PandoraPartyProject

シナリオ詳細

やあ、おにーさんだよ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 R.O.O――Rapid Origin Online。練達の研究者が作った仮想世界は今、彼らの手を離れていた。
 練達という勢力はウォーカーの科学者が多く、彼らの目的は『自力で元世界に帰る事』にある。選ばれたと言えば聞こえはいいが、半強制的な召喚に必ずしも納得するとは限らない。彼らはその納得しなかった者たちであった。
 神など信じない、何としてでも帰ってやるという意志は時として混沌肯定『不在証明』に引っかかったりとか、そうでなくても摩訶不思議な道具を作ったりとかするのだけれど――彼らはそんな混沌の法則を探し出すべく、仮想空間を作り上げたのである。
 しかし、研究員などが仮想世界へログインしている最中に事態は起こった。R.O.Oはゲームマスターたる三塔主の権限をキャンセルし、データを吸収・増幅させていったのである。そうしてできたのが混沌に似た世界『ネクスト』というゲームであった。
 そう、これはゲームなのである。クエストを用意し、その先にはトロフィーたる救助対象――ログアウトできなくなった研究者たち――を用意する。果てには大規模なイベントも用意したときた。つまりゲームクリアという概念があり、そこへ向かっていくことで真相解明にもなるだろう、ということである。
 だがしかし、これはゲームでありながら――現実で様々な場面へ向き合ってきたイレギュラーズにとっては、複雑な思いを起こす事も少なくなかった。



 ローズマリー(p3y000032)は混沌の幻想にあたる国『伝承』のある街を歩いていた。未だログアウトできなくなったプレイヤーの全員を救えていない以上、一刻も早く該当するクエストを見つける必要がある。故に彼女は情報収集としてゲーム内NPCに声をかけていたのだった。
 その最中、である。
「……んん?」
 目を細めたローズマリー。視線の先には1人の青年がいる。その青年がすっごく美形で――じゃなくて、見覚えがあったものだから目を留めたのだ。彼は、確か。
「ヴォルペ……?」
「うん? おにーさんのことを知っているのかい?」
 人の良い笑みを浮かべるヴォルペ(p3p007135)は僅かばかり目を見張ると、再び元の笑みへと戻る。彼はNPCか。いや、別のプレイヤーがヴォルペの姿を借りたとかそういった可能性もあるか?
「具合でも悪い? どこかカフェにでも入ろうか。おにーさんがご馳走するよ」
 ずっと考え込んでいるローズマリーに彼が気づかわし気に声をかける。はっと顔を上げたローズマリーは大丈夫だと首を振った。
「アンタの事は風の噂で、ね。……名前だけだけれど」
「おや、そうなのかい? どんな噂なのか気になるところだけれど……おにーさん、助けてくれる人を捜してる最中で忙しいんだよね」
 その言葉にぴくり、とローズマリーは眉を上げる。そこに感じたのは――クエストの気配。
「……良かったら教えてくれる? ボクも力になれるかも」
「女の子に危ない事なんてさせられないよ」
「大丈夫。特異運命座標だから」
 特異運命座標という言葉は現実でも、そしてこのネクストでも用いられる。現実では信託に預言された『超終局型確定未来』を止めるための者として。そしてネクストでは神託に予言された『黒い影の破滅』を止めるための者として。
 ヴォルペはおや、という顔をすると小さく考え込んだ。たとえ彼が守るべきと考える者でも、特異運命座標ならば。
「……ここからずっと東の森に、それは大きなモンスターが現れたのさ」
 それはあらゆるものを破壊しながら、徐々に近づいてきているのだという。勿論この街へ至るまでもいくつかも村や町が存在する。少なくともそのモンスターが回避するような様子は今のところないそうだ。
「ここは特に活気のある街だからね。君もそれで色々調べてるんだろう?」
「まあ、ね。……モンスターを倒さないと、調べるどころじゃないってことか」
「そういうことさ」
 視界に隅に飛び出すポップアップ。
『クエストを受注しますか?』
 ローズマリーは『Yes』を押し、クエスト開始のSEを聞く。そしてヴォルペの頼んだよ、の声に顔を上げて――。
「あれ?」
 誰もいない目の前の空間に、ローズマリーは目を瞬かせた。クエストを受注したら消えてしまうNPCなんているのだろうか。
 そしてふと、もうひとつ気づく――彼へ『色々調べている』なんて、言っただろうか?

GMコメント

●成功条件
 エネミーの討伐

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●エネミー『ドゥージャール』
 森の木々を超すほどの巨体を持つ熊モンスター。その正体はログアウトできなくなったプレイヤーのアバター。倒すことでログアウトできるでしょう。今のところプレイヤーの意思はなく、何を求めてどこへ向かおうとしているのかは不明です。
 その表皮は硬く、大抵の攻撃を防ぐと同時に弾き返します。また、正確な範囲は不明ですが攻撃はいずれも範囲攻撃となります。
 しかしその動きは鈍足で、範囲攻撃を浴びせれば多段ヒットが狙えるでしょう。1人では蹴散らされますが、2人でなら抑え込むことも可能です。
 現在、ドゥージャールは木々を蹴散らしながら西へと進んでいます。足音も響いているので比較的わかりやすいです。邪魔する者や攻撃する者がいれば、その牙や爪、声、何でも使って蹴散らそうとするでしょう。

●フィールド
 伝承の森の中。エネミーのおかげで他に危険モンスターは存在しません。
 木々により視界、及び足元が悪い場所があります。反して、エネミーの通った痕であればそれなりに視界は良いでしょう。
 森を抜けた先には村があり、さらに行けば街があります。その先にはOPにも出てきた場所があるでしょう。

●友軍NPC
 ローズマリー(p3y000032)
 踊り子の女性アバター。武器を持って舞う物理アタッカー。そこそこ戦えるため、ダメージ貢献してくれるでしょう。指示があれば従います。

●ご挨拶
 愁です。おにーさんお借りしたよ!
 というわけで、皆様は神出鬼没なヴォルペNPCからクエストを受け、集いました。
 街を守る為、モンスターを倒しましょう!

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • やあ、おにーさんだよ!完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ザミエラ(p3x000787)
おそろいねこちゃん
縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)
不明なエラーを検出しました
雪之丞(p3x001387)
ばぶぅ……
レイス(p3x002292)
翳り月
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
入江・星(p3x008000)
根性、見せたれや
コーダ(p3x009240)
狐の尾
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

リプレイ


 ズゥン、と重い地響きが断続的に響く。森のどこかを進むモンスターの音だ。
(驚いた。これもバグの一瞬なのかな? ……よく考えたら、我(アタシ)も人のことを言えないけれど)
  『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)がヒヒヒと笑おうとしても、それはフニャフニャと不明瞭な音にしかならない。
 名状し難きソレが驚いたと示すのは、討伐対象であるモンスターだ。それはただのモンスターではなく、ログアウトできずゲーム内に囚われたプレイヤーであると言う。
『興味 ある』
 大きな、大きなその巨大はやがて、一同の眼前に現れる。
「うわー、おっきなくまさん!」
 目をまん丸にする『硝子色の煌めき』ザミエラ(p3x000787)。彼女など丸呑みにできてしまいそうな大きな口だ。一体どれだけの量を食べるのだろう。あれだけ育ってしまえば、街の方に行ったとしても満たされる魚や蜂蜜はないだろう。かと言って、代わりに街の者を買われるわけにはいかない。
 街をいくつも過ぎて、西の方に行ったなら――辿り着くのは『砂嵐(サンドストーム)』だろうか。 『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)は頭の片隅にそれを留め置きながら、やはり首を傾げる。あの地こそ、食べ物なんて限られた場所にしかないだろうに。
(もっと別の場所かもしれんな。……しかし、ヴォルペなら知っていたのか?)
 先程遭遇した、へらへらと笑う男を思い出す。なんとも複雑な心地であったが、自身よりももっと複雑になっている者がいるだろうとTethは視線を滑らせた。そこにいるのはヴォルペと呼ばれたNPCに似た男―― 『狐の尾』コーダ(p3x009240)がいる。
(このアバターが誰かに似せて作られたのは知っていたし、アレも本物ではない)
 いつかは見つけてぶん殴らなくては。嫌な予感を拭い去る、そのためにも。
 しかしまずは街の住民達を守るため、全力を尽くす。それはクエストの裏に何があろうとも変わらないことだ。
「あぶぅ……」
  『ばぶぅ……』雪之丞(p3x001387)もまたなんとも言えない表情を浮かべている。赤子にそんな顔をされるとシュール以外の何者でもないのだが、中の人は大人なので仕方がない。
(まさかこんな所でヴォルペに再開するたぁ思わなかったな……)
 こちらもまた複雑な思いがある。NPCであることを認識していても、その見た目がそっくりだった事に本物そっくりだった事に変わりはないからだ。
「ぅあ、ぶぅ」
「……プレイヤーなんだよね?」
 雪之丞の姿に『踊り子』ローズマリー(p3y000032)は別の意味で何とも言えない表情を浮かべるが、まあどの様なアバターにするかはひとそれぞれである
「なんにせよ、街があかんことにならんよう守らせてもらわんとな」
 いくで、と 『21勝35敗8分』入江・星(p3x008000)は皆を促し駆け始める。こちらの世界のヴォルペに関してはやはり複雑な心持ちであったが、それはそれ、これはこれ。データの塊といえど、人々の暮らす街をどうにかさせるわけにはいかない。彼についていきながら 『翳り月』レイス(p3x002292)はつと視線を下げた。
(ヴォルペさん……って確か、カムイグラで……)
 本人が練達からログインし、プレイヤーとしてR.O.Oにいるとは思えない。有り得ない。だから彼がNPCであることはほぼ間違いないだろう。
 彼をはじめとして、プレイヤーの現実の姿をしたNPCがネクストには存在している。ヴォルペばかりではないけれど、本当にどんな人でも出てくるのだと感じていた。
(……。……うぅん、よそう)
 小さく頭を振ったレイスは前を見る。今は考え事に囚われている時ではない。クエストに集中し、モンスターを倒さねば。
 震える手を握りしめ、静かに深呼吸をする。怖くとも、プレイヤーの救出のため、頑張らなくては。

 走る、走る。 『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)は全力でダッシュしながら熊を見上げ、「でっかい!」と声を上げた。首が痛くなりそうな大きさだ。
(町の方に近づく理由は気になるけど、クエスト特有の時間制限かもしれねーな)
 のんびり倒していてもいつかはクリアできるかもしれない。しかしそうしていれば被害は甚大になるだろう。そうなった時点でクエスト失敗になるもの、と考えた方が道理である。
 どちらにせよ、このモンスターを森より外へ出すつもりはない。プレイヤーと違い、ゲームの中の存在は死んだらそれまで、データが再形成されることもない。
「いっくぜ、コーダにー。2人で抑え込むのはキツイかもしんないけど、まぁ、なんとかする!! 妹はどんな時だって無敵なんだ!!!」
 射程に入ったモンスターは向け、愛の力を放つルージュ。コーダは道連れにしてしまうが、他の兄にも姉にもその攻撃を向けるものか!
「ああ。――それじゃ、俺たちと遊ぼうか」
 2人の挑発に、熊がゆっくりと振り返る。それだけでも大きな揺れが一同を襲った。
「バブ之丞、そのナリじゃ大変だろ、乗ってけ!」
「バブゥ!!」
 Tethの肩に雪之丞が乗り、肩車で運ばれる。赤子の身体は不便だが、こればかりは役得である。
 ――ちなみに、この後どんな酷い目に遭うかという話もあるのだが……割愛しよう。
 金属杭を撃ち出すTethに合わせ、雪之丞の抜刀が『斬った』という事象を生み出す。それらが多量に打ち込まれると同時、幾らかが跳ね返ってきて2人へ襲いかかった。
(跳ね返ってくる攻撃は、交わすのは難しそう……かな)
 レイスはそれらを横目に、コーダとルージュの方を向いたドゥージャールの背後から攻撃を放つ。多少攻撃が跳ね返ってくるのは痛いが、それでも攻撃を加えなければ終わらない。幸いにして敵は大きく、狙うことに支障はない。味方を巻き込まないよう、やや上を狙って攻撃を放つレイスの脇を星とザミエラが駆け抜けた。
(こっちは回復も盾役も足りへん。狙うなら短期決戦やな)
 死んでも本当の死ではないこもが救いだが、長期戦はそれであっても望ましくない。ならばここで惜しみなく、火力を叩き込む必要がある。
「思いっきり行くよ!」
 ザミエラは手にした手榴弾らしきものを敵へ向けて放り投げた。綺麗な弧を描いたそれは敵に当たり、大きく爆発する。
「いたっ」
 その爆風がザミエラを襲うが、何のこれしき。まだ戦いは始まったばかりであることを知らしめる様に、敵が大きく吠えて力強く地団駄を踏んだ。
「地震……!?」
「にーちゃんもねーちゃんも、足元気をつけて!!」
 ローズマリーの戸惑う声にルージュが叫ぶ。しかし縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は木々の間を飛行して敵の視界から隠れつつ、スキルを放つ。広範囲高火力のそれは敵へと多段命中を決めた。
 敵の攻撃に翻弄されながら、一同は攻撃を加えていく。コーダはルージュへ向いた矛先を自身へ戻し、その間にもルージュはクルクルぴょんぴょんと忙しなく飛び回りながら敵の膝を狙った。
「まだまだ俺は遊べるぜ!!」
 子供特有の元気良さを発揮しながらルージュが膝を狙い続ける。攻撃すればダメージを負うが、それに負けるかと体力も吸い取れる。あとは仲間たちを信じるのみ!
 ガンガン、ガンガンと硬い表皮をものともせず集中攻撃される敵の膝関節部。敵がよろめきながらも腕を振り上げ、吠え立てて一同を跳ね除けようとする。
(仰向けでもうつぶせでもいい。倒してしまえば、後はやりたい放題だ!!)
 ルージュがぴょんぴょこ飛び跳ねる中、星の光が輝く一撃を星が放つ。反動と、硬い表皮からの跳ね返り。消して少なくないダメージだが、後もうひと押しに見えればなおさら手を緩める気にはならない。
(やっぱり……特定の部位を消耗させれば、使えなくなるのは同じ)
 レイスのスキルもまた、膝を狙う。よろけるということはそこを消耗していると言う事だ。ならば、さらに攻撃を加えればいずれは膝をつく。敵を叩ける部位も増えるハズ。意図を組んだローズマリーも同じようにそこへ攻撃を加えていく。
「お待ちかね、貫通ブチかましだ!!」
 敵の死角から飛び出したTethの召喚した、魔導機構砲がプラズマを再生し始める。方向は敵の膝、あわよくばその貫通先にある太腿まで。
「魔導機構砲――射出! 膝ついて土下座しな!!」
 エネルギー砲が放たれ、見事膝を貫通し反対足の太腿まで到達する。地面に膝をついた轟音と揺れで惑っている暇はない。Tethは雪之丞を肩車したまま敵の体を駆け上がり始めた。
(元は俺達みてえなプレイヤーらしいが、何でまたこうなっちまったのか)
 雪之丞もまたその方に乗せられながら上へ。何故モンスターになったのか、何故西を目指すのかは不明だが。強制ログアウト直前か、その後か。話を聞けたなら何かわかるのだろうか。
「ぅ?」
 がっしと、不意に首根っこを掴まれた。キョトンとした雪之丞はサァーと血の気を引かせる。
(Teth? Tethさん? どうして俺を掴んで振りかぶっt)

「首獲ってこいやバブ之丞ォー!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー!!?」

 敵の頭部向けて全力投球された雪之丞。これには流石の赤子も絶叫を漏らす。うわぁ空が青いね。
 しかし。しかし、これはある意味チャンスである。無碍にするわけにはいかない!!
「バァブ――!!」
 抜刀した雪之丞が一撃与えながら、重力に任せて落下していく。地面に叩きつけられそうなそれを縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はキャッチした。
『落ちる ダメージ 危ない』
「バブゥ」
 かくして、どうにか落下死によるデスカウントは免れたのだった。
(下手に近づくのは危ないけど)
 ザミエラが投げた硝子の刃は目標だ。投擲したそこへ一気に近づいたザミエラは、攻撃を受けながらも再びスキルを放つ。攻撃を繰り出せば繰り出すほど跳ね返るダメージは大きいが、それを受けたなら受けただけザミエラは強くなる。どれだけの攻撃を受け、放つか――見極めが必要だ。
「っ……やっぱり、完全には護れないか」
 コーダはゆらりと立ち上がりながら敵を睨み据える。庇うにも限度があることは承知の上。しかし、このままでは――。
「バブゥーーーーーー!!!!」
 そこへもう突進してくる雪之丞は、恐るべきハイハイでコーダの隣へ馳せ参じた。この巨体を抑え込むには1人だと足りない。ここで、敵の進軍を許すわけにはいかないのだ!
「2人が倒れる前にやるぞ!!」
「皆、任せるで!」
 敵の体に上っているTethがそう声を上げ、エネルギー砲を頭部目掛けて撃ち放つ。その直後に星が放った呪縛により動きが止まったところへ、Tethの一撃は命中した。
(多少のダメージは織り込み済み、なら他のダメージを出来るだけなくさなあかん)
 少しでも範囲攻撃を抑えられたなら、回復できなくとも少しばかりの余裕ができるはずだ。
「もっと……攻めないと」
 ここぞとばかりにレイスはスキルを切り替える。その硬い表皮を突き抜けるほどの威力を、と。ぐらりと揺らぎながらも体を支えた敵に星は目を細めた。
(しっかしこの熊デカいなぁ)
 あの優男を狙っているとは思えないが、それならば何のために進もうとしてあるのか。その答えを聞くことは、今は叶わない。
「皆、眩しいから気をつけて!」
 ザミエラのスキルにより光と共に硝子の破片が飛び散る。混乱に狂気をばらまいて――そろそろ仕舞いといこうじゃないか。
 縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧のスキルが敵へと忍びよる。解析不能な、なんと発音しているのかもわからないそれは、かの巨体をひと思いに呑み込んだ。
 スキルエフェクトが収束し、つかの間の静けさが辺りを満たす。モンスターは僅かの後、ゆっくりと倒れて行った。



「あ、」
 ザミエラの声に被り、クエストクリアのSEが鳴り響く。敵モンスターを倒したからだろう。
「例のおにーさん、出てこなかったね」
「まあ、そうだろう」
 どことなく残念そうなザミエラにコーダは小さく肩を竦めた。あの『おにーさん』なのだ。NPCとはいえ姿を見せるはずはない。まあ、見せたら殴るけれど。
(仲良くなると特別なクエストを持ってきてくれたらするかも、って思ったんだけれど)
 そう上手くはいかないらしい。最も、そういったゲームであるかも不明であるが。
「縺ュ縺医?√↑繧薙〒縺ゅ?繧ウ縺ョ蟋ソ繧貞叙縺」
「……っ!?」
 唐突に近づいた気配に、コーダは思わずのけぞった。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧はコーダに向けて手を伸ばし、髪をひと房掴もうとしていた。そこに害意の様なものは感じ取れないが――コーダのその姿は、『よくわからないいきもの』を拒絶している様な気がして。故にさりげなく距離を取っていたのだが、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧にとっては嫌悪などもなく、むしろ興味の対象らしい。
「縺ヲ繧九?縺輔?ゆクュ霄ォ縺碁&縺??縺ッ繧上°縺」
「なんだって??」
 この生き物の言葉は、相変わらずホニャホニャしていてよく聞き取れないのだった。
 そんな攻防の傍ら、Tethは倒れた熊を見上げた。横になっても尚見上げなければならない巨体は、程なくして霧散する。おそらくプレイヤーはログアウトされたのだろう。
「……しっかし。まじで何だったんだ、あの熊?」
「次会ったらまた詳しい話、聞かせてもらおうや」
 それがええ、と星は言う。現実に戻ったプレイヤーがどれだけ覚えているのか定かでないが――きっと、その人にとっても多少の休息は、必要だろうから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

雪之丞(p3x001387)[死亡]
ばぶぅ……
ルージュ(p3x009532)[死亡]
絶対妹黙示録

あとがき

 お疲れさまでした、冒険者たち。
 かの『おにーさん』とは、またどこかで会えるかもしれませんね。
 それでは、またのご縁をお待ちしております。

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