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シナリオ詳細

<現想ノ夜妖>カレヰドキネマ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●パレヱド也や
 あゝ、高天京(たかあまのみやこ)に文明開化が花開きたり。
 時は諦星(たいしょう)十五年――學徒は口を揃へて乞う申す。

 神咒曙光に日出る。天子よ、我ら帝国を導き賜へ!

 大陸文化に馴染み深き天子の策を八百万(やおよろづ)は厭うこと無く。
 尖塔を持つ煉瓦の屋敷が肩寄せ合いベイ・ウィンドーより神ヶ浜を眺め見ゆ。オイルペンキで塗られた西洋の街並みを少し往けば蒸気の煙を棚引かせた機関車なるものが走り往く。
 國民達は異国の服飾に心躍らせワンピヰスのモダンガールに手を振った。開店したばかりの玉出屋に挙り集うた娘御は鮮やかなる化粧水を手に入れんと華やいだ。

 此れが我らが神威神楽(カムヰカグラ)と申すものか!
 ――『陰陽頭』月ヶ瀬 庚の調査記録

●その名も『夜妖』
「……驚かれましたか?」
 諦星十五年、神咒曙光へと突如訪れた変化は航海(セイラー)との交易が齎した影響を一気に加速させたが故であったそうだ。
 所謂、R.O.Oの『バグ』が世界に変容を齎したのか。特異にも変貌を重ねた高天京は近代化を重ね、その姿を大きく変えていた。
 此の地にて、神咒曙光の調査協力を行っていた『陰陽頭』月ヶ瀬 庚(p3n000221)は『高天京壱号映画館』と呼ばれた活動写真館に『渾天儀【星読幻灯機】』ほしよみキネマなるものが存在して居ることに気付いたそうだ。
「僕はこれを『調整』しました。無論、此方の巫女殿達と協力して。
 ……此方の、と申したのは『ねくすと』たるこの地のつづり殿とそそぎ殿だったからです。ええ……少しばかり様子は違いましたが」
 巫女として責務を担ったつづりとぶっきらぼうながらも此方を慈しむそそぎ。その二人に協力を仰ぎ、霞帝達に『お探しの子猫』を無事に届ける約束をしたのだと庚は言った。
 それに冠しては双子の巫女が予知した『神使が夜妖を祓う』に庚の提案が合致した事で『中務卿』より協力要請が得られたとも言うが――さて。

「簡単に説明しましょうか。『渾天儀【星読幻灯機】』ほしよみキネマ。
 此方を使用すれば妖の起す不運なる先読みを覆す手がかりを手に入れることが出来ます。簡単に言うなれば、そう。未来観測」

 かちん、
 音を立てて銀幕へとモノクロォムの映像が走り出す。成程、バグによる影響を打破すべく『ある程度世界に似合った様にも見える』機器を此方の役に立てるように調整したと言うのか。
 流石は陰陽頭と後で彼を此の地に遣わした豊穣郷の霞帝に感謝を伝えても良い位だ。
「此れを駆使すれば此れより起こる不幸を未然に防ぐことが出来るでしょう。勿論、これは予知を行うのみ。
 その予知を駆使し、事前に民を避難させることも、命を救う事もできましょう。……現実世界に欲しい位ですね」
 卜占で何とかならぬかと呟いた庚は小さく咳払いを一つ。
 此れがR.O.Oの新規イベントで有ることは疑う由もない。これだけ世界が突如として様変わりしたのだから。
「それで、此れは先程、澄原の水夜子嬢――Miss殿が驚いて居た事では在りますが……『夜妖』はご存じですか?」
 夜妖――それは再現性東京で見られる存在『悪性怪異:夜妖<ヨル>』の事だろうか。
 再現性東京2010街希望ヶ浜ではファンタジィ要素は受入れられない。其れ等は総称を夜妖として怪異として認識されているのだという。
 人の数多くひしめき合う都会の闇に潜んだ夜妖がこの諦星の神咒曙光に多数姿を現したと言うのか。
『Doughnut!』Miss (p3y000214)は少しばかり困った顔をして「校長先生も夜妖だ、と仰っているんですよねえ」と呟いた。
「皆さんは陰陽寮の『神使』として夜妖を倒しに往く事が『此方』の霞帝の勅命であります。
 僕は……まあ、此方の僕も『僕だった』ので口裏合わせて貰って居ますよ。物分かりの良い自分で良かった」
 どうやら神咒曙光での活動には支障は無い。
 早速、渾天儀【星読幻灯機】が指し示した不幸なる未来を壊しに往こうでは無いか。
「僕のこの格好ですか? 馴染むために用意をしてみたのです。アバタァと言う者は便利ですね。
 皆さんが似合うと仰って下さるならば『現実』でも仕立てて見ようかと思いますが……まあ、戯言です。往きましょう」
「私もご一緒しますよォ! 夜妖だというならば『専門家』が着いていった方が良いでしょう?」

 ――さて、此れより帝都星読キネマ譚の開幕で或る。
 日辰陰陽自在に操り、夜妖を狩る退魔師――人はそれを『神使』と呼ぶのだ。

●『カレヰドの余波』
 カラカラカラカラ―――――

 音立て映し出されたのはモノクロォムの世界。諦星の街に一人の少女が實と佇んで居る。
 晴れの日でも或るまいし、天蓋に皓々たる月が姿を見せた夜更けに少女は桜舞い散る桃色の振り袖を身に纏うて居た。
 長く伸ばした黒髪に隠された初恋の苹果の如き赤い頬。一歩進むごとに春爛漫たる桜吹雪が舞い落ちた。
 ひとつ。
 女の下駄がからりと鳴った。
 古風な娘は文明開化の気配など露知らず。抱えた風呂敷より血濡れの日本刀を取り出した。
 ふたつ。
 女の下駄がからりと鳴った。
 名をも疾うに忘却した娘は川の柳の下で逢瀬の時を待つ男を見据えた。
 みっつ。
 女の下駄がからりと鳴った。
 恋しき男との再会を慶ぶ様に、女は走り出す。携えた刃をその身へと突き刺して。
 切、斬、伐――

 残されたのは男の無惨な骸。
 そうして映像が止る。幻灯機の音も消え失せ、『此れより起こる未来』であると告げたのは陰陽師による独白(ナレヱション)であった。

GMコメント

 夏あかねです。新イベント!『帝都星読キネマ譚』現想ノ夜妖ハジマリマス!

●目的
 クエスト『カレヰドの余波』のクリア

●クエスト『カレヰドの余波』
 『帝都星読キネマ譚』現想ノ夜妖にて登場した新規クエストです。
 当クエストでは『渾天儀【星読幻灯機】にて予知された不幸を手始めに打ち破ってみよう』が目的となっております。

 ・エネミー 悪性怪異:夜妖<ヨル>『夜桜あられ』
 振り袖姿の娘。血塗れの刀を持ち帝都を彷徨い歩いておりまする。
 辻斬りの娘は夜更けに姿を現しては花散らすが如く民の命を散らし続ける。
 渾天儀【星読幻灯機】が予知した『夜桜あられ』は川沿いを往く男を斬り伏せるつもりです。
 周辺道路の封鎖や男の避難誘導を事前に行い、万全なる態勢で彼女を闘いましょう。

 ・エネミー 悪性怪異:夜妖<ヨル>『桜の怪』
 夜桜あられの周囲に飛び交う美しき桜――を模した刃。10体ほど。
 それらは夜桜あられが現われると周囲を鎌鼬のように傷付けます。

 ●殺される男
 河川敷の柳の下に立っています。彼には避難を呼び掛けるか庇う必要があります。
 居場所は分かっていますので、容易に姿を見つけることが可能です。

●イベント補足
・『帝都』
 高天京はイベントモードに移行したことにより『大正ロマン』溢れる街並みとなりました。
 時は諦星(たいしょう)十五年。モダンな建築が並んでおり、異国情緒の溢れる街並みは想像も易い近代の気配です。
 ですが、着物や通常のカムイグラの風景が入り混じった何処かちぐはぐさが窺えます。

・悪性怪異:夜妖<ヨル>
 希望ヶ浜の都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。人々にとって関わりたくないものです。
 それが如何したことか神光に姿を現したそうです。

●同行NPC
 ・月ヶ瀬 庚
 カムイグラの陰陽頭。皆さんに好意的でこのイベントにも『現地の月ヶ瀬』と協力して行動しています。
 予知の整合性のチェックなどを行い、『現地の月ヶ瀬』に神使の成果を伝えるつもりなのだそうです。
 自分の身は自分で守れますが、戦闘は行いません。

 ・Miss
 もちもちビーバー。希望ヶ浜の協力者・澄原水夜子です。
 夜妖への対処のためについてきました。後方からの支援タイプです。

●情報精度なし
 ヒイズル『帝都星読キネマ譚』には、情報精度が存在しません。
 未来が予知されているからです。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <現想ノ夜妖>カレヰドキネマ完了
  • GM名夏あかね
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Siki(p3x000229)
心を手にして
シャスティア(p3x000397)
Ignat(p3x002377)
カニ
蒲公英(p3x005307)
ルフラン・アントルメ(p3x006816)
大樹の嘆きを知りし者
真読・流雨(p3x007296)
恋屍・愛無のアバター
シャナ(p3x008750)
爪紅のまじない
アマト(p3x009185)
うさぎははねる

リプレイ


 時は諦星十五年。燦々たる太陽の注ぐ夏。
 日辰陰陽自在に操り、夜妖を狩る退魔師たると称された特異運命座標。否、それは此の地では『神使』と呼ばれし者か。
 その地を『豊穣郷カムイグラ』への到達として受入れたならば『青の罪火』Siki(p3x000229)にとっては予想に反する光景が広がっただろう。
「ここが、神咒曙光? 随分思ってたのと違うというか……いや、まぁいいか。
『わかってること』のひとつやふたつ、きっぱり止めて見せようじゃあないか」
 新たにR.O.Oで始まった『帝都星読キネマ譚』と謂うイベントでは予知システムが導入されている。先の未来で起きる凶行を全て未然に食い止めることができると言うのだ。
「あの映画が見せた未来はあたし達の手で変えられるんだよね? 未来がある素敵な結末に――絶対、してみせるよ!」
 ふんすとやる気を漲らせる『ひよっこヒーラー』ルフラン・アントルメ(p3x006816)はそれにしてもとうっとりと笑みを零した。大正ロマン、シャスティア(p3x000397)に謂わせれば再現性東京ではサブカルチャーとして好まれる一種。それをルフランは書物の上で学んできていたのだ。
「異人さんと将校さんとか小説家さんと書生さんが……! うへへ、ロマン……はっよだれが」
 じゅるりと垂れた涎を拭ったルフランにハンカチーフを手渡してシャスティアは「ええ、本当に文化水準が違う」と呟いた。
「カムイグラは東洋文化の中心の国々に非常に近しかったようですが、この神咒曙光は様子が違う。
 ……資料で似たものを見た事がある。そう、確か近代中期……近代文化が急速に発達した時期の日本。諦星……大正。
 旅人の『日本人』の記憶と知識から再現でもしたか。微妙な違和感、正しい発展の結果では無さそうですね」
「ええ! そうですねぇ、シャスティアさんの言う通り私も『教科書』で見た事のある風景だなぁと思いました!」
 自身にとっては過去の出来事であると告げた『Doughnut!』Miss (p3y000214)。対照的に『陰陽頭』月ヶ瀬 庚(p3n000221)の過ごした文化からすれば遠く、未来の出来事なのだろうか。
「……これが私が目指していた神光なのか……? 一体、何がどうなってこうなった?
 兎に角、誰かが死ぬというのなら……それを書き換えねばなるまいか」
『???』シャナ(p3x008750)にとってこの世界の『天香遮那』に繋がる情報を得るために目指してきたはずの土地は見知ったカムイグラとは大きく変貌していたのだろう。愕然としている少年の風貌をまじまじと見詰めていた庚とシャナの視線がかち合う。
「あ、申し訳ありません。どうにも、知り合いとにして。名をお聞きしても?」
「……私はシャナ。唯のシャナだ。これから宜しく頼む、庚」
 庚の紅色の瞳が瞬かれた。彼は『モデルの子』を知っているが故にその名を問うたのだろう。一寸遅れて「宜しくお願いします」と笑みを浮かべた彼に「庚様、庚様。そのお洋服とても似合ってるのです」と『うさぎははねる』アマト(p3x009185)は微笑んだ。
「おや、本当ですか?」
「はい。もし庚様の姿(アバター)が現実と同じなら、アマトは、冗談にするのはもったいないと思います」
「なら、現実でもこの衣裳に身を包みましょうか。有難うございます。ウサギの君は優しいのですね」
 耳をぴこりと揺らして「その洋服もたいしょーろまん、というものなのですか?」と首を傾いだ。一応場に馴染むようにと、アマトも袴とブーツで『ハイカラ』なコスチュームに身を包んではみたが何とも不思議な国家であると感じて止まないのだ。
「練達とも北条とも違う不思議な国。起こることがあらかじめわかるのも、とってもとっても不思議です。わかるおかげで悲しいことが防げるのは、素敵なことですね」
「ああ。ヒイズルでは初の依頼か。豊穣では、相応に依頼もこなしてきたが。どうやら、彼方とは随分と赴きも異なるようだ」
 遣ることは変わらないが、と告げた『恋屍・愛無のアバター』真読・流雨(p3x007296)は『もちもち』していたMissへと向き直る。
「そしてMiss君と同じ依頼というのも上々だ」
「いや~照れますねぇ! 私も嬉しいですよぉ」
 軽口を躱し合うだけの時間があるのは未だ未だイベントが開始したばかりの余裕だからだろう。シャナのように追い求める者を探す焦燥とは対照的に、始まったばかりのイベントを楽しむ蒲公英(p3x005307)は「それで、討伐するのは……『夜妖』?」と首を捻る。
「神威神楽と言うよりも、どちらかといえば希望ヶ浜みたいですね……。
 夜妖も出るとなれば尚更! なんというか、予想以上に面白いですね、神咒曙光……!」
 何をとっても目新しい。そんな神光に心が躍って堪らないのであった。


「ここがこっちの世界での豊穣かぁ。大分雰囲気が違うんだね。
 豊穣は日本って世界の昔に近いって聞いてたけれど、この帝都ってところもそうなのかな?
 新しい世界に新しい敵! 人命救助は忘れずに。楽しんで戦って行こうか!」
『カニ』Ignat(p3x002377)は仕事の開始を告げて、周辺道路の封鎖へと行くと宣言する。豊穣は『更に昔』なのだと告げるMissに「へえ?」とIgnatは首を傾いだのだった。
「じゃあ、こう言う道路工事の立て看板も豊穣じゃないのかな?」
「書かれる文字が違うかも知れませんねぇ。私の知る歴史じゃ、庚さんみたいな人は1300年以上は前の文化に見られた存在ですし……」
 Missが「まあ、今は同じ時代です」と笑えばIgnatはもちもちドーナツを食べる彼女(?)と庚を見比べた。
「ええ。それだけの時が流れているというのは資料で拝見しています。Missさんの次代からこの諦星……いえ、大正も一昔前、でしょうし。
 それにしても渾天儀、星読幻灯機。未来予知……事に当たる上で予知に情報を頼るというのは、何とも懐かしい感覚ですね」
 そう呟いたシャスティアは予知の通りに敵性存在の出没するエリアの人払いを済ませていた。通行を遮り、回り道を求める。
 ロープや看板だけでも十分に効力を発揮するであろうが時間は迫ってくる。Sikiは青き焔を灯し、空を踊った。龍の姿となり、老人達に「明るい道までお送りするよ」と声を掛ければ彼等は「有り難い」と頷くだけだ。
(希望ヶ浜なら、龍が現われたと驚くところなのでしょうけれど、流石はR.O.Oなのでしょうか……?)
 首を傾いだ蒲公英は「むざむざ斬らせるわけにはいきませんので!」と顔を上げる。柳の下でぼんやりと立っている男へと「此処は危険なのです、早く安全な場所まで逃げてください」と声を掛ければ彼は首を振る。
「今からここでバンカラさん達が喧嘩しまーす! 巻き込まれたくなかったら逃げてね! とーっても危険なんですよ!」
 尾を揺らしたルフランに男はぎょっとした顔をした。近くの野良猫たちが威嚇をし、明らかに気が立った様子で動き回っているのはルフランの『お願い』のお陰だろうか。名すら名乗らぬ男は潔く立ち去らない。
 ゲームという体裁的に此方のオーダーには易々と乗ってくれるだろうかと思ったが、と流雨は男をまじまじと見詰めていた。どうにも彼は何らかの目的でも在るのだろうか。
「実は、この場所で犯行予告があったと噂になっているらしく……実際に他の人も避難を呼びかけているのだが」
「なら、尚更どけねぇだろう! そうだろ!?」
 シャナはどういうことだと首を傾いだ。ふむ、と呟くシャナの傍らでお耳をぴこりと動かしたアマトは「もしかして誰かと待ち合わせなのですか?」と問い掛けた。
「ここは危ないのですが、危ないのを知って居たいという事はそういうことかとアマトは思いました。
 ですが、外では避難誘導が始まっていて、お会いしたい方はここまで辿り着けないかと思うのです」
「あの子は避難誘導に応じてる? ……そうか、まあ、来れないって明確に言われちゃあ、居る意味もなあ……」
 溜息を吐いた男に「良ければ送ろうか」とSikiは問い掛ける。シャナは「そろそろ刻限か」と呟き、流雨も「ああ、彼の事はSiki君に任せようか」とそう言った。
「Miss君は後方からの支援を頼みたいのだが。まぁ、問題は無いとは思うが、心配はさせてくれ。
 囲まれぬようにだけは注意してもらったのがいいだろうか。数も多いゆえに」
「私が『Miss』しちゃったら流雨さんがとっておきで助けてくださいねぇ! ええ、ええ! 頑張りましょう!」
 流雨とMissに任せ、シャナは男がSikiの背に跨がる様子を確認している。運搬は任せつつも、危険が及ばないようにと庇う様に立っていたルフランは深緑の法衣に身を包みしかと眼前を睨め付けた。
「それじゃあ、お任せします!」
 男の対処よりも先に、舞踊った桜吹雪。燃える刀身をすらりと抜いて蒲公英は真っ直ぐにそれを捉える。美しい黒髪に振り袖姿の女、それは美人画にでも描かれていそうな幻惑を思わせる。
「この諦星の夜に舞い散る桜が美しい……というのは褒め言葉で口にしたくはありませんが。
 何にせよ、夜桜あられ。剣士としてはとても唆るのですが、辻斬りは駄目ですね。此処で止めさせて頂きます――御覚悟を!」
 地を蹴り、周囲に舞踊った桜の怪を手早く散らすが如く刃を散らす。蒲公英のセーラー服のスカートがひらりと揺れ、剣が鋭く振るわれる。
 ルフランが男が逃げ果せるまでを確認してくれているならば、其処から先に進ませないのがIgnatの役目であると。戦機は咆哮す。
 ドローン・ライフルが宙へと浮かび上がり、前線へと飛び込む蒲公英を巻き込まぬように放たれたのは主砲からの直線上の閃光。
 目映い光をその目に映してからシャスティアは「十中八九待ち合わせであるとは思いましたが、」と呟いた。
「待ち合わせの相手は『あれ』では無いと思いますが……」
『あれ』と差された女はくすくすと笑っている。血に濡れた振り袖は決して彼女の血潮ではないだろう。返り血か。
 日中はカフェーで働く可愛い女給。夜になれば辻斬りの夜桜あられ。なんて、都市伝説のジョークにしても捨て置けない。
「それでは、此処は一先ずお任せ頂きましょうか。さて、神咒曙光の……いいえ、イベント『帝都星読キネマ譚』の第一歩です。」
 シャスティアの周辺に広がったのは超重力フィールド。暗色のエフェクトが歪み展開される中心で白き静寂の槍は桜を散らすが如く光を帯びて。
 目映い光が後方より見られることに男は驚愕したように目を見開いた。悠々と天を進むSikiは「安心して」と囁く。
「だ、だけどよ……本当にアレがバンカラ同士の抗争で、殺人事件の予告だってんのか?」
「そうだよ。でも、大丈夫さ。青龍の加護を君に捧げよう。決して落ちることはない――だから安心しておくれ」
 囁くSikiに男はしがみついた。雲を割いて、安全な場所まで退いた男が彼女等の案内で事態を見守っていた『待ち合わせ相手』と出会えたかどうか迄は定かではあるまいが。


 イースターエッグに口付けを。『オモイ』を込めれば、桜を散らすが如くそれは弾けてぱかりと開き、無数のウサギを踊らせた。
 アマトのおみみが『ぴこぴこ』と警戒し続ける。ぴょこんと跳ねて上空からターゲットを定め、無数の桜を一気に巻き込んでゆく。
 桜の怪は蒲公英の想定通り脆かった。桜の怪を散らす蒲公英とシャスティアの眼前に龍が降り立った。
 そのシルエットは直ぐさまに人型へと変貌し、Sikiのかんばせが直ぐに覗く。自身の身を守るのは龍の鱗、絶えきってみせると夜桜あられを近づけぬようにと桜全てを己の身へと引き寄せて。
「さぁ、おいで?」
 囁く声と共に舞う花弁。数が減った事を認識し、Ignatは直ぐさまにターゲットを変更した。放つ閃光の向きをチェック、対象を認識。
「何を考えてこんな事件を起こしているのか知らないけれど、ここはオレたちローレットが通さない! 行くよ! ――FIRE IN THE HOLE!」
 眩い閃光が夜桜あられを包み込む。苦情が出たら腕っ節で解決することを考えていたIgnatは『安全無事』に事が終えられそうで安心したと夜桜あられを真っ直ぐに見据える。
 何を考えて、そう問うても答えは来ないか。流雨は地を蹴って飛び込んだ。氷刃をぎらんぎらんと輝かせれば長い髪が揺らぎ続ける。
「さて、応じてもくれやしないならば、答えも分からないままだが」
「はい! 邪魔はさせませんよ!」
 ふんすと耳を揺らしたアマトは周辺警戒を行いながら、夜桜あられの元へと援護に入ろうとする桜を退けた。その刹那、無防備になった女の横面へと飛び込んだシャナが鋭き歌声を響かせた。それは刃のように切り裂き、夜桜あられの護りさえも貫通して届かせる。
「わ、夜桜あられってすっごいしぶといんだね……!」
 溢れる血潮を押さえるためにルフランが仲間へと施した魔術と共に、ゆらゆらと体を揺らめかせる辻斬りの女を退けるが為にサポートをし続ける。
 喩え、どれ程までに傷付こうとも蒲公英は苦しい顔一つ、見せることはしなかった。
「現実ほどではありませぬが、手数を活かして斬り捨てていきましょう!
 まだ多少違和感は感じますが、易々と凌げる剣戟ではありませぬよ……! 袈裟、薙ぎ、斬り上げ、突き――基礎を忘るるべからず」
 踏み込む。蒲公英の剣は『現実世界の剣士たる己』の再現だった。格好の良いエフェクトが出なくとも、基礎の基礎ならば此処で放つ事ができる。
「人体急所たる首筋、眉間、喉、水月……苛烈に攻め立て続けましょう!」
 苛烈に攻める彼女の頸筋を掠めた夜桜あられの刃。蒲公英の眸が好奇の笑顔に変貌する。
 その様子をちら、と見据えた後シャスティアは彼女をサポートするように桜諸共蹴散らす如く、勝利をもたらす概念を『模倣』し投げ入れた。
「今宵散るはどちらの命か……さて、綺麗な散り際を見せておくれよ? 誰ひとり観測した光景のようにはさせないのさ」
 Sikiはそう微笑んだ。何処に居たって彼女を貫くための刃は此処に在る。
 幸い、多数の人命を救うことが出来ている。己の身を駆使して運び続けた事でより安全をもたらせた。ルフランの警戒の甲斐もあった。
 だからこそ自由自在に戦えると舞う刀は運命さえも斬り伏せる。蒼き魔法剣が夜桜あられの胸へと突き刺さる。瞬時、Sikiの眼前が眩んだ。
 だが、その剣を借り受けるように蒲公英が深々と突き刺してゆく。
「これで、終いです――!」
 舞う花弁をアマトは見詰めていた。徐々にその鋭さを失い、光の粒子が如く散り行く桜の中で、胸に剣を突き立てられた女が一人蹲る。
「もし、其方がその男を本当に愛しているというのなら。血濡れの日本刀など必要ないだろうに……」
 呟き、念を込めるように歌声は伸び上がる。己の喉から伸び上がった少女の声音、先程までの中性的な少年のものとは大きく違った響きを奏でてシャナの表情が曇る。
 最愛になれないのなら。心に傷を与えたい、復讐したい、私だけを覚えて欲しい。そんな曇った感情を『本来の私』なら知っているのかも。
 シャナはその考えを否定できなかった。だが、絶対に間違った行いを見過ごせるほどに『自分の知っているこの少年』は甘くはない。
 愛しき人を、愛していると切り伏せるなら辻斬りなんて行わず、唯一を狙うはずなのに。そう呟いてからルフランは前線に立つSikiへとアン、ドゥ、トロワで元気になぁれと輝く林檎をぽんと弾かせた。
「ねえねえ夜妖さん。貴女が襲ったのは、きっと貴女の好きな人じゃない。多分貴女は、文明開化に取り残されちゃったんだ。
 目を閉じて、そうして次に目を開いたら――きっと素敵な諦星の世界が見えるはずだよ!」
 クエスト『カレヰドの余波』の為に『渾天儀【星読幻灯機】』ほしよみキネマが見せた未来は打破された。
 返り血ではない。己の血潮でべたりと濡れた振り袖の女はにんまりと微笑んだ。
 目を伏せて、次に目を開いたならばルフランの言うとおり素敵で可笑しな諦星が待ち受けているのだろうか――

「しかし夜妖か。このような危険な夜妖が生まれるならば、何某かの土壌のようなモノもありそうだが。
『専門家』であるところのMiss君は、それに陰陽師の庚君はどう見ているのだろうな。何か痕跡でも残ればいいが」
 そう呟いた流雨に庚とMissは顔を見合わせた。さて、謎だらけだ。どうして『カムイグラ』がこの様な姿に突如変容したのかも。イベントステージだと夜妖という希望ヶ浜の現状を混ぜ込んだのだって摩訶不思議だ。
「彼女が言葉を有して、教えてくれるなら何の夜妖なのかを聞いてみたかったけど」
 そう呟いたIgnatにMissは「屹度、良く在る辻斬りの都市伝説やら噂から生み出された怪異なのでしょうね」と囁いた。
 どうしてそれがこんなにも頻繁に、しかも夜妖として動き回っているかは定かではないが――此れにて、クヱストクリアなのである。

成否

成功

MVP

Siki(p3x000229)
心を手にして

状態異常

Siki(p3x000229)[死亡]
心を手にして
蒲公英(p3x005307)[死亡]

あとがき

 お疲れ様でした。
 MVPは最も避難誘導を効率化していた貴女へ!
 諦星15年。さて、これからヒイズルには何が有るのでしょう……?

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