PandoraPartyProject

シナリオ詳細

化生ノ美

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●美醜紙一重
美しくなりたい。
女が最初にそう思ったのは今の伴侶の為だった。
彼の心を射止める為に着飾り、彼の好む女を演じた。その行為にいくばくかの偽りはあっても、その好意はホンモノだったのだと覚えている。
永遠の愛を誓うまで……否、誓ってからも、塗り固めた嘘はいつの間にやらホンモノとかわりなくなり、どこまでが嘘だったか、なんて忘れてしまった。

美しくなりたい。
女が二度目にそう思ったきっかけは覚えていない。……果たして、美しくなったから新しい愛を求めたのか、愛というやつの言葉の意味を『自分の中で』書き換えたが故に美を求めたのか。
兎にも角にも。
その『化粧』を纏った女は見違えるまでに美しくなった。
或いは『旦那子供ですらも別人と見まごう』美しさを得た彼女が、強い満足感を得ぬ筈もなく。
もっと、もっと美しく。
求めた果てに与えられたモノの代価を、彼女は愛する者を手にかけるその時まで気づかないままだった。

●氾濫する『化生』
「世の中、斯くも書いたり……と言うくらい『女性』と『変化』と言うやつは強く結びついているように思う。『化粧』と『化生』が同じ発音というのもなかなか洒落が効いている。いや、本当にさ。誤解を恐れずに言うけど、女ほど恐ろしい生き物を俺は知らないんだ」
『博愛声義』垂水 公直(p3n000021)は経験則でね、とおどけてみせた。女性陣の厳しい視線に肩をすくめると、言葉を続ける。
「とある町でね、一人の女が行方不明になった。旦那子供に行き先は告げず。数日後、一人の男が惨殺体で発見された。現場の様子から見て、行方不明の女とふりんかんけいにあったみたいだな。で、なんだ。その日から今日まで、繁華街で毎日一人、男が死んでる。何れも人がやったとは思えない手口でね。下手人は明らかに行方不明の女なんだが、さてどうやったか」
公直はそういうと、一枚の写真を取り出す。少し形が歪だが、取り立てた見るべきはその程度……の、ファンデーションのようなもの。
「『人喰い化粧』、なんて呼ばれる化粧セットがあってね。そのファンデーションが問題のブツのうち一つらしい。見違える……というか別物みたいな美しさを与える代わりに、使えば使うほど精神性や肉体を蝕み、挙句人外に変えてしまうという曰く付きのブツさ。彼女がそれを持ってるのは、間違いない」
目撃証言ってやつだよ、と話を続ける彼は、今回の依頼目的がファンデーションの確保と女(が成り果てた何か)の殺害にあることをイレギュラーズに伝える。
「見つかるか、って? そりゃ、『明らかに顔がいいだけのカオスシードからかけ離れた肉体の異形』が繁華街を闊歩してりゃ君達は見抜けるだろうさ。問題は、繁華街の連中はその顔に見とれて異常に気づかないところかな」
顔の綺麗は七難隠すんだとさ、はーヤダヤダ。
不機嫌そうにそう続けた彼の……普段に増してアンニュイな言動に疑問を持ったイレギュラーズの問いに、心底嫌そうに彼は応じた。
「生憎と俺はバツイチなんでね。間男と添い遂げるのに邪魔だからって子供を集中治療室送りにするような生き物がいるんだ、こんな案件面白みの一つも感じないね、俺は」

GMコメント

 さらっとスゲーことを公直が口にしてる気がしますが気にしてはいけない。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●依頼目的
・『化生の白粉』の回収
・『美獣』の撃破

●美獣
 カオスシードの女性が『化生の白粉』を常用し続けた結果として本来の姿から大きくかけ離れた変貌を遂げたモノ。
 腕は背中から生えたものを含め4本、手足は鋭い鉤爪が生え口には乱杭歯が生えているが、それでも顔がよく、固有能力のせいで『外見が異常である』ことを一般人に悟らせない能力を持つ。基本行動2回。
・獣的絶対美(パッシブ・特レ・特殊 戦闘範囲内の全対象に適用。2ターンに1回、特殊抵抗判定に失敗した対象は『魅了』を被る)
・乱爪跋(近物複・連・出血)
・噛み切り(至物単・高CT・流血・H/A回復)
・美唱(超遠神ラ・恍惚・Mアタック中)
・獣性解放(自付・ダメージ小・棘・攻撃力増)

●『化生の白粉』
 『人喰い化粧』と呼ばれる化粧品のうちのファンデーション。歪なコンパクトに異様な文様……と普通なら手に取らないものだが、感応を示す相手には極めて魅力的に見えるらしい。
 常用することで怪物化が進行し、愛情の対象になりうる相手を殺さずにはいられなくなるという危険なブツ。

●戦場
 繁華街周辺。
 一般人(特に男性)が戦場に巻き込まれた場合、『獣的絶対美』の対象となり、美獣を守ろうとします。言ってしまえば肉の盾になります。

 色々考えることは多い相手ですが、情報確度はA。恐れず突っ込むが吉です。

  • 化生ノ美完了
  • GM名三白累
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月01日 21時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ナーガ(p3p000225)
『アイ』する決別
ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)
大悪食
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)
救いの翼
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

リプレイ

●死に至る蜜月
「わざわざ、ギルドの者が訪ねて来たかと思えば……殺人鬼、とはまた」
「最近この辺りで物騒な事件が起きてるのは知ってる?」
 いかにも、といった風情の領主を前に、『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)はずいと身を乗り出して問いかける。荒事を好まない……むしろ『認めようとしない』空気をあからさまに醸し出す男の表情は癪だが、認めさせねば意味はない。まずは相手がどこまで話のわかる人間なのか、を知りたいというのは当然か。
「殺人鬼は一般人を積極的に戦闘に巻き込み、盾として使うでしょう。そうなれば、我々も市民への被害を出さない事をお約束できない」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は周到に根回しを行い、まずこの会談を取り付けた。そのうえで、イレギュラーズとして事件を収めること、そのために十分な便宜をはかるよう交渉に出向いたのだ。
「繁華街を出歩かぬように手を回してもらう……そうでなくても、せめてこの街の地図をお借りしたい。可能でしょうか」
 『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は寛治らの言葉にたじろぐ領主に副案という名目の逃げ道を与えつつ、最低限の協力を要求する。避難誘導や外出制限は『この街に問題がある』と認めるに等しく、応じにくい面があるのは間違いない。地図程度、用意できないということはあるまい。彼女の言葉には、否定できる要素がないのだ。
「それは……その程度なら、すぐに用意を……」
 領主はそれでも不肖不肖という態度ではあったが、地図の記された羊皮紙をすぐにイレギュラーズへと差し出した。どこか落ち着かない様子の彼は、こうも続ける。
「しかし、その。不幸な行き違いや見当違いの見誤りによる『不幸な事故』が続いているのはわたくし共としても不本意ですのでな、怪しい者を見かければ注意をするよう、我々も市民に呼びかけている次第で、その」
「ここで的確な判断を下し人的被害を抑えれば、貴方の声望は更に高まる。ローレットも後押ししましょう……後手に回って死傷者が出たら『誰の責任』になるか、おわかりですね?」
 寛治はなおも異常事態と認めようとしない領主に念押しするように言葉を重ねる。『幻想』における一般論としては、殺人だろうが天変地異だろうが極論、領主が隠蔽するのはは不可能ではなかろう。だが、ローレットが嗅ぎつけたとなれば別だ。国王と諸貴族の覚えめでたい彼らを邪険にして、いきおい任務失敗を誘発でもすれば、彼の言葉が現実になろう。
 決断を待つイレギュラーズを前に、領主は顔をしかめ、それから諦めるように頭を垂れた。

「それにしても、化粧『セット』か」
 『応報の翼』ミニュイ・ラ・シュエット(p3p002537)は情報屋から聞き出した話に覚えた違和感を口にしつつ、周囲に敵の気配が無いかを探る。敵対者を感知する能力は、半径100メートル圏内に『自分を狙う』相手がいないことを示した。彼女を敵として認識していなければ、反応も無いだろう。潜伏状態であれば尚更。
「まだまだ『魔が差した』連中が掘り出されそうっすねえ。やーだやだ。……それにつけても、げに恐ろしきは人の心よ」
 『双色の血玉髄』ヴェノム・カーネイジ(p3p000285)はといえば、今しがた顔を合わせた自警団の面々との会話を思い出しつつ、小さく息を吐く。
 結果から言えば上首尾。有意な交渉ができる面々が領主のもとに向かった故に完璧とは言えまいが、最低限の警戒を求めて、受け容れられたのであれば悪くない。
 彼女ら2人と領主対応組を除いても、個々に捜査と声がけを並行して行っている。イレギュラーズが揃って危険性を訴える状況、数日来の事件の頻発。一般人の視点からしても、薄々感じつつ具体的な姿を見せなかった『異常』にイレギュラーズが光を当てたとなれば、それに従わぬ理由はない。
「スゴくカオのいいカオスシードをみなかった?」
「……顔がいい、っちゃずいぶんとざっくりしてんなあ嬢ちゃん。コレ喰うかい?」
 一方、『アイのミカエラ』ナーガ(p3p000225)は断片的ながら理解した情報をもとに聞き込みを行っていた。その問いは大雑把といって差し支えなく、避難誘導や自主的な戒厳令と比べれば効果は薄かったが、それでも幾つかの情報は手に入った。『美獣』となった女への口さがない噂も含め、価値はそう高くない。その中で、『夜ごとに顔立ちこそ違えど目を剥くような美人が現れ、男を漁っている』という情報が混じっていたのは見逃せない話だった。
 同じ日の証言でも目撃者によって外見の証言がまちまちなのは、相手の求める姿を見せている、からだろうか。
(ナーちゃんもアイはスキだから、オハナシがアイそうだけど……)
 ナーガにとっての『アイ』とは『害意の形をした善意』である。アイすることで他人に幸福を与えることが彼女の思想である。好意の表現方法がアイであるナーガと、好意と殺意を取り違えた美獣とが果たして理解し合えるのかは……彼女らのみが知るべき話であろう。

 日が高いうちに行動を開始した甲斐あって、日没を待たずして繁華街とその周辺に人の気配は残されていなかった。
 好奇心に逸る闖入者でも居れば事態は悪化していただろうが、幸いにして、人々はそこまで愚かではなかったようだ。
 黄昏時に誘われたようにゆっくりと現れた異形の姿は、遠目に見ても明らかに異常であると分かるだろう。
「あんな異形になってまで、美しさを求めてしまうだなんて……」
 『誓いは輝く剣に』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は、想像以上におぞましい姿をした美獣を前に言葉を失う。
 美を求めることは、女性であれば大なり小なり、形を変えても共通して持ちうる理想である。だが、美意識の定義を間違えてしまえばたちまちのうちに、目にするのも悍ましい何者かに変貌しうるのである。
「内面から滲み出る『生きる事自体の美しさ』が欠けていれば、それは所詮鍍金(メッキ)です」
 飾り立てることを目的としたばかりに、自らの生き様を見失ってしまった……『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)の視界に映った美獣は、そんな哀れな存在の成れの果て。
「……アナタ、私を愛してくれる?」
「残念ながら、磨いて輝かない方にファンドするのはビジネスモデルとしては失敗作と思います。女性は顔だけではやっていけないのですよ」
 美獣の、魔性の気配すら漂う問いかけに寛治は心からの失望感を露わにしつつ、傘の石突で石畳を叩きつつ応じる。男であれば否応無しに魅力を誤認させうる化粧の効果はしかし、確固たる価値観を持っていた彼には(この時に限って言えば)無意味であったようだ。
「……哀れな方」
 幻は狼煙を上げ、美獣を挟んで寛治と対面の位置に立つ。二者のやり取りは哀れの一言に尽きる。愛を求めながら、美獣は相手を見ていない。他人から享受することを望みながら自分からは何一つ差し出そうという姿勢が無い。
 何のために美しくあろうとしたのか、とか。
 相手の為に飾り立てる、とか。
 女として当たり前に行うであろう『美』の大原則を、彼女は失ってしまったのである。
「アイしてほしいの? ……いいよ、ナーちゃんがイライのためにキミをアイしちゃうね」
 狼煙を見て駆けつけたナーガが、美獣に向けて不器用に笑みを向ける。異常性を隠しもしないその表情は、微笑ましさより先に脅威を感じるものだが。美獣にとって、それは福音にも等しい響きを持っていた。
 地面を蹴った美獣へ、ナーガも大股で前進する。振るわれた大爪と『溺愛の大円匙』なる超重武器は正面から撃ち合い、不快の極みの如き不協和音を高らかに奏でた。

●アイに至る妄執
 巨躯から振り下ろされた臓腑打ちは美獣の硬化した肌を強かに打ち据え、4本の腕で振るわれた斬撃は円匙で受け止めたその上からナーガの肉体を切り刻む。
「いきなり派手にやるっすねえ。狩っても狩っても足りないだなんて燃費が悪そうで同情するっすよ」
 ヴェノムは美獣へ向かって横合いから単発銃の銃身で殴りつけ、その手応えに顔をしかめた。力の限り振り下ろした一撃がさした痛痒も与えていないとなれば、多少なりとも自信を失ってしまいそうだ。
「少々傷が深いですね。お気持ちは分かりますが、無理はなさいませんよう」
 寛治はナーガに自己治癒の術式を施しながら、前進する。ヴェノムの支援を行う目的もあるが、万が一逃げようとした際、足止めを行う為でもある。
「体、体……ま、まだ成長するよ! ちゃんと大きくなるもん!」
 焔は居合わせた女性陣と自分とを見比べ、必死に大丈夫だと主張する。寛治の言葉に思うところあったのだろうが、成長期なので問題はないだろう……一番気にしている部位については、ピークを超えてしまっているという事実は脇に置く。
 炎の槍を勢いよく振り下ろした彼女に、美獣はぎらりとした視線を向けた。強い敵意を内包した視線に愛情は欠片も感じられないが、わずかに焔をたじろがせるには十分だったようだ。
「美しさを求め続ける獣よ、その追求も今ここで終わりです!」
「獣……違う、私は獣なんかじゃ、ない」
 シフォリィの断罪するような声音に、美獣はたじろぎ、仲間達はその力強さに背を押されたかのように勢いづく。貴族としての高貴さと戦士としての勇ましさは、彼女自身が己を信じるがゆえに漂うものであることを疑う者はおるまい。
 ミニュイの翼が魔力を伴って突き刺さり、アイリスの投げつけた薬液は偶然にもその額に命中し、煙を上げてその顔を焼く。わずかに逸れた戦意と意識は、結果として美獣に耐え難い一撃を与えることとなったのだ。
 さして強烈な一撃ではなかっただろう。だが、美獣にとって顔を狙われたことは何よりも重い屈辱を与えた。
 吐き出された叫び声は、それでも化物としての特性ゆえか、周囲を打ち据える歌声へと変じる。ほぼ同時に、内側からざくざくと生え始める髪の毛の如き細さの針は、彼女自身が血を流すことすら厭わずに生み出している……ように見えた。それでも首から上は変化が起きぬ辺りを見ると、美への執着は想像以上にどぎついものであることが窺えた。
「顔はいいかもしれないけど、あれじゃもう何がなんだか分かんないね」
「やはり、顔だけ良くても……失敬、今は詮無き話でしたね」
 ミニュイの呆然としたような言葉に、寛治は眼鏡を押し上げながら呟く。彼の視線の先にあるアイドル……ヴェノムはその点、おそらく彼の眼鏡に適う相手なのだろう。顔の良し悪しは言わずもがな、特異な外見もその言動も、程度の差こそあれ魅力を持ち合わせている……ように思われる。
「幻先輩じゃないっすけど、あれはなかなか哀れっすねえ。心の持ちようがあの格好なら、このヒト……ヒト? は目的と手段がひっくり返っちゃってるじゃないっすか」
 美しさを保ち、他者に愛され相手を愛すという道理と。
 美しさを楯にして近付き難い個性を演出し、触れるものすべてを傷つけてなお美しさのために尽力するという現状。歪にも程がある。
 焔の胸元を、美獣の牙が掠め過ぎる。皮膚を削った僅かな一線に視線を落とし、追って流れ出した血を見て、焔は無言だった。次いで、振り下ろされた槍の威力は思いの外高く、折れ砕けて飛び込んでくる棘が与えてくる傷の方が多いくらい。
「悲しい人です。誰かのために綺麗になろうとしたのに、今はもう、何のためにそうしているのかすら分からないでいる」
 シフォリィは白銀の魔力剣を突き出し、突き立つ棘をものともせずに美獣の頬に傷をつける。流れる血を気にも駐めず、慈愛と憐憫の混じった目で美獣を見た。
「だいじょうぶ、キミはアイしてホシイんだから、ナーちゃんがちゃんとアイしてあげる」
 打撃、打撃、そしてまた、打撃。
 ナーガはアイリスの治療や寛治から受けた治癒力をたよりに、ひたすらに円匙を振り回す。アイに雑念は必要なく、アイされることに疑問をもたせてはいけないのだ。
 慈悲深き彼女の一撃は、二の打ちを求めぬ威力でありながらも倒れぬ相手のためと、繰り返し振り下ろされる。――それは『愛』ならぬいびつな『アイ』ゆえに。
「人それぞれ、生きることの意味は違います。そのために何を為すかも違う筈です」
 だから、各々の戦い方や美獣のあり方すらも……それが美しければ否定できなかった、とアイリスは思う。
 それが他者から見てどれだけ歪であっても、信念あらばこそ、いずれ輝きを増すのだろうと。だが、美獣の今のあり方は、魔力を持つ道具に操られて、彼女の望みに塗りたくられた醜い鍍金でしかない。その輝きは、薄っぺらい本性をより正直に暴き立てるだけでなんの価値もないものだ。
 耳に忍び込む歌のトーンに、苛烈の限りを尽くす攻勢に、イレギュラーズが消耗せぬわけがない。
 治療に回した分、撃破への道が遠ざかる。傷を度外視した分、倒れる者だって現れよう。ほんの僅かに押し込まれ、彼らの意志が脅かされたことは無理からぬ事実であろう。

 ――たとえそうであっても。
 彼らの決意は多少の不条理を凌駕する。

「哀れな哀れなシンデレラ、魔法が解けるのは今で御座います」
 癒やし切った己の身に湧き上がる自信を自覚しながら、幻は魔力をそのまま、美獣へ向けて叩きつける。
 指向性すら与えなかった魔力は、しかし彼女の能力を十全に発揮する形で美獣の頭部に炸裂した。吹き上がる悲鳴に、すでに他者を打ち据える魔力はなく。無防備を晒した彼女の胴は、ナーガの円匙によって深々と傷つけられる。
 全身から吹き出した血が周囲一体に血の雨を降らせ、見る間に萎んでいく『美獣だったもの』はミイラ同然の姿へと変わっていく。
「やはり、お仕着せの美はよろしくありません。じっくり育てるものでなければ」
 血の雨を傘で遮りながら、寛治は事件の結末を不満げに見守った。

 その後、美獣の遺体は幻の死化粧を経て家族の元へと戻された、という。
 果たして夫だった男と子が、その姿を見たがったのかはわからないが……。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ナーガ(p3p000225)[重傷]
『アイ』する決別
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)[重傷]
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る

あとがき

  お疲れ様でした。
 本編での描写はほとんどありませんでしたが、魅了をばらまいて2回攻撃とか実際ヤバイ奴でした。ので重傷は少ないながらも全体被害は少なくないです。
 それでも、十分に事前対策を行った結果として一般人の被害ゼロというのは……また凄いと思います。

 化粧『セット』ですのでまた出るかもしれないですね。怖いなあ。

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