PandoraPartyProject

シナリオ詳細

密猟者を捕まえろ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 深緑、迷宮森林。
 巨大樹木ファルカウの周囲を覆うように様々な樹木が覆う大樹林。
 多才な生態系に彩られた生命豊かな場所だ。
 ハーモニアを主体とした部族社会も多くみられ、自然豊かではあるが、人間の手が入っている所も時折みられる。
 中で暮らす者達にとっては慣れ親しんだ場所ではあるが、自然の脅威も数多く、外部からは容易く侵入できない。
 それだけに迷宮森林の中は、それ以外の国の人間から見ると、価値のある物も少なくなかった。
 だからこそ、その『価値ある物』を狙う者も――

「リザちゃん、こっちでも罠に掛かってる」
 首に縄の掛かった『ソレ』を見つけたクルル・クラッセン(p3p009235)は、自分と同じハーモニアであるリザを呼んだ。
「これ、どうやって取れば良いのかな?」
 じたばたもがいている、猫ぐらいの大きさのリスに見える生き物――シリミスカーバンクルを、どうしたものかと扱いに困る。
 するとリザが近付き、手慣れた様子で助け出す。
「こういう時は、まずは首をキュッとして――」
 笑顔でシリミスカーバンクルの首をキュッと締めると、ぐったりと動きが止まる。
「大丈夫!? 死んでない!?」
「大丈夫です、偽死行動に入っただけですから。今の内に――」
 するっと首に掛かった縄をほどく。
 罠から解放してやると、リザはシリミスカーバンクルを確認。
「うん、大丈夫です。他に怪我もないですし」
(意識は失ってるみたいだけど……)
 ツッコミを入れるか迷ったが、止めておく。
 フィールドワーク好きな研究者タイプのリザに、常識的なツッコミを入れても無駄なんだろうなぁと思うからだ。
(こういう性格なんだ)
 少し前、奴隷にされそうな所を助けてあげたことがあったのだが、その時は外見が儚げな美少女といった見た目だったので、こんな性格だったとは思いもしない。
 その時助けたあと、豊穣に筍を採りに行く依頼を受けたことがあったのだが、今回は別口の依頼だ。
「密猟者は、近くに居ないみたいだね」
 念のため周囲を探索する。
 シリミスカーバンクルの密猟者を捕まえて欲しい、というのが今回の依頼だ。
 本格的に対処する前に、今は軽く調査をする程度にしているのだが、それだけで簡単に密猟者の痕跡が見つかった。
「人数が多そうですね。やっぱり、ローレットに依頼を出した方が好さそうです」
 偽死から目覚めてバタバタ暴れ始めたシリミスカーバンクルの首根っこを摘まんでぶら下げながらリザは言う。
「幸い依頼料はリリスさんとヴァンさんが出してくれるそうですし、後で頼みに行きます」
 リザは植物研究者なのだが、その知識と技術に目を付けた商人、リリスどヴァンから支援を受けている。
 鉄帝での食糧増産にも力を貸すらしいが、その見返りとして、リザの支援を惜しみなく行っていた。
「この子達の数が減ると拙いんですよね」
 クルルに、シリミスカーバンクルを見せながらリザは説明する。
「この子達、害虫になる虫を探し出して食べてくれるんです。そのお蔭で、この子達の居る場所の植生は保たれてるんですけど、このまま進んだらバランスが崩れて大変なことになっちゃいます。だから、この子達を捕まえるのは禁止されてるんですけど――美味しいんですよね、この子達」
 ビクッ、と体を震わせるシリミスカーバンクル。
「……美味しいんだ」
「ええ、とっても! 特別な日のご馳走です!」
「リザちゃん達も食べちゃうの!?」
「大丈夫です! ちゃんと生態系のバランスを考えて飼育したのを食べてます!」
 満面の笑顔で応えるリザ。
 見た目儚げな美少女なので違和感半端ない。
「美味しいだけじゃなくて、毛皮も凄く手触りが好くて良いんです。あと臭腺の所に、高価な香水の元になる物が取れますし。まったく無駄が無くて良いんです。だからといって考え無しに獲られたら、生態系滅茶苦茶になるので止めないとダメなんです」
「だから密猟者を捕まえないと、ってことだね」
「はい! これから依頼を出しに行くので、都合が合えば力を貸して貰えると助かります」
 リザの申し出に、どうするか考えるクルルだった。


「深緑に行って、密猟者を捕まえて欲しいのです」
 招集されたイレギュラーズに向けて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の詳細を説明してくれる。
「密猟者が出て来そうな場所は目星をつけてるみたいですから、そこに罠とか張っても良いかもです。現地の人達が協力してくれるそうなのです」
 迷宮森林を生活圏にしている人達が手を貸してくれるらしく、大抵の罠は、要望があれば作ってくれるそうだ。
 詳しい話を聞いたイレギュラーズ達は、現場である海洋に向かうことにした。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
18本目のシナリオは、アフターアクションでいただいた内容を元に作った物になります。

そして、以下詳細になります。

●成功条件

密猟者の捕縛

●密猟者

お金になるシリミスカーバンクルを密猟に来ている。
現地の人が何度か止めてくれるよう頼んだらしいが、無視して密猟を続けている。

最低でも8人以上。
ご参加いただいた人数やレベル帯で、強さや人数に多少の差が出ます。
ですので、新規にご参加いただいた方でも気軽にご参加いただけます。

弓矢を使った遠距離攻撃と、刃物を使った近距離攻撃が出来ます。
HPがそこそこ高くしぶとい代わりに、他はそれなりな強さ。

逃げ足は速いです。
ですので、何かしら罠にかけて足止めして一気に叩いたり、逃げられないように囲んだり、あるいは速攻で叩くなどが必要です。

過半数以上を捕まえていれば、失敗にはなりません。

依頼人や現地の人達は捕まえたいとは思ってますが、殺したいとは思ってないので、捕まえて欲しいという要望です。
捕まえたあとは、現地で拘留して対応してくれますので、捕縛して拘束した密猟者を現地の人に渡して下さい。

●戦闘場所

密林の中での戦闘になります。
シリミスカーバンクルを捕まえるために罠が張られているのですが、そこにやって来た相手を捕まえます。
密猟だけなら少ない人数で複数の箇所を分担して回るのが効率的ですが、見つかったら現地人との争いになるため、多人数で固まって動いています。

密林の中ですので、樹木が遮蔽物となりますし、移動も多少ですがし辛いです。

密林ですので、多少離れていれば隠れるのは容易です。

●罠

現地の人達に頼んで、罠を仕掛けることが出来ます。
基本は、大抵のものは作って仕掛けてくれますが、殺傷力が高い物は難色を示される可能性が高いです。

自由にプレイングにてお書きください。

罠は必須ではないので、プレイングに書いても書かなくても問題ありません。

●流れ

今回の流れは、

1 現地に到着。
2 密猟者が現れる場所で待ち構える。
3 密猟者を捕まえる(事前に罠を仕掛けておくことも可能)。
4 捕まえた密猟者を引き渡して依頼完了。

という流れになります。

●依頼人

リザ

ハーモニアの植物研究者。
多分、錬達とかでも順応して研究できるタイプ。
戦闘力は無いですが、罠を仕掛ける手伝いや、密猟者を捕まえたあとに受け取って連れて行く役割をしてくれます。

現地の人達

密猟者を放置すると害虫だらけになるので割と切実。
なので、皆さんに対する期待感は大きいですし、手伝いも快くしてくれます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 説明は以上になります。

 それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • 密猟者を捕まえろ!完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月23日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き
メイル=O=サマー(p3p009652)
いつの間にかいるイケメン
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

リプレイ

 深緑での密猟者捕縛依頼を受け、『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)は静かに怒っていた。
「私欲で森を傷つけた者に相応の罰が下るのは、深緑では当然の掟です」
 とはいえ、やり過ぎるつもりは無い。
「私とて無益な殺生はしたくはありませんから、生かして捕らえてほしいという依頼は有り難い限りです……生憎私の火力だと、うっかり消し炭にしてしまうかもしれませんけれど」
「消し炭は、ちょっと……」
 人死にが出ると気まずいのか言いよどむ依頼人。
 それにエルシアは応える。
「でも……それくらい恐ろしいところを見せないと、彼らの反省も口ばかりになってしまいますよね。幻想種の怒りを買う行為がどれほど愚かな事か、心に刻み込んで差し上げましょう」
「そいつは良い。しっかり刻んでやろうぜ」
 エルシアの言を受け、『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)は笑みを浮かべる。
「道徳や倫理やルールじゃ、縛りとしてはイマイチだ。ハナから守る気の無い連中にしてみればケツ拭く紙にもなりゃしねえ」
 元の世界も込みで何か思う所があったのか、実感を込め続ける。
「これまでも密猟が成功していたように、これからもずっと密猟され続ける可能性だって無くはない。抑止力は温厚。リスクは少なくリターンは大きい。きっと連中、辞める理由を探す方が難しいぜ」
「確かに」
 ブライアンに同意する様に返したのは、『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)。
「話を聞く限りだと、何度か止めて貰えるよう頼んだみたいだけど、効果が無いみたいだからね」
 依頼人から詳細を聞いたウィリアムは、抑止を考え自分の意見を口にする。
「密猟は……ほんの少しだけならまあ許せなくもないけど……過ぎた欲は身を滅ぼすよ。森を巡る命の環を壊そうとするならば痛い目にあって貰おうか」
「ああ、それが良い」
 ウィリアムに応えるように、『死神二振』クロバ・フユツキ(p3p000145)も続ける。
「一つここは締め上げて己の行いをどこまでも後悔してもらおうじゃないか。とはいえ、そうなると方法が――」
「罠を仕掛けよう」
 クロバに応えるように、『観光客』アト・サイン(p3p001394)が提案する。
「殺さず生け捕りにするなら、それが良い」
「罠か、いいな。となると、どんな罠がいい? 死なない程度の殺傷力の低い罠……アト、なんかいいのないか?」
 クロバに尋ねられ、アトは間を空けず応えた。
「幾つかあるが、場所によって最適な物は変わってくる。まずは現地に向かった方が良いだろう」

 という訳で、皆は密猟者が出没するであろう、罠の掛けられている場所に向かう。
 するとそこには、罠に掛かったシリミスカーバンクルがいた。
 手慣れた様子で現地の人が罠から外し首根っこを掴んでぶら下げる。
 見た目は生きたぬいぐるみという感じでかわいい。

「ふさふさシリミスカ―くん……!!」
 見た目が愛らしいので、『特異運命座標』キルシェ=キルシュ(p3p009805)が目を輝かせる。
「抱っこしてもいいかしら?」
 触れてみようと手を伸ばすのだが、バタバタ暴れるシリミスカーバンクル。
「野生の子なんで慣れてなくて危ないです」
 依頼主のリザに言われ、残念そうにするキルシェ。
 するとリザが言った。
「村で育ててる子の中には人に慣れてる子もいるので、あとで触ってみますか?」
「いいの!?」
 喜ぶキルシェ。
 2人の会話を聞いていた『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)が口を挟む。
「それって、食用の……」
 これにリザは、にっこり笑顔で返す。
「大丈夫です。罠に掛かって保護してた子ですから。本当は森に戻したかったんですけど、人に慣れ過ぎて戻したら死んじゃうので育ててるんです」
「そうなんだ。んー、それにしても――」
 バタバタ暴れるシリミスカーバンクルを見詰めながらクルルは続ける。
「利用価値が高いなら、狩られちゃうのも仕方ないのかなー……とは言え、それで乱獲して生態系のバランスを崩されちゃ堪んないよね?」
「ええ。最悪森の一部が枯れちゃいます」
「それは由々しき事態」
 リザの話を聞いて、『いつの間にかいるイケメン』メイル=O=サマー(p3p009652)が言った。
「森はな、大事にせねばならん……だってほら、情景で余の姿がもう映え映えになるから♪」
 緑濃い森を背景にポージング。
 気のせいか、キラめいている。
「何だか、目立ちますね」
「むむ、それはいかん」
 リザに言われ、メイルは悩む。
「密猟者を捕まえるために潜まねばならぬというのに。余のイケメンオーラを隠す必要があるな」
「巧く隠れるのは大事だな」
 メイルに続けて、クロバが言った。
「出来ればギリースーツみたいなのが作れると良いんだが」
 話を聞いて現地の人達は、迷彩用の材料が村にあると言い、他の材料も用意するために村に訪れる。

「余の影武者になる人形が欲しいのだ」
 村に到着し頼むメイル。
 村人が了承すると、自分の写真を配るメイル。
「これも罠のためだ。遠慮せずに」
 人形を作るために貰う村人。
 他にも罠に必要な物を用意して貰う中、飼われているシリミスカーバンクルを撫でているのはキルシェとクルル。
「可愛い」
「可愛いね」
 人に慣れてるので存分にモフりながら、密猟者狩りに意欲を増す。
「可愛いかなーって思っちゃうと、なんかもう密猟はちょーっと許せないかなー! だから今日も悪漢退治ー……がんばろーっ!」
「がんばろーっ!」
 ぐぐっとガッツポーズを取るクルルとキルシェ。

 必要な物を手に入れて、再び罠を仕掛ける場所に戻る。
 罠を張るのに中心となっているのは、アトだ。

「逃走経路から考えると、この辺りに仕掛けるのが良い」
 周囲の地形を実際に歩いてみて確認した後、手慣れた様子で罠を仕掛けていく。
 罠の配置として、密猟者が入り込んだら追い立てて包囲できるよう、道筋を作っていた。
 手際が良く、現地人も感心する。
 なので、イレギュラーズ達もアトに要領を聞きながら作っていった。
「アト、落とし穴、この辺りで良いか?」
「そこなら、ちょうど良い。深さはそれほどなくても構わない。足が嵌って動きが鈍るぐらいで十分役に立つ」
 クロバに応えながら、アトは一緒に穴を掘る。
 そこにブライアンも手伝う。
「落とし穴に嵌めるだけじゃ生温いな」
「なら、落とし穴の底には折って尖らせた木の枝を差し込んでおこう。村で動物の糞尿も貰って来た。それを塗っておけば刺さった後に、破傷風になると脅しにも使える」
「そいつは良い。しっかり痛い目を見せとかねぇとな」
 ブライアンは笑みを浮かべ応えると、テキパキと罠を作っていった。

 罠を張っている間に、自然会話のスキルを持ったウィリアムとエルシア、そしてクルルとキルシェは周囲に分かれ、情報収集をしつつ状況を整えていく。

(こちら側からは、侵入してないみたいだね)
 自然会話で植物から情報を読み解くウィリアム。
(蔓や蔦も多いし、こちら側だと逃げ出すのも苦労するから、逃走経路にはならないな)
 確認すると、罠を張っているクロバ達の元に情報を伝え、それを元に罠の効果を高める。
 同じように、エルシアも情報を探る。
(こっちは、獣道ですね)
 足元だけでなく、樹上も確認する。
(シリミスカーバンクルは、木を伝って移動してるみたいですね。跳び移って移動して、地面はあまり移動しないみたいですから、それを追う密猟者の動きは捉え易い)
 密猟者の予想経路を伝えに、罠を張っているアト達の元に行く。
 その間に、クルルとキルシェは残った場所を確認しつつ、シリミスカーバンクルが近付かないようにしていた。
「みんな、シリミスカーバンクルたちどこにいるか教えてくれる?」
 木々から得た情報で、近くに居たシリミスカーバンクルを見つけると、呼び掛けるように言った。
「あのね、みんなが安心して暮らせるように密猟者を捕まえて簀巻きにするから暫くここから離れててくれる?」
 シリミスカーバンクルはイレギュラーズ達を見たあと、何かを感じ取ったのか逃げていった。
「これで良し。あとは捕まえるだけだね」
 やる気を見せるクルルに、キルシェも意気込む。
「密猟者は捕まえて簀巻きです! だからリザお姉さんも安心してね!」
「頼もしいです!」
 笑顔で喜ぶリザ。
 罠と探索が進む中、メイルは人形を設置していく。
「大量の余が居れば、密猟者達も足が止まるに違いない」
 予想される逃走経路に設置して、そのままではイケメンオーラまで再現できないので、いざという時は現地人が幻影の類を使ってくれる準備をしていた。

 準備は整う。
 各自、迷彩用のギリースーツを羽織り、気配を抑えて密猟者達を待つことに。
 そして、密猟者達はやって来た。

●密猟者を捕まえろ!
「1匹も掛かってねぇぞ」
「どういうこった」
「幻想種共のせいじゃねぇか」
 罠を確認した密猟者達に険呑な空気が広がる。
 そこで、一番最初に動いたのはキルシェだった。
(もう少し、こっちに誘導しないと)
 罠の配置から少し連れている密猟者達を誘き寄せるため、ドリームシアターを発動する。
 作り出す幻影の精度はイメージの強さに比例するのだが、村でシーミスカーバンクルを思う存分もふった甲斐があり、迫真の幻影になった。
「おい、1匹いやがったぞ!」
 逃がしてなる物かと殺気立った表情で幻影を囲んでいく密猟者達。
 十分に引きつけた所で、一気に跳び出したのはクロバだった。
「死なないけど死ぬほど痛いから覚悟しとけよ」
 瞬速の踏み込みで、一瞬で抜刀の距離に到達。
 あまりの速さに密猟者達は反応出来ない。
 振るわれる、昏ノ太刀・滅影。
 銀髪紅眼へと変じたクロバは、鬼気による黒炎と殺意を纏い、眼前にいる敵を全て斬り刻んだ。
 悲鳴が上がる。
 それが途切れる余裕すら与えず、体格の良い相手の背後に回り神気斬界・暁焔。
(殺さないように)
 不殺を意識し峰打ち。
 しかしあまりの威力に、そのまま敵は倒れ伏す。
「”死神”に狙われて生き残れるだけ幸運と思ってほしいものだね」
 ひとり倒し、なお余裕なクロバに敵は逃げようとするが、潜んでいたイレギュラーズが一斉に攻撃した。
(逃げられない様に先回りして)
 キルシェが体の小ささと機動力を生かして立ち塞がると、迎え撃つより早くエルシアのキツい一撃が叩き込まれる。
(リーダー格を、最初に沈める)
 全身の力を魔力に変換し放たれた熱線は、密猟者達に指示を出していたリーダー格に命中。
「ぎゃあっ!」
 全身を焼かれ転げまわるリーダー格。
 リーダー格が攻撃され浮き足立っている密猟者達に、エルシアは間髪入れず嘆きの祈りを展開。
 精神を揺らした所で、言葉で更に動揺を誘う。
「降参するなら命ばかりは助けましょう……」
 嘆きの祈りを使った後ということもあり、密猟者達の何人かは怯んだように動きが止まる。
 それを見ていたキルシェは感嘆。
(エルシアお姉さんの一撃凄いわ……!)
 感心しつつ自分も負けじと魔弾を撃っていく。 
 その間もエルシアは後方狙撃。なぜなら――
(私は攻撃されたら弱いんですけれど!)
 表情には出さず、敵に近付かれないよう味方の後ろに隠れながら撃っていった。
 狙撃で敵の足並みを乱すのは、クルルも同じだ。
(殺さない様に、逃げられない様に)
 敵の足元を狙い弓を射る。
 放たれる矢はアルラウネの口付け。
 腿を斬り裂くように射られた一撃は傷口から媚毒を広げ、腰砕けるように倒れ伏させた。
 仲間の被害を見て――
「くそっ、一端距離を取れ!」
 まだ冷静な者も居たのか指示を出し、一斉に逃げ出す密猟者達。
「こらぁ、逃げないの! ……逃げるなーってばーっ!」
 当然、クルルは追撃。
 だが敵の人数が多いので捉えきれなかったが――
「ぎゃあっ!」
 数々の罠が襲い掛かる。
 しなった木の反動を利用して釣り上げられる者や、落とし穴に仕掛けられた枝が突き刺さる者など多種多様。
 それはアトの手による物が多い。
(ゲリラが潜む森で密猟を行うことがどれだけ命知らずか分からせるとしよう)
 周囲の罠と地形を把握していたアトは、するりと罠に掛かった敵の間合いに踏み込むと麻沸扔刀。
 ナイフに塗られた薬剤で静かになった者を示しながら、残った敵の意志を刈るように言葉で威嚇。
「この森は最早君たちの命すら預かっている狩場だ。命とか脚とか惜しかったらさっさと武器捨ててその場に這いつくばるんだね」
 何人かは怯むが残った者が死に物狂いで襲い掛かろうとする。
 それをブライアンが迎撃。
「ハッハー! 溜まったツケを払う日が来たぜ!」
 逃げられないよう名乗り口上で注意を引く。
「低いはずのリスクに見事的中だ! ジャックポット!」
 クレセントサイズで斬り裂きながら立ちはだかる。
「なにせ今回狩られるのはオタクらなんだからよ!」
 アイアースで護りを固めながら、敵を引き付ける。
「オタクらにとっての『イレギュラー』は此処に居るぜ!」
 不敵に笑みを浮かべながら迎え撃つ。
 とはいえ、戦いの狂騒に流されないようにもする。なぜなら――
(……罠を用意して隠れて待ち伏せるのが楽しいなんて、思っていても口には出せねえな。マンハントが趣味だなんて思われたら著しくイメージダウンだ!)
 なにせブライアンは紳士たるタフガイ。
 だからこそ、密猟者を狩り獲るよりも味方を守ることを意識して、盾役としても動く。
 戦いは激しさを増し傷を負う者も居たが、ウィリアムが回復役として走り回る。
「回復します」
 一声掛けてメガ・ヒールで治癒。
 回復させるとすぐさま他の仲間の元に走り、更なるメガ・ヒール。
 ダメージコントロールに奔走しながら、敵の牽制も緩めない。
(逃げられないよう誘導しないと)
 幻影を使い生み出した狼で、敵の逃走を阻む。
 驚いて方向を変え逃げようとした所に、神気閃光を放つ。
 攻撃を受け動きが鈍った敵に、仲間のイレギュラーズが追撃。
 それを目の端で確認し、再び回復に奔走した。
 イレギュラーズ達の猛攻に密猟者達はガタガタ。
 それは罠で敵の勢いを思いっきり削っていたことが大きく寄与している。
 この場に踏み込んだこと自体が、すでに密猟者達にとって敗北だった。
 それを感じ取ったのか、密猟者達は戦いよりも逃走しようとする。しかし――
「余の威光を見るがよい!」
 メイルの設置していた人形が立ちはだかる。
 現地人の協力で見た目だけでなく声も響き、どれも本物のように見えた。
(ふむ、いかんな)
 あまりの出来の良さに、メイルは心配になる。
(逃走ルート限定のため、アヤシイ場所を作って避けさせる。とのことだが、人形に魅了されて逆に引き寄せられない? ……あ、露骨に避けたね)
「余の威光に恐れをなしたか。いいのに」
 残念に思い、ならばと自分自身で歓迎する。
「ジャーン! 本物の余だよ!」
 敵の逃走経路に立ちはだかり魔砲を一発。
 1人吹っ飛ばしつつ残りが突進してくるので、牽制代わりに一刀両断。
「刀流だけど一刀両断! ぷぷ!」
「舐めてんのかあぁぁっ!」
 激昂した相手の攻撃をギリギリで避けると蹴戦で頭を蹴り抜く。
「ジ・エンドだ。余の脚線美に惚れるがいい」
 決めポーズをするも、複数人が襲い掛かって来るので回避に専念。
 そこにイレギュラーズ達が援護する様に攻撃に加わり、密猟者達を一網打尽にした。

 戦い終わり――

「森の生態系を乱すと罰が当たるって事、嫌になる位教えてあげるからー……大いに反省してネ!」
「今回は穏便に済ませたけど、あんまり話を聞かないようなら次はフルルーンブラスターを叩きつけるからね」
 クルルやウィリアムがキッチリと言い含める。
 そして後始末もしっかりと。
「カーくんたちお待たせ! もう大丈夫だから、安心して暮らしてね!」
 キルシェは皆と協力して罠を解除していき、シリミスカーバンクル達にも呼び掛ける。
「あれだけいるなら、大丈夫だな」
 シリミスカーバンクルの生態の確認をしていたクロバの言葉に一安心。
 そうこうしている間に、罠の掃除も進む。
「森は綺麗に、余も美麗に!」
 張り切るメイル。
 掃除が終わり残った人形を、折角なので現地人に配った。
「魔除けに使うのか? さすがの余の威光」
 後日、案山子の如くメイル人形が使われたのであった。

 かくして依頼は完遂される。
 密猟者達を全て捕まえ、森の生態系の維持に一役買ったイレギュラーズ達であった。

成否

成功

MVP

アト・サイン(p3p001394)
観光客

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!
今回は、罠と戦闘自体のプレイングで優位さを判定させていただいていたのですが、罠や穏行のプレイングがしっかりとされていたので、戦闘が始まる前から、イレギュラーズの皆さんが圧倒的に優位に。
その後の戦闘に関するプレイングも、連携を意識され巧く書いていただけましたので、終始イレギュラーズの皆さんが優勢のまま押し切りました。
密猟者達は、きっと涙目になっていたことでしょう。
捕まった密猟者達は、皆さんに痛い目に遭わされたこともあり、さすがに懲りてます。
とはいえ生活も掛かっているということで、現地の村人達は何がしらの落としどころを取るようです。
なので今回のシナリオは、平和エンドで終わりました。
お蔭で依頼人達もにっこりです。
では、最後に重ねまして、皆さまお疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM