シナリオ詳細
トマトがあればなんにもいらない!
オープニング
●アタック・ザ・キラートマト
さんさんと日が降り注いでいる。
等間隔に天を貫く支柱に、生き生きとした緑のツタが絡みついている。すりつぶしたような緑のにおい。少し、つたをかき分けて歩みよれば、そこには、真っ赤なトマトが実っている。
「よしっ、張り切っていくか!」
集まった、4人の冒険者たち……。
今回の任務は、――トマトの収穫依頼だった。
……なぜか依頼書が”戦闘前提”だったのはちょっと気になるところではあったが、きっと何かの間違いだろう。その分報酬だっていい。
「いや、待てよ。……害獣退治とかがあるのか?」
「いんやあ、俺のトマト畑はちょっと特殊でなあ。害獣なんてよってこねえのよ」
「そうなんですか?」
「野菜の声を聴いたことがあっかい? 俺の野菜は、めんこくって、みいんな美味しく食べられたがってるんだなあ」
「はあ……」
いかに愛情をこめてトマトを世話してきたのかを語る農家さん。
トマトの収穫のためには、いろいろ手順があるらしい。
「んで、コイツらの収穫には注意点があるんだけどよ……」
一つ。トマトの前でいちゃつくこと。
一つ。トマトの前で調理器具を見せびらかすこと。
一つ。トマトの前で冗談を飛ばしたり、ツッコミどころをつくること。
「するってえと、トマトも応えてくれるんだなあ」
???
「よっし、やるか!」
冒険者たちはよくわからない注意を聞き飛ばした。
依頼人の訛りが強くて何を言ってるかわからなかったというのもある。まあ、トマトの収穫依頼なんて余裕だぜ、とみくびっていたのだ。
「この収穫が終わったら結婚するんだ」
パアン。また一つ赤い花が咲いた。
「ジョーン!!!」
「大丈夫よ。たくさん入るように鍋を持ってきたの!」
パーン。
ひとつトマトが飛んだ。
「大丈夫かエリザ!」
「くそっ、こいつら、ただのトマトじゃねぇのかよ。こいつは少々、とまったもんだな」
パアン。
――また一つ赤いトマトが猛烈な勢いでぶつかっていった。
●料理店「虹の架け橋」
(美咲さんとのご飯!)
『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)は、うきうきと待ち合わせ相手を待っていた。『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)のすがただったら、ずっと、ずっと遠くからでもわかる。
「おまたせ、ヒィロ」
「ううん! ぜーんぜん待ってないよ」
待ってないけれども、はしゃいで早く来ちゃったりして。美咲は、そんなヒィロのことをわかっていて、くすりと笑みをこぼした。
大好きな人と食べるご飯ほど、おいしいものはない……。
二人は、料理店「虹の架け橋」の扉をくぐる。すでに、良いにおいが漂っていた。店主のホープ・エヴィニエスが「いらっしゃいませ!」と、元気の良い声をあげる。
「どれにする? ヒィロ」
「ふふん、ええとね」
ヒィロはナポリタンが、最近のお気に入りである。
懐かしい味もさることながら、「ヒィロ、ケチャップついてるよ?」なんていうやり取りもあったりして……。
「ごめんなさい……! 今日はナポリタンはないんです」
「あら、パスタの用意がないのかな……」
美咲は首を傾げた。
ホープの特製ナポリタンは、冷蔵庫で一晩置くものだ。
「それが、ですね。麺の方は問題がないんですけど。最近、質の良いトマトが手に入らないんです」
「トマトが?」
「もちろん、どうしてもというのであれば可能なのですけれど、」と、ホープは言った。……でも、料理人としてのプライドが許さない、といったところだろう。
なあんだ、と、ちょっとがっかりしながら、別の料理を注文した。もちろん、研究熱心なホープの作る料理は何だっておいしいのだけれども……。
●トマト収穫のご依頼
(ナポリタン、食べたかったなあ)
肩を落としてローレットにやってきたヒィロは、壁に貼ってある依頼書を見た。
トマトモンスターの収穫。今までに負傷者4名。……報酬は、いつもの報酬+現物支給。
なんでもとびきりおいしいことには自信があるらしい。
「「これだね!」」
依頼書をひったくったヒィロ。ポンと手を打った美咲。
二人はやっぱり、同じことを考えていたことに思わず笑って、さっそく依頼書に一言書き加えると、協力者を探し始めるのだった。
『討伐:トマト
出:美味しいトマト料理』
- トマトがあればなんにもいらない!完了
- GM名布川
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年06月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●トマトが攻めてきたぞ!
「収穫者に襲い掛かってくるトマトとは……。
この世界のトマトずいぶん生きがいいのだな。え、違う?」
『鮮血の薔薇姫レベル12』トルテ・ブルトローゼ(p3p009759)の好物。それは、血の滴るような真っ赤なトマト。気軽に吸血できなくなったこの世界で、トルテが好む食べ物だった。
「まあ、普通のトマトは襲ってこないよね。トマトかぁ……ジュースか、スープかなあ」
『テント設営師』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)はトマトの調理方法に思いをはせた。
「ま、まあなんにせよどれほどのものか楽しみだな!」
「瑞々しくてジューシーで、それでいて齧ると甘くてジュースだと美味しくて。温かくしてスープにすると酸味が利いた美味しいスープができる美味しい野菜だよね」
「ほう。話が合うな。調理しても丸かじりでも。丸ごと煮込むというのもあるそうだぞ」
勇者と魔王。相反する立場のものも、この混沌世界では同じ依頼を受けるイレギュラーズだ。
「怪我人も出てるということだし……」
と、ちょっと心配するあたり、ヴェルーリアは勇者なのだった。
「トマトの収穫…ということでしたが……まさか……キラートマト……なんて……
動きも……早い……みたい……ですし……私なんかが……対応……できる……でしょうか……?」
『成長中』道子 幽魅(p3p006660)はふよふよと浮きながら、心配そうにうつむいた。
(アリス、女の子守る。トマトからも……)
『泡沫の胸』アリス・アド・アイトエム(p3p009742)は、そんな彼女を見ながら決意を固める。
(……アリス……お料理練習……したい……好きな子に……おいしいの……食べてもらいたい……から……)
「負傷者が出るほどイキのいいトマトなら、きっとフレッシュでジューシィでテイスティな味わい間違いなし!」
『激情の踊り子』ヒィロ=エヒト(p3p002503)はキラキラと目を輝かせる。
「だよね、美咲さん、ホープちゃん!」
「はいっ!」とホープ。
『あの虹を見よ』美咲・マクスウェル(p3p005192)は、元気いっぱいのヒィロを見るのが好きだ。
ところで、と、美咲はうーんと考える。
「ナポリタンって、所謂日本発祥料理だから……混沌でいうと、練達料理ってことになるのかなぁ」
「そうですね。この世界の料理には、いろいろなルーツがあるようなのですけれど、旅人がもたらしたという話も、練達が開発したという話もありますね」
「どこ発だろうと、美味しいならそれでいいんだけどね?」
「”美味しい”は共通言語だねっ!
よーし、美味しいトマト料理のためにボク頑張っちゃうぞー!! ……ところで、トマトって襲い掛かってくるものだったっけ??」
「トマトが美味しい時期になってきましたね!
是非キンキンに冷やしたトマトにマヨネーズぶっかけて酒のつまみにしたいのです」
『守る者』ラクリマ・イース(p3p004247)はにこにことトマトを見守っている。はじけるトマトにも臆した様子はない。
何とも奇怪なトマトですね、と言うだけだ。
(今日は、トマトの収穫、ですけれど、とっても変わった、トマトさんだって、エルは聞きました)
少しだけ。ラクリマから冬の気配を感じて、『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)は勇気づけられる。
「エルは、頑張って工夫して、トマトさんを、収穫出来るように、頑張ります。
こんなこともあろうかと! で、参考になる本を、持ってきましたので、きっと大丈夫だって、エルは思いました」
『ナウなヤングにばかうけ!ジョーク集』と書かれた本。
「あははっ……いいですね!」
ラクリマは美しく透き通った声で笑い声をあげた。
真剣そのもののエルの表情に、アリスはぐっと心を決めた。
(可愛い……。でも、トマト、危ない……かも。アリス……女の子……守る……)
あと、女の子とイチャイチャもする。
「さてでは狩りと行きましょうか」
ラクリマに続いて、仲間たちは畑に分け入っていく……。
●トマト投げ祭り
(私の衝術は……ダメージを……与えるものでは……ないですし……綺麗なまま……撃ち落とせれば……いいですけど……)
幽魅は息を吸って、吐いた。とっさの時は、自然と出るのだけれど。
(皆さんの……邪魔にならぬよう……自分に……迫って……きたものは……対応……しながら……しっかりと……サポートも……しなきゃ)
「大丈夫だよ! よろしくね」
緊張していたが、ヴェルーリアのホープに触れると、心がほわほわとする。がんばれる、と幽魅は思った。
「ボクの、ボク達の作戦はズバリ! ~イチャイチャ畑でつかまえて~」
ヒィロはびしっと人差し指を立てた。
「どう? 美咲さんと畑のど真ん中でラブラブして、トマトをバシバシ迎え撃つって作戦だよ!」
もうすでにかなり遠くからトマトが飛んできているのだが、ぱしっと、ヒィロは受け止める。
「甘ーい甘ーい空気にしたら、飛んでくるトマトも甘くなるかな??」
「……試してみる?」
(ううん……イチャイチャは流石に俺にはできないですし
料理の腕もそんなにないのでボケるしかないですかボケ)
ラクリマは、どちらかと言えばツッコミ属性を自負していた。
「こうなったら無理やりボケを作って対応するしかないですね!」
取り出したのは、エロカワ系衣装。
すなわち、ミニスカへそ出しの衣装である。
「何でこんな物かったのか記憶にないのですが、
ほら見るからにもうアレなのです…男の俺が着れば動くボケの完成なのです!! たぶんな!!」
やけくそになって畑に分け入っていくラクリマ。
「さあトマト俺のこの可憐な姿めがけて飛んでくると良いのです!!
こいよ!! ほらどうした!! 怖気づいたのか!! ははは!!」
首をかしげるトルテとエル。
「ふむ?」
「……ええと、エルはかわいいと、思います……」
困った。違和感があんまりないのだった。
「おっと!」
新しい何かに目覚めたトマトが飛んできた。
「ええと、トマトは……視覚で判断してるのかな? 結構賢いのかもしれないね」
トマトの方から飛んできてくれるなら、網を張ればうまいこと収穫できるかもしれない。ヴェルーリアは、冷静に状況を分析していた。
「まかせて……」
Skillful・spider。アリスの生み出す蜘蛛の糸が、畑に網を張る。
それなら、と、ヴェルーリアは、支柱とする棒をしっかりと大地に突き刺した。木行荊符によって浮かび上がったツタが、くるくると支柱に巻き付いて固定する。
「フォルトゥナリア……手伝ってくれる……助かる……ね……」
「もちろん!」
ちょうど、高さが人の顔くらいで幅を半分くらいに縮めた、テニスコートのネットのようになった。
「ふむ、褒めて遣わす。
トマトは味以外の面でも非常に優れた野菜でな。
人間の間では『トマトが赤くなると医者が青くなる』と言われるほど栄養価の高い野菜で……」
ふと、トルテは言葉を止めた。
「ちょっと待て。医者の肌が青くなるのか? その医者は魔族だったのか?」
ばしゅん、と天然物のトマトが飛んできた。
「うわあ飛んできた!? 今余ボケたか!?」
(流れるように、トマトさんを捕まえる、なんて。エルも、頑張ります……)
エルは心持ちきりっとして、スピーカーボムを手に取った。
「えっとえっと……」
しんとして聞き入る姿勢のトマト。
「ふとんが、ふっとんだー
ねこが、ねこんだー
くつしたを、はっくつしたー
うまが、うまったー
コンドルがー、じめんにー、くいこんどるー
さるが、さるー」
真剣な棒読みである。
……わずかな間をおいて。
ぽぽぽぽんとトマトが飛んでくる。
「……うん、ありがと……」
「うむ、苦しゅうない」
エルと、ふんと胸を張るトルテを、アリスはそーっとふわふわ撫でてみる。
ぱしゅっとトマトが飛んできた。
(もちろん……トマト引きつける為……。ホント……だよ……?)
「えい……」
幽魅がいっしょうけんめいにトマトを網に吹き飛ばす。
「トマトと的って語感が似てるよね」
ヴェルーリアの言葉に、トマトがぴゅんと飛んでくる。
すかさずの神気閃光。
「よっと」
飛んでくるトマトを、ラクリマが威嚇術でやわらかく網の方にトスをした。
「……ありがと……」
(あれ、なんでそっちからお礼?)
危ないところだった。女の子に当たるところだった。
(……女の子……絶対庇う……可愛い顔に……傷……あってはならない……)
アリスはトマトを受け止める。
「アリス……普通より少し丈夫」
ぶつかった痛さも、イモータリティによって少しはましになる。ヒールオーダーが傷を癒す。……女の子の。
「余のほうが軽傷だと思うが……」
「だめ……」
「む。まあ、礼を言う」
(アリスさんも治さなきゃ!)
ヴェルーリアのメガヒールが、アリスの傷を癒していった。
「……ありがと」
「いっぱい捕獲? ええと、収穫? していきましょう!」
ラクリマのダイヤモンドダストが、きらきらとトマトに降り注ぐ。
「新鮮を、ぎゅっと、します」
エルの呼び出した子熊の氷像が、トマトに向かって体当たりをした。ぽーんと逸れた一個が、上手に網に引っ掛かった。
「あとはまかせよ」
トルテの声が威厳をもって響き渡る。一瞬だけ、ほんの一瞬だけ――降り注ぐ雪の奥に、威厳のある声。
「まとめて凍るがよいッ! ……そういえば冷やしトマトというものもあるらしいな?」
ルーン・Hが、あたりに振り撒かれた。
エロかわ衣装にぶつかるトマト。ミニスカをひるがえして響く癒しの聖歌が、ヴェルーリアのブレイクフィアーと重なった。
困ったことに、似合っている……。
「あっちも順調みたいね?」
「ねねね美咲さん。
ボク一生懸命頑張るから、ご褒美に美咲さんの美味しーいトマト料理食べたいなぁ」
可愛いおねだりに、美咲はくすりと笑った。
「ヒィロが喜んでくれるから、私も腕の振るい甲斐があるよ。何が食べたい?」
「メニューはお任せ!
美咲さんが作ってくれる手料理なら、何でも美味しく食べられちゃうもん」
「そう? どうしようかな……」
「でねでね、帰ったらね!
次は美咲さんにボクを食べてもらうの……。
え、えへっ」
ものすごい勢いでトマトがすっ飛んできた。
まるで弾丸。
けれども、幸せな時間に水を差してくるトマトにヒィロが黙っているわけもない。
ヒィロが放つ勇気が、闘志となってトマトを引き寄せる。
「美咲さんには指一本……んん? ヘタ一つ? 触れさせないよ!」
恍惚につやつやとしたトマトをパスする。
「はいっ、美咲さん! こちらが下拵えの済んだ食材になります!」
「ありがとう」
一瞥、すらも必要はない。
すさまじい勢いの神気閃光がぴかりと光れば、トマトはばたんきゅうと動きを止める。
3分クッキングのごとくである。
「上手にヤれましたー! ん、あまーい!」
頬についたトマトをそっとぬぐいながら、美咲は微笑む。
「実は私ね、昔はトマトが苦手だったの」
「ええっ、美咲さんも?」
「質のよいものを丁寧に料理して、段々慣れていったんだ。
そんな成長の結果を、ヒィロとも共有していきたいな
……だから、『ご褒美』は帰ってからでゆっくり、ね?」
「えへへ……約束だよ!」
●おいしいトマトを食べよう!
「ふむ、このまま持ち運べるな」
「この糸のおかげだね」
「ううん、女の子たちの……おかげ」
ヴェルーリアが張った網を、ロバとつなげて運搬する。
「余は料理など全くできぬからな! 皆が腕を振るうのを楽しみにしておるぞ!」
「楽しみですね!」
すっかり仕事を終え、実食モードのトルテとラクリマ。
「あ、お手伝いくらいはできるのです! 切ったり、混ぜたり、つぶしたり」
「……皿を並べるくらいはできるからな。やっておくぞ」
二人は簡易キッチンをうろうろしながら、できるお手伝いにいそしむのだった。
「とりあえず余はミネストローネを所望するぞ」
「まっかせて! 美咲さんへの分と一緒に、まとめて作っちゃおう」
「ヒィロ、エプロン用意しておいたわ」
「それと、採れたてのトマトで作るトマトジュースも良いな……」
「あ、それなら作ってみようか」
「ひんやり、ひえた……おいしいジュース。エル……がんばります……」
ヴェルーリアとエルが手を挙げる。
「ええっと、次はこれだね!」
美咲とヒィロは以心伝心、何も言わずとも呼吸はぴったりだ。
(ヒィロがいてくれれば、品数が多くても余裕でこなせるね)
「ナポリタンは任せてもいい?」
「はい! お任せあれ」
ホープが頷いた。
美咲はあえてナポリタンはホープに任せる。みんなにも「虹の架け橋」の味を知って欲しい。
ナイフをくるんと回した。
トマトやピーマンををそのまま器にした料理が、ファルシーである。
(……これはトマトとピーマン両方で作ろう。
あとはミネストローネと、焼きトマト……っていうのは、丸焼きするのかな?)
(採れたトマト……皆でお料理……)
アリスは思わずにまにましてしまう。エプロン姿の女の子は可愛い。
「調理道具も準備してきた……。これでいい……かな?」
「はい! 一緒に……トマトリゾットを……作りましょう……」
(みんなで……苦労して……集めた……トマトさん……ですから……美味しく……お腹いっぱいに……食べてほしいな……)
幽魅は視線をさまよわせ、頷いた。
これなら、できる。
(みなさんに…満足いただけるか……しっかり……味見をして……みんなが……笑顔に……なってくれれば……嬉しい……です)
たくさん戦闘で助けてもらった分、お返しがしたかった。
「アリス、どうすれば……いい?」
アリスは小首をかしげる。
「基本的には……レシピ通り……アレンジをせず……作れば……問題なく……作れますが……そうですね……やっぱり……食べていただく方の……笑顔を……浮かべながら……作ると……いいかも……しれません……」
「食べる子の笑顔……想像……? ……えへへ…………あ、いけない…にやにや…しちゃった……」
思わず、つられてかすかな笑みがこぼれた。
「あとは……いただく生命……お肉はもちろん……お野菜さん……にも……感謝の気持ちを……忘れずに……調理すること……でしょうか……?」
「感謝……ね……わかった……!」
お料理は…気持ちも大事……アリス…覚えた……。
ありがと……!」
幽魅は手際よく調理をこなしながら、もう一品作れるだろうかと思案する。
(……トマトづくしの……オムライス……作りたいな……)
ケチャップを使わない……トマトライスに……トマトソース……。
(包むタマゴは……甘めに……仕上げて……トマトの酸味と……調和…………うん……美味しく……なりそう……かも……)
幽魅の舌は鋭敏で、自分に厳しい事も相まって、実はかなりのものが出来上がっている。
「わあ、おいしそう!」
ホープお墨付きだ。
じっとアリスの視線を感じ、小さくハートを描いてみた。
「トマト、冷えてるね!」
「はい……」
エルがトマトのヘタをとり、ヴェルーリアが湯向きしていく。
それから、一緒に包丁を握り、みじん切りにしていった。
「これなら手伝えます。よし、これでいいですかね?」
ラクリマがつぶしたトマトを、ヴェル―リアがせっせとザルでこして、しあげにエルが布でぎゅうっと絞った。
「冷やし……ます……」
「うんうん」
「味見してみよう」
一匙すくって、エルはぱっと笑顔を浮かべた。
「出来たての、トマトジュース、とってもみずみずしいって、エルは思いました」
「あれ、美咲さん、トマトソース、全部使わないんだね!」
「おまかせですものね?」
美咲はトマトソースをより分け、ヒィロにふるまうための料理を作る。
「私からのメニューは、ピッツァマルゲリータ」
ミネストローネと下拵えは共通。
あとは、バジルとチーズをぱぱっとかけて、じっくりと焼き上げる。
「うーん、ファルシーと同じオーブン……だとピザになるけど。とある国の王妃様が大喜びして、その名前がついたのよ」
●約束された勝利
「食材の鮮度も質も良い、シェフの腕も良いとなれば、極上の料理となることは間違いなかろう」
トルテは勝利を確信している。
ヴォルフヴベーカリーのパンのように、ピザはおいしく焼けていた。
「お手伝いもしてくれた私のお姫様に、今日一番の力作をプレゼント!
さぁ、召し上がれ」
「それじゃあ、美咲さんは王子様だね!
うわー美味しそう!
いっただっきまーす! ……おいしい!」
「やっぱり、料理は、おいしそうに食べてもらってこそですね」
ヒィロを見る美咲の目がとてもやさしいと、ホープは思うのだった。
(女の子の作った手料理…食べれるの……嬉しい……おいしい……)
幸せをかみしめるアリス。
「生もいけますね。あっマイマヨは持ってきました」
白薔薇印のマヨネーズを良い角度で宣伝するラクリマ。
「美味いな。魔界に戻ったら専属のシェフとして雇ってやってもよいぞ?」
「嬉しいですけど、お店がありますからね……」
「そうか……」
しょんぼりするトルテ。
「エル、また、ジュースを作ります……そのときは、一緒に食べましょう」
「うむ!」
「……そういえばトマトって「愛のリンゴ」って言われてたこともあるんだっけ
ね、ボク達にはピッタリかも!
えへっ」
ヒィロのほっぺを美咲が指先で拭った。そのままぺろりと……あ、思ってたのと同じ光景だ。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ごちそうさまでした!
暴れるトマトも上手に料理されて、浮かばれていることでしょう。
書いていてとっても美味しい気分になりました。今日は無性にトマトが食べたい……っ!
GMコメント
布川です。お待たせいたしました。
●目標
・キラートマトの撃破
・おいしくいただく
●場所
幻想の郊外、『リコピン畑』
●敵
キラートマト
品種改良のさなか、うっかり突然変異でキラートマトになってしまいました。
見た目は普通のトマトなのですが、ものすごい勢いで飛んできます。
突然変異なので、個体差があるようですが、
・ツッコミどころがあったり(ツッコミ気質)
・凄腕の料理人がいたり(料理されたがり)
・イチャイチャしてたり
……すると、すごい勢いで飛んできます。
隙ができるので、うまくやれば収穫可能です(一応、戦闘です)。
ほか、別の手段を使って収穫を試みても構いません。
果実はルビーのようにきらきらしていて、かなりおいしいです。
その他、キラーピーマンなど、そこそこに都合の良い野菜がいます。
平らげてあげましょう。
●味方NPC
ホープ・エヴィニエス
「今回はどんな料理を作りましょうか」
幻想王都に小さな料理店「虹の架け橋」を持つ料理人です。料理の研究に余念がなく、いつもレシピノートを持ち歩いています。
●何を作ろうかな?
ホープ様はナポリタンを作ろうと思っているようです。ほか、注文があれば受け付けます。
腕に覚えのある方は、レッツクッキング。
トマトが喜びます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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