PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ファースト・クエスト

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●勇者候補生名簿【ZOZI1】ヒルダ

 これは、某国の兵舎における日常風景だ。
剣を、盾を、あるいは弓といった様々な武器を構えた若者達が、同じ齢と思しきもの相手に切磋琢磨をし、もしくは的を相手にそれぞれ訓練に励んでいた。
しかし突如、カンカンカンという鐘の音が、兵舎の内外に広く響き渡る。
それと同時に、彼らの倍以上の年頃であろう教官が、高らかに彼らに呼びかける。

「勇者候補生諸君、集合ッ!」
「「「ハイッ!」」」

 彼らにとってこれが集合の合図であると言う事はすっかり染み付いているようで、あっという間に教官の前へと集まった。
多くの若者達がめいめいの武器を携えながら、きっちりと列に並んでいる。

「訓練ご苦労だった、勇者候補生諸君。本日の君達の成果を、見せてもらおう。……ではヒルダ。代表としてやってみろ」
「はいっ!」

教官がヒルダに指し示したのは、年季を帯びた案山子だ。
案山子と言っても古びた鎧や兜など、廃棄寸前の装備から作られたそれは、それでも押し倒すのには相当の力を要するものだ。
しかしそれが、一見細腕にも見える彼女の一突きで、いとも容易く倒される。
それを見ていた彼女と同じ『勇者候補生』達も、思わず『おお』と感激の声を上げた。

「動きに迷いがなく、正確に胴を突いている。素晴らしい動きだ。これに磨きをかければ、さらに素晴らしいものになるだろう。励み給えよ」
「はいっ」
「それでは本日、これにて解散っ! 休息もまた我らの仕事、しっかり静養をとるのだぞ!」
「ありがとうございました!」

教官がそう呼びかけると、若者達は一斉に一礼。彼が去った後、彼らもそれぞれのペースで動き始めた。

「ヒルダちゃん、すごいです!」
「そんな、あたしなんてまだまだよ、ワルツ。」
「ふふっ、謙虚な所も素敵です。……そうだ、ヒルダちゃん! 一緒にご飯、食べに行きませんか? 港の方に美味しいレストランがあるらしくって!」
「ええ、勿論」

 槍使いのヒルダとワルツは、この兵舎で共に訓練を積む内に友人になった。
同じ武器を扱うため、同様の訓練を行う事も多く……そのうちに、こうして仲良くなったのだ。

彼女らの属する『勇者育成棟』を出て、港に向け歩き始める二人。

「あっいた! 勇者様!!」

しかしそんな二人のもとに、突如少年が風のように飛び込んできたのだ。

「ん、きみはどこの子なんです?」
「どうしたの、顔色悪いわ!」
「勇者様……助けて……ルカが、弟が……!」
「少しずつでいいわ、落ち着いて、話してごらん?」

 最初はパニックだった涙目の少年も、ぽつりぽつりと、事情を話し始めた。
曰く、自分達は街の自然公園で、鬼ごっこをして遊んでいたという。
鬼と逃げる役を交互に行い、何度目かのルカ鬼の番。鬼から逃げる弟に、突如として緑の影が覆い被さったと言うのだ。
それから、弟の姿が消えてしまった、と。

「あれはきっとスライムだよ。スライムって、獲物をくるって包んで食べちゃうんでしょ? だからお願い、勇者様。僕の弟を助けて……!」
「まさか街中にも魔物が出るなんて……これも『魔王』の影響かしら」
「でも、私達は……まだ……」

彼は自分達のことを『勇者』と言うが、自分達はまだそれに至ってなどいない。
けれど、少年の話を聞く限り、状況は急を要するようだ。誰かを呼びに行く時間さえも惜しまれる。
ぎゅっと拳を握りしめて。ヒルダは友へと顔を向ける。

「ワルツ、その子をお願い」
「えっでも、ヒルダちゃんは」
「あたしは大丈夫よ、行ってくる!」

訓練用の槍を手に、乙女は駆け出した。
一刻も早く、魔物を打ち倒さなくては……!

●まだ彼女は、LV1でさえないのに

「イレギュラーズ、今ちょっと時間あるかな」

 境界図書館を訪れたイレギュラーズに、マチネが声をかけてくる。
その表情は真剣そのものだ。あなたはその足を止め、彼女の話を聞くだろう。

「勇者候補生のヒルダって言う子が、一人でモンスターを倒しに行こうとしてるの。でも彼女、まだ一人前の兵士でもなくって、あくまで訓練生に過ぎなくって」

そんな彼女が、一人でモンスターを倒しに行くなど、無謀がすぎる。
だからどうか、彼女を助けてほしい。そう懇願した。

「未来の勇者になるかもしれない子が、ちゃんと毎日頑張ってる子が、無茶して死んじゃうのは、あたしも嫌なの。だからどうか、助けてあげて」

その願いに、貴方の返した答えは……?

NMコメント

どうも、なななななです。
アナタにとってスライムは雑魚でしょうか、厄介なモンスターでしょうか。
どちらにしても、非力な人間には充分脅威となりうるものでしょう。

以下、詳細になります。

●ドラグナー

 今回、皆様が赴く世界の仮名です。
ゴブリンあり、オークあり、ドラゴンありな剣と魔法のファンタジーな世界になります。
テレポート魔法、魔法の街灯などは一般的に広まっていますが、科学技術、医療はあまり発達していないようです。

現在、この世界には着々と『魔王』の侵略の手が迫っており、それに立ち向かうための兵隊として、はるか昔、魔王を打倒した者たちの伝承をなぞり、国を挙げて『勇者』を育成しています。

●目的

『スライムの撃破』『ヒルダ&ルカの救出』の2点になります。
スライムは皆さんが到着した時点で注意がヒルダ&イレギュラーズに向きますが、少年を遠ざけたり、守る人がいればより安心かもしれません。

●エネミー

スライム×1

透き通った緑色の体を持つ、ぷるぷるとした魔物です。
獲物を見つけると拘束し、自らの巣穴に持ち帰り、ゆっくり硝化して食事する習性があるようです。
体の中心部にある赤いコアが弱点と言われていますが、素人が正確にそこを突くのはとても困難と言われています。

戦闘中も皆様を軟体で拘束したり、絡め取ったりと妨害をしてくることでしょう。


●NPC

ヒルダ
・勇者候補生の一人で、槍使いの乙女です。
真面目で、正義感の強い性格をしています。
槍の腕について、教官には『狙いが正確で迷いがない』と褒められましたが、あくまで彼女は訓練生という身の上。彼女一人では、スライムに勝つ事は困難でしょう。


ルカ
・スライムに攫われた少年です。
スライムが巣穴に帰る途中だったためか、幸い、まだ消化されてはおらず、五体満足で居ります。
しかし恐怖に身体が震え、誰かの助けなしには逃げられないでしょう。


以上になります。
どうか、未来の勇者と少年を助けてあげてください。

  • ファースト・クエスト完了
  • NM名ななななな
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月08日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

八田 悠(p3p000687)
あなたの世界
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)
グレイガーデン
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花

リプレイ

●勇者よ、その一歩を踏み出せ

 土を踏みしめ草を蹴り、乙女はひたすら駆け抜ける。それは無垢なる子を助けるため。『勇者』の責務を果たすため。

そして彼女は、ようやくそこにたどり着く。

「助けて!」と叫ぶ少年、その身は透き通った軟体に包まれており、それが故に少年は抜け出せぬほどにきつく拘束されている事が窺える。

「くっ……!」

彼を助けるために踏み込もうとするヒルダだが、スライムが身体の一部を飛ばして威嚇してくる。一見ゼリーのようにも見えるそれだが、弾けた内容液が触れた地面や木の幹をことごとく溶かしていく。これでは迂闊に近づけない!

しかし、スライムに臆す事なく挑むのは、彼女だけではなかった。

「動くなよ、少年!」
「10秒目を閉じておるがよい!」

その言葉と共に、突如スライムの身体が裂かれたのだ。
ヒルダが見たのは、『散らぬ桃花』節樹 トウカ(p3p008730)が卓越した斬撃でスライムだけを斬り刻み、『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)が、目にも留まらぬ連撃を打ち込む。そうしてスライムが怯んだ隙に彼をスライムから引きずり出したのだ。

「よくここまで耐えた! 偉いぞ!」
「怪我してないかい?」

頭を撫でて少年の無事を喜ぶ百合子、そして彼の
傷を治す『グレイガーデン』カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)。彼女らの姿に、少年の目にはじわりと光るもの。
スライムから少年が離れた今、遠慮する事は何もない。『あなたの世界』八田 悠(p3p000687)は、自らの存在をスライムに知らしめた。

「戦うことを選んだのなら、初陣は絶対に避けられないよねえ。強くても死ぬ時は死ぬし、弱くても生き残る時は生き残る。時の運ていうのは本当にあるのだろう。……君は、幸運だと思うよ」
「貴方達は……一体……?」
「俺達は、ヒルダ君の味方だ」
「吾らはルカ殿、そしてヒルダ殿を助けに来たのだ!」
「ルカさんの事はもう大丈夫だからね」

 先程の立ち回りからして、イレギュラーズという存在は、自分達『勇者候補生』とは違う、相当な強者である事が窺える。心強い味方を得たヒルダは、改めて槍を構え直す。

「ではルカ殿、吾についてきてくれ。まずはこの場を離れよう」
「うっ、うん!」
「まって、その前に」

少年に怪我はないが、来ているシャツが破れたり、溶けたのか穴が空いてしまっている。ばさり、カティアは自分の上着をかけてやる。

「ありがとう……えっと……おね……おにい……?」
「百合子、頼んだよ」
「うむっ!」

少年を抱きかかえたまま、百合子はロケットのように駆け出す。強い風が吹き抜けた刹那、少年の『うわぁ〜!!』という叫び声が聞こえてきたが、それだけ大きな声が出るということは、彼が元気であるという証左だろう。

 百合子の背を見送った後、トウカは改めて周囲を見渡す。
敵はいかにもスライムと言った容貌のモンスター一匹。隣に立つ乙女は、訓練用とは言えども、見るからに重そうな槍にも負けずしっかりと戦闘態勢を取っている。しかも、この世界では『勇者候補生』と呼ばれる者。豊穣の中もある意味神秘に満ちているが、今回境界案内人の手引で訪れた、ファンタジーな世界。これはこれで胸躍るというものだ。

「トウカ?」
「おっと何でもない! 勿論、スライムはきっちり倒すぞ。よろしくな、ヒルダ」
「え、ええ……」
「よし、ヒルダも準備は出来ているね。さて、僕とカティアは後方支援に徹する。トウカ、ヒルダと一緒に前に出てくれ」
「うん、僕達が周りを見てるから、二人はスライムに集中して」
「わかった」

悠の支援を受けて、トウカとヒルダは並び立つ。まず仕掛けたのはトウカ。
紫の芍薬、その花弁がスライムの前に舞い飛ぶ。

(青汁みたいな緑系で不味そうだな、お前!)

その思いが届いたのか、スライムのうねる身体は、トウカを身体を伸ばし、トウカの手首を掴んだ。そのまま彼を呑み込むつもりなのだろう。

「させない!」

そこに間髪入れず、ヒルダが槍を叩き込む。触腕を弾かれたスライムは、身体を波立たせ震えている。怒っているのだろうか?
ヒルダの迷わぬ一打ですぐに脱したとはいえ、トウカの腕には、締め付けられた痕が痛々しく残っている。

「大丈夫、トウカ? 今回復するよ」
「ああ、助かる……」
 
そこにすかさず、悠が天使の歌を贈る。
更に、ルカを安全な場所まで退避させてきた百合子が、涼やかな背負い戻ってきた。その髪は光を受けて、レースのようにしなやかに揺れていた。

「待たせたであるなあ、皆の衆!」
「百合子さん! 今ならスライム、隙だらけだよ」
「了解である、何発も叩き込んでやろうぞ!!」

舞い飛ぶ百合百合百合百合ユリユリユリィ!!
百合子の宣言通り、スライムは圧倒的な手数に何度も何度も打ちのめされて、その場からろくに動くこともできない。

「すごい……この人達、皆ちゃんと自分の役割で動いてて……しかも動きに無駄がないわ……」

 先達たる彼らの動きに圧倒されながらも、ヒルダ自身もまたイレギュラーズ足手まといにならぬようにと、懸命に敵に食らいつき、時に何とかスライムの攻撃を受け流している。
全くの無傷とは行かずとも、その傷はカティアによりすぐに癒やされたり、攻撃を弾き返したりとヒルダも充分な健闘が窺え、少なくとも、戦線はそれなりに安定していると言えるだろう。

「……この分だったら『大丈夫』かな」

一人静かに、そう呟く悠。これも彼女の成長のため。
絶えずこれまで絶えず掛けていた支援を、敢えて『切った』。

「あっ……あれっ?」

自分の身体に十分に力が入らず、加護が失われている心地を感じたのは、それから間もなくのことだった。普段と同程度に槍を振るう分には、何一つ支障はないのだが……。

「なんで……私……?」

状況に困惑しつつも、尚も槍を下ろさぬヒルダ。しかし彼女の動きは、戸惑いが故に少し悪くなっている。スライムの知能が如何程あるかはわからないが、熟練者たるイレギュラーズの中で、明らかに一人浮き足立っているヒルダを見逃す程愚かではない。彼女の足が、スライム吐き出した粘液に絡め取られる。

「あ……いやっ……!」

抜け出そうと慌てて藻掻くも、それは余計に彼女の死体へと絡みつき。

「助けてっ……!」
「助けるさ、仲間だからな!」

そう言い彼女を庇う大きな背は、トウカのもの。緑の体は彼を縛り付けるものの、トウカは苦悶の声一つも挙げずに、スライムに立ち向かい続けている。その間に、彼女に絡みついたスライムを、百合子がベリベリと剥がしてゆく。


「大丈夫か、ヒルダ殿?」
「え、ええ……ありがとう……私もちゃんとしなきゃいけいないのに……」
「大丈夫だよヒルダさん、キミは一人で戦う訳じゃない。これまでも、これからも」
「カティアさんの言うとおりだよ。以心伝心、阿吽の呼吸っていうのもカッコいいけどね。連携の基本は声掛け。君の方からも、どんどん声を出していいんだ」
「そういえば……」

ーーではルカ殿、吾についてきてくれ。まずはこの場を離れよう。

ーートウカ、ヒルダと一緒に前に出てくれ。
ーー僕達が周りを見てるから、二人スライムに集中して。

ーー大丈夫、トウカ? 今回復するよ
ーーああ、助かる。

ーー百合子さん! 今ならスライム、隙だらけだよ!
ーー了解である!

これまでの戦いでも、彼らは何度も他者に声をかけ、時に応えを、感謝を伝えていた。
彼らのような卓越した動きは、一朝一夕身につくものでは無いかもしれないが。それでも、自分にも今すぐ、できることがあるではないか!

「トウカさん……といったかしら。大丈夫ですか!?」
「ああ……俺はこれくらい、何ともない」

ギリギリとスライムに絡め取られて尚も、鬼は怯まず笑ってみせる。一方のスライムはトウカを拘束したことで優位を得ているようにも見えるが、彼を囚えている限りあの場からは動けまい。しかも柔らかな身体はこれまでの攻防で随分と削られており、赤いコアを守る肉壁が随分と薄れているようにも見える。
……狙うなら今だ!

「今、助けます!」
「いざヒルダ殿! 鍛錬の成果を見せる時である!」

槍の先を、赤く鳴動するコアに合わせて。
ヒルダは迷うことなく、そこを貫いた……!!


●乙女よ、いずれ勇者となれ

「ルカを助けてくれてありがとうっ!」
「ありがとーございましたっ!」

イレギュラーズに助けられたルカ、そしてその兄は、笑顔で礼を告げると、元気に家へと帰っていった。

「いやあそれにしても、よくぞ奴めを仕留められた。貴女であれば立派な勇者となれよう」
「いいえ、皆さんが居なかったら、私もきっと勝てなかったわ。ありがとう」
「礼には及ばないよ」

君をちょっと試しちゃったしね、と笑う悠に、ヒルダは首を傾げる。どういう事かはよく分かっていないらしいが、今はそれで良しとしよう。

「ざっと見てきた感じ、他の魔物は公園に住み着いてないようだけれど……一応、今回の事、教官に報告した方が良いんじゃないかな。他の場所にも潜んでいるかもしれないし」
「そうね……勝手に行った事は怒られちゃうかもしれないけど、ちゃんと報告して、ちゃんと叱られるわ。友達にも心配かけちゃったし」
「はは、それもまた経験になるだろう 
それじゃあ、これからも頑張れよ、ヒルダ君」
「ええ、ありがとう!」

 イレギュラーズの声を背に受け、勇者育成棟へと彼女は帰っていく。今回の戦いを通じ、個々の腕以上に大事な事を教わった彼女は間違いなく、『勇者』と呼ばれるための第一歩を踏み出した事だろう。

いつかきっと、それが花開きますように。

成否

成功

状態異常

なし

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