PandoraPartyProject

シナリオ詳細

逃げた家畜は大きい

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想各地にて世界各地の商人が集い、裏市場で始めた奴隷売買。
 それらはイレギュラーズの領土の襲撃、王家のレガリアの奪取といった事件を同時に散発し、イレギュラーズがこれを鎮圧、取り締まりを行っている。
「奴隷売買を行っている商人の中に、プブリオという悪徳商人がいたのですが……」
 ローレットにて、アクアベル・カルローネ(p3n000045)は集まったイレギュラーズへと状況説明を行う。
 プブリオへと尋問を行っていた間に、彼の飼っていたペット数体が逃げ出していたことが判明した。
「それらのペットが逃げ込んだ林の周辺の街から、何とかしてほしいと依頼が出ています」
 依頼を受け、ローレットとしては解決に動き出すのだが、プビリオサイドからもその鎮圧の為にと槍騎士グラベルが名乗りを上げている。
「…………」
「残ペット処理……ですか」
 無言で小さく頭を下げるグラベルの姿に、『忠義はかくあるべし』八剱 真優(p3p009539)も参加を検討していたようだ。
 さて、そのペットだが、面倒なことに3種も存在する。
「カルキノス、ヒュドラ、ステュムパリデス……いずれも厄介な力を持つモンスターです」
 それぞれ、化け蟹、双頭蛇、毒怪鳥とも呼ばれるモンスター達。
 林という場所もあり、動きが制限される中での戦いを強いられるが、個々のモンスター達はそれぞれの思考で立ち回る。
 うまく誘導できれば、有利に戦えるはず。
 判明している範囲での敵データを提供するアクアベルは、最後にこう語る。
「いつ、近隣の街に被害をもたらすかわかりません。皆さんのお力をお貸し願います」
「…………!」
 グラベルも併せて頭を下げ、イレギュラーズへと助力を願うのだった。


 幻想某所。
 いくつかの街に隣接する形で広がる林は現状、モンスターの住みかとなっており、近場の住民達も山菜取りや木々の調達など話に立ち入れずに困り果てている。
 これが昨今、幻想で行われている大奴隷市なるイベントの煽りを受けたと囁かれており、住民達の不満は高まってきている。
 それもあって、槍騎士グラベルが同行しているのだが、彼としても長年従ってきた主の不始末といった体での参加。住民達から向けられる視線は非常に冷ややかだ。

 そんな街を通り過ぎ、一行は問題の林へ。
 道は整備されておらず、雑木林といった印象だ。
 この林の所有者は林の立ち入りを一般に公開している。さほど、金銭的にうまみがないというのが理由のようだが、それはさておき。
 おかげで近隣住民も気兼ねなく林の恵みを享受でき、林の木々や山菜、キノコ等もある程度なら採ることができる。
 これが使えないだけでも、不満が溜まるのは致し方ない。
「……来る」
 グラベルの一言もあり、身構えるイレギュラーズ達。
 ガサガサ……。
 木々の合間から姿を現したのは、巨大な化け蟹だ。
 シャアアア……。
 加えて、別方向からは2つの頭を持つ巨大な蛇が姿を現し、獲物を喰らわんと舌を伸ばす。
 アーーァーー……。
 さらに、空からはワシ程の大きさの鳥。翼やくちばし、爪が青銅でできた怪鳥ステュムパリデスだ。
 囲まれている状況もあり、メンバーは一度体勢を整え直すことも考えるが……。逆にいれば、プブリオの元ペットらを互いに争わせるチャンスにもなりうる。
「……作戦は任せる」
 グラベルはただ目の前の敵を倒すのみといった構えだ。
 この元ペット3体をどう倒すか、作戦について事前に話し合っていたイレギュラーズはそれらの捕縛、もしくは討伐へと当たり始めるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。なちゅいです。
 こちらは、八剱 真優(p3p009539)さんのアフターアクションによって発生したシナリオです。
 <リーグルの唄>のシナリオによって捕えた悪職商人一派ですが、どうやらペットが幾体か野放しになっていることが判明しました。
 この捕縛、あるいは討伐を願います。

●敵……悪徳商人プブリオの元ペット×3体
 それぞれ、ペットとして飼い馴らしていたモンスターが逃げ出しております。徐々に野生に目覚めて凶暴さが増しているようです。

〇カルキノス(通称:化け蟹)
 3mもある真っ赤な化け蟹です。
 2本のハサミを使って挟み込み、殴り掛かり、地面の叩き付け。他にも、泡の吹きかけを行います。

〇ヒュドラ(通称:双頭蛇)
 全長4m程度、2つの首を持ちます。
 巨体の割に動きは素早く、素早くにじり寄って喰らいつくほか、毒の牙や尻尾での攻撃と隙がありません。
 
〇ステュムパリデス(通称:(毒)怪鳥)
 全長2m程度。翼、爪、くちばしが青銅でできた怪鳥です。
 名前は複数形ですが、ペットとして飼い馴らされていたのは1羽のみのようです。
 その青銅の爪やくちばしで飛び掛かってくる他、毒性の粘液をまき散らしてきます。

●NPC
○プブリオ
 30代人間種。以前、ローレットによって捕えられた悪徳貴族です。親から引き継いだ地盤とコネをフル活用し、暴利を貪っていました。
 今回は彼の自供によって判明した元ペットを捕縛、もしくは討伐することになります。シナリオには登場しません。

○槍騎士グラベル
 40代人間種。全身に甲冑を覆っております。
 プブリオの先代から仕えていましたが、今回は主の不始末を自らの手で片付けるべくローレットの監視付きで援護してくれます。
 戦いでは、身長ほどもある鋭い槍を操ります。

●状況
 幻想の町はずれにある林にプブリオのペット達が逃げ出しており、それを危険視した近隣の住民らから捕縛、もしくは討伐の依頼が出ております。
 ペットらは基本的には互いに協力せず、己の利益を重視して行動します。邪魔だと感じたらペット同士でも争うようです。
 ただ、自分達の身が危険と判断すれば共闘しますので、ある程度考えながら戦う必要があるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 逃げた家畜は大きい完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
シラス(p3p004421)
超える者
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
不動 狂歌(p3p008820)
斬竜刀
矢矧 鎮綱 景護(p3p009538)
忠義はかくあるべし
八剱 真優(p3p009539)
忠義はかくあるべし
ハク(p3p009806)
魔眼王
皿倉 咲良(p3p009816)
正義の味方

リプレイ


 幻想某所。
 依頼を受けたローレットイレギュラーズは、とある林へと足を目指す。
「今回はモンスターの討伐なのです」
「今回の仕事は逃げたペットの処理かい」
 無表情なアルビノの美少女、『魔女見習い』ハク(p3p009806)がぼそりと今回の目的について呟くと、白いスーツ姿の『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が反応して。
「まあ、ローレットが飼い主を捕まえたが故に逃げ出したんなら、俺達にも責任はあるって事だよな」
 先日の依頼の結果、捕えた悪徳商人のペットが野良化仕掛けており、近隣住人に迷惑をかけている。ならば、ローレットが責任を負うべきだというのがジェイクの論だ。
「元々ペットだったから可哀想だとは思うけど、このまま放っておけば町の人が怪我をしちゃう」
「元々ペットであったとしても……凶暴化して周囲に危害を加えるならそれはもうモンスターなのです」
「すごくやばい魔物だったみたいだし、命を奪うことはしたくなかったけど、仕方がないね……」
 元気が取り柄の『正義の味方(自称)』皿倉 咲良(p3p009816)の言葉に、ハクが頷くと、咲良も討伐は止むをえないと主観を語る。
「コイツラが暴れまくって、近隣の住人に被害が出たら寝覚めが悪いったらありゃしない」
 依頼解決に前向きな姿勢を見せるジェイク。
「人間の都合で愛玩動物(ペット)として飼われ、人間の都合で危険生物として殺され……」
 仲間達の会話を耳にしていた男装の麗人、『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)が一つ溜息をついて。
「元はプブリオとかいう悪徳商人が悪いのだ。食材として美味しく食べて弔ってやろう」
 仲間を追い、林へと入っていくのである。

 乱雑に木々が生え、道も整備されていない雑木林。
 見れば、あちらこちらに木の実や山菜等が見受けられる。近隣住人からすれば、生活の糧を得るには十分な場所だろう。
 ただ、農村生まれの鬼人種『鬼斬り快女』不動 狂歌(p3p008820)は処理すべきペットを見上げ、些か呆れた様子。
「ペットというより、護衛とか戦力だとこれ」
 狂歌はそのペットらに、事前に聞いていたのと寸分違わぬ印象を受けていた。
 一行を取り囲むのは、巨大な化け蟹カルキノスに、双頭の大蛇ヒュドラ。そして、空から飛来するのは体の一部が青銅でできた怪鳥スチュムパリデス。
 3体の元ペットはそれぞれが縄張りへと侵入してきたイレギュラーズを威嚇する。
「お揃いだな。元ペットって言ってもなあ、こいつらは倒すしかない」
 幻想の事件とあって、スラム出身の『竜剣』シラス(p3p004421)は黙っておれず、徒手空拳で構えをとる。
「ペット……愛玩動物、だったか。アレは、奴隷商人の対人兵器だ。そんな可愛らしいものでは、ない」
 明らかにペットの域を出た存在に、銀髪に褐色肌の『忠義はかくあるべし』矢矧 鎮綱 景護(p3p009538)はペットという情報に難色を示す。
「これをペットって言うのは、相当な物好きか誤魔化しているかのどっちかだろうが……」
 太刀に手をかけ、景護も鋭い視線を元ペットどもへと向けて。
「俺がやることは変わらないし、どうでもいいか」
 豊穣の令嬢、『忠義はかくあるべし』八剱 真優(p3p009539)もペットに罪はないとしながらも、先の事件から状況次第で人を襲う危険生物だと認識して。
「今後の憂いを断つためにも、依頼元たる街の住人の感情を慮る意味でも、討伐するにしくはなし」
 一方で、シラスも人とは相容れぬこの生物をモンスターと断言し、あんな飼い主……悪徳商人などに任せるわけにもいかず、他に譲る宛てもないと考えて。
「俺達で、この場で始末をつけよう」
 シラスの呼びかけに、槍騎士グラベルも後始末すべきと首肯する。
(グラベル殿も、訂正されればよろしいものを)
 彼は仕えていたプブリオは見限ったようではあるが、主家への忠誠は未だ消えていないのだと景護は感じていた。
「街でのあの冷たい視線を受けてなお黙々と歩を前に進める姿からは、武人としての頑なさと――揺るがぬ忠誠心とが感じられるようです」
 ここに至るまでに、近隣住民がグラベルへと冷ややかな視線を向けていたのを真優は確認していた。
 それだけ、長らく忠誠を向けた主家の不始末故。
「私達もあのような固い絆で結ばれたいものですね、景護!」
「ええ、真優様 その頑強さは見習いたいところです」
 主従関係にある2人はそんなグラベルに好感を抱き、自分達も……と語り合う。
 ただ、今はすでに元ペットらに囲まれている状況とあり、すぐさま周囲へと視線を巡らせるのである。
 

 じりじりと距離を詰めようとしてくる悪徳商人の元ペット、化け蟹、双頭蛇、毒怪鳥の3体。
「同時に遭遇してしまったものは仕方ない」
 シラスが言う様に、1体ずつ相手をしたいのがメンバーの本音。
 元ペットを討伐するに辺り、イレギュラーズはジェイク提案の策をベースに作戦をとる。
 ペットは必ずしもそれぞれを仲間と認識しているわけではないことを利用し、双頭蛇と毒怪鳥がそれぞれに怒りを覚えて争わせるよう仕向け、その間に化け蟹を叩くというものだ。
「どの子達も強いから、他のイレギュラーズとしっかり連携をとって、アタシのできることをちゃんとやらなきゃ」
「魔女見習いとして人の役に立てるように頑張るのです!」
 強い意気込みを見せる咲良とハク。
「俺は蟹をやるぜ」
 シラスの言葉に、ハクはこんな要望も漏らす。
「……後、個人的に蟹とか食べた事がないので食べてみたいのです……蟹ってどんな味なのでしょう……」
 実物を目にしてじゅるりとよだれをすするハクに、メンバー達は笑いも見せていたが。
「敵は3体しかいなくともてんでばらばら、それに対して私達は9人で一つのまとまり――仲間なのです」
 数で勝ち、さらに繋がりで勝つならば、人のモンスターの力量差など無きも同じ。
 真優の言葉に皆言葉を引き締める。
「人間の力、存分に見せてやりましょう!」
 真優の掛け声に応じで猛るメンバー達は瞳……魔眼を輝かすハクの食欲を満たす為もあり、害獣と化した元ペットの排除へとメンバー達は乗り出す。

 動き出すメンバー達に対し、元ペットらも視線を向ける。
 その中で、ふわりと浮かび上がるジェイクだが、何かを待っているのかじっと黙っている。
 羽ばたく毒怪鳥スチュムパリデスは刹那彼へと目が行くが。
「やーい! とりさん! こっちだよぉっ!」
 アーー……!
 地上から咲良が挑発したことで、毒怪鳥はいきり立って彼女へと狙いを定めていた。それもあって、背に張り付くジェイクの存在に気付かない。
 一方、双頭蛇ヒュドラの方へと向かう咲良。
 その接近を察していた双頭蛇目掛け、拳銃を抜いたジェイクは敢えて弾丸を掠める一撃を見舞う。
 シャアアァァ……。
 ジェイクを睨みつける双頭蛇だが、その4つの瞳は毒怪鳥を注視しているようにも見える。
 元ペットは互いにイレギュラーズを狙おうとするが、どうしても大振りな攻撃は互いを傷つけ合ってしまう。
 アーー!!
 シャアアアアッ!!
 いつしか、互いを外敵と認識するようになり、ジェイクや咲良への怒りが解けた後は互いへの攻撃も行う様になっていた。

 その間に、残りのメンバーがフリーとなっている化け蟹カルキノスの討伐を急ぐ。
 時間を稼いでいる仲間達が耐えていることもあって速攻と、シラスは突撃戦術の構えをとるやいなや距離を詰めずに指先から光を放つ。
「やらせねえよ!」
 直後、光に撃ち抜かれた化け蟹が呆けたこともあり、仲間を巻き込まぬことを確認したモカは残像を残すほどの速さで敵の周囲を移動しながら、腹、腕の付け根、目、口と打撃の通りがよさそうな場所へと蹴突を打ち込んでいく。
 ただ、化け蟹も自我を保ち、害なすイレギュラーズへと巨大なハサミを叩き付け、さらに泡を吹きつけてくる。
 自らの力を見せつけようとする化け蟹だが、景護はそれらに耐えながらも仲間へと攻撃が向かぬよう敵の魂へと鋭い刃を食い込ませる。
 それによって、景護は化け蟹の意識を強く自身へと引き付ける。
(……真優様も支援に行かれるし、心配はない)
 彼が信頼する主、真優は双頭蛇、毒怪鳥の対処に当たるメンバーの回復にと、尽力してくれる。
(景護のように、皆が皆、防御に優れているわけではありませんものね)
 従者の守りの硬さには絶対の信頼を置いている真優。
 仲間達の強さは知るところだが、囮役にも近しい状況であるジェイク、咲良の体調を主に気に掛け、特に毒怪鳥の毒を懸念して号令を発し、さらに調和を賦活の力に転じて癒しを振舞っていた。
 その間も化け蟹への攻撃は激しさを増す。
「ふっふっふ! この『†魔眼王†』のハクの魔眼に恐れ戦くがいいのです!」
 とりわけ、化け蟹を食料として興味を示すハクは「サリエルの魔眼」の力の一つを解放し、化け蟹の神経を麻痺させる。
 加えて、化け蟹の側面に立つ狂歌も大太刀「斬馬刀・砕門」を抜き放ち、雷撃に変換した力を込めた強撃を叩き込む。
「どうだ。動けないだろう」
「…………!」
 すかさず、ハクや狂歌が作った隙をつき、槍騎士グラベルが強く槍を薙ぎ払う。
 その連携プレイもあり、化け蟹は早くも泡を吹いて苦しみ出していたのだった。


 ジェイク、咲良は状況を見ながらそれぞれ担当する敵へと怒りを買うべく攻撃を繰り出し、双頭蛇と毒怪鳥が争い合うよう仕向け続ける。
 それに少なからず巻き込まれる2人だが、真優の回復は手厚く、すぐさま癒しをもたらす。
 それもあり、少しばかり余裕が出てきた中で、咲良は化け蟹の弱敵を見通そうとして。
「ん、蟹さん、もう……」
 ほぼ同じタイミング、ハクは戦いの手を止めて蟹との対話を試みていた。
「何考えてるのですか?」
 相手から感じられたのは、好き勝手に自分を扱う人間に対する苛立ちの感情。モンスターなりに思うことはあるのだろう。
 とはいえ、ハクはそれを知りながらも討伐をと攻撃に戻り、神聖なる光を煌めかす。
 化け蟹は苦しみながらも地面を叩き付け、イレギュラーズを攻め立てる。
 しかし、狂歌は相手がまだぎこちない動きを見せていることを確認し、傲慢な左で強襲する。
 一気に押し切ろうと、シラスは甲羅の隙間を狙い、連続して輝く光を打ち込んでいく。
 さらに、モカもスピードをもって敵の周囲を旋回しながら手数を増やして打撃を叩き込み続けて。
「これで……どうだ」
 さらに、流星の如く加速したモカは破壊力を高めた一撃で敵の甲羅に大きな亀裂を入れた。
 そこを、ハクが魔眼でじっと見つめて。
「大人しくハクのご飯になるのです! 魔眼ビーム!」
 自らの精神力を弾丸へと変え、彼女はその亀裂目掛けて発射する。
 ぶくぶくぶくぶく……。
 硬い甲羅だけでなく、体を貫通した弾丸。化け蟹カルキノスは泡を吹いて崩れ落ちていった。
 直後、景護はすぐさま残り2体の状況を確認する。
「1体ごとに当てる戦力が異なるのだ。素早く合流せねばな」
 そう考えるのは他メンバーも同じ。皆、毒怪鳥と双頭蛇の両方へと向かう。
 続々と集まるイレギュラーズの姿に、元ペット達も煩わしさを感じたらしい。
 それぞれがイレギュラーズを敵視し始めたことで、ジェイクも咲良も勝手の違いを感じていた。
 シャアアアアアッ!!
「アンタの相手は俺だ。来な」
 自らの血に激しく昂ぶる双頭蛇は、丁度不敵に笑って名乗りを上げる狂歌の姿が目に入ったらしい。
 にじり寄る敵は大きな口を開いて彼女へと噛みついてくる。
 狂歌も反撃をとその口を斬馬刀で切り裂くが、完全に断ち切るとはいかず。
 その痛みで暴れた双頭蛇が口から彼女を離した直後、強烈な尻尾の叩き付けを見舞う。
「…………!」
 これには狂歌も防御が間に合わず、そのまま地面へと伏せてしまったようだった。
 元ペットらに大きな隙ができたと見たモカが両方を間合いに捉え、高速で双方の体の柔らかい部分へと蹴突を繰り出すが、それに耐えた毒怪鳥が青銅の爪を振り下ろす。
 アーー、アーーーー!!
 激しく興奮する毒怪鳥もまたそれで気が済まなかったらしい。
 モカがさらなる一撃をと振りかぶる暇に鋭いくちばしを体深くへと突き入れられ、モカは自らの運命の力を少し砕いて踏みとどまっていた。
 ただ、元ペットは2体とも傷がかなり深まっている。これまでうまく敵を誘導していたジェイクや咲良の働きは大きい。
「さあ、我が魔眼で不幸になるです!」
 モカを庇う様に飛び出したハクもまた2体を射程に収めて災厄の魔眼でそれぞれを見つめ、行く先の運命を暗く見通して見せる。
 すると、双頭蛇が力なく2つの頭をうな垂れたことで、ジェイクは一気にとどめに移って。
「これで終わりだ!」
 ここぞと気力を解き放ち、ジェイクは敵の頭を狙って銃弾を発射する。
 同時に2つの頭を穿たれた双頭蛇は激しく暴れ狂っていたが、やがて体力が尽きたのか、大きな音を立ててその巨体を地面に横たえたのだった。
「残り1体にしてしまえば、もうこちらのものだ。囲んで押し切って倒してしまおう」
 仲間の被害も小さくはないが、シラスが一気に畳みかけようと、残る毒怪鳥を見やる。
 依然として、肉薄する咲良が殴り掛かって毒怪鳥の気を引き続けていたが、相手は毒を撒き散らしてイレギュラーズの体力を削ごうとする。
 相手を弱めてからその肉をついばんで体力を回復させようと考えているのだろう。
「皆様、あと一息です」
 万全といえずとも、作戦は功を奏しており、毒怪鳥も弱っていると真優は指摘する。
 そんな彼女の号令によって不浄を振り払ったメンバー達はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで攻め立てる。無論、グラベルも終始元ペットらに斬撃、刺突と苛烈な槍捌きで浴びせかけていた。
「我が剣、鋭さには劣るが……それ故の強みというものもある!」
 全身に禍々しい闇を纏う景護が繰り出す斬撃はその身に深く呪いを刻み込み、相手の命をも奪わんとする。
 アー……。
 しかし、体から血を流しつつも耐えきった毒怪鳥は旋回してから空へと逃げようとした。
 景護が逃げぬようにとその魂に掴みかかろうとするが、シラスが素早く指先から光を放つ。
 弾丸の如く空へと打ち上げられた光は、毒怪鳥の体を貫通して。
 ア、ァー……。
 もはや抵抗すらできず、スチュムパリデスは地面へと落ちていったのだった。


 全ての元ペットを撃破した一行は小休止の後、事後処理に当たって。
 景護は仲間達から情報を得て、倒した元ペットらから手早く毒器官を処理していく。
「万一にも被害を出せば、全員に討伐を了解してもらった意味がない」
 彼は慎重に作業を進める。そうして、メンバー達が行うのは……。
「さあて、皆で蟹パーティーと洒落込もうか」
「私も食べたいな! ボイルして食べるのがいいのよね~!」
 蟹を食べたいというハクの要望もあり、ジェイクがそれにのっかる。咲良も生き生きとして調理法に言及していた。
「よーし、蟹だー!! ……って、俺の刀は包丁じゃねよ」
 意識を取り戻した狂歌もそう言いながらも、手刀を使って蟹を解体していく。
「調理は本職シェフにお任せください」
 モカも血抜きや解体にと動いてくれていたが、どこでも簡易キッチンを使うことでさらに環境を整え、調理も行う。
 食べられない部分以外は全て調理しようと、モカは肉だけでなく、抜いた血をソーセージに、鳥皮は焼き鳥、カニみそはおつまみにと隈なく調理していく。
「俺は食わねえぞ」
 基本的にはその蟹パーティーと銘打った宴を皆楽しんでいる状況の中、シラスのみ辞退していた。とはいえ、彼もペットの後処理には参加しており、利用できなかった骨などの部位に関して、グレベルと共に埋葬など手を貸していたようだった。
「やったー!」
 続々と並べられていく料理に、ハクはご相伴に預かれたと嬉しそうに口をつけていく。
 大味と思いきやなかなかに美味しい。もしかしたら、元の飼い主もペットとしながらも商品としての価値を見出していたのかもしれない。
 希望するメンバーもそれらの料理を食していたが、概ね美味と絶賛する。これにはモカも気を良くしていたことだろう。
 ただ、この場で最も満足していたのはハクに違いない。
 自分の為に催された蟹パーティーを心行くまで楽しむ彼女はお残しすることなく、全ての料理を平らげて見せたのだった。

成否

成功

MVP

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ公開です。
 MVPは元ペットを互いに争わせるよう仕向けた貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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