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シナリオ詳細

【南方異聞】退路血道

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鉄帝・南方への誘い
「鉄帝の南方……ですから、私達幻想の立場で言うと『北部戦線』ですか。あちらで、新兵数名と教導の立場にあった左官1名が行方を眩ませたとのことです」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)は、やや複雑そうな表情で依頼書を読み上げた。鉄帝からの依頼を受けるのはいつものことだ。だが、南部(北部)戦線での依頼は特にナーバスなもので、正直なところ引き受けるのには二の足を踏む類ではある。が、鉄帝出身者、さらにいえばそちらの軍閥の者がイレギュラーズである以上は選り好みもしていられない。
「私は旅人ですので国に対して特別な感情は有りません。その観点から申し上げれば、国はどうあろうと新兵が無為に命を落とすのは看過できません。それに」
 「君達は否応無しに助けなければならないさ」、と依頼人が――軍人が言い残していったことが気がかりだとも彼女は述べた。
 ともあれ、依頼は依頼だ。一同は即会戦の可能性に緊張を禁じ得ぬまま、現地へと向かう。


「――頼んだ覚えはないぞ。これは戦争だ。貴様らの手を煩わせる必要はない」
 そして、依頼された地点にたどり着いたイレギュラーズを待っていたのは、エッダ・フロールリジ (p3p006270)だった。……成程、『左官』か。何も間違っては居ない。彼女は鉄帝の大佐の地位にあるのだ。
「わかったら疾く去れ……といっても聞かないのだろうな、貴様等は。なら、手伝え。この役立たず共を近場の基地まで連れて行く。それまで時間稼ぎだ。それから逃げてもいい。推奨はしないが――打撃を与えてやってもいい」
 遠くを見れば、此方を探っている多数の軍勢が見えるだろうか? 幻想の北部戦線に配属されている以上、厄介さはひとしおだろう。腐敗にまみれた一部の者とはわけが違う、本格的で実践的な撤退作戦というわけだ。
「口惜しい話だが、敵勢力の総数は私も知らん。夜闇に目の慣れた者や軍用犬がいる可能性はあるが、暗視装置などの機械化は為されてないだろう。飽く迄勘働きをもとにして向かってくるというわけだ。だが、射撃関連の武装と魔術教導はいやに高い連中だ。油断してれば、当てずっぽうでも強力なのが飛んでくる。居場所を明かして戦うなら、用心することだな」
 君達はこの暗闇で明かりを消して密かに離脱を図ってもいい。
 暗闇に乗じて遅滞戦闘を展開してもいい。
 あるいは、明かりを煌々と照らして逃げに転じる者達から目をそらしてもいい。
 だが忘れてはならない。
 ただの遅滞戦闘だけで、戦功に飢えた彼等が新兵をやすやすと逃すなどありえないということを。

GMコメント

 リクエスト有難うございます。
 経験上夜間行軍は経験ありますが、ええ、まあなんていうか、少しの草、多少のドーランでも全然見えなくなって……おっと。

●成功条件
・エッダ・フロールリジの重傷回避
・新兵の損耗率2割未満での撤退成功(初期配置から足止めし、150m離脱が安全圏)
・上記達成後、『戦線遅滞15ターン』『重傷者4名未満での撤退成功』『敵損耗3割以上』いずれかの成功

●エッダ・フロールリジ (p3p006270)
 リクエストシナリオですので、確定参加です。
 新兵+αを率いての戦闘訓練の名目で中程度の激戦地に赴いています。
 今回の敵情が「ちょっと」話と違ったため、同伴した熟練兵を多数失っています。彼女以外新兵しか残ってません。
 彼女もリプレイ開始時(と相談中)はHP1割程度、AP3割程度でスタートします。治癒するなりまっさきに逃がすなりしないとパンドラ使用は確定的。
 その他、出発時のステータスに準拠します。『OP公開時の彼女のステータス』でこの損耗です。

●新兵×20
 ド新兵です。多分新兵教導とかそんなもん受けたばっかりで、夜間行軍も経験していないひよっこです。
 イレギュラーズが無灯火戦闘を行っても、彼等が不用意に南下する可能性はあります。
 それを止めるブレーキ役とか、移動手段とか、まああったほうが賢明でしょう。
 戦闘状態にありアドレナリンが出まくっていますが、間違っても参戦させてはいけません。

●幻想兵・夜間行軍仕様×15
 装備が全体的に黒塗りであったり深めの色に統一されている幻想兵です。
 目こそ慣れているものは少数ですが、耳が利く者などもいますので油断はできません。
 相手にバレること前提で、こちらも相手の居場所を割る必要があります。
 魔法・銃器混成。近接戦は『比較的』苦手ですが、不用意に飛び込めば銃剣の襖に入って膾にされること請け合いです。

●軍用犬(嗅覚特化)×5
 嗅覚要員。そのため、特殊マスクをつけており牙は使いません。そのかわり爪が鋭く、場合によっては毒を塗られていることも。きつく調教された動物なので人間由来の感情には興味がありません(精神・怒り無効)。索敵対優先順位は「新兵・エッダ>未特定の匂い(PC達)>幻想名声高めの者」。

●特殊幻想兵×10
 ある意味一番厄介な連中といえます。
 使い魔を使役するもの、低空飛行を行い哨戒する者などがおり、音、光などを切っても別の手段で特定してくる可能性があります(あんまり多元的にはならないと思います。せいぜい1~2手段)。
 戦闘力は高くありませんが、高高度を飛行しての射撃回避の上で索敵・連絡手段を確保する者も……1人ふたりいてもおかしくないでしょう。対応策を用意すれば、余程でないかぎり有利には働きます。

●各兵員の増援×?
 上記は参考値(エッダの知る確定情報)の為、リプレイ開始時に増えている可能性があります。
 上昇幅は不明ですが、夜間なのでそうすぐに増えたり際限なく増えたりはなさそうです。

●戦場
 南方戦線(幻想:北部戦線)。
 現在地は比較的植生がある方で、ちょいちょい茂みとかがあります。
 それらの利用もひとつの選択肢に入るでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます(鉄帝名声は微増します)。
 又、失敗した場合の名声値の減少(上昇)は0となります。

  • 【南方異聞】退路血道完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
※参加確定済み※
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者
ノルン・アレスト(p3p008817)
願い護る小さな盾
袋小路・窮鼠(p3p009397)
座右の銘は下克上
アルトリウス・モルガン(p3p009981)
金眼黒獅子

リプレイ


「なるほど、佐官とフロールリジさんでしたか……そして既に被害は多数と」
「事前に集めた情報と現地の状況が違う事はたまにありますが……ひどいハズレを引きましたね、エッダ殿」
「御託はいい。貴様等も今更逃げられんだろう、役割を為せ」
 『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)と『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)の気遣う声を聞きながら、『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は苦々しい表情を変えることなくそう返す。周囲の新兵達は『大佐』の窮地と突然の増援に嘆くべきか感謝すべきか、感情の行き場を失っている。……新兵というのは、これだから。
「お待たせしました。エッダさんには不要かもしれませんが、勝手に助けさせていただきます!」
「ああ、勝手にしろ。こうなっては私に貴様を止める手立てなどないからな」
 『願い護る小さな盾』ノルン・アレスト(p3p008817)は即座にエッダに駆け寄ると、すぐさま治療を開始する。周囲に満ちる癒やしの波動は、新兵の恐慌を僅かながらに和らげる助けになるだろうか?
「さぁて、とんだ鉄火場に飛び込んじまったもんよ。リーマン上がりの俺にゃあ怖い限りよ。……なんて、はっはっは。今更こんなことで怖気つくほど素面じゃねぇわなぁ。行くぜ日車、先ずはここいらをかき回す」
「ええ、心得ました」
 『座右の銘は下克上』袋小路・窮鼠(p3p009397)は周囲に感じるあからさまな敵意の発散に辟易したように首を振りつつ、しかし些かも気勢が削がれた様子はなかった。むしろ、即座に迅と敵斥候を切り崩しに向かう辺りが『慣れ』を強く感じさせる。
「はは、超絶不利じゃねーか! 結構絶望的な状況だが、まだ終わりじゃない……分かるだろ。オレもお前達と同じ初陣なんだよ」
「初、陣……? あなたが?
「ああ、だから頼りになる先輩諸氏の仕事ぶりを覚えるのが仕事だ。で、お互いの最優先任務は生き延びること」
 周囲で目まぐるしく変化する状況に理解が追いつかない新兵達に、しかし『新たな可能性』アルトリウス・モルガン(p3p009981)の言葉は意外にすら聞こえた。黒獅子の如き姿見と体躯からは想像出来ない事実だが、その立ち回りや言葉から感じる緊張は本物だ。思いがけず、新兵達は安堵の吐息を漏らした。それがいっときの気紛れであれ、大分楽だ。
「新兵の皆さんは何としても無事に帰したいですね。とはいえ、私が死ぬのも御免蒙りますが」
「……行きましょう。一人でも多く、無事に故郷に帰してあげるために」
 『断ち斬りの』蓮杖 綾姫(p3p008658)は周囲の敵意に気を配りつつ、慎重に歩を進める。上空を徘徊する敵意は今の所観測出来ないが、さりとて仮に観測できても撃墜するには相手を射界に収める必要がある。厄介この上ない。
 『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は周囲に漂う微かな酒気(アルトリウスが用意したもの)に鼻をひくつかせながら、冷静に周囲の敵を探しにいく。
 使い魔の気配はない。彼女の能力で接近を許されていない、というのもある。
 ステラが用意した簡易罠の位置は間違えようがない。現状、それに引っかかるほど前進してきている敵はいないということでもある。
「私がこのザマで、イレギュラーズ共でも足止めが精一杯の相手だ。貴様らは尻を捲って逃げろ」
 エッダの有無を言わせぬ指示に、新兵たちは即座に応じ、辿々しくも撤退を開始する。
 治療はもう少しかかるだろう。新兵達が無闇に『勇気』を振りかざす懸念は……今の所はあるまい。
 だが恐らく、都度言い含めなければ元の木阿弥の可能性もある、か。
 考えるにつけ厄介な戦場をみやり、エッダは懐の煙草の箱を引っ張り出した。それが空っぽであることを確認すると、彼女は無言で握りつぶす。
「皆さん、どうか落ち着いて。戦線はこちらで引継ぎます。ボク達を背中にして、可能な限り離れてください。頭を下げて、茂みや脚元に気を付けて。大丈夫、必ず帰れます」
 ノルンの言葉がどれ程までに新兵の心に響いたものか。無事に逃げ切れるなら重畳、1人や2人は……折り込み済みだ。


 深い夜の向こう側に、先ほど倒した鉄の連中の同胞が居るのだ、と思えばその興奮は如何ばかりか。
 ザーバ・ザンザ率いる北部の雄、その一角を切り崩せるのであれば――或いは、彼が携わっておらずとも、膠着した戦線で劇的な勝利を挙げるという目先の指針は、幻想兵達にとってはこの上なく眩い餌であった。
 だからというわけではあるまい。彼等は十分に警戒していた。
「うぉっ……?!」
 だからこそ、突如として炸裂した閃光と、それに遅れて届いた爆音は想定外だった。鉄の連中、いよいよ気が触れたのだろうか?
「早くこっちに殴りかかった馬鹿を探し出せ! 哨戒班は何やってる!?」
「連絡取れません! 低空哨戒が落とされたなら、今新たに飛した際のリスクが大きすぎますが……!」
 咄嗟に、だが声を抑えながら隊長格が司令を飛ばす。が、念話を受ける立場にあった兵員は頭に手をやり、動揺露わに応じる。先んじて哨戒を出しておいた判断が誤っていたなどとは思わない。が、それにしても状況の進展が急過ぎる。何が起きているのかわからぬまま、闇を手探りするように――否。
 そもそも今は、深い闇の中じゃあないか。

「クソッ、外れたかよ! まあいい、日車の方は、……問題なさそうだな」
 窮鼠は苛烈な一撃を敵陣先頭に叩き込み、瞬時に踵を返していた。あたっても彼等は倒せまい。夜間戦闘を心得た敵相手に、目の利かぬ自分の有利などあるものか。彼は、その点に於いて認識が優秀だった。
 他方、迅が駆けていった側を見れば、相手も何処かへと駆けていく。自分とも、仲間達とも違う方向に。追手は少ないが、1人では荷が勝つ陣容だろう。助けに入るか? 馬鹿な。
 そんなことをする暇があれば、まさに今幻影に惑わされたあいつを殴り倒せ。窮鼠は、己の腹部に確かな熱が宿るのを確かに感じ取った。

「……落とせましたかね」
「幻想の兵隊があの一撃で終わりとは思えませんわ。落ちた位置は分かりまして? 私が倒してきますわ」
 綾姫は突き出した『黒蓮』を引くと、地上へと逆しまに落ちていった影を睨む。その肩に手を当てたヴァレーリヤは、慎重にメイスを構えにじり寄ろうとした。
「ヴィーシャ」
「大丈夫ですわ。エッダはおとなしく治療されてなさい」
 何事か口にしようとしたエッダは、しかしヴァレーリヤに機先を制され口を噤む。たった30秒。新兵達が死物狂いで走れば離脱できようが、焦りや気の迷いがあればどうか? 治療を受ける身でありながら、彼女は『大佐』でありながらも一個人として他人を慮った。
 ややあって衝撃波が草葉を揺らし、エッダの肉体にも幾ばくかの体力が戻ってくる。
「連中は?」
「アルトリウスさんが殿についていますが、恐らく幻想も手を打っているはずです。彼を信じるしか……」
「こっちに来るってのか? いいぜ、相手になってやる……来な!」
「笑止。この高度からの一撃、耐えれるものかよ!」
 アルトリウスは上空に目をやり、落下してくる影を視認する。天高く舞い上がり敵の攻撃から身を逃れながらも、上空からのランスチャージで一撃必殺を見舞う者。その無謀さと成否に関わらず命の危機を伴うそれは『流星兵』と呼ばれ――
「そちらには行かせませんよ……!」
 そして今、目敏くそれを視認していたステラのビーム砲が火を噴き、彼の背中を貫いた。
「お、俺達でも今ならあいつを倒せ」
「言ってる場合か!? 大佐の気持ちを無駄にするんじゃねえ、走れ! ヤツはまだ死んでねえ!」
 その攻防を見れば自分有利と勘違いするのも無理はない。地面に転がった流星兵に銃を向けた新兵に、アルトリウスは叫ぶ。そして、立ち上がろうとするそれに拳を叩き込むと、驚くほどのインパクトの軽さに舌打ちする。
「今のでそっちの位置もバレるぞ! こっちはオレが倒す!」
「で、」
「そうか。ヒヨコ共もだが、貴様も死ぬなよ。鉄帝の誇りを見せろ」
 ステラが抗弁しかけたところで、エッダがその言葉を打ち切るように言葉を紡ぐ。新兵達は眼前の状況についていけず、涙ぐむ者すら現れたが。しかし、踵を返した。
「ああ、やってやるぜ。そろそろ犬コロ共が仕掛けに引っかかる頃だ」
「……ハ、ァ、大した、自信だな。だが、足が震えているぞ」
「死に体でよく言うぜ。ここから先は通さねえし……お仲間ももう、通行止めだ」
 騎兵槍を媒介に低空飛行に入った流星兵に、アルトリウスは不敵に笑う。その直後、彼等より遥か前線、今まさに窮鼠と迅が駆け回る枯れ草が、火酒で燃え上がり、犬達の悲鳴が響き渡った。
「ラウンド2だぜ、自殺志願者」


「あっちは騒がしいですね。ですが、此方にももう少し付き合っていただきましょうか」
「あそこまで派手にやったなら、こっちももう少し派手にやらなきゃいけねえか……?」
 迅と窮鼠は、戦域を広く使いながら追手を全力で引き離す。適度に距離をとったところで両者は合流すると、次の一手を思考する。だが、敵はその暇すら惜しいとばかりに2人を、そして背後の仲間達に襲撃態勢を敷く。
「……いや、ありゃあもうお祭り騒ぎみてえだな。一気に先頭を潰して逃げるしかねえか」
「賛成ですね」

「来い、幻想のクソ共。貴様等お望みの首ならここにあるぞ」
「エッダさん、まだ本調子じゃないんですから無理はしないで下さいよ……!?」
 遠く離れた位置、燃え上がる炎の向こうで混乱を振り切って指示を飛ばす上級兵と思しき男。エッダが狙い所と見定めたのは、それだった。ノルンは咄嗟に彼女に警句を飛ばすが、知っていると軽く手で制するその姿に次の句を告げる暇がない。
「大丈夫です、射界に入った敵は全て、私が落とします」
 綾姫は『黒蓮』を大上段に振り上げると、その手に異能を乗せて振り下ろす。莫大な魔力と僅かな傷を齎したそれは、その何倍にも比する破壊を射線上に描き出す。エッダの構えに釣り上げられた格好となった上級兵を先頭にした数名は、劇的な一撃に歩を止めた。倒したか? そう考えた直後、上級兵は血を吐きながら足を踏み出す。まだ戦おうとしている。その生き汚さは同時に、兵士としての誇りの発露でもあったのだろう。
 だが、その必死の抵抗もステラの追撃の前には虚しいものだ。幾人かがなすすべなく倒れれば、一瞬なり隙が生まれる。その隙を以て、撤退の準備に入れよう。
「そういえば、新兵の皆さんは――」
「大丈夫ですわー! 追手は 私 が 倒しましてよー!」
 ……そう、倒したのはヴァレーリヤだった。
 アルトリウスが啖呵を切った直後に状況の変化に遅れて気づいた彼女は、全力で射程に収めた流星兵にメイスから神秘の一撃を叩き込み、間合いに入ってフルスイング。手負いでそれを食らってなお、生きている奴が居ようか? 否である。
「……撤退しましょう、皆さん! 傷は可能な限りこちらで癒やします! 新兵の皆さんは撤退済みですね?」
「そういうことだ、この辺りで終わらせて貰おう、幻想のクソ共諸君」
 ノルンの合図に合わせ、エッダがダメ押しの挑発を向ける。それは逃走には不利益となりうるものだったが、相手の指揮統制を崩すにはこの上ない効果を孕む。
 果たして、イレギュラーズは(多少の負傷を負ったとはいえ)戦場からの撤退を完遂し、新兵の保護も成功させたのである。

「あー、クソ、あそこで割って入ってくるかよ普通!」
「あら、でも少しだけ荷が勝つ相手だったのではなくて? それに、貴方が派手にやってくれた御蔭でこちらの目的も果たせましたし、お礼ですわお礼!」
 折角のチャンスを横取りされて悔しがるアルトリウスに、しかしヴァレーリヤは悪びれもなく鼻で笑う。見れば、その手には幾枚かのボロ布が掴まれていた。スカーフ……と、ドッグタグだ。
「亡くなった方の遺品は、無いよりはあったほうがいいでしょう?」
「流石はヴァレーリヤ殿、慧眼であります。僕には思い至りませんでした」
「ああ、まったく。でもキッチリ定時退社だ、上出来だぜ」
 迅と窮鼠はその行為に素直に賛辞を贈る。両者とも、足が棒になるほどに走り回った身だ。無事に戻れただけでも上出来、それ以上は仲間の役目であっただろう。
「……全く、最後まで血が足りないな。何か言い残しがあった気がするが……ああ、もう。それは次の機会だ」
 エッダは最後の力を振り絞って逃げ切ったことで憔悴し、何事か冗談を言おうとしていたことを失念してしまった。
 或いは、ヴァレーリヤの功労に沿う形で茶化すべきではない、と彼女らしくもなく気を遣ったのか……?

成否

成功

MVP

アルトリウス・モルガン(p3p009981)
金眼黒獅子

状態異常

なし

あとがき

 皆さんの努力や思わぬ罠の仕掛け方には関心いたしました。
 MVPの貴方、本当に……本当に初陣ですか?(褒め言葉

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