シナリオ詳細
はじめまして、アデリーカフェ!
完了
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オープニング
●
どこまでも広がる青い海、そしてその上に点在する小さな島々。
海の中では多種多様な生き物が泳ぎ回り、島の上では水陸両方で暮らせる生き物と人間達が穏やかな日々を営む。
それがこの『ドリーム・シーランド』のすべてだ。
そんな長閑な世界の片隅で――数体のアデリーペンギン達がトテトテと歩き回っていた。
「いそがしい、いそがしい」
「皆で作ったカフェの開店日ですからね。頑張らないといけません」
ペンギン達の言葉の通り、彼らのすぐ側には綺麗な建物が聳え立っていた。
看板には愛らしいペンギンのイラストと『アデリーカフェ』という字が刻まれ、新装開店を祝う花なんかも飾られている。
どうやら今日はこの喫茶店のオープン日のようだ。
「さてさて、お客さんは来てくれますかな」
「せっかくだからスタッフさんももう少し欲しいところですな」
こういうのは一日目が大切だ。
もっと開店を盛り上げる手段はないか……。準備を進めつつ、ペンギン達はむむむ、と唸っている様子。
そんな中、一羽のペンギンがばさっと翼を広げる。その瞳はキラリと輝いていた。
「それなら……こんなのはどうでしょう。異世界から、お客さんとスタッフを呼ぶのです」
●
「みんな、来てくれてありがとう。今日は可愛らしい世界からの頼み事だよ!」
一冊の本を胸に抱きながら、イレギュラーズ達へと歩み寄るのは境界案内人・ポルックスだ。
彼女の持つ本は海をモチーフにした装飾で彩られ、デフォルメされた海の生き物達も描かれている。
「この本の中にあるのは『ドリーム・シーランド』と呼ばれている世界なんだ。人間とヒトの言葉を話す海の生き物達が、のんびり暮らしている世界なんだよ」
そう言いつつ、ポルックスは本を開いてとあるページを提示してきた。
描かれているのは――アデリーペンギン達だ。
「今回皆に向かってもらいたいのは、このペンギンさん達の暮らす島だよ。ペンギンさん達が新しく喫茶店を開いたから、開店イベントを盛り上げて欲しいんだって」
本の中の世界では、ペンギン達が『アデリーカフェ』という喫茶店を開こうとしているらしい。
そしてせっかくの開店なのだから、様々な人を招いて開店イベントをしよう……という話になっているようだ。
「イレギュラーズの皆には、お客さんとして喫茶店を訪れるか、当日限りのスタッフとしてペンギンさん達を手伝ってもらいたいんだよ」
客として訪れる場合は、素直に接客を受け入れればいい。
ここは不思議な海の世界だが、イレギュラーズ達が飲み食い出来るようなメニューだって取り揃えられているようだ。
「紅茶とかコーヒーとかトロピカルジュースとか……あ、あとはひんやりパンケーキにふわふわかき氷もオススメだって!」
飲み物は温かいものもあるようだが、食べ物は冷たいものが中心らしい。ある意味海の世界らしいだろうか。
「スタッフになる場合は、指定された制服を着てお手伝いしてね。今日は新規開店だからお客さんも皆ペンギンさんみたいだし、一緒に遊ぶつもりで行ってもいいんじゃないかな?」
やることは普通の喫茶店と変わらない。
客から注文を取ったり、注文された飲食物を運んだり、料理が得意な者なら調理場を手伝うのもいいだろう。
「そして指定された制服っていうのは……これだね!」
ばーん、とポルックスが開いたページに描かれているのは……アデリーペンギンの色合いを思い起こさせる、白と黒のクラシックメイド服に執事服である。
「好きな方を選んでいいんだって。サイズはその場で合わせてくれるから大丈夫だよ!」
ニコニコ笑顔で告げるポルックスは、兎に角楽しそうであった。
「……説明はこのくらいかな? ペンギンさん達はゆるい性格をしているみたいだし、のんびり楽しんできて欲しいな」
話を締めくくりつつ、ポルックスは改めてイレギュラーズ達へと笑顔を向ける。
そしてぺこりと頭を下げ、本のページを開いていき――。
「それじゃあ、行ってらっしゃい!」
明るい声と共に、異世界への道が開いていった。
- はじめまして、アデリーカフェ!完了
- NM名ささかまかまだ
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年07月13日 18時50分
- 章数1章
- 総採用数18人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
案内された席に腰掛け、『お茶会は毎日終わらない』有栖川 卯月(p3p008551)はぐるりと店内を見回す。
店内にいるのは、ほとんどペンギン。
様々なカフェを巡ってきた卯月だが、このような光景を見るのは初めてだった。
不思議な光景を眺めたあとは、冊子片手にメニューの確認だ。
(うさてゃんは何を頼もうかな?)
ちょっと考え込んで、顔をあげて。そんな卯月の様子に気付いたのか、一羽のペンギンが寄ってきた。
「注文ですか?」
「うん。ストレートのアイスティーと……『ひんやりトロピカルパンケーキ』っていうのをお願いできる?」
「かしこまりました」
この辺りの流れは一般的な喫茶店と変わらないようだ。
暫く待てば――店員が注文の品を持ってきてくれた。
(ここのパンケーキ、どんな感じかな?)
パンケーキの上にはバニラアイスが置かれ、その周囲をマンゴーやパイナップルが彩っている。
ナイフで小さく切って、アイスやフルーツと一緒に口に運んでみれば――。
「……ほんとだ、ひんやりしてる!」
生地も他の素材とマッチするように冷たいが、けれどふわふわの食感は失われていない。
味付けは甘めで、飲み物と合わせやすくしているようだ。
初めてのカフェ、初めてのメニューはいつでもワクワク。それが素敵なら尚更だ。
(素敵なところだな、今度は誰かと一緒に来よう)
ペンギンさんのお店があるんだよってお誘いしよう。そう決心する卯月だった。
成否
成功
第1章 第2節
カフェは開店初日という訳で、店員達の様子は忙しない。
そんな彼らへと声をかける者達がいた。
「わたしも料理が出来るし、手伝わせてもらってもいいかなぁ?」
「調理のヘルプなら任せてくれ! 俺も料理の腕には自信があるからな!」
そう語るのは『繋ぐ者』シルキィ(p3p008115)と『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)だ。
店員は二人の言葉に羽根をパタパタ動かし、喜びを示している。
「ありがとうございます、それではこちらへ」
こうしてイレギュラーズ達は案内に従い、店の中へと入っていく。
そして早速着替えて厨房に立つことになったのだが――。
「ゴリョウさんはエプロンを着るんだねぇ」
「執事服、ピッチピチになっちまうからな……」
シルキィが微笑ましげに眺める傍らで、ゴリョウは可愛らしいペンギン柄のエプロンを装着していた。
そして着替え終わった二人の様子に気付いたのか、リーダーらしきペンギンがぺちぺちと歩み寄ってきたようだ。
「それではお願いしますね。メニューはこちらを」
「ふむふむ……必要そうなのは大体ある感じだねぇ。タピオカもあるんだ!」
「やっぱ喫茶店メニューが多いか、となれば定番のモンも作らねぇとな!」
ゴリョウが目をつけたのは食事メニューのようだ。
ここに肉や魚はないけれど、野菜や調味料は一通り揃っている。そして何より――。
「オムライスとか、ピラフとか、カレーライスとか、色々作れそうだな!」
「つまり……」
「うん、そうだね、お米だね!」
ニカっと良い笑顔を浮かべるゴリョウ。そんな彼に対し、ペンギン達は拍手を返している。
「喫茶店っぽいだろ!? ああ、デザートも任せてくれよ。何でも作るぜ。食うもん作る以上はそれなりの覚悟があるってな!」
「おお……本当に頼もしいです。ありがとうです」
明るく元気に語るゴリョウだが、胸に籠めた想いは真剣だ。
それが結果として示されるのは、もう少し後のお話だろう。
一方、シルキィの方はデザート類の盛り付けを手伝うことにしたようだ。
「目玉はパンケーキにかき氷かなぁ? ペンギンさん、盛り付けどうやるのか教えてもらっても良いかなぁ?」
「勿論です。用意するのはアイスとフルーツと……」
指示を貰い、テキパキと動き回るシルキィ。
あっという間に盛り付け方をマスターし、こちらも準備は万端のようだ。
「よーし、これでわたしも本格的に動けるねぇ! ちょっと緊張してるけど、きっと大丈夫だよぉ」
笑顔と声色は緩く、けれど彼女の想いも真剣そのもの。
売る側として厨房に立つのは初めてだけれど、それでもお客さんに喜んで貰いたいという想いは本物だ。
「一生懸命頑張るから、改めてよろしくねぇ」
「はい、こちらこそ」
シルキィ店員の仕事は始まったばかり。だけどきっと、素敵な結果を残せるはずだ。
こうしてイレギュラーズ達の手助けもあり、厨房はスムーズに仕事を進めるのだった。
成否
成功
第1章 第3節
●
アデリーカフェに、すらりと立つ姿が一つ。執事服の『グレイガーデン』カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)だ。
頼もしい仲間の来訪に、店員ペンギンは嬉しそうに声をあげている。
「おお、制服もぴったりです」
「ありがとう。制服は男女で分かれて……ないんだ。なかなか大胆だね……?」
ちょっと不思議な感じだが、準備は万端。仕事の準備も始めなければ。
カティアが注目していたのはレジの方だった。
そこに置かれていた記念カードを手に取って、じーっと観察。それから、カティアは店員へと声をかけた。
「記念品だね。こういうのをどう処理するかで流れが変わってくると思うんだ」
「ふむふむ」
「キミ達の生活に合わせて、防水にもしておくといいと思う」
的確なアドバイスに店員はうんうんと頷いている。
「何より、手元に何か残るものがあると、それを見てここで過ごしたことを思い出して、また行こうと思うじゃない?」
「なるほど、素敵なのです」
大きく頷く店員に、カティアは柔らかな笑顔を返す。
こういう細やかな部分に気を遣えるのも、カティアの経験故だろう。
こうして準備を進めていれば、新たな客もやってきたようだ。
「いらっしゃいませ。何名様? それなら、席は──」
それに合わせ、カティアは優雅な動作で仕事をこなしていく。
そのスムーズな様子は、店員達の確かな助けとなるだろう。
「ごゆっくりどうぞ、楽しい時間を過ごしてね」
成否
成功
第1章 第4節
●
カフェに一歩足を踏み入れたのなら、出迎えてくれるのはペンギン達。
そんな不思議な光景に天色の瞳をきらきら輝かせるのは『天色に想い馳せ』隠岐奈 朝顔(p3p008750)、その隣で柔らかな笑みを浮かべるのは『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)だ。
「本当にペンギンが喋って接客してる……!? タイム先輩の言っていた通りです!」
「朝顔さんが喜んでくれて何よりよ。こういうの、好きなのかな?」
「はい、海をモチーフにしたモノとか大好きです……!」
「ふふ、尚更誘って良かったわ」
二人が談笑している間に、案内役のペンギンがやってきたようだ。
案内のためにトテトテ歩く後ろ姿を、朝顔は食い入るようにじーっと見つめる。
「きっと触ったら冷たくて気持ち良いんだろうなぁ……」
けどきっと、お触り厳禁なんだろうな。ちょっと残念。
そんな朝顔の様子を察してか、タイムがそっと店員へと歩み寄った。
「お触り、駄目かな? お願いしてみれば握手くらいはしてくれるかもよ。ほら……」
手をそっと差し出せば、店員はこてんと首を傾げる。その様子ににっこり笑顔を返し、タイムは更に言葉を紡いだ。
「ペンギンさん握手いいですか~?」
「はい、どうぞ」
ぎゅぎゅっと握手。その勢いのまま店員は朝顔にも近付いて、ぎゅぎゅっと握手。
「わっ、ふわふわひんやり……!」
「ほら、大丈夫だったよ。良かったね」
楽しいコミュニケーションもしつつ、二人は店内を進んでいく。
無事に席に着いたのなら、二人は早速メニューを手に取る。
「何にしよう? 大体のものは揃っているみたいだけど……」
「うーん、豊穣では見慣れないモノが少し……タピオカとか、何でしょう?」
見慣れない名前を見つけハテナを浮かべる朝顔に、タイムがにっこり笑みを返す。
「わたしそれ知ってる~。食感が不思議な飲み物……って言えばいいかな。黒糖が入ってて朝顔さんにも案外馴染みのある味かも。頼んでみる?」
「それなら是非! それと……パンケーキも豊穣で見た事ないから気になりますが、かき氷も気になりますね……」
「パンケーキはねぇ、蜂蜜たっぷり乗せて食べると美味しいのよ」
「わぁ、美味しそうです……」
気になるメニューは多々あれど、一人きりでは食べ切れない。
けれど今日は、二人で一緒だから大丈夫。
朝顔はメニューを指差し、タイムへ顔を寄せる。
「そうだタイム先輩。折角ですから、パンケーキとかき氷を1つずつ頼んで分け合いませんか?」
「うん、その案でいこう! かき氷はどうしよう、やっぱりブルーハワイかな?」
「それでお願いします。タピオカ……オススメありますか?」
「黒糖タピオカミルクなら朝顔さんでも飲みやすいと思うよ。それじゃあ注文しよう!」
二人は店員を呼び寄せ、決めたメニューを注文していく。
それから暫く待てば、もっと楽しい時間が待っているだろう。
そんな予感に、ふふりと笑顔を零す二人だった。
成否
成功
第1章 第5節
●
借りた制服を着込んで、『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)はアデリーカフェをぱたぱた駆ける。
メイド服は着たことがあるから今日のチョイスは執事服。何故か背筋が伸びる気がする。
けれどそれ以上に気になるのは――。
(ペンギン様たちはどんなご飯を食べるのでしょう?)
注文を取ったり、食べ物や飲み物を運んだり。その最中にこっそり見つめるのは客のペンギン達の様子だ。
どうやらこの世界のペンギンは人間と同じ飲食物を好んでいるらしい。海藻なんかも好んでいるようだが。
混沌にいるペンギンとは実際は違う存在なのだろうか。
けれど、彼らが美味しいと思うものを美味しいと思うままに楽しめるなら、とても幸福なことだとニルは思う。
「ニルさん、次はあちらの席にかき氷を」
「はい、分かりました!」
テキパキ仕事をこなしていけば、店の様子は更に賑やかになっていく。
「いやはや、助かります。制服もばっちり着こなして頂けて感無量です」
「本当ですか、似合いますか? そう言ってもらえて嬉しいです」
にっこり笑顔で更に仕事を続けるニル。
素敵な料理を運ぶ度、目に入るのは楽しそうに食事を楽しむ客の姿だ。
(ああ、ニルは「おいしい」を手伝えているのですね)
胸の内がぽかぽかするような不思議な感触。けれどそれが、何より嬉しい。
(それならお手伝い、もっとがんばりますね!)
暖かな想いを抱きつつ、ニルの仕事はまだまだ続くのだ。
成否
成功
第1章 第6節
案内された席に腰掛けつつ、朔(p3p009861)はぼんやりと周囲を眺める。
窓の外には抜けるような青空と、どこまでも広がる海。もう少し視線を手前に引けば、砂浜の上をペンギン達が歩いていた。
まさに『平穏』という言葉を体現したかのような光景に、思わず小さく息が零れる。
(ペンギンたちの島、ねぇ)
先程席まで案内してくれたペンギンとは、普通に会話を行えた。長閑な光景の中に滲む非日常。妙な気分だが、悪くはない。
それならそれらしくのんびり過ごそうか。そう決心した朔は、メニュー表へと手を伸ばす。
暫しメニューを眺め、注文が決まれば手近な店員を呼び寄せて。
「注文はカフェオレと……スフレパンケーキを頼む」
「はい、かしこまりました」
店員は礼儀正しくしっかりしていた。
これがペンギンだという事実は今も不思議に思うけれど、それでも見ている分にはなかなか楽しい。
喫茶店という慣れない空間においても、彼らを眺めていればなんとなく落ち着く気がした。
しかし、あまりじっと見ているのも失礼だろうか。
ほどほどのところで、朔は再び窓の外へと目を向ける。
やはり広がるのは青空に、海に、砂浜に、ペンギン達。
「……平和だなぁ……」
ぽつりと零した言葉は日常の賑わいに溶けていく。
そろそろ注文した品も運ばれる頃だろうか。それならもう暫く、この平穏を楽しもう。
テーブルに視線を向け直す朔の表情は、どこか柔らかかった。
成否
成功
第1章 第7節
あっちを見てもこっちを見ても、とてとて歩くのはペンギン達。
そんな愛くるしい光景を前に、『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)の表情は満面の笑みになっていた。
「わぁっ、ペンギンちゃん可愛いっ! 癒しだねえー……」
森で生まれ育ったクルルにとって、鳥類というのは狩ったり食べたりの対象ではある。
けれどそれはそれ、これはこれ。可愛らしい生き物がいればついつい愛でたくなるのが乙女心というものだ。
今日はそんなペンギンさんと共に、カフェのお仕事に挑戦してみよう。
――という訳で制服として借りたのは、黒と白のメイド服だ。
しっかり着こなせているだろうか。備え付けられた鏡の前で、クルルは小さく首を捻る。
「……大丈夫かな、似合うカナ?」
くるりとその場で回ってみれば、鏡の中にはスカートをひらりと舞い踊らせるクルルの姿が。
見た目は少女なクルルだが、実際は百歳以上の幻想種。制服を着るのに少し緊張もしたけれど、これならきっと大丈夫だろう。
通りがかった店員も、クルルの様子を嬉しそうに眺めていた。
「よく似合っておりますよ」
「ありがとう! 馬子にも衣裳って奴だねえ」
準備が整ったのなら早速フロアへ。
見れば入り口の方で、ペンギン達がひらひらと翼を振っているようだ。
「はい、いらっしゃいませっ! アデリーカフェへようこそ!」
クルルは元気いっぱいの笑みを湛えて、そちらの方へ駆けていのだった。
成否
成功
第1章 第8節
窓辺の席に腰掛けつつ、『自称未来人』ヨハナ・ゲールマン・ハラタ(p3p000638)は一羽の店員と対峙していた。
「ところで聞いてくださいペンギンさん」
「はい、どうしましたか」
「昨日、近所の牛丼屋さん行ったんですよ。あ、牛丼屋というのはヨハナの世界の飲食店なんですけど」
軽快な口調で紡がれだす、なんだか有名な語り出し。店員は頷きつつ聞いている。
「そしたら人がいっぱいいて座れなかったんです。で、よく見たら150円引きと書かれた垂れ幕下がってて」
「なるほど。割引ですか」
「もうね、150円引きで普段来てない牛丼屋さんに家族連れで来るってね。よーしパパ特盛頼んじゃうぞーってほほえましいですね」
そう語った所で、ヨハナはハッとした表情を浮かべる。そういえば挨拶も注文もまだだ。
「……あ、すみません、この話長くなるのでそろそろやめますねっ! ともあれ開店おめでとうございますっ!」
「ありがとうございます。それではどうされますか?」
「ヘイマスターっ! いつものっ!」
「初来店では?」
「そうですね! という訳でイングリッシュブレックファーストティーラテ オールソイ ホワイトモカにチェンジでお願いしますっ!」
その後しっかりと注文は受け取られ、飲み物は無事にヨハナの元へと運ばれることとなる。
ペンギンさん達、ノリ良いのかな。そんなことを思いつつ、ヨハナは甘い味わいをじっくりと楽しむのだった。
成否
成功
第1章 第9節
アデリーカフェの控室にて。
『正義の味方』ルビー・アールオース(p3p009378)は借りた制服を着込み、準備を進めていた。
「この制服可愛い! これを着て店員さんをやればいいんだよね?」
「はい、その通りです。よくお似合いですよ」
「ありがとう! でもスピネルにも見せたかったなぁ……」
ちょっと肩を落としつつ、ルビーが思うのは此処へ来れない幼馴染のことだ。
でも自分一人でも、困ってる人を助けるのは英雄の務め。店員さんのお仕事も人助けには変わりない。
グッと気合を入れると同時に、ルビーは客へと笑顔を向けた。
「いらっしゃいませー、奥の席へどうぞー!」
「はい、ありがとうございます」
「お絞りとお水いまお持ちしますねー!」
元気いっぱいなルビーの姿を、ペンギン達も和やかな様子で見守っている。
「ハイ只今お伺いいたしますご注文どうぞミックスジュースとフルーツパフェですね少々お待ちくださいミックスジュースとフルーツパフェ同卓でーす!」
……若干強めの勢いも、店を盛り上げる上ではきっと大切だ。
仕事の最中、ルビーはこっそりと店員へ耳打ちしていた。
「ね、終わったらこの姿で写真撮って良い?」
「ええ、構いませんよ」
「やった、ありがとう!」
スピネルと一緒に働くことは出来なくても、思い出は残せる。
そう思うともっと元気が出るものだ。
再びフロアに飛び出すルビーの笑顔は、きっと誰よりも輝いていただろう。
成否
成功
第1章 第10節
「ペンギンの経営するカフェか」
ぽつり呟きを零しつつ、カフェを訪れたのは『書の静寂』ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)だ。
この店は所謂『猫カフェ』とは別物なのだろう。
けれどカフェの良い雰囲気の中で過ごせるのは良いことだ。美味しいものと素敵な物語、双方を楽しめるのだから。
気持ちが整ったところで、ルネは入り口の戸を開く。
出迎えてくれたのは――ふわふわのペンギンだ。
どうやらペンギン達は礼儀正しいらしく、店内の雰囲気も良さそうだ。
開店初日ということで、多少の忙しなさは感じられたが問題ない。
「紅茶をストレートで。それとひんやりトロピカルパンケーキをお願いしようかな」
「かしこまりました」
注文を終えれば、ルネは空中へと手を伸ばす。
指先が触れたのはギフトの『移動図書館』だ。そのまま一冊の本に指を掛けて、するりと手元へ。
それと同じタイミングで、店員が注文の品を運んできてくれた。
美味しい紅茶とパンケーキを楽しみつつ、のんびりルネは読書を楽しむ。
今日のチョイスはペンギンが主人公の物語だ。
氷の大地に住まうペンギンが、暖かな大地を求めて世界を旅する。そんな物語の世界に没頭しつつ、時折周囲を歩くペンギン達を眺めてみたり。
(物語と現実の両方でペンギンを見るなんて。滅多に出来ない体験だね)
不思議な光景に思わずくすりと笑みが零れる。きっと今日のことは、良い思い出になるだろう。
成否
成功
第1章 第11節
ペンギン達が営む喫茶店。
そんな場所を訪れ、『淡き白糖のシュネーバル』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)はきらきらと瞳を輝かせていた。
「わぁ、可愛い……!」
そう呟く来探の元に歩み寄るのもペンギンだ。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」
「はい、開店、おめでとう……ございます。一人で座れる席をお願いします」
ぺこりと頭を下げて、まずは席へ。
来探が案内されたのは窓際のテーブル席だった。
メニューを確認すれば、どれも自分が食べられそうなものだった。
小さく安堵しつつ、来探は近くに居た店員を呼び寄せる。
「えっと……トロピカルジュースと、ひんやりトロピカルパンケーキを……お願い、します。よろしくね、ペンギンさん」
オススメのメニューを頼むだけなのに、相手がペンギンというだけでなんだかほっこりするものだ。
暫く待てば、鮮やかな青色のジュースとふわふわのパンケーキが運ばれてきた。
ジュースは爽やかで、パンケーキもトッピングと共に食べれば心が弾む。
(ひんやりしていて、甘くて……おいしい!)
幸せって、こういうひと時のことを言うのかな。せっかくだし次はかき氷を頼んでみようか。
そんなことを考えつつ、ふと視線を上げれば――目に映るのはどのペンギンも楽しそうな、そんな光景。
ペンギンさん達も皆も楽しんで、喫茶店も世界も賑わいますように。
そう願いながら、来探も更に楽しい時間を過ごすのだった。
成否
成功
第1章 第12節
アデリーカフェには大きな窓が備え付けられ、広がる海を一望出来る。
そんな光景を前にはしゃぐのは、『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)だ。
「ほわぁ! 綺麗な海ですわーー!」
「わ……凄い、素敵なとこだね」
恋人につられるように『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)も窓を覗き、空と海を瞳に映す。
そんな二人から少し離れ、微笑ましそうに見守るのは『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)と『北辰の道標』伏見 行人(p3p000858)。
「ふふ、かわいいわねぇ」
「皆で見る大海原というのも格別だけど……ああ。アーリアさんの気持ちは解るよ」
親指と人差し指で作ったフレームに少女達の姿を切り取れば、それこそ一枚の写真のようで。
ずっとその光景を見ているのもいいけれど、店員ペンギンがちょっぴりそわそわしている様子。
「ほらほら、眺めてるのもいいけど、店員さんがそわそわ待ってるわぁ」
「はっ、このままでは日が暮れるまで飽きませんわね!」
「そ、そうだね。タント、早く座ろう」
アーリアに促され、言葉の通りハッとするタントに表情を取り繕うジェック。
そんな女性陣の様子も行人は微笑ましげに見守っている。
今日は楽しい親睦会&決起集会。共に天才の塔に挑む者同士、和気藹々と楽しもう。
案内されていたのはソファ席だ。
タントとジェックがにこにこ隣同士に座り、反対側にはアーリアと行人。
テーブルの中央にメニューを広げれば、皆で一緒に悩む時間。
「ご注文致しましょう! わたくしはひんやりパンケーキにしますわ~! ジェック様は何にされますの?」
「アタシはふわふわトロピカルかき氷……かな」
「いいですわね! よければ半分こしましょう!」
「うん、分けっこしよ」
美味しいものは二人で分け合えばもっと幸せ。タントとジェックは顔を見合わせ、くすくすと微笑み合う。
そんな二人が食べ物の注文を考えている間、大人組は飲み物のメニューを確認していたようだ。
「俺はアイスコーヒーにしようかな」
「私はそうねぇ……こんなに気持ちいい日なんだし、とりあえずお酒……」
ゆるりとページを捲ろうとしたアーリアだが、先にメニューを確認していたタントがぽそりと呟く。
「んむ、お酒は無いようですかしらね、アーリア様?」
「あ、ないのね、はい」
すん……とした表情を浮かべつつ、改めてメニューを確認するアーリア。
ノンアルコールの飲み物ならば色々取り揃えているようだが、気になったのは――。
「私は、タピオカ入りのドリンクを貰いましょ。ノンアルコールカクテルみたいな、綺麗で爽やかなのがあるといいんだけど」
「ならこのフルーツソーダとか、それっぽいんじゃないかな」
「あら、ありがとう伏見さん。じゃあそれにしようかしら?」
わいわいと言葉を交わし、互いに決めるものを選んだら店員さんへさっとお願い。
待っている間も楽しく雑談していれば、時間が過ぎるのはあっという間だった。
それから暫く待てば、各々注文の品が運ばれてくる。
「パンケーキ、ひんやりなのにふわっふわですわ! ジェック様もさあどうぞ!」
「あ、ありがとう。かき氷、美味しくて一気に食べちゃってた……!」
キーンとなる頭を押さえつつ、タントからパンケーキをあーんしてもらうジェック。
そんな賑やかな様子を眺めつつ、アーリアもソーダをのんびり頂く。
微笑ましげな視線に気づいたジェックがアーリアの方を見つめるが――彼女の髪は、いつも通りの紫色だ。
「今日は髪の色、変わらないんだね……また見たいな」
アーリアは自身のギフトにより、アルコール摂取に合わせて髪の色が鮮やかに変化する。
けれどノンアルコールの飲み物ではその反応も見られない。ちょっと俯くジェックに向け、アーリアは柔らかな笑みを向けた。
「えぇ、次はお酒の場でねぇ――踏破記念のその時に、なんて? だから改めて。一緒に頑張りましょ!」
「うん。そのためにも頑張らないとだね」
「いいですわね! 祝賀会も楽しみにしていますわ!」
「そうだね。無事に塔を踏破出来たら、また皆で飲みに行こうか」
ふとした会話からも結束を固める『煌星』の一行。
話し込んでいるうちに――少しだけ、日も傾いてきたようだ。
女性陣の賑やかな会話を耳に入れつつ、行人がふと見るのは窓の外。
コーヒーをのんびり頂きつつ見る海というのも乙なものだ。
「そういえば行人様は、こんな綺麗な海を沢山ご覧になってきたのですかしら?」
ふとタントに話しかけられ、視線をそちらに。行人が浮かべる表情もまた柔らかだ。
「ああ。何度も見たことはあるよ。船に協力していた時もあるからね……嵐の中でも測量要らず、風も海流も精霊に頼めるから便利屋扱いでね」
紡がれる言葉にアーリアは静かに頷き、ジェックは桃色の瞳をじっと向ける。
そんな仲間の様子にも気付きつつ、行人は更に話を続けた。
「朝か、夕。海が焼ける時も心に残るよ。今まで見てきた、どの海もそうだった」
だからこそ、改めて窓の外をじっと見て。
「――折角だから、そこまで見ていくかい?」
行人の提案に、ぱっと表情を華やがせたのは少女達だ。
「それにも賛成ですわ! 皆様と海で過ごすの、とても楽しそうですもの!」
「アタシも皆と一緒に、見ていきたいな。海、綺麗だし」
眩い笑顔のタント様と、ちょっと照れた笑みのジェック。そして二人を見守る行人。
そんな仲間達の様子をグラス越しに覗いてみれば、これもまた一つの写真のようだとアーリアは思う。
(皆で一緒にシュペルの塔、頑張って登りましょうねぇ)
改めて進む道に思いを馳せて、そして楽しい時間は流れていく。
それはきっと――これから挑む難局でも変わらない。四人でいればきっと楽しいし、頑張れる。
そんな思いを包み込むように、窓から降り注ぐ夕日の光が『煌星』を照らしていた。
成否
成功
第1章 第13節
ペンギン達が行き交う喫茶店で、『行く雲に、流るる水に』鳶島 津々流(p3p000141)はゆるりと笑う。
今日はせっかくの開店イベント。可愛らしい光景と共に目一杯楽しもう。
そう決心した津々流を案内するのもまた、ふわふわのペンギンだ。
席に着いたら早速メニューを。食事はひんやりしたものが中心らしい。
(こういう時はお勧めを頼めば外れはないよね)
ひとつ頷くと共に、津々流は店員を呼び寄せる。
「この『ひんやりとろぴかるぱんけーき』と『ふわふわとろぴかるかき氷』を頂くよ」
「はい、かしこまりました」
注文から暫く待てば――目的の品物が津々流の元へと運ばれてきたようだ。
「わあ、すごい」
運ばれた品を見れば、思わず言葉が零れる。パンケーキもかき氷も南国風のトッピングで彩られており、見た目も味も華やかだった。
パンケーキはひんやりなのにふわふわしっとり、かき氷の口当たりもふんわりとして心地いい。
そして果物の甘酸っぱさが味を引き締め、なんとも爽やかな気分になれるのだ。
「うーん、どちらもとっても美味しいねえ……!」
うっとりとする津々流を見遣り、店員さんもハッとする。そして目が合った。
「今日は招いてもらえて幸運だったよ、ありがとう。ぜひまたお邪魔したいな……!」
「はい、こちらこそ。いつでもお待ちしております」
互いに紡ぐ感謝の言葉と美味しい甘味。その双方を胸に、津々流は楽しい一時を過ごすのだった。
成否
成功
第1章 第14節
こうしてイレギュラーズ達は客として、或いは店員として一日を過ごしていく。
彼ら彼女らのおかげで、アデリーカフェの開店記念は大成功となったのだ
これからきっと、この店は繁盛していくだろう。
その一歩を刻んでいったのは――間違いなく、イレギュラーズだ。
ペンギン達もそのことを胸に、これからもアデリーカフェを訪れる。
はじめましてだった素敵な客人を、そして店員を。
彼らはずっと忘れない。
NMコメント
こんにちは、ささかまかまだです。
ゆるふわ海の世界にて、ペンギンさんのカフェを盛り上げましょう。
●目標
アデリーカフェの新規開店日を盛り上げる。
お客さんとして盛り上げてもいいですし、臨時スタッフとしてお手伝いしても構いません。
楽しくカフェが運営されれば皆ハッピーです。
●出来ること
・お客さんとして楽しむ
カフェに訪れた客としてのんびり過ごして下さい。
普通の喫茶店にありそうなメニューはそれなりにありますが、肉類や魚類を使ったものは出てきません。
飲み物はコーヒーに紅茶、フルーツジュースといった王道のものが中心です。タピオカもあります。
食べ物のオススメは「ひんやりトロピカルパンケーキ」や「ふわふわトロピカルかき氷」といった冷たい南国風のメニューのようです。
・店員としてお手伝いする
やることは一般的な喫茶店と同じです。
お客さんである他のペンギンさんや、訪れたイレギュラーズ相手に接客をしましょう。
調理場も人手は募集中ですので、料理が好きな方はそちらを手伝っても構いません。
制服は白黒のクラシックメイド服か執事服です。性別で指定はありませんので、着たい方を選んで下さい。
●『ドリーム・シーランド』
どこまでも広がる青い海とその上に点在する島々で出来た、穏やかでちょっとメルヘンな世界です。
この世界で暮らす海の生き物は人間と完全に共生しており、ヒトの言葉でコミュニケーションを行います(実際はそう感じられるだけかもしれません)。
住民達は穏やかでのんびりしており、プランクトンや果物を食べて生活しています。
また、人間は混沌における海洋のような文化を築いているようです。
今回の舞台ではアデリーペンギンが暮らす島が舞台となります。
出てくる住民もアデリーペンギンのみです。
●サンプルプレイング
1)
ペンギンの喫茶店だなんて不思議だね。
でも食べ物や飲み物は普通だ……。
せっかくの海の世界だし南国中心で攻めてみよう。
トロピカルジュースとひんやりパンケーキを頼んでみよう!
よろしくね、ペンギンさん。
2)
今日はスタッフとしてお手伝いしようかな。
制服はせっかくだから執事服だ。こういうの、なかなか着れないもんね。
あとはペンギンさんからオーダーを取って、厨房まで連絡して……。
服のせいか、僕もペンギンの仲間になった気分だ。
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