シナリオ詳細
混沌産廃品を売り付けまshow!
完了
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オープニング
●戦争するにも兵器が必要
「……それで、俺がここに連れてこられた理由を聞いても良いか?」
客室と呼ぶには少々、招いた本人と座る椅子の自己主張が激しいのではないだろうか。
例えるなら国王までとは言わずとも、まるで大臣が座るような豪華な椅子と机。それだけなら許せたかもしれないが、座ってる男の態度がふてぶてしいのも腹立って仕方ない。
「ええ、貴殿は異世界人お見受け致しましてね?」
この世界には観光に来ただけの『境界案内人』ラナードはため息を吐いた。
同じ案内人のイヴに何処か旅行に行きたいと相談したところ、海や街並みが綺麗で観光向きの世界があると紹介され観光に来た彼だったが、いざ来てみれば突然武装した軍隊に武器を突き付けられこんな場所に連れてこられたのだから最悪の気分である。
「だったら何だってんだよ、俺はここに観光に来ただけなんだが?」
「まあまあそう怒らずに、良い話がありまして……」
ふてぶてしい男はそんなラナードの様子を見てニヤリと笑いながらそう言った。
一瞬、このムカつく顔に一発喰らわせてやりたくなるくらいラナードは腹が立ったが、何とかそれを抑え込みつつも、同時にどうせしょうもないことだろうと思う。
そしてそれはおおよそ予想通りだった。
「実は、我が国は戦争を計画しておりまして――」
男の話を聞くところによれば、どうやら海に面したこの国家は慢性的な鉄不足に侵されているらしい。その鉄不足を解消すべく、隣国の所有する広大な鉱山を自国のものにしたいという話だった。
「そんなの、貿易でもなんでもして鉄を入手すれば良いじゃねぇか」
「おっしゃる通りで。ですが、我が国は隣国と犬猿の仲にあるのです。貿易なんてとても」
確かにこんな強引な国と仲良くしたい国なんて無いだろうと、ラナードは自身を取り囲むように配置された兵士たちを見て思った。断ればきっと帰さないつもりなのだろう。
「で、結局俺は何をすりゃいいの?」
正直、大暴れして全員ふん縛れる力くらいはラナードも持っていたが、そうすればここで観光を洒落込むことが難しくなると考えたのか、ため息交じりに要求を聞くのだった。
●混沌産の使えそうで使えないもの
「そういえば、混沌って変なもの沢山ありますよね?」
境界図書館にて、いつもの様に本の整理をしていた『境界案内人』イヴ=マリアンヌは藪から棒にイレギュラーズに問いかけた。
どうやら依頼らしい。
「実は異世界に観光へ出かけたラナードから連絡がありまして、どうしてあの人はいつも面倒事に巻き込まれているんでしょうかね?
話によるとどうやら異世界の武器や兵器を売ってくれと要求されたとのことで……」
先の戦争をしたい国家の要求は『異世界の兵器』だった。
元々その世界は、世界を渡る力を持つ異世界人がよく訪れる世界のようで、ラナードが一発で異世界人と認知されたのはこの為である。
「要求した国家は慢性的な鉄不足で武器や兵器の量産が困難、加えて技術力も足りていないとの事で、きっと異世界産の未知のスペシャル兵器を輸入できれば戦争に勝つことも容易だと考えたのでしょうね……」
確かに混沌世界にもその手のものは沢山あるし、考え方としては悪くない。
だが、できれば面倒事は避けたいというのが彼女の本音でもあった。
「という訳でこんな取引真面目に受ける必要はありません。何か適当なガラクタを、それっぽい根拠で裏付けて売り払ってきてはいただけないでしょうか?」
- 混沌産廃品を売り付けまshow!完了
- NM名牡丹雪
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年07月06日 18時00分
- 章数1章
- 総採用数13人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
●価値は領地六つ分
財務省室へ一番槍を決めたルシアは、入室早々財務省の男に怒鳴られた。
まるで友達を突然呼び出しておいて、遅い遅いと急かす様な図々しさだが、そもそも友達ですらない。
「で、何を持ってきたんだ?」
「こちらが今回紹介する品、撲殺ニンジンです!」
「ブッ」
特に気にすることもなくルシアは商品を取り出すと、ラナードが紅茶を噴いた。
「強度もそうですが何と何とこれ、食べれるんです!
なのでこれで殺った後は美味しくいただいちゃえば証拠隠滅できるという優れもの!」
「でも戦争に証拠隠滅もクソも無くね?」
大砲で撃ち出せばそこそこの威力は出るとは思う。
「えー、お気に召していただけなかったのでもう一点」
次にルシアが取り出したのは、ハーモニアが持つにはお世辞にも似合っていると言い難い棘の付いた棒。それ多分ゴリラが持つ武器ゾ。
「これはですね、私の住まう森に伝わってきた、か弱い女の子も扱える伝説の一品!
持てばみんなヒャッハーしちゃうんです! 楽しくれっつぱーりぃ!」
本当に森へ伝わっているかは甚だ疑問であるが、バール持って暴れちゃう娘がいるくらいだし間違ったことは言ってないよね。
でも……
「一本買ったら何とおまけにもう一本! 更にニンジンも付けちゃいます!
お値段はおおまけにまけて500000G! お買い得ぅですよ!」
値段を聞いた財務省が苦笑いをする様子をラナードは静かに鼻で笑うのだった。
成否
成功
第1章 第2節
●戦にも幸運を!
「はいっ! こんにちは! 正義の味方の皿倉咲良です!」
まず目についた大量の巨大ニンジンには触れないほうが良いだろう。
既に疲れている依頼人の男を見るに、恐らく先に来たイレギュラーズの誰かが上手く売り払ったものだ。
「それで、キミは何を売りに来たのかね……?」
けどそれはそれだ。男がどれだけ破産しようとイレギュラーズには関係ない。
「今回は『神様のご加護』を与えるものをご紹介しようと思います!」
「あ、結構で」
今時、御利益があるとか言って壺を売り付けるヤバい宗教勧誘があるだろうか。
少なくともそれは壺ではなかったが、取り出された古臭い像が視界に入るなり男は反射的に断ろうとする。が、遮られる前に咲良が説明を続けた。
「ある人はその日暮らしの貧乏な生活から、突然億万長者に!
またある人は想い人と結ばれて、夢にまで見た幸せな生活を!」
「いや、だから……」
「人のプラス感情は神様から更なる恩恵を受け増幅していきました! そんな強すぎるご加護を受けたこの像、今ならなんと7000GOLD!」
「俺は兵器を売ってくれと……」
「戦争にも勝てるようになるので実質兵器です! 今なら魔除けの水晶を使ったブレスレットもセットですよ!?」
男は流されに流され続け……。
どの世界でも詐欺にかかるのは大体こういう流されやすい人間なのである。
「50組全部お買い上げ、ありがとうございました!」
成否
成功
第1章 第3節
●その中身は?
ガラクタの山に囲まれた財務省室に、また別のイレギュラーズが来た。
「失礼します。ごきげんよう、兵器商のモカ・ビアンキーニと申します」
財務省室に入室したモカは、まるでビジネスウーマンの様な格好をしていた。
その姿だけを見れば、誰でも真面目な取引をしに来たマーチャントと思うに違いない。
「悪いが要らないものはもう買わんぞ」
部屋に置かれたニンジンだったり釘バッドだったり怪しい像だったり。男はそれがガラクタである自覚はあるらしい。
「ええ、勿論。本日お持ちした商品は、猛毒・病原菌入りジェルでございます」
モカがそう説明しなら取り出したのは、ゼリー状の何かが入ったカプセルである。
説明を聞いた男は、そのカプセルを凝視して不安そうな表情を浮かべた。
「ご安心ください。かなり強い衝撃を与えなければこのカプセルは壊れません」
「成る程。だが解毒剤は無いんだろう?」
「おっしゃる通りで。つまり大型射撃武器で敵陣に向けて射出すれば、あとは言わずとも結果を想像できますでしょうか?」
モカの説明通りであれば病原菌は感染を繰り返し、国を滅ぼすことも可能だろう。
危険はあるが、これ以上に凶悪な兵器もあるまい。
「売価は……二つで200000GOLDということでいかがでしょう?」
――勿論、それが説明通りであればの話だが。
「では、良い成果を願っておきます」
その中身の正体は彼女ですら知らない。
成否
成功
第1章 第4節
●雑草って栄養あるのかな
「補給面ですっごい役に立つものを持ってきたよ!」
「おい、何処からどう見ても子供なんだが……」
元気良く財務省室に入室したセララを一目見た依頼人の男の反応がそれだった。
混沌世界は小さな子供であっても混沌肯定の力で戦う力を手に入れることができることが常識だが、そうでない世界の住人からすればきっと普通の反応なのだろう。
「そりゃ子供が戦うことだってあるだろ、可愛い見た目だが俺より強いぞ?」
驚く男に対し、ラナードは紅茶を啜りながらそう軽く説明した。
「マジかよ。……それで、お嬢ちゃんは何を持ってきたんだい?」
「ボクが持ってきたのはこれ、装備すると雑草がとっても美味しく食べられるんだ」
セララの言葉に、男は宇宙を見るような表情に変わる。
「士気を保つには美味しい食事は必要不可欠、不味い食事じゃやる気は出ないよね?」
「まぁ、確かに」
「そんな兵士さんもコレを装備すれば、あっという間に雑草が最高の食事に大変身!
まずいレーションも雑草を上に乗せればご馳走だよ!」
それは魚を主食とするこの国にとって、理にかなっていた。
生では腐りやすい魚を物資として送るには加工しなければならないし、そもそも物資として嵩張るのだ。
「つまり、戦場であっても最高の食事を無限に生み出せるすっごいアイテムなのだっ!」
食べた兵士の健康は保証しかねるが。
その後、男は暫くタンポポを貪っていたとか。
成否
成功
第1章 第5節
●格安SIM無し
「異世界からのお客さん、こんにちは」
「いや、この場合お前が異世界からの販売者ではないか?」
そうノアにツッコミを入れた男は何故かタンポポを食っていた。
大方誰かが変なものを売ったのだろうが、笑いを堪えるのでそれどころじゃない。
「なんでも戦争に勝ちたいから異世界の物資が欲しい、とのことだけど……」
「ああそうだ、何としてでも隣国に勝たねばならんのだ」
正直タンポポを貪りながら言われても説得力なんて無いのだが、商談は続く。
「実は私、良いものを持ってきたんですよ」
ノアが取り出したのは変な見た目の板切れ。
いかにも『またガラクタを……』と言いたげな男に、彼女は説明を入れた。
「このタブレットは悪魔召喚術、大群魔法、対城魔法、築城魔法と、とにかく戦場や日常で役に立つ魔法が記された数多の――」
ノアが説明するには、魔本に特化した電子書籍の図書館みたいなものだという。
電子書籍と言われてもピンとこない男は、まず板切れが光ったことに驚いた。この世界では“電子機器”というものは普及してないらしい。
「この通り、勿論“動作確認済み”よ? 今なら5000goldで売ってあげるけど如何?」
結果として、取引は物珍しさからすんなり成立した。
「異世界にまで私の故郷の電波が届くわけないじゃない」
取引後、ノアは独りでにそう呟くが、タブレットが分析されて利用されるのも割と近い未来……かもしれない。
成否
成功
第1章 第6節
●雑草→うどん
「やぁやぁ腹ペコの諸君! ……え、なんで雑草食べてるの? そんなにお腹減ってるの?」
男がタンポポを貪る姿に、何も知らない天狐は目をぱちくりさせながら言った。
もしかしたらこの男は雑草を食べなきゃいけない程貧乏なのかもしれないとか思ったかもしれないし、これが当然の反応である。
「今回ご紹介するのはこの『うどんセット』じゃ!」
「いや、食糧なら雑草を――」
兵器が欲しい男はそう言おうとするが、天狐はそれを遮って続ける。
「うむうむ、わかっておる。食料を整えるのも費用が掛かるからのう?
じゃがなんとこれ、一個あればどこでも美味しいうどんが食べられるという一品じゃぞ」
男がまた何か言おうとしたが、天狐はそれをよしとせずまだ続ける。
「過酷な行軍、緊迫した前線。そんな中でメシを悠長に作る時間も無いじゃろ、さりとて携帯食品で士気が上がるかと言われれば答えはノー」
「いや、だから雑草が――」
「そ・こ・で! この水を入れてほぐすだけでも食える美味しいうどんじゃ!」
男はもう、食べている雑草について説明することを諦めた。
そもそも雑草食べてる時点で色々おかしいもんね、仕方ないね。
「今なら汁も倍ついてくるぞ、濃い口欲しい時に便利じゃの!
そして更に今なら金粉の小袋もオマケじゃ! ここぞという時に入れて運気アップ間違いなし! さぁさぁ買うが良い食うが良い!」
成否
成功
第1章 第7節
●古より戦で頭に着けるアレ
「うむ、うむ、話は分かった。麿に任せておけばオールオッケーじゃ」
ソファーに上品に座りながら扇子を扇ぐ夢心地は、男の話を聞いて自信満々に言った。
彼は商品の紹介を始める前に、男へ「一つだけ確認してもいいかの?」と首を傾げながら問いかける。男が頷いたのを見るや、言葉を繋げた。
「今回麿が特別に用意したものは、戦のあり方そのものを変えてしまうやも知れぬ」
先程まで軽快に話していた夢心地が突然真面目にそう言えば、場の緊張感は増す。
「そんなガチの一品じゃが、引き返すなら今のうちじゃぞ?」
「どうあっても勝たないとならんからな」
夢心地とのやり取りに、どんな兵器が出てくるのかと男の期待も大きくなる。
「よし、覚悟はあるようじゃな。では紹介しよう……」
溜めに溜めて夢心地が取り出したのは、彼が頭に着けている“カツラ”だった。
「は……?」
「これは麿の頭部を模した、その名も“お殿様カツラ”じゃ。レリック級防具じゃの」
とりあえず、拍子抜けした男の口はポカンと開いたまま閉じなかった。
「いかなる雑兵であろうと、これをかぶれば誰でもあっという間にお殿様!
天を貫くちょんまげ! なんとご立派!」
確かに戦場に並ぶ全兵士がお殿様になっている様子はどこか華やかかもしれない。
この世界に、ちょんまげという概念があったらの話……だが。
「戦う前から勝利は決まったものよ。なーーーーっはっはっは!」
成否
成功
第1章 第8節
●勝利の悪魔は微笑まない
「ごきげんよう。異世界の何の価値もない国の、更にどうでもいい木端役人諸君」
男は来るなり悪態を吐いたセレマに眉を顰めたが何も言わなかった。
ここまで、男の忍耐力“だけ”は人並み以上を自慢していいかもしれない。
「戦う前から敗色濃厚としか言いようがないキミ達が、ボクという悪魔に出会えたことは奇跡に等しい幸運だ」
「ふむ、では期待していいだけの品を持ってきたと?」
「頭の悪いキミには理解が難しかったかい? 分かるように言おう、“悪魔を舐めるな”」
一瞬、疑わしい表情を浮かべた男もそう言われれば返せる言葉は無い。
お互い異世界の住人ということもあり、それが本当に悪魔なのか疑いすらしなかったのだろう。
「では悪魔らしく取引に移ろう。ボクが紹介する商品はこれだ」
静かになった男の前にセレマが取り出したのは、液体の入った注入器だった。
セレマはそれを、完全な再生能力を与える『不死薬』と称す。
「かくいうボクもこれを服用していてね、試しに――」
――。
部屋に飛び散った赤が取り除かれる。
「理解いただけたかい? 値段は言い値で結構、ただし商談は一度きりだ」
よく考えて値を付けろ。そう言った悪魔が大金を持ち去るまでに時間はかからなかった。
余談だが自称悪魔が渡した薬は不死になれる薬なんかではない。
「薬? ああ、ただの麻酔と興奮剤だよ」
決して、悪魔なんて信じないように。
成否
成功
第1章 第9節
●パンツと宝石以外のノービスだって高く売りたい!
混沌の闇市と呼ばれる市場で購入できる物は八割九分が安物だったりする。
それは詐欺とかではなく、単純に『売価が買価を超える』ことは少ないから。
「ルシアでして! ……あっ、他のルシアがいるのですよ?」
では購入した品で利益を出すにはどうすればいいか。
結論として手っ取り早いのが、よくある詐欺とかそういうアレなのだ。
「ここではアイリス、でしてー!」
それが良いか悪いかと聞かれれば悪いことに違いないが、無法も法な異世界では『騙される方が悪い』だなんて言われることが多い。
――まあ、それはそれ。
「これなんて特に新兵の方にはオススメでして!」
ルシアが売っていたのは、なんとローレットから支給されるノービス装備だった。
つまり仕入れにお金が掛かっていないので、実質的に無から有を生み出す錬金である。
「あ、こっちもオススメですよ! 魔砲はいいぞー、でしてー!」
週刊『魔砲はいいぞ』、ノービス装備よりも高いなんと“1GOLD”。
提示する金額は20000GOLD。それだけあれば結構良い装備を買えるし、血眼になって闇市へ直行する人もいるくらいの大金だ。
「これがあればずどーん! と一層できるのですよー!」
ちなみに財務省室に風穴を開けたルシアの魔砲は装備と何も関係ない。
そうとは知らない依頼人の男は、壁の修理代含めて合計いくらになるのか算盤を叩くのだった。
成否
成功
第1章 第10節
●大空への憧憬は異世界でも
まあ、あっさり言えばルクト視点で依頼人の男は悲惨な状態だった。
それが依頼だったから致し方ないとはいえ、男のいる財務省室はまるで値が付かないようなガラクタで溢れていたからである。
「いやはや、なかなか酷いな……」
積まれたそれの価値を知るルクトは、気の毒ながらに小さく呟いた。
そんな彼女が売りにきたのは、彼女自身が兵器開発を行う過程で生み出された失敗作――とはいえ他のガラクタを見ればそれがマシなガラクタであることは一目瞭然だが。
「これは補助スラスター【偽翼】といって、簡単に説明すれば空を飛ぶことが可能だ」
「ほう、空を?」
男の表情は既に窶れていたが、空を飛べると聞いて喰いついた。
少し前に”電子タブレット”を見て驚いていたくらいなのだから、恐らくこの世界では“空を飛ぶ手段”自体が存在しないのだろう。
「独自の燃料を使っているから、使い捨てにはなるがな?」
「うぅむ……」
使い捨ての言葉を聞いて、男は表情を曇らせた。
男が心配したのは金銭面。ここまで大量のガラクタを買い込んだのだから、高額の使い捨てとなれば渋い顔をするのも仕方ない話だ。
「ふむ、何人使うんだ? 実戦投入するには慣れも必要だろうし、纏めて買うのなら多少の交渉も考えるが……どうする?」
男は提示された値段に目を見張ったが、悩む余地は無かった。
何故なら、何者も大空への情景には抗えないのだから。
成否
成功
第1章 第11節
●安心安全の超高威力爆弾
(ホントの兵器売っちゃったら本当に戦争が起こりかねないからねぇ)
この国が戦争をしたい理由というのは、かなり自己中心的なものだ。
「それじゃあ、わたしからはこの爆弾をご紹介!」
なのでシルキィは、爆弾っぽい混沌製パーティーグッズを売ることにした。
でも別に彼女は嘘を吐いている訳じゃない。パーティーグッズであるものの、製品にはちゃっかり“爆弾でぇぇある!”なんて書いてあるし、自称爆弾なのだ。
「ちょっと威力の実演をするから、開けた空間を用意してもらえるかなぁ?」
「……さっきロリっ子がそこの壁に風穴を開けたんだ」
男が指差した先には確かに壁に大きな穴が開き、外が見えていた。
何故そんなことを今言うかと言えば、そっちに投げるなら問題無いって話で――直後鳴響いた爆音に何事かと人が集まってきたのは少し後の話。
「どう? この光と音、凄い威力なのがわかるでしょぉ?」
出来るだけ遠くに投げたのだから、爆心地が無傷だなんて男は知る由もない。
強烈な音と光を目の当たりにすれば、それだけで強力な爆弾だと勘違いするものだ。
こうして男は爆弾もどきを掴まされることになるのだが、考えてみてほしい。あの爆音と光量があればフラッシュバンになるのではないかという話――
(実は火薬を減らしておいて貰ったから、音も光も控えめなんだけどねぇ)
――まあ、イレギュラーズがそれを考えない訳もないよねって話。
成否
成功
第1章 第12節
●混沌からイレギュラーズを特殊召喚!
「それじゃあこちらが今回ご紹介するブツデス。This is “勇者トレーディングカード”!!」
「……チェンジで」
わんこが取り出したカードを見て男は即答した。
まさかカードゲームをしに戦場へ行く訳でもあるまいし、そもそもこの世界にカードゲームがあるかも考えにくい。
「ただのわんこが映ったカードだろって? そうデスケド」
「おい、次の販売者はまだか?」
「待て待て、話の続きを聞けや!!」
子供のお遊びに付き合ってる暇は無いと言いたげな様子の男――といっても彼女は機械である為、子供かどうかは些か疑問の余地があるが……。
とりあえずわんこは強引にでも話を聞いてもらおうと男の前に立ち塞がった。
「要するに、コレはわんこ呼び出し券なんデスヨ」
「……呼び出し券?」
まともに相手をしていなかった男がピタリと動きを止める。
その様子を見たわんこは、隙ありと言わんばかりに口元を歪めた。
「貴方がたは兵器を欲している訳デスヨネ?
確かに兵器を売っても良いデスガ、それを使う側の者を呼び出してしまうのが手っ取り早い」
「ふむ、たしかにそれは一理あるな? というか合理的だ。だがキミは――」
「言っときマスガ、わんこはそれなりに場数踏んでるぜ?」
まあ、それだけは間違いないのだが。
――そんな召喚カードがあったら我ら境界案内人の存在意義は無いなと、端で紅茶を飲むラナードは思うのだった。
成否
成功
第1章 第13節
●それはマジでやべーって!
「はろーっ! じゅてーむっ! ごきげんようっ!
未来人のヨハナ・ゲールマン・ハラタですっ!」
自称未来人――と言っても異世界人である為、それを疑う者はいない。
彼女が本当に未来人なのかという話をするなら、彼女と同名の魔種と削れてしまった何かの話をしなければいけなくなる。それはあまりにも残酷というもの(主に後者が)。
「今回は産廃装備を売りに――」
「……」
ヨハナが何か口走りそうになったのはラナードの咳払いで止まる。
彼女は“うっかりしてました!”なんて調子を崩さずに言うと、荷物からヤバそうなものを取り出した。
「それじゃあ恐ろしすぎて混沌世界の誰も手を出せないヤバい一品がこちらっ!
クソソウビィッ(謎の鳴き声)」
それは一言で言えば“謎の肉片”のようなもの。
まず見た目だけでも相当ヤバいし、何なら近くに居るだけで嫌な感じがする代物だ。
「実はこの装備、混沌の英雄八人でぶん殴らないと倒せないようなヤベー奴の体の一部なんですっ!」
実際、肉腫と言われるそれはイレギュラーズ八人以上で徒党を組んで倒すような敵であり、個体差はあるにせよ危険な存在であることに変わりない。
だが、ヨハナのぶっ飛んだ話を聞いた男も大概ぶっ飛んでいた。
「それ、火を通しても大丈夫か?」
「ややっ! 食べるんですかっ?!
そうですね、多分火を通せば大丈夫だと思いますっ! 身の保証はしませんがっ!!」
成否
成功
第1章 第14節
●イレギュラーズの売る廃品はマジで廃品
「さ、さっきの未来人で終わりか……?」
「ああ、俺が呼んだイレギュラーズはさっきので最後だな。
まったく、突然呼び出したのにあんな沢山来てくれて感謝しろよ?」
恩着せがましいラナードは大量の廃材を買わされた男にそう言った。
もしかしたら何らかの応用で戦争に活用できるものもあるかもしれないが、どれも”兵器”と呼ぶにはふさわしくないか、あるいは”兵器”と信じているがパチモンであるものばかりである。
「で、そろそろ俺は街の観光に戻りたいんだが――」
そういえばそうである。
無理矢理連れてこられたからこそこんなことになったが、国の観光をしていたラナードを連れて来さえしなければガラクタを高額で大量に売り付けられる羽目にはならなかったのだ。
つまり自業自得ということなので、売りつけた側は何も気にすることはない。
「……いいだろう、だが一つだけ聞いても良いか?」
「まだ何かあんのかよ。手短にしてくれ、腹が減ってんだ」
男は財務省室に山積みになったガラクタを見て、ラナードを見てこう問いかけた。
「――勝てると思うか?」
「…………」
渋い顔をしたラナードは暫く考える。
ここで厳しいことを言えばまた引き留められる可能性もあったが、彼はあえて言うことにした。
「まあ、無理だろうな。戦争で異世界人って不確定要素に頼る時点で破綻してんだ。
戦争したい理由についても下らねぇ、そんなので死人を作るくらいなら異世界人に頼るプライドの無さを使って隣国と仲直りして、素直に貿易すりゃいい話って気付かねぇのか?
この国は他の世界からも観光地としては人気があるんだ、それをわざわざ壊す道理もねぇよ」
ガラクタを買わされて失ったお金は全て勉強代だ。
ラナードはそう言わんばかりに男へキツイ説教をすると、イレギュラーズの叩き出した利益を財布に詰め込んで、内心ほくそ笑みながらも財務省室を後にするのだった。
NMコメント
混沌ショッピングのお時間になりました。
どうも、牡丹雪です。
●目標『ガラクタを高値で売り付ける』
異世界のとある国が、戦争のために兵器を要求しているそうです。
物騒なので貴方はこの国の財務省へ出向き、兵器として使えないガラクタを本当に使えそうなものふうに紹介し高値で売り付けてきてください。
売り付けるガラクタはガラクタであるなら何でも構いません。(実際にあるものを装備していっても構いませんし、実際に存在しないものでもOKです)
また、通貨の単位はGOLDで、物価は混沌基準とします。
●味方
『境界案内人』ラナード
観光に来たのに不運にも身柄拘束され、財務省室にいます。
基本的に空気ですが、プレイングに記載があったりガラクタの説明に少々難があった場合のみ説得に手伝ってくれたり手伝ってくれなかったりします。気まぐれです。
●サンプルプレイング
以下、プレイングの例になります。
参考にしていただければ幸いです。
例)売るもの『へっちな本』
見てくださいこの内容量!!!
ページ数は何と驚異の五十ページ越え!
戦場に置かれていたら敵なんてもう釘付け!
しかもこれだけ描かれて今回お値段たったの10000GOLD
どうです財務省さん!すごいでしょう?
ちょっと待ってください!!
今ならなんともう三セットお付けしてお値段そのまま!
貿易手数料はローレットが負担!!
しかも百組限りの限定商品ですよ! 今しかございません!
では、レッツ売り付けまshow!
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