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シナリオ詳細

黄昏時に送る獣

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


(……いやな雰囲気があるな、この町は)
 各務 征四郎 義紹(p3n000187)は立ち寄ったその町の様子を眺め、顎に手を当てて少しばかり考える様子を見せる。
 道を歩く人々の顔には活気というよりも必死さのようなものが滲んでいる。
(まるで何かを恐れているような……うぅむ……身分を明かしてこの町の屯所のようなところに伺うも良いが……)
 少しばかり考えていたその時だった。
 空気を裂くような悲鳴が響き、思わずそちらを振り返る。
 そこには、やけに細身で背の高い女に羽交い絞めにされて引きずられゆく1人の女子。
 息子らしき少年が女子に手を伸ばし、女子はそれを手に取ろうと――いや。
(否、寧ろあれは……手を取るまいと、離れよとそう告げておるのか?)
 駆け抜けた義紹は女子と背の高い女の間に入り込むや、女子をひっぺ替えして刀を構えた。
「女子、走れ――!」
 義紹は視線を背の高い女に向けたまま叫ぶ――その身体が、羽交い絞めにされた。
「――なっ」
「武士の方……申し訳ございません」
 そんな言葉と共に、女子は義紹の身体を背の高い女に向けて押し倒し、くるりと身を翻して走り去る。
 にやりと口角を釣り上げた背の高い女がその口を大きく引き裂いた。
 それは、それは大きく――まるで獣のように。
「化生の類か――」
 咄嗟にそれを蹴り飛ばして刀を抜き、構える。
 にやりと口を釣り上げる背の高い女の影が、狼のそれのように見えた。
 刹那――瞬きの一瞬を駆けた獣が、大口を開ける。
 左腕を構えてそれを防ぎ、返すように一太刀を入れた。


「……と、そのような目に合ってな。
 何とか退けはしたが、この腕では奴を狩るには惜しい。
 諸君、どうかあの化生を討ち取ってはくれまいか」
 カムイグラにあるローレットの拠点へと姿を見せた義紹は、イレギュラーズを見渡してそう告げた。
 義紹の左腕には治療の痕跡がありありと見えた。
 なるほど、これでは弓を射るにも刀を握るにも難儀するというものだろう。
「その妖怪っていうのは……」
「……分からぬ。だが、人が転んだところを喰らう妖怪、となると送り狼が思い浮かぶ。
 ……問題は、送り狼が自ら獲物を羽交い絞めにして攫おうとするとは思えぬところ。
 もしかすると……奴は普通の妖ではなく、なんといったか……マガツ妖怪とやらの一種、なのやもしれぬ」
 イレギュラーズの問いかけに、義紹が微かに首を振った。
「あ奴が姿を見せた町は……ちょうどこの辺り。
 町の者達があのように必死に生きていた所を見るに、奴は偶々あそこにきたのではなく居着いているのだろう」
 そういうや、義紹は視線を自らに左腕に向ける。
 その表情が不覚を取った自分を赦せないとばかりに歪んでいた。

GMコメント

そんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
センシティブ要素のない送り狼がお相手です。

それでは早速詳細をば。

●オーダー
【1】送り狼〔狂〕の討伐


●フィールド
 黄昏時の町の中です。視界は抜群です。
 人々は神使であることを示すと遠巻きに戦場から離れます。
 皆様の中から1人が囮役となり、送り狼に捕まることで戦闘が開始されます。

●エネミーデータ
・送り狼〔狂〕×1
 線が細く背の高い女性の姿をしていますが、
 戦闘開始と共に痩せぎすの二足歩行の狼のように変化します。
 反応速度とEXAに秀でており1ターンで脅威的な回転率を有します。

<スキル>
餓狼の咆哮(A):腹をすかせた餓狼による咆哮は対象をひるませます。
物中扇 威力小 【ブレイク】【怒り】【泥沼】【停滞】【呪縛】

送る牙(A):獣の脚力を以って駆け抜け対象を喰らうでしょう。
物超単 威力大 【万能】【移】【崩れ】【体勢不利】【追撃】

悪意の爪(A):意図的に対象を甚振ります。
物至単 威力中 【必殺】【スプラッシュ2】

送り狼(P):その存在はその者への悪意に満ちています。
【※乱れ特効】

※【乱れ特効】
乱れ系列のBS保有者が攻撃を受けた際、命中度判定が1段階上昇します。
この効果はダメージの算出にのみ影響し、BS抵抗補正は本来の命中度判定を用います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 黄昏時に送る獣完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
河鳲 響子(p3p006543)
天を駆ける狗
鹿ノ子(p3p007279)
琥珀のとなり
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束
白妙姫(p3p009627)
慈鬼

リプレイ


 西日の差す橙色に彩られた町の中にイレギュラーズは訪れていた。
 夏に差し掛かり、温かな豊穣の町は人々の影を引き伸ばす。
 恐る恐ると道を行く人々の中に、ゆっくりと歩く背の高い線の細い女が見える。
 牡丹・暗光に身を包んだ『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は酔っぱらったかのようにふらふらと歩いていた。
 向こうから線の細い女が近づいてくる。それが不意に身体を屈め――ふらつくようなゴリョウへ向かって走り出す。
 ゴリョウは騎士盾を構え、突撃してきた女の衝撃を受け止めた。
「ぶはははっ、自分で言うのもなんだが、やっぱ豚ってのは魅力的か?」
 烈しい衝撃を受け止め、ゴリョウは豪快に笑って見せた。
『――ォォ!!』
 瞬時に姿を変じて現れるは痩せぎすの狼。
 遠吠えと同時、獣が再び突撃をかましてくる。
「人を襲う送り狼、ですか……各務さんの悔しい気持ちも分かりますし、
 確かに人を襲うとなれば討伐は必要でしょう」
 裏打翡翠を握り『天色に想い馳せ』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は真っすぐに踏み込む。
 払うように撃ち込む斬撃は送り狼の内側へと入り込む。
 送り狼は防御する暇なく吸い込まれるような斬撃を身体に刻む。
「良い腕をしておったが……遅れを取るとはのう。送り狼、あなどれぬ」
 朧月夜を構える『特異運命座標』白妙姫(p3p009627)は送り狼に近づくや踏み込み刀を振るう。
 妖しい軌跡を描いた太刀筋が送り狼の身体を強かに撃つ。
 強烈な斬撃がぐらりと送り狼を崩す。
「妖怪の類、それも人に害を為す存在は見逃すワケにはいきませんね」
 クナイを抜いた『天狗』河鳲 響子(p3p006543)は、直ぐに走り出す。
 痩せぎすの送り狼から視線を外すことなく近づいて、火炎の大扇へと姿を変えたクナイを払う。
 燃え盛る紅蓮の炎が送り狼の身体を焼き付ける。
「最近は複製肉腫とかの相手ばかりしてたッスけど、妖の類にも厄介なのはいるッスね……。
 妖怪にも妖怪の領分はあるでしょうけれど、人間を襲うならそれは退治しないといけないッス!」
 何時でも刀を抜けるように構えながら、『琥珀の約束』鹿ノ子(p3p007279)は向かってくる女を見る。
(手練れが不覚を取るその実力、決して侮れるものではありません……ね)
 銀色の美しい髪を黄昏に流し『plastic』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は弓を構えた。
 その視線の先でせめぎ合うゴリョウと送り狼。
(想像するだにある意味ベストな組み合わせです……ですが何故か不謹慎な気がします。何故でしょうか)
 脳裏に浮かぶ思考を一度切り離して。
「とは言え。信を以って任されたのですから、其れに背くことの無い様にしなければ……です」
 握りしめた弓を弾き、放たれた矢は雷へと姿を変えて駆け抜ける。
 着弾の瞬間、雷は蛇のようにのたうち送り狼の身体を包み込み、縛り上げる。
「人に危害を加えるなら、こいつは悪い妖の類ね……手早く処理させてもらうわよ!」
 御柱ブレードを構える『狐です』長月・イナリ(p3p008096)は魔力を迸らせた。
 美しい色を見せる魔力は絢爛に華やかに全身を包み込む。
 そのまま剣を払う。放たれた斬撃は真っすぐに飛翔し、送り狼の身体を包み込んだ。
 絡みつく封印術に送り狼がぎょっとしたようにも見える。
「どんなに強いスキル攻撃もスキルそのものを使用出来なくなったら、片腕を封じられたも同然でしょう?
 さぁ、その命、刈り取って上げるわ!」
 宣誓に抗うように、送り狼が雄叫びを上げた。
 依頼状に記された女の特徴に一致しているのを見て、『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)は動いた。
「我々は神使です! すぐに逃げて下さい! 我々が見えなくなるくらいまで、遠く! 早く!」
 ハーロヴィット・トゥユーを握り締め、宣言するようにウィズィが言えば、周囲の人々が驚いたように避けていく。
「さあ、Step on it!! 大人しくしろよ、犬っころ!」
 踏み込むと同時、片手で握るハーロヴィットを連続で叩き込んでいく。
 切り刻まれる送り狼は対応しきれず大きな傷を刻まれる。


『グルルゥゥォォ!!!!』
 天高く吠えた送り狼の強靭な爪が、幾度となくゴリョウの身体に吸い込まれていく。
「簡単には転んでやれねぇなぁ!」
 頑強な盾が幾度となく震えている。
 狼の速度は速く、連続する斬撃はゴリョウの盾を軋ませていく。
「悪虐非道の悪鬼羅刹よ。この天の目で見破り、狗の牙で仕留めてみせましょう!」
 跳ぶようにして後退した響子はその動きのままにクナイを投げ放っていく。
 真っすぐに飛翔したクナイは送り狼を囲うようにして地面へ突き立ち、それぞれを支点として箱を形作る。
 送り狼を包み込んだ漆黒のキューブは、その内側で送り狼を苛んで吐き出した。
「連撃は貴方だけの手段ではないのですよ!
 風纏う剣身を引きながら朝顔は走り抜ける。
 それは誰かを殺すためではなく、ただ彼を救うためだけの剣。
 己さえも顧みぬ一途の太刀。
 踏み込むと同時に振り下ろした剣は真っすぐに送り狼の身体を削っていく。
「背面を取るのは何も、あなただけの専売特許ではありませんよ」
 背面を取るアッシュは送り狼へと静かに弓を弾く。
 形成された魔力できた銀色の矢が送り狼へと走り抜ける。
 静かに、渦を巻きながらかける魔力の矢は真っすぐに狼の身体へ突き立ち――爆ぜるように嵐を呼ぶ。
 熱砂を思わせる絡みつくような魔力に送り狼が首筋を掻きむしるのが見えた。
 受け継ぐようにして背後へ回り込んでいた鹿ノ子が太刀を払う。
「僕は反応速度は高くないッスけど、手数なら負けないッスよ!」
 全霊を籠めた太刀筋は毛むくじゃらの背中、がら空きのそこを力強く切り裂き、跳ねるように細い脚を払う。
 大きく身体を揺らす送り狼へ、鹿ノ子は再び太刀を引く。
「まだまだぁ! 二度目はより深く! 三度目は更に深く!」
 力づくで運命力を引き寄せ、振り絞る連撃が送り狼の身体に更なる連撃を叩きつけた。
 イナリの瞳が金色の輝きを増していく。
 まるで誰か別人により操作されるが如き挙動と以って、緩やかに剣を構える。
「――狐雨斬」
 冴え冴えたる剣技が駆け抜ける。乱舞の如き斬撃の雨はまるでこの世ならざる何かの手を以って紡がれるものであるが如く。
 狙い澄ましたかのように送り狼の脚部を切り刻む斬撃はその精神力を削り落としていく。
 連撃が終わりを告げるのと同時、イナリの瞳は負担のソレへと戻っていった。

 獣の連撃がウィズィめがけて叩きつけられる。
 脚力に任せて突撃すると同時に食らいつかれ、連続して爪で殴りつけられながら、ウィズィは踏み込んだ。
「っだらあッ!」
 蹴りが送り狼の顎を幾度となく捕らえては撃ち抜いていく。
「タダではやられませんよ!」
 腹に力を籠めて、ウィズィは叫ぶ。
 送り狼というだけあり、連続する攻撃を受け体勢を崩すと共にその攻撃の苛烈さが増している。
 体勢を崩されることそれ自体は脅威ではないが、付与されている以上は身体に響くようだ。
 烈しい連撃はウィズィの身体を打ち据えて、ドクンと心臓が脈を打つ。
「さぁ、ここからが私の本領発揮……」
 瞳に輝く不屈の如き光が、脚に力を籠める。
 守りを固めながら、振り抜いたハーロヴィットに送り狼の眼が見開かれた。
(さて、送り狼の恐ろしいところは転んだら食われてしまうという事だがの……
 今回も、体勢を崩されたらわしのようなか弱い乙女はひとたまりもなさそうじゃ。注意していくとしようかの)
「彼奴の苛烈な連撃は危険です、無理はしないでください!」
 叫び、響子は印を結ぶ。それは自らにある賦活力を他者へと譲渡する術式。
 送り狼を蹴り飛ばすと同時に放った術式はウィズィに体勢を整えさせるだけに十分な時間を齎した。
 猛攻を受けるウィズィの傍、白妙姫は思考する。
 幸いというべきか、仲間のヘイトコントロールは上手く行っている。
 こちらが狙われることはめったにない。
「ほれほれ、惑うぞ惑うぞ、気を抜いとると首が落ちるぞ!」
 一瞬の隙を見据え、白妙姫は打刀を払う。
 朧月夜の名にふさわしき太刀筋は夜を散らせるように残像を引いて送り狼を切り裂いた。


「さっきはでかいのを貰っちまったからなぁ!」
 ゴリョウは騎士盾を構えて前へ進む。
 既に敵がこちらに注意を向けていないのは明らかだった。
 体に残るあらん限りの意志の力を気迫に変えていく。
 そのまま、押し込むようにして叩きつけた。
 強烈な殴打が傷だらけの送り狼の胴部を横薙ぎに叩きつける。
 疲弊する送り狼が驚いた様子を見せる。
 連続して殴りつけられる拳にはかつてほどの威力はなく、脚に力が入っていないのは明らかだった。
 ウィズィはその様子を見ながらハーロヴィットを構えた。
 撃ち込まれた弱弱しい拳に合わせて斬撃を叩き込む。
 血まみれの、毛むくじゃらの、ただそれだけの腕を斬り払い、獣の眼めがけてナイフが走り抜けた。
 傷の増えた狼の身体はやせぎすであることもあってみるに堪えない。
 朝顔は大きな踏み込みと共に叩きつけるように翡翠を撃ち込んだ。
 翡翠は鮮やかに輝き、送り狼の手を風で振り払って強かに打ち据える。
『ギャァァ』
 悲鳴らしい悲鳴が上がる。
「先輩、止めをお願いします!!」
 救うための刃は、それ故に殺すことができない。
 送り狼の攻撃に苛烈さが失われつつあるのを見て、イナリは剣を構えなおした。
「大技を撃てなくなったみたいね! さぁ、ここから私の本領発揮、切って、切って、切り刻んで、バラバラにして上げるわ!」
 御柱ブレードを立てて構え、舞いを踊るように振るえば、その切っ先には七色の炎が灯されていく。
 それは異界の神の力。
 疑似的に再現された炎の権能を剣身へと帯びて、連続して斬り払う。
 飛翔する炎の斬撃が傷だらけの送り狼に叩きつけられていく。
 アッシュは剣に持ち替えた。
 至近すると同時、銀の月を思わせる美しき剣を振り抜いた。
「何故そう成ったのか、何が在ったのか。
 ……どうあれ。線を踏み越えた以上は、討たせて頂きます」
 銀色の斬撃はまるで絡みつくかのような軌跡を描く。
 その剣は鋭く狼の皮膚に多数の血を流れ出させ、芯へと響く斬撃となって切り刻む。
 それはまるで血を喰らう獣のようにさえ見えた。
 花の剣をおさめ、鹿ノ子は再び送り狼目掛けて剣を構えた。
 悪意を孕んだ殺意は徐々に衰え、敵が沈みかけていることが分かる。
「いくッスよ!――猪鹿蝶!」
 剣が滑るように走り抜ける。
 美しき三連撃。残酷なる三連撃。猪を思わせる力強い振り抜きも、鹿を思わせる軽やかさも、蝶を思わせる華やかさも孕み。
 けれどただ殺すことのみを追求する斬撃が刻まれ送り狼の悲鳴が戦場を劈いた。


 送り狼が倒れた後、イレギュラーズはその遺体を脇道へと移動させていた。
「……しかし、ずっと思ってたんですが……痩せぎすって事はろくに食べていないのではないでしょうか…?」
 それが今日ここに来て以来ずっと朝顔が気になっていたことだ。
「空腹、うーん……人間以外に食べるものはなかったんッスかね……
 そういう生態ならしょうがないッスけど……」
 鹿ノ子も少しばかり考えてみる。
「勿論人間は食べてはいけませんし、今回は討伐ですから……殺さないといけないのですが……」
 朝顔は更に続けて言う。
「そうッスね、もっとおいしいものがあるって教えてあげられたら、何か変わったッスかね……」
 鹿ノ子もこくりと頷いて。
「送り狼は正しい対処をすりゃあむしろ周囲から守ってくれるって話もある。
 積極的に襲うって時点で何かが歪んじまってたのかもしれねぇなぁ」
 それに続けるようにゴリョウは言う。
「俺自身は食わせてやれねぇが、代わりにこいつをやるよ」
 豊穣――カムイグラから見れば遥か遠方、レガドイルシオン王国をイメージして作られた三色丼である。
「じゃあ私も……これぐらいしかあげられないけど」
 続けるように朝顔もこしあんを纏う牡丹餅を供える。
 それは奇しくも送り狼への本来の対処方法でもあった。
 その様子を見ながら、白妙姫は口元に手を添えて笑っていた。
「さぁて、無事に終わったか。晴れてこの町にも活気が戻るか? 中々気分が良いのう。よいぞよいぞ」
 周囲を遠巻きに見る人々の方に視線を巡らせた後、くるりと踵を返す。
「どれ、手傷を負った義昭に薬でも土産に買ってやろうか」
 そのまま夕暮れの町の中を歩いていく。


 戦いを終えた後、響子は報告がてら依頼人の義紹の所に訪れていた。
「いっぱい食べて身体を治してくださいね。
 でないと怪我の治りも遅いですし、送り狼のようにガリガリに痩せてしまいますよ?」
「これはこれは……ありがたい。早速いただいてよいか?」
「ええ、お節介でなければ」
「滅多にこのようなしっかりとした弁当を食べぬから美味しそうだ」
 手を合わせて義紹が食べ始めるのを響子は見つめていた。
 一口食べてから目を見開いて、瞬く間に完食していく。
「それ、わしからも土産に薬をもろうて来たぞ」
「おぉ、かたじけない」
 白妙姫が差し出した包みを義紹が受け取って包みを開く。
「ところで、手を貸してやったのだ、褒めよ。ねぎらえ。か弱き乙女ぞ?」
「あぁ、その通りだ。……今晩の食事をおごるというのではどうか?」
「うむ……それで手を打とうかの」
 空腹そうにお腹を撫でて、にやりと笑ってみせた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでしたイレギュラーズ。

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