シナリオ詳細
マークスフッドは後悔している
オープニング
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雨の午後。
薄暗い教会を男が歩き回っている。男の名をマークスフッドと言った。
天義の小さな町で商いを営んでいた、ごく普通の壮年であった。
だが今は違う。
小さな商店の主だったとは思えぬ立派な法衣を纏い、いかめしい髭を蓄えている。
視界の片隅に懺悔室がちらつくたび、マークスフッドは下唇を噛んだ。
胸の奥を掻き毟る冷えた棘に、その痛みに、耐えるかのように。
――発端は、半年ほど前になる。冬の初め頃の事だ。
村に得体の知れない病が発生した。原因は誰にも分からない。
当時、南国から乾燥した果物の輸入をはじめたマークスフッドは、容疑者の一人だった。
新しい商品を取り扱ったというだけの理由だが、迷信深い小さな町は、疑心暗鬼に駆られていたのだ。
マークスフッドを真っ先に疑ったのは、さもありなん――商売敵の男だ。
口論は拡大し、ついに町長と商人ギルドを交えた会議に発展した。
マークスフッドは大それた嘘をついてしまったのだ。
その男を、逆に『魔種の手先』だと決めつけたのである。
「そんな、恐ろしい。私は魔種の手先などではありません。神に誓ってそんなことはしていない!」
「嘘をつけ」
マークスフッドは怒鳴りつけた。
けれど嘘をついているのは、マークスフッド自身だった。
「嘘と仰るが、その根拠は?」
「俺は嘘を見破るギフトを持っているんだ!」
マークスフッドは議長の問いへと応えた。それこそ真っ赤な嘘だった。
疫病に喘ぎ、ヒステリックになっていた町の人々は、示された正義に熱狂した。
結局、商売敵の男は処刑され、マークスフッドは町の役職者に取り立てられたのだった。
●
「それで、どんな依頼なの?」
ことのあらましを告げた【真心の花】ハルジオン (p3n000173)へ、イレギュラーズが問う。
依頼人は罪を告白したマークスフッドとのことだ。
「マークスフッドさんは、その後も疫病の原因を調査してた」
本当の原因は、山に魔物が住み着き、殺された野山の獣などが川を汚染していることらしい。
イレギュラーズはその魔物を倒して、疫病の真の原因を取り除くのだ。
話は分かったが、マークスフッドはどうする気なのだろう。
「魔物が討伐されたら、自首するって」
罪の重さに耐えきれなくなったという訳だ。
言われもなく疑ってきたとはいえ、無実の相手を陥れたことに違いは無かった。きっと許されるものではない。最終的な処遇は町か、手に負えなければ教区なりが判断すると思われる。極刑でも不思議ではない。
では肝心の仕事について。
どこでどんな魔物を倒せばいいのだろう。
「これをみて」
一行はハルジオンが広げた羊皮紙に視線を落とした。
情報屋達の調査によると、敵はなかなかに広範囲の移動に長けた魔物のようだ。
ギルドは馬や馬車を用意するが、自前の物を持ち込めばさらに有利な状況を作れるだろう。
あとは詳細を読みつつ、道中にでも作戦を詰めれば良い。
「償う機会をあげてほしい。それがどんな結末になっても」
イレギュラーズの背を押したハルジオンの言葉。
それは情報屋としてだけでなく、あるいは個人的な願いも含むかもしれなかった。
- マークスフッドは後悔している完了
- GM名桜田ポーチュラカ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年06月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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森の中にエンジンの駆動音が聞こえてくる。
平坦な道を六対のタイヤをつけた5tトラックが走っていた。
緑と黒の迷彩に強気なボディ。普通の人間が持ち上げられるような岩であれば難なく乗り越え力強い走りを見せてくれそうな車両である。
運転席には『聖断刃』ハロルド(p3p004465)が乗っていた。
「魔種の噂を聞いて来てみれば……」
ハロルドは『真心の花』ハルジオン(p3n000173)が語った事の真相を反芻する。
天義の小さな町で得体の知れない病が発生し、それが魔種の手先によるもので、審議にかけられた男が処刑された。しかし、その実体はマークスフッドという男が商売敵に濡れ衣を着せ、病の原因は上流にすむ魔物の仕業だった、というよくあるもの。
聖剣の使い手であるハロルドは魔種を毛嫌いしている。聖剣使いだからという理由もあるが、魔種という存在を許す事、悪を許す事はハロルドにとって許されないものだった。
聖剣リーゼロットを持つ者として悪を許す事は許されない。彼女の命を無駄には出来なかった。
「まぁ良い。魔種でなくとも平和を乱すものがいるのは事実。いつも通り皆殺しだ」
悪は罰しなければならない。1か0か。ただそれだけでいい。悪の事情なんて考えたくも無い。一度考えたならば剣が鈍ってしまう。守れるものも守れなくなってしまうから。
「『善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや悪人をや』とは歎異抄でしたか。私の読んだ副読本では自分を善人と思っているものを善人と、悪人と思っているもの悪人とをそれぞれ呼んでいましたっけ」
『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)はトラックの荷台の上でそう呟いた。
「今回の依頼人は、そういう見方をするなら十分悪人ですね」
商売敵の男を処刑にまで追い込んだ。その罪は消える事は無い。だからこそ、自分を悪人だと認識しているのだろう。
「でも、決意はお見受けしました。任された仕事は果たしますよ」
瑠璃の隣に『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が座っている。
「マークスフッドさんがしたことは決していいことじゃない。でも、こうなってしまったのは彼だけが悪いというわけではないと思うよ……」
見知らぬ疫病。自分に降りかかる疑いの目。周りの人は自分が疫病をばら撒いたのだと信じている。
疑いを晴らすために何が出来るか。このままでは自分は遠からず処刑される。
そんな四面楚歌の状態で冷静な判断は出来ない。
だから初めに疑ってきた商売敵の男に『魔種の手先』だと怒りの侭に怒鳴りつけたのだ。
「覆水盆に返らず、か」
一度口に出した言葉は取り消す事は出来ないと『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)は荷台に手をついた。
「無実の人を陥れたことは許されないけど、反省する気持ちがあるのは良いことなんだろうね。悲しいことに失った命は返らないけど……それでも生きて罪を償えれば良いなぁって考えちゃうな」
クラウジアの向かいに座る『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は荷台から森の茂みを眺める。
「されど善後策を講じることはできる……善後策かどうかはわからぬが」
「ハッピーエンドって何なのかしらね」
ポツリと言葉を零したのは『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)だ。
彼女の目からは一滴の涙が落ちて頬を流れて行く。
マークスフッドは後悔しているのだ。自分のやった罪に耐えかねている。
やむを得ない状況に追い込まれ、相手を陥れなければ、自分が死んでいた状況。
それにとても悔やんでいた。
「それでも、私達に出来ることがあるから」
マークスフッドの為に悲しみを想い、ラブは口元に微笑みを浮かべる。大丈夫だと安心させるように。
「やれることを頑張りましょう」
ラブは涙目で決意し顔を上げた。彼女の決意にこたえるように『斧鉞』玄界堂 ヒビキ(p3p009478)もそうだなと頷く。
「過去の事は変えようもなく、後の事は当人達に任せる」
「マークスフッドさんの憂いを断つためにも魔物の討伐を完遂させないとね! 頑張るよ!」
「ああ、俺たちは疫病の原因を取り除くだけだ。がんばろう」
「さて、まずは依頼を全うしようかのう」
スティア、ヒビキ、クラウジアがラブの言葉に同意する。
●
「するべき事は単純な魔物退治。現場が広いのが難点ですが、単独行動を避け適切に対処できれば問題はないでしょう」
瑠璃は一緒に乗せた軍馬を撫でてから、森の中にある敵の気配を探る。
今のところ瑠璃が見ている方向に怪しいモンスターが居ないようだ。瑠璃はゆっくりと走るトラックの荷台から顔を出すスティアを見つめた。
「こういう風に移動するのってなんだか不思議な感じ」
落ちないように荷台の縁を掴んで周辺の草木に語りかけるスティア。
「この周辺で魔物の姿を見たり、最近変わったことがなかったかな?」
スティアが語りかける草木の答えは『見ていない』というニュアンスのものだった。
「こっちの方には居ないみたい。少しでも早く魔物を見つけたいね!」
「まあ、もう少し速く走らせる事は出来るんだが、荷台に人を乗せてるからな安全運転だ」
スティアの言葉にハロルドが前を向いたまま手を上げた。
エンジンの駆動音以外にハロルドの耳に聞こえてくるのは動物たちの逃げて行く足音だけ。
「こっちには何も無さそうだな。そっちはどうだ?」
ハロルドは小さくなって荷台に載っているウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)に声を掛ける。
「うむ。我は体(たい)がデカいのでな。魔物が出たら我に任セロッ!」
ウルフィンは胸をぽんと叩き再び小さく三角座りに戻った。
「ねえ、最近急に暴れん坊になった精霊はいない?」
ラブは道すがら精霊達に語りかける。敵であるエレメンタル達は精霊達にとって同胞だろう。
何か情報を得られればとラブは思い至った。
『あっち』
すると精霊は北の方向を指差す。
「あっちの方に居るのね」
『いる。気を付けて。暴れるよ』
「そう……助かったわ。ありがとう」
ラブは精霊達に礼を言ってハロルドに進行方向を伝えた。
「よし、北だな。しっかり掴まってろよ! ちょっとスピード上げるぜ」
「うん! 了解だよ!」
ガタガタと小石を跳ね上げ猛スピードで進んで行くトラック。
アレクシアはファミリアーで鳥を呼び出して上空を先行させる。
「疫病を起こすほどに自然を冒す魔物なのであれば、植物からも恐れられているはずだよね」
近づいたと判断すれば詳細な場所を把握するために彼等の力を借りようとアレクシアは考えた。
ラブは耳を澄ませ辺りの様子を注意深く探る。
ヒビキも同じく些細な音も逃さぬように集中した。
「ベアグリフは二足歩行であるならば枝の折れる音や木々の騒めく音に注力しよう。エレメンタルは……生体がわからん。どんな音を出すんだ? ともかく異音を聞き逃さないように気を付けよう」
「――見つけた」
上空を飛んでいたクラウジアが開けた場所に渦まくエレメンタル達の姿を発見する。
アレクシアの使役する鳥が先行し、敵との距離が縮まる。
――――
――
戦闘は激しさを増していた。
しかし戦い慣れたイレギュラーズの攻撃は的確に魔物達を撃破する。
「ラブさん、そっちお願い!」
「任せて――夜を召しませ」
スティアとラブは大量の魔物を引きつけ、戦闘を有利に進めた。
「まだまだ若輩の身、出来ることもそう多くはない。基本は一体ずつ処理していこう」
ヒビキは剣を手に魔物へと斬りかかる。
斬り合い斬られ。
自分の腹に突き刺さる魔物の爪を押さえ込み、一太刀を浴びせた。
「何でも出来るのが俺の強みでな。俺の役割は遊撃だ」
ハロルドは聖剣を振り上げ全身に聖なる光を纏わせる。
加速した弾丸となったハロルドは魔物を一瞬にして叩きのめした。
すぐさまハロルドは反対を向いて次の魔物に襲いかかる。
「この魔物たちを放っておけばさらに多くの人や草花が苦しむことになる」
疫病を流行らす程の毒を川が流れているのだ、放置出来ないとアレクシアは魔法を繰り出した。
「ここで禍根はしっかり断っておく!」
エレメンタルへと飛んで行く魔法の光が花の形を作り出し、戦場に舞い上がる。
アレクシアの魔法が解けると、今度はクラウジアの仮想宝石が空に浮かんだ。
キラキラと眩しい光を放つ宝石が砕け、その魔力の勢いのままエレメンタルへと飛んで行く。
砕けたエレメンタルは自然の循環に戻って行く。
クラウジアの横から迫る魔物を押さえ込んだスティア。
「仲間のところには行かせない! ウルフィンさん!」
「おう! 俺に任せろ!」
雄叫びを上げたウルフィンは飛び上がり骸槍で魔物を串刺しにする。
そして、その魔物を蹴りつけて槍を抜いたあと、戦場を豪快に駆け抜けラブが押さえ込んでいる魔物へと襲いかかった。
「どうしたァ!? こんなモンかぁ!? もっと暴れせロ!」
ウルフィンの雄叫びが森の中に響く。
戦闘はイレギュラーズの優性に進み、最後のベアグリフを瑠璃の作り出した黒い棺が飲み込み、ようやく辺りは静けさを取り戻したのだ。
「あとは……」
瑠璃は魔物の侵入経路を見つけ出し、ウルフィンとハロルドに協力してもらいそれを塞いだのだ。
●
ハロルドのトラックが町の外に止められ、スティア達が荷台から降りてくる。
彼女達はマークスフッドに会いに来たのだ。
様子を伺いに町の外へ出て来ていたマークスフッドの前に歩いてくるイレギュラーズ。
マークスフッドをしっかりと見つめてスティアは彼に言葉をかける。
「原因となった魔物はずべて倒したわ。安心してね」
「ああ……ありがとう。イレギュラーズの皆さん。何とお礼を言ったらいいか。これでようやく罪を償う事が出来る。本当にありがとう」
涙を流しながらスティア達に頭を下げるマークスフッド。
「……自首するみたいだけど、死に急がないでね。誰かの命を犠牲にした以上、その人の分まで生きて人の為になることをするのが一番の償いになるはずだから」
マークスフッドにはきちんと生きて償って欲しいとスティアは彼に訴えかける。
「そうだ。魔物を殺しても川の汚染はすぐには元に戻らん。大規模な清掃が必要だな。アンタが自殺をするのは勝手だが、とりあえず川の清掃を手伝ってから死んでくれ」
口は悪いがハロルドの言葉には優しさが詰まっていた。死ぬより先にやることがあるのだと明確に示す事は終わりを考える者を引き留める切欠となる。
「ありがとう。本当に……」
ハロルドの手を握り感謝を示すマークスフッド。ハロルドはその肩をバシバシと強めに叩いて激励する。
ウルフィンはマークスフッドを見つめて愚かな男だと思った。それ故に哀しい男だとも。
「懺悔も本人の勝手だが全てを貴様の罪だとは言わん……環境、そして運も悪かった。が、全てを清算したら大人しく刑に服す? 愚か者が……それは逃げるのと何も変わらん」
ウルフィンの言葉にマークスフッドはどうすればいいのかと落胆する。
刑に服すことが逃げることだというのなら、一体どうしたら償う事ができるのかとマークスフッドは頭を抱えてしまった。
ウルフィンはマークスフッドの肩を掴んで前を向かせる。
「貴様も罪の意識があるなら最期まで『抗え』!」
「抗うとは……?」
マークスフッドはウルフィンの台詞に首を傾げた。
「最初は後悔で原因を調査し始めたのだろうがそれでも救おうとしたのだろう、貴様と同じ愚かな民を」
「はい」
「ならば、堂々と胸を張れ、最後まで、罪を着せてしまった懺悔と後悔。そして自分が行動を起こし町の民を救った誇りを抱いて罪を認めろ!」
罪だけを懺悔するのは不公平だ。その後の行いも全て曝け出すのだとウルフィンは男に告げる。
「因果応報。罪には罰を与え、良き行いには相応の慈悲があるべきなのだ」
「……っ」
ウルフィンの言葉にマークスフッドは涙を流しながら深く頷いた。
その様子をヒビキは荷台の上から見守っていた。戦いの中で負った傷はしばらく疼くかもしれない。
マークスフッドの意思が固まっているのであれば、語ることは特に無いのだと天を仰ぎ見る。
「罪を犯したことは変えようはないが、せめて償うことは許されるだろうよ」
ハロルドが言った様に川の清掃を手伝う事も出来る。償いの過程で誰かが許してくれるときも訪れるだろうとヒビキは想った。
「せめてこの先、後悔なき道を進めることを願っていよう」
ヒビキは誰に語るでもなく、ただ空にマークスフッドの未来を祈り、目を閉じた。
アレクシアとラブ、クラウジアはマークスフッドと共に町の人達が集まる会議に乗り込む。
どうしたと響めく町の人々にマークスフッドは頭を下げて自らの罪を告白した。
商売敵を魔種の手先だと言った事は嘘だった。嘘を見抜くギフトは持っていない。
彼に無実の罪を擦り付けたのだとマークスフッドは包み隠さず町の人達に告げた。
「どういう事だ!? 嘘だったのか!?」
「そんな。じゃあ無実の罪を着せられて処刑されてしまったのですか?」
「許されざる悪行だ!」
「こいつが魔種の手先なのではないのか!」
口々に町の人達はマークスフッドの罪を糾弾する。
「――待つのじゃ!」
クラウジアは手を打ち鳴らし大きな音を立てた。
「落ち着かれよ。席につき、お茶を飲むのじゃ」
彼女の言葉に鼻息を荒くしていた町の人達は席についてお茶を飲む。
「此処までは『罪』の話しじゃ。ここからは彼がした償いの話し」
「償い? まだ何も償って無いじゃないか」
「だから、落ち着けと言うに。……ほれ、マークスフッドきちんと全てを話すのじゃ。ウルフィンもそう言っておったじゃろ?」
クラウジアはマークスフッドの背を押して一歩前に出す。
「この疫病の原因は上流に住む魔物の仕業だった。それを、彼等イレギュラーズが今し方倒して来てくれたんだ。あとは汚れてしまった川を綺麗にすれば元に戻る」
「なんと。じゃあ彼等がこの町の恩人というわけか」
「素晴らしい。聖人の行いだ」
何処からともなく拍手が沸き起こり、イレギュラーズを包み込んだ。
分かりやすい行いに簡単に左右されてしまう彼等にアレクシアは一歩前に出て告げる。
「私達が魔物を倒す事が出来たのは、彼は今回の一件が魔物の仕業だって、調査して突き止めたから」
「え? どういう事ですか?」
「魔物の侵入経路もこちらの調査で分かりました」
瑠璃は町のとその周辺の地図と自分達が調べた場所を照らし合わせ印をつけていく。
「ここの経路は既に封鎖しましたから、安心してください」
大きな岩で塞ぎ、通れなくしたと瑠璃は町の人達に語る。
「つまり、きっちり調べればわかることだったんだよ?」
アレクシアは悔しさを滲ませた表情で町の人達を見つめた。
「なのに、ろくに調べずに、分りやすい理由だけで誰かを疑ったから……犠牲が出ちゃったんだ」
それは暗にこの事件の責任は町の人達全員にあると言うものだった。
「苦しいのも怖いのもわかるよ。それでも、簡単に誰かを疑ったりするのはもうやめて。
そのままじゃ、いつか誰も信じられなくなってしまうよ」
マークスフッドが悪いだけで終わらせて欲しくない。これは全員の問題だったのだと自覚して欲しいとアレクシアは町の人達に訴えかける。
「でも……」
「嘘をついて罪を被せた事実は変わらないんじゃ……」
町の人達は自分達の責任なのかと顔を見比べ合った。
個人的には生きて償ってほしいとクラウジアは町の人達とマークスフッドを見つめる。
「もし、結果が『処刑になる』としても償う為の期間を設けて欲しい」
スティアは町の人達の揺れ動く心を一押しした。
償う為の期間を設けるというのは罪を許すことに繋がる。
罪を許す判断をしたそのあとに処刑出来るのかという禅問答に陥ってしまうのだ。
「彼の過去はきっと事実で、その行為そのものを庇う訳ではないわ」
ラブはどよめく人々に語りかける。
「でも、その後、罪を悔いて、真実を暴くために一人で調査して。そうして私達に、助けを求めた……」
魔物が彷徨く森の中を調査するのは命の危険が伴う。
それを罪の意識からたった一人で調査し原因を突き止めた。
「私達は、彼がこれまで沢山積み重ねて、漸く伸ばせたその手を取っただけなの」
ラブの眦から涙がほろほろと零れ落ちて床に染みを作る。
我儘なのかもしれない。でも。それでも構わない。
「この町の皆を救ったのは、彼なんです」
涙の微笑みと共に「それをどうか理解して下さい」と頭をさげたラブ。
その後。
町の川は元通り綺麗になり、疫病も消滅した。
毒になった川の水を綺麗にしたのはマークスフッドと町の人達。
誰よりも疫病の原因に触れたマークスフッドの寿命は縮まってしまった。
しかし、彼は以前よりも生き生きとした笑顔を取り戻す。
残りの僅かな時間を今度は誰かの為に使いたいとマークスフッドは町の人達に語ったという。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
イレギュラーズの皆さん、お疲れ様でした。
無事に魔物は討伐されました。
MVPは彼の心を一番勇気づけた方へ。
それでは、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
桜田ポーチュラカです。
やることは、魔物を倒すだけ。
■依頼達成条件
山の魔物を撃破する。
■フィールド
天義。田舎の山です。
峠になっており、比較的道が広いです。
そのあたりに魔物が出るようです。
襲ってくる習性がありますので、警戒しながら移動しましょう。
■貸与品
けっこう広範囲を動き回る必要があるようです。
馬か馬車が貸与されます。
自前を用意すると、扱い慣れてるということで、ちょっと有利です。
■敵
・ベアグリフ×6
くちばしのついたクマのような姿です。二足歩行の魔物です。
とても獰猛。HPと攻撃力、EXAに優れます。
レンジなどは近距離物理メインです。
毒系のBSや、暗闇、致命、飛のBSを持ちます。
・ウォーターエレメンタル×4
魔物の瘴気で凶暴化しています。
毒を吸い込んでしまっており、毒系の神秘攻撃を行います。
レンジなどは中~遠距離単体や、貫メイン。
倒して鎮めてあげましょう。
・ミストエレメンタル×4
魔物の瘴気で凶暴化しています。
毒を吸い込んでしまっており、毒系の神秘攻撃を行います。
レンジなどは遠距離範囲メイン。
倒して鎮めてあげましょう。
■マークスフッド
依頼人。町で待っています。
討伐の報告があれば、自首する意思を固めています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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