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シナリオ詳細

<ヴィーグリーズ会戦>森霧の進軍

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●待ち受ける敵達
 ヴィーグリーズの丘。
 幻想中部にあるその地は広大だ。そして、その地にて戦いが行なわれる予定である。
 敵は幻想貴族ミーミルンド家とその派閥の者達。
 奴隷市場開催数の急増、幻想王国のあちこちに出現した巨人や古代獣、さらには王家のレガリアが盗まれるといった事などが起きていた。先に挙げた彼らがその黒幕であった。
 ミーミルンド派の者達が企むのは王家簒奪。幻想の状況をひっくり返す事もそこに含まれる。
 既に彼らの悪事はイレギュラーズによって暴かれている。
 もっとも、彼らから見れば「計画をイレギュラーズや三大貴族、王家に邪魔された!」という認識なのだろうが。
 そして、その彼らとの決戦の場となるのがヴィーグリーズの丘だ。
 王家や三大貴族達にとっての敵となったものの、彼らには巨人や古代獣がついている。その上王家の象徴たる角笛を所持しており、厄介な事この上ない。
 早急に片を付けるべく、ここヴィーグリーズの丘にて、双方共に戦力を揃えて向かう。
 今、この地は決戦の時を迎えつつあった。

 丘は広大だが、その周辺にも自然は存在する。
 丘に向かう道の一つに、小さいながら森があった。手入れされている森の為、兵士達が進軍するのにも問題無い程の道が整備されている。
 少し開いた場所に指揮官らしき者達と部下達が集っている。
 指揮官による指示の下、兵士達はそれぞれの持ち場へと移動していく。魔法を使う兵士や弓兵で構成された部隊のようだ。
 大将格と思われる、厳つい顔の壮年の男性が、指揮官として働いていた男へと声をかける。
「このような構成で本当にいけるのか?」
「問題はありません。向こうよりも先にこちらがここに到着しているのです。有利を作るのは容易かと」
「しかし、その作戦だとこちらも不利になりはしないか?」
「そういった事も工夫次第ですよ。ようはあちらに勘づかれなければ良いだけの事。そして、魔法には支援もある事をお忘れ無く」
「それもそうか……。よし、信じるぞ、その作戦」
「はい、お任せください。事前に彼らには作戦を伝えてあります。なんとかやってくれるでしょう」
「そうだな」
 深く頷くと、大将格の男は剣を掲げて声を上げる。
「偉大なるミーミルンド家に勝利を!」
「偉大なるミーミルンド家に勝利を!」
 復唱する兵士達の声が森に響いた。

●進軍、そして彼らを待ち受けるのは
 丘へと進軍するイレギュラーズ。
 どこぞの領地から派遣された弓兵や兵士達を十数名ほど引き連れ、森に踏み入れていく。
 進軍しながら、イレギュラーズは今回の任務についてを回想にて反芻していた。
 ローレットにて、うさんくさい顔の情報屋から告げられた内容は次の通りだった。
「今回の任務は、森を通っての行軍だね。
 けど、注意してほしいのは、既にあちらさんが待ち構えている可能性が高いって事。
 その場合は部隊の殲滅を優先してほしい」
 待ち構えている可能性が高いのであれば、罠が仕掛けられている可能性も高い。
 しかし、罠を発見するのに長けた者が注意をこらしても、今の所それらしき物は見つからない。
 不意打ちで魔法攻撃や飛び道具などが来るかもしれないという事で、一行は気を引き締めて歩を進めていく。
 ふっ……と何かが鼻腔をくすぐった。
「何だ、この感じ……?」
「水……?」
 湿気特有の微量なそれを感じ取り、訝しむイレギュラーズと兵士達。
 疑問を感じる内に、足下から徐々に空気が変わる。
 それは水蒸気のようだった。
 足下だけだったそれが、少しずつ上へと上がってくる。木々がうっすらと見える程度にまで覆っていったそれを見て、誰かが零した。
「霧……? なんだってこんな所でいきなり……」
 今日の天気は快晴で、水の気配も無い。この森に水場も無い為、霧の発生条件には足りないはず。
 ひゅんっ
 空気を切り裂く音がして、足下の地面に一本の矢が刺さった。
 横から飛んできた水の刃が兵士の防具へと命中する。
 この時点で、彼らにも分かった。敵の罠であると。
 弓矢、それから魔法による攻撃でこちらを迎え撃つ気だろう。
 ならば、取るべき道は一つ。
「どれくらいの規模かは分からないが、やるしかないな」
 それぞれの獲物を構えて、木々がうっすらと見える霧の中を見据えるのだった。

GMコメント

 少しばかり趣向を変えて、不利な状況からのスタートとなります。
 霧の中の戦いを楽しんでいただければ幸いです。

●達成条件
・敵部隊の殲滅
(オプション)
・味方兵士達を1人も欠ける事無く敵部隊を殲滅する事

●友軍情報
・総勢20名程
・弓兵、兵士共に10名程度
・イレギュラーズが指揮を執っても構いませんが、指揮を執らない場合は兵士の中でのベテランが指揮を執ります。

●敵情報
・大将格の男×1
 長剣を得意とする厳つい顔の男です。壮年の男性。それなりに鍛えた体を鎧に包んでいます。
 霧の中に入ってくる事は無く、対峙するのは霧を抜けた先となります。

・指揮官の男×1
 頭脳(ブレーン)です。戦いはさほど得意ではありません。見つけた場合、捕縛するのも一つの手かもしれません。
 大将格の男の傍に控えている為、こちらも場所は大将格と一緒になっています。

・魔法兵士×30
 霧を発生させている者達です。
 他にも水系の攻撃魔法、支援系、回復系を有しています。杖を常備しているのでわかりやすいです。
 主に地上に居る事が多いようです。

・弓兵×30
 魔法兵士の支援を受けて視覚や聴覚が通常よりも上がっています。
 弓矢は基本的に通常の武器ですが、時々麻痺毒を鏃に塗った矢が飛んでくる事もあります。
 木の枝の上から、木々の間から、など、弓矢が飛んでくる場所は様々です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●士気ボーナス
 今回のシナリオでは、味方の士気を上げるプレイングをかけると判定にボーナスがかかります。

  • <ヴィーグリーズ会戦>森霧の進軍完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年07月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
鵜来巣 冥夜(p3p008218)
カチコミリーダー
観音打 至東(p3p008495)
刹那一願
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン
ヴィリス(p3p009671)
黒靴のバレリーヌ
ジェームズ・マクシミリアン(p3p009897)

リプレイ

●士気を上げる一番の手はやっぱりコレでしょ
 地面に刺さった矢を拾おうとする友軍に、『同じ傷跡』雑賀 才蔵(p3p009175)が「薬が塗られている可能性があるから触れない方がいい」と、忠告し、その手を引かせる。
 辺りを窺う中で、イレギュラーズの一人である『ホストクラブ・シャーマナイト店長』鵜来巣 冥夜(p3p008218)が叫ぶのが聞こえた。
「くっ。なんと打算的な敵なのでしょう! 霧のせいで……眼鏡に水滴が付いて見えなァイッ!」
「あ、大事な伊達眼鏡が曇って見えない……」
 続く『希う魔道士』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)の声は大きく、周囲にもよく通った。
 眼鏡を掛けている二人にとっては、霧の発生による視界の遮断が命取り。
「まぁ伊達眼鏡なので外して行動しますが」
「外して大事にしまっておこう、これパンドラだからね!」
 ――という訳でもなさそうだった。
 しかし、これも冥夜の作戦の内。先程の前半部分をわざと聞かせる事で敵に有利と誤認させようというものだ。後半の言葉はほぼ小声による呟きだったので敵に聞かれてはいないはず。
 眼鏡を外していそいそと片付ける二人。
 彼らをよそに、『神は許さなくても私が許す』白夜 希(p3p009099)は無表情のままで周りに視線をやる。
「完全に待ち伏せされてるね。ふふ。小賢しい」
 ふふ、と笑う言葉と裏腹に、唇も目も笑っていない。
「潰さないとね」
 その言葉に小さく息を呑んだ者が居るとか居ないとか。
 彼女とはまた違った意味で表情を変えずに辺りを窺うのは、『けもののわたし』観音打 至東(p3p008495)。見えぬ敵。現時点では分からぬ数に知らずプレッシャーを覚える。
(幸い、こちらには一騎当千のローレットも、意気軒高の友軍もいるわけですし)
 プロのメイドとしての矜持。表情をおくびにも出さず、彼女は小声で周りの友軍達に声を掛ける。
「友軍の皆様方には、恐ろしいでしょうが今一度の陣形再編をお願いいたします」
「再編?」
「はい。ここでひとかたまりになっていても狙われ続けるのみです」
 彼女の意図をいち早く理解したか、ジェームズ・マクシミリアン(p3p009897)が「なるほど」と呟く。
「二手に分かれるのか」
「はい」
「遊撃と本隊に分けるのね」
 横から割って入ったのは『剣靴のプリマ』ヴィリス(p3p009671)。彼女は至東の意見に賛成だと頷いてみせた。
「個人的には、できればみんなで霧を抜けたいわ。全員生き残るっていうのは難しいかもしれないけれどやらない理由はどこにもないもの。でも、その為に二手に分かれるのだったら賛成よ」
「ありがとうございます」
 彼女の弁に、至東は礼を返す。
 他の面々も特に異論は無いようで、反対意見は無い様子だった。
 とはいえ、作戦に意欲的なイレギュラーズとは違って、友軍はどこか尻込みしている様子だ。
 このクリアとは言い難い視界の中での戦闘を危惧しているのか、あるいは先程の先制攻撃に対して今度は当てられたら……という恐怖でもあるのか。
 困惑が広がる友軍に対し、喝を入れたのは『狐です』長月・イナリ(p3p008096)であった。
「皆、生きて帰って来たら私達のおごりで酒場でなんでも頼んでいいわよ!」
 彼女の言葉に反応する友軍達とイレギュラーズ。君達もか。
 少しばかり興味を示してきた彼らへ、イナリは言葉を続ける。
「好きな女に晩酌してもらって、好きな酒をいっぱい飲んで、好きな飯をたお腹一杯食べるの!」
 好みの女に晩酌してもらう。その上好きなだけ酒やご飯を食べる事が出来る。
 その魅惑的なお誘いに、友軍の士気が高まっていく。
「彼の世での宴会なんて許さない、だから勝って、生きて帰るわよ!」
「おおーーーーっ!!!!」
 鬨の声を上げる友軍の兵士達。
 それを見て満足そうに頷くイナリ。
 彼女の後ろへ冥夜とヨゾラが近づき、そっと声を掛ける。
「当てはあるのですか?」
「……地元の友人達に声を掛けるわ。あと、飲食代は私の自腹よ」
「わかりました。では、場所は私の店を提供しましょう。従業員をサポートに回します。それから、酒の提供はこちらでもいたしますので、少しはイナリ様の懐のご負担も減るかと」
「君だけにお財布さんを任せるわけにはいかないよ。ボクも奢るからね……!」
「ありがとう、二人とも」
 思いがけず協力者を得て、ホッと胸を撫で下ろす。とりあえずは、どうにかなりそうだ。
 話も落ち着いた所で、才蔵が尋ねる。
「遊撃と本隊に分かれるのなら、どう分かれる?」
「それなら希望を出していいか? 俺は本隊側に残りたい。敵の大まかな位置の把握も可能だ。本隊の守りに適していると思う」
 ジェームズからの希望が出されたのを皮切りに、他のイレギュラーズからも自分の希望が提示される。
 調整した結果、無事に遊撃と本隊に分かれる事が出来、次の攻撃が来る前にイレギュラーズと友軍は動く。
 全ては酒と女と飯の為に!
 単純な、と笑うなかれ。古来より人の欲望というものはそういうものなのだ。

●遊撃の矜持、本隊の意地
 先に遊撃隊が動きだす。
 彼らの動きが功を成すまでの間、本隊側は可能な限り囮として動く事になった。
 松明を持った冥夜が隊の少し先を進み、後ろの友軍達へ「この松明を目印に進め」と大きな声で告げる。わざと敵に見つかりやすくするような動きだが、それを相手に悟られてはならない。
 同じくイナリも松明を掲げるが、冥夜とは少し距離を空けておく。彼女が自身に施した魔力障壁と破邪の結界は、物理攻撃からも神秘攻撃からも守ってくれる。盾役としてうってつけだ。
 霧の中、ヨゾラのハイセンスが人知れず光る。視力、聴覚、嗅覚共に超級のものを持つ彼にとって、この霧の中で注意を向けるのは容易く。眼鏡を外した青の瞳が霧の中を窺う。
 似たような動きとして、ジェームズも敵の位置を探る。
 敵がステルスしたりしなければ、広範囲で敵の現在地を察知できる彼は、現時点で察知できる部分のみを仲間達に小声で知らせていく。
「二時方向に一人、十時方向に二人……」
 彼の言葉を受けて、友軍とイレギュラーズが辺りへ注意を払う。おおよその距離も追加で提示する彼に密かに感謝しつつ、一行は少しずつ前へと進む。
 立ち止まったままでは怪しまれるし、目的はこの人為的な霧を生み出した敵兵達の総指揮官を討ち取る事だ。
 ジェームズの言葉を受け、至東が動いた。
 彼女は助走を付けて近くの木に近付くと、その太い幹を蹴って宙を舞う。ジェームズが示した十時方向の樹上に向けて、彼女の技が飛ぶ。
 小さな短い悲鳴の後、重い物が落ちる音。まずは一人仕留めたと思って良いだろう。
 よし、と胸中で頷く至東。
 霧の中に紛れて聞こえる音にヨゾラが気付いた。何かを形成するような乾いた音は微かな音量で、それは超聴力を得ているヨゾラでなければ聞こえづらいものであった。魔術師であるが故に、音から何が来るのかを大体察する事が出来た彼は、鋭い声を飛ばす。
「イナリさん! こっちです!」
「任せて!」
 イナリがヨゾラの示した方向へと体を向ける。友軍である騎士達を守るように立つ彼女は、空中から現れた複数の氷柱を受ける事になった。
「くっ……!」
「大丈夫ですか?!」
「やられたわ、でもこの程度なら大丈夫!」
 もちろん、演技である。氷の矢は彼女の結界に阻まれ、その幼い体を貫く事は出来ていない。
 矢が空を切る音も聞こえてきた。
 それが狙うのは冥夜。しかし、彼はそれをかわす。
 ヨゾラのように聴力や視力に優れるようなものを持っている訳ではない彼が回避に長けているのは、強烈な運気を呼び寄せるものを自身に付与しているからだ。
 松明を持って自身を囮にした上で回避をし、時には松明で払うなどする。
 彼らの矢も無限では無いはずだ。それが尽きるが早いか、遊撃の作戦が功を成すのが早いか。
 時折やってくる水系の魔法が冥夜を襲うが、それを友軍が守る。
 周囲からの攻撃により傷を受けた彼らへ、ヨゾラの回復支援が届く。
 敵がテレパスなどを使用していないとも限らない。至東が自身の周り――半径二十メートル以内に妨害策を講じる。これで念話などが出来ないはずだ。
「よ、っと」
 ジェームズが近くに落ちていた石を数個拾い、それを連続で投げつける。探知にて得た敵の位置情報から、石が届く範囲内の敵を選び、そこへ投げていく。少しでも敵の足止めになるならば、牽制攻撃は積極的にやっていくのがいい。
「さて、あっちはどうなってるかねえ」
 反撃の矢をなんとかかわしたり友軍に守ってもらいながら、ジェームズは独り言を呟いた。

 時はほんの少し遡り。
 遊撃を買って出た、希、ヴィリス、才蔵の三名は、まず近そうな敵へと狙いを定めた。彼らの手には出動する前に友軍から受け取った包帯が三つ。腕に巻けるほどの長さがある。
 希は最初の襲撃について推理する。
(さっきの矢……木の上からの遠距離攻撃にもかかわらず、目標を外していた。
 つまり、計画的な待ち伏せなのに、敵はこちらがよく見えてない)
 敵の方にも補助をするような支援などはあるだろうが、それでも補えていないのならば、まだこちらに分がありそうだ。
 才蔵に従い、草むらなどに身を潜め、彼が持つ超級の聴力や視力を頼りに敵の位置を割り出す。
 人数分の服を奪う必要がある為、最低でも三名程を沈める必要がある。
 距離が空いている。
 密集していない。
 その二点を踏まえ、個別に撃破してもバレないような位置の敵を、才蔵からの情報で予測し、希とヴィリスが動く。
 霧の中、敵へと迷わずに進みながら、才蔵は胸の内で呟く。
(策は良かったが、待ち伏せなどせずさっさと包囲してしまえばほぼ詰みだったろうに……逆にお前達の策を利用させて貰う)
 詰めの甘さに嘆息したい気持ちはあるが、堪えた。
 運の良い事に、二人で行動している敵を発見した。二人とも杖を所持しており、魔法兵士と分かる。
 忍び足を駆使して先を進む希が、敵兵の背後に回る。つかず離れずの位置で才蔵とヴィリスも控え、彼女の合図を待つ。
 希の手が上がったのを見て、即座に飛び出すヴィリス。
 彼女の足が敵兵の一人を捉える。剣と一体化しているその足に神秘を乗せて、兵士の体を蹴り飛ばす。
 小さな短い悲鳴を上げた兵士の顔を下から蹴り、意識を刈り取った。
 突然の襲撃に狼狽えるもう一人の兵士が口を開く前に、潜んでいた才蔵がライフルから魔弾を放つ。こちらも口を閉じさせる事に成功した。
「こんなものかしら。じゃ、着替えましょうか」
 出来るだけ大きな音を立てぬように兵士から服や装備を剥ぎ取り、着替えていくヴィリス。もう一人も、サイズ的には希が入りそうという事で、希が着る。
 残る一人も才蔵の持つ超級の聴力のおかげで発見し、難なく才蔵の着替えも終える。
 忘れずに腕に包帯を巻き付ける。一見すると怪我を押さえているように見えるだろう。
 ヴィリスが才蔵にこの後を確認する。
「あと確認する事は?」
「霧の範囲だな。途中、兵士に遭遇したら遠慮無く行こう」
「了解」
 希からも首肯が入り、霧の範囲を確認するべく進んでいく。
 才蔵の超聴力にて、他に潜む敵と遭遇しそうな時は三人で迅速に片を付けた。
 そうして進む内に、才蔵の耳が何かを捉えた。
 どうやら会話のようだ。
「味方の状況はどうなっている」
「通信が妨害され、聞こえない一帯があります。おそらく敵はこの一帯で足止めを食らっているものと思われます。
 また、聞こえる範囲内に居るはずの他の兵士達から応答が無い、という事が増えています。おそらく二手に分かれているのかと」
「くそっ、どっちが本隊だ……」
 人差し指を唇に当て、「戻ろう」というジェスチャーをして来た道を戻る三人。
 程なくして、彼らは無事に本隊と合流する事となる。

●彼ら囲む霧は晴れるか
 戻ってきた遊撃組より、本隊へともたらされたいくつかの情報は、彼らの意気を高めるのに十分すぎた。
 突如速度を上げて進撃を開始した彼らに驚く敵兵達。行く手を阻もうとする彼らをなぎ倒し、霧の晴れた先へと向かう。
 辿り着いた場所は少し開かれた場所。敵の陣営が張られ、奥には鎧を着込んだ厳つい顔の男と、文官のような出で立ちの男。おそらくは、大将格と指揮官であろう。
 長剣を持つその男が前に進み出たかと思えば、その切っ先をイレギュラーズ達へ向ける。
「偉大なるミーミルンド家の為に、ここで阻止させてもらうぞ!」
 後ろに控える男が腕を振る。周囲に増える気配。おそらくは、残党を集めたのだろう。
 至東が友軍の兵士達に指示を送る。
「友軍の皆様は周囲の敵をお願いいたします。あの大将格の者は、こちらで対応いたしましょう」
 応、という短い返答を受けた後、それぞれが目標の人物と対峙する。
 互いに言葉を交わさぬまま、地面を蹴る。
 イナリの、炎を纏った剣から火が飛ぶ。指揮官の合図で周囲の魔法兵士が大将の盾を生み出す。霧散する炎の後、男の剣が振るわれた。
 冥夜の式符より白鴉が生まれ、その鎧に傷を付ける。
 足止めは一瞬。その隙を突いて、ヴィリスが踊り、放つ。毒を食らい、顔を苦痛に歪める男。
 回復させようとする周りの兵士へ、ジェームズの糸が巡る。体を縛り、詠唱をさせない。
 毒を食らってもなお進もうとする男には気迫があった。
 至東の大小二振りの妖刀が閃く。直死の一撃は黒き顎を作り出し、男を噛み砕かんとす。
 呻く男の顔に、諦めの様子は浮かばない。
(忠誠の力とは、かくも強いものなのか)
 そう思いながら、森に潜んだままの才蔵もライフルの火を噴かせた。
 魔弾を受けながらも眼力は衰えない男に、希が銃を構える。
 放たれる銃弾。なお斃れぬ男。
 いくつかの攻防の最中、ヨゾラは友軍や仲間達を回復していく。
 削られていく周囲の敵の中、男の命の灯火は、才蔵の魔弾により吹き消された。

●俺達の戦いはこれからだ!(色んな意味で)
 大将を仕留め、指揮官を捕らえた彼ら。
 森を抜け、追っ手が来ない事を確認すると、捕虜以外の全員が大きく息を吐き出した。
 友軍の人数も確認する。怪我をしたりはあったが、ヨゾラの尽力もあり、命に関わるほどの怪我を負っている者は居らず。
「まずは、皆お疲れ様」
 ヴィリスの労いの言葉に友軍からも「お疲れ様です」と返答が来る。
 疲れきっているはずだが、その目の光は失われていない。
 この決戦を終えれば宴があるのだ。それが彼らの心を奮い立たせる一因となっているのだから、欲望は強い。
 捕虜の二人が逃げられぬように監視しながら、希が皆に問う。
「今の所、この人を捕まえたまま向かう事になる訳だけど、異論はある?」
「いえ、特には。それに、イレギュラーズの方々が居れば……」
 友軍の一人の言葉の続きは何となく察した。
 確かに大将を討ち、指揮官を捕虜として捕らえる為に戦ったのはイレギュラーズであり、その彼らが傍に居れば容易には逃げられぬはずだ。仮に逃げても再度の捕縛を成功させるだろうという信頼や期待が友軍にあるのを察して、希は「それならいい」と簡潔に返す。
 ジェームズからも、友軍へと言葉がかけられる。
「お疲れさん。お前らの頑張りもあってどうにか切り抜けられた」
「ありがとうございます」
「まだまだ戦いはあるが、もうひと頑張りだ。この後を切り抜けりゃ、お待ちかねの宴会だ。そうだろ、イナリ?」
 話を振られたイナリが胸を張る。
「もちろん! 約束は守るわ!」
「やったー!」
「だから、あともうひと頑張りよ!」
「おおーっ!!」
 戦いの疲れも感じさせない程の意気軒昂の様子を見せる友軍。
 至東も乗じて高らかに語る。
「今は戦時ですからつけていませんが、私はこう見えて【ゴチックメヱド】を持つ一級メイド。
 そちらにおいても、私は一騎当千。たのもしい働きをいたしますヨ?」
「ヒューーーーッ!!」
 スカートを摘まんでお辞儀をするような真似をする至東の仕草に、友軍のテンションが更に上がっていく。
 盛り上がる彼らに聞こえぬよう、才蔵は冥夜に近付いてこっそり耳打ちする。
「大丈夫なのか?」
「何がです? 宴なら問題無く行なえるかと」
「いや、それ以前の心配なんだが……歌以上にする予定の冥夜の店って、確か再現性東京だよな……?
 この人数をそこまで連れて行けるのか……?」
 彼の指摘に、表情が固まる冥夜。近くに居たヨゾラも気付いた様子で「あっ」という顔をしている。
「ダメだった場合に備えて、第二案も考えておこうか。イレギュラーズも居るし、なんとかなるよ」
 多分、という言葉を飲み込んで、ヨゾラがフォローする。
 それを見て、才蔵も溜息を一つついてから頷く。
「俺も出来るだけ手伝おう」
「ありがとう」
 そんな三人の会話など露知らず、イナリが高らかに号令の声を上げる。
「さあ、皆で乗り越えるよ!」
「おおーーーーっ!!」
 つんざかんばかりの声に驚きつつ、一糸乱れぬ統制で進軍していく。
 イレギュラーズも彼らと共に進む。
 目指すは戦いの終結にして勝利。
 そして、最高の宴!
 待ち受けるはイナリやヨゾラの財布の中身!
 彼らの戦いはもう少しだけ続くのだ!

 余談ではあるが、宴についてはなんとか行なえた、とだけ言っておこう。

成否

成功

MVP

長月・イナリ(p3p008096)
狐です

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
戦闘での工夫もそうでしたが、士気を上げる方法に宴会という提案はプレイングを読んでいて膝を打ちました。
財布が大変そうですね……。お二人の財布に合掌です……。
MVPは、友軍の士気を挙げてくださった貴方へ。

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