PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<濃々淡々・神ノ業>無力、故に諦観す

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●動揺
「鉄人さん……凛太郎さん、どうして、あいつらに」
「解っておる。まさか儂とて、凛太郎を失うとは思っておらんかった」
 明るく元気な凛太郎。ヒトの仲間につくのならば、あくまで敵だと。
 すずは怯えた顔を見せた。
「……すずは、間違っているのでしょうか」
「解らぬ。だが、彼らにも悪意はないのじゃろうな」
「鉄人さん……?」
 朗らかに笑う鉄人の姿にすずは苛立ちを覚えた。少なくとも、彼ら彼女らが外見の『まま』の関係であったなら、鉄人はすずに寄り添うこともなかっただろう。鉄人は幼子は『苦手』なのだ。
「わたし。やっぱり、あいつら『嫌い』です」
「……儂に暴れろと?」
「だって、すずは『か弱い女の子』ですから」
「儂よりも長生きの癖に、少女を気取るか」
「そうしなきゃ、凛太郎みたいな子を煽るには足りないでしょう」
「……すず、お前は」
「うん。怒ってる。ずっとずっと、怒ってる。大切にされるはずだったのに、粗末に扱われたこと、ずっと」
「……儂が今更問うことでもないが。鳴らねば、鈴は其れ迄であるのだということを、忘れてはおらぬじゃろうな?」
「……さあ。すずには、わかりません」
 ちりんちりん。
 鈴の音は鳴り止まず。胸騒ぎもなりを潜めず。
「鉄人。お願いできますか」
「うぬの頼みならば、せねばなるまい。違うか?」
「――さぁ、どうでしょう」
 嵐が、迫っていた。


「手紙、かい?」
 瞬きしたのは『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ (p3p008566)。絢曰く、鉄人からの手紙なのだという。
「おれが貰っても、仕方ないだろう? ってことで、昨日の依頼の皆を呼んだんだけど、」
「それより、手紙をだな」
「あ、うん、ちょっと待ってね……っと、はい」
『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル (p3p008599)と『名を与えし者』恋屍・愛無 (p3p007296)はそわそわとその手紙を今か今かと待ちわびる。説得こそできなかったが、悪くはない反応だった。
 絢が手紙を取り出すと同時にアーマデルがそれをひったくり封を破り開き、愛無はその文字を目で追った。
 きっと彼にも何か思惑があるのだろう。そう考えずにはいられなかった。だから、知りたかった。
「すずちゃんからは?」
『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ (p3p009805)は絢の方を見る。が。
「あの子からは何も連絡が無くてね。鉄人さんが一番年上かと思うから、そこに一緒に書いてあるんじゃないかな、って」
「……そうだと、いいのですが」
『星の救済』小金井・正純 (p3p008000)は胸にちりりと焦げた感情があるのを自覚していた。あの日逃げたすずの様子から、きっと一筋縄ではいかないだろうと踏んでいた。あの日の傷は、もう、癒えていた。
「生か、死か」
「え――?」
「って、書いてある。理由は、解らない。けど」
「命懸けということでしょうか……すずさんについては」
「何も書いてない」
「っ……」
「絢さま、絢さま……」
 不安そうな顔をした『うさぎのながみみ』ネーヴェ (p3p007199)に絢は頷いた。
「行こう、皆で」

NMコメント

 混沌世界において、年齢は当てになりませんね。
 どうも、染です。リクエスト有難う御座いました。
 地獄味を少々プラス、それから不安も。シリーズものを想定しておりますので、事件色は強めに。
 お楽しみいただけますと、幸いです。

●目的
 ・鉄人の撃破、或いは説得
 ・すず、凛太郎の発見

 これらの内どれか一つを達成すれば成功です。ライブノベルの性質上、依頼は必ず成功します。
 撃破が一番簡単な道です。説得は難しいものと考えてください。
 後述しますが、鉄人というひとりの男の思考は、幾年、幾百年の考え方を経て凝り固まっています。
 冒険には少々の壁も必要でしょう。超えるか、迂回するかは皆さんで決めてください。

●鉄人(てつひと)
 厳格な老人の人格。戦闘時はCTアタッカー。Lv60程度。
 皆さん、特にアーマデルさん、愛無さんには友好的です。が、人間に対しては信頼の念を寄せることはできないようです。
 今回は何らかの『術』を施されており、戦闘は避けられないでしょう。

 一閃:物中扇:出血、流血、飛
 銀閃:物中貫、出血、流血、万能、ダメージ極大
 《血札》鈴刻:神遠域、毒、猛毒、封印、反動150
 激ノ型:物近単、防無、反動300
 ???:使用に10ターン程の充填が必要。逃走或いは皆さんから戦闘の意識を逸らすために使用されます。
     なお、此の技は使用後3ターンで死亡します。

●凛太郎、すず
 消息不明です。
 探索行動をかけることもできますが、その場合は鉄人の攻撃力が若干向上します。

 二人共同じ敷地に居ることでしょうから、探索行動をかけるのも問題はありません。

●ロケーション
 ・梔子神社
  →梔子の香りにより匂いを辿ることができません。また、人気もありません。砂利道が続くため音が響きます。故に見つけやすいですが見つかりやすいです。
 アーマデルさん、愛無さんは以前訪れているため土地勘が良く効くことでしょう。
 お二人のうち片方、もしくはお二人共がすず、凛太郎の捜索に加わった場合、『前回はなかった建物』があることに気付くでしょう。
 つまり、お二人のどちらかがいればその建物への探索、ならびにすずと凛太郎の発見が可能になります。
 探索には人手が多ければ多い程、『後の出来事への対応が柔軟に可能です』。
 正純さん、キルシェさんはすずの声を聞き取る、足跡を辿る技術、前回集められていた武器を発見する能力が、
 ヴェルグリーズさん、ネーヴェさん、絢は凛太郎の声を聞き取る、足跡を探す技術が向上しています。


●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●NPC
 今回のシナリオに同行するNPCです。

・絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 飴屋を営む妖で、化け猫。温厚で聞き上手です。
 Lv50程度のヒーラー。
 《癒陣》序:HP回復500
 《癒陣》破:AP回復150、BS回復75、治癒、識別
 《癒陣》急:敵、またはそれに類するものに対してHPを回復することが出来ます

 以上となります。健闘をお祈りしております。

  • <濃々淡々・神ノ業>無力、故に諦観す完了
  • NM名
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月25日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
恋屍・愛無(p3p007296)
終焉の獣
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

リプレイ

 ――人間風情が、殺してやろうか。

●「くだらない」
(さて。かくも厄介な事になっているが。是非も無しか)
 しかして彼ら――鈴の霊である二人は人に仇なし復讐した後は如何するのだろうか。狐狸山精の類ならば、人との縁など無くとも生きていくことが出来るだろう。だが、鉄人やすずは器物霊。人との縁を断ち切って生きていけるモノでは、きっと、無い。
「……さて鉄人君も、戻るまで早まった真似をしてくれるなよ」
『名を与えし者』恋屍・愛無(p3p007296)は駆ける。たとえその先が悲劇だとしても。進まなければ、解らないから。
 刃を交え言葉を交わし、お互いが生きていた。であるならば、その縁を尊んだところで何ら不思議なことはない。只また言葉を交わしたいだけなのだ。
(すずちゃんさん説得出来なかったから、凛太郎お兄さんと何かあったのかな)
『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)は不安げに境内を歩く。酷く甘ったるい梔子の香りが鼻を衝く。溜息を洩らせば漏らすほどに肺に満ちるその香りに、キルシェは思わず首を横に振るった。
(――だとしたら、ルシェはすずちゃんさんの思い聞いて、今度こそ説得しなきゃいけないの。だから、)
「ルシェは、すずちゃんさんたち探します!」
「――今、行方が知れない、のは。…嫌な予感が、します」
『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)はその手を小さく振るわせて。現実になどならなければいいのだ。こんな不安。けれど、拭うことは出来そうになかった。
 震えるネーヴェの肩をぽん、と叩き。前を見据えた『星の救済』小金井・正純(p3p008000)は、愛無を、キルシェを。それから、ネーヴェを見つめて、頷いた。
(見た目が幼子とはいえ、その精神性は誰よりも老獪……いえ、これは憶測に過ぎませんね)
「……とりあえず、今回の目的を果たしましょう」
 二手に分かれた。その理由は、『全員を救う』ため。強欲だろうが、悲しかろうが、何だろうが。話し合いの末に決められた意志がそれであるならば、その手で掴み取るまでだ。
 探し続ける。
 どこまでも。
 光溢れる未来の為に。

●「此の世界は、美しいだろう?」
「さて、どう出てくるか…」
「わからない。ただ、彼方は殺す気で、死ぬ気で来るだろうな」
『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)と『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)、それから絢は鉄人の元へと足を進めた。すべては、争いを終えるために。
「……ふむ。来たのか、ヒトの子よ」
 鉄人はただ、其処に在った。最期の戦いだと言うように。美しい衣を纏い、刀を磨き。梔子が咲き誇るその神社の奥で、三人を待っていた。
「しつこいくらいに、言わせてもらおう。物を粗末に扱う人ばかりでは無いんだ。
 ただ、御同輩。それはきっとキミは既に知っていて、それでも恨めしいものなんだろう」
「恨めしい? 否、違うな。『儂は恨めしくなど思ってはおらぬ』。そこの童ならば、解るのではないか?」
「……理解に及ぶかは解らない。それが、正しいかも」
「構わん、言うてみろ」
「……『そうあるように仕組まれている』」
「はは、期待通りじゃのう。聡い童(わらべ)は……好かん」
「……言わせておいてか」
 語らずともわかる本気の姿。その在り様。彼が本当に『年長者』であったのならば、終結は恐らく早かった。否、このようなことが起きることもなかった。
「まさか、」
「……すずは、儂より先に生まれての。見目も愛らしいじゃろうて、屹度主らは気付くこともなかったのだろうな」

『いたい、いたいいいい、ああ、っあ、ぁ、が、ぁっ、うぁあああああ!!!!!!!!!』
「姉さまが、ねえさまがまもってあげるから。大丈夫、そのような顔をするでない」
『つぎはわたしなの? いや、いやよそんなの、だって、わたしまだ、まだせかいをみていないのに』
「行くな、行くな、鈴音――」

「茶で汚した? 吹けばまた使えるだろうに――我が妹は、其のような些細事で――?」

「すずは、妹を失っているのだ。人間が粗末に扱ったせいでな。故に、その力を……付喪神としての力を、人間たちへ奮うことを、躊躇いはしなかったのだ」
「……不毛だな」
「儂もそう思うておる。が、」
 鉄人は、その身体を包む衣を脱ぎ捨てた。上半身が露になり、赤く脈打つ刻印が痛々しく光る。
「『その命をもって敵を排除せよ』と命じられておるのでな……」

「悪いな、善き理解者(とも)よ」

「それでも俺はキミを止めるよ。止めて、それでも諦めきれないなら何度だって止める。止めて見せる。
 俺はキミを止めたい、でもキミの気持ちも分かる。どちらも本音だからこその結論だ」
 刀が抜かれた。刀を用いて舞った鉄人は、続けて、刃を握りしめて、一直線にヴェルグリーズめがけて駆ける。老体に見せかけて体力は若人のそれであるのだろう、ヴェルグリーズに降り注いだ刃は重く、そして。
「ッ、強い……!!」
「生か、死かというならば、」
 刹那の悪夢が降り注ぐ。仲間を、友を、愛した人を失った悲しみが。後戻りはできないのだと、総てを諦めた悲しみが、鉄人を襲う。
「殺さず抑えて見せれば、話位は聞いてくれような――!?」
「はっ、儂に『其れが出来るなら』、苦労などしておらぬのだ――!!!」
 停滞を。緩やかな幕引きを。その命までは奪うつもりではないのだと告げたとて、相手は本気。刀を押さえたところで蹴りが、足をかけたとて殴りが飛んでくる。確実に息の音を止めるように命じられているのだろう、無茶な動きをしてでも、鉄人は二人を攻撃し続けた。
 いくら疲弊しようと。いくら傷付こうと。殺す気でいかなければ、屹度。
「はぁッ――――!!!!」
「っ、まずい、二人共! あれを止めるんだ!!!」
 癒しの術を施していた絢が叫ぶ。悲鳴にも近い。絢は即座に鉄人を癒す。それが『禁忌』であるとでも言うように。
「アーマデル殿!」
「ああ」
 蛇腹剣が。精霊剣が、鉄人の刀を弾こうと、伸びる。伸びる。

「其れで良い、若人よ」

 禁忌たりえる技は、その命が世界の法則を書き換えようとするから、なのだろう。意識を見事に逸らされた三人は、彼の思惑を知ることになる。『無理やり貫かされた』その剣は、鉄人の心臓を大きく裂いた。
「――――鉄人殿!!!!」
「何を……何をした。俺達に、何を!」
 頽れる。細い体が。赤く染まる。地面が。
「……何、斬り合いで儂が『負けた』だけのことよ」
 負けなければ、殺してしまうから。
 身体に刻まれた刻印は、呪詛にも洗脳にも似た祝福(のろい)。
「すずは、うぬらを本気で殺そうとしておる」
「絢殿、治癒を……!」
「嗚呼、解ってる。だからもう、鉄人、君は……」
「うぬも妖であるならば、解っておるだろう。悠久の代償は、刹那であると」
「……」
「……ならば、聞こう」
「嗚呼。すずは、凛太郎を――」
 戦慄が走る。青ざめていく顔色。

 ちりん。

 鈴が鳴る。
 やがて、鉄人の姿は消え。其処に残ったのは、美しい鈍色の、砕けた鈴のみ。

●決意
「……此れは」
「怪ちゃん?」
「此の建造物は、以前足を踏み入れた時には、無かった」
「……であれば、此処が怪しいと踏んで良さそうですね」
「行き、ましょう」
 正純が扉に手をかける。頷き示し、そっと扉を開ける。
 ちりん。
 ちりん。
 ちりん。
 ちりん。
 一定のリズムではない。言葉をするように、すずは鳴り響く。やがて、その鈴の音が、不快な音に変わっていくのも、その肌で感じて。
「……あちらに、以前使われていた武器を見受けました。私は回収を行います」
「であれば、僕も。探索面では、僕は二人に対する知識が少ない」
「では、私たちは、二人を、探しましょう」
「絶対に見つけるから、先に行っておくわね!」
「ええ。すぐ追いかけます」

「少なくとも、害意は潰しておくべきでしょうかね」
「嗚呼、同感だ」
 使えぬようにテープで巻いておく。破壊はしない。それが付喪神であったなら、と。考えなくは、なかったから。
「すずさんが凛太郎さんに何をなさるおつもりなのかはわかりませんが、あの時の雰囲気からして、尋常ではない可能性はあるでしょう」
「そうだな。無事であれば良いのだが、そうでない可能性が否定できない」
 回収を終える。


 と、同時。正純と愛無は、悲鳴を聞いた。
 ネーヴェと、キルシェの悲鳴を。

●狡猾
 ネーヴェとキルシェには確信に近いものがあった。彼らの音(こえ)を聞いているからこそ、もう聞き違う筈はないのだ。
 故に、辿りつくのが早かった。
 最奥の部屋。襖を開けたネーヴェとキルシェは、見た。
 目も当てられない程に痛めつけられた凛太郎が、すずに、首を絞められている姿を。

「お前。ずっとずっと、使えない儘だったから、殺してあげる」
「人間なんかに肩入れして。そんなだから、奪われるの」
「じゃあね、さよなら。戦えるだけマシだと思ってたけど、お前も鉄人も使えないわ」

「っ、逃げろ、二人共――――!!!」

 ぱりん。

 砕けたような音がした。
 そこに凛太郎の姿は無かった。

「あとは、お前たちを殺せば、おしまいね」
 溌剌と笑う少女は。
 ネーヴェとキルシェに、手を伸ばした。

「っ、嫌――――!!!!」

成否

成功

状態異常

なし

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