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シナリオ詳細

<Genius Game Next>鏖殺バトルロワイヤル

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 R.O.O(Rapid Origin Online)。
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界だ。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではあるが、現在は原因不明のエラーにより暴走している。
 情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築していた。

 それだけなら、別にどうということは無い。
 時間を掛けてエラーの原因を探し出し取り除いていけば良いのだから。
 その間は、人を内部に入れなければ良い。
 しかし現状は、そうも言っていられない状況だった。
 なぜならR.O.Oが、ゲームマスターである三塔主の権限の一部をキャンセルし、実験的にログインしていた『プレイヤー』を閉じ込めるという深刻な事態が発生していたからだ。
 閉じ込められた『プレイヤー』は『トロフィー』となって、R.O.Oの中に囚われている。
 囚われた『プレイヤー』を取り戻すためには、R.O.Oの内部で行われている『ゲーム』をクリアする必要があった。
 何らかの依頼やクエストという形で発せられるそれに参加し、『ゲーム』をクリアすることでログアウト出来なくなった『プレイヤー』を救出することが可能になる事例が多数報告されていたのだ。

 R.O.Oの内部で行われることは、どれほどリアルであってもゲームでしかない。
 そしてR.O.Oにおいて生じる事件の表層自体は事件の本質に関係ないと思われるが、『トロフィー』をはじめとする筋道がネクストに用意されている以上、バグの根源や解決に到る為にはゲームに乗る必要があるとカスパール達、練達の首脳陣は考えていた。
 そのため、これまで『ゲーム』クリアのための依頼がローレットに数多く出され、多くのイレギュラーズ達が参加していた。

 R.O.Oは練達ネットワーク上に構築された疑似世界である筈なので、内部でどれほど傷付こうが現実の肉体が影響を受ける訳ではない。
 少なくとも今はそうだ。
 そのため、どれほどR.O.Oで死のうが関係ない。
 どれだけ殺そうが、ただのデータだ。
 仮初めの命を好きなだけ消費できる。

 だからこそ、多くのイレギュラーズ達は楽しみつつ、R.O.Oの『ゲーム』をクリアしていた。

 その状況が幾らか進んだ現在、ある一つの変化が起こる。
 R.O.Oから全プレイヤーに『イベント開催告知』が出されたのだ。
 R.O.Oは大規模イベント<Genius Game Next>を実施するらしい。

 イベント内容は、次の通り。

 来る6/2、砂漠の悪漢『砂嵐』が伝承西部バルツァーレク領、南部フィッツバルディ領を襲撃する事が明らかになっている。
 プレイヤーの成すべきことは、悪逆非道の砂嵐を迎撃し、伝承領の被害を軽減すること。

 R.O.O曰く『このイベントはネクストの歴史を変え得る重要なイベントです。特別クリア報奨も用意されていますので奮ってご参加下さいませ!』との事だ。
 報奨の正体は知れないが、これまでの件から考えても『トロフィー』の大量獲得や、情報取得、何らかのアップデートであると考えられる。
 また、このイベント自体の存在がもっと重要な意味での推論の構築に役立つとも推測されていた。

 この状況で、イベントを構成するひとつの『クエスト』が進んでいた。


「殺せ!」
 伝承の街を襲う盗賊達が殺し合いをしている。
 馬に乗り槍で突き殺そうとする者も居れば、疾風の如く駆け回り、双剣で切り刻む者も居る。
 あるいは神秘の技をひけらかし、造り上げた仮想精霊に敵を握り潰させる者も居た。
 多種多様、様々な方法で殺し合いが行われている。
 彼らは砂漠の悪漢『砂嵐』の、『大鴉盗賊団』に属する集団のひとつ。
 文字通り、構成員の多くが盗賊であるため、気性が荒く悪辣だ。
 そんな彼らだが、一様に『色宝』と呼ばれる特別なアイテムを持っている。
 弱めの願望機(マジックアイテム)として機能するそれを使い、ある者は自己を強化し、あるいは敵対する者が不利になる場を周囲に展開し戦い、場合によっては、凶悪な姿をした仮想精霊を造り出し代わりに戦わせていた。

 彼らが戦っているのは、ある女性を手に入れるためだ。
 彼女は、とある幻想貴族の娘だったのだが、すでにその貴族は大鴉盗賊団により、ほとんどが皆殺しにされ滅びている。
 残っているのは彼女と、彼女の世話役をしていた少女のみ。
 戦勝の証しとして手に入れた彼女を巡って、殺し合いが起っていた。

 それは1人の女占い師の言葉が引き金だった。

「この子を手にした人は、幸せになれる」

 ただの占い師の言葉。
 けれど、それを耳にした彼らは、少しずつ狂っていった。

 この女を手に入れなければならない。

 強迫観念めいた妄執が、じわりじわりと広がっていった。
 幸せになりたいから。
 女を手に入れたいから。
 それが理由ではない。
 なまじ『色宝』という願望器を手にしていたからこそ、生まれた妄執だった。

 この女を手に入れれば、いま以上に願いが叶うのでは?

 幸せになれる。
 その言葉が、いつの間にか彼らの中では、自らの欲望をより満たすための方法に変わっていた。
 占い師が誘導したのではなく、彼らの中に元々あった欲望が、醜く花開く。
 もっとも、その切っ掛けを与えたのは、占い師であったかもしれないが。

 そして今、殺し合いは幾日か過ぎている。
 誰ともなく集まり殺し合い。
 殺し合いの熱が冷める事には散らばり、疲労し傷付いた身体を癒すために略奪を繰り返す。
 それは自滅が約束された蝗の群れ。
 周囲を食い潰しながら、最後の1人になるまで殺し合いを続けている。

 だからこそ、止めねばならない――

 さあ、ゲームの始まりです。
 今回のクエストは、バトルロワイヤル形式による敵の鏖殺。
 敵同士も殺し合いを繰り返す中、敵を1人残らず殺し尽くすのがアナタ達に課せられています。
 舞台は伝承の街中。
 敵が疲れるまで隠れ、背後から不意打ちをしても良いでしょう。
 その間、敵は街の住人から略奪したり殺したりしますが、気にせず無視するのもアナタの自由。
 逆に、自分の身を犠牲にしてでも被害を少なくするため、真正面から立ち向かうも良いでしょう。
 あるいは、参加する仲間と協力し戦うも自由です。
 さて、アナタ達は、どう立ち回りますか?

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
22本目のシナリオは、<Genius Game Next>関連のシナリオになります。

本シナリオは以下のように、通常シナリオと判定方法が大幅に変更されます。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

※重要な備考『情勢変化』
<Genius Game Next>の結果に応じて『ネクスト』の情勢が激変する可能性があります。
又、詳細は知れませんが結果次第によりR.O.Oより特別報奨が与えられると告知されています。

そして次からは、本シナリオの詳細になります。

●成功条件

敵の全滅

●敵

大鴉盗賊団に所属する盗賊団

人数は30人以上。
ご参加いただいた皆さまのレベル帯などを考慮に入れて変動します。

仲間同士で最後の1人になるまで殺し合いをしています。
基本、全員が敵状態です。
当然PCは殺そうとしますし、街の住人も邪魔なら殺そうとしますし、略奪や破壊も思う存分します。

大鴉盗賊団は『色宝』と呼ばれるマジックアイテムを持っており、本シナリオでは以下のタイプに分かれます。

自己強化タイプ

一定時間、自身の能力を高めることが出来るタイプです。
どの能力を高めるかは本人次第なので、攻撃力を強化して一気に攻めて来たり、防御力を強化して耐えてカウンターを打って来たり、回復力を高めて生き延びたり、逃げ足を速めたり、様々です。

結界タイプ

一定時間、自分にとって有利になる空間を造り出すタイプです。
与えるダメージが上がったり、動きが鈍くなったり、あるいは毒で体力を継続して減らして来たり、様々です。
使用者を中心とした狭い範囲でしか効果を発しないので、一端逃げるなどは効果的です。
それを見越して、後退するとダメージを受ける、みたいな結界を張るタイプも居ます。

仮想精霊タイプ

一定時間、自分の下僕となる仮想精霊を造り出し使役するタイプです。
仮想精霊は遠距離攻撃や近距離攻撃を織り交ぜた多彩な攻撃手段を持ちます。
使役者が死ぬと、仮想精霊は消え失せます。
使用者は、盗賊団の中では弱いです。
しかし本人もそのことは自覚しているので、逃げ足などの立ち回りは巧いです。

上記の3タイプの敵が、街の中で殺し合いをしています。

上記の能力は、強い敵ほど使用できる時間が長くなります。
一度使用すると、しばらくは使えなくなります。

敵は、PCだけでなく自分達でも殺し合いをしているため、『色宝』の使い所を考えて使用します。

敵を倒しても『色宝』を手に入れることは出来ません。

●戦場

伝承の、とある街中。
NPCが暮らしている中で、殺し合いが起ります。

戦いの中で火事になったり、街の住人が逃げ惑ったりしてます。

人が生活している街中で戦っている状況になります。

●街の住人

息を潜めて隠れていたりしますが、家屋に火を点けられたり破壊されたり、押し入られて略奪されたりするので、外に出て逃げ惑っている者もいます。

●戦闘後

首尾よく敵を鏖殺できたなら、街の領主の館に行くことが出来ます。
そこで、捕えられた貴族の娘と、彼女の世話役の少女がいます。

敵を全滅させるのに時間が掛かり過ぎると、貴族の娘と少女は心中して死んでます。
心中した2人の傍にトロフィーが置かれているので、それを持ち帰ることでクエストクリアです。

死んでいない場合は、2人から感謝の言葉と共にトロフィーを貰うことが出来ます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

説明は以上になります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • <Genius Game Next>鏖殺バトルロワイヤル完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レインリリィ(p3x002101)
朝霧に舞う花
Ignat(p3x002377)
アンジャネーヤ
なづな(p3x002890)
マジカル馬少女シフカ・ブールカ
ジェック(p3x004755)
花冠の約束
カイト(p3x007128)
結界師のひとりしばい
アメベニ(p3x008287)
戦火よ舞え
ネコモ(p3x008783)
ニャンラトテップ
ミミサキ(p3x009818)
うわキツ

リプレイ

 街を舞台に盗賊たちが殺し合いを続けている。
 住人達は恐怖に身を縮め、あるいは逃げ惑う。
 全ては仮想のデータでしかない筈だが、それでも見ていて気分の良い物ではなかった。

「仮想世界とはいえ、これはなかなか狂気に満ちた光景だね。さっさと片付けて長閑な世界で一杯やろう!」
 敵に気付かれないよう離れた場所で、『カニ』Ignat(p3x002377)は仲間に呼び掛ける。
 これに 『にゃーん』ネコモ(p3x008783)が返す。
「手早く片付けるのは賛成ニャ」
 戦っている盗賊たちを観察しながら続ける。
「今回はバトル・ロワイアル形式みたいだニャ。利口に立ち回るなら同士討ちで消耗してるとこを狙うのが正解なんだろうけど、ゲーマー的解答としちゃ住民の被害を押さえての完全勝利狙いしかねーニャ!」
 あくまでもゲームの世界としてネコモは言った。
「つーわけで、みんなー! かっ飛ばしていくニャ!」
「ああ」
 賛同するように続けたのは、『結界師のひとりしばい』カイト(p3x007128)。
「トロフィーをなるべく十全な状態で回収できりゃ、それでいい……筈、たぶん」
 多少歯切れが悪いのは、ゲームとして割り切れていないからかもしれない。
(――ほんとーに迷惑なんだよな。喧嘩なら他所でやれってんだよ……。まぁ、頭の知能がいいならこんな連中でも機能するのが盗賊って奴だよなぁ……ったく)
 カイトの言葉に、カニが同意するように続けた。
「どうせトロフィーを貰うなら美人から感謝されながらの方が気持ちも良いしね。スピード重視で暴れて行こう!」
 方針を決め、素早く作戦を組む。
 3組に分かれ、チームごとに敵を叩くことに決まった。

 そしてチームに分かれての戦いが始まった。

●Aチーム
「やれやれ……愚かしい者共もいたものだ」
 距離を取りながら敵を見定めるのは、『マジカル馬少女シフカ・ブールカ』なづな(p3x002890)。
 憤りを力に変えるように、力強く声を上げる。
「変身!」
 声と共に響く効果音。
 なづなを光の螺旋が包み、セーラー服JCから馬の耳と尻尾が生えた魔法少女姿へとチェンジ。
「助けを求める声がする」
 ぴくりと馬の耳が震え、助けを求める者の声を感知したなづなは、目指す場所を指し示す。
 示された先には商店があり、その陰で身を潜め隠れる、親子と思われる2人組が。
 すぐ傍では盗賊達が殺し合いの真っ最中だ。
「フザケた真似をしてくれるものだね」
 怒りを滲ませながら、『朝霧に舞う花』レインリリィ(p3x002101)は盗賊達に敵意を向ける。
「略奪の挙げ句、勝手にゲームを始めて同士討ちか。【イベント】の一言で片付けるのもイヤだけど、クリアしないと……」
「ああ」
 なづなが頷く。
「トロフィーとなった者はもちろん、NPCの住民の声も無視することはできまいよ」
「だね」
 Ignatが同意する様に言った。
「盗賊を討伐しつつ住人も助けてスピードクリアしよう!」
「もちろんだ!」
「任せろ。マジカル馬少女シフカ・ブールカ……始動だ!」
 Ignatの呼び掛けに、レインリリィとなづなは力強く応え敵へと向かう。
 3人の陣形は、先陣をレインリリィが駆け、やや後方になづなが就き、遠距離攻撃が出来るIgnatが後衛。
 巧く役割を分担した状態で戦場に切り込む。
(まずは敵を引き付ける)
 敵の死角から跳び込んだレインリリィは、セイクリッドスフィアを操り手当たり次第に斬り裂く。
 炎纏う剣舞は斬り裂くと同時に焼き切った。
「ぎゃあっ!」
「何だテメェ!」
 傷を受け怒声を上げる盗賊達に、レインリリィは名乗りの代わりに追撃の剣舞。そして――
(ここから引き離さないと)
 商店の影に隠れる親子を護るように、敵の一団を引き離すように誘導。
 怒りに侵された敵は、レインリリィの誘導に引っ掛かり追い駆ける。
「逃がすか!」
 敵の何人かが色宝を使い身体強化。
 ぐんっ、とスピードを上げ一気に追いつくと剣を振り上げ――
「絶好の的だね」
 後衛で狙いを付けていたIgnatが蟹光箭を放つ。
 主砲から放たれる閃光が、レインリリィに襲い掛かろうとした敵の1人の腕を焼き切り貫くと、さらに横手に居た敵にも突き刺さった。
「まとめて燃やすのは任せてよ! FIRE IN THE HOLE! 吹っ飛べ!」
 悪漢には容赦せぬと言わんばかりに連続射撃。
 敵が堪らず近付いて来れば、蟹戦車の鋏脚を用いた斬撃で斬り潰す。
 立て続けの攻撃を敵は受けたが、怯む気配はない。
 腹を括ったのか、まずはレインリリィを個別撃破しようと周囲を囲み一斉に襲い掛かろうとする。しかし――
「させるか!」
 死角から襲い掛かろうとした敵に、なづなが突進して跳び蹴り。
 蹴り飛ばされた敵が吹っ飛ばされ転がると、そこに追撃。
「沈め!」
 みぞおちに蹴り込み、間髪入れず喉に連撃。
 そこから側頭部を蹴り抜くようなハイキックで地面に叩きつける。
「テメェ!」
 なづなに敵が襲い掛かろうとするが、そこにレインリリィが斬り掛かる。
 その隙に、なづなが一端距離を取ると、Ignatが狙撃。
 巧く連携を取り優勢に戦い、この場の敵を全滅させた。
 周囲を確認し、隠れていた親子に声を掛ける。
「安心して、ボクたちは味方だ」
 レインリリィが、スキルの蜘蛛の糸を使って声を掛けたこともあり、親子は安堵したように礼を言う。
 それに返しながら、レインリリィは避難するよう告げた。
「今から、他の場所の盗賊達も全て倒す。キミたちは、もう少しだけ隠れていて欲しい」
 その言葉を受け、親子は何度も礼を言って避難した。

 親子の避難を確認し、すぐさま戦いに戻る。
 なづなが助けを求める声を感知し急行。
 中には、街の住人だけでなく敵もいたが、そこは容赦なく倒していく。
「自分だけ助かりたいなどと、甘いことを抜かすなよ」
 逃げを打った仮想精霊使いを協力して倒す。
 倒した後にレインリリィが色宝を回収できないか探すが、見つけることは出来なかった。
 そのあと3人は、更なる敵の討伐に向け動く。
「さあ、出し惜しみせずにガンガン攻めて行こう!」
 Ignatの呼び掛けに応え、レインリリィとなづなは更なる戦いに向かう。

 他のチームも、同様に戦いを続けていた。

●Bチーム
(ゲームのイベントとやらの都合で、こんな事態を起こすのですか)
 街の中で暴れる盗賊達を離れた位置から確認し、『雨紅のアバター』アメベニ(p3x008287)は憤りを感じる。
(イベントに参加する形になるのは少々不愉快ですが、苦しんでいる方々を放ってはおけません)
 少しでも早く事態の収拾をつけるため戦いの準備をする。
 そんなアメベニの隣で、同じように盗賊達を観察していた、『せなかにかくれる』ジェック(p3x004755)が呟く。
「仲間割れ? 同士討ち?
 なんだか分かんないけど。皆結局、自分のことが一番大事、って感じ」
 ため息をつくように言った。
「可哀想」
(だから、早く終わらせてあげないとね)
 戦闘体勢を取るジェックに、同じチームのカイトが提案する。
「陣形は、どうする?」
「引き付けて振り回したいから前に出ようと思う。引きつけてぶんぶんする」
「分かった。アメベニは、どうする?」
「炎血馬に乗って周囲を確認しながら回復に動きます」
 今回アメベニは、炎のように燃える血と目を持った炎血馬に乗って来ている。
 馬上の高い位置から周囲を油断なく見回し、何かあればすぐに声を掛けられるように動くようだ。
「分かった。じゃ、行くぜ」
 カイトの呼び掛けにジェックとアメベニは応え、戦場に踏み込む。
 先陣を切って進むのはジェック。
(街の被害も、女の子の命も、スピード勝負。がんばる)
 被害を最小限にするべく、多少の傷を負う覚悟で跳び込んだ。
「何だテメェ!」
 応えるより早く斧で斬り裂き、敵の視線を集中させた所で、こっち見て、を使う。
「キミ達の欲望なんてどうでもいい。いいからこっち見て」
 抑揚のない挑発を受け、敵は怒りに侵される。
「殺す!」
 追い駆けて来る敵を、この場から移動させるようにして誘導。しかし――
「逃がすか!」
 敵の1人が色宝を使い結界を展開。
 ジェックの周囲の空気が粘つくように絡み付き動きが鈍る。
 敵が襲い掛かろうとするが、そこにカイトが結界で対抗した。
「結界使えるのがそっちだけだと思うなよ!」
 カイトはジェックに襲い掛かろうとする敵の周囲に楔状の結界を複数撃ち込む。
 展開された結界は領域内を冷気で覆い敵に食い込むと、体のいたる所を霜で覆い動きを鈍らせた。
「ありがと」
 援護を受けたジェックはカイトに礼を言いながら攻勢に転じる。
 敵の群れの前に跳び出すと、小さな体に不釣り合いなほど大きな得物を力任せに振り回し、抉るように急所を斬り裂いていく。
 大きく傷を与えるも、敵は怯まず反撃。
 ジェックも傷を受けるが、アメベニが回復してくれる。
 遊火踏で喚び出された鬼火がジェックの傷を癒していく。
「傷はすぐに癒します! 攻撃に集中してください!」
「ありがと」
 ジェックは礼を言い、カイトと連携して敵を制圧していく。
 その中で、隠れていた住人が逃げようとしていたが、気付いた敵が襲おうとする。
(させない)
 アメベニが気付き住人の盾になるように動く。
「あちらに逃げて下さい。時間を稼ぎます」
 礼を言う住人を逃がすためアメベニが立ちはだかり、さらにカイトが囮役として分身を生み出す。
(最悪盾になってでも……アイツの事だから黙ってても自己犠牲役に走りそうで頭痛いんだがな!!)
 カイトの懸念通り、蒼眼の分身は積極的に敵を引き付け過ぎたので斬り殺される。
(痛っ!)
 五感を共有しているので切り殺される痛みが伝わる。
(と、取り敢えず住民を助けれるんだから不問にするけども。あとで一発ぶちかます)
 多少の代償と引き換えに住人を逃がし切り、敵との戦闘に集中。
 傷を受けるが倒していき、不利を悟った敵の一部は逃げ腰になるが――
「右手に回って下さい! 逃げられます!」
 馬上から周囲を俯瞰してみていたアメベニが敵の動きを連絡。
 それに基づき、カイトとジェックが動く。
「逃がすか!」
 カイトは七星結界・破軍の呪剣を展開し、逃げようとした敵を氷結させ、先回りしたジェックが止めを刺す。
「駄目だよ。もう逃がさない」
(ここまでしておいて、逃げるなんて駄目)
 容赦なく、己で絶命の一撃を振り降ろす。
(最後の一人すら残さないから。当然)
 ジェックの思いは仲間も同様。
 ひとり残らず全てを討伐した。

 傷を受けていくが、イレギュラーズは次々盗賊達を倒していく。
 それに盗賊達は気付いたのか動きに慎重さが出てきたが、イレギュラーズの中には死角から仕留めるように動く者達も居た。

●Cチーム
「ミミサキちゃん、パートナーよろしくニャー」
 敵の死角に移動しながらネコモが明るく声を掛けると、『開けてください』ミミサキ(p3x009818)は応える。
「こちらこそよろしくっス、ネコモ氏」
 挨拶を交わしている間に、敵の死角に到着。
 気付かれない位置で動きを観察しながらミミサキは思う。
(ほんと、あっちこっちで地獄みのある光景が繰り広げられてまスねー……)
 街は荒らされ死体が転がり、住人らしき人達が息を殺して隠れている。
(被害を受けているのがNPCとはいえ、市民が虐げられている光景をほっとくのは寝覚めが悪いでス)
 仮想世界である筈ではあるが、だからといって気分の良い光景ではない。
(召喚前は一応公僕だった身でスしね……あんまりやる気はありませんでしたけど)
 表情は変えず、ミミサキがどう動くか考えていると、ネコモが提案してくる。
「ミミサキちゃんのアクセスファンタズム、頼りにしても良いかニャ?」
 ミミサキのアクセスファンタズム『寄生型ミミック』は、ある程度体積を無視して宝箱や段ボールなどの容器に寄生し、中に隠れることができる。
 しかも本人以外に、もうひとり入ることが出来るのだ。
「2人だと窮屈でスけど、いいでスか?」
「大丈夫、問題なしニャー」
 話は纏まり、奇襲作戦をすることに。
 敵の移動ルートに先んじて到着すると、ミミサキが持って来ていたサイバー木箱に『寄生型ミミック』を使って入る。
 内容品隠蔽のスキルも同時に使っているので、まず気付かれることは無くなった。
 その状態で待つこと暫し――
「死ね!」
「テメェが死ね!」
 殺し合いをしている盗賊達が近付く。
「そろそろいけそうニャ」
「では私が先に跳び出すっス」
 盗賊達が間合いに近付いた所で、ミミサキが敵に襲い掛かる。
(漁夫の利いただきっス)
 狙いを付けたのは、仮想精霊に攻撃させて後ろに下がっている敵。
「いただきっス」
「っ! いつの間にテメェ、ぎゃあっ!」
 ミミサキは捕食を使い、それまで入っていた箱に噛み付かせる。
「助け――」
「逃がさないニャー」
 敵が逃げようとした所で、箱の外に出ていたネコモが猫道拳。
 猫の手の形をした気の塊が敵の後頭部を強打。
 その一撃で気を失ったのか、敵が動かなくなったところで、箱がさらにもぐもぐ噛み付き、ペッと吐き出す。
「美味しくなかったみたいっスね」
「何だお前らー!」
 2人に気付いた敵が襲い掛かろうとするが、それより先にネコモが間合いに踏み込んでいる。
「たつまきにゃんぷーきゃくニャー!」
 文字通り竜巻の如き回転蹴りで蹴り飛ばす。
「これ結構目が回るニャ」
 ふらつきそうになったネコモに、敵が反撃しようとしたが――
「おかわりいただきっス」
「ぎゃー!」
 死角に移動していたミミサキが、再び捕食で噛み潰した。
 その後も不意打ちを中心にして戦い、時にミミサキがレアドロップの予感を使い引きつけた所でネコモが昇猫拳の奇襲。
 多少時間が掛かった代わりに、ダメージは最小限に留め敵を倒していった。

 数時間ほど過ぎ、各チーム死にかける者も出たが、1人も欠けることなく盗賊の全てを倒し切る。
 その状況で、ネコモがアクセスファンタズム『とんずら』を使い領主の館に全力疾走。
 館に到着し急いでドアを開け、捕らわれの少女の元に向かうと――
「ストップニャー!」
 刃物を持って向かい合って床に座り込んでいた少女2人を全力で止めた。
(ここまで来てバッドエンドは勘弁なのニャ!)
 ネコモの俊足の甲斐があり、ギリギリで止めるのが間に合った。
 それが無かったら、2人とも死んではいないが手首を切ってぐったりしてる所だったのでグッジョブである。
 とはいえ、放心の少女2人をどうにかすることまでは出来なかったので仲間の到着を待っていると、皆が集まる。
「安心したまえ……もう大丈夫だ」
 なづなが落ち着いた声で言うと、少女2人はポロポロと涙を流す。
 そこにレインリリィが、蜘蛛の糸を使い、優しい声を掛けながら手を伸ばす。
「もうキミ達を傷つける者はいない。よく頑張ったね」
 少女2人は泣きながらレインリリィの手を取り立ち上がると――
「ありが、とう……」
「ありがとう、ございます……」
 何度も何度も皆に礼を言った。

 少女達を落ち着かせトロフィーを回収した後、アメベニは荒らされた街に向かう。

「怪我をした人が居たら教えて下さい。手当てします」
 傷を負った者を癒し、荒らされた街の復旧活動を手伝う。
 それを見て、他の仲間も手を貸した。
「まだログアウトまで時間残ってるみたいッスからね」
 ミミサキが瓦礫を道の端に寄せていく。
「俺はこっちを片付けるから、そっちはあっち担当な」
 カイトは分身してそれぞれ危険物の撤去。
「大丈夫。生き残りはいない」
「こっちも見たけど問題なし」
 ジェックとIgnatは、念のため敵の残党探索をして安全の再確認をした。
 全てが終われば、なづなは盗賊達に占いを告げたという女占い師の情報を得ようとしたが、盗賊達が全滅していることもあり、情報は得られなかった。

 かくして依頼は完了する。
 被害を抑え、見事盗賊達を全滅させたイレギュラーズ達であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
皆様のお蔭で、被害は最小限に収められました。
捕えられていた領主の娘については、未遂ぐらいにはなるかな? と思っていましたが、そちらも無傷でクリアです。
街の住人も、終わった後の気遣いもあり、皆さんに感謝しています。
それでは、今回はこれにて。
最後に重ねまして、皆さまお疲れ様でした。ご参加ありがとうございました!

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