シナリオ詳細
敵を欺く空蝉の身
オープニング
●敵を欺く空蝉の身
「……ん……?」
ひんやりとした岩肌が冷たい洞窟の中で、半身をむくり、と上げる者。
暫くの間気絶していた様で……岩肌に接していた半身が少し、痺れを伴う。
「い、いたたたた……う、うーん……なんだろう、暫く寝て居たような気がする……」
意識はまだ少し、ぼんやりとしている……何でこんな、暗い所にいたんだろう。
そして痺れた手を地面について、立ち上がる。
「……うーん……何だったんだろう……思い出せない……これが記憶喪失ってヤツなのかな?」
記憶喪失だったら慌てそうなものなのだが、彼は決して慌てない。
……それもその筈……彼はProjectIDEAに携わっていた、練達の技術者。
まぁ、技術者と言っても一端のプログラムを書く程度の役割なのだが……それ故に、多少の冷静さは持って居た。
「……んー……確か、プログラムが上がったからテストしてくれ、って言われてたしょうな……気がするんだが……」
頭をぽりぽりと掻く……が、気づく違和感。
あった筈の髪が、ない。
「……え?」
更に気づくのは……その手、足がゴツゴツしている事。
明らかに、人のものでは無い図体。
「え……え?? これは……あれか、ゴブリン……か?」
プログラミング中に何度も見た絵が、頭の中に思い浮かび……その特徴と一致する己が身。
「……もしかして、俺……R.O.Oの世界に入り込んじまったのか? マジか?」
素直に信じられるような状況ではない。
だが、そんな彼の元に、声を上げながら近づいてくる……影。
『ゴブゴブ! ゴーブゴーブ!!』
陽気に鳴声を上げるのは……これもゴブリン達。
そしてゴブリン達は……恐らくここが住処だったのだろう、警戒する事無く入ってくる。
……そこに見知らぬゴブリンの姿。
『ゴブ!? ゴ、ゴーブゴーブ!!』
棍棒を手にし、威嚇するように声を上げるゴブリン達。
「……!? ゴ、ゴーブ、ゴブゴブゴブーー!!」
咄嗟にゴブゴブ言ってみる彼……するとゴブリン達は。
『ゴブ? ……ゴブ、ゴーブゴブ』
近づき、頷き、肩を叩く。
……何だか仲間である、と認めたような感じに見える。
そんなゴブリン達に、適当に感情を込めてゴブゴブ言う研究者。
その言葉に周りのゴブリン達は。
『ゴブー! ゴーブゴブゴブ---!!』
鼻息を荒くして彼の手を引き……近くの村に向けて走って行くのであった。
●
「あの……イレギュラーズの皆さんに、ちょっと……お願いがあるのですが、宜しいでしょうか?」
ギルド・ローレットを訪れるイレギュラーズ達に、礼儀正しく頭を下げ、お願いするのはルリア=ルミナス。
そして、皆が集まってくれた所で、早速ルリアは。
「えっと……小耳に挟んだのですが、最近、R.O.Oという世界に皆さんログインしていらっしゃるのですよね……?」
小首を傾げるルリアに、頷く君達……それに、良かった……と胸をなで下ろしながら。
「つい先日なのですが……私宛に、奇妙な依頼が来たのです……練達の技術者さんが、戻ってこないから助けて欲しい、って……」
「私はそういったものに疎くて、皆さんなら……解決してきて戴けるのではないか、と思ったんです。練達の技術者さんがどうして戻ってこないのかは解らないのですが……何だか嫌な予感がするんです」
「恐らく、何らかの理由で戻って来れない何か、が起きているんだと思います。その方の名前は『カナデ』さん、と言う方のようなので……彼をR.O.Oの世界から連れ戻してきて戴きたいのです……情報がほとんど無くて、本当に申し訳ないのですが……あの、宜しくお願いします……」
と、本当に申し訳なさそうに、深く頭を下げるルリア……君達は頷き、練達の技術者の救出へと向かうのであった。
- 敵を欺く空蝉の身完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年06月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●擬態
R.O.Oの幻想世界、エメラルド。
エルフや妖精など、様々な者達が生活するのは……まぁ、現実世界でも見たり、過ごしたりしている風景。
そしてそこではゴブリンやオークは普通に見かけるし……彼らは生活の糧を得る為に、街や村を襲うのも……至極当然の事件である。
そんな様々な事件が起こる中で、今回の依頼は……ちょっと特殊なパターンであったりして。
「んー……これで、大丈夫か?」
と声を上げるゴブリン……いや、『偽りの獣(レイナ)』♱✧REⅠNA✧♱(p3x000665)。
彼女が見た事が有るゴブリンの姿なので、この地に居るゴブリンとはちょっと違うかもしれないけれど……まぁ、装備以外はゴブリンは似たような物だろうから、多分問題無い筈。
そんな彼女の擬態に『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)と『殉教者』九重ツルギ(p3x007105)、『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)の三人も。
「木を隠すなら森の中、ゴブリンを隠すならゴブリン軍団の中、ってか? あー、メンドくせえ事この上ねーな!?」
「そうですね。森から木の葉を探し出すというのは大変ですが、対象が生き物というだけまだ救いはありますが。俺達が上手く気づいてあげる事が出来ればいいのですが……ね?」
「ああ……こういうの、ちっと面白そうだと思って居る自分もいるんだな、これが。でもカナデからすれば全く思っても無い状況が展開している訳だが……良くもまぁ、周りのゴブリン達に合せられたもんだ」
「ええ……姿形が一緒とは言え、人目で分からない程度に溶け込むとは……恐るべき順応性、ですね……」
二人がぼやき合う様に、今回の依頼は……ゴブリンの中に紛れた練達の技術者『カナデ』を救い出してきて欲しい、というもの。
だが、目が覚めてちょっとしたら、ゴブリンの群れに囲まれる。
そして……咄嗟に意味も分からないゴブリン語を話すだなんて、一端のプログラマーと言えど、中々冷静な判断力を持っている様な、そんな気がする。
「いや……目が覚めたらゴブリンとは……ただのアバターならともかく、敵のNPCに組み込まれたとありゃ、ただの悪夢と変わらねぇな」
と『狐の尾』コーダ(p3x009240)が溜息をつくと、それに『白竜』ベネディクト・ファブニル(p3x008160)も。
「そうだな。今回の依頼はゴブリン退治に技術者の救出か……ゴブリンの討伐は、戦えば何とかなるが、救出の方は考えねばならないだろう。ゴブリン相手だから、そこまで知力が高くないのは不幸中の幸いだな。上位の種族も居ない様だし」
「そうだね。確かに頭は宜しく無い雑魚のゴブリン達だけが相手の様だから、簡単な作戦にも容易に引っかかるだろうし。勿論油断は出来ないけれども」
そんな二人の会話に、『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ(p3x009471)
「今回の様に、姿形も居場所も自由にならないまま、突然閉じ込められる……そんな被害に遭った人は意外に多い様だ。そんな人達を一人でも多く、助けたい所だな」
とアズハの言葉にコーダ、そして『無政府共産主義者』赤井・丸恵(p3x007440)も。
「ああ。まぁ護るのは得意なんでね。まずはきっちり仕事と行こうか」
「……まぁ、そうですね。きっちりと依頼をこなして、報酬を得る……それが摂理ですから」
と頷き合い、そして♱✧REⅠNA✧♱が。
「それじゃ、皆は村に向かうんだよな? オレは、しれっとゴブリン達に紛れて、先にカナデに目星を付けておくとしよう。間違っても、オレに攻撃して来んなよ?」
手をヒラヒラふるゴブリン……いや、♱✧REⅠNA✧♱。
対し他のイレギュラーズ達は、ゴブリン達が襲撃する、と言われて居る村へと先んじて急行するのであった。
●暁月
『ゴブ、ゴーブゴブ-♪』
『ゴブブ、ゴブゴブー!!』
そして村に向かう道を、鼻息荒く陽気に歩くゴブリン達。
そんな意気揚々としたゴブリン達の街道を進軍路の脇へとやって来た♱✧REⅠNA✧♱。
「意気揚々と、何だか楽しそうね……」
そんな意気揚々としているゴブリン30匹を横から一通り見渡して……他のゴブリン達とちょっと雰囲気が違うのが居ないかをチェックしていると。
『ゴ、ゴブー! ゴブゴブゴブー!!』
少し後方の方を歩くゴブリンが、ほんの僅か元気が無さそうな……そんな気がする。
でも、ただ元気が無いゴブリンって言う可能性はまだまだあるけれども……取りあえずこのゴブリンに目を付けた♱✧REⅠNA✧♱は、一端脇を駆ける。
そして……。
「ゴブ! ゴーブゴブー!!」
と、ゴブリン達の前に立ちふさがるように飛び出す。
勿論、突然飛び出してきたので、ゴブリン達は♱✧REⅠNA✧♱を警戒し、棍棒を構えて、威嚇。
……そんなゴブリン達に、ゴブリン語で。
【あっちの方に村があったぜ! オレはあっちの方から来たんだが、食料やらを蓄えている倉庫があるみたいだ。オレ一人じゃ奪う事叶わなかったが、あんたらの協力があればやれる! 一緒にぶっ殺してぶん盗ろうぜっ?】
とゴブリン達に呼びかける。
その呼びかけに、ゴブリン達は。
『ゴブ……ゴブゥ?』
『ゴブ。ゴブゴーブゥ』
『ゴブ! ゴブゴブッ!!』
と鼻息荒く話し合う。
勿論、その話し合いで何を言っているかは正直♱✧REⅠNA✧♱にも分からないけれど……少なくともこの先に食料がある、という事は何となく伝わった模様。
そして……そんな話し合っている最中も、更に♱✧REⅠNA✧♱は人助けセンサーを活用し、先ほど目星を付けたゴブリンをちらちらと見つめる。
『ゴ、ゴブゥ……?』
その視線に気づき、ちょっとだけ小首を傾げる彼。
……と、そこに話し合いを終わったゴブリンが。
『ゴブ! ゴブゴブゴブー!!』
分かった、一緒に行こうぜ! と言った様な気がするゴブリン。
と、ゴブリンの戦列にすっ、と加わると共に……先ほどのゴブリンの横へ。
彼に向けて、彼にしか聞こえない位、小さな声で。
「……大丈夫、助けてやるからな?」
『……?』
えっ、と言う表情を浮かべる彼……その反応に確信する……彼が、カナデだ、と。
でも、今ここで逃げる訳にも行かない……二人にふと、前のゴブリンが。
『……ゴブゥ?』
『ゴ、ゴブゴブッ!!』
慌てて取り繕いつつも、♱✧REⅠNA✧♱に小さく頷く彼、そして彼の腕に、目立たないようにバンダナをささっとまき付け、ゴブリン達は、とうとう……村へと辿り着くのであった。
一方、他のイレギュラーズ達は、小さな妖精達が住まう村へと事前に到着。
当然村の妖精達からすれば、ゴブリンが襲いかかってくる事件は周りの村の仲間達から良く良く聞いては居た模様。
ゴブリンの数は30匹とカナデ、そして……♱✧REⅠNA✧♱も加わるとなれば、32匹ものゴブリン達が襲撃してくる事になる。
万が一にも外で出くわせば、ゴブリン達の殴打にひとたまりも無いだろうから……イレギュラーズ達の避難の呼びかけには大人しく従ってくれる。
そして妖精達を避難をさせた後……空の陽射しが、もうすぐ地平線に傾き始める頃に、ゴブリン達が到着。
『ゴブッ! ゴブ、ゴブゴブーー!!』
妖精達だけの村だったら簡単に攻略出来たであろうが、妖精でなく人が居る、という事に僅かに焦りを見せる彼ら。
……そして、そんなゴブリンの群れの中に、先ほど別れた♱✧REⅠNA✧♱の姿もあるので……合流成功したのは、イレギュラーズ達も理解。
「なるほど、あの中にカナデさんが……? こちらとしては困ったものですが……まぁ、何とかやりましょうか」
とハルツフィーネ
「……Hold Up!!」
と、そんなゴブリン達に向けて、Tethが早速銃を突きつける。
その言葉に、反射的に手を上げるゴブリンが二匹……そう、♱✧REⅠNA✧♱と、バンダナを腕に撒いたゴブリン。
手を上げる仕草に、周りのゴブリンがきょとんとしているが、更に
「お、なんだそこのゴブ! 両手を挙げて威嚇か? やろうってのかいい度胸だ!!」
とTethが威圧する様に叫びながら、そのまま敵陣ど真ん中を駆け抜けていく。
その目的地は、手を上げた二人のゴブリン。
そして二人を両腕に抱え、他のゴブリン達から引き離す。
引き離された二人に向けて、アズハが更に。
「オレたちはあなたを助けに来た! カナデさん!」
と彼を元気付けるように声を掛ける。
『ほ……本当か!?』
と、咄嗟に人語が漏れる。
「ああ、本当だ! だから、Tethさんの前から絶対に出ないようにしてくれ!」
『わ、分かった……!』
頷き、姿を隠すカナデ。
その一方で、他のゴブリン達は。
『ゴブ!? ゴブゴブゥゥ!!』
良く分からない事を喋られたからなのか、それとも……仲間を取られたからなのかは分からないけれど、思いっきり憤り始め、その手の棍棒をぶんぶんと振り回すゴブリン達。
「まぁ落ち着け。俺達がちゃんと相手してやるからよ」
とベネディクトが冷たく言い放つ一方、後ろでツルギが光の翼をはためかせ、ゴブリン達へとアピール。
『ゴブ!』
目立つツルギと、威風堂々としたベネディクトに敵対心を燃え上がらせた様で……ゴブリン達が左から、右から……次々に攻撃を開始する。
そんなゴブリンの攻撃体勢に。
「まずは向かってきている個体を叩く! 後ろに居る個体はTeth、♱✧REⅠNA✧♱、頼んだぞ!」
「ああ、任せとけ!」
ゴブリンの攻撃を二手に分けさせ、攻撃を分散させる。
とはいえ棍棒をただ力尽くで振り落してくるしか出来ないゴブリン達。
特殊な力は無いけれど、勢いと物量だけで攻め入って来る彼らは……勢い付かせれば、かなり厄介な奴らなのは間違い無いだろう。
そんなゴブリン達に、忘れる事無く。
「おらおら、死にたい奴から前に出やがれ!!」
声を荒げ、決して敵が逃げるタイミングを作らせない様にする。
そしてカナデを安全な所に避難させた所で、♱✧REⅠNA✧♱も戦列へと加わる。
勿論ゴブリンからすれば、仲間が反旗を翻してきた、という風景に見えるので。
『ゴブぅ!!』
一部のゴブリンは、そんな反逆者に死を与えなければ、という気概を見せる。
幾多もの攻撃が襲いかかってくるが、一番前に居る敵の足元を狙い、転倒させる事で後ろに居るゴブリン達も連鎖して転倒させる。
そして転倒した所に、ハルツフィーネが。
「お客様の中に、力で始まるゴブリンさんがいたら……クマさんの方には来ないで下さい」
と零すと、テディベアのクマさんが両手を挙げた威嚇のポーズを取り『がおー!』と咆吼を上げて怒りを買う。
続いてTethが高エネルギー化した励起電子を束ね、ゴブリン達に放射し、その白亜の光の中に吸い込まれ、かなりのダメージを与える。
そしてダメージを喰らったゴブリン達が反撃開始。
ただただ暴力的に殴りつけるだけのゴブリン……だが、その間に割り込むのがコーダ。
「さて、俺と遊ぼうか!」
コーダは盾を構えつつ、自分に攻撃を誘導しつつ、仲間達の盾となる。
更にベネディクトは、敵の一撃を見切ながら、鋭い目線と、辛辣な言葉で。
「どうした、この程度か! これしきの攻撃では俺達はそう簡単に倒れはせんぞ!」
と威嚇する。
そして、その威嚇に重ねるようにツルギが。
「さぁ、貴方がたの本性(なかみ)……ブチ撒けて頂きましょう!」
攻撃へ意識を集中……そして細剣をまるで奏でるかの様に突き立てて、敵を掃討していく。
……そして、最後に丸恵が、一番傷ついているゴブリンをターゲットにし、不殺の一閃で……その場に気絶させる。
まずは一匹を確実に倒したものの、まだまだ敵の数は多い。
ただ……カナデは救出出来て居るので、彼を守り切れれば最悪の状況にはならないだろう。
「ははは! さぁ、惑いながら倒れていけ!」
「うん。もう遠慮しません。力でクマさんを倒せると思うなどと……ゴブリンごときが片腹痛い、です」
Tethとハルツフィーネが言い放ち、更にアズハも。
「君達は、私利私欲に塗れて村を襲う……自分達で努力すればいいものを、人から奪って楽して生きようだなんて、絶対に許されないよ?」
とゴブリン達をこき下ろす。
勿論ゴブリンは、それに更に憤り、更に反撃の狼煙を上げての猛襲。
……だが、コーダが鉄壁のタンクと化し、敵の攻撃を引き受け続けて、他のイレギュラーズ達は着実にゴブリンを一匹ずつ仕留めていく。
そして、彼らが襲撃を開始してから、数十分が経過。
いつの間にやら、もう残るは後一匹。
逃げ道も失われ、もうその身もボロボロ……戦意も喪失しかけているゴブリン。
ちょっと可哀想……という気持ちも少しはあるが、彼らが村を襲った事実は変わらず、罪を償わなければならない。
「ネクストの世界に産まれたNPCだから、お前等に実態は無いかもしれないが、一度倒れて、悔い改めなさい!」
と最後の一匹にツルギの一閃が決まり……最後の一匹も、イレギュラーズ達の前に崩れ墜ちるのであった。
●真実
全てのゴブリン達が倒れた後。
取りあえず村には被害も無い様なので、避難させていた妖精達を呼び戻し……彼らに早々に別れを告げる。
そして……ゴブリンの姿をした『カナデ』に、ベネディクトが。
「本当、災難だったな。大丈夫か?」
と声を掛けると、カナデはこくり、と頷いて。
『あ、ああ……本当、目を覚ましたらこの姿になっていて、驚いたよ……あのままだったら、周りのゴブリン達に合せて、村を襲うしか無かったからな……本当に、皆には感謝しかない。でも……何で君達は、俺を助けてくれたんだ?』
カナデの問いかけに、ハルツフィーネが二コッ、と微笑んで。
「R.O.Oの世界に、あなたのような方々が閉じ込められてしまっている、とウワサなんですよ? だから、私達が助けに来ました」
『そうなのか……』
顔を伏せる彼。
……彼もある意味、この世界を造りだした側の人間ではある。
だが、作り出した人間がこうやって、世界に閉じ込められるだなんて……R.O.Oの世界は、作り手側の予測とは全く違う方向へと、暴走し始めているのかもしれない。
「兎も角、色々と混乱しているだろうから……一端元の世界に戻ろうぜ? アンタが気絶していた所に案内してくれ。そこからじゃないと、ログアウト出来ないらしいからな」
「そうですね。そこまでは勿論、護りますよ」
コーダとツルギの提案に、分かった、と頷くカナデ。
そしてイレギュラーズは彼と共に洞窟へと赴き……彼がログアウトするのを見送る。
彼の姿が消えた所で、アズハが。
「しかし、暴走したR.O.O……どうなっていくんだろうな。混沌の人を飲み込んで、トロフィーにして……何が起こるのか、分からないゲームだな……」
とアズハの言葉に、ハルツフィーネは。
「そうですね……この先も、様々な事件が起きそうですね……暫くの間は、心安まる事は無さそうです」
と瞑目。
……そんな一抹の不安を感じつつ、イレギュラーズ達もまた、各々ログアウトの帰路へとつくのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
R.O.O 技術者がゴブリンになったらどうなるだろう、というシナリオでした。
ゴブリン語、ゴブゴブ言わせるの、結構たのしかったです1
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
ROO、今回はエメラルドに閉じ込められた、練達の技術者の救出依頼となります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
●成功条件
練達の技術者『カナデ』を救出する事です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●周りの状況
『カナデ』は、練達の世界に閉じ込められると同時に、ゴブリンの姿形になってしまいました。
そしてそんなゴブリンの姿をした彼を仲間と認識した他のゴブリン達が、彼と一緒にR.O,Oのエメラルドの村を襲撃する、という状況になります。
襲撃されるエメラルドの村は、妖精の様な人達が住まう村……なのでゴブリンが襲撃すれば、ひとたまりもありません。
ただ、今回の依頼はゴブリンの中に混じっている『カナデ』を救出する事なので、ただ単純にゴブリンを全て退治すればOK、という訳ではなりませんので、ご注意下さい。
●NPC情報
『カナデ』
練達の技術者で、R.O.Oの一端のプログラマーさんの様です。
しかしこの世界に閉じ込められると同時にゴブリンの姿になってしまったので、人の面影はありません。
他のゴブリン達と違う所は、『人語』を解する事。
ただ他のゴブリン達が居る中では、その素振りを見せたら怪しまれてしまいますので、通常時はゴブゴブ言ってます。
ゴブリンの中から彼を如何に見つけ出すか、が今回の依頼の大きなポイントとなりますので、作戦を考えて見て下さい。
●討伐目標
・ゴブリンの集団 x 30匹(+カナデ1人)
ゴブリンの大集団で村に襲いかかってきます。
攻撃手段は棍棒だけですが、かなりの腕力を持っているので攻撃力も高い様です。
とは言えバッドステータスを賦与するような行動はないので、対応する上ではそんなに難しい事では無いでしょう。
又知力は余り無いので、基本的に目に付いた敵をぶん殴るだけなので、それもカナデと見分ける為のキーポイントとなるでしょう。
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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