PandoraPartyProject

シナリオ詳細

物語を改変せよ!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●閉ざされた未来

 気づけばあなたは本を手にとっていた。
 その本のタイトルは、『百鬼夜行の起こる街』。


 現代日本のとある県にある九重市。
 魔法は無く、代わりに機械文明が発達している、普通の現代日本。
 しかし九重市は普通の日本とは少し変わっていた。

 というのも九重市は『百鬼夜行の起こる街』としてオカルトマニア達の間では有名であり、夜の間には眠っている間に幽霊達が溜まり場にしているという。
 幽霊達は皆、己の未練や恨みを抱えて彷徨っており、時として人を喰らう者へと変貌してしまう。
 またごく僅かな確率だが、昼間でも人を喰らう幽霊が存在しているため、昼が安全というわけでもない。
 まさに平和の中に隠された地獄、それが九重市。そんな場所で幽霊達を祓い、平和を支える者がいた。


「今月、祓魔の件数が多いんだよ……なっ!!」

 彼の名は長月遼《ながつきりょう》。幽霊と交信が出来る彼は九重市を守りたいと、この仕事を始めたという。
 相棒であるクマのぬいぐるみ・ハーヴィーと共に彼は九重市に存在する悪意のある霊を除霊していた。

「んで、一番デカいのが来てるって?」

 彼がハーヴィーに語りかけると、ぬいぐるみが手に持っている小さなメモ帳にじわりと文字が現れる。

『すぐそこにいる。背後を取られるな』

 ハーヴィーの忠告を聞いた遼は、すぐさま除霊用の札を準備して構える。
 どんな位置からでも、すぐに除霊作業に移れるように周囲を警戒しながら歩みを進めていた。
 だが、次の瞬間……。

「うわっ!?」

 黒く濁った、水のような液体状の何かが遼の身体を包み込んだ。
 ごぼり、ごぼりと息が漏れる音が反復し、やがて音は途絶え……全てが、闇へと消えた。

 遼の姿はなくなり、代わりに道路の上にこてんとハーヴィーが取り残される。
 かたかた、かたかたと揺れ動くハーヴィーはどうすることも出来ないと藻掻き続け、やがて動きを止める。


 その本の続きは……真っ黒に染まり、見ることが出来なくなっていた。


●物語の改変と続きの作成
「その続きが、気になりますか?」

 境界図書館にて、案内人のカストルが微笑む。
 読み進めていた本はぬいぐるみのハーヴィーが動きを止めたところで物語が止まっており、その先に関しての内容は全く無い。

 カストルはしぃ、と口元に指を当てて再び微笑みかけると、本の内容について説明してくれた。

「その本の世界はとても、とても特殊なのです。まるでこの境界図書館のように、別の世界に通じることがあるらしくて。その本の中にいる男性は、異世界からやってきた悪意ある霊や魔物を討伐している……というのが、正しいお話です」

 九重市では百鬼夜行と称されるが、魔物に慣れている者であればただの集団移動にしか見えない。魔法や魔物といった概念とは無縁な九重市だからこそ、その呼称が使われるのだろう。

 だが、カストルの表情が少々重たくなる。
 本の内容の続きが無くなったのは、今まさにその本の登場人物が危機に陥ってしまったからだと。
 彼は異世界より移転してきた魔物、人を喰うことに特化したブラックスライムに喰われた可能性が高いとカストルは呟く。

「ですから、これから本の内容を『改変』して続きを編んでいただきたいのです。時系列は……彼が飲み込まれる直前、何者かが襲いかかる寸前から」

 ゆるく微笑むカストルの顔は、あなたを信頼している様子だ。
 どんな道筋を辿ろうとも、ブラックスライムをきっと討伐してくれる……言葉をかわさずとも、カストルが言いたいことはその表情に全て込められていた。

「どうか、お願いします。ハッピーエンド……とはいかずとも、物語を終わりに導いてあげてください」

NMコメント

 はじめましての方ははじめまして、御影イズミです。
 初のライブノベル第一弾は、NMが実際に小説で使ってる世界からのお届けです。
 戦闘描写がメインのライブノベルとなります。

◆ここどこ?
 現代日本、N県九重市。
 普通の現代日本となんら変わりありませんが、普通と違うのは異世界と繋がることがあるということ。
 そのためこの九重市には時々、異世界の悪霊や魔物といったものが夜に現れます。
 イレギュラーズも似たような形で九重市に降り立っていると解釈していただければOKです。

◆開始地点
 九重市の住宅街から少し離れた裏山にて、遼が襲われる直前からの開始です。
 イレギュラーズは既にブラックスライムが遼の真上に降りてくること、襲われた結果どうなってしまったかという情報を得た状態で行くことになります。

◆最終目標
 『ブラックスライムが討伐』され、なおかつ『長月遼が生存』すること。

◆エネミー
 人食いブラックスライム
 変な場所に移動した怒り+腹ペコの怒りが合わさって、なんでもいいから食わせろ!となっている状態です。
 人以外のものを食べさせると「これじゃない!」と怒るため、結局は討伐が手っ取り早いという……。
 イレギュラーズが現れると「ごちそうがいっぱい!」と嬉しそうに飛びかかってきます。
 匂いはとにかく臭いです。海水と下水道の匂いが混ざった感じの匂いがします。

◆味方
 長月遼&ハーヴィー
 様々な幽霊の力を借りて悪霊や魔物を討伐している、討伐屋みたいなことをしている青年とクマのぬいぐるみ。
 彼らはイレギュラーズに助けられると、後方支援(ガード支援、罠作成など)をしてくれます。
 声をかければいい感じの手伝いをしてくれるでしょう。

 説明は以上です。
 物語の続きを、楽しみにしております。

  • 物語を改変せよ!完了
  • NM名御影イズミ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月02日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
優しき咆哮
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ

リプレイ


「ふぅん、異世界と繋がる街……ね」

 雲にうっすらと隠れた三日月がシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)を含めたイレギュラーズ達を淡く照らす。

 N県九重市の裏山。夜に現れる魔物の群れに、長月遼とハーヴィーは立ち向かう……という物語。
 しかしその物語は人を食うブラックスライムによって幕を閉ざされてしまい、続きが無くなってしまった。
 その終わりを改変するため、イレギュラーズ達はこの九重市へとやってきていた。

 その『物語』は今まさに、目の前で魔物達を討伐する遼の姿から始まる。
 彼が順調に、的確に魔物達を討伐していく様子は遼を追いかけるイレギュラーズの目にも入っていた。

「物語の改変か……。このまま行くと、バッドエンドの物語になるって話なのよね?」

 狐の姿をとっている長月・イナリ(p3p008096)は近くにいた仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)に問いかける。
 無論、イレギュラーズは皆この物語の結末を知っているが、皆が同じ結末を見たかどうかまではわからない。それ故の質問だ。

「ああ、そうだな。我々が介入することで、その終わりを回避する。……案外、大差ないのかもしれぬな」
「大差……ですか?」

 遼から目線を切らずに汰磨羈へと意味を尋ねるボディ・ダクレ(p3p008384)。彼の問いかけに汰磨羈は軽く首を縦に振って、答えを返した。
 『異界のモノの思惑次第で変容する』という点では、ブラックスライムもイレギュラーズも変わりがない。
 介入することで続きを消失させるか、続きを生み出すか、ただそれだけの違いであると。

 そして今、まさにその続きに至るための分岐点へと近づいていた。
 4人は空気が変わったことに気づくと、遼とハーヴィーを注視する。

「っ! あれ!」

 シキが指差す先、遼とハーヴィーの視界に入らない背後が少しずつ歪み始めていることに4人は気づく。
 ぐにゃりと歪む空間から、黒い不定形の生物が出てくる様子が見えた。

 それと同時、4人は走った。
 この物語を《改変》するために。


「んで、一番デカいのが来てるって?」
『すぐそこにいる。背後を取られるな』

 そのやり取りが行われた直後、遼とハーヴィーの身体が吹っ飛んだ。
 というのも、ボディの突き飛ばしが綺麗に決まり、彼らをブラックスライムから守ったため。ボディ自身が遼の肩代わりをしようと、彼らの位置と入れ替わったのだ。
 入れ替わったことでボディがブラックスライムに食われ、粘液にボディの身体が包まれるのだが……。

「!!」

 嫌なものを食べた。食べれないものを食べた。美味しくないものを食べた。
 そんな感情が芽生え、子供のように身震いをする様子のブラックスライムが見えた。

 事前情報があったように、このスライムは『人を食べることに特化している』わけだが、ボディのその身体は少々人とは異なる部分もある。その部分がブラックスライムのお気に召さないところなのだろう。

「ボディ、御主は無事か!?」
「ええ、はい。私、呼吸自体は不要なので大丈夫ですよ」
「だが囚われたままでは、満足には戦えまいて!」

 汰磨羈が素早く闘気の糸を放ち、ブラックスライムを輪切りにするように糸を締め付ける。
 締め付けた糸と糸の間から粘液が弾けるが、それだけではボディを救出することは出来ない。そう判断した汰磨羈は刀を糸の隙間に差し込み、グリグリとかき回す。
 かき混ぜられて水のようになった粘液の身体からボディが這いずり出ると、身体に付着した残骸を地面へとはたき落とす。中から這いずり出たせいで周囲に漂う匂いは切り刻む前よりも酷くなっているが、今はそんな事は言っていられない。

 だがその匂いを嗅いでいるのは何も4人だけではない。吹っ飛んだ遼とハーヴィーが自分達を突き飛ばした犯人を見つけようと、戻ってきた。
 鼻を押さえて4人を見つけた遼に対し、シキが彼を背中からずるずると引きずって裏山の木陰の後ろに隠し、前に出ないようにと指示を出す。

「な、なんで!?」
「いやぁ、私達はこの後に起きることを知ってるからさ。君らには危険な目にあってほしくないんだ」
「え、あ、えっ??」

 シキが何を言っているのかよくわからなかったが、前に出るな、という指示だけは汲み取ってくれた。
 わかったと返事をした遼は裏山の木陰に隠れるが、それを許さないと言わんばかりにブラックスライムが腕のような部分を伸ばし始める。
 しかしその行動さえも予測済みだったのか、飛びかかったイナリがその身体を牙で噛み付き、砕いていた。

「ちぃっ、糞不味い敵ね。下手に喰らったら、お腹壊しそうだわ……」

 イナリの口の中にはなんとも言えない不快な匂いが漂う。呼吸をする度にその匂いは鼻を抜け、イナリの食欲を減衰させてしまう。
 ちょっとでも味が良ければ胃の中に収めてやろうと考えていたが、ここまで酷いと食うにも至らない。唾を吐くように残骸を地面に吐き出しておいた。

 イナリが吐き出した残骸とボディの身体から剥がれたいくつかの残骸は意思を持ったように本体へと近づき、元に戻る。
 自分自身が完全な状態でイレギュラーズという異物を排除しようとする、ブラックスライムの本能がそうさせていた。

「おや、どうやら我々から先に狙ってくれるようですね?」
「丁度いいじゃないか。遼を狙うよりも、我々を狙ってくれたほうが遥かにやりやすい」
「そうね、確かに。遼さんがずっと狙われると、意識を集中させるのが大変だもの」
「そうと決まれば、一気に叩こう!」

 ボディ、汰磨羈、イナリ、シキの声が順番に並ぶと同時に、ブラックスライムは4人をまとめて捕まえようと身体を大きく広げ、丸呑みにしようと襲いかかる。
 素早く散開した4人はまず、どれほどの力を加えれば千切れたスライムが動かなくなるかを確認する。

 先程汰磨羈がボディを助ける時にぐちゃぐちゃにした残骸を見ると、大半は本体に再び吸収されているものの、かき混ぜられてドロドロになった部分に関しては復帰力がなくなっていた。
 ただ普通に千切ってしまうだけでは元に戻るようで、イナリが先程吐き出した残骸は全て本体に吸収されている様子。

 この点を踏まえた上で、4人は『スライムには核がある』という基本的な部分を頭に巡らせる。
 核さえ見つければ、あとは戦況をひっくり返すことが出来るだろう、と。
 そこで4人は持てる力を一気に解放。完膚なきまでに身体を切り刻むことにした。

「いい加減、鼻が曲がって仕方ないのでな。終わってもらうぞ!」
「当然の摂理とはいえ、我々も彼を守れと依頼されましたので。貴方を退治します」

 汰磨羈が再び闘気の糸を絡みつかせ、軽く糸を引いてブラックスライムの身体をザクザクと切り落とす。
 ボディが自らの速度を急激に上昇。鉈を大きく振り下ろして切り刻み、小さくなるまで削ぎ落とす。
 イナリは己へのダメージを無効化にするバリアを盾に、スライムに飲まれながらも爪での斬撃で体内から切り刻む。
 シキの作り出した魔性の大顎は3人が切り落としたスライムの身体をどんどん食べさせて、復活を阻止。

 4人の見事な連携は一回り大きいブラックスライムの身体を上手く縮ませていた。

「あっ、もしかしてアレじゃない!?」

 途中、イナリが声を上げる。彼女が視線を向けた先には空を舞う少々歪な形の固体物があった。
 それを守ろうと残ったスライムの身体が集まる様子が伺えたため、汰磨羈が糸でスライムの身体を弾き、シキが大顎で残った身体を食らいつくし、ボディとイナリが揃ってそれを掴むために空を舞う。
 固体物はひゅるるると重力に沿って落ち、掴もうとしたボディの手からつるりと滑り、口で掴もうとしたイナリの頭にコツンと落下し、絡め取ろうとした汰磨羈の糸をするんと抜け……ぽてんと、シキの作り出した大顎の中に放り込まれる。

「おっと、ラッキー!」

 ばくん、と食べた魔性の大顎。その咀嚼音と同時に周囲に飛び散っていたブラックスライムの身体がびくんと跳ね、ドロドロに溶けてなくなってゆく。どうやら核の消滅とともに身体も消滅し始めたようだ。
 全ての粘液質の身体が地面に溶けてなくなると先程までの悪臭が薄れ、爽やかな風によって空気が入れ替えられた。

 三日月が丁度顔を出したところで、遼もまた顔を出す。ハーヴィーの手に持ったメモ帳にじわりと文字が浮かび、4人への礼を述べていた。

「ふむ、まあ今回は運が良かったな。……ああ、本当に運が良かった"だけ"だ」

 厳しいことを言うがと汰磨羈は付け加える。もし、このまま自分達が現れなかったら死んでしまっていたのかもしれないのだぞ、と。
 まあまあとボディとイナリでたしなめつつも、汰磨羈達は遼に向けて助言を与えた。

「いいか、長月遼。仲間を作れ。頼れる者、磨き合える者を作り、その者達と共に成長しろ」
「え、ええと、どういう……?」
「そもそも今回、私達が来なかったらどうなってたと思う?」
「うっ」

 シキの的確な指摘は遼もハーヴィーも言い返すことが出来なかった。
 1人と1匹で戦っている故に強みもあるだろうが、今回のような不意打ちでは1人ではどうすることも出来ないだろうと言いくるめられてしまう。
 故に汰磨羈は言った。『異界の手助け無しで、やれるようになれ』と。

「……え? ええと、アンタ達って一体……」
「ああ、我々のことは通りすがりの者と思ってください」
「そうそう。ちょっとだけ、未来を知っている通りすがりの人よ」
「は、はあ……?」

 ボディとイナリの茶目っ気ある返答に、ますます首を捻って考え出してしまった遼。そしてクエスチョンマークをメモ帳いっぱいに並べるハーヴィー。
 そのやり取りに小さく笑ったシキと汰磨羈は、彼らに早いうちに帰るようにと促したのだった。

 ――彼らの物語は《改変》された。
 ――バッドエンドを塗り替える、ハッピーエンドへと。

成否

成功

状態異常

なし

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