シナリオ詳細
<至高の美味を求めて>呪われし/美味なりしディグ・ディエル
オープニング
●GR001の危機
「ぐっ……」
GR001。そう名付けられしアバターは、霧深い山の中で膝をついていた。
この山の中に入ってより、すでに9日……いや、15日? それとも、もっと多く?
分からない。この霧深き山の中では、昼も夜も消え去っている。
どういう理屈か天からの光は完全に遮られ、いつでもぼんやりとした光が辺りを覆っている。
そして、何よりも。
「ログアウトできない……! なんということだ。おのれ、まさかこのような……!」
ラピッド・オリジン・オンライン。そう名付けられしモノに練達の研究者として上手く潜り込めたまではよかったが……こんな罠が潜んでいたとは、GR001に想像できたはずもなかった。
グルル……と。飢えた獣の如き咆哮が周囲に響き、GR001は即座に立ち上がる。
「どうあっても私を食おうというわけか。だが、そうはいかん」
襲い来る「何か」を回避し、斬り付けて。GR001は軽く舌打ちする。
その「何か」は、此処に来た目的そのもの。しかし……攻撃の結果はGR001の満足いくものではない。
「チッ、やはりダメか!」
斬ってはいる。ダメージも入っているのだろう。
しかし、いつもと同じような手ごたえを得られないことが、GR001を苛立たせていた。
予想は出来る。恐らく、これを倒すには条件があるのだ。
「何処かに本体がいる。それを見つけねば、どうにもならんか……」
周囲に現れる、爛々と輝く無数の目。霧の獣と呼ばれるモンスターだ。
これ等は今いた「何か」……ディグ・ディエルの守護者達でもある。
そして今捕食者として現れたそれらに、GR001は全く怯んだ様子を見せない。
「騎士の誓いにかけて、此処を突破する! 父祖よ、輩よ! ご照覧あれ!」
●美味なりしディグ・ディエル
ROOの街中。それは、そんな風景の中に溶け込んだ何処にでもいそうな老人のNPCであった。
だからこそ……何が条件だったのかは分からない。
しかし、その老人は集まったアバター達の前で唐突にポツリと呟いた。
「お前さん。ディグ・ディエルを知っているかね?」
知るはずもない。
しかし、何か聞き覚えがあるような……と呟く者も居た。
「ノルン山脈の奥深く、霧深き場所に住む獣。あるいはその長とも言われておるが……その肉は類まれなる美味にして、霊薬とも呼ばれるほどの薬効を持っているともいう」
ディグ・ディエル。
そう、確かそれは現実世界にもある御伽噺だ。
「ディグ・ディエル、霧の中。ディグ・ディエル、山の中。その肉は美味なりし長寿の秘薬。されど挑みし者は皆霧の中へと消えゆく。ディグ・ディエル、時の果て。今日も誰かが命を捧げ行く……」
一通り歌うと、老人はひえっひえっ、と不気味な笑みをこぼす。
なるほど、どうやら「ディグ・ディエル」とは黒い虎のような獣……であるらしい。
「お前さん等も興味があるなら挑んでみるのもええ。今は……『1人』向かっておるようじゃの」
現在の経過時間は……と続ける老人の言葉に、聞いた者はギョッとする。
30日。日数に直せば、その1人はどうやらそれ程の時間クエストに挑戦しているらしい。
これは明らかな異常事態の1つ。
それが分かった以上……やるべきことは、1つしかなかった。
![](https://img.rev1.reversion.jp/illust/scenario/scenario_icon/44791/80fb4992512aee197de5c444c5b0a448.png)
- <至高の美味を求めて>呪われし/美味なりしディグ・ディエル完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年07月04日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●クエスト開始
その場所は、文字通り深い霧の中にあった。
クエスト開始後に転移したその場所は、どうやらROOの特殊フィールドに位置するものであるらしい。
山から外では通常の手段では出られない。それを確かめるのは、難しいことではなかった。
「正に五里霧中ってヤツか。それならそれで、動きまくりの探しまくりで行くだけだ。やりがいのある仕事だぜ、ホント」
『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)はWill-o'-Wispで光源用の鬼火を出しながら、そんな事を呟く。
周囲を明るく照らしてくれるはずの鬼火も、キッカリと測ったように半分程度の距離しか照らさない。
まるで、霧にそう阻まれているかのようだ。
「いやな霧ですね」
そう言う『双ツ星』コル(p3x007025)の台詞も、全員の気持ちを代弁したものではあるだろう。
ゲームの中であるはずなのに、本能的に感じる気持ち悪さ。
「まるで敵の巣の中に入ってしまったようです」
「……近いものではあるのかもね」
コルに『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ(p3x009471)は、そう答える。
そう、まさに此処は敵の巣であり……手の中なのだろう。
思うのは、このフィールドの何処かに居るというGR001のことだ。
30日間も? クエスト辞退もせず?
……いや、辞退もできないのかもな。
ならば尚更、クエストクリアとGR001さんの救出、どちらも達成するしかないな。
そう考えるアズハだが……もし失敗すればどうなるのか。それはあまり考えたくないことではあった。
「ずっとROOで過ごせるだなんて、羨ましい……ディグ・ディエルを倒せばその方法が判るかしら?」
何処となくズレたことを言う『女王候補』アンジェラ・クレオマトラ(p3x007241)はさておき……そう、ディグ・ディエルを倒せばこのフィールドから出られることだけは間違いない。
「ディグ・ディエル……さて? 聞き覚えのあるようなないような」
聞いたとしても遠い昔のことだろうと、そう『秘すれば花なり』フー・タオ(p3x008299)は自分の記憶を探る。
そう、何処かで聞いた気がする。ROOとは関係なく……現実世界のどこかで。
「それはさておき、食材として最高峰と聞けば「こちら側」であろうと放ってはおけぬ」
「GR001も同じ事を考えたんだろうが……珍味を求め、その命を散らしてしまっては元も子も無いだろう」
そうならぬようGR001を早めに救出したい所だが……情報が少な過ぎるのが難点だな、と『UNKNOWN』プロメッサ(p3x000614)は周囲を見回す。
この霧の中、GR001がまだ生き残っているのは幸運に近いものがある。
「そのGR001だけど……ログアウトせずに30日プレイって現実の方どうなってるの!? いや、流石に練達だからダイヴ中の身体の世話は何とかしてくれているのだろうか……」
しかし身体は無事でもメンタルは無事であるとは限らない。
そう考えれば今もカウントダウンの最中だと……『プリンセスセレナーデ』指差・ヨシカ(p3x009033)はそう思う。
「少しでも早く救出してあげよう。じゃないと目覚めも悪いってもんさ」
「ああ。視界が悪い故、安易に飛行するわけにもいかぬしな……GR001とやらは地道に探すしか無いであろう」
指差・ヨシカに『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072)も頷き返し、探索を開始する。
コルの感じたものと同じ……敵の口の中にいるような、気持ちの悪さを感じながら。
●GR001との遭遇
「どこですかー、助けにきましたよー!」
コルの声が霧の中で響く。
此処に来るまでに何度か霧の獣を撃退してきたが、なんとも満足感のない敵……という表現が正しいように思えていた。
ROOに存在する普通の敵とも違う、イベントモンスターか何かのような、そんな感覚だった。
そんな中をはぐれないように歩きながら、声をかけ……やがて、その声に答える者が現れた。
「助けに、か。確かにこの状況ではそれに頼るより他になし、か」
霧の中より現れる、騎士としか言いようがない格好をしたアバター。
恐らくはこのクエストに挑戦しているGR001というアバターであるのは間違いなかった。
「貴様がGR001か?」
「ああ。それで……助けに来た、とは? 何の縁も所縁もないと思うが」
あまり友好的ではない。いや、むしろ警戒されている?
プロメッサはそれを感じ取るが、そこにコルがずいっと大きく近づいていく。
「私も……食べることが大好きです、お近づきになりたい……!」
フルフェイスの兜でも分かる、戸惑うような表情。しかし、GR001の警戒が大きく緩んだ事をその場の全員が感じ取った。
「そうか。食べる事が好きか」
「はい!」
「ならばその手を取ることに異はない。同好の士よ、この状況が終わるまで私は持てる全力を『仲間』として尽くすと誓おう」
何が鍵であったのか。何が琴線に触れたのか。とにかくGR001が自分たちの一時的な仲間になったことは間違いない。
「ところで、GR001さんは何故R.O.Oに?」
「必要があり確認しに来た。詳しくは話せん」
アズハの問いにGR001はそう答え、それ以上は聞くなと言いたげな雰囲気を出す。
少し悪くなってしまった雰囲気を戻すようにTeth=Steinerは「あー」と声をあげる。
「まあ、とんだ災難だったな。だが、もう大丈夫だぜ」
「……感謝はしている。だがそれは誤った認識だ」
「そりゃ、ディグ・ディエルのことか?」
「その通りだ。此処に来た以上、お前達もログアウトを封じられているだろう……つまり、倒さねばどうにもならんということだ」
確かに、それはその通りだ。ディグ・ディエルを探す手立ては依然として存在せず、全て手探りの状態だ。
「何はともあれ情報がないのが厄介であるが……」
「GR001君も30日も渡り歩いて居たんだったら、結構な量の情報を得たんじゃないか?」
フー・タオに指差・ヨシカも同意し、全員の視線がGR001に集まる。
その視線を受けながらGR001は考えるような素振りを見せ、やがて「そうだな」と頷く。
「私が彷徨っていた間に得た情報は幾つかある」
1つ、ディグ・ディエルはどうやら一定の場所から移動しない。
これは今まで彷徨っていたGR001が1度もディグ・ディエルの本体と出会わなかったことから可能な予測だ。
1つ、ディグ・ディエルは臆病である。
これも、ディグ・ディエルが直接やってこない事から可能な予測だ。
「そして、もう1つ。『怪しげな木々に隠された場所』を探ってみたが……このようなものを見つけただけだった」
「ペンダント……かしら?」
「欲しければやる。恐らくクエストに関連する何かだろう」
言いながらGR001はアンジェラ・クレオマトラへとペンダントを投げ渡す。
古びたペンダント、という名前であるらしいそのアイテムには何の効果もないようであった。
「そうなると、どこにいるのかね。いかにもってトコもあるにはあるが」
しかし、それはペンダントがあるだけの場所だった。Teth=Steinerは考え……他の候補2か所を思い浮かべる。
幾つかの洞窟、そして湖。どちらも怪しそうではあるが……。
「虱潰しに行くしかないかもしれぬな」
ヴァリフィルドは言いながら、自分の尻尾の先に触れようとしているコルからそっと尻尾を遠ざける。
「もし周囲に喰らうことのできる生物がいるのであれば捕食して眷属とし、我々が向かうところ別の所を探索させるとしよう」
幻影の出現も加味するならば出来るだけ多い方が理想であるな、などと言い出すヴァリフィルドにGR001は「アクセスファンタズムか」と呟く。
「俺のアクセスファンタズムも活用してはいるんだが……この霧では中々な」
「其方のアクセスファンタズムはどうなのだ?」
アズハがアクセスファンタズムの話題を出したついでにフー・タオがそう探りを入れれば、GR001は大したことはない、と答える。
「私のアクセスファンタズムはレアな食材に辿り着きそうな場合、なんとなく分かる、というものだ。しかし今のところ反応してはいない」
「それでも頼りにしてる…………にしてもディグディエル、美味しいのかな」
「美味い」
まるで食べた事があるかのように即答するGR001に指差・ヨシカは思わず凝視してしまうが、GR001は気にした様子もない。
「遥か太古に乱獲によって姿を消した獣だ。ならばどうであるかなど明白だ」
「ああ、それで聞き覚えがあったのかの」
フー・タオが納得したかのように頷き、プロメッサも納得したかのように「そうか」と答える。
「しかし、私も是非ともその姿は見てみたいものだ――ディグ・ディエル」
此処から先は、本当に虱潰しになる……それが分かっているからこそ、全員が静かに覚悟を決めていた。
●ディグ・ディエル
霧の中を歩く。
Teth=Steiner(p3x002831)のRecon_Droneによるドローン探索。
「もしもーし、ディグ・ディエルとやらはどちらー?」
アンジェラ・クレオマトラによる呼びかけ。
フー・タオの式神使役やモノクロスコープによる暗視。
アズハの響界感測による周囲の把握。
様々な手段を使いながらあちこちを探し回る。
人数さえそろっていれば霧の獣も障害ではなく、順調に探索は進み……やがて、湖へと辿り着く。
ノルン山脈でもかなり高い位置に存在する湖だが……そこでアズハがピクリと反応する。
「何か居る」
何が起こるか分からないからこそ生存を重視したいというアズハの慎重さが、それをいち早く捉えたのだろうか?
やがて他の仲間達も、次々にそれに気付く。
「来るぞ!」
ヴァリフィルドの咆哮が響き渡り、霧の向こうにいる何かに影響を及ぼしていく。
「安易に攻撃を受けるわけにはいかぬのでな!」
「攻撃……そう、攻撃だ。止める事無い攻撃を、戦闘を謳歌しようではないか」
死神の血族を発動させたプロメッサがアドレナリンの影響を受け始め、コルがアクティブスキル1を放つ。
「今日もご安全に、無事故で終えましょう」
ユウドーブレードを構えた指差・ヨシカがディグ・デ・エルへとアンカーシュートを放ち接敵していく。
「なんという……連携に慣れているな!」
その無駄のない連携にGR001からの感嘆の声が上がり、そんなGR001を狙うように出現した霧の獣の攻撃をアンジェラ・クレオマトラが受け止める。
「何が出てこようと私は、壁役としてみんなをかばうだけだわ」
「ならば私はこの拳を、蹴りを、あらゆる体術を叩き込むのみ!」
プロメッサの攻撃が霧の獣に叩きこまれ、霧散していく。
GR001を守りながらもディグ・ディエルの「得意」を活かさせないようにするその攻撃の前に……ディグ・ディエルが勝てるはずもなかった。
●美味なりしは
「……あの自爆スイッチとやらを連打していた女はなんだったんだ?」
爆破クッキングという名の死に戻りをキメた指差・ヨシカの事を聞くGR001から全員が目を逸らすが……GR001は「まあ、いい」と溜息をつく。
クエストを見事に達成したTeth=Steiner達は街に戻ってきていたが……手に入れた「ディグ・ディエルの肉」というアイテムは、此処から何らかの調理を施すことによって料理アイテムになるようであった。
「美味で、霊薬とも言われる食材か……気になるね」
「そうだな」
つまらなそうに手の中の肉を見ているGR001にアズハは多少の違和感を覚えるが……「ねえ」と声をかけるアンジェラ・クレオマトラの言葉がその疑問を中断させる。
「ROOに閉じ込められた原因……心当たり、ある?」
「ない。が、あえて言うのであればこの『世界』の特異性ではあるだろう。元々がバグのような状況なのだろう?」
つまり、誰にでも起こり得る。ずっとROOで過ごせるだなんて、羨ましいなどと考えていたアンジェラ・クレオマトラはその答えに一応の納得を見せ、コルが総括するように手を叩く。
「とにかく、これで解決なのです!」
「ああ、解決だ」
コルの言葉にGR001も頷くと……剣を抜き、ピタリと顔の前に掲げる。
それは騎士の誓いと呼ばれるようなソレにも似ていて。
「私の任務も終了した。もうこの世界では会う事もあるまいが……いずれ外で会う機会があれば、この借りを騎士の誇りにかけて返そう」
そう言うと、GR001はコル達にだけ聞こえる声で何かを囁いて。
「では、さらばだ。いずれとは言ったが……その機会がない事を祈ろう」
そう言って、GR001はログアウトしていく。
残された謎と、レアなクリア報酬。
それが、今回の事件で得た全てだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
コングラチュレーション!
GR001を完全救出!
今後の「至高の美味を求めて」シリーズに良い影響が出る可能性が高まりました!
GMコメント
クエスト名:呪われし/美味なりしディグ・ディエル
クエストクリア条件:ディグ・ディエルの討伐
フィールド:クエスト受託後に行ける特殊マップ「深い霧のノルン山脈」
深く切り立ったノルン山脈は深い霧に覆われており、あらゆる周囲把握能力が半分以下になってしまうようです。
雰囲気としては「濃霧の中、足元の怪しい場所で手探りで探し物をしている」といった感じです。
山の中のフィールドには「怪しげな木々に隠された場所」「幾つかの洞窟」「湖」といったポイントが存在します。
恐らくはどれかにディグ・ディエルが潜んでいるものと思われます。
また、ランダムで「霧の獣」が1~8体ずつ出現します。
強さは程々ですが、倒しても何もドロップしません。
形状は色々ですが何かの獣を模しており、基本的に牙と爪です。
道中「ディグ・ディエルの幻影」が出没します。これは攻撃しても倒す事が出来ず、1度行動すると消滅します。
攻撃方法は牙と爪、口から出す魔力砲が存在します。また、威力は段違いですが本体も同じ攻撃を実施します。
登場ゲスト
・GR001
種族:騎士
クラス:騎士/料理人
アクセスファンタズム:食材への勘【レアな食材に辿り着きそうな場合、なんとなく分かる】
スキル:スラッシュ(物近単)
如何にも騎士らしい恰好をした、騎士らしい能力を持っています。
あまりゲーム経験はないようで、装備を含め必要最低限のものだけを所持しています。
GR001は山の中を歩き回れば見つける事が可能です。
救出することで今後の「至高の美味を求めて」シリーズに大きな利益が発生する可能性があります。
救出失敗、あるいは見捨てた場合は「至高の美味を求めて」シリーズに大きな不利益発生の可能性があります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はD-です。
基本的に多くの部分が不完全で信用出来ない情報と考えて下さい。
不測の事態は恐らく起きるでしょう。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●特設ページ
https://rev1.reversion.jp/page/gourmet_kisisama
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