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シナリオ詳細

マナーで(中略)こうなったらマナーバトルだ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●“か弱い”花嫁修業
 ローレットはその日も何事もなく依頼の発布時間を……。
「“か弱い”乙女ェェェェェェェェェェ!!!! ……はい、そんな訳で今日も花嫁修業につながる依頼をローレットに漁りにきたわたしこと澄恋 (p3p009412)でございます」
「どんな訳だったのか分かりませんが依頼ということですのでこの私、ウィズィ ニャ ラァム (p3p007371)もご一緒することにしました。花嫁修業というか婿っていうか私どっちになるんだコレ」
 迎えませんでした。澄恋の腹に響くデスボイス(おはようございますの意)に見舞われた室内は暫しの間静まり返った後、また当たり前のように業務を再開した。適応力がありすぎはしないか。
「そういうことでしたら、ちょっと澄恋さんに人を集めて向かって頂きたい依頼があるのですが……マナー講習、ご興味ありませんか?」
 そんな彼女らに依頼書を直接持ってくる『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)も大概ではあるのだが、「マナー」と聞いた澄恋はガバッと顔を上げて三弦をまじまじと眺めた。
「花嫁修業にはマナーが一番!」
「なんですかそのガチャが一番みたいな表現は。でもまあ、最低限の礼節に通じていないと相手のご家庭にも失礼かと思います。澄恋さんは鬼人種ですのでカムイグラでしょう? あちらの方は特にそういうのにうるさいのでは、と……」
「一理ありますね。食事の席でのヘマは酒宴でもないかぎりは」
「ヴっ」
 三弦の言葉に同意を示したウィズィは、しかし酒宴という言葉に反応し胸を押さえて転がった澄恋にあわてて駆け寄った。どうやらトラウマがあるらしい。
「お酒の席でのエレガントな断り方ですとか、食事の……ああこっちだとナイフとフォークメインですね。箸捌きもふくめて覚え直したり、あとは歩き方? そういうのもですか。……いえ、これは枝葉末節でした。依頼なのですが、練達のとあるマナー講座でちょ……っと行方不明者が多く出ているらしいんですよね。それに比例して? 反比例して? その講座で使ってるビルの電力の請求額が減っているんですよ。あと業績が改善しています」
「「あー」」
 なんかもうオチが見えてきたなって顔をした2人。
 でもマナーを極めるのは大事なので、ここはひとつ“教えてもらおう”ではないか。
「はいマナー覚えたいひと集~~合~~~~!!」
 そんな澄恋の声にイレギュラーズは集まってくる。いざ行かん、マナー講座!

●割と途中までフツーのマナー講座だったなあって(参加者)。
 果たして、イレギュラーズはマナー講座に訪れた訳だけれども、依頼書にあった当時(数ヶ月前)はビルの一室を借りていただけのマナー講座はなぜかビルを乗っ取っていた。
「すいませんもう黙っていようか迷ったんですがヤバいですここ。なんか人助けセンサーに死ぬほど探知引っかかってます」
「貴様ァァァァァァ! “識”ったな? 先方に無断で探知系能力を使ったな! マナー違反だ!」
「え、あ、はい、すみません?」
 『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム (p3n000119)、マナー講座の途中でふと手を上げ仲間に申告。したらマナー講師が火がついたように怒り出す。どうやら痛いところをつかれたようだ。
「つまり……このマナー講座では助けを求めなければいけないような人を生み出しているということですね? それこそマナー違反では?」
「はいそこ! 質問する前に挙手も名乗り上げもしないとは何事か、マナー違反だ! そしてマナーに関しては私達が決める!」
 ウィズィの指摘に素早く反論するマナー講師!
「わたしは! マナーを学びに“来てやった”のに! 何だその態度は! こうなったらマナーバトルで勝負だ!」
 講師じゃなくてお前が言うのかよ。
 一同のアレげなリアクションをよそに、戦意猛々しい澄恋が吼えた!

GMコメント

 リクエストありがとうございます。
 日々増え続けるマナーはクソだって私も思ってたんスけど、飲食店で黙食に努めないやつはギルティ。

●成功条件
 風雲クソマナービルの攻略

●風雲クソマナービル
 大体OPのとおりです。行方不明者についてはドロッセルが大体探知した通りです。
 マナー講師達がニチアサ戦闘員よろしく大量に湧いてきます。
 最上階にいるマナー講師マスターをぶちのめして直通エレベーターを強奪すれば行方不明者を救出できます。
 なお、「訪問者は訪問先の電気代をいたずらに浪費させてはならない」のでエレベーターは使ってはいけません。乗った時点でペナルティが入ります。

●マナー講師×いっぱい
 マナーの強制力:小
 ちょいちょいクソマナー押し付けてきますが言葉に力が足りませんので、イレギュラーズ側の反論で軽く論破できます。うっせえ俺達がマナーだ。
 戦闘に関しては一山いくらの戦闘力しかありません。が、閉所暗所での戦闘が多めなので陣形などに気を使わないと「何? 目上の者を差し置いて若年者が前衛? マナー違反だ!」

●マナー講師マスター1+マナー講師リーダー4
 めっちゃブラック企業にいそうな面構えの男女混成マナー講師陣。前衛後衛キチっとわけているようです。
 なお男尊女卑のケがクソみたいに強く、そのくせセンシティブな状況に関して非常に小煩い。どっちかにしろよ。
 クソマナーに対する言葉の圧が強く、基本的によほどじゃなければ抗えません。
 そしてルールに関しては彼等の胸三寸。

●特殊戦闘ルール:クソマナーバトル
「ええ!? 年上のイレギュラーズの前を歩くのは失礼にあたるから若者は前衛できないだってぇ!?」
「そこ! 目上の人に向かって相手方よりも高い位置で斬撃を放つとは何事ですか! 無効です!」
「客先に出てきてなんですかその格好は! そんな装備でこの攻撃が受け止められるものですか!」
「得物をバチバチに打ち合わせるなんて相手の武器に敬意が足りませんよ!」
 ……と、まあこういう事を言う連中と戦うと思ってください。
 基準はマナー講師側にあるため、何を言い出すか分かりません。私にも皆目見当がつきません。
 雑魚マナー講師に関しては反論を用意し、マスター達に対しては割とマナーの先読みと当て勘を要します。
 プレイングの重要度こっちが高いかなって感じのボーナスが入ります。

●ドロッセル
 後衛です。
 完全に空気に飲まれていますがそれなりに役に立つでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • マナーで(中略)こうなったらマナーバトルだ!完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月17日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
※参加確定済み※
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)
あいの為に
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
※参加確定済み※
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔

リプレイ


 あんまりにもあんまりなクソマナービルをめぐる惨状に怯える『蒼ノ鶫』ドロッセル=グリュンバウム (p3n000119)の姿! 襲いくるマナー講師達! マナー講座以前に戦闘教練の演練場の如き様相を呈し始めた!
「やめろーッ! マナーは争いの道具じゃねぇ! おれとマナーバトルで勝負だ!」
「私の意見を代弁してくださってありがとうございます澄恋さん!」
 『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)は今にも襲いかからんとするマナー講師達にビシィ! と人差し指をつきつけ叫んだ。「人を指差すなどマナー違反だぞ!」と即座にマナー講師陣から非難の声が飛ぶが、仁王立ちした彼女に聞こえているのかどうか。というか『テント設営師』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が焚き付けているので鎮火する予想がつかない。
「本当にこれ花嫁修業に役立つんスか澄恋さん!」
 澄恋につれてこられる形で参加した『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)、さすがにこの状況は可笑しいと感じ始めた模様。多分最初から疑問符浮いてるけど状況に流されてきたな?
「私は敬虔で清楚なシスターであるからして、『同業者』の仕草を学べるこの機会は格好のタイミングだと言えるでしょう。是非知恵を拝借したいものです」
「それではお相手願えるでありましょうか。宜しくお願い致します、お排泄物の皆様」
 己の欲と嘘に満ち満ちた名乗りをしてから、『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)は恭しく頭を下げた。彼女の行動原理としては間違っちゃいないのかもしれないが、彼等から学びを得ることで事態が悪化しやしないかと思わなくもない。『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)の挨拶など最早完全に慇懃無礼を通り越してお嬢様仕草の域に到達している。
「どうも、マナー講師さん。新田と申します」
「どうも、新田さん。マナー講師です。……死ねェ!」
「おっと、挨拶の所作の終了まで0.1秒早かったですね。挨拶の態度が悪いのは村八分級の失礼にあたりますよ?」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は完璧な仕草でもってマナー講師の1人に名刺を渡し挨拶を交わす。彼に攻撃を仕掛ける者がいなかったのは、偏に挨拶中の横槍やキャンセルは絶対不可侵のマナーに反するためである。そして、一瞬であろうとタイミングを誤った相手は倒れ伏す運命にある。
「皆様、こちらが今回のマナーについての資料になります。事前送付した資料はお読みになりましたか?」
「『ハイテレパスの使用に関する許可願』か……ジャミングの禁止規定まで盛り込むとは癪な真似を」
 『資料』と称して白紙をばらまく傍ら、仲間達に付与術式を仕込みに行く。さらには、事前に書類を送りつけることで此方の条件を強引に相手に呑ませる手腕。『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)の所作は、多くに於いて如何に自分優位の状態をつくるか、相手に理解させるかを徹底することに腐心していることが窺える。
 要するに準備八割である。「付与を『かけさせていただく』心持ちである以上は失敗や成功の比率を変えるなど言語道断!」とかいうマナー講師の声が聞こえた気がするが、遅きに失している上に説得力が希薄だ。
「知ってるか? マナーは3つに分けられる。
 行儀を求めるヤツ、プライドを示すヤツ、空気を読めるヤツ。この3つだ」
 『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は指折り数えながらマナーとはなんぞや、ということについて訥々と語る。静かな語り口は落ち着きを思わせるが、しかし彼女を知る者ならば知っていよう。
「私達は――」
 その言葉が全て語られるより早くマナー講師(雑魚衆)が口々に己の知るところの謎マナーを語るが、果たしてイレギュラーズに通用するのか?

●通用するはずがねえんだよなあ
「聖職者を見たらお金を寄付する……このマナーにわざわざ説明など要らないでしょう?」
「馬鹿なことを! 見ず知らずの他人に金をせびるなどそれこそマナーの欠片もない行為ではないか!」
「でしたら今、わたくし達は顔をあわせた間柄です。そして信仰とマナーに篤い皆さんであればこのマナーの大切さが分かるはず……父と子と聖霊の御名によって。amen」
「グあ……っ!?」
「負けた側は勝者に、戦いを学ばせて頂いたお礼を支払うのがマナー……そうですよね?」
 ライは最初から行き着くところまで行っていた。相手の屁理屈をこれでもかと聞き届けてからのカウンターじみたマナー反論は相手にとってかなりの重圧をもたらす。というか、相手の話術を聴くことで覚えようとしたその真摯な受講者としての態度こそが最大のマナー遵守姿勢であったのだ。祈りを捧げる姿は聖職者として順当なそれだが、しかしその慈悲深き魔術が生み出した惨状は1人見りゃ分かる程に『ひどい』。
「きっ、貴様、ビルを行き交う我々はタイムイズマネーの原則に基づき足止など使ってh」
「声が小さァい! 相手に真心が届かなければどんなマナーも意味が無いんですよ!」
 膝を屈した講師を見た気弱そうな講師は、思わず声を上げて反論に移ろうとした。しかしながら、ウィズィの一喝に思わず驚きと怯えの混じった顔に変わり、足を止める。止めたところに飛んでくるハーロヴィット、その衝撃で先頭列のマナー講師は後ろを巻き込んで吹っ飛んだ。
「ホラホラ、仲間を巻き込んで青天するなんて後ろに控えている皆さんに失礼だと思わないんですか! 相手にもそんな無様な姿を見せるのはマナー違反ですよ!!」
「でも、そうですね。『足止は』使わないようにします。私はマナーを守らせていただく身ですから」
 だが、そこにすかさず救いの手を延べる影あり。フォルトゥナリアだ。ウィズィは一瞬そちらに目を向け、互いにアイコンタクトを交わした。そういうことなら、と互いに干渉しない姿勢である。そも、フォルトゥナリアは治癒メインで相手を攻撃する暇は(いまのところは)ない。治癒術に関しては流石に、文句をつける隙は少ないのだ。
 そして前衛に立つのは。
「女、しかも若者でありながら前に立って戦うなど慎みというものがないのか!?」
「女ぁ? 女は三歩進んで男と肩を並べるのがマナーでありますが? というか自分は28でありますが? レディーファーストだが?」
 自信満々、堂々たる立ち姿で敵の視線を引き、その攻撃を捌きながらずんずんと前進するエッダ。
「貴様の態度こそが高圧的だ! もう少し慎みを」
「文句など言わせないであります。なぜなら自分 騎 士 しかも鉄帝の!! 我が国のマナーは自分に聴け!! 文化の違いを指摘し我々顧客との関係を無闇に損ねることこそマナー違反では?!」
「だったらレディーファースト以前に前に出てきているお前、お前は――」
「私が前衛にいるのはレディファーストに反するから失礼? いやいや、貴方がたはマナーというものを理解していない」
 ハハン、と鼻を鳴らして手榴弾をばらまきつつステッキ傘をつきつける寛治は、苦し紛れにすら聞こえる反論に緩やかに首を振った。そも、レディーファーストだの女は3歩後ろをだのと。
「女性を先に歩かせるレディファーストは、道行きに危険がある時の盾にするためという起源をご存じないとは嘆かわしい。真の紳士は、自らが先頭を歩く」
「な――」
「傾聴ッ!!」
 たじろいだマナー講師陣を前に、汰磨羈はダメ押しを仕掛けるかのように仁王立ちになり、相手を睨みつけた。見事な一喝に、一同の視線が彼女に集まる。
「こう見えて、私は齢5千超なのだが? 外見で判断できぬ旅人が多い練達の中にありながら、そんな事も分からんとは!」
「わたしも、じ、実はこの場で年齢判明してる方々よりかは上ですしン゛ンッ、汰磨羈様ほどではないですが寛治様の十倍は生きてゲェーッホゲホッ」
 汰磨羈と、そしてまさかの澄恋のカミングアウトに講師たちの動きがガッツリ固まった。なお、澄恋は懐刀を抜かず、武器同士をぶつけぬ為、そしてか弱い乙女として武器を振り回すことのなきよう、手刀でもってマナー講師をバッタバッタと薙ぎ倒している。切ってしまえば、刺し貫けば返り血で廊下が汚れるからマナー違反! 首筋一刀、斬らず折れる程度に叩き込んでその呼吸を止めて涎を流す暇なくブッ倒す! これが“花嫁候補”!
「じゃあ、年齢順だから回復は汰磨羈くん、澄恋くん、新田くん……って順でいいのかな!」
「私はそのカバーに回りますね! 先輩の治癒のカバーをするのは後輩のマナーなので!」
「ま……待て!」
 年齢順に治療するのがマナー! と先に標榜した茄子子の言葉を、しかしマナー講師は遮ることができない。先に提示され、妥当性が高いそれはヒラ講師には荷が重いのだ。だが、フォルトゥナリアは違う。口調を買えてまでマナーを学ぼうとするちょっと気弱じゃない? 的雰囲気を醸し出す彼女は格好の的たりえる……と、講師の1人は判断したのだ。
「なにか?」
「なにか、じゃあない! 立場が上の治癒術士が手を付けていない相手に対して治療するのは――」
「でも、先程隊列を乱しましたよね? 一番の下っ端の私が教えられたマナーを守っているのに先生達は守れないのですか? であれば私達も守る必要はないのではないでしょうか」
 だが、彼女は違った。きちんと芯がある少女として、相手の理不尽に言い返す胆力がフォルトゥナリアにはある。
「クソッ、貴様等いちいち年齢不詳がすぎるのだ! なんだその格好は! 年齢相応というものを知らんのか!」
「うるせェ゛ー! 皆のママなんだから年上なのは当たり前だろうが! ママに向かってなんだその口の利き方は!」
 マナー講師の首筋に手刀! 頚椎骨折!
 澄恋は花嫁でありママであり、マナー講師達のルールに恭順する姿勢にオギャリストとしての素養を見た! そう、バブみの権化としてコキャつって静かにして思う様オギャらせるのだ!
「……おや? 失礼な事をしたら、縦一列に並んで一人ずつ詫びるのがマナーだという事を知らぬのかな、御主等は。何をぼさっとしている! 整列ッ!」
 汰磨羈の独裁者としての素養を魂で感じ取ったか、講師達は思わず横一列に――。
「――イってヨシ!!」
 蹴倒した!
「OK、道が出来たぞ皆。行こう」
「流石は最年長者。尊敬の念を禁じえません」
 汰磨羈の先導についていく寛治(と仲間達)。
 果たして、このビルの迎える結末はどのようなものなのだろうか?


「押忍! ローレット一号生ウィズィニャラァム! 僭越ながらマナーを学びに罷り越しました! 押忍!」
「いい心がけだ、尊敬に値する――とでも言うと思ったのかァ! 断りもなく狭所で大声など言語道断ッ!」
 マナー講師、しかも男尊女卑のケが強いとなれば、予想されるのは体育会系のノリだ。つまり、大きな声で、名乗りを挙げ、吾ぞここにありと身構えれば相手を呑めるのではないか、と考えたのだ。非常に正しい。
 だが、マスターたる男は直剣を真っ直ぐウィズィに向けて突きこんできた。
「畏み畏み申す! ……さあ、Step on it!!」
 が、ウィズィもさるもの。お辞儀の姿勢からハーロヴィットを持ち上げ、視線を合わせつつ切り上げ、細剣の軌道を通らぬようにマスターの胸元を逆袈裟に裂いたのである。腰から上にめちゃくちゃ負担のかかる姿勢だ。
「良きマナーです。こちらも抜かねば無作法というもの……海外、そう、鉄帝では狭かろうが広かろうが相手に声が届いてこそ正義! 声は大きくなければ伝わらないのです!」
 マスターの指摘に先んじて反駁した寛治の反応速度は素晴らしかった。恐らく、これで威力を幾ばくかは削っているはずだ。
「おおっと失礼、初対面の相手には挨拶するのがマナーでしたね。こんにちは、澄恋です! 皆様との戦いでは当て勘が必要とのことでもってきました!」
「自らの能力を相手にむやみに晒すのは――高圧的な態度でマナー違反!!」
「鉄帝でも海洋でも、軍属というのは自分の能力を正しく伝えねば作戦が練れません。伝えぬことこそマナー違反です」
「では挨拶を遮って攻撃してくる愚かしい言葉を吐き出す喉への銃弾失礼します」
 澄恋の、いっそ清々しい挨拶に講師リーダーの1人がおもわず術式弾を叩き込む。だが、飛んできたそれに掠めるようにしてライの一撃が放たれ、一瞬足を止めたリーダーに……澄恋の手刀、その衝撃波が弾丸となって突き刺さった。
「貴様等がクソマナーの親玉か」
「クソなどという言葉を女性が使うことに恥じらいを持たぬのですか、あなたは! いけませんよ!」
 汰磨羈の挑戦的な言葉に、女性講師リーダーが反論する。汰磨羈とリーダーが相互にメガネをクイクイしながら攻撃を向け合う状況、もうこれ一種のギャグじゃん?
「覚悟しろ。必殺の――練達に貢献している私達の裁きは素直に受けるのがマナーですよアタック!! 私と茄子子の練達名声値を言ってみろォー!」
「名声マウントで他人を蹴落とそうなんて性根はマナー以前の問題で――」

\627/
\517/
「「ンアーッ!?」」
 女性講師、汰磨羈、何れもが吹っ飛んだ! 名声マウントの反動とそれにたじろいだ隙が生んだ弱さゆえのアレ……その、アレだ!
「それこそ、本人の名声と積み上げてきた知識こそを尊ぶのが幻想王国です。他国の文化は尊ばねばなりません」
 寛治がすかさずインターセプト&論理補強! 女性マナー講師は立ち上がるのに時間が要るか?
「ではそちらの、マナー以前に自分を律していないぶくぶく肥えた腹に銃弾失礼致します」
「体格で人を差別するとは、センシティブな話題に対して礼節がなっちゃあいない! 効かん!」
 ライは言葉巧みに相手を狙うのはよかった。話していることにもっともらしさもあった。だが、外見特徴はセンシティブ案件であるゆえに反撃の隙を生んだりもするのだ。見ろ、あまりのセンシティブぶりにドロッセルが頭抱えてるぞ。
「――失礼、ひとつよろしいでしょうか」
 茄子子、ここにきて慇懃に一礼すると、敵対するマナー講師達を睥睨する。そして、続く言葉は声を荒らげず、テレパスで。
『マナー違反をその場で指摘することそれ自体がマナー違反なんですよ?ㅤご存知でした? ちゃんと正式な手続きを汲んで、後日手紙の形で指摘を行う。もしくは、あまりにも行き過ぎている様であれば、その場で本人にしか分からないようにさりげなく教授してあげる。
 これが最低限のマナーでしょう。自分の知識をひけらかし、無知蒙昧な者の揚げ足を取るように陥れる。貴方たち、マナー係数が足りてないんじゃないですか?』
「う……煩い! 係数ってなんだ! だいたいそこのスーツメガネ! いちいち反論とはどういうことだ、他国の事例を持ち出して!」
「反論するのがマナー違反? やれやれだ。海外では積極的かつ建設的な議論の中にこそ優れた解答が生まれるとして、むしろ反論しない事がマナー違反なのですよ? それに海外の事例は――マナー奥義です」
 茄子子になじられたマスターは、まさかの寛治に向かって喧嘩を売る。だがそれは間違いだ。マナーに存在する奥義のひとつ、『出羽守』を抜いた寛治は今、この国この場に囚われぬマナーの在り方を唱えられるのである。
「……段々面倒になってきたので持ち込んだこげねこ秘蔵酒のむであります。お前も飲むであります」
 エッダ、ここにきてまさかの飲酒。いくらなんでもマナー以前の問題に唖然とした講師達は、反論しようとし。
「あ? いらない?」
 エッダがキレた。
「差し出されたお酒を断るのはマナー違反では? おい御猪口は両手で持つでありますよ。マナー違反では? イッキが出来ないのはマナー違反では? ごちそうさまが聞こえないであります。マナー違反では?」
「そ――」
 女性講師リーダーが反論しようとする! だが、ウィズィが迫る! 壁ドン! 顎クイ!
「センセ。……これって、マナー違反?」
「エッッッッッッッ」
「そうやって高圧的で理不尽な言葉に従い続けるのは辛いのではないですか? 自らも守れないマナーを押し付ける嫌な上司から開放されて私達の下へ来ませんか?」
 ウィズィに黙らされ、フォルトゥナリアに懐柔される! 女性達は限界だ!
「これ以上、マナー違反に付き合ってられ」
「傾注ッ!!」
 マスターが逃げようとするが許されない! 汰磨羈が叫ぶ!
「マナーとは何か? マナーとは行儀だ。作法だ。では、行儀と作法は何の為にある?
 ――敬意を払う為にある。互いを尊重する為にある。人を縛り付ける為に繰り出すマナーなど、マナーに非ず! 利己の為にマナーの定義を捻じ曲げる貴様等こそ、真のマナー違反者と知れッ!」
「マナーが人を作るのです。マナーを作るだけなら、ただのシツレ・イクリエイターですよ」
 寛治の言葉を聞き、マナー講師マスターは崩れ落ちた。そして澄恋の一撃を胸に受け、ビルから落下していった。血を床に垂らしちゃいけないからネ。

「エレベーターが解放されました! いきましょう!」
「うわぁ、自分の国でもこんな棒回し発電機使わないでありますよ。せめて走らせるであります」
「マナー違反どころか法律違反じゃん……マナー怖……」

成否

成功

MVP

新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

状態異常

なし

あとがき

 流石にマナー講師を性的に懐柔して動きを止めるって発想はなかった。
 本当に、ギリギリの戦いだった――

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