シナリオ詳細
森のキノコの復讐劇?
オープニング
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深緑、アルティオ=エルム、大樹ファルカウを中心に広がる迷宮森林。
そこは幻想種達の国として知られており、自然と一体化して世界へと結びつくという独特の文化を持つ。
ただ、彼らも広大な面積を持つ大森林全てを把握しているわけではない。
未だ手つかずとなっている遺跡も多いし、森林には人知れず潜むモンスターも少なくない。
その日、ミロン、リッコ兄妹は迷宮森林へと向かっていた。
普段から大人しい2人は両親の為にと家のお手伝いを頑張っており、その日も両親の為にキノコを集めようと森に出向くことにしたのだ。
「よし、美味しいキノコ採るぞ!」
「おー!!」
ピョンピョン飛び跳ねる妹リッコの様子に、兄ミロンも嬉しくなって意気揚々と森を進む。
あまりファルカウから離れすぎると危険だからと常々大人達に言われていることもあり、2人はその近辺でキノコが採れると知られた場所へと出向く。
雨季はすでに終わっていたが、それでも長く降り続いた雨はキノコを大きく生育させている。
これなら、食べ応えのあるキノコが沢山採れるはずだ。
基本的には、見たことのある種類のものを採っていく2人。
仲のいい近所のおじさん、おばさんに確認して食べられないキノコがないか確認してもらってから、両親の元へと持って行こうと考える。もう少し大きくなれば、今度は自分達が両親へと料理を振舞うようになるだろうか。
両親の笑顔を思い浮かべながら、キノコ狩りに勤しむ兄妹。だが、そこにゆっくりと迫る巨大な影が……。
「フシュシュ……!」
太い柄に大きな傘。子供達が採っていた者とは比べ物にならない程大きなキノコが彼らの背から襲い掛かってきて。
「うあああああああああああっ!」
「きゃああああああああああっ!」
巨大なキノコの姿を見上げて叫ぶ兄妹は、その場から逃げ出そうとするが、いつの間にか地面を覆っていた菌糸が絡みついて動けなくなってしまっていた。
「フシュー!」
「「ひっ……」」
迫りくるキノコの集団に、子供達は悲鳴すら上げられずに体を震わせるのである……。
●
翌日。
ファルカウの一地域で騒ぎが起こっており、その解決の為に幻想からローレットが朝一で招集された。
なんでも、キノコ狩りに行った兄妹が昨日から家に戻ってこないというのだ。
近所の家族によれば、普段からこの近辺の人々が利用するキノコの群生地とのことだが、もしかしたら子供達はキノコを集めるのに夢中となり、群生地から離れてしまった可能性もあるが……。
「由々しき事態です」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)も弱い未来視の力があるが、それを使って視たところだと、子供達がキノコの魔物に捕まっているのが見えたとのこと。
「場所まではわかりませんが、周囲に通常のキノコが確認できました」
ならば、キノコの群生地よりは離れていないということか。ある程度範囲を広げて捜索する方がいいかもしれない。
さて、兄妹を捕えたキノコだが、数は5体確認されている。
ボス格であるキノコは菌糸と胞子を使い、獲物を捕えつつ幻覚を見せつけて弱らせてしまうらしい。
次に、群れで一番大きなキノコは柄となる部分が非常に大きく檻のような構造となっていて、その内部に子供達は捕えられている。
また、配下として3体の小型キノコがいるが、いずれも体を武器のように変えて襲い掛かってくる。地面の菌糸からは離れられないようだが、大きくその菌糸を伸ばして襲ってくるので油断はならない。
「現状で分かっていることは以上です」
話の間も、子供達の両親と思われる夫婦が涙を流し、子供達の安否がどうなのかと気が気でないようだ。
彼らを安心させる為にも、いち早く子供達を保護してあげたい。
「どうか、よろしくお願いいたします」
最後にアクアベルは頭を下げ、この1件をイレギュラーズへと託すのである。
- 森のキノコの復讐劇?完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年08月24日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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大樹ファルカウを臨むアルティオ=エルム。
そこから、イレギュラーズは深い深い迷宮森林を見やる。
「深緑、幻想種が住まう森林か……なかなか興味深い所だね」
機械の発達した世界の出身、『想いの届人』ノット・イコール(p3p009887)にとっては、異世界の住人が住まうこの地に強い関心を抱く。
時間があれば、観光もしたいところではあるのだが。
「まずは子供たちを助けてあげないと、ね」
「迷宮森林の中で行方不明か……」
深緑出身、ヒーローたらんと振舞う『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)は、行方不明に加えて魔物に捕まっているという子供達の安否を気遣う。
「今回の仕事は森に迷い込んだ子供達の救出と、2人を捕えたキノコの魔物退治だな」
そこで、長らく任侠の世界に身を置いていた旅人男性、『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)が改めて依頼内容を確認する。
「キノコ美味しいけど、危ないキノコさんは放っておいたらダメなのよ! まずは二人を探さなきゃ!」
それを聞き、同じく深緑出身、長いピンクの髪を2組の三つ編みでふんわりと縛った『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は力強く告げる。
「親御さんも心配しているしよ、早いとこ帰してやらねえとな」
その子供達は、キルシェよりも小さいという。義弘は涙を流すその両親を安心させたいと考える。
「子供達を守ってあげるのはオトナの義務だもんね! 必ず無事に助けてあげようよ!」
「人命救助に理由はいらないよね。当たり前のことを、そのままにやっていこう」
ふさふさの狐耳と尻尾を動かし、長いアホ毛を揺らす『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)に同意を求められ、黒髪の旅人女性『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)は「加えるなら、お急ぎでってくらい?」と柔和な笑みを浮かべて返してみせた。
そんな仲間達の会話を耳にし、異形と化した左目と左腕を持つ『ただの死神』クロバ・フユツキ(p3p000145)は、妹……ユウナ・フユツキのことを思い出して。
「行くぞ、兄妹を助ける」
「できるだけ急がないと危ないね!」
アレクシアは大きく頷き、全速力でと皆と共にアルティオ=エルムを発つのである。
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「まずは急いで子供達を見付けないと!」
動き出すイレギュラーズ。ヒィロが改めて仲間達を急かす。
捜索の視点は、事前に聞いたキノコの群生地。皆からは異論は出ない。
「森林迷宮と呼ばれる森だ。こちらが迷わねえように注意しないといけねえな」
義弘の注意喚起もあり、皆それぞれのスキルを活かして先に進む。
「もう場所は聞いておいたんだよ」
ノットはいつの間にか情報網を生かし、群生地の位置を割り出していた。
何も情報がないよりはと考えたノットだったが、群生地も一つではないようなので、大まかな位置の割り出しに一役買っていたようだ。
「絶対に……だから待っていろ」
チームの最前線に立つクロバは超視力を働かせて捜索を進める。群生地に魔物の陰があれば間違いなくそれが討伐対象のはず。
「ううん、こっちかしらね」
美咲は持ち前のモンスター知識を生かし、キノコが好む湿気の多そうな場所に当たりを付ける。
今回の魔物は数mの大きさがあり、移動には菌糸を使うというから、美咲はそこから移動の痕跡を探す。
傍のヒィロは透視で美咲が示す方向を見ていたが、途中、その美咲が足場を気にして低空飛行を始める。
「私の未来視(オラクル)も冴えてるみたいね!」
美咲が中止する足元の菌糸は目的地となるキノコの群生地に続いていた。
到着したキノコの群生地。
しかし、思ったよりその範囲は広く、一行はここからさらに捜索を行うことになる。
ノットはここでも足跡、即席がないかと探す。ここでなら、子供達の者があるはずだ。
「ううん、それらしいのはあるけど、ボクの痕跡調査はアナログな方法だからね」
この場は仲間のセンサー等のスキルも、ノットは頼りとしていたようだ。
「ミロン君、リッコ君、どこー!?」
声を上げるアレクシアは超聴力を働かせ、かすかにでも子供達が返事してくれることを期待する。
その際、背に竜の翼を生やす小柄なる魔王『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)は人助けセンサーを使い、その居場所を絞り込んでいた。
「ねぇみんな、銀色の髪の男の子と女の子知りませんか?」
キルシェは近場の動植物に子供達のことを訪ねる。
あちらこちらに残る菌糸もあってか、動植物は皆少し恐れを抱いて遠ざかろうとする。その逆側に魔物はいるはずだ。
「……うんうん、こっちだって!」
アレクシアも自然会話に加えて超聴力を生かし、植物の声をしっかりと聞き取る。併せて、その気持ちを読み取って植物が恐れを抱く方向を感じ取る。
「出来るだけ早く2人を見つけて、2人の所に行くのよ!」
情報が集まり、キルシェのテンションが高まる。
「何か聞こえるな。近いぞ」
耳を澄ます義弘に、クロバも頷く。すでにその声を聞きつけていた義弘達は他メンバーと共に、そちらへと急行するのである。
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キノコの群生地に菌糸を伸ばす魔物は5体。
「フシュシュ……」
群れを率いているのは、その菌糸を使いこなす巨大な魔キノコ、マジックマイコニド。それらは小ぶり……とはいえ1m程もあるランス、ソード、ワンド型のキノコを従える。
そして、柄が異様に太いケージ型のキノコの内部に捕えられた銀髪の子供達の姿が。
「お兄ちゃん、苦しいよ……」
「た、助けて……」
体力を吸われ、少しずつ弱ってきている子供達の救出に、イレギュラーズは発見次第動き出す。
先頭を切って突っ込むのはヒィロだ。
他の仲間達が目的を果たせるよう、彼女はマジックマイコニドの抑えに当たる。
「ヒィロ、邪魔なのは任せたよ! 私は檻を壊す!」
美咲は一言ヒィロに呼びかけ、自身の役割を果たすべくマッシュケージを破壊……倒すべく詠唱を始めていた。
「ふたりとも、助けに来たよ!」
メンバー達が散開する中、アレクシアが子供達に聞こえるよう声を上げる。
「安心して、お姉さんたちがすぐに助けてあげるからね! もう少しだけ、頑張って!」
体力を失っている子供達。加えて、幻覚を見せつけられており、心に傷を負っていると思われる。
だから、アレクシアはできるだけ明るく子供達を元気づけようとしていた。
「ううっ……」
「ああ、ああああっ」
しかし、子供達はただ呻くのみで、返事出来ずにいる。
歯痒さを感じながらも、アレクシアは配下のキノコ3体を引き付けるべく素早く敵中へと飛び込む。
「皆がケージを破壊して子供たちを助けるまで、絶対に邪魔をさせないよ!」
アレクシアは赤き花の如き魔力塊を生み出し、そのまま地面へと叩き付ける。
その周囲にいたキノコの配下達はアレクシアに注意を払い、彼女へと攻撃を開始していた。
ヒィロ、アレクシアのおかげもあり、他メンバーは檻キノコへの対処に集中する。
即座に攻撃へと移っていたクロバは鬼哭・紅葉を抜き、檻キノコ目掛けて無形の構えから焔に包んだ刀で切りかかる。
焔の剣戟ではあるが、延焼させる効果はない。クロバは傘と柄の繋ぎ目を中心に、さらなる斬撃を浴びせかけていく。
一方で、中の子供達は……。
「あう……」
「う、うう……」
多少弱っていた為か呻くだけの子供達に回復が必要そうだと判断したキルシェが1人ずつ、治癒符を飛ばす。
「あ、あれ……」
「大丈夫だ、助けが来てくれたぞ」
体が動くようになった妹、リッコがキョロキョロと周囲を見回すと、傍らの兄ミロンが妹を励ます。
「大丈夫、すぐにそこから出してあげるわ! だからもう少しだけ我慢してね!」
「うん……!」
「おう、やっちまえー!」
キルシェの呼び掛けに、ようやく反応を示した子供達はイレギュラーズ達へと声援を送り始めていた。
「安心しろ、俺達が助けてやるからじっとしてな」
アニキカゼを吹かし、子供達を安心させようとする義弘。
年齢的に親父でもおかしくないが……と考えつつも、義弘は子供達から距離のある方向からケージ目掛けて正義の拳を叩き付けていく。
ただ、檻キノコは菌糸を伸ばしてイレギュラーズを捕え、体力を奪おうとしてくるのが厄介だ。
防御を考えぬ美咲は菌糸に多少絡まれながらも、引き付けに当たるメンバーや子供達を巻き込まぬように位置取りながら、神気を檻キノコのみへと浴びせかけた。
前線のノットは残像を展開させて敵を惑わし、間隙をついてギフトによって現れる彼女の姉が檻キノコへと妨害魔術を使って動きを鈍らせていく。
ルーチェも子供達を巻き込まぬよう、遠距離術式で檻キノコのみを狙って体力を削る。
「フシュウウウウウ……!」
獲物が抗いおってと主張するように、敵のボスである魔キノコがいきり立つと、それに合わせて配下の槍、剣、杖が荒ぶる。
しかしながら、それらの攻撃をアレクシアが捌き、配下の気を引き続ける。
「救出の邪魔はさせない!」
ヒィロもまた、魔キノコの降らす胞子を避けながら相手の注意を引く。
一部、防戦に回るイレギュラーズの姿に、子供達もハラハラし、手に汗を握っていたようで。
「必ず助けるから頑張って! 美味しいキノコいっぱい持って、一緒にお父さんお母さんの所に帰ろーね!」
子供達の視線を感じるヒィロは回避盾となり、仲間から引き離しながら戦い続ける。
とにかく、少しでも早く子供達を助けねば、劣勢になる檻キノコが子供達の体力を奪いかねない。
キルシェも回復不要と判断したタイミングは式符より生み出した白鴉を飛ばし、檻キノコの体を撃ち抜かせる。
タフで屈強な檻キノコだが、これだけの人数に攻め立てられればさすがに苦しいようで、子供達へと菌糸を伸ばそうとする。
しかし、そこでノットが再度出現させた姉の妨害魔術を撃ち込んだことで、檻キノコの体が刹那凍り付く。
あと一押しと判断したクロバはそこで超絶加速して武器を打ち込む。
ほぼ同時に義弘も敵の足元の菌糸目掛けて掌打を叩き込み、発した気を送り込む。
「フシュ……ッ」
義弘の一打によって傘と菌糸を切り離され、檻キノコは生体活動を維持できなくなり、その場に崩れ落ちていく。
大きくしなる柄の檻も簡単に開くようになり、子供達がそこから抜け出そうとする。
「もう大丈夫よ! さぁ、掴まって!」
それを見た美咲は一気に近づいて子供達へと手を伸ばす。
「「うん……!」」
2人の手を掴んだ美咲はそのまま、彼らを保護して両脇に抱え、低空飛行してその場から退避する。
ギフト「虹色虹彩」の力で彼女はスキルを使うことができるが、やはり子供達の安全が最優先。
美咲は後方のキルシェへと子供達を託し、攻撃を続けることに。
「もう大丈夫」
子供達へとキルシェが振舞うのはギフトによって作り出した聖水だ。
「リンゴの味がする」
「美味しい、ありがと」
それは飲むと果汁の味がするらしく、子供達に笑顔が戻る。
「あとは任せてくれ。早く片付けておうちに帰ろう」
加えて、一時戦線を離脱したクロバがこんなこともあろうかと、用意していた栄養食を2人へと差し出す。
「俺達が守るけど、ミロン、リッコを護れるな?」
「うん」
聞き分けの良いミロンの反応を見て、クロバは戦線へと戻っていく。
「リチェもふもふしながら、お水飲んで待っててね!」
キルシェは可愛らしいジャイアントモルモットのリチェを子供達の元へと残す。
その可愛らしさは、戦場にあっても子供達を十分癒してくれる。
「お姉さんたちがキノコさんたち倒し終わるまで守るからね!」
少し年上のお姉さんであるキルシェの背中は、子供達にとってとても頼もしく感じさせたのだった。
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子供達を救出し、魔物討伐に弾みがつくイレギュラーズだが、奪われた立場である魔キノコにとってはたまらない。
「フシュウウウウウウウ!」
魔力ある胞子を周囲へと降らせ、イレギュラーズに幻覚を見せつけようとする魔キノコだが、ヒィロは幻覚にも負けずに敵の攻撃を避け続けて見せる。
「私に幻覚は通じないんだから!」
アレクシアも少し離れた場所で3体のキノコと交戦していたが、時折ヒィロの体力を気にかけて慈恵の薬花も振りまき、継戦に努めていた。
檻キノコを討伐し、次は配下のキノコ達の排除に当たるメンバー達だが、魔物の中では小ぶりとはいえ、1mもあるキノコはかなりの存在感を示す。
足元に根を張る菌糸から体を伸ばす武器の如き容姿を持つキノコ達。
それらは簡単に倒せると思いきや、思った以上に苦戦する相手で。
敵の攻撃射程に気を使いながら、死者の怨念を束ねて放っていたルーチェだったが、アレクシアの抑えから逃れた杖キノコの魔力が彼女へと叩き込まれる。
体勢を崩したルーチェを、鋭く槍キノコが貫く。彼女は意識を失い、菌糸の上に倒れこんでしまう。
しかし、その間に美咲が激しく瞬く光を敵陣へと浴びせかければ、最も傷ついていた剣キノコがぐにゃりとその体を菌糸の上に横たえて動かなくなってしまう。
これには、魔キノコを抑えていたヒィロも満面の笑顔を見せていた。
続き、ノットが槍キノコの体力も減っていたことを察し、子供達が背に来るように位置取って敵の進路を妨げる。
ノットはそのまま魔術と格闘の合わせ技によるコンボを叩き込み、槍キノコを殴り倒してみせた。
杖キノコは仲間が倒れたことで距離をとろうとしていたが、菌糸での移動は制限がかかる。
そんな敵へと颯爽と近づいた義弘が正義の拳を打ち付け、他のキノコと同じく地に伏してしまった。
思った以上に苦戦はしたが、何とか自分の役目を果たせたアレクシアは大きく息をつく。
「よっしゃ!」
「わーい!!」
喜ぶ子供達へと、キルシェが再び癒しをもたらす。
「絶対キノコさん通さないから、今はゆっくり休んでね!」
すっごく強いお兄さん、お姉さんたちが自分達についている。キルシェはお姉さんとして子供達をそう元気づける。
「フシュッ、フシュウウウウウウッ!!」
配下を倒され、怒り心頭のマジックマッシュルームは大きく菌糸を広げてイレギュラーズを捕え、体力を奪おうとする。
しかし、そいつを抑え続けるヒィロは負ける気が全くしていない。
美咲さんが絶対助けに来てくれるって信じてるから――。
笑顔で青き闘志を敵に向けるヒィロに続き、信頼を寄せる美咲が魔キノコを魔眼で見つめることで、プラズマが敵を襲う。
その連携はいつも通りでバッチリ。それがヒィロにとっては嬉しい。
「フシュッ、フシュッ、フシューーー……」
体に傷の増えてきた魔キノコはあちらこちらから煙のようなものが噴き出ており、非常に苦しそうだ。
幻覚を見せつけようとする敵に義弘が檻キノコを仕留めたのと同様に掌打から気を送り込んで相手を追い込む。
「お前らがどういう生態系なのかどうかは知らない。だが俺の目の前で”きょうだい”を傷つける事は許さない」
仲間達の攻撃が続く中、クロバは銀の長い髪に、妹を思い出していて。
「容赦しない――! 見せる幻想ごとお前らを斬り払う!!」
相手の懐へと迫った彼は、鬼神の如く焔の剣戟を浴びせかける。
多少胞子を飛ばしたところで、クロバには何ら問題ない。
「胞子の一片すら残さず、消し飛ばす!!」
正眼の構えから振るったクロバの斬撃。それは見事にマジックマイコニドの体を真っ二つに切り裂いたのだった。
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キノコの魔物達を全て討伐し、イレギュラーズは子供達の状態をすぐ確認する。
「大丈夫だ。命に別状はない」
子供達は疲労してはいるが、受け答えをしてくれるのをクロバは確認する。念の為、アルティオ=エルムに戻ったら医者に診てもらうことも彼は進言していた。
「もう安心だよ!」
続いて、アレクシアが子供達へと笑いかける。
「よかったね、頑張ったね」
ヒィロが慰めた後、ノットが子供達の集めたキノコを差し出して。
「キミたちは優しい子だ。パパとママのために食材集めをできて偉いね」
しかしながら、ノットは森の奥が危険であることも諭して。
「これからは気を付けようね。キミたちに何かが有ったら、みんな凄く悲しむから、ね」
「う……ああーーん」
間近で起こる戦いに呆然としていた子供達だったが、無事だったんだと実感できたのか、妹はノットへと寄り添うように泣き始める。兄は気丈に涙を堪えていたようだった。
慣れない戦いを目の当たりにし、子供達もかなり辛かったのは間違いない。安堵した2人は程なく眠りについてしまう。
その子供達を、義弘が自身の軍馬に乗せて。
「ま、そのくらいならこいつも許してくれるだろ」
馬は仕方ないなと小さく息つくが、子供達が起きないようにとあまり揺れぬよう森を歩いていた。
アルティオ=エルムへと戻ると、イレギュラーズ達を待っていた幻想種の人々の中から、子供達の親が駆け出してきた。
「良かった、無事で良かった……!」
聞き慣れた親の声で目覚めた子供達は馬から一緒に降りて。
「心配して待ってる家族に、元気な姿見せてあげましょ!」
「「うん!」」
頷く子供達は両親の元へと向かい、嬉しそうにキノコを差し出す。
「キノコ、採ってきたよ」
「美味しいスープが飲みたいな」
微笑む子供達の姿に、両親は泣き出してしまう。
「家族っていいね。……羨ましい、な」
そんなヒィロに、美咲は少し考えて。
「夕食はキノコ料理かなぁ。焼くだけじゃなんだし……ヒィロは何がいい?」
少しだけキノコを摘んできていた2人も、食事にしようと家に帰ることにしたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは戦闘中子供達を癒し、励ましていた貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
深緑の迷宮森林にキノコ摘みに向かった幻想種の兄妹が戻らないという事件が起きております。
予知でも若干の状況が判明していますが不透明な部分もありますので、探索、戦闘である程度幅の利く作戦が必要となるかと思います。
●目的
キノコの魔物一団の討伐。
幻想種の兄妹の救出。
●敵……モンスター×5体
それぞれ、菌糸を使って地面を移動できるキノコが変異した魔物達です。
〇マジックマイコニド(略称マイコニド、魔キノコなど)×1体
全長3.5m程。群れを率いるボスでもあります。
菌糸を使いこなすことができるようになった巨大キノコ。
相手へと伸ばした菌糸で体を縛り付け、養分を奪い取る他、
傘から魔力を伴う胞子を降らせ、相手に幻覚を見せつけるようです。
〇マッシュケージ(略称檻キノコ)×1体
全長5m程。柄が異様なまでに太く、檻のような見た目をしているのが特徴的。
2人の子供を柄の中に捕えており、下手な攻撃は子供達を巻き込む為、注意が必要です。
動きは鈍いですが、菌糸で拘束した相手を檻に捕えたり、体力を奪ったりとマジックマイコニドの下位互換のような能力も使用します。
〇マッシュランス、マッシュソード、マッシュワンド
(それぞれ略称は槍キノコ、剣キノコ、杖キノコ)
全て全長1m程。それぞれ、体が名前の通りの容姿となり、菌糸と柄、傘を変形させつつ刺突、斬撃を仕掛けてきます。杖は殴打の他、魔力を放出するようです。
菌糸は動かしますが、地上から離れることはありません。ただ、菌糸が異様に伸びる為、見た目以上に攻撃範囲は広いようです。
●NPC
いずれも幻想種の子供達。戦闘能力はありません。
近場でキノコ摘みのつもりが、逆にキノコに捕らえられる状況となっているようです。
○ミロン
8歳のお兄ちゃん。銀髪をショートにしてやや切れ長の目をしていますが、まだあどけなさを感じさせます。
○リッコ
5歳の妹。銀髪をセミロングにし、顔の左右を細いリボンで縛っております。
●状況
昨日の昼、キノコ狩りに向かったミロン、リッコ兄妹が夜になっても戻ってこなかったことから、ローレットへと捜索依頼が出ております。
捜索を行うのはその翌日、朝から森林迷宮へと入ることになります。
状況によって発見は前後します。後になればなるほど、兄妹は弱って救出が困難になりますのでご留意くださいませ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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