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シナリオ詳細

<フルメタルバトルロア>白き鋼盾の物語

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●レイリー=パーヴロヴナ=カーリナ
 白馬の蹄が石畳をうち、燃えさかる街を走って行く。
 背の鞍に跨がるは白銀の鎧を着た女騎士。かざした腕がぱっくりと開き、内から鋭い剣が展開する。『カーリナ』の家名が古代文字で刻まれた、美しい剣だ。
「私の邪魔をするならば、斬り捨てるのみだ」
 恐れ、叫び、子供を抱えて走る男性へ追いつくと、剣によって背を切り裂く。
 衛兵らしき者たちが現れ一斉に弓を放つも、左腕から展開した鋼のカイトシールドが飛来する矢のすべてを払い、剣より放出された青白いエネルギーが兵士達を一文字になぎ払っていく。
「差し出せ。すべてを。我がカーリナ家再興のために」

 経緯を。そして純粋なる願いについて話さねばならない。
 レイリー=パーヴロヴナ=カーリナ。鋼鉄帝国に生を受け、カーリナ家にて幸せに育った女。しかしある時、『とある軍閥』による策略によってカーリナ家はその地位と財産を失った。
 家はえん罪によってその名誉までもを穢され、悲しみと絶望に暮れた両親は自ら命を絶ってしまった。
 娘レイリーに残されたものは多くはない。いや、たった一つ――家名の彫り込まれた剣のみだ。
 他はすべて奪われ、穢され、殺されてしまった。
 だから。
 だからこそ。
 レイリーは再興を誓ったのである。軍へと志願し、数々の激戦区を渡り歩き、功績を積み重ね、軍の中で少しずつその地位と名誉を回復していく。
 そしていつかは、奪われてしまったあの懐かしき我が家をも取り戻すのだ。

 ――そんな願い(WISH)が、突如として歪められて締まった。

 『奪われたなら、奪い返せばいい』と。
 略奪こそが、己が名誉を取り戻す手段である、と。

●DARK†WISH
『エクスギア、発棺準備!』『エクスギア発棺準備良し!』
 棺型の高機動出撃装置、黒鉄十字柩(エクスギア)。そのハッチを開き眠るような姿勢で入り込むはショッケン・ハイドリヒ。
 あなたが今所属している軍閥ゼシュテリウスの幹部にあたる将校である。
「同志イレギュラーズ、貴君が来てくれるとは心強い! 共に戦おう!」
 勇まし述べると略式敬礼をし、ショッケンは棺の中へと入っていく。
 並ぶ棺のそばにはイレギュラーズであるブラワー(p3x007270)の姿もあった。
「こんな装置で突撃するなんて、ワクワクしちゃうね! がんばろ!」
 星型エフェクトの出るウィンクをすると、ブラワーはぴょんと棺に入っていく。
 発棺シーケンスが進み、空へと打ち出される棺。十字に翼の伸びた棺がジェット噴射で飛行するそのなかで、ブラワーはこれまでの説明を思い出していた。

 ROOで発生した新たなイベント『フルメタル・バトルロワ』。
 それは鋼鉄帝国でおきた皇帝暗殺騒動に端を発した軍閥騒ぎであり、そして内乱である。
 イベントクリアによって真相解明の手がかりが少しずつ掴めている現状、練達からのオーダーはこのイベントへの参加と攻略であった。
 こうして、ヴェルスを筆頭とする軍閥ゼシュテリウスに加わったイレギュラーズはシャドーレギオンとの戦いに赴くのだった。

 今回敵となる相手レイリー=パーヴロヴナ=カーリナは歴戦の鋼鉄軍人である。
 元々はその勇敢かつ誠実な性格から人望も厚く、一族の名誉を取り戻すべく戦い続けていたが……彼女のWISHは悪意あるバグによって歪められた。DARK†WISHを抱いてしまった彼女は略奪の鬼となり。同じく忠誠心を歪められた部下達と共に旧カーリナ領へと襲撃。
 そこにあるすべてを武力によって略奪することで、かつての家を取り戻そうとしているのだ。
「そんな悲しき戦いは、止めねばならない。略奪によって得られるのは誰かの持ち物にすぎないからだ。
 何者かになりたいならば、自分の腕で戦わねばならない。そうして築き上げたものこそが、真の名誉なのだから」
 出撃前、ショッケンはそんなことを言っていた。
「(あのショッケンが……)」
 思わず笑い出しそうになりながら、ブラワーは到着の時を待つ。
 到着まで、あとわずか。棺の中に電子音のカウントが始まる。

GMコメント

●オーダー
・成功条件:レイリーとその部下たちの撃破

 ROO世界におけるレイリー。彼女は優秀な軍人であり、多くの部下に恵まれた将校でもあります。
 ですがDARK†WISHを抱いてしまったためにその目的は歪み、略奪という歪んだ手段によって目的を叶えようとしています。
 彼女を正気に戻す方法はただひとつ。戦い、倒すことのみ!

●レイリー軍閥
 小規模ながらレイリーは軍閥を組織しています。20人前後にわたる軍人たちがただいま旧カーリナ領へと進軍。多くの被害を出そうとしています。
 この場所へエクスギアで直接のりつけ、戦いに持ち込むのです。

●前半パート
 まずはエクスギアで領内の広場へと到着。現地で略奪行為にはしっているレイリー軍閥の軍人達を倒していきます。
 軍人達はそれぞれ様々な武装をもっており、戦闘バランスに優れています。
 そんな彼らにまずは囲まれた状態から戦闘がスタートするので、包囲の突破や有利陣形の構築など、序盤の滑り出しに拘って作戦を立てるとよいでしょう。

・黒鉄十字柩(エクスギア)
 中に一人づつ入ることのできる、五メートルほどの高機動棺型出撃装置。それが黒鉄十字柩(エクスギア)です。
 戦士をただちに戦場へと送り出すべくギアバジリカから発射され、ジェットの推進力で敵地へと突入。十字架形態をとり敵地の地面へ突き刺さります。
 棺の中は聖なる結界で守られており、勢いと揺れはともかく戦場へ安全に到達することができます。

●後半パート
 旧カーリナ家の屋敷前。庭園での戦闘となります。
 レイリー含む幹部クラスの軍人たちが相手になります。レイリーは攻防整った非常に優秀なファイターです。タイマンはるのはちょっと厳しいかもしれません。戦うなら2人以上でぶつかりましょう。
 当然まわりの幹部達も黙ってはいないので、彼らを個別に対応しつつ戦うことになるでしょう。

・レイリー
『WISH』
 家の名誉を取り戻し、かつての屋敷へと帰る。
『DARK†WISH』
 他者から略奪し、かつての屋敷をも奪い取る。

※WISH&DARK†WISHに関して
 オープニングに記載された『WISH』および『DARK†WISH』へ、プレイングにて心情的アプローチを加えた場合、判定が有利になることがあります。

●味方NPC
・ショッケン・ハイドリヒ
 勇敢な鋼鉄軍人でありまっすぐな将校。
 全体的にバランスがよく、あんまり死なない。
 アルキメデスレーザーによる貫攻撃が必殺技。
 なお、イレギュラーズと違って復活できないので戦闘不能になると自主的に撤退してくれる模様。

●サクラメントからの復活
 もし死亡しても近くのサクラメントから復活し、戦闘に復帰することができます。
 その際軽く数ターンほどロスするかもしれません。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • <フルメタルバトルロア>白き鋼盾の物語完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月13日 19時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァリフィルド(p3x000072)
悪食竜
フラッシュドスコイ(p3x000371)
よく弾む!
ザミエラ(p3x000787)
おそろいねこちゃん
IJ0854(p3x000854)
人型戦車
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
ミーナ・シルバー(p3x005003)
死神の過去
玲(p3x006862)
雪風
ブラワー(p3x007270)
青空へ響く声

リプレイ

●敗北に価値を与えるための十字架で、――
 重く激しい金属音。回る歯車と駆動音によってバガッと開いた棺型の強制出撃装置エクスギア。
 『緋衝の幻影』玲(p3x006862)はその前に立ち両腕をクロスすると、ニッと歯を見せて笑った。
「にゃーっはっはっはっは! なんじゃあ! この卍黒鉄十字柩卍とやらは! か、かっこいい……
 この†緋衝の幻影†にふさわしくはないか!?
 おっと。フッ…少々興奮してしまったようじゃな。妾の左目が疼きおる」
「なんともワクワクする乗り物ですネ!」
 余った袖を上下に振り回してジャンプする『はやい!』フラッシュドスコイ(p3x000371)。
「よーし! 頑張るぞ! フラッシュドスコイ出撃します!」
 棺の中へ飛び込むと、閉じた扉にかんぬきのようなロックがかかる。
 アームにつかまれ運ばれていく出撃『砲』。一発ずつ天空に向けて発射された棺が翼を広げるかのように十字架型へ展開。ジェット推進によって旧カーリナ領へと突き進む。
 雲の合間を駆け抜け、やがて見える景色へと。
 棺の中で目を閉じた『硝子色の煌めき』ザミエラ(p3x000787)は、激しい揺れのなかで小さく笑った。
「WISHがDARK†WISHに、かぁ」
 やたら発音のいいWISHをつぶやくと、力強く目を開く。
「とりあえずDARKな部分はWASHしちゃおうね! そういうわけでがんばろー! 同志ショッケンもよろしく!」
『応、よろしくたのむ! 同志ザミエラ!』
 どうやら棺どうし、着『弾』までは通信が繋がるらしくショッケンが無線伝声管越しに呼びかけてくる。
 そんななかで、『死神の過去』ミーナ・シルバー(p3x005003)は静かに棺にゆられていた。
(……はー、やれやれ。何でよりにもよって、あいつ、なのかねぇ。
 ……ま、なんであれ。あいつが間違えた道を征くというのなら、例え仮想であろうとも、止めるのが私、なんだよな)
 何か言うべき……だろうか。否、自分で決めて自分で成すべきだ。それが決意というものだから。
 『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072)は仲間達の心の動きを感じつつも、あえて何も言わず棺にゆられていた。
(あれが我の知るショッケンであったのなら、今この場で頭から喰らってやるのだが……まぁ良い)
『同志、もうじき着弾だ。戦闘エリアに直接乗り込むぞ。準備をしておけ!』
 ショッケンの声に目を開ける。
 エクスギアは放たれた矢のように放物線を描くと煉瓦で舗装された道へと突き刺さった。
「YEAAAAAAH!!」
 ロックがはずれ、バガッと開いた棺から飛び出す『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)。
 勢いよく宙返りをかけ、強引なエントリーに振り返るレイリー軍閥の兵達へビッと指を突きつける。
「いやぁ、ご機嫌が過ぎるぜ! このエクスギアってヤツはよ
 お陰様で、のっけからテンションMAXよ!」
「こんにちは、私はIJ、貴方の健康を守ります」
 その横へ、片膝と拳を地に打ち付けて着地する『人型戦車』IJ0854(p3x000854)。
 パープルカラーの人型戦車が鋼の駆動音を鳴らしながら立ち上がり、両手をパッと開いて兵達へと向ける。型や腕、腰からすべての兵器が展開し、アームによって右肩に乗ったガトリングガンがうなり始める。
「ボク、エントリー☆」
 ちらりと横を見ると、既に展開を終えていた『青空へ響く声』ブラワー(p3x007270)がくるりとスピンしてからカワイイポーズで横ピースした。
 一斉に展開し身構えるショッケンとイレギュラーズたち。
 こちらを向いて頷くショッケンに、ブラワーがウィンクで返した。
(ここまで現実と違うんだ
 ショッケンが正義に目覚め、
 レイリーは家の復興を願い、それが歪んで略奪に走る。
 私は彼女以下よ。逃げたんだから、でも……)
「レイリー軍閥のみんな。誰かから奪ってまで家族を取り戻そうなんて」
 僅かに開いた目は鋭く、輝かしいほどの意志をはらんでいた。
「――カワイクないよ」

●失敗が誰のせいだとしても、――
 つま先でとったリズム。回転しながら飛んできたマイクをキャッチし、アサルトライフルによる横列弾幕の中を真正面から走り出す。
「ショッケン……信じるから、お願い」
「任された!」
 手のひらをかざしブラワーの前へと飛び出し盾となるショッケン。重なるようにスライドしてきた照射器が隊列正面へと狙いをセットさせた。
「そこだ、ショッケン! ブチかましてくれ!」
「承知した、同志Teth=Steiner!」
 Tethの示した先へと思い切りアルキメデスレーザーを発射。
 同時にTethが『Quark_Star』をセット。大型ハンドガン型スキル発動器『Castor』のひきがねを引くと、キュンという空間の歪む音と共に敵隊列中央の空間が激しくねじれた。
「どりゃー! 略奪をやめろー!! 道を開けろーー!!!」
 そこへフラッシュドスコイがきりもみ回転しながら人間魚雷スタイルで突っ込んでいく。
 直撃を与えた兵士がくの字になって吹き飛んでいくが、フラッシュドスコイは構わずさらなる加速と回転をかけて大通りを突っ切っていく。
「さあさあ、お主ら! この妾が盛大に遊んでやろうではないか! 少しだけのう!
 妾の†ドレッドノート†はどの世界でも止めることはできぬのじゃあ!」
 併走する玲。
 ヴァンパイアパワーを活性化させると、空の月を赤く、走る足下には霧を生み出し、両目を赤青それぞれにギラリと光らせた。
 肉体を激しく消耗させながらも飛びかかる玲は、咄嗟に抜刀した兵士の剣をパンチで打ち砕き、その勢いのまま相手の顔面へとクリーンヒット。振り抜いた拳が衝撃となって相手をきりもみ回転で吹き飛ばしていく。
「悪いが、お前たちで手間取ってる暇はねーんだ。さっさと終わらさせてもらうぜ! やるぞザミエラ!」
「うんっ!」
 十字路。着地したミーナとブレーキをかけたザミエラはそれぞれ剣を手に取った。
 ミーナの放った無数のトラップワイヤーが迎撃にあたった兵達にからみつき、そこへガラスの剣を振り込んだザミエラによってガラス片の嵐が吹き付けていく。
「狙いは一点突破!」
 白い盾をかざした兵がなんとかその猛攻を凌ぐ――が、直後に上空から突っ込んできたヴァリフィルドの体躯と咆哮によって吹き飛ばされ、バウンドしながら地面を転がっていく。
 更に荒れ狂う奔流を起こしたヴァリフィルドによって起こした破壊の渦を、IJ0854はジェットの推進力によってまっすぐ飛び越えていく。
 頭部の目元にあたる部分をチカチカと点滅。大鎧に身を包んだ巨漢を発見する。道の真ん中で両腕を広げた彼は腕よりバガッという音を立てて装甲展開。折りたたまれた状態から翼のように広がった装甲はIJ0854を受け止めんと固く構えたが、IJ0854はあえてそのど真ん中へと突っ込んでいった。
 受け止めきれずに転倒した対象をそのままに、屋敷の庭へと突っ込んでくIJ0854。
 その中央で、馬より下りた女が振り返る。
 レイリー=パーヴロヴナ=カーリナ。腕の機構を展開すると、家名を彫り込まれた剣を手に、構える。
「初号機のゼシュテリオン軍閥の者か。いいだろう……阻むものはみな、打ち払うのみだ!」

●過去の栄光は遠ざかるものだから、――
 旧カーリナ家の屋敷前。庭園。
 白き花咲く花壇に挟まれて、剣を手にぐっと脚を踏ん張るレイリーめがけ豪速のミーナが逆手に握った剣を叩きつける。
 交差し激突した刃がスローに引き延ばされた世界の中で火花をちらし、二人の視線が燃えるように交わされる。
「よぉ、こんな形で出会うなんざ思ってなかったぜ。……ああ、『今の』あんたは私の事なんざ知らねーだろうが……」
「…………!」
 勢い余ってもつれて転がるレイリーとミーナ。
 黒い鎧を纏った騎士がアイシールドの内側で目を見開き、駆け寄ろうと走り出す。
「レイリー殿! 今――」
「行かせませんよっ!」
 きりもみ回転し自らを砲弾とかえたフラッシュドスコイが横合いから激突。炸裂。大爆発――かとおもいきや!
「手練れか……!」
 鋼のグローブをかざし、両手でしっかりとフラッシュドスコイをキャッチし指をくいこませることで回転をとめていた。
「――!?」
 モニターにうつる目のアイコンがぎょっと開かれる。フラッシュドスコイは追撃をさけるべく後ろ向きに回転。黒騎士から飛び退くと、纏っていたフードパーカーを脱ぎ捨てボール状のボディを露わにした。
 一度地面をバウンドして自らに弾性を付与すると、地面や近くの樹木や鉄柵へ高速で跳ね返り続けることで黒騎士の周囲を飛び回った。
「たくさんのものを奪われてなお掴み取ったお願いの気持ちまで奪われるなんて、そんなのってあんまりだよ!
 幹部のみなさんだって彼女にずっと着いてきたなら正道をご存知のはず。
 それになにより! ここぞというときボスを諌めてこそ腹心の部下でしょう!」
「何を言っている。レイリー殿をお守りすると誓って――」
 ジリ、と走ったノイズのような感覚に黒騎士は思わず頭を押さえた。
「この感覚は、一体……!?」
「ちゃんと思い出してよ! 一番最初の一番尊いWISHを! 大きな声でボスの好きなところを言えー!」
 そうして出来た隙をつき、フラッシュドスコイのバウンドアタックが後頭部に炸裂。
 と同時に、猛烈な速度で走ってきた玲の拳が弓のように引き絞られる。ギュン、と赤い霧が渦巻き拳へと集まっていく。物理的に質量の歪みが起きたがゆえか、それとも彼女のもたらすヴァンパイアオーラか。
「妾の華麗な技を――みせてやるのじゃ!」
 振り抜いた拳はガードした黒騎士の腕を強引にこじ開けて顔面へと炸裂。アイシールドをかぶとごと吹き飛ばした。
「お主らの名誉は他者から奪ったハリボテなのか?
 気品のカケラもないお主は高貴な軍人とは呼ばぬ! 恥を知れ!」
 大の字に倒れ、呻きながらも頭を起こす黒騎士。
「名誉……。確かに、何故私はこんなことを……レイリー殿……」
 玲のパンチとはまた別の理由で痛む頭を押さえながら、黒騎士はつぶやいたのちがくりと意識を失った。

 レイリーたちが激突するその一方、ザミエラと女騎士が向き合っていた。
 白いドレスに白銀の突撃槍をそなえた騎士である。
 対するザミエラは眼前に手をかざし、集まってきたガラス片が一本の両手剣へと変わった。それを握りしめ、飛び出すザミエラ。
 二人は幾度も剣と槍をぶつけあわせた。幾度となく砕けるガラスと再構築を繰り返しながらも襲いかかるガラス片。女騎士は身体がすっかり隠れるほど大きな盾をかざしてガラス片をかわすと、槍のリーチでザミエラの剣を弾いていく。
「幹部っていうくらいだし、強いんだろうけど……」
「あなたも。大概なものですね。ですが御嬢様の夢を阻む者なれば……命を賭してでも!」
 盾をかまえたままの突撃。
 堅実ながらも確実なダメージを叩きつけてくるつもりだろう。ザミエラはこの時点で『圧勝』することを捨てた。ただ勝つことだけを、彼女は目指さなかったのだ。
「同志ショッケンも言ってたけどね」
 槍が自らを貫いていく。血が女騎士の手に伝わる。そんな手首を掴み、そして伸ばした手で女騎士を抱き寄せた。
「殴って奪ったものじゃあ名誉なんて得られないよ。軍人ならそれらしく頑張らないとダメじゃない?」
 次の瞬間。女騎士の身体を貫いて巨大なガラス片が飛び出した。
 抱き合ったまま倒れるザミエラと女騎士。ザミエラの身体は粒子になって消えていった。

 その間、ぶつかり合うレイリーとミーナはそのまま庭園を抜け、旧カーリナ邸正面にある両開きの扉をぶち破ってロビーへと転がり込んでいた。
「レイリーさん!」
「あの野郎、どうやって兵達を突破してきやがった!」
 アサルトライフルを構え邸内へ突入しようとした三人組――の前に、飛行状態のIJ0854とヴァリフィルドが交差するように回り込むことで行く手を塞いだ。
 ――ぎろり、とにらみつけるヴァリフィルド。
 ――ぎらり、とアイライトを光らせるIJ0854。
 ガトリングガンの狙いが兵達へと向き、激しい掃射が開始される。
「うおっ!?」
 直撃を受けた仲間の横で、金髪の青年が咄嗟に飛び退いて舗装された床を転がる。
 膝立ち姿勢でライフルを構え反撃を開始――するが、そんな彼にヴァリフィルドによる横殴りの咆哮が浴びせられた。
「しまった、回避直後の隙を――!」
 脳、もとい精神をゆらされた兵の意識がヴァリフィルドに固定される。
 フン、と笑ったように鼻から息を吐くヴァリフィルド。
 ここは任せろと言わんばかりにTethへと視線を向けた。
 Tethはといえば、邸内へ既に突入していた敵幹部を追って走っていた。E.F.Maneuverによる滑走でロビーへと突入し――た直後に地を蹴って横っ飛びに回避。
 着弾した魔術弾が爆発を起こすが、素早く体勢をたてなおしたTethがドローンを展開。雷撃を発射させると、螺旋階段の上から砲撃してきた魔術師がぴょんとその場から飛び退いた。
 巨大なハート型のクリスタルを頂いたマジカルロッドをくるくると回し。ハイヒールブーツで着地する魔法使い。白いウィッチハットのつばをくいっとあげると、少女がウィンクした。
「ゼシュテリオン軍閥からの派遣っていうからムキムキのマッチョマンかと思ったら、カワイイ女の子が来たじゃないの。この先へ行かせるわけには行かないの。あそんでかない?」
「悪いな」
 TethはCastorのトリガーをひくと『S1:Quark_Star』を発動。
 その動きを読んでいた魔法少女が一気に距離を詰め、魔術塊のハンマーと化したロッドを振り込んでくる。即座にエーテリックブレード『Pollux』を抜霊。ぶつけることで衝撃を相殺した。エネルギーがぶつかりあいピンクとブルーの火花を散らす。

 通路を駆け抜けるミーナ。大広間への扉を蹴破ると、ホール中央で振り返るレイリーへと剣を突きつけた。
「ミーナ、彼女に想いをぶつけよう」
 後からやってきたブラワーが、マイクを握ってゆっくりとレイリーへと指を突きつける。
「レイリー、キミは家族の名誉と思い出を自分の手で奪おうとしてるんだ!
 そんなWISHはカワイクない!」
「可愛さが何の役に立つ。それで何が取り戻せる」
「戻るものなんかないよ。言葉でなんか伝わらない。だから――」
 タンッ、と力強く脚を踏みならすと突然音楽が鳴り始めた。
 魔法のカラーライトがブラワーへと浴びせられ、幻のサイリウムライトが暴れる。
「ボクの歌を聞け―!」

●立ち上がれ
 幾度となくぶつかった剣が、レイリーをホールの奥へと追い詰めていく。
 まるで二人きりのダンスのような戦いを前に、歌い続けるブラワー。
 戦いに勝利したIJ0854やヴァリフィルドが、ホールへと駆けつけ参戦した。
「相手が貴族であれば対等な闘争、どんな策も恥じることはありません。
 ですが、民衆を犠牲になさればどのような美辞麗句でもその汚れを洗いおとすことはできないでしょう。
 レイリー、ここまで登り詰めた貴方ほどの方が、なぜご自分を貶められるのですか」
「何故、部下たちが斯様な状況でも付き従っているのか。
 何故、うぬのために命を懸けてまで戦おうとするのか。
 今一度考えてみるがよい。
 再興のために必要なものは。
 略奪などで得られるものではなかろうよ」
「名誉ってのは何だろうな、レイリー」
 更にそこへ駆けつけるTethたち。
「お前のやろうとしている事は、他人に誇れる事なのか? "誉れ"として掲げられるモンなのか? 答えろ!」
「黙れ!」
 剣を振り込みミーナやTethたちを振り払おうとしたレイリー。
 しかし、その腕をミーナはしっかりと握りしめた。
「なあ、レイリー。あんたの本当の夢はなんだよ? 他人から略奪したもので、名誉を振りかざす事か?
 違うだろ! お前はいつだって正々堂々と戦い、負けたって諦めない奴だ! 私の、好きなレイリーなら……外道なんざに走るんじゃねぇ!」
 ミーナの叫びが、レイリーの奥底に眠るデータを輝かせた。
 一瞬のフラッシュバック。軋むように痛む頭を押さえ、レイリーはよろめいた。
「レイリー、家族の名誉や誇り、場所を失ったら取り戻したいと思うのは正しいよ。
 ボクは君のWISHが尊いと知ってる。両親や兄が大好きで、幸せな日々をおくって……」
 歌を終え、歩み寄るブラワー。平手をかざし――。
「レイリー、まだキミは真っすぐ歩けるんだ! だから、――」

●そして今こそ明日を歩くんだ
 ロビーに倒れたレイリーが、ゆっくりと起き上がる。
「私は……」
 ハッと目を見開き、手を顔に当てる。
「なんて、ことを……」
 うつむこうとした彼女の眼前に、手が差し出された。
 思わず見上げたレイリー。
 手を差し出したブラワーが、ニッコリと笑いかける。
「やり直せるよ。なんだって」
「そうか……それが……」
 カワイイ、ってやつか。

成否

成功

MVP

ミーナ・シルバー(p3x005003)
死神の過去

状態異常

ヴァリフィルド(p3x000072)[死亡]
悪食竜
ザミエラ(p3x000787)[死亡]
おそろいねこちゃん
Teth=Steiner(p3x002831)[死亡]
Lightning-Magus

あとがき

 ――レイリー軍閥を打倒しました
 ――レイリーのDARK†WISHを払い、WISHを取り戻しました

 ――レイリー軍閥がゼシュテリオンの仲間に加わりました!

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