PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Dive-to-Caaaaaaaaaat!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 誰が呼んだか『路地裏の猫だまり』――それは、近隣の住民に愛される教会の横にある、小さな空間の名。
 教会から銀の水差しを持って出て来た『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ (p3p000236)の足元に、にゃあ、と小さな鳴き声が一つ。
 見渡せば、木陰でのんびりと休む濃灰の猫、気ままに煉瓦塀をしゃなりと歩く白猫――此処はいつの間にか、迷える猫たちの楽園になっていた。
 クラリーチェが自身のティーカップに湯を注ぎ入れるのを『ふわふわな嫉妬心』エンヴィ=グレノール (p3p000051)は膝上の猫を撫でながら眺める。
「ありがとう、クラリーチェさん」
「いえいえ。丁度私も渋いかな、と思っていたので」
 そう言うと、クラリーチェも自身のカップに同じように湯を注ぐ。いつものお茶会、今日は客人が来るから――とお菓子を用意して待っている間に、ポットの紅茶はすっかり渋みを増してしまって。
 エンヴィが苦さにほんの一瞬だけ眉を顰めたのを見られていたのだとしたら――まったく妬ましいわ、とカップを手に取る。
「それにしても遅いですね、お二人」
「何かあったのかしら……飛んで探してこようかしら」
 道の方を見やれば、小走りで駆け寄る影が二つ。
 クラリーチェとエンヴィは顔を見合わせると、二人へと小さく手を振った。

「こんにちはー! ……ってうわぁっ!」
「ああ、グレイプニールってば! ごめんなさい、焔さん。怪我はありませんか?」
 子猫の全身全霊での歓迎を顔面に受ける『炎の御子』炎堂 焔 (p3p004727)は、「だめだよー!」と子猫を叱る。もっともその声色は言葉と裏腹に甘ったるく、目尻も下がり彼女自身の尻尾もそれは楽し気に揺れているのだけれど。
「遅くなり申し訳ございません。道中何やら興味深い噂を聞き、寄り道をしていたもので」
 小さく一礼する『白秘夜叉』鬼桜 雪之丞 (p3p002312)の着物の裾にも、人懐っこい子猫が既にじゃれついている。
 裾を支え雪之丞がしゃがみ目を合わせれば、子猫は真っ直ぐに雪之丞の目を見つめるとくい、と顎を持ち上げた。
「撫でさせてあげるわ」とでも言いたげなその表情には人も妖も勝てぬもので――指で撫でれば、子猫は満足気に喉を鳴らしていた。

 女子が四人集まれば、話す内容など尽きる事はなく。
 その話が出たのは、クラリーチェが数杯目の紅茶を注ぎ入れた時のことだった。
「そう、そうでございました。遅れてしまった理由の件ですが、とても魅力的な話を耳にしまして」
「あー! そうそうあのね、すっごい世界が境界にあるんだって!」
 雪之丞と焔がずい、と身体を乗り出す。心なしか二人の目は輝いていて――雪之丞はともかく、焔のその表情にクラリーチェとエンヴィが若干の不安を感じるのは気のせいだろうか。何せ前科●犯、ローレットの一部では要注意人物とされているとかいないとか――とはいえ今回は良心(読み:ゆきのじょう)も同意しているのだから大丈夫だろう。
「実は皆様に、お付き合いして頂きとう場所がございまして――伸びる猫がいる世界なのですが」
「ねこ」
「……ねこ!!」
 繰り返すエンヴィとクラリーチェ。平素よりボリュームの高いクラリーチェの声には、エンヴィの膝で眠る猫が一瞬目を覚ましていた。

 ――雪之丞と焔曰く。
 その世界では「光の猫」と「闇の猫」がねこぱんちで決闘をし世界平和を保っていて。
 決闘を終えるとその猫は力を失い休息に入り、人に触れられることでその力を充電するのだとか。

「それは……それは素敵な世界ですね!」
 さあ今すぐ行きましょう、と言わんばかりに目を輝かせるクラリーチェ。
「うんうん、しかもその猫ちゃんは力を失ってもソファーくらい大きいんだって!」
「ソファー……思い切りだらけられるのね」
 焔の言葉に、エンヴィもほう、と息を吐く。猫。ソファー。そんな怠惰なんて――!
「何だか皆で『だめ』になってしまいそうでございますね」
 そう心配する雪之丞も、着物ではなくだらけられる格好を――なんて考えているのだった。

NMコメント

 リクエストありがとうございます、飯酒盃おさけです。
 全体依頼の合間に、息抜きに思いっきりだめになってくださいね。
 相談期間は長めに取っておりますので、どうぞごゆっくり!

●目標
 全力でダラダラする。

●舞台
 光の猫と闇の猫が死闘(ねこぱんち合戦)を行った後の荒れ果てて――などいない、いたってのどかな草原です。
 晴れていますが幻想の初夏よりは少し涼しく、ちょうどよく過ごしやすい気候。

●伸びるねこ×ソファー
 光の猫こと、真っ白くてふわふわの毛並みの猫が草原に寝転がっています。
 すやすやと寝ていますが、顔はちょっと下膨れのぶさかわちゃんな様子。
 リプレイ開始時の大きさは、四人が大の字になって横並びで転がっても余裕があるくらい。
 ですが皆さんがくつろいだり撫でたりすることで、猫は光のエネルギーを蓄えていきどんどんとそのサイズは大きくなっていきます。
 思いっきりごろごろ転がろうと、その上を走ろうと我関せず、のんびりと寝ているでしょう。
 その触り心地はつやつやでふかふかの極上の毛、そしてその下はビーズクッションのよう。
 一度飛び込むと中々立ち上がれないかもしれません。気をしっかり!

(PL情報)
 しばらく皆さんが堪能していると、この猫は100メートル以上の超ロング猫になります。
 一通りエネルギーを充電すると、目を覚まし起き上がり、思い切り伸びをします。
 猫が纏うふしぎな力で落ちなくて済みますが、いきなりの高い所は皆さん驚くかもしれませんね。
 伸びをしたらきっと夕暮れ頃なので、その辺りで終了が丁度良い塩梅でしょう。

●備考
 その他、ありそうなものはありますし、持っていけそうなものは持っていけます。
 混沌の一般的なショップで手に入れられそうなものであれば、プレイングで指定頂ければ持っていると判断します。
 アイテム装備の必要はありませんので、自由にのんびりだらけてみてくださいね。

 また、このシナリオの相談はOPの続きを想定しています。
 余裕があれば、ちょっとしたRPを挟んでみるのも楽しいかもしれませんね。

 それでは、だめになる楽園へいってらっしゃいませ。

  • Dive-to-Caaaaaaaaaat!完了
  • NM名飯酒盃おさけ
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月26日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談11日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

エンヴィ=グレノール(p3p000051)
サメちゃんの好物
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子

リプレイ


 さぁ、と吹き抜ける風が髪を揺らす。
「まぁ……。なんて過ごしやすそうな場所かしら」
 靡く髪を手で押さえ、『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)が穏やかに笑う。今日は敬虔な修道女はお休み。友人達と大好きなねこさんを堪能するのですから!
 クラリーチェが胸に掲げるは「ねこだいすき」「ねこまっしぐら」――心情が駄々洩れにも程があるTシャツに、グレーの猫耳パーカーを羽織る。身も心も今日は神のものではなく猫様のものなのです――と恍惚たるため息を一つ。
「こんなにも穏やかな場所ならば、さぞや猫様もゆるりと過ごされていることでしょうね」
 その猫様のためにも、目一杯ゴロゴロせねばと決意する『白秘夜叉』鬼桜 雪之丞(p3p002312)。真面目と称されがちな彼女は、休息もまた真面目。労うべき対象へ合わせんと、身に纏うは黒猫の模したパーカー。中にはゆったりとしたグレーのサマーセーターとショートパンツを合わせ、丈の長いパーカーの下部についた尻尾がゆらりと揺れる。
「もしかして、あれがその猫さんかしら」
「本当ですね。あそこに見えるのが、ねこさんでしょうか?」
『ふわふわな嫉妬心』エンヴィ=グレノール(p3p000051)がクラリーチェと指さした先にはまあるい毛玉。ちなみに、その指先はかろうじて指先が見える程度のオーバーサイズで、頭に被ったフードのてっぺんにあるうさ耳はぴこぴこと楽し気に揺れていた。
「ほんとだ! あそこにいるのがその猫さん!」
 もうここからでもわかる、あのふわふわともふもふは触ったら気持ちいい――『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は手をわきわきとさせると、堪らず走り出す。
「ほら、早く! 早くなでなでもふもふさせてもらいに行こうよ!」
 振り向いて三人を呼ぶ焔。その胸元に書かれた「NEKO」の文字と――多分、きっと、恐らく猫だと思われる前衛的な何かの顔が描かれたTシャツには、三人共何も聞けなかった。


「とても大きな猫さんとは聞いてたけれど……」
 聞くのと見るのとでは大きく違う物ね、としみじみ零すエンヴィ達の前には、まるまる、ふかふかの白猫が寝息を立てている。顔の正面に回って恐る恐るその顔を覗き込めば、なんとも気持ちよさそうに――それでいてどこか気の抜けた寝顔。
「……よく眠ってるみたい。そう言えば、闇の猫?と戦った後なのよね……よほど疲れてるのね」
 世界平和の為の死闘――ねこぱんち合戦を終えて充電中の猫に、そっと手を差し伸べる。毛並みに手が沈み込む極上の心地に、思わず「妬ましいわ」と零すも――どうしたって、頭を撫でる手が止まらない。
「あ、エンヴィさんずるいです! 私も――あっ!」
 続けて触れようと手を伸ばすクラリーチェの背中から、小さな白い影が飛び出す。その白い小さな毛玉は大きな毛玉へともふん、と飛び込み消える。
「にゃぁ」とひょっこり顔を出した白猫に、クラリーチェはまぁ、と目を丸くした。
「あっ、パンジーったらついてきちゃって!」
 もう、と毛玉からでた顔を指でつつく。
 普段ならば後ろを付いてきたことにも気付いただろうが、それに気付かなかったのはひとえにクラリーチェの心が浮足立っていたからに違いない。何せ――今はパンジーが羨ましくて仕方がない!
 もう我慢なりません、と飛び込んだクラリーチェ。
「ふぁー…ふかふかします。この子連れて帰れませんか?大事にしますから」
 何せハーモニアは長命種。たとえこの猫が長生きでも最期までしっかり面倒を見るし、ギフトでご飯も調達できるのだから――と猫を説得しているも、猫に顔面からダイブしながら話すクラリーチェの声はもごもごとしか聞こえないのだが。
「そうだよぉ、ボクもう動きたくない、この世界で猫さんと一緒に住む……ふわぁ。もうだめだぁ」
 一足先に猫ソファーを堪能していた焔は、もう若干夢心地。本当は一番乗りでちょっと触って「早く早く」なんてやるはずだったのに、いつの間にか身体が吸い寄せられて抱き着いて埋もれていた。なんて恐ろしい世界なんだろう……という訴えもむにゃむにゃと消えていく。
「はっ! いけないいけない、もうちょっとで完全にダメになっちゃうところだった」
 早速ダメになった二人を眺め、エンヴィと雪之丞も顔を見合わせ頷いて。
「ふかふかで柔らかで……まるで雲の上に降りてるみたい」
 ふわりと飛んで降り立つエンヴィがおそるおそる下ろした爪先は、柔らかな毛の中に埋もれていく。これは寝転がってしまったらもう駄目だ――そう思った時には、もうエンヴィも寝転がっていたのだったことに気づいた本人は震えていた。
「猫様の匂い。とても、いい香りがします……」
 もふん、と雪之丞も飛び込めば、成程これは魅惑の香りと柔らかさだ。普段できないことも、だらけるのが猫様のためとなるのならば存分に癒し、癒されるとしよう。
 見回せば顔が溶け切っている三人があまりに幸せそうだったから、同じようにうつ伏せで顔ごと埋もれてみれば――
「いっそこのまま、ここに住んでは駄目でしょうか……」
 難攻不落の無血城塞たる雪之丞、猫様の力の前についに陥落。


 思い切り転がって、ほんの少し夢の中に誘われかけてはまた戻ってきて。
 気付けば白猫の尻尾が遠くへ行っているほど、体長が伸びていた。随分とだらけて癒されて、それ自体がこの猫に伝わったのだろう。
「猫さんの上でお菓子を食べるわけには……と思ったのですが、これくらいなら大丈夫でしょうか?」
 クラリーチェが差し出した小箱には、鮮やかな飴玉が詰まっていた。
「ボクいちご!」
「私はオレンジで」
「拙は桃をいただけますでしょうか」
 ころん、と飴玉を手のひらに受け取り頬張れば、甘酸っぱさが身体に染み渡る。クラリーチェの膝に前足を置いたパンジーも「ちょうだい」と言っているよう。
「これは私のですよ」
 葡萄味のキャンディをつまんで、クラリーチェも口の中で転がす。そう、かれこれ数十分程猫の可愛さを語り続けたクラリーチェの口はもうカラカラなのだ。
 寝転がっていた身体を起こし、一息付いて。緩やかに解けた心の中、雪之丞はよし、と小さく決意をし口を開く。
「あの、焔様、エンヴィ様。お二人が良ければ、クラリーのように、お名前でお呼びしてもよろしいでしょうか」
「へ?」
「いえ、あの。この機会に、これからも、お二人と、もっと親交を深められたら嬉しく……」
 焔の返答に、矢継ぎ早に言葉を続ける雪之丞。まだ早かったか、突然過ぎたかと慌てれば帰ってきたのは至極あっさりとした答え。
「うん、いいよ!」
「えぇ、喜んで……これからも、よろしく……ね?」
 焔の快諾に、私はさん付けなのが癖だけれど――とエンヴィは前置いて。
「皆ともっと仲良くなりたいという思いは、一緒だから」
 妬ましいでも嫉妬でも包まない、偽りざる本音を伝えれば――雪之丞はふわりとほほ笑んで。
「よろしくお願いします。焔、エンヴィ。そして勿論、クラリーも」
 その言葉には、三人の肯定が返された。

「あ、せっかくだからボク達ばっかり気持ちのいい思いをさせてもらうのも悪いし、猫さんにも気持ちよくなってもらわないと!」
 焔が両手でクロスして持つのは猫用のブラシ。随分伸びて大きくなってしまったけれど、四人でやればすぐ終わるから――それに、ブラッシング後はきっと今より気持ちいいもふもふが待っている。
「えぇ、こんなに良き日にしてくださった猫様にはお返しを」
「これ以上もふもふなんて……妬ましいけれど、楽しみね……く、クラリーさん」
「……! ええ、そうですね。頑張りましょう、エンヴィさん」
 エンヴィの小さな一歩にクラリーチェも応えて。いざブラッシングをと息巻いた四人が毛並みの誘惑と伸びきった体長に根を上げそうになるのは――もう少し後のこと。


 空が少しずつオレンジ色に変わる頃。突然、四人の足元がもぞりと動く。
「あれ、猫さん起きるのか――わわ、わわわ!?」
 二、三度もぞもぞと動いた白猫は、その身体を起こし高く伸びをし始める。もちろんその背には寛ぐ四人を乗せたまま。
「パンジー、捕まって!」
「わ、私が全員掴めば大丈夫かしら!?」
「それではエンヴィが流石に――あら?」
 焔が涙目になり、クラリーチェはパンジーをひしと抱きしめ。目をぐるぐるさせたエンヴィが目をぎゅっと瞑った雪之丞のパーカーを掴み、振り落とされるのに耐えようとするも――一向に体が宙に投げ出されないのに気付き、辺りを見渡す。
「助かっ、た……?」
 眼下に広がる草原と、気づけば身に纏う淡い光。あたたかさがどこか今も触れている毛並みとよく似ていて。四人は直感的に「この猫の力だ」と合点がいく。
 四人が寛ぎ、そして丁寧なブラッシングをしたことで白猫は充分に力を蓄えたのだろう。鈍っていた体を伸ばすためか、それとも御礼のためか。思い切り伸びをして、数十メートルもの高さへと四人を誘ったのだ。
「あちらに見える黒い毛玉は――闇の猫さんでしょうか」
 雪之丞が指す、遥か向こう。草原の先に、最初にこちらの白猫と出会った時のそれとよく似た毛玉が見える。
「あ、本当だ。おーい!」
 焔が手を振るも、遥か高いこの場所からは声が届かない。
「今度は闇の猫さんをもふもふするために来ようよ!」
「いいですね。今度はパンジー以外の子達も連れて」
「ええ。私、ねこぱんちの応酬も見てみたいわ……!」
「そうですね。また遊びに来ますね、猫さん。楽しいひと時をありがとうございました」
 ――クラリーチェの言葉に、ぶにゃあと鳴いた白猫の声。
「……あは、うん、伝えるね」
 動物の言葉が解る焔が、笑いながらその言葉を三人に伝える。
「黒よりオレの方が毛並みがいいから、オレにしとけだって」
 ライバル心たっぷりのその言葉に――四人の笑い声は、夕焼け空に溶けていった。

成否

成功

状態異常

なし

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