シナリオ詳細
子供たちと動乱の狭間
オープニング
●希望ヶ浜
『――それでは、次のニュースです』
テレビのディスプレイに映る1組の男女。ニュース番組で専ら取り上げられるのは大規模な誘拐事件であった。
『依然として学生たちの行方は掴めていません。警察は引き続き、学生たちの目撃証言から調査の手を広げるとのことです』
『被害者の家族たちは、学生たちが行方不明になった朝の様子について『特に変わった事はなかった』と述べており――』
ニュースキャスターの声が流れる間、画面には学校からの帰路を捜索する警察の様子が映し出される。そしてインタビューに応じた被害者の親族へと画面は切り替わった。
『いやぁ、いつも通りでしたよ。『いってきます』って言って、すぐそこで友人と合流して……』
ボイスチェンジャーで声を変え、顔を特定されないよう画面から外しているが――父親だろうか。表情までは読み取れないが、言葉を詰まらせた彼は『早く帰ってきてほしいです』と続けてインタビューを終えた。
当たり障りのないコメントが一言、二言と交わされてニュースは次のコーナーへと映る。先ほどまでの神妙な雰囲気を切り替えて、明るくスポーツの話題だ。
毎日報道されている行方不明事件、この被害者は『佐伯製作所』の学生たちである。まあ、もう何となく察した者もいるだろう。
彼らはテストプレイヤーとしてR.O.Oへ介入し――今もなお、閉じ込められているのである。
●R.O.O
Rapid Origin Online(ラピッド・オリジン・オンライン)には第二の混沌と呼ばれる『ネクスト』が存在する。ここには混沌とよく似た、しかし完全一致ではない各国が存在しているのだ。此度の舞台はそのうちのひとつ、ネクストにおける鉄帝『鋼鉄(スチーラー)』。
ここも鉄帝同様、北の大地に存在する国だ。経済的には貧弱で、やはり強い者が尊ばれる。この国では最強が皇帝となるシステムが存在していたが、つい先日これが崩壊した。なぜなら――皇帝が何者かに殺されたから。
トップのいない強国は動乱の最中に在る。有力者が次の皇帝であると名乗り上げ、または担ぎ上げられているのだ。中には正攻法で望まない、汚い者もいる。
「――あ、あんた! どうかあの子たちを助けてやってくれんかね」
あるポイントを通りかかったあなたは、駆け寄ってきた老人に立ち止まった。あなたへ縋りついてきた老人は路地の奥を指さしながら「子供が連れ去られていたんだ」と言う。どうやら老人の親族や知り合いではないようなので、恐らくは善意――というていなのだろう。老人はNPCのようだから。
どうやらこの街にはあまりよろしくない一派が潜伏しているらしい。自分たちが担ぎ上げたい有力者を乗り気にするため、外堀を埋める気でいるそうだ。その方法のひとつが軍事強化、といっては聞こえが悪いが戦力強化。『あなたに味方する強者はこんなにいるんです!』と賛同する者、そのように見える者を増やすことによって乗り気にさせたいらしい。
そんなうまくいくものか、と思うのだが。ここからが厄介な話で、強い大人を引き込むのではなく、素質が少しでもありそうな子供を攫って強制的に鍛え上げるのだそうだ。スチーラーの住民を攫うのだから、多少反発されても跳ね返すほどの力量を持った者たちが関わっていると見える。
最初は抵抗する子供達も暴力に怯えてか、或いは力をつける機会と気づいてか。だんだん従順になっていくのだそうだ。
「わしじゃあもう若い頃のようにはいかん。あんた、あの子たちを助けてやれないかね?」
あなたへ一縷の望みをかけて、老人は頼むと頭を下げた。
――クエストを受注しますか?
- 子供たちと動乱の狭間完了
- GM名愁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年05月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「さて――出番だね」
グリース・メイルーン(p3x000145)をはじめとした冒険者一同は、老人の示した路地を睨み据えた。決して広い道ではなく、精々人同士気をつかってすれ違える程度。先頭と殿では路地を抜けるまでにそこそこラグがありそうだ。
「人の意思に関係なく物事を強いるなんて、こんな状況でもなきゃキツい灸を据えてやりたいところだね」
「ああ、幼児を傷つけるなどノットダンディ! このダンディの名にかけて、不埒な企みは挫いてくれるわ!」
『めっちゃだんでぃ』じょーじ(p3x005181)がカッと目を見開く。ガチムチの体も相まってなかなかに圧を発していた。
彼らからすればあくまでここは『電脳空間』であり、ログアウトできないプレイヤーを除けば皆NPCである。現実へは影響がない。だがだからといって見捨ててしまうことこそノットダンディ。ダンディたるもの、幼児を見捨てるなかれ。
『傘の天使』アカネ(p3x007217)も――ダンディかどうかはわからないけれど――ゲーム内だからといって見捨てる気はない。そもそも無理矢理いいように操ろうなどという思考も感心できない。
「だが、戦力を増強する手段としてはやり易い方法だ」
冷静に、客観的な判断を口にするのは『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072)。時間はかかるが、その分他のリソースは抑えられるだろう。もちろん、人の道に背く行為ではあるだろうが。
「とりあえず、救出を優先しなきゃね」
「動くなら早急に動くべきだな」
グリースの言葉にヴァリフィルドは頷いた。今このタイミングなら、教官である大人は1人。仲間が帰ってくる前に奪取したい。
(憧れの人のRPは上手にできているのかしら……人の真似って思ったより難しいのだわぁ……)
――と、皆同様に路地へ視線を注ぎながらも内心ドキドキしているのは『憧れと望みを詰め込んで』レモン(p3x004864)である。少しずつロールプレイにも慣れてきたが、まだまだ油断すればボロが出てしまうだろう。
「可愛いお嬢さんにお兄さん達、今回も上手くやっていこうじゃないの」
「ええ。『ログアウトできなくなる方法』にも近づけると良いのだけれど」
レモンに『女王候補』アンジェラ・クレオマトラ(p3x007241)は頷く。救助対象はいずれもログアウトできず、ゲーム内に閉じ込められたプレイヤーだ。彼らからすれば不幸なのだろうが、アンジェラからすればそれは只々羨ましい。
(依頼を果たしてもログアウトしなくて済むのよね……)
現実の彼女とネクストの彼女は若干、思考の捉え方が異なるというか。それぞれの世界でそれぞれの人格を形成している、という表現が近いだろうか。自由意志や感情の抑制された現実に対し、ネクストではそれらが抑圧されていない。
なにより――疑問を持たず労働することへの恐怖を宿してしまったから。アンジェラは出来るだけこのネクストに留まりたいと思っているのである。
(でも、果たさなかったら次の依頼も来ないかもしれないから……仕方ないわ)
だからせめて、ログアウトしなくても良い手段がありますように。アンジェラはそう願って止まない。
「皆、準備はいいか? とにかく、行動せねばならん」
『エーレン・キリエのアバター』霧江詠蓮(p3x009844)の言葉に一同は頷いた。ゲームの中とて現実と変わりなく。力を得るならば突っ立っていても始まらない。
「それでは、そちらは見つからないようお気をつけて」
アカネの言葉に頷いた一同を残し、彼女はグリースを背負って飛ぶ。アンジェラは一足先に路地の先へ。その後ろをやや距離を離しながら、残りのメンバーがついていく。
後方の面子は気配を気取られる前に止まり、対してアンジェラはそのさらに奥までずっと進んでいった。やがて聴覚が拾うのは犬の唸る声。
「何者だ!」
「理想のための同志を育成する場所はここかしら? 私も仲間に入れてもらいたいの」
この辺りにいるような孤児には見えぬ淑女の姿に、しかしこの場が『鋼鉄』の地であるからか。男性――ウズミは顔を綻ばせた。
「なんと、志願者であったか! もちろん歓迎しよう」
「仲間に入る前に、色々お話を聞かせてもらっても?」
アンジェラは彼から視線を外し、その場を見渡す。あちらで熱心に稽古しているのは、すっかりここに慣れてしまった子供達か。先程唸り声を上げていたらしき犬は相変わらずアンジェラを睨みつけていたが、それでもウズミの様子に唸ることはやめている。
そしてその先に――いた。未だ覚束ない手つきで稽古をする少年少女。アンジェラの気配は察しているようだが、こちらを伺おうとするとすぐさま犬が威嚇するので向かないらしい。
「彼らは入りたてでな、これからみっちり鍛錬をして皆に追いつく予定なのだ」
「まあ、そうなのね。ちなみにどういった――」
アンジェラは見学をさせてもらいながらウズミの話を聞き始める。彼は無碍にしないどころか歓迎している様子だ。
(正直、彼の願望に殉じる気はないけど。彼から学びたいって気持ちに嘘偽りはないわ)
ここで賛同するままであれば、結局は現実のような"働き人"紛いのことをする羽目になるだろう。それは御免である。
こうしてアンジェラが話を聞く一方で、アカネとグリースは共に上空から偵察していた。アカネの翼はグリースを乗せていても安定した飛びっぷりだ。
「全員、あそこに集まっているようですね」
「うん。救出対象の子たちは大分疲弊してるかな……」
グリースの目は鷹のように遠くまで見通す。木剣を振り続ける子供達の疲れた表情もよく見てとれた。アカネは周囲を飛ぶ精霊と疎通し、まだ敵の仲間が帰ってくる様子がないことを知る。ある程度情報が集まると、アカネはグリースの指示した屋根へと降り立った。
「ここでよろしいですか?」
「大丈夫そう。しっかり狙えそう」
程よく高さがあり、かつ屋根伝いに逃げられそうな場所だ。若干敵陣と近いが、高さも考慮して届くレンジと考えればここが妥当である。
それに、もうすぐ戦いは始まるのだ。
アカネはaPhone-alterを取り出すと通話をかける。出たのは路地に隠れているレモンだ。
『調子はどう?』
「ええ、概ね情報は手に入りました。アンジェラさんも問題なく入り込んでいます」
始めましょう、と。彼女の唇がそう動いた。
レモンはaPhone-alterの通話をきると仲間を振り返る。凡そ流れは把握していたのだろう、皆が頷いた。彼女はこの先に敵も救出対象も一同に会している事、救出対象の体力が危ないかもしれない事を共有する。
「作戦行動を開始。……さっさと終わらせましょう」
『人型戦車』WYA7371(p3x007371)が動き出す。迅速に事を為す為に。
「――なんだお前達!」
犬が吠え、ウズミが声を上げる。その合間にもWYA7371は犬へと向かって純エネルギーバレットを掃射した。ウズミが剣を抜いて駆け寄ろうとしたところにアンジェラが立ちはだかる。
「邪魔をする気か、退け!」
「でも、まだ話は途中でしょ?」
びきり、と彼の額に青筋が立とうとも、アンジェラは退く気配を見せない。本当は、本当に話を聞きたいのだけれど。それでも依頼が優先である以上、アンジェラはここで話が聞きたいと通せんぼするのが役目でもある。
その最中、彼らの頭上でばさりと翼を打つ音がした。はっと顔を上げれば茜傘を広げたアカネが急降下してくる。
「嫌がる人を無理やり暴力で従わせようとするなんて駄目です! 汝に罪あり!」
急降下してきたアカネを交わしたウズミは、しかし彼女の言葉で彼らの目的を悟ったらしい。舌打ちをひとつ、剣を構えたところでアンジェラがやはり立ちはだかる。先ほどの警告で退かない以上は切って捨てるかとウズミは彼女へ切っ先を向けた。
「速攻で排除する……!」
檸檬もまた犬へと向かっていく。その後を追った詠蓮は、何が起こっているのかと目を白黒させている子供達へ向けて叫んだ。
「『佐伯製作所』の諸君、俺達は味方だ! 助けに来た!」
その言葉に。彼らは零れ落ちんほどに目を見開いた。
詠蓮は叫びながらも犬へとそのカタナを振るう。彼らも民の1人。なればただ民のための己であれと、そう思うことは現実とゲームで変わりない。
彼を援護するように、グリースの番えた矢が風を切って飛んでいく。ヴォーパルスター――重撃を繰り出す射撃術。当たれば大怪我を免れないその一矢が犬たちの余裕を削っていく。グリースは撃つと同時に屋根を伝い、若干場所を変えながら次の矢を番えた。
「皆、体力は気にせず戦ってくれたまえよ!」
じょーじのフィンガースナップが場に響く。その力で仲間を癒し続けるのが彼の役目だ。
(そもそも私が回復放り出してメイス振っても焼け石に水!)
むしろそれで近づき過ぎたあまり、相手の高火力攻撃に巻き込まれて倒れな兼ねない。こういう時は適材適所デダンディに決めようじゃないか。
そこへ突如として響いた竜の咆哮に、犬たちが何を感じたか振り向く。待ち構えているのは3メートルの全長を持つ悪食竜ヴァリフィルドだ。
WYA7371の攻撃にレモンは続きながらも、仲間たちの放つ技――より正確に言えば、そこに付けられた『スキル名』に内心驚くやら羨ましいやら。
(皆技にカッコいい名前ついてるだわね!? どうやるのだわそれ!?)
まだ自分なんてアクティブスキル1とか2とか――デフォルトで作成したままなのである。あとで落ち着いたら教えて貰って、カッコいい名前を付けなければ。このアバターは憧れの人を真似ているのだから、下手な名前は許されない。というか許さない。自分が。
しかしまあ、後でさりげなく方法は聞くとして。知らなかったなんて言うとあの人のイメージが下がってしまうかもしれない。ここはスキル研究中でその段階に至っていないとしておこう。
「レモン!」
その声にはっと振り向きざま、詠蓮の一閃が今まさにレモンへ飛び掛かろうとしていた犬へ命中する。まだ立ち上がるようだが、確かな感触だった。
(あまりにも、現実味が有り過ぎる)
詠蓮は刀を握り直す。その感触も、先ほどの斬撃も。向かってくるその殺気でさえもが現実と酷似していて、間違えばその境が分からなくなってしまいそうだ。
しかし自身の姿があまりにも違ってしまえば、そんなことも無いのかもしれない。ヴァリフィルドは息吹で1頭の犬を呑み込み、形作るデータを浸食する。
しかしウズミに従順な子供達も黙ってはいない。犬に攻撃する者たちに、或いはウズミを倒さんとする者たちに怯まず武器を向けてくる。それは救出対象の持っていたような玩具ではなく、確かな殺傷力を持つ刃がついていた。
だが空中に逃げるアカネに早々それは届かない。1、2名弓の心得があるようだが、アカネもまた多少では倒れぬ実力の持ち主だ。
彼女の引き打ちを躱し、受けるウズミへWYA7371は指をさして見せる。
「ウズミ教官。我々はあなた方の殲滅を目的とはしておりません。我々の目的はあくまで、こちらの子供達6名の救出」
そして、とそうでない――彼に従順な兵士たる子供達を指す。
「しかし、抵抗するならばあちらの子らを含め、躊躇無く殲滅致します」
こちらとて無駄な戦いは避けたい。故に、WYA7371はウズミへ問うのだ。人数を欲張って、質の高い者を喪うのか、と。しかしウズミは考えるまでもないと言いたげに鼻を鳴らした。
「そんなことをしていてはいつまで経っても人数は揃わないだろう! 私たちは彼らを『引き取って』いるんだ、横から掻っ攫わないで頂きたい!」
彼の言葉に従順な子供達がWYA7371へと向かっていく。その様を見てレモンは苦々しげに目を細めた。可能であれば一緒に連れて行ってあげたい気持ちはあるが、あの様子では難しいか。
(せめて、殺さないように……)
子供達には手加減をとする一方で、あちらは容赦がない。じょーじはアンジェラがふらついているのを見て咄嗟にフィンガースナップを向けた。弟子入りの演技はまだ続いているようだが、これ以上放っておけば――いや、今だって十分に危険だ。
「君たちがツワモノで囲んで、って中々面白い話だよね」
グリースは弦を絞りながらでも、と続ける。その口端をにぃと挙げて。
「それでいいの? ――僕らはもっと凄いよ?」
量ではなく、質を狙う。その一矢は辛くもその腕で以て受けられてしまうが、片手を封じたことは大きい。
「うぬらは我が相手をしよう」
ヴァリフィルドは自由に動き回る子供達へとその声を響かせる。これで多少動きを制御出来れば、ウズミへの対処もしやすくなるはずだと。詠蓮はなお仲間に攻撃を仕掛けようとする子供を相手取る。その目をしっかりと見つめ、隙なくカタナを握って。
「……鍛錬だけなら余所でもできるだろう。お前たちは誰かに使われるだけの『操り人形』としての強さが望みか?」
その瞬間、わずかに子供の目が瞠られた。同時に詠蓮が動き出す。手加減するための一撃はない。されど、願わくば。
アンジェラはその足をふらつかせながら、それでもまだウズミの前に立っていた。時間稼ぎくらいはと思っていたが、そろそろ引き際か。
(でも死んじゃったら、続きの調査できるの、いつになるかしら……)
体に走る衝撃。あまりにも現実味があるそれに、しかしアンジェラは『今のアンジェラ』だからこそゲームだと思うことが出来る。
だって、現実の私は"働き人"だもの――。
冒険者側もかなりの痛手を負っているが、守勢を苦手としたウズミもまた同様に。先ほど子供達も殲滅すると告げたWYA7371はウズミへとレーザーキャノンを叩き込んだ。見惚れる程に優美な乳白色の一閃が相手の胴へと命中し、貫く。
「教官!」
子供の1人が叫んだ。そこへレモンはスキルを放つ。殺すわけではない。ただ、ほんの少し、意識を攫ってゆくだけ。
「……もしも望むなら、付いておいで」
目覚めたあとでも、遅くないから。
未だ子供達は残っているものの、この場のトップたる男は倒れた。詠蓮はすかさず隅に固まっていた子供達へと向く。
「俺達はログアウトできる。気にせずとにかく走れ!」
「……う、うん!」
自分たちへ何者であるかを示した人。味方であると『現実の言葉』で示した人。彼の言葉に子供達はびくびくしながらも路地へと向かう。詠蓮はその傍につき、不意打ちを警戒しながら庇う準備を万端にした。
(ウズミの姿を取る暇は――ないか)
ヴァリフィルドは離れた場所に倒れ伏した男へ視線をくれるも、未だ子供達が立ちはだかってきているためにそちらへ集中する暇はない。
「撤退だ、早く!」
レモンが仲間たちへも声を上げる。殲滅がクエストクリア条件でないのならば、これ以上戦う必要もない。その言葉にグリースは仲間たちが撤退する隙を作るべく矢を放ってから、屋根伝いに動き始めた。
一同のしんがりを護るのはアカネとWYA7371だ。2人ともこれ以上、子供達を傷付けるつもりはない。
(何より、未だ罪無き子らに手をかける行為は当機のパイロットが嫌がります故)
2人から付かず離れずの距離を保つじょーじは最後まで気を抜かず回復を施す。ここで子供達に追いつかれでもしたら厄介だ。
「脱したぞ!」
「もう大丈夫!」
路地の先から詠蓮とグリースの声が響く。瞬間、WYA7371は猛然と皆の方へ走り出し、アカネは翼を広げて空へと高く舞い上がった。
青い空に、茜色がひとつ。それは暫しして、路地の外へと降り立ったのである。
子供達、もとい学生らはクエストウィンドウに表示されていた『プレイヤーに救出されること』というクエスト条件が達せられた事を見て喜びの声を上げた。やはり彼らも他のプレイヤー同様にクエストの報奨――『トロフィー』であったらしい。
じょーじは彼らに、ウズミが誰を担ごうとしていたのか問うた。少しでも情報があるのならば知っておきたいと。
しかし子供らは何も知らされなかったらしい。それも彼らがウズミたち教官に対して従順になればまた違ったのかもしれないが、今回はそうなる前に助けられて良かったと、喜ぼう。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした、冒険者たち。
学生たちは元の生活に戻れたことでしょう。
それでは、またのご縁をお待ちしております。
GMコメント
●成功条件
子供達の解放
生存プレイヤーが路地から抜け出すこと
※子供達及び皆さんが路地から脱出することでクエストクリアになります。死んだら無理に遺体を連れてくる必要はないものとします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。不明点もあります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
●エネミー
・従順な子供達×6
鍛え上げられた未成年の子供たちです。それなりに強いです。元々は身寄りのない弱者でした。
小回りを利かせた俊敏な動きを得意としており、手数で攻めてきます。また、【乱れ】【崩れ】系統のBSを受けることがあります。
・『教官』ウズミ
子供たちを従える男。かなり強いですが、単純な性格で思い込みの激しい男です。「外堀を埋めれば彼の方は立ち上がってくれるはずだ!」と強く信じています。
仲間もいるようですが、現在この場にいるのはウズミのみ。子供たちを解放するには絶好のチャンスです。
攻撃力は恐るべきものです。全力で防御しようとしてもかなりのダメージになるでしょう。攻勢を得意とし、守勢を苦手とします。BSありの攻撃手法があるかは不明です。
・猛犬×3
子供達の鍛錬を見張る犬。ただの犬と侮るなかれ、その牙と爪は非常に凶悪です。子供たちがサボろうとすると追いかけ回して噛みつきます。
皆さんのことも視認すれば、追い払うべく襲ってくるでしょう。
防御には優れていませんが、反応はピカイチです。殺られる前に殺るタイプです。【出血】系統のBSを受けることがあります。
●フィールド
人と人がすれ違える程度の狭めな路地です。人気はありません。
奥へ進めば子供達の強制鍛錬場があり、そこそこ広いです。そこには門番の如く躾けられた猛犬がいることでしょう。
●NPC
・子供達×6
10代前半ほどに見える少年少女。その正体は『佐伯製作所』の学生です。彼らは「ゲームで遊んでいたらログアウトできなくなった」そうです。希望ヶ浜の住民のため、混沌世界の外の出来事には関知しません。粛々と助けてあげると良いでしょう。
彼らは望まぬ鍛錬を強いられていますが、意志は未だ確かです。帰りたい気持ちでいっぱいです。
●ご挨拶
愁と申します。
他を押さえて猛犬を撃破すれば子供たちは逃げ出せますが、倒すにしても倒さないにしてもリスクを負うことにはなるでしょう。
それでは、いってらっしゃい。
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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