PandoraPartyProject

シナリオ詳細

揜日に潜む

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●暁暗を繰る
 担う剣が奔れば、声は途絶えた。
 どさり。人が倒れる音はこれで何度目か。十を超えてからは無意味と悟ったが。
「……ああ」
 倒れたそれに、触れる。
 温もりと、死んだ直後の微かな震えを感じた。それを両腕で抱きしめ、確かな感触を味わい終えると、再び其れを地に横たえ、歩く。
 幾らか歩いた後、ひい、と小さな叫び声が。
 先の死体に気付いた何某かの声だろう。対して私は喜色を顔に浮かべ、声のした方へと歩を進める。
 悲鳴は、より大きくなった。遠ざかる足音。逃がさんと剣を掲げ、私は其方へ走り出す。
「往かないでおくれ。傍に来ておくれ」
 悲鳴は混乱のそれに変わる。行き場を見失った足音の元へと、私は確かに近づいて。
「君を……感じさせておくれ」
 剣が、再び音もなく奔った。

●逢瀬を称う
「荒事好きな奴は喜べよ、『ローレット』らしい、オーソドックスな依頼だ」
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の対処に追われ、人気がいつもより少ないギルド『ローレット』にて、『黒猫の』ショウ(p3n000005)はいつも通りに話を始めた。
 酒場の一角に集まった特異運命座標達を前に、彼は依頼書を片手に内容を説明し始める。
「今回の依頼は、ある通り魔の殺害依頼だ。
『彼』は幻想(レガド・イルシオン)の外縁にある村を訪れては出会した人間を手当たり次第に殺し、また別の村に向かう……と言った行動を繰り返しているらしい」
 仕事熱心だよな? と語る黒猫の皮肉は、大してウケはしなかった。
「場所が場所だけに貴族連中は手を出しづらい。遠征費用が馬鹿にならないしな。
 かといって、このまま放置し続ければ最悪、損害を受けた村に対して他国が復興支援の名目で侵略してくる可能性もある」
 それ故に『ローレット』にお鉢が回ってきた、と言うわけだ。
「敵は一人。被害者の傷痕から、恐らく得物は剣の類だと予測できる。
 あとは……解らないな」
「……解らない?」
 情報屋にも限界はあるにしろ、提供されるものとしてはあまりにも曖昧すぎる情報に、特異運命座標達が目を丸くする。
 それに対し、ショウはお手上げのポーズでくつくつと笑った。
「それというのも、奴さんが有するとされる能力が理由でね。
 何でも、件の通り魔が現れた場所は辺り一帯が真っ暗闇になって何も見えなくなったらしい。当然、光源の類も意味を成さなかったそうだ」
 自然、通り魔自身を見かけた者も居ない。その情報に頭を抱えた彼らに、ショウは珍しくも苦笑を交えて最後に言った。
「一応、直近で襲われた村から一番近い人里は調べてある。
 通り魔が向かうとしたらほぼ間違いなく其処だろう。検討を祈ってるよ」

GMコメント

 GMの田辺です。
 以下、シナリオ詳細。

●成功条件
 下記『殺人鬼』の殺害

●場所
 幻想(レガド・イルシオン)外縁の村、其処に通じる一本道です。
 周辺に障害物はなく、均された道を除けば辺り一面が平原となっております。
 時間帯は昼間。対象は何の障害もなければこのまま村に向かい、殺戮を開始します。

●敵
『殺人鬼』
 推定、剣に類する武器を手にしている人間です。性別は声色から恐らく男性。
 彼の周囲10mは光源の有無を問わず常に暗闇に閉ざされており、対策無しでの戦闘は非常に困難です。
 その能力自体は謎に包まれていますが、殺害された被害者の傷や、被害者の数から考えて、対象は『暗闇でも支障なく行動でき』、『およそ高レベルの剣技を行使できる』と推測されます。
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。



 それでは、参加をお待ちしております。

  • 揜日に潜む完了
  • GM名田辺正彦
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月02日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ナーガ(p3p000225)
『アイ』する決別
マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
銀城 黒羽(p3p000505)
河津 下呂左衛門(p3p001569)
武者ガエル
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
砂漠の光

リプレイ


 果てが、見えない。
 行き着く先は何処までも闇。目の前に差し出した手のカタチも、最早疾うに忘れてしまった。
 此処は何処だ。今は何時だ。
 闇を往く内に他の感覚が研ぎ澄まされ、水場や崖を落ちることは無くなった。
 けれども、未だにこの瞳だけは。真っ黒な墨を刷いたセカイに、何も映し出してはくれない。
「………………」
 いっそ、この闇さえ無くなればと思い、何を馬鹿なと自嘲した。
 この闇がなければ、僕は生きられない。
 この闇がなければ、僕は誰も感じられない。
 例え、その手段が最も醜いものであったとしても。
 だから、また──また。
「挨拶代わりである。受け取る事を願いたいがな」
「っ!?」
 刹那、轟、と言う音が鳴る。
 剣の閃く音に似ながら、しかしその威力は最早砲撃の其れと同義だった。
 直撃すれば死を思わせるであろう絶音に対して、僕は身をよじりながら剣を構えた。
 響く音、抉れる肉。迸る血。
 明確に傷み、しかし行動には何ら支障はない。その程度の傷を負った僕に対して。
「ふむ。取れる手段が限られているな。……これまた、中々厄介な物だ」
「厳しい戦いは承知の上。ですが、無辜の人々を斬りつけて回るその所業、許されません!」
 遠くから聞こえる男性の声に続き、少女の鈴のような声音が瞬く間に近づいてきた。
 さらと交わる長髪の音。鎧の関節が擦れるそれに紛れて、微かに衣擦れの音も聞こえて、
「君は……、いや」
 君『達』は。
 それを言いかけた僕を遮って、恐らくは少女であろうその人物が声を張り上げる。
「闇の中に隠れた真実、あばいてみせます!」


 暗闇より聞こえる剣戟を、その範囲の外から眺める『KnowlEdge』シグ・ローデッド(p3p000483)が舌を打つ。
「前衛陣の接敵まで予想より短かった。味方を巻き込む以上、『偽・烈陽剣』はアレ以上撃てまいな」
「承知。しかし、闇を纏った狂気の剣の使い手でござるか……」
『誓いは輝く剣に』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の鼓舞によって、獲物を狙う所作に精度を付けた『武者ガエル』河津 下呂左衛門(p3p001569)が、小さく笑みながら鯉口を切った。
「不謹慎かもしれぬが、拙者の剣がどこまで通じるか、」
 想うだけで、震えが止まぬ。
 飲み込んだ言葉を剣気に込めて、居合いの要領で振り払われた大太刀は、しかし恐らく受け流されたのだろう、鈍い衝撃のみを彼の手に伝わせる。
「……その程度、じゃあ」
「じゃあ、これならどう?」
「!!」
 背後より迫る声と同時、その脳天にシャベルが振り下ろされた。
『アイのミカエラ』ナーガ(p3p000225)。巨躯に見合わぬころころとした声が繰り出す一撃は、自らの身体すらも軋ませるレベルに到達している。
「そんなクラいところにとじこもっちゃって……。
 はずかしがってないで、ナーちゃんにアイされて?」
 受ける剣諸共、その身体が地に沈んだ。
 それでも──それでも、その攻撃は本来の威力に届かない。
 無念はあるが、それも振り払う。彼女らの役目は純然たる攻め手、それだけではない。
「暗闇を連れた殺人鬼かー。
 こういう情報屋殺しな相手は、だからこそ誰かが対処しないとヤバいんだよねー」
 それを担う者は、ちゃんと居る。
『名探偵』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)が眠たげな瞳に怜悧な決意を浮かべ、視界に『映る』殺人鬼を目掛けて殺傷の霧を放つ。
 ミスティックロアを介して放たれた、悪意を源泉とする術式は並の威力ではない。乱れる呼吸、零れる鮮血。その反応に確かな手応えを覚えた彼女に続き、『緋色の鉄槌』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)が咆哮する。
「さあ、行くぜ殺人鬼。楽しい楽しい殺し合いだぁ!!」
 肉迫した彼が、敵の鼻先に至るほどの距離で楽器を掻き鳴らせば、得物を介して増幅された魔力が魔棘の形を取って撃ち貫く。
 先のクロジンデ共々、参加者の内の一部は温度視覚によって明確に敵の姿を捉えている。
 無論、それも確実ではない。姿そのものではなく、温度による視界は輪郭以上を捉えることは出来ず、また混戦状態では前衛班の仲間と輪郭が混ざり合う形となり、正確に当てることはかなり制限される。
 が、それはあくまで『制限』だ。全く視界を封じられた状態よりも、命中の可能性は遙かに向上する。
 空いた風穴を噴血が埋め、殺人鬼がくつくつと笑った。
「これが、きみか」
 呟いたのはそれだけ。何を、そう言いかけたマグナよりも先に。
 音はない。剣は緩やかに薙がれ、彼の身体を鮮血に染める。
「危ねっ……!?」
「っ! ……こんなもんか?」
『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)が笑い、袈裟斬りに切られた我が身を省みず、敵を鼻で笑う。
 呼気を荒げる。仲間に位置を把握して貰うためのそれは、しかし自らの意識を保つために必要な行為でもあった。
「血の匂いだ。温度だ。ああ、これはさっきの君とはちがうのか」
「誰かを感じるのが好きなんだろう? 幾らでも相手になってやるさ。存分にかかってきな」
「もう、ご自分も大事にしなければいけませんよ!」
 傷を癒す手段も乏しいメンバーの中で、尚も挑発する黒羽を『砂漠の光』アグライア=O=フォーティス(p3p002314)が叱った。
 直情で、且つ誰かを守ることに矜恃を持つ彼女からすれば、同じ庇い手である黒羽すらも、我が身のように案じるのは自然だった。
 そして同時に、感謝も。
 自ら斬られることで意図的に自身の血液を敵の武器に付着させた黒羽によって、超嗅覚を持つアグライアはその位置を或る程度把握することに成功する。
 月光。次に相手が動き出したその瞬間、弧を描いた剣が殺人鬼の身体を確かに切り裂いた。
 零れる血液、痛み。繰り返す衝撃と、繰り返される衝撃に、終ぞ殺人鬼は身を屈め──けれど。
「もっとだ……!」
「!?」
 声は、笑っていた。
 剣が貫く。鎧の関節を縫って突き刺された痛みが、シフォリィの表情を歪ませて、
「もっと、君たちを!」
 それを抜き様、振り抜くように奔る剣がマグナを襲った。
 並々ならぬ量の血が流れ、両者の顔から血色が失われる。
 殺人鬼は剣に伝う血を手に塗りつけて、昂々と叫び声を上げた。
「君たちを、感じさせてくれ!」


 特異運命座標らが取った作戦自体、は極めてシンプルと言える。
 敵が接近するまでにシグが独自の異能『異想狂論「偽・烈陽剣」』を撃って或る程度ダメージを与えた後、接敵した前衛陣が足止めを兼ねながらの攻勢、動きの止まった敵に対して後衛陣であるシグとクロジンデが攻撃を行うという流れ。
 暗黒という環境下を感じさせないオーソドックスな戦法が成功するかと言えば──その結果は、身を以て知ることとなる。
「──────っ!!」
 ひゅう、という呼吸音と、ごぽ、という吐血の音は、殆ど同時だった。
 黒羽が僅かに下がり、その間に割り込む形でアグライアが踏み出すが、その彼女をして満身創痍の域を免れ得ない状態だった。
「お二方、どうぞご自愛を……!」
 言いながらも、それが難しいであろう事は下呂左衛門すら解っていた。
 戦闘が開始して凡そ数分が経過した。そうして前衛陣を始めとした味方は倒れる寸前まで傷つきながら……対する殺人鬼の側は、彼らに比べれば然したる傷を負っていない。
 攻手が少なく、そして乏しすぎる。それが事此処に至って特異運命座標等が抱いた結論だった。
 前衛陣が慣れない温度視覚や感覚強化系の非戦スキルでどうにか戦う中、暗中での戦闘に慣れた敵の側は彼らに対して有利な戦いを運べている。
 それ自体が悪とは言わない。そもそも前線に出て戦う者が多いメンバーである以上、或る程度の不利をおして戦うことは致し方ないと言える。
 問題は、その『不利』への対策が遙かに甘いこと。
 聴覚、嗅覚、温度視覚。メンバーのそれぞれがそれぞれなりの方法で敵の位置を把握することを心がけながら、同時に妨害を行うことで仲間内での連携に齟齬が起きていたのだ。
 最も顕著なのは、聴覚のみに頼って敵の位置を把握しようと心がけるシフォリィだ。戦闘中にマグナ、シグが行う『敵の聴覚への妨害』行為が仇となって、暗闇に於けるその動きはあまりに精彩を欠いている。
 黒羽の血液の匂いを纏わせる方法も、無作為に敵を切り伏せる殺人鬼によって次第に多くの血液の匂いが混在し、嗅覚による判別も時間と共に困難になっていった。
 結果として、時間経過と共に功を奏する能力はナーガ、マグナ、クロジンデが持つ温度視覚のみが主になる。
 事実上、8対1の戦いが3対1に幾らかの補正が掛かった程度のものだ。更に、後衛陣が範囲攻撃を撃とうにも「どのタイミングで前衛陣が離れるか」の相互に於ける摺り合わせがされていない以上、曖昧な精度の単体攻撃か、戦闘以外の妨害行為に走るしか選択肢が残されていない。
 明確なハンデとなる環境に対する理解と、それを補う方法や連携、乃至相手を自分達と同じレベルにまで知覚を封じる手段、その何れもに特異運命座標達は届いていなかった。
「レッド、ニードル……!!」
 マグナが叫び、気力を振り絞って魔棘を放つ。
 幾度目かのそれを、しかし大きく掠める程度に留めた敵は、そうして返す刀で彼の胸を刺し貫いた。
 響く苦悶。費やされる可能性(パンドラ)。
 シフォリィが偶然聞き取ったその声に反応しながらも、しかし、有する癒術を唱えるか迷った。
 視界も、代わりの聴覚も封じられた状況下では、仲間の負傷の度合いを判別する術もない。従って、回復に回るべきかを判断することも出来ない。
 時間は経過する。その度に、倒れる仲間も増えていく。
「ああ、クソ……」
 黒羽が倒れ、次いでマグナも意識を失った。
 シフォリィも同様に。アグライアに次いで潤沢な生命力を有する彼女が倒れた時点で、趨勢は決したと言えるかも知れない。
 ──だが、可能性が無いというわけでも、無い。
「……えい」
 小さく、子供が呟くような台詞が、死を想起する一撃と共に放たれる。
 回避し損じた。そう判断した殺人鬼は即座に防御の構えを取り、その満身から骨の軋む音を響かせる。
 このメンバーの中で、凡そ最も高火力を有するナーガが視界を確保できていたことは、それほどに大きなアドバンテージと言えた。
 無論、それには小さくない代償が伴っている。繰り返す挙動の度に内出血と骨折を起こす彼女の身体は、殺人鬼が最初から彼女に狙いを付けようとしていたらもっと早く倒れていたはずだ。
 尤も、それをさせないためにアグライアと黒羽が挑発を続け、
「もー、そろそろ暴れ疲れて欲しいんだけどなー」
 拘束に専念し続けた、クロジンデが居るのだが。
「この身は剣であり、盾。
 無辜の人々を傷つけ殺す、貴方に対する正義そのものです!」
 荒ぐ息をこらえ、アグライアが最後の守護神域を展開する。
 くっ、と言う不快げな声音が、この時、初めて殺人鬼から零れた。
 その剣が、傷つき果てたアグライアを断って、その刹那。
「……お主は、何故このような凶行を行うのか!」
 下呂左衛門が、声を上げた。
 複数の超感覚のハイエンドを有する彼は、それ故に未だ戦場に立つことを可能としていた。
 逆を言えば、其処までの域に達さなければ、彼すらも倒れる可能性は少なくなかった。
「切り伏せた相手を感じるとは何か、この闇は何なのか、お主は何者なのか。
 何こそがお主を、此処まで苛烈に動かし続けるのだ!?」
「……、は」
 言葉が返される──否、
「はは、ははは。はははははははははははははははははは!!」
 聞こえたのは、笑い声。
 いま、こうして戦っているという事すら忘れて、彼は哄笑を張り上げ続けた。
 そして、それこそが、最後の。
「それを知って、どうするんだい」
 得物を担う腕をだらりと下げた殺人鬼に、背後から駆けるナーガがシャベルを大きく振りかぶった。
「君たちでは、何も出来ないくせに」
 せめてもの注意を引くべく、下呂左衛門が太刀を抜き、
「君たちは、何もしないくせに」
 クロジンデが、拘束のための魔術縄を投じ、
「君たちには、何もわからないくせに……!?」
 自らの姿をギフトで変じたシグが、彼の感覚を削ぐために攪乱する。
 そうして、殺人鬼が気付いたのは、最後の瞬間。
 振り返った殺人鬼に、ナーガが渾身の一撃を届かせた。


 特異運命座標達は、負傷した仲間を抱えて移動していた。
 無事な者達も、その何れもが夥しい傷を負いながら、しかし絶対に行かなければならない場所へと向かう。
 殺人鬼が向かうであろう、村へと。
「……結局アイツは、何だったんだろうな」
「さて、な。いずれにしてもあの男の言うとおりだ。
 敗者である私達が、彼に問えることなど在りはしないだろう」
 傷む体を押さえ、息を吐くように言葉を漏らす黒羽に、未だ意識を取り戻さないマグナを背負うシグが頭を振った。
 ──戦闘の最後、ナーガの一撃は確かに殺人鬼へと届いた。
 届きながら……しかし、あと僅かが足りなかった。
 耐えきった彼によってアグライア共々彼女も倒され、戦闘の続行が不可能と判断した彼らは、せめて村人に被害を出さないためにこうして移動していたのだ。
 不幸中の幸いと言うべきは、殺人鬼がこの戦闘で負ったダメージにより、その動きが明らかに鈍っていることだった。
 家財を諦め、村人達が身一つで逃げ出すまでの間なら、彼が村にたどり着くことは無いだろう。……村人達がそれを受け容れたら、の話だが。
「……私は」
 明確な悪行を前にして、しかしそれを止められなかったシフォリィが、強く唇を噛んだ。
 アグライアも同様に。クロジンデは前職の経験を活かして、彼女らに何かを言おうとし……やはり、その口を閉ざす。
「……このままだと、たくさんの人たちが、あの男の人でアイされちゃうんだよね」
 訥々と、誰に言うでもなく、ナーガは言葉を漏らす。
 殺害を意図する彼女なりの言い回しに、仲間の誰もがその身を少しだけ強張らせて。
「でも、そんなアイされ方、ナーちゃんは嫌だなあ」
 哀しそうに、そう言った。
 村の入り口が近づいてくる。動ける者の中で特に速い下呂左右衛門が最初に辿り着けば、並々ならぬその様子に村人は目を丸くする。
 その内の一人が、どうかしたのかと問うよりも早く、彼は大声で叫んだ。

「皆、早急に此処から離れるのだ!」

成否

失敗

MVP

なし

状態異常

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)[重傷]
白銀の戦乙女
マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)[重傷]
緋色の鉄槌
銀城 黒羽(p3p000505)[重傷]
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)[重傷]
砂漠の光

あとがき

ご参加、ありがとうございました。

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