シナリオ詳細
<フルメタルバトルロア>花嫁を腕に求む
オープニング
●もう七月も半ばですよ?
突然だが、皆様はジューンブライドをご存じだろうか?
六月に結婚した花嫁は幸せになれるというアレである。
その為、六月は結婚ラッシュという所も少なくはなく。
また、結婚式への出席にかこつけてお相手を探そうとする者が居る事もまた然り。
それはここ、『ネクスト』の世界でも似たようなもので。
鋼鉄内にて、軍人の一人である彼にもその願いはあった。
「お嫁さんが!! 欲しい!!!!」
そりゃあもう切実に。
鍛えに鍛えた筋肉が服の上からでも分かる程に隆起している上半身。袖から覗く拳は分厚そう。右腕は機械の腕だ。
軍帽を外せば清潔感を残している紫の短髪が現れる。そして、鋭い眼光を飛ばす切れ長の目。
顔立ちは整っており、黙っていればイケメンの部類に当たるはずだ。
黙っていれば、であるが。
「お嫁さんがーーーー!!!! ほーーーーしーーーーいーーーーぃぃぃぃ!!!!」
喧しい。煩い。少しは黙れ。
この三拍子が揃う程の声量で叫ぶ軍人さん(三十代・男性)。
男――ライナー・トイフェル。現在絶賛お嫁さん募集中。
彼だってもういいお年頃。女性と恋愛したいし、あわよくばイケナイ事だってしたい。何より、家に帰れば独りしか居ない家の殺風景さに毎日枕を濡らす日々なのだ。
意を決して彼は走り回った。運命を感じた女性にアタックするも振られる、という事を何度繰り返したか。
六月中に花嫁をゲットするぞと意気込んだものの、気付けばもう七月も半ば。ジューンブライドはとっくに過ぎ去ったのよお兄さん。
そして今日も失意の中で家に帰宅し、先程の叫びという訳である。
枕に顔を押しつけてめそめそと泣き出すライナーさんじゅうにさい。
「うぅっ……。花嫁さぁん……ボクの花嫁さんどこぉ……」
枕に頬ずりする様も加えたら鬱陶しい事この上ない。
「なんで振られちゃうんだろう……」
多分声量の大きさと感情のジェットコースターのせいじゃないかな? 知らんけど。
その後も枕に顔を埋めながら「お嫁さん……」という単語を数分おきに繰り返すライナー。この時にご飯食べるとかお風呂入るとかしたら良かったんじゃないかなと思わなくも無いけど、それを指摘する人は誰も居ないから仕方ないよね。
「……そうか」
ぽつり、と呟く声。
天啓を得たりといったような声色で、男は枕に顔を押しつけたまま言葉を紡ぐ。
「お嫁さんを探すんじゃなくて、お嫁さんにしてしまえばいいんだ……」
そうと決まれば、と。
ライナーは拳を天高く掲げて大きく叫ぶ。
「待っててね、ボクの花嫁さぁぁぁぁん!!!!」
イケメン軍人の晴れやかなる顔。
だがその切れ長の目に映る光は濁っていた。
●君が歪めしその願いを
鋼鉄内は、突然皇帝を失った。
市井の話題は崩御した皇帝に対するものでも、国が回るかどうかの不安でもなく、『誰が皇帝を殺害したか』である。
皇帝を手に掛けた者の正体は依然として不明。
だが、関心はそこではない。
「そいつに勝てば、この俺が次の皇帝様になれるんだろ?」
鋼鉄人ならではの思考。
そして、皇帝の死を切欠に、軍閥や戦士、何らかの志を持つ人々による内乱が勃発。
その中には、まるで人が変わったように残忍性や暴力性を高めている集団も居た。邪しき軍団『シャドーレギオン』と定められたそれらの人々への対応は特異運命座標へと投げられたのである。
とはいえ、今回、特異運命座標に投げ込まれた依頼ではない。
あなた方はたまたま鋼鉄内を調査中、『それ』に遭遇しただけだ。
そう、あちこちから聞こえる喧しいという怒号と、逃げ惑う女性達の悲鳴が聞こえる中で叫ぶ、『それ』に。
「お嫁さぁぁぁぁん!! ねえ、あなた! お嫁さんに、なろう?!」
「いやあぁぁぁぁ?!」
「と゛ほ゛し゛て゛ぇ゛……?!」
機械の腕を振り回し、地面を、壁を、破壊しながら手当たり次第に女性を捕まえようとする、軍帽に白スーツなアンバランススタイルなイケメンの姿がそこにあった。なんか最後ダミ声になってなかった? 気のせいだね、うん。
呆気にとられていると、イケメンは次の女性へと両手を広げて抱きつこうとしていた。
「さあ! ボクと! 熱い抱擁を!!」
「近寄らないでよ変態!!」
「変態じゃないよ!? 花婿だよ?!」
ああ、白スーツってそういう……。でもいきなり抱きつこうとするのは変態以外の何者でも無くない?
「変態」と言われたショックでか、フリーズしているイケメン。
彼を見ながら、イレギュラーズは顔を見合わせた。
「どうしようか」
「関わらないでおこう」
「最近見かけるシャドーレギオンじゃないよね、多分」
人が変わったように残忍性や暴力性を高めているという話だが、果たして目の前の男はそれに該当するのかどうか。
軍帽を被っている姿から軍人であると考えられる事、また、周りを気にせず街を破壊している様子を見るに、一応暴力性は高まっていると見なしてもいい気がしてきた。
「でも、このまま放っておくには危険じゃない?」
一人が放った意見にイレギュラーズは胸中で溜息をつく。
「仕方ないね」
これ以上被害が増える前にと、イレギュラーズは彼への説得を試みる事にするのだった。
だが気をつけろ! イレギュラーズの中に女性がいると分かった瞬間、彼は飛びかかるぞ!
「お嫁さぁぁぁぁん!!!!」
喧しい声に耳を塞ぐ周り。
果たして彼の正気を取り戻す事は出来るのか! 頑張れイレギュラーズ! 負けるなイレギュラーズ!
戦いのゴングの代わりに、崩れる瓦礫の音が響いた。
- <フルメタルバトルロア>花嫁を腕に求む完了
- GM名古里兎 握
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年08月06日 22時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
◆それはさながら赤いマントに突っ込む猛牛のようで。でも猛牛の方がまだマシだと思うんだ
嫁を求めて暴れ続ける軍人の男、ライナー・トイフェル。
女性を見れば駆け寄り、プロポーズをしては速攻で振られ、すぐに次の女性へと突撃する。
上半身の筋肉が隆起しているという事もあり、その姿は猛牛のようにも見える。
プロポーズをする傍らで破壊されていく街。
その様を見ながら、『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)は嘆息を禁じ得ず。
「押しの強いヤツってのは好きだけどよぉ」
そういう事じゃねえだろ、と。
隣では『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)が真顔で口を開く。
「話を聞かないちょっとおバカな大型犬っぽいイメージがあるね。
猛烈な勢いで尻尾を振り回している幻影が見えるよ……」
まあ、確かにあの突撃具合では大型犬を彷彿とさせなくもない。
尻尾を振りながらじゃれつく大型犬のような男……と思えば可愛いもので。いや、可愛いか?
「犬の方がまだちょっと可愛いかと思う」
『アルコ空団"路を聴く者"』アズハ(p3x009471)の率直な感想。
その間にも、男は叫ぶ。
「お嫁さんがーーーーー! 欲しいーーーー!!」
それを聞いた『蒼竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)は、耳を押さえながら嘆息混じりに呟く。
「うーむ、切実な男の叫びだな……」
同じ男として同情を寄せてしまう。
「ある意味平和な願いと言ったら良いのなぁ?」
『天真爛漫』スティア(p3x001034)の疑問も、尤もで。物騒な願いよりはまだマシ、とは思う。
しかし、だからといってこの破壊行為&女性への突撃を看過する事は出来ないのも事実。
「何とかしてやりたい所ではあるが、先ずは正気に戻って貰わねば話にならん」
「そうだね、頑張って正気に戻さないと! か弱い女性が狙われると大変だしね」
果たしてこの地でか弱い女性が居るのか、という疑問はあるが、今この場では置いておこう。
ベネディクトとスティアのやり取りを聞いていた『開墾魂!』きうりん(p3x008356)も横で頷く。
「私おっさんが泣いてるの見ると可哀想になっちゃうんだよね……是非とも幸せになって欲しいね!? まずそのはた迷惑な破壊活動をなんとかしてからね!!」
三十代とはいえ、まだ三十二歳。おっさん枠に入れないであげて。見た目もまだ若々しいし! 髭も無いし! その代わり筋肉隆々だけど!
「でも、どうやってSEKKYOUを……?」
『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)が手段を問う。というか、今説教の字が違ったりしてなかった?
なんとなく違うニュアンスを感じたものの、誰もそれには触れず。というよりも、触れる前に『疑似人格』ハンモちゃん(p3x008917)が回答したから触れられなかったというか。
「もちろん、色仕掛けだよ♪」
「えっ? 誰がするんですか?」
「それはハンモちゃんにお任せだよっ♪」
ふくよかな体躯を揺らし、愛嬌のある顔でウィンクして、ハンモちゃんは自分の口元に人差し指を当てる。
「そんなわけで、ハンモちゃんはハニートラップを仕掛ける準備の為に行ってくるね!」
スキップな足取りで何処かへと向かうハンモ。
ベネディクトがその後ろ姿を見送った後、仲間へと振り返る。
「さて、俺達は説教を行なうべきだとは思うが、どうだろうか?」
「異論無し! 俺様は真っ正面から突撃するぞ!」
「私も一緒に突撃するよ! か弱いオーラを出していくよ!」
「か弱い?」
「か弱い!」
Tethの質問に対し、自信満々に答えるきうりん。そんな自信満々なか弱さ宣言があるか。
「ならば私は抑え役として行きます」
「じゃあ、私は回復に務めよう」
スティアとイズルの言葉を受けて、残る二人――カノンとアズハも言葉を口にする。
「せ、SEKKYOUを頑張りますね!」
「殺さずに済むように努力しようと思う」
ほぼ全員分の発言を聞き終えると、ベネディクトは短い溜息をついた。
「大丈夫とは思うが……まあ、一応保険はかけておこう」
そうしている内に、また壁が崩れる音がした。
◆試みる説得。説得? いいんだよ細けぇこたぁ!
ライナーの行動により崩れていく壁。
しかし、その壁の破壊が突然出来なくなった。ライナーは知る由も無いが、壊れなくなったのはベネディクトが展開した保護結界によるものである。
どういう事だ、と彼が疑問に思った時、後ろから聞こえてきたのはTethの雄叫びだった。
「行くぜ、乙女の力ってやつを見せてやらぁ!」
振り向いた彼の目に映るのは、小柄な女性が血気盛んな様子で向かってくる姿。
その彼女の隣にも同じく小柄な女性が居る。彼女は名前を呼ぼうとして、そういえば名前をまだ知らない事に気付く。代わりに、彼に負けない声量で問いかけた。
「お嫁さんが欲しいかぁーーー!!!!!!」
「はーーーーーーい!!!!!!」
即答の声は大きく、誰もが耳を塞ぐ程。
「……よーしいい返事だ!! しかーし、そう簡単にお嫁さんが手に入ると思うなー!!
さしあたってはまず一番弱い私を倒せーぃ!!」
「うおおおおおーーーー!!!!」
熱血スポ根漫画か何かか? っていう位の熱さと声量を出し合う二人。
Tethときうりんの二人が女性であると認識した彼もまた、二人の元へ走る。
「ボクのお嫁さんに! なってくれませんかーーーー!!」
「「イヤです!!」」
こちらも即答。
Tethの追加の言葉が笑顔と共に放たれた。
「あ、俺様は女好きなんで、ごめんな☆」
「なんだってーーーー?!?!」
まさかの好みの違いにショックを受けるライナー。
そのショックで彼の速度が落ちた。
すかさずにTethの先制が入る。まずはボディへ一撃。
何となくその場に立ち止まり、きうりんがTethに告げる。
「……はい、じゃあ後よろしく!!」
「おうよ!」
大きく返事をしたTeth。距離を取った彼女の手には『Pollux』と名付けたハンドガン。その柄を握るだけに留め、それを拳のように突き出す。
「歪んだ希望なんぞに縋るな!」
続いて、『Castor』と名付けた銃の床でフックを仕掛ける。
「真の希望を思い出せッ!」
最後に、己の頭で攻撃をぶつける。名付けるならば、これぞ乙女の最終兵器たるヘッドバッド!
「歪んだ希望で――嫁さん掴めると思うなあああッ!」
全て食らうライナー。
信じられないが、これ全て神秘攻撃です。神秘ってなんだっけ?
その様子を見ながら、カノンが説得すべく口を開く。
「あなたの、この鋼鉄で培った武威は、力は何の為の物ですかっ。淑女を怖がらせる為の物ですか。物事を破壊する為の物ですか。違うでしょう!
軍人として、人の為国の為の、淑女を含む力無き民の為の物なのではないんですか!」
だが、その言葉は届いても、正気に戻るには至らぬようだ。もう少し彼を揺さぶらなければ。
アズハが離れた位置よりライフルを構え、Tethに当たらぬように気をつけてその銃口から火を噴く。
体躯に入る一撃。だが、まだ膝をつくには至らず。
回復の必要はまだ無いと判断したイズルからも攻撃が飛ぶ。それは扇状に展開され、ライナーを捉える。
決して殺しはしないその攻撃は、一瞬だけ動きを止めた。
そして更に動きを怒りの思考で鈍らせるべく、スティアの近接攻撃が入る。季節外れの桜の花びらが舞う。
続くベネディクトによる攻撃は刀身が閃き、連続した攻撃を繰り出すものであった。ライナーの体に走る傷。
と、そこへふわりと漂う香り。香り?
ライナーの鼻腔を擽ったそれにつられて彼は振り返る。
その瞬間、ハンモの胸元に捕まるライナー。そしてハンモの衣類が全て解かれた。
その光景に対し、咄嗟にカノンとスティア、きうりんの前に移動して視界と耳を塞ぐベネディクトとアズハとイズル。
「えっ、えっ?」
「なんで目隠しを?」
「っていうか、耳も塞がれてるんだけど!?」
困惑の声を上げる三人に対し、ベネディクトを筆頭とする三人は異口同音に言う。
「見てはいけない、聞いてはいけない、いいね?」
「え? ……あ、はい」
圧に押されて、暫くそのままになる三人。
Tethだけが、ハンモとライナーの動きを目で追っていた。
そのまま路地裏へと連れて行かれるライナー。
ハンモが全裸であり、人気の無い場所に連れて行った時点でTethには何となく理解が出来ていた。知りたくなかった理解である。
聞こえてきたえげつない音に対し、天を仰ぐTeth。
「……これで一件落着、にならないかな」
残念ながら、ならないんだ。もう少しだけ続くんじゃ。
◆終わり良ければ全てよしって言うけれど、これはどっちかというと「ヨシ!」案件じゃあない?
仲間達のSEKKYOU……もとい、説教を受けて、ようやく正気を取り戻したライナー・トイフェル。
なんかちょっとやつれてる気がしてるけど、体の傷は大体イズルが治してくれたから問題無いね。なお、やつれさせた原因である張本人ことハンモはお肌がツヤツヤだ。なんでツヤツヤなのかは、聞かない方が幸せですよ、ええ。
正気を取り戻したという事で、先に瓦礫の片付けに勤しむイレギュラーズとライナー。その間に、ライナーへの偏見や誤解を出さないようにと、スティアが周囲に説明をしていった。いくら歪んだ願いを持った結果だとしても、一般人はそれを知らないのだから説明は大事だ。
大体の作業を終えた後、ベネディクトの提案により、無事な飲食店へとライナーを連れて行く事となった。
ここからはSEKKYOU(物理)ではなく、説教(言葉)の時間だ。
テーブルをくっつけて席を確保。そして中央に位置する場所にライナーを座らせ、イレギュラーズは彼を囲むようにして座る。
「それでは、これよりそちらの話を聞こう」
ベネディクトによる進行が始まり、まずはライナーへと話を促す。
正気に戻った彼は、先程までの勢いが嘘のように大人しい。どこか居心地悪そうにしつつも、軍人らしくハッキリとした口調でイレギュラーズに向けて口を開く。
「その前に、お礼を言わせてほしい! この度は、ボクの所業を止めてくれた事、感謝する!」
テーブルに頭を打ち付けかねない勢いで下げるライナー。
かろうじてぶつけなかった頭を上げた彼に、アズハが問う。
「そもそも、何故お嫁さんが欲しいと?」
「恥ずかしながら、ボクは今年で三十二歳になる。見ての通り独身だよ。この歳になると、殺風景な部屋に帰ってきた時の寂しさが殊更に堪えて……」
「なるほど……」
同じ男性として、部屋に帰ってきたら独りなのが寂しい、という気持ちは分からなくもない。おそらくは女性でも似たような経験をする者は居るだろうが。
ライナーの理由を聞いて、Tethが首を傾げる。
「戦った感じ、強かったよお前」
「えっ、いやぁ、そう言われると嬉しいね!」
「いやまじ。お前も鋼鉄なら、男らしくその強さを誇示すりゃモテるんじゃねーの?」
「えっ?!」
「えっ、て何?!」
まさか思いつかなかったのか?! 嘘だろ!?
驚愕の表情を浮かべるTethと似たような表情がイレギュラーズの数名にも浮かぶ。
こほん、とベネディクトが咳払いを一つ。
気を取り直し、イズルがライナーに向けて案を一つ差し出す。
「キミの声が大きいのはまあ、現場上がりの軍人だとある程度仕方がない部分もある。
つまり、同僚から探した方がまだまとまり易いのでは」
「同僚……。確かに、そういう対象とは見ていなかったかもしれない!」
「うむうむ。ならば、その為には食堂のおばちゃんや上司と親しくなろう。
仲人が趣味という人種が必ずいるからね。
あとは、まあ、他人に求めてばかりでは相手も疲れる。その辺も気をつけるといい」
どの世界でもそういう人種は居るものだ。リアルでも居るのだから、この『ネクスト』の世界にも居るはずだ。
ライナーはしきりに納得だと言わんばかりに頷いている。
イズルの提案に対し、アズハやベネディクトも「そうだな」と頷く。
「街中で出会いを探すのもいいけど、相手を探す者同士を結びつける場もある。
そう、お見合いだ。出会いを整えてくれる場を利用するのも一つの手だよ」
「お前は軍人なのだろう? 見合いを整えてくれる伝手の一つや二つくらいはあったりしないのか」
「友人が一度セッティングしてくれたんだが、その場でプロポーズをしたら断られたんだ」
「その場ですぐにプロポーズする奴がいるか」
思わずツッコミ兼お叱りになったベネディクト。思わず呆れた溜息も零れるというものである。
ライナーの肩をぽん、と叩いて、きうりんが口を開く。
「まぁ、なんだろ、あれだよ。そんなキミを好きになってくれる人はきっといるからさ。
向こうから運命を感じてくれるように、まずは自分磨いて行こうぜ!」
きうりんさん、それ、何の解決策にもなってなくない?
自分磨きの例として、スティアが小首を傾げつつ助言をする。
「とりあえず喧しい所とか、浮き沈みが激しい所はなんとかした方が良さそう。
後は細かい気配りを忘れずかな?」
「出来るかなぁ……」
「小さなことからコツコツが大事だよ。……たぶん!」
せめてそこは自信満々に言ってあげて。なんかライナーさんの顔が沈んでいるし。
斜め前の席に座っていたカノンが勢いよく立ち上がり、まくし立てる。
「ライナーさん! 人々を守り、騒動を収め、民の不安を取り除き笑顔で居て貰う事が貴方の本懐なのではないんですか!」
「えっ、あっ、はい!」
「結婚とは、一方的ではなく、双方向の想いがあってこその物。それは間違いありません。そうして、『お互いに』笑顔で笑い合う事がスタートラインでしょう!」
正論をぶつけられた衝撃で、ライナーはハッとした顔をする。先程スティアから言われた時の表情とは打って変わった、明るさを伴うものだ。
「な、なるほど……!」
「私も偉そうな事を言えた口ではありませんが……」
「いや、軍人としての気持ちを思い出させてくれたんだよ! ありがとう! どうですか、是非ボクのお嫁さんになっ、ぶっ!」
「だからその速攻で突撃するのをやめろって話だろ?!」
Tethによる後頭部へのツッコミ手刀を受けて、テーブルにキスをしたライナー。
溜息を零す数名のイレギュラーズ。
イズルが、「あ、思いついた」という表情を浮かべると、ライナーにその内容を伝えた。
「キミはお嫁さんが欲しいと言ったね? だが、見つからない」
「うん、そうだよ?」
「つまりだ、お嫁さんが見つからないなら、キミがお嫁さんになればいい。
キミが婿と嫁、どちらでも担えるようになれば、出会いのチャンスは単純に二倍になるよ?」
「いやいやいやいや」
思わずライナーだけでなくイレギュラーズ数名からも「それはちょっと」的なツッコミが入る。
「流石にそれはちょっと……」
今まで口を閉じていたハンモが、ライナーの後ろに回ってその肩をぽんと掴んだ。ライナーが思わず身構えたのは、先程ハンモから受けた衝撃(意味深)がまだ残っているせいか。
優しい声音でハンモは語りかける。
「みんながキミと同じ速さで愛し合えるわけじゃないんだ、好きになってほしいならみんながキミを好きになるまで待ってあげてほしいな。キミはこんなにかわいいんだから待てもできるならモテるぞ☆」
その「かわいい」はどっちの意味ですかせんせー。
聞きたかったけど聞けない。青ざめていくライナー。
「自分磨きの方を頑張らせていただきます!!!!」
これまでにない声量で宣言した彼に対し、イレギュラーズは耳を塞ぎつつ「頑張れ……」とエールを送るのだった。
その後、イレギュラーズが帰った後も何かに怯えるような様子をするライナーが居た、というのは聞こえてきた噂程度の話。
今後彼が無事にお嫁さんを得られるようになるのかは、彼次第である。
「ところで、結局ライナーさんに何をされたんですか?」
カノンからハンモにした質問の答えは、仲間達が阻止した事で永久に不明のままとなっている。
知らない方が幸せって事もあるんですよ、お嬢さん。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
いやはや、プレイングをお預かりした時にはどうなる事かと思いましたが、どうにかなりましたね!
ライナーに幸あれ!多分いい方向に行ってたらまた出るかもしれませんね。多分?
GMコメント
フルメタルバトルロアでシリアスがある中、こんなコメディもいいんじゃない? そんな思いでお届けしました。
そんな訳で、今回はこのライナーさんじゅうにさいを説得するシナリオとなります。
説得を説得(暴力)とするか説得(意味深)にするかは自由です。ええ。説得であればいいのです! ただし、人目があるから過激な事は気をつけてね!
●成功条件
ライナー・トイフェルを説得し、正気を取り戻させる事
●ライナー・トイフェル
鋼鉄の軍人。黙っていればイケメン。喧しい声と感情のジェットコースターが玉に瑕。それが無ければ普通にモテるはずな残念系筋肉イケメン。絶対隠密行動とか向いてないよこの人。
ただいまお嫁さん募集中の三十二歳。
基本的に徒手空拳。必要とあれば周囲に落ちている瓦礫を投げつけたり盾にしたりするなどの知恵は回ります。
右腕は機械です。主に腕力パワーアップ用で、飛び道具は内蔵されていません。大体左腕の三倍の威力で攻撃してきます。
左腕は軍人としては一般的なステータスです。一般人よりはやや高めの攻撃力を持ちます。
戦いは得意な方ではありますが、暴走中の為、力方面にステータスを振ってるので、通常の三倍程の威力があります。
暴走している為、その分知能が若干低めになっているので、多分舌先三寸で丸め込める可能性もあります。
また、女性を見つけると優先的に向かい、お嫁さんにしようと誘い(物理)をかけます。
『WISH』:お嫁さんが欲しい
『DARK†WISH』:気に入った人をお嫁さんにしてしまおう
●戦闘場所
街中。店が建ち並ぶ大通り。
ライナーの暴走のせいで若干崩れている建物があったりするので、瓦礫があちこちに落ちてます。足下注意です。
遠巻きに様子を窺う住民や通行人も居るので、人目がある事にご注意を。
●情報精度
A
想定外の事は起こらないと思います。だってこれコメディだもの。
※WISH&DARK†WISHに関して
オープニングに記載された『WISH』および『DARK†WISH』へ、プレイングにて心情的アプローチを加えた場合、判定が有利になることがあります。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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