PandoraPartyProject

シナリオ詳細

闇路を行くは何者か

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ベチョッ!

「っぴぃーーーーーーーーっ!?!?!?!?」

 唐突にローレットへ響いたひよこの悲鳴。慣れぬ者こそ驚けど、最早長く居るメンバーからしてみれば「またか」という事態である。
「……驚きすぎじゃない?」
「驚きますよ!! というか驚かせるためのものでしょう!?」
 いくらかの困惑を声に滲ませた『Blue Rose』シャルル(p3n000032)へブラウ(p3n000090)は断固抗議した。
 シャルルの手に握られた小柄な竿には、ぶらんとコンニャクが下げられている。こいつにブラウはやられたのだ。
「だって、そういう季節だよ」
「そういう季節ですけど! 今ここでやることじゃないですからね!!」
 つんとブラウがそっぽを向けば、苦笑とともに頭を撫でられる。心地よい撫で方に免じて――どちらかと言えば怒りは長く続かないので――ブラウはつぶらな瞳を彼女へ向けた。
「それで、それはどうしたんですか? シャルルさんが自分で用意したわけじゃないでしょう」
「うん。依頼に使う小道具」
 シャルルはこれよろしく、とひよこへチラシの束を差し出す。肝試しの案内らしい。
 今や世界中に旅人(ウォーカー)が散らばっており、その文化はあちこちで広められている。これもその一種のようで、異文化好きの幻想貴族が金の力で舞台を作り上げたのだそうな。
「凄かったよ。いかにも出そうってああいうことを言うんだよね」
「その土地、実は未練を残して死んだ人とかいません?」
「いないよ」
 彼女の言葉にブラウはホッと胸を撫で下ろす。あくまでそれらしい建造物を建てただけで、元は倉庫のあった場所らしい。
「肝試ししてくれる人も募集してるし、中で驚かす人も募集してるんだ。……それで、それ」
「このチラシですね」
 2人の視線がチラシに落ちる。どこからどう見ても、記載の文字を読んだとて立派に『遊び』なのだが、あくまで『依頼』なのである。金も出るしパンドラも溜まるのだ。
「シャルルさんは、」
「驚かす側に決まってるでしょ」
 さも当然と言った雰囲気の彼女だが、万が一にイレギュラーズから誘われたらどうするのだろうか。表情のわかりにくい顔の下で、真剣に悩むに違いない。
「それじゃあ僕はお留守番ですね――どうして抱えられたんですか?」
「行くに決まってるじゃん」
 カウンターにぽふんと座り込むも束の間、シャルルに抱え上げられたブラウ。目をぱちくりさせる彼へシャルルが答えた直後、再びローレットにひよこの鳴き声が響き渡ったのだった。


●ホー……ホー……。
 夜。空には月が浮かんでいる筈だが、薄く霧のかかったこの場所ではその光もかすんでしまう。
 道には迷わぬが、さりとて見通しずらい場所だ。魔物などが出る土地であればこんなことはできなかっただろうし、意図的に霧を出現させると言うのも難しい。件の貴族は良くこのような場所を見つけたものである。
 幻想の土地だというのに、その一角はどこかカムイグラを彷彿とさせるそれは貴族が職人を雇ってそれらしくしたのだと言う。この先には墓所や寺も作ったらしい。勿論ガワだけで、収められているものなど何もないが。
「そのお寺の中にあるお札を持ち帰る……ですか。これが肝試しの定番ってやつなんでしょうか?」
「さて、な。我にもわからん」
 ブラウに『焔の因子』フレイムタン(p3n000068)は首を傾げて見せる。そもそも旅人とて、同じ世界から集まっているわけではない。全員の定番を聞いてみたら全く違ったなど珍しくもない話だ。
 などと言っていると、ぞろぞろと2人の方へ向かってくる気配がある。肝試しのチラシを持ったイレギュラーズたちだ。彼らの姿を見たブラウはぱっと目を輝かせた。
「皆さん、来てくれたんですね!」
 これでもう怖いものはないと胸を張るブラウ。今来た一団が『驚かせる側』であると知るのは、もう少し先の話である。

GMコメント

●すること
 肝試しをしましょう!
 肝試し参加者を驚かせましょう!

●舞台
 幻想王国某所にある山。幻想貴族が私有地として買い取り、雑木林を建てたり墓所を作ったりしました。当然どの墓も納骨されておらず、破壊されている墓もありますがそもそも罰あたりにならない。ただの模型みたいなものです。
 幻想貴族の手が加わったことにより、どことなく和風な雰囲気を感じさせます。薄く霧がかかっており、不気味です。 
 雑木林の山道を通り、墓場を抜けて、奥の寺(あくまで建てただけです)にあるお札を持ち帰るというルートです。

●パート
 それぞれのパートで、肝試しを楽しむための注意事項があります。後述の内容をご一読の上、ご参加ください。
 なお、どちらのパートも時間帯は夜です。

【参加】
 最大4人1グループで参加できる肝試しです。1人でもご参加いただけます。
 山道を進み、不気味な雰囲気と突然にやってくる怪奇現象(驚かし)をお楽しみください。なお、1グループにつき1つ、明かりを持っているとします。(ランプやランタンの類になります)

【驚かし】
 上記パートの参加者を驚かせます。小物は用意がありますし、持ち込んでも構いません。
 好きなタイミングで好きなギミックを仕込みましょう。明かりは必要であれば持っているとすることができます。(ランプやランタンの類になります)

●注意事項
・ソロ参加の場合、別PCと一緒にリプレイ執筆する場合がございます。NGの場合は【単独希望】と入れてください。
・敷地内の物品について基本的に破壊禁止ですが、参加者を驚かせる程度の小細工は構いません。
・驚かし側は、肝試し参加者に【お触り禁止】です。掴む、タッチする、抱きしめる等はマスタリングされる可能性があります。

●NPC
 シャルル、フレイムタン、ブラウについてはプレイングにご指定頂くことで登場する可能性があります。

●プレイング内容確定・章進行に関して
 全1章。2週間程度で完結を予定しています。

 同行者ありの場合、冒頭に共通タグor同行者名をお願いします。

 同行者ありの場合は、最終稿を出すことを推奨します。(GM確認後は修正不可のため)
 同行者がいるとわかる場合、24時間くらいは待つ時間を設けますので、大体で揃いそうな時間に提出頂ければ大丈夫です。
 上記時間を過ぎた場合、完結の可能性もございますのでご了承ください。

 完結予定についてはTwitterで告知する場合がございます。

●ご挨拶
 愁と申します。肝試ししましょう!
 尚、『注意事項』をよく読んでプレイングを送信ください。また同行者ありの場合は『プレイング内容確定・章進行に関して』もご一読ください。
 それでは、いってらっしゃい!

  • 闇路を行くは何者か完了
  • GM名
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年09月05日 20時40分
  • 章数1章
  • 総採用数11人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
囲 飛呂(p3p010030)
きみのために

「え、これ依頼?マジで言ってんのか?」
「マジもマジですよ。まあ依頼主が貴族の方ですから、こういうのもあるんです」
 そういうものなのか、とブラウ(p3n000090)の言葉に『特異運命座標』囲 飛呂(p3p010030)は何とも言えぬ表情を浮かべる。どう考えても内容はレクリエーションなのだが、遊んで賃金がもらえることを喜ぶべきなのか、どうなのか。
 1人と1匹は山道を黙々と歩く。薄い霧は見通すには不便だが、足元や同行者の存在を確認することは邪魔しない。
 案外すんなりと進めていることもあって、両者の緊張はいくらかほぐれていた。
「肝試しなんていつ以来かな……」
「囲さんもされたことがあるんですか?」
 したことがある、と言っても小中学生くらいのことだったと思う。クラスで一番かわいい子と、2人きりで回りたい男子が続出していたものだ。まあそんな頃合いであれば不必要にちょっかいを出して嫌われるというのもまた、ありがちである。
(当時は興味なかったけど、今なら気持ちわかるな)
 こんな不気味な場所である。傍らにいるのはひよこだが、これが可愛い女子であればもっと怖がることだろう。そんな子を励ましながら自然と接触できるし、心も近づく。

 ――バキバキバキッ!!

「ウワーッ!!」
「ぴぃーっ!!」
 突然の音に文字通り飛び上がり、互いに抱き着くブラウと飛呂。望んでいたシチュエーションだけど相手が相手である。
「なんだ今の音……」
「なんか、ピカピカしていませんでしたか!?」
 ブラウがぷるぷると震えるが、先ほどの音も光もすでに感じられない。いや、何か大きなものが近づいてくるような気配はするだろうか。しかしこの薄霧を考えれば気のせいということも十分にあり得る。
「く、くそ、油断してたな……かっこ悪ぃ……」
「あ、待ってくださいよー!」
 溜息ひとつ。ブラウを下ろし、飛呂はやや早足で歩き始めた。ちょこちょことついていこうとするブラウはふと、立ち止まって振り返る。

 ――グオォウ……。

 ひよこが見たずっとずっと先、薄霧の向こう側。よくわからずに紛れ込んだ『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)は、ブラウの匂いを感じ取って彼を探していた。
(おともだち。どこだろう)
 のそのそ歩き、たまにその巨体で枝を折り、あくびに似た呼吸反応で吠え声をあげる。その一挙一動がまさか他者を脅かしてしまっているなど、露にも思わないことだろう。
 ガサガサ、のそのそ。やがて山道に出たアルペストゥスは、ちんまりとこちらを見る黄色い毛玉を発見した。
「――アルペストゥスさん!」
「グゥ!」
 ぴょこんと毛玉が跳ねる。アルペストゥスは見つけたおともだちをひょいと咥えあげて、それからぽかんとしている飛呂と視線が合ったのだった。

成否

成功


第1章 第2節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

「わああ、雰囲気あるねぇ!」
 ぱっと目を輝かせた『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)は周りをきょろきょろと見回す。いかにも不気味な雰囲気なのだが、こういった『舞台』という点でそのリアルさには関心するものがある。
 だが、それはそれとして。
「あ、ええっと……巻き込んじゃってごめんね、シャルル嬢」
「ううん。ま、イーハトーヴを驚かす側も楽しそうだったけれど」
「ええっ!?」
 驚く彼に『Blue Rose』シャルル(p3n000032)はくすりと笑う。きっと彼ならいいリアクションをしてくれるだろう。
 イーハトーヴにとってこの手のものは、はっきり言えば『苦手な部類』である。けれど克服までいかずとも慣れておきたい。オフィーリアもシャルルもいる今なら大丈夫だと自らに言い聞かせてきたのだ。
 内心びくびくな彼に反して、シャルルはいつも通りというべきか。彼女が平静なのだから自分も頑張らなくてはとイーハトーヴは自身を奮い立たせる。
「イーハトーヴ、無理しないでね?」
「うん! でも、大切な人たちの力になれるよう強くなりたいんだ。お遊びだってわかってはいるんだけど――うわっ!?」
「わぁっ!?」
 イーハトーヴが驚き、その言葉にシャルルが声を上げる。思わず互いの手を握った2人は辺りを見回して、それから顔を見合わせた。
「……だ、大丈夫。行こう」
「そ、そうだね。早く行って帰ってこよう……!」

成否

成功


第1章 第3節

古木・文(p3p001262)
文具屋

 まだまだ肝試し参加者が到着しないような頃合い、『踏み出す勇気』古木・文(p3p001262)は寺でいそいそと黒インクを作っていた。
(雰囲気も出てるし凄いねぇ)
 立地もあるのだろうが、手前にあった墓もこの寺もわざとこのように作られたもので、自然風化ではないという。かの幻想貴族の拘りが見える。
(参加してくれた人の楽しい思い出になれば良いなぁ)
 ふふふ、と笑みをこぼして。文は黒インクに手を浸した。真っ黒になる両手。それを障子へぺたり、ぺたり。何度も繰り返し、障子が黒の手形で良い感じに埋まったら床にも後を残す。
 自身が驚かすのも楽しそうであるが、こういった舞台の小道具づくりに勤しむのもまた一興。一度は手掛けてみたかったのだ。
「タスケテ……だと本気にしてしまう人がいるかな」
 筆を持った文は頤へ手を当てて、それから意味をなさないカタカナの羅列を書く。よくわからないものというのは恐怖を与えるのだ。
 お札や箱にびっしりとお経らしいものを書いてみたり、他の障子や床に手形や足跡を撒いてみたり。黙々と作業する文の後ろには、彼が作りこんだ小道具の数々がより不気味な雰囲気を醸し出していた。

成否

成功


第1章 第4節

黒影 鬼灯(p3p007949)
やさしき愛妻家

 『零れぬ希望』黒影 鬼灯(p3p007949)、そしてその傍らに寄り添う章は闇に紛れていた。
「鬼灯くん、今日は悪いお嫁さん、頑張るのだわ!」
 章が可愛い。めちゃかわ。尊い。口元が緩みっぱなしの鬼灯であるが、忍を本業とする彼は完全に闇へと潜み、口元はおろかその全身も溶け込んでしまっている。知るのは本人のみ。
『ほら、章殿。彼処に人がいるぞ』
『まあ! それじゃあ、行ってみましょう!』
 ひそひそと言葉を交わし、山道を登る相手をターゲットに。
 がさりと茂みが揺れ、肩を揺らしたその相手は小さな女の子の姿に首を傾げ、そして顔を引き攣らせた。
「ごきげんよう! ねぇ、私と遊んでくださる?」
 満面の笑みで話しかけてくる、西洋人形。相手はこちらが驚いてしまうような大声を上げながら、一目散に山道を戻っていく。
「章殿、天才だな??」
 ひょっこり出てきた鬼灯に撫でられ、ドヤ顔を浮かべる章。暦の中でも真夜中に彼女と遭遇し、すっ転んだ者がいるくらいなのだ。彼女をみて驚かないわけがない。彼女の愛らしさを知ることができないのは人生の汚点と言ってもいいだろうが――。
「いや、」
「鬼灯くん?」
「なんでもないよ。さあ、次が来る前に隠れようか」
 彼女の愛らしさは、自分だけが知っていれば良いとも、思ってしまうのだ。

成否

成功


第1章 第5節

ミミック(p3p010069)
特異運命座標

(驚かすためには……まずは下見ですね)
 薄暗い山道を躊躇いなく進む『特異運命座標』ミミック(p3p010069)。この視界の悪さでは広域俯瞰もなかなか難しいものだが、彼は手頃な雑木林を見つけると懐から餌を取り出した。
「この辺りですかね……と」
 枝の上にそれを仕込む。鳥が啄む間に誰かが通り掛かれば、一気に飛び立つ羽音で驚かせられるだろう。
 そこそこの量を仕掛け、満足げなミミック。しかしまだ借りてきた小道具はあるのだと墓場へ進む。ここで用意するのは竿2本。それぞれ蒟蒻と、アルコールの染みた布が下げられている。
(ここばかりは誰かがいないといけないな)
 最後の仕掛けを終えたら来よう。他に手伝ってくれる者もいるかもしれない。
「試しに燃やしてみて、と」
 竿を倒れないよう墓石の側で固定し、布に火をつける。ぼうと燃え上がったそれから徐々に離れれば、いい感じの人魂に見えてきそうだ。
 この辺りでも十分気付くが、暗闇を確認しにくくするならばもう少し近くで仕掛けるべきか。しかし近すぎてはアレの正体がバレてしまうし――。
「ひとまず後にしましょうか」
 考えていては時間のロスだ。最後の仕掛けを進めるため、ミミックは寺へと進んでいった。

成否

成功


第1章 第6節

金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸

「肝試し! とっても素敵だね! 暗闇の中ドキドキの吊り橋効果でカップルが成立しまくりの恋愛イベントだね!」
 『甘いくちどけ』金枝 繁茂(p3p008917)は一肌脱ごうとマジで脱ぎ――お着替えシーンは全年齢なので割愛である――死装束を纏う。死装束とは死者に着せるためのもの、死者が旅立つための衣装であるらしい。白い布地が薄暗い中で灯りを受けると不気味に映える。
(参加ついでに男の霊でも集めちゃおうかな!)
 気分は虫取りのように。それは無邪気に虫を追いかける少年のようにも、獲物を狙う女のようにも見えるかもしれない。

(きたきた……!)
 ハンモはワクワクとしながら参加者を待っていた。待つことしばし、ようやく人の気配がやってきたようだ。いや、彼を人と言うべきか悩みどころだが。
「ま、迷った……皆さぁん」
 情けない声を出すブラウ(p3n000090)。彼の近づいたタイミングでハンモは茂みから姿を現す。
「うらめしや〜!」
「ぴーーーーっ!?!?!? ……はっ」
 鳴き声を上げたブラウは、しかしハンモの顔を見て冷静さを取り戻す。なんだあ、と溜息をついたブラウに笑って、それからブラウの後ろを見てはっとした。
「あっ本物だ!!」
「あ"ーーーいやーーーーッッ!!!!」

成否

成功


第1章 第7節

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

「ブラウくーん!」
「ぴっ!?」
 ひょいと持ち上げられたブラウ(p3n000090)は目を白黒させながら『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)へ視線を向けようと身を捩る。そんな彼とランタンをしかと持ち、アーリアは「出発よぉー!」と元気よく歩き出した。
 1人では進めないが、もふもふがあれば大丈夫。目指せ酒代ゲット!
「あの、ねえ、僕もう行ったんですけど」
「気にしない気にしなーい! それともブラウくん……おねーさんをこんなとこに放っていくのぉ?」
 うるりと目を潤ませたアーリア――その頬にべろりん、と柔らかいものが。
「きゃー!」
「ぴーっ!?」
 全速力でアーリアが走り出した。風を顔面から受けたブラウは目の前に現れた人形に顔を引き攣らせる。
 前へ、前へ。とにかく進む道中で仕掛けに悉く悲鳴をあげ、時にブラウを差し出し、また悲鳴をあげて。1人と1匹は墓場にて膝をついた。
「ひぃ……ひぃ……」
「も、もう……無理よぉ……」
 しかし寺まではまだ遠く。アーリアはランタンを前へやって視界を広げんとする。
「アーリアさん、あれ……」
「え? え……??」
 腕の中のひよこがぷるぷると震え始める。先を見たアーリアも、血の気を引かせた。
 あれは――人魂か。
「ぎゃあああああ!! この子をあげるから許してええええ!!!」
「2回目ぇぇぇ!?!?」

成否

成功


第1章 第8節

イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って

「こ、怖かったー!」
「……夢に出そう」
 『秋の約束』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)の言葉に『Blue Rose』シャルル(p3n000032)はふるりと体を震わせる。2人の手には件のお札が握られていた。
「足跡とかたくさんあったねぇ」
「ここまで来るのにだって人魂っぽいのあったじゃん……もうないかな」
「あ、」
 そうか、とイーハトーヴは顔を引き攣らせる。お札をもらってすっかり安心しそうだったけれど、帰るまでが肝試しだ。
(気合を入れ直して頑張ろうっと!)
 これ以上格好悪い姿は見せられない。すぐそばにいる互いの存在に励まされながら、2人は道を下っていく。
「あのね、シャルル嬢」
「ん?」
 ふわりと香る甘さに頬を緩め、彼女へ視線を向ける。
 怖かったけれど、楽しかった。こうして遊べて良かったと告げれば、シャルルはくすりと笑う。
「イーハトーヴの驚いた顔も思い出の一つ、かな?」
「シャ、シャルル嬢っ!」
 せっかく気合を入れたのに覚えられてしまっては、とイーハトーヴは眉尻を下げる。早くこの程度で動じない男にならなくては。
(さっき思わず握ってしまった手の温度も、
思い出と一緒に心に残りそうだけど……)
 イーハトーヴはひとつ、目を瞬かせる。なんだか言いたくないような、口にするのは面映いような。まだ、理由はわからないけれど。
「次は秋だね!」
「うん。何しようか」
 君となら、なんだって楽しいんだ。

成否

成功


第1章 第9節

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王

 薄い霧の中、ぼんやりと佇む影がある。それは比喩などではなく、真実黒一色の姿であった。
(シンプルイズベストだと、怪異どもが囁いている)
 『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)はぼんやりと見えた月を見上げ、その耳で何かを聞いていた。常人にはわからぬであろうそれは、彼女に人間の驚かし方を告げているらしい。
 ふと、誰かの足音が聞こえた。オラボナはそれが近づいてくるまで待ち、来たとあらばゆっくりと振り返る。凝視してきたそれへ、オラボナは笑い声をあげた。
「「Nyahahahahahaha――!!」」
 近くで、遠くで。重なって聞こえるその声は。気のせいか、それとも自身を『オラボナ=ヒールド=テゴス』であると錯覚した者のそれであるか。

 薄霧の中。嗤い声はどこまでも、どこまでも続いていた。

成否

成功


第1章 第10節

辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた

「こっちにおいで? 一緒に行こう」
 『旅慣れた』辻岡 真(p3p004665)が手を握る、その先には何もない――ように見える。けれども彼は見えているかのような仕草であった。
「しのふのみ……おや、多いね。そういえば、そういう時期か」
 皆でおいで、と誘う真は死者も生者も関係なく、寺まで行こうと声をかける。良いだろう? と背後に問えば誘った者の顔も引きつるが、真が和やかに「良いってさ」と言えば断ることも難しい。
 そうして真たちは複数人で固まって、寺まで辿り着いた。催しとしてはここで御札を貰って帰れば良い。
「なあ」
 ホッとしたのか。真は問いかけられて小さく首を傾げる。
「何か居ただろうって? 何も居ないさ。

 最初から、君達以外、何にもね」

 ふぅと灯りが消され、辺りは暗闇に包まれる。次に明かりがついた時――そこに真の姿はなかった。

成否

成功

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