PandoraPartyProject

シナリオ詳細

アイツ蛹なのに瓶とかドロップするんだぜ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●なお瓶の中に稀に未帰還者がいるものとする
 ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。
 規則的な胎動を繰り返すそれは、誰がどう見ても虫の蛹だ。先程まで草むらを歩いていた非アクティブ(先制攻撃をしてこない)モンスターである芋虫が、スキルゲージを消費して変化した姿である。
 その変態は突然であり、生物的な様子が薄い……なんというか、「ああ、ゲームやってるんだな」というノリで変態した。これが更に羽化し、そこそこ大きな蝶型モンスター(けっこうつよい)になるそうだ。
「ギャシャシャシャシャシャシャ…………っ!」
 そんな蛹を必死に切り裂き、液状化した中身ごとぶちまけたのは『イモ食え』ぱぱにゃんこ (p3y000172)。粘液で汚れた爪を砂で拭ってから、その猫は居合わせた仲間達に向き直る。
「まあこんな感じで、蛹をボコすにゃ。そうすると……」
 そのセリフに一拍遅れて、残骸からいきなり生成されたかのように空き瓶が飛んでくる。片手で持てる、500cc程度は入る大きさのそれはシステム的に発生したにもかかわらず、あたかも体液を浴びたようにぬらぬらと濡れ光っている。
「こういうのが『たまに』ドロップするにゃ。こいつは飲み物と交換したりクエストの依頼品だったりするにゃ。設定的にはそこかしこに放り投げられた空き瓶を芋虫のときに取り込んだって設定にゃが、何でか芋虫を倒してもドロップしないにゃ。飽くまで蛹にならないといけないにゃ」
 よくわからないが、システム的なルールとかそういうものがあるのだろう。
「で、ここからが本題なんにゃが。どうやら『ネクスト』で消息を絶った連中がこのフィールドのどこかの空き瓶に紛れてるらしいにゃ。まー、ドロップテーブルはそこまで渋くにゃいから根気勝負だと思うにゃが」
 が、と言葉を止めてから、ぱぱにゃんこは顔をしかめた。
「この瓶、ドロップ状態だと『汚れた空き瓶』にゃ。これを洗って『空き瓶』に変換すると、稀に『【〇〇が囚われた】空き瓶』が現れるのにゃ。その場で結果がわからねえのが曲者にゃ」
 つまりは、瓶を集める係、瓶を洗う係(兼救出係)に別れなければならないらしい。
「ちなみに、芋虫はすぐに蛹になるから遭遇してビビったりしなくていいにゃ。ほっとくがいいにゃ」
 本当にそんなもんで大丈夫なのだろうか……? 一同はちょっと不安になった。

●なお
 小刻みに振動する蛹があたり一面に点在しているなか、メンバーの1人が毛色の違うものを見つけた。
 それは灰褐色で楕円形、振動しているのは蛹と同じだがやや硬そうな……卵だった。
 ピシッ、という音と共にキャストゲージが伸びると、次の瞬間その殻が割れ……。
「アリだーっ!?」
 数体の蟻型モンスターが、襲いかかってきた。

GMコメント

 瓶は用途が広いので収集クエストの鉄板になっているらしいです。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

●成功条件
 【囚われの】空き瓶全回収

・クエスト関連データ

●【囚われの】空き瓶×推定10
 『ネクスト』からの未帰還者が空き瓶にとらわれている状態です。原因は現状不明。
 これを入手するには
 「蛹型モンスター討伐」→「たまに出る空き瓶を入手」→「洗浄結果ランダムで出現」の手順を取る必要があります。
 なお、蛹は一定時間経過すると蝶型モンスターへと羽化しますが、進化直後は非アクティブです。
 進化前後で叩いてしまい、ターゲティングされる可能性にご注意下さい(前兆があります)。

●空き瓶
 色々使います。アイテム配布とかされたりしませんが回収して損はないでしょう。

・エネミーデータ

●蛹型モンスター
 攻撃してきません。頑丈さは中の下。根気強く攻撃すれば確実に潰せます。
 蛹化後、時間が経ちすぎている個体だと羽化の危険性が高まります。

●蝶
 上記の羽化後です。
 落ち着いて対処すれば倒せますが、単独ではまず無理です。鱗粉によるスリップダメージを受けつつになるので、集団での短期決戦か治療役が必要かも。羽化前に攻撃を止めればタゲられずどっかに去ります。

●蟻の卵
 蛹のなかに稀に混じっています。破壊すると確定で瓶が手に入ります。代わりに、孵化すると蟻2~3体が纏めて出る上、これらはアクティブモンスターです。

●蟻
 卵が孵化すると複数出現し、集中攻撃をしてきます。銭湯が長期化するとどこからともなく蟻がポップし、増えていきます。こっちはマジで短期決戦に持ち込まないと死者累々かもしれません。

●フィールド情報
 『正義』の森林内。
 今回は当該国家で薬瓶が不足しているため収集を要請されたクエスト、という位置づけです。

※重要な備考

R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • アイツ蛹なのに瓶とかドロップするんだぜ完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

すあま(p3x000271)
きうりキラー
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
シラス(p3x004421)
竜空
WYA7371(p3x007371)
人型戦車
ロロン・ホウエン(p3x007992)
カラミティ・クリエイター
アンジェラ(p3x008016)
当機、出撃す
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
梔子(p3x009181)
カムサリ

リプレイ


 平原を駆けるやや乾いた空気に、草葉の香りが乗って漂ってくる。そうといわれなければ、ここが仮想空間であることを忘れてしまいそうなほどにこの地は『現実』を感じさせてくる……周囲の異様な蛹の多さとか、そういうのを除けば。
「ふうん、そんな風に帰られなくなる奴らが出てるってわけね。すっかりゲーム気分だったけれど真剣な話だってのを思い出したぜ」
 『シラスのアバター』シラス(p3x004421)はひとしきり説明を聞き終えると、神妙な顔で頷く。フルダイブ型MMOと聞けばなるほど、聞こえはいいのだろうが、実態はこの通り過酷なのである。どうして瓶にされたのかは皆目見当もつかないが。
「如何にもゲームでございって内容のクエだわな。瓶に入れられた連中は、そう気軽には受け止められねぇだろうけど」
「需要も多い物なのでそう遠くない内に救助されたかもしれませんが、やっぱりアイテムに変換されるのは大変ですよね……」
 『Lightning-Magus』Teth=Steiner(p3x002831)と『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)も、『瓶にされた』という事実に直面すると緊張の色が濃い。もしも自分がそうなったらどれほど不快か。そうなっている被害者を慮ればその不快感たるや……。
「仮想空間だからなんでもありとはいえ、ここでしか生きられない身だと夢を強調されてるようでちょっと複雑ね……」
「お金だけじゃなくてご飯もくれるクエストだったらもっと楽しめたのにね」
 『カラミティ・クリエイター』ロロン・ホウエン(p3x007992)は諸々の事情を思い浮かべ、複雑な表情を見せた。『混沌』の人間にとってはひとときの夢に等しいが、彼女にとってはその限りではない。『CATLUTONNY』すあま(p3x000271)はその顔を見て何事か曲解したのか、鎧の同居人『ラダ』の胴を叩きつつ同意する。そして、2人の言葉に得心したように『イモ食え』ぱぱにゃんこ (p3y000172)は両前足を突き出し、拝むように念じ始めた。
「ニ゛……ゃっ」
 ややあって荒い息を吐いた猫の手元に現れたのは蒸し芋数個。ぱぱにゃんこはそれをロロンとすあまに渡すと、その辺を這い回る芋虫に視線を移した。
「ニャつらもまあ、虫にゃので生存本能くらいはあるにゃ。蛹になる前にちゃんとゲージとか出るからむやみに殺しちゃダメにゃよ」
「囚われた人達を少しでも早く助け出せるよう、わたしなりに精一杯頑張ります。みなさんよろしくお願いします!」
 『☆癒しの花☆』梔子(p3x009181)は溌剌とした表情で仲間たちに一礼してから、ちらりとそこらじゅうを這い回る芋虫を見やる。大きさにして成人男性の脚2つ分の厚さと長さを持つそれは、正直頼まれてもあまり近づきたくはない。『本人』は虫など気にしないのだが、体裁として『少女が虫を忌避しないわけがない』のである。
『依頼遂行にあたり皆様の御助力を賜ります。どうぞ宜しくお願いします』
「戦場への投入完了。救出作戦開始します」
 『人型戦車』WYA7371(p3x007371)と『AIをください』アンジェラ(p3x008016)は静かに挨拶を交わすと、恭しく待機姿勢に入った。かと思えば、WYA7371のコックピットが開き、中から操縦手が顔を出す。
「よーし、それじゃ張り切っていきましょうか!」
「そういえば、洗い場近くから始めるんだよね」
「そうですね、洗い場の周りで十分集められるほどリポップするなら御の字ですが……」
 操縦手ことウィズィはすあまの問いかけに頷くと、すぐそばを流れる川に視線をやる。周囲にはそこそこ蛹が固まって配置されているし、近くを芋虫が移動している。少なくとも、最序盤は川辺での狩りでいけそうだ。
「じゃあ、わたしは蟻の卵を優先して壊していきますね。……羽化や孵化ってシステム上分かるんですか?」
「もちろん。ミーは可能な限りユー達を採集依頼ごときで死なせたくねえから情報収集はしてあるにゃ」
 梔子の問いにぱぱにゃんこはのびをするような姿勢(胸を張っているつもりだ)で応じた。最低限、情報源としての仕事はするらしい。
「ミーも卵は優先的にブッ潰すけど一匹じゃ限度があるニャし、こっちのミーは治療メインにゃからあんまし期待すんにゃよ」
「蝶との交戦は避けてぇな」
「そうだな、長時間蛹のままのやつは羽化しやすいから避けるとか、情報共有していこうぜ」
 Tethとシラスは蝶の出現が分かると知れれば、交戦を避ける方向で動くべく思案する。戦闘に自信があるのと、無用に戦闘を繰り返すのとは全く違う――2人はその点、賢いのである。


「あれが蛹ですね。卵同様、守りは硬いようです……でしたら」
 アンジェラは道すがら、見つけた蛹目掛けて長距離射撃を放つ。内部に浸透するような一撃はたちまちのうちに蛹のHPゲージを半ばほどまで削っていく。シラスはそれに合わせて接近すると追加で一撃。一瞬の間を置いてぼう、と燃え上がった蛹はそのままゲージもろとも消滅する。瓶はドロップせず。
「ふうん、思ったより脆いんだな。これなら一度火をつければサクサク狩れるかも」
「すぐ出るようなら、狩る数も少なくて済んだんだがな」
 残念そうに拳を拭ったシラスに、Tethもまた神妙に頷く。物事とは、なべて楽できないものであるらしい。
『ですが、倒すことは無駄ではありません。リポップ時間が分かれば過剰な期待や悲観をせずにすみます』
「そうね、狩ってるうちにおかしなことがあれば、私の勘がなにかに気づくと思うし」
 WYA7371の冷静な分析に、ロロンも頷く。彼女の勘が働けば、それは即ちシステムないし人為的な介入により蟻や蝶が発生する可能性を示唆する……かも、しれない。
「蝶は出てくる予兆があるそうですから心配しなくてもいいですね……あんな感じで」
 梔子がそう言って遠くの蛹を指差す。ひときわ大きく震えたそれは、キャストゲージが満タンになるや、羽化のプロセスをすっ飛ばして蝶がポップし、何処かへと飛んでいった。
「本当にゲームって感じですね、リアルすぎるとちょっと怖いのであれくらいがいいでしょうけど」
「美味しくなさそうだね」
「取り敢えず私が瓶を集めるから、皆さんは蛹潰しに集中してくださいね!」
「人は効率的だね。えらいね。でも時々ちょいめんどいね」
 カノンとすあまは和気あいあいと話しながら(少々会話がズレつつも)川べりまでたどり着く。すあまを抱えるラダは感情こそ見せないが、抱える姿勢を変えたりしつつすあまが不快にならないように腐心していたりする。
「硬い相手なら俺様のスキルの出番だな。そこそこ蛹が固まってるならそこを殴りゃいい」
「蛹になったばかりの奴から燃やしていくぜ。Tethのスキルは有り難いな」
 Tethは川べりで一度に攻撃できそうな蛹を見つけると、素早く一撃を叩き込む。威力こそ無いが守りの隙を生み出すそれは、作業効率という点で最高に近い。
「にゃるほど、ユー達は纏まってた方がいいにゃな。にゃら、ミーにその辺任せとけにゃ。ユー達は瓶集めにゃ」
「あっ、ぱぱにゃんこさん、芋虫はあっちの方に沢山いるみたいですよ!」
「勘がいいにゃ、カノン。じゃあそっちいってくるにゃ」
 ぱぱにゃんこはTethの言葉に得心したように頷くと、どこかへとふらふら歩いていった。ややあって、彼女が芋虫の行く手を遮る形で動きを誘導し、川辺に蛹を量産しようとしているのが分かるだろう。カノンは先んじて気付いていたらしく、川までの道すがら、群れを探していたというわけだ。
「えい!やあ!……なんだこの蛹固ぇ! っじゃなくてとても固いですね!!」
 梔子はTethのスキルで弱った蛹を滅多打ちにし、それでもなお堅固なそれについ『素』が出そうになる。だが素早くリカバリーすると再びぽかぽかと可愛らしい動きで蛹に殴りかかっていった。……プロ意識が凄い。
「出てきた……蛹の粘液に汚れた瓶」
『なかなかに粘液がこびりついていて、中身も不透明ですね』
「うわぁ、こりゃ洗わないとダメですね……」
 シラスがドロップさせた瓶をWYA7371が冷静に分析する傍ら、操縦手も中身や外側をしげしげと眺める。『【未鑑定】空き瓶』というシステムメッセージさながら、その実態は粘液の滑り具合のように、全く掴み所がない。
「べたべたしたので汚れる……きれいにしたいけどお風呂嫌……」
 すあまは蛹をテンポよく倒していくが、しかしその度に飛び散る粘液に悩まされていた。ラダは心配そうに見つめるが、ややあってすあまはその手から抜け出すと地面の砂に体を擦り付け始めた。粘液を砂で強引にはぎ落とすと、すあまは素早く次の蛹に飛びかかっていく。なお、ラダはそれを追って慌て気味に走る。
「……今の所、なにか意志があって蟻が出てきたりした気配はないわね? だとしたら完全にシステムの都合……?」
「……あの辺りに突然蟻の卵が現れたのも、システムでしょうか?」
 ロロンが蛹を処理し、瓶をカノンに投げ渡しつつ周囲を見て、自身の勘が全く働かないことに眉根を寄せた。他のプレイヤー、もしくはそれ以外の何かによる介入、広義での『テロ』がないかと警戒していたがそれもなし。……だが、瓶洗いに集中していたアンジェラが顔を上げた先に、それはあった。
「え?」
 一同が彼女の言葉に驚いて顔を上げると、ぱぱにゃんこが芋虫を誘導する背後に数個の蟻の卵……そして。
「蟻にゃーっっっ!?」
 お約束のような事態が始まるのだった。蟻の出現に合わせてどこからか蟻が集まる展開といい、システムの悪意がゲロすぎる。


『我が夢を見よ――』
「――電気羊ッッ!」
 WYA7371と操縦手の声がシンクロし、多数のビットが放たれる。周囲から集まってきた蟻は即座にそちらに顔を向け、後続の蟻達も彼女目掛けて突進する。
「蟻は噛むし美味しくないからきらい! 死ね!」
「俺様が守りを崩す、その隙にボコっちまいな!」
 すあまはTethのスキル発動を待って自らも攻撃を仕掛けに行く。敵の数が多い以上、排除は手早く行わねばならない。そういう意味で、この2人は極めて相性がいいといえた。ビットから放たれるチャフは絶えず蟻達を巻き込み、他者への負傷の拡散を防いでいる。
「この戦闘区域で蛹が羽化したらと思うと……ちょっと背筋が寒くなるな」
「ちょっとキミ、怖いこと言わないでよ……っと!」
 シラスが敵を捌きつつ最悪の想定をちらりと漏らすと、ロロンはげんなりとした顔で口元を歪めた。ありえない可能性ではないが、少なくとも今は巻き込まれた芋虫が無残な姿を晒すのみだ。
「大丈夫ですか? 少しですが、今回復します!」
 梔子はゆっくりとだが確実に減っていくWYA7371のHPゲージを見て、慌てたように治療に入った。直感ではなくシステムで体調管理ができる分、多少は楽だが……倒れれば死なので気楽でもない。
「たしかこの蟻はある程度倒せばリポップに時間かかるはずにゃ。卵の孵化もリキャストがにゃがい。これを耐えれば問題ないにゃ」
 ぱぱにゃんこの言葉に、蟻と対峙する者達は安堵の色を強くした。半数を倒してメンバーの被害は軽微、このまま行けば問題なく処理できそうだ。
「叩きのめしてやりますよ!」
『全弾一斉掃射。さっさと終わらせましょう』

「インベントリーに入れた時点で当たりハズレを判別できると凄い簡単だったんですけどね……っ」
「洗浄するまでは未鑑定の『物体』扱いなのでしょう、いかにも、ですね」
 カノンがべとべとの瓶をインベントリーに放り込み、アンジェラへと纏めて手渡す。インベントリーは生物を区別するが、飽くまで『アイテム』という括りのそれはそうもいかないらしい。手際よく洗浄を終えたアンジェラは、その中から怪しい光を放つ何本かをピックする。『Here!!』という文字と矢印が見て取れるそれが例の瓶であることは間違いなさそうだ。
「あといくつかなー。偶に出る瓶から偶に見つかるの集めるって意地悪だよ」
「よりによってこんな物に閉じ込められたくは無いよなあ」
 蟻を討伐し終えたすあまは、何故か蟻の群れから追加で出てきた瓶をつまみあげる(ラダが)。シラスはそれらを川辺に持っていき洗浄の手伝いに入り……ややあって、指先の感触に違和感を覚えた。
 思えば、彼の手先の器用さは生来のものと勘違いしそうになるが、その実ギフトの恩恵に与っているのである。それでも、常人としては器用な方だが。
「囚われてる方の瓶、調べるとシステムメッセージが出てきますね。『囚われの子羊を解放しますか?』Yes……っと」
「勝手に開放されたり割るんじゃないあたり製作者の根性悪……っ」
 梔子が【囚われた】空き瓶をタッチして確認ウィンドウを操作する姿に、すあまは顔を顰め、ラダはその感情を反映するように肩をすくめた。直後、囚われていたアバターが煙と共に現れる。……そして、それがイベントトリガーだったのか、洗浄班の側で【囚われた】空き瓶の出現率が激増する。ややあって、囚われた少年少女(一部成人)はその全てが開放されたのであった。
「しっかし。何をどうして、こんな瓶に閉じ込められる事になったんだ?」
「それが……よく覚えてなくて。何かおおきなものに襲われたのだけ……」
「ますますわからねぇ……」
 Tethは改めて、心からの疑念を籠めて救出された者達に問いかける。だが、全員が全員、揃って首をかしげるのだから困ったものだ。
「お腹すいた、帰ってご飯にしよー」
「そうね、終わったならそうしましょ。こっちでも食事はあるものね」
「そうですね! 私も賛成です!」
 だが、すあまはその辺欲求に素直で。ロロンもまた、『ネクスト』での生の実感を求めて食事を求めるのも無理からぬ話。カノンはその奔放なあり方に思わず同意を返したり。依頼を達成したという事実は、一同に確かな充実感を与えたのである。
「じゃあ、こいつらはミーが送り届けるからユー達はてきとうにしとくにゃ。街に行けばアバターで食べられる飯屋もあるにゃよ」
 ぱぱにゃんこはそういうと、ぞろぞろと救出対象を連れてサクラメントへと向かっていく。
 謎は少し残ったが、ひとまずは一件落着である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 虫はもう出さないってきめていたのに……つい……。
 ともあれお疲れ様でした。みなさんのスキルなども、名前はなくともすごく個性があるなあと感じる次第。
 あの蟻の群れでよく死者出なかったな。

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