽光が、ふちと水面を反射した。
ちゃぽんと音を立てて泳ぐのは、黒くて大きな金魚だった。
「校長先生、ここにこの金魚を置くのは僕への当てつけかな?」
古木・文(p3p001262)は眼鏡を外して眉間をもんだ。
振り返ると、机によりかかって本を呼んでいた『校長』無名偲・無意式 (p3n000170)が本の表紙からちらりと顔をのぞかせた。
毎日誰かの葬式でもしているかのような不吉さを漂わせる、服ばかりが派手な男である。
「なんのことかわからんな」
再び金魚に視線をうつす文。
思い出されるのは否が応でもROOのこと。
文には不慣れすぎた環境において、彼は黒い巨大な金魚になって壁に刺さったり迷子になったりしていたものだ。自分でこうなのだから、バグによって取り込まれた被験者たちというのはもっと大変だったのではないか……と、金魚鉢でおどる魚をみておもう。
「そういえば、希望ヶ浜ではあれは行方不明事件として扱われているだったね」
「ああ。身柄は今もセフィロトに保護されているが……意識の行方はROO内だということしか知れていない。間違ってはいないな」
本に再び顔を隠した無名偲校長が口を開き、何かを言いかけた――その時。
「め~いちゃんね――間違えた! メイですよ!」
ROO内で『めい☆ちゃんねる』という動画を配信しまくっていたせいでそのノリが抜けないメイ=ルゥ(p3p007582)。
図書室の扉をがらりと開き、謎のポーズで現れた。袖の余った学園制服の姿で。
「あれ? 古木先生と校長先生じゃないですか。『おしごと』があるからって呼ばれたですけど……委員会とかなのです?」
aPhonをふりふりして首をかしげるメイに、調子を崩された様子で無名偲校長が振り返った。
「今から話す。まずは座れ」
●ネジレモノといびつ商店街
場所は変わって、学園空き教室。
資料の束を手に教卓に立った古木・文と、一番前の席に座るメイ=ルゥ。そして今回の依頼の説明にあたって集まったローレット・イレギュラーズたちが周りの席へまばらに座っている。
「きりーつ! れい! よろしくおねがいしますっ!」
最後に『ですよ!』と加えたメイに、文は苦笑した。
「授業じゃあないんだけどな」
「気分なのですよ。メイは生徒で、古木先生は古文のせんせーですから」
ちゃくせーきといって座るメイ。頷いて、文は説明を始めた。
「練達では、ROOの試験中におきたバグによって多くの研究員が意識を飲み込まれました。多くは救出されましたが、未だ救出できていない人もいるよね。練達内ではこのことはよく知られたニュースではあるけど……」
そう言いながら、黒板に『佐伯製作所大量行方不明事件』と書いた。
振り返り、文字をノックする。
「ここ希望ヶ浜では、外への認識のゆがみから行方不明者として扱われている。その真相を誰も確かめないまま、いたずらな都市伝説ばかりが語られることになったんだ」
次に『建国さん』と黒板に書き、振り返る。
「音呂木神社ふくめ、希望ヶ浜で一般的に信仰されてるかみさまの名前は?」
「ッ!」
じぶんがあてられると察して教科書を開くメイ。
手を上げて文が頷くと、元気よく言った。
「日出建子命(ひいずるたけこのみこと)です!」
「そう、通称『建国さん』」
『建国さん→異世界』と黒板に書き足し、まるで囲む。
「希望ヶ浜の多くでは、建国さんの作り出した異世界……もうひとつの希望ヶ浜に迷い込んでしまったのだという都市伝説が、語られるようになったんだ」
ここで話が終わればいい。ただの噂話だ。
だが――。
「夜妖とは時として、人の抱く恐怖や不安を顕現させる」
教室の端であろうことか煙草を吸っていた無名偲校長がゆっくりと歩き出し、携帯灰皿に煙草を押し込むと黒板に地図のようなものを書き出した。
「事実、日出神社はゲート化し『もうひとつの希望ヶ浜』という異世界を作り出した。
希望ヶ浜市民も何人か迷い込み、帰還ができていない。
今回のオーダーは、このうちの対象者を保護し、無事に帰還することだ」
校長が懐から取り出した鈴は、『音呂木の鈴』だった。異世界からこちら側への帰還を可能とするアイテムである。
が、もうひとつある。
鈴と一緒に掴んだ、写真。
かざした写真を黒板にマグネットではりつけ、校長はノックした。
「対象者はこいつだ。メイ、名前は知ってるな?」
先ほどのように手を上げて、メイは――。
「コロッケのお姉さん!」
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/50305/99426c3199c2b5e7edf93918d715c120.png)
- <半影食>ねぶこはしょうてんがい完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年08月26日 22時21分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
希望ヶ浜地区、ころころ商店街。
『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)の活動圏であり、学校帰りにちらちら寄っていくスポットである。
その一角に、区画整理のなれはてみたいな具合でラーメン屋とクリーニング屋の間にすっぽり収まった神社があった。
「コロッケのお姉さんのピンチなのですよ!?
早くお助けしなければ!!
一緒に帰って、また美味しいコロッケを食べに行くのですよ!!」
うおー! といって両手をグーにして突き上げるメイ。
『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)が単品用の紙袋ごしにつかんだ肉じゃがコロッケを囓ってその横に立っている。
「おっけーおっけー、その柳井って子を助け出せばいいのね、まっかせて! コロッケ屋のおねーさんなの?」
「ちがうのですよ。コロッケのお姉さんなのですよ」
「どうちがうんだ……?」
「コロッケ屋さんのお姉さんはまた別のお姉さんなのですよ」
「ああん!?」
両手をわちゃわちゃーってジェスチャー(?)しながら違いを説明するメイに、京はずっと顔をしかめていた。
眼鏡を一度はずし、布でレンズを拭う『古典担当』古木・文(p3p001262)。
「ええと、たしか……柳井さんはいつだかにコロッケをくれた人、なんだったよね」
「ですですっ」
「印象のつけかたよ」
文は『こういう子なんだ』といって肩をすくめ、眼鏡をかけ直した。
「とりあえず、まずは向こうの世界に行こう」
『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)は神社の鳥居に指定された札を貼り付けると、そーっと手を近づけた。
指が鳥居の境界に触れたとたん、まるで水面に触れたかのように空間に波紋めいた歪みが広がる。
ゆっくり手を入れていけば、こちらとは気温の異なる空間が向こうにあるのがわかった。
「異世界……不思議で恐ろしい所デス……。
でも! 携行品にお札を持ったし、何より頼もしい仲間達が一緒ですから。
大丈夫、オバケなど怖くありません」
びしっとお守りを突き出した姿勢で異世界側へと入り込んだ『無敵鉄板暴牛』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)。
「そのお守りって効くの?」
横から覗き込む『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)。
リュカシスはサッサッてお守りを左右に振るみたいに構えた。
「ワカリマセン!」
「わからないんだ……」
物理で解決できないことに対してめっぽう弱そうなリュカシスであった。
焔はといえば、それほどこの異世界に恐怖心を抱いている様子はない。『じゃあいつもの感じでいくね』といって近くの小鳥へと呼びかけた。
小鳥を神の使いとし、五感を共有し使役するためだ。
呼びかけに応えて飛んできたのは鳩だった。
鳩……なんだと思う。
顔面に目が七つあったしくちばしがどす黒く汚れ奇妙な反液体が常にこぼれていたし、なんなら体にぼつぼつと肉めいた突起が出たり入ったりを繰り返していたが。
「………………」
ちらっとリュカシスを見る焔。
「そのお守り、貸して貰っても……」
「だめデス!」
ふむ、とつぶやいて周囲の風景をあらためて観察する『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)。
「夜妖(ヨル)だったな……似たような被害が同時多発することは珍しいことではないんだったか?」
「まあ……そうね……」
『パープルハート』黒水・奈々美(p3p009198)がスマホのマップアプリを起動したが、画面がぐちゃぐちゃに乱れるばかりで使い物にはならなかった。
「そもそも、夜妖(ヨル)ってなんなんだ?」
「――ッ」
エーレンの言葉に振り返った奈々美が、目をギラーンと輝かせた。
「夜妖っていうのは希望ヶ浜地区のなかだけで観測される怪異系モンスターの総称なんだけど、全く同種のモンスターが地区外で発見されてもそれは夜妖に定義されないの。その違いは主に夜妖の専門家である無名偲無意式つまり校長が同定したかどうかによるって言われてるのよ。蝶と蛾の違いみたいなものね。けど昨今ROO世界のヒイズルに現れた怪異に対しても校長は夜妖と定義したわ。つまり土地や外見や能力が定義の基準なんじゃなくその発生原因に基準があるんじゃないかってあたしは見て……て……」
途中からエーレンがぽかーんとしている様子に、奈々美は震え始めた。
両手で顔を覆ってうずくまる。
「……ごめん」
「あ、いや、詳しいんだなと思って」
突然早口になるオタクそのもののムーブをしたことに恥じらいマックスの奈々美であった。エーレンは特に何か思ったわけでもないようだが。
「濃厚な恥の感情。ランチタイムかな?」
ヌラァって現れるマスコットキャラみたいな使い魔バンピア。
これ以上属性を増やしてなるものかと奈々美は布袋にバンピアを詰め込んでくちを縛った。
話を進めてくれといわんばかりの(涙の浮かんだ)目を向けられ、咳払いするエーレン。
「と、とにかく……その救出対象者を見つけ出さないと話が始まらない。ある程度広がって、手分けして探索しよう。各個撃破を避けるために護衛役をつけるように。それじゃあ」
俺はこの手で行くと言って、エーレンはするすると電柱をよじ登っていった。
●
商店街の作りは奇妙なまでに複雑だ。
空を覆うアーケードが施された十字路を中心に、基本的には空むき出しの店舗が並んでいる。
店舗も肉屋や靴屋、服屋やクリーニング屋など商店街が十全に機能するタイプの社会に適したものばかりだ……が。
「妙に似たような店舗が多くないか? それに、広すぎる」
商店街なんていうのは十数軒あれば充分だ。
しかし縦横無尽に伸びた商店街は似たような店舗をランダムに連続させ、まるで街を侵食するカビかなにかのように広がっていた。
エーレンは建物の屋根に登って周囲を見回し、その異質さに顔をしかめる。
「これは、探すのも骨が折れそうだな」
「ええと……こ、コロッケの人~……い、いたら返事してぇ……」
背を丸め、両手を口元にあてて呼びかけるようにしながら歩く奈々美。
その後ろを、京が普通に歩いている。やや小柄で猫背気味の奈々美と、元々背が高く背筋をぴんと伸ばした京。ただでさえ激しい身長のギャップが更にひろがっていた。
「『コロッケの人』じゃわからないんじゃない?」
「こ、言葉が通じるなら……メンチカツのひとでも、いいけど……」
「もはや別人じゃん。まあでも、声出して回るのはアリっぽいよね。隠れてるなら見つけづらいし。オーイ! 柳井さーん!」
腹から出たらしいハリのある声が商店街に響き渡る。あまりの大きさに奈々美がビクッと肩をふるわせた。
反応はない。
と思った次の瞬間、京と奈々美が全く別の方向へと身構えた。
今更だがこの二人が組んだ理由はちゃんとある。
エネミーサーチが使えてコミュ力低めな奈々美と、人助けセンサーが使えてコミュ力おばけな京。互いの弱点をおぎなう丁度良いコンビなのだ。
そんなコンビが察知したのは、こちらに向かってくる一団。一度裏口を通りいくつかの店舗に散ってから、それぞれの入り口からワッと同時に飛び出してくる『ネジレモノ』の群れであった。
「おっ、シンプルな感じになったな! そこのけそこのけー、京ちゃんのお通りよ! 邪魔する奴はぶっとばーす!」
「ひいいっ……!」
蹴りの構えをとる京。奈々美はマジカルステッキを取り出し、素早く返信シークエンスを完了した。
一方こちらは文先生のチーム。空を飛んで高い所から周囲を確認するサイズと、人助けセンサーをはたらかせながらも周辺警戒を続けるリュカシス。
文はそんな二人を監督しつつ、いざというときに能力の強化ができるようにテスタメントの能力を温存していた。
「リュ君、大丈夫?」
「だだだいじょうぶデス!」
完全に大丈夫じゃない顔をしていた。苦笑して『近くから離れないようにね』といってあげる文。今日はすっかり先生モードだった。
そんな中で。
「ゥッッッギャァァアー! オバケ! アッ、看板だコレ!」
お店の前に置いてあるカエルの看板を見てリュカシスがお守りをぶんぶんしていた。
よく薬局の前にある看板だが、文はそれを覗き込んでウッと声をつまらせた。
看板の周囲にはべったりと赤いあとがつき、近くでよく見てみるとそれが赤い手形が大量にへばりついたものだとわかる。
ついでに薬局のほうを見てみると、半透明な扉に大量の赤い手形。その向こうは窺い知れないが妙に赤黒いというひどい有様になっていた。
「ギャァ!? 店!? 文センセー! 敵ですか!? 敵!?」
「おちついて、ちょっと赤黒いだけの薬局だよ」
「な、なるほど……」
ホッと肩の力を抜くリュカシス。冷静に考えたら文の言ってることのほうがおかしいのだが、それにも気付かないくらい混乱していたらしい。
「二人とも、ちょっといいかな」
そうしていると、頭上からサイズが声をかけてきた。
「柳井って人を見つけたぞ。ここから遠いから他のチームが見つけるだろうけど、多分近道すれば合流できる」
場所を尋ねようとする文とリュカシス。だが、サイズはそれを遮るように手をかざした。「あと、追われてる」
「う! そ! だ! ろ!」
商店街を全力疾走する金髪のJKがいた。
名を柳井 美紗貴(やない みさき)。
ひょんなことからうっかり異世界に迷い込み、帰り道がわからないままネジレモノの群れに追われまくるある意味不幸なJKである。
「こんなことならもっとやりたいことやっとくんだった! くっそ! たとえばえーーーーーーっと思いつかねえ!」
ウオオと言いながら走り続けるも、人間のスタミナってやつには限りがあるらしい。柳井は途中でばてはじめ、地面に横たわった謎の看板に躓いて転倒した。
ごろごろと地面を転がり、手を突いて起き上がる。
ネジレモノとの距離はひどく近づいていた。
彼らはナイフや金槌やのこぎりといった平成一般家庭にあってもおかしくないような道具を武器にして柳井へと振りかざしている。もはやこれまでか――と思われたその時。
「ほむらぱーんちっ!」
両目を(><)にして飛び込んできた焔が拳に宿した炎をネジレモノのひとりに叩きつけ、波紋のように広がった火炎と衝撃によってネジレモノたちを吹き飛ばした。
丁度十字路の交差部分で合流した焔は、使役していた鳩(?)越しに柳井を発見。合流してすぐに炎を打ち込んだという次第である。
更に竹刀袋から取り出した刀を抜き、ネジレモノへと構える。
「コロッケのお姉さん! 助けに来たよ! 出口もわかってるから、もう大丈夫!」
「コロ……なんて?」
「コロッケのお姉さん、久しぶりなのですよ!」
いえーいといって袖のあまった両手を振りながら走ってくるメイ。
「あんた……あっ、コロッケの奴!」
「メイなのですよ! メイが来たからにはもう安しッ――」
倒れた地蔵のような物体に躓いてべしゃあっと転倒するメイ。
構えていた焔も、起き上がったばかりの柳井も、ついでに襲いかかろうとしていたネジレモノ集団もぴたっと止まってメイを見た。
「いたた、鼻ぶったのですよ……ハッ、隙あり!」
とうっと叫んで跳躍すると、謎の回転と謎の反転と謎のターンをかけてネジレモノたちへと突っ込んだ。
「メイキーーックなのですよ!!」
ついさっき焔が殴り飛ばしたネジレモノたちとはまた別の集団めがけて跳び蹴りをくらわせると、謎の星型エフェクトの飛び散りによって吹き飛んでいったネジレモノをよそにメイがしゅばっと構えた。
「コロッケのお姉さん! ここは任せて先に行くのですよ!
美味しいコロッケがメイ達の帰りを待っているのですよ!!」
「それ今から死ぬやつの台詞だな」
「メイは死なないのですよ!」
ちょあーと叫んでY字のポーズをとるメイ。
そこへ、建物を飛び越してショートカットしてきたサイズが到着。
「あんたが柳井だな。足止めしておくから、先生に従って逃げてくれ」
サイズは『呪血炎陣』を発動させると、柳井を捕まえようと回り込んできたネジレモノたちへとたたき込んだ。
妖精の血で作られた呪いの陣がネジレモノたちをとらえ、飛び出す業炎を纏った呪われた血の鎌がネジレモノたちを切り裂いて行く。
「リュカシス!」
「ハイ!」
ケーキ屋さんの屋根から跳躍したリュカシスは、両腕に装備した籠手を展開。肘と背のスラスターから炎を噴射すると急加速と急接近によるリュカシスパンチをネジレモノの顔面にたたき込んだ。
「ンギャー! ベチャッとした!」
感触がいやなのか叫びをあげ。
拳がネジレモノの顔面(うずの中心)に突き刺さったまま抜けないことに気付き。
「ンギャー!」
また叫んだ。
「変な相手との鬼ごっこ、すっかり得意になってしまったな」
ネジレモノとの戦いをサイズたちに任せた文先生は柳井のもとへたどり着くと、彼女の手を引いて走り出した。
「あんたは戦わないのか、文センセー」
「教師の仕事は生徒を導くことだからね」
今日はやめておくよ、と言って角を曲がる。
曲がった先では京と奈々美が大量のネジレモノと戦っていた。
「おっ、丁度良いところ……じゃないね! ゴメンめっちゃ群がられてる!」
ハイキックでネジレモノの顔面をへこませた京がぱたぱたと手を振ってくる。
奈々美が魔法のビームを撃ちすぎてなんだかゼーゼーいっていた。
「けど、この辺りの敵を集めたから……ここを抜ければ安全、だと思う……」
奈々美はやるときはやる女である(バンピア曰く)。猫背気味の背筋をぴんと伸ばし、両手に魔力を集中させる。
「さあ見せ場だよ魔法少女ナナミ! 映え! 映えよう!」
布袋から顔を出してバンピアをぎゅむってしまい直すと、奈々美は両手でハートつくって左右にきゅっきゅってしてから突き出すポーズをとった。
「はーと、ビーム!!」
繰り出したハート型のほわほわした光線がネジレモノへ直撃。そこへ京は踏み込み三歩と宙返りを合わせた強烈なフライングカラテキックを合わせた。
「道は拓いとく! オラァ!」
攻撃によって物理的にひらいた道を、文と柳井が走っていく。
それを捕まえようと手を伸ばすネジレモノがいたが――。
「そうはさせるか」
瞬間的に放たれた斬撃がネジレモノの腕を切り落とす。
エーレンだ。
彼は瞬間移動のような素早さで隣に現れると、柳井へピッと挨拶のサインを出した。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。助けに来た。俺たちが血路を開き、また貴女を守る。もう少しだけ一緒に頑張って走ろう」
前へ向いて走り出すエーレンたち。
行く手を阻むネジレモノが一体だけ現れ、目の前で剣を抜いた。
ゲートになっている神社の鳥居前だ。無理矢理通過しようとすれば剣の餌食となるだろう。
が、こちらにはエーレンがいる。
「相手をしてもらうぞ。なあに、3秒程度いい」
急加速をかけるとネジレモノへ接近。
相手の繰り出した剣と自らの剣がぶつかり合い激しい火花を散らすが、すぐさま相手の剣がエーレンへ襲いかかった。腰の後ろにもう一本の剣を隠していたらしい。が、エーレンとて伊達に異世界で修羅場を潜ってきていない。相手の剣が首を狙うことを予期してスライディングをかけると股下をくぐり抜け斬撃を回避。その間に脇を回り込んでいた文たちが鳥居を潜り、混沌側へと転がり出た。
●
後日談を、少しだけ語ろう。
無事に帰った柳井は文やメイたちに礼をいい、貸しを返すとばかりにコロッケを一個ずつ奢ってくれた。
それはそれとして『ねこはぶ商店街』で見たものや構造などを記録したノートは校長へ提出され、今後の検証や調査に役立てられるという。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――救出完了
GMコメント
で探り当てたらしく、『ねぶこはしょうてんがい』という場所だと分かっています。
時間がたてば移動してしまう可能性があるため、至急現地に向かい彼女を救出しましょう。
●ねぶこはしょうてんがい
希望ヶ浜に似て非なる異世界。人はおらず、空は赤く、文字はみなバグった不気味な空間です。
商店街に見えるがあまりにいびつなそのエリアには、同じくらいいびつに歪んだ『ネジレモノ』とよぶべき夜妖が多数出現している模様。
柳井は逃げ続けていますが、いつまでも逃げ切れるとは思えません。
●エネミーデータ
・ネジレモノ
OPにあるような造形をした不気味な人型実態です。
戦闘能力があるということだけは分かっていますが、どの程度の戦力であるかは不明。
戦ってみなければわかりません。
柳井を救出するにあたって戦闘はさけられない相手となるでしょう。
================================
●希望ヶ浜学園
再現性東京2010街『希望ヶ浜』に設立された学校。
夜妖<ヨル>と呼ばれる存在と戦う学生を育成するマンモス校。
幼稚舎から大学まで一貫した教育を行っており、希望ヶ浜地区では『由緒正しき学園』という認識をされいる裏側では怪異と戦う者達の育成を行っている。
ローレットのイレギュラーズの皆さんは入学、編入、講師として参入することができます。
入学/編入学年や講師としての受け持ち科目はご自分で決定していただくことが出来ます。
ライトな学園伝奇をお楽しみいただけます。
●夜妖<ヨル>
都市伝説やモンスターの総称。
科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
関わりたくないものです。
完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)
●Danger!(狂気)
当シナリオには『見てはいけないものを見たときに狂気に陥る』可能性が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
Tweet