PandoraPartyProject

シナリオ詳細

旅路の話をごゆるりと

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●寂しい夜の、ねがいごと
 寂しい夜。悲しい夜。誰かいないかしら。
 ふと見上げると、大樹の隙間から月明りがぼうっと差し込む。
 深緑特有の外の者との交流を阻むような生活に、ルマリア・ロッテンタードは少し飽き飽きとしていた。
 一切交流がない、というわけではないが、彼女はまだまだ外の世界を知るには早いと深緑の外から出たことがない。
 時々、アンテローゼ大聖堂で『灰薔薇の司教』フランツェル・ロア・ヘクセンハウス(p3n000115)に外の世界の話を聞く程度だった。
 ある日、フランツェルからルマリアに提案された。
 外の世界を渡り歩く冒険者たちと交流して見ないか? と。
 ルマリアは目を輝かせて勢いよく頷く。
 外の世界の人たち――ラサとはまた違う、ローレットと呼ばれる組織に属する人たちに出会えたのなら、何を聞こう?ああ、今からもう待ちきれない! 
 ルマリアにとって、父や母から渡された金ぴかの豪華な盃も、綺麗な宝石も、旅人たちからの話の方が輝かしいものに違いない。
 期待に胸を膨らませて、ルマリアは眠りに就く。
 ああ、楽しみだわ。だって、本当に来てくれるのなら、その日はとってもとっても素敵な日に違いない!


「みなさーん! お集まりいただきありがとうなのですよ!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は集まったイレギュラーズ達に満面の笑みで出迎える。
「今回の依頼は、とっても簡単なのです。深緑に向かって、とある女の子……名前はルマリア・ロッテンタードさんにお話をしてあげるだけなのです!」
 お話をするだけ、とは言うが向かう先で魔族などが待ち受けている訳では無いのか? と、イレギュラーズ達も疑問に思ったのか首を傾げるが、ユリーカはふふん、と鼻を鳴らして答える。
「今回は司教フランツェルさんを通してのご依頼なのですよ。深緑に住まう女の子が外に憧れを持っているそうで、お話をしてあげたら報酬をお渡しするそうなのです!」
 ユリーカ曰く、ルマリアは箱入り娘のような扱いを受けており、ダンジョンの奥地にあるような財宝をプレゼントとして渡されたりしているものの、本人には価値が分からず、話をすればそれを譲り渡してくれるとのことだった。
「深緑の周辺は悪戯好きのフェアリーが、皆さんに悪戯しようと攻撃してくると思います。でも、この冒険譚もルマリアさんにお話ししてあげたら、きっと喜ぶのです!」
 つまり、深緑に入るためダンジョンも攻略しないといけないということだ。
 ダンジョン内はフェアリーがいるという事だが、さほど脅威ではないだろう。
 ユリーカはフランツェルから送られてきたという地図をイレギュラーズ達に渡し、ではいってらっしゃい! と皆を送り出すのだった。


 今日が旅人の皆さんがやって来る日。
 ああ、胸がどきどきして堪らない!
 どんなお話をしてくれるのかしら。もしかして、今この瞬間も戦っていたりするのかしら?
 司教様は安全にここへ来られるように地図をお渡ししたと言っていたけれど――無事に、辿り着いてくれるかしら。そして、そのお話も聞けるのかしら?
 どうしよう。心配よりも期待で体が躍り出しそう! きっと、旅人の皆様なら――ここもすぐに越えちゃうんだから!

 少女の期待は以前よりも膨らむ。
 迷宮を潜り抜けてやって来る旅人を待ちながら。

GMコメント

まずはオープニングを見ていただきありがとうございます。
はじめまして、きみどりあんずと申します。
今回が初シナリオ作成です。
こちらは心情半分、戦闘半分のシナリオとなっております。

●成功条件
 ダンジョンをクリアし、依頼人であるルマリア・ロッテンタードに冒険譚を聞かせる。

●場所
 深緑の外側にあるダンジョンから内部のルマリアの自宅まで。

●モンスター『いたずらフェアリー』
 悪戯好きのモンスターです。すばしっこいですが、さほど強くありません。

●スタート地点
 深緑のダンジョンに入るところから始まります。
 モンスターへの対処を考えましょう。ダンジョンの迷路は情報屋からもらった地図で簡単に抜けられます。

●ルマリア・ロッテンタード
 幻想種の少女。今回の依頼人です。
 無垢ゆえに、危険な冒険でも、穏やかな冒険でもどのような語り口でも喜ぶでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 旅路の話をごゆるりとLv:1以上完了
  • GM名きみどりあんず
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月20日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
サイズ(p3p000319)
妖精■■として
アト・サイン(p3p001394)
観光客
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
エルシア・クレンオータ(p3p008209)
自然を想う心
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き
御子神・天狐(p3p009798)
鉄帝神輿祭り2023最優秀料理人

リプレイ

●ダンジョンへ
 聳え立つ深緑の大樹の麓に、地図に描かれたダンジョンへの入り口を発見したイレギュラーズたち。
 先導するのは『観光客』アト・サイン(p3p001394)。
「さてさて、ダンジョンといえば僕にお任せ、そう、観光客だ」
 『観光客』とは力もなく、魔法も不得意で、貧弱、鈍足、おまけに運が悪いがダンジョンに挑む最高の職業――とは言うものの、彼の観光客の定義は他の者より少し、いやかなりズレている。
 それを分かっているのか、『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)と『自然を想う心』エルシア・クレンオータ(p3p008209)はこくりと頷いた。
「地図があるということは既に踏破されてるということだし、俺が知る中でトップクラスのダンジョンの専門家……アトさんもいるからな」
 と、サイズはアトを信頼しているような口ぶりで彼の後に続く。
 一行はアトの後ろをついて歩きながら、罠や情報にあったいたずら好きのフェアリーの出現に警戒しながらも、少女にどんな話を聞かせるか、少し語り合っていた。
 『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)がほんのりと頬を桃色に染めて楽しそうにしながら、語り掛ける。
「輝かしい物語と言うのは心躍るモノですし、私もそれがきっかけで外の世界に出ましたから、同族が外の世界に興味を持つのはきっと良いコトだと思います!」
 ふむ、と『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)も頷き返しながら答える。
「懐かしいな。僕も幼い頃は外の世界を知っている大人の話を楽しみにしていたよ」
 ハーモニアーー依頼主のルマリアと同じ種のふたりは、同じように共感する。
 外に出てみたいと、この目で確かめたいと外へ飛び出したドラマ。今度は自分が教える番だと笑うウィリアム。
 そんな中、また別の声も上がる。
「さて。たどり着くまでに、何を話すか、キメておかねばな」
「到着したらお話を聞かせるのでしたっけ? 私今回が初めての冒険なので語れる事は少ないですが……。ルマリアさんには道中や妖精さんの事とか語っておきましょう!」
「なるほど、そういう手もあったか!」
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)、『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)、『最高の一杯』御子神・天狐(p3p009798)の3人だ。
 天狐はまだまだ冒険の経験が浅い。話せることは少ないが、今このダンジョンでの冒険を話すというのもいいのではないかと、楽しそうに会話を弾ませている。
 今回はダンジョンを無事に抜け、依頼主に冒険譚を届けるという依頼だ。情報屋に言われた通り、簡単な依頼ではあるが――
「ん……?」
 アトが伝説の3m棒で罠を探りながら先へ進んでいたが、何かがいた痕跡を見つけて、辺りを見渡す。
 その様子に、他の面々も周囲を警戒し、先ほどまでの賑やかな雰囲気が一変。張り詰めた空気へと変わった。
「――そこにいるのか」
 警戒しろ、とジョージの声で皆武器を構える。現れたのは話にあった『いたずらフェアリー』だ。キキキ、と言葉にならない声を上げてイレギュラーズたちに襲い掛かってくる。
「待ってください! 話を聞いてくれませんか!」
 サイズが真っ先に話しかけ、説得を試みようとするものの――言葉が聞こえていないようにいたずらフェアリーはサイズを避けて非力に見える者へ襲い掛かろうとする。
「妖精さんは我々幻想種にとっては古くからの友人ではありますが……この妖精さんはいけませんね、おしおきです!」
 ドラマが武器を構え、神気閃光を放つ。少し怯んだようだが、すぐに立ち直りイレギュラーズ達に向かって光球を放つ。
 エルシアに向かって放たれたそれを、ブライアンがかばうように受け、名乗り口上を上げる。
「ハッハー! 俺にビビって手が出せないか? かかってこいよ!」
 フェアリーの標的がブライアン一人に絞られる。――今のうちに、と目で皆に合図するブライアンに、各々攻撃準備を進める。
 フェアリーの放つ光球を味方に当たらないよう避けながら、ブライアンは時間を稼ぐ。キキ、と鳴きながらフェアリーは素早い動きで肉薄する。――だが。
「殺してしまうのは忍びないです……だから!」
 天狐の放つ、ノーギルティ。素早いフェアリーではあるが、ドラマの神気閃光のおかげか、痺れているようで、攻撃が当たりやすくなっている。
「命まで奪うつもりはありません。これ以上悪さをするのなら……別ですが」
 エルシアの放つ、ダストトゥダスト。
「悪いフェアリーには、退いてもらわないとね」
 ウィリアムの放つ、神気閃光。
 三人の大技がいたずらフェアリーを襲い、敵は地面に蹲る。
 妖精はなんとか体を起こすと、ふらふらと逃げていく。先ほどの妖精が言っていた変な妖精とは、今のフェアリーのことだったのだろう。
「やれやれ、やはりダンジョンに障害は付き物だね」
 後方で退路を確保していたアトが、肩を竦めながら同じように退路の確保に努めていたジョージ、サイズも連れ、改めてダンジョンの先へ進む。
 その後は特に罠もなく、無事にダンジョンを切り抜けた一行は、依頼主の元へ向かう。

●ロッテンタード邸
 一行が地図に記された指定の場所へ向かうと、迎えの者らしき従者がやってきた。
「ローレットの方々ですね。ルマリア様の元へお連れ致します。どうぞこちらへ」
 がたごとと揺られながら依頼主――ルマリアが待っている邸宅へ向かう。
 余程大事にされているのか、一行を見張るようにひとり、従者が乗り込んでいる。ルマリアになにかおかしなことをしないか、傷つけるようなことはしないか、両親の心配が伺える。
 しばらく揺られていると、ゆっくりと馬車のドアが開き、従者が丁寧に邸宅の中へ案内する。
 ドアの先には広間が目に入り、奥の扉から少女がぱたぱたと走ってやって来る。
「まぁ! もういらしたのね! 冒険者の皆さん、はるばるここまで来てくださって、ありがとうございます」
 上品にお辞儀をする少女。
 依頼主であるルマリア・ロッテンタードは金の髪を揺らして顔を上げる。
「さぁ、こちらへどうぞ!」
 ルマリアに案内された先は、少女一人が過ごすには広すぎる部屋。大きな本棚にはたくさんの本が詰められていて、どれも読み込まれていることが伺える。
 イレギュラーズ達に客用の椅子へ座らせると、きらきらと期待した瞳で、ルマリアはこの依頼の目的である冒険譚をせがむ。
 初めに口を開いたのは、エルシア。
 重々しく語られる、母との苛烈な戦い。ごくりと唾を飲み込みながら、ルマリアはエルシアの儚げな姿を見失わないようにじっと見つめる。
「私がイレギュラーズにならなければ……外に出なければ、きっと遠い場所で全てが解決していた悲劇です。反転した母の呼び声に応えなかった私は、母に拒絶されました……それはもう、私はその場で生命を奪われるのが正しいのだと思い込む程に恐ろしい事でした」
 ふるふると震えながら話すエルシアに、ルマリアは安心させるように手を取って、真っ直ぐ瞳を見る。
「そんなに恐ろしい出来事も、あったのですね……辛いことなのに、話してくださってありがとうございます」
「……手、ありがとうございます。……でも。そんな私を叱咤して、戦うよう呼び戻してくれたのも、外の方……この世界の方ですらないアトさんなんです。そう思うと、外の世界は恐ろしいですけれど、焦がれるくらいならいいものかもしれませんね」
 くすりと笑って、エルシアは優しくルマリアの手を離した。
 さあ、次はどなたですか? と、エルシアはバトンを渡すように他の面々を見て――アトがひらりと手を上げる。
「じゃあ、僕が行こうか。しかし、冒険譚……んー、そうだねえ……ほら、この3メートルの棒を見てみてくれ。僕はこれを使って森を抜けてきた」
 ルマリアに見せたのは、何の変哲もない、ただの棒だ。だが、アトにとっては素晴らしい一品だ。
「この……ただの棒が、ですか?」
 不思議そうに棒を見るルマリアにくつくつと笑いながら、アトは自身の相棒ともいえる道具を説明していく。
「平凡そうな棒だろう? だけども、冒険をするにはこういう何気ないものが大切だったりするのさ。罠を探り、罠があるなら引っ掛けて解除し、怪しい場所をつついてみたり……」
「なるほど! 外の世界には罠があるのですね! 本で読んだ通りだわ。本当に危険なものがいっぱいなのですね」
 感心するルマリアは、他にはどんな話が?と、期待しながらアトに問いかける。
「そうだね。……今回通ってきたあのダンジョンだけじゃない、どんなダンジョンであろうとこの3メートルの棒が僕の命をつないできたと言ってもいい」
「すごい……すごいですね! 命を助けてくださる、素敵な棒さんを見られて嬉しいです!」
 喜ぶルマリアに、僕の話はこのくらいでいいかな? と、次の話をするイレギュラーズへ視線を送る。
 アトが見たのはサイズ。妖精の姿をした、彼。
「えっと、じゃあ俺が」
「わぁ! 妖精さんだわ! 一体、どんなお話をしてくださるのかしら?」
 期待に満ちた瞳でサイズを見るルマリア。少し緊張しながら、サイズは口を開いた。
「深緑出身なら、知っているとは思うけれど、妖精郷の話でも」
「まぁ! 妖精さんとはお友達が何人かいます! でも、妖精郷にはいったことがなくて……」
 初めて聞く、妖精たちが住む妖精郷の話。
 過去に起きた、妖精郷での事件とその解決までの話。ルマリアにとっては、知らないことばかりだった。
「まぁ……そんなことが起きていただなんて、全然知りませんでした。父や母は、私に外に出るなときつく言いつけていましたから……」
「ある意味、子どもを守るためなのだから、正解だと思うよ。キミの身近なところにも危険が迫っているということを、忘れないで」
 サイズの警告のような言葉に、ルマリアは力強く頷き、次の話に期待する。
 今度は天狐が躍り出る。勢いよく飛び出したものの、あまり話せることは少ないのですけど、と少し照れ臭そうにはにかんで、語り始める。
「ついさっきの冒険です! ここに来るまでにダンジョンを攻略してきたんですけど、良い妖精さんと悪い妖精さんがいました」
「悪い妖精さん……そんな妖精さんがいるのは、エルシアさまのお話しで知っていましたが、この辺りにもいるのですね……」
 しゅん、としたルマリアに天狐は慌てて持ち直すように語り出す。
「でも! みんなで力を合わせて追い払ったんです! きっともうこの辺りには来ませんよ」
 それに……と、もったいぶるように言葉を濁す天狐に首を傾げるルマリア。少し不安そうにしていた天狐の表情がくるりと変わり、満面の笑みで答える。
「それに、みんなと一緒なら――きっと、特別な旅になります! うどん神のお導きですね。だからもし、外に出る機会があったのなら、ローレットのギルドを頼るといいですよ」
 ルマリアの表情がぱあぁと明るくなり、天狐と同じ満面の笑みで元気に返事を返したのだった。
 次に語るのはウィリアム。
「この大地よりも広い大きな水溜まりを海というんだけど、その海の近くに豊穣と呼ばれる場所がある。という訳で此処とは全然違う文化を持つ国なんだけど、ある日『スシ』という食べ物のために材料となるスシネタを取る手伝いをする仕事が受けてね」
「台地よりも広い大きな水たまりに、スシ! 聞いたこともない食べ物です」
 くすりと笑って、ウィリアムは話を続ける。
「僕達はスシネタ海岸で超魚介類と戦う事になった。何かこう……魚に人の足が生えたような生物で、倒すと切り身を落とすんだけど……今思い返してもよく分からない生物だった……スシは美味しかったけど」
 ルマリアに紙とペンを貸してくれないかと、ウィリアムが伝えると超魚介類の姿を描く。
 不思議そうに首を傾げながらルマリアはこんな生物がいるのかと、また新しい発見に心を躍らせる。
「世界は広くて、不思議でいっぱいだ。君もいつか自分だけの不思議に出会うかもしれないね」
 にこりと笑って、ウィリアムは僕の話はこれでおしまい、と締めくくる。
「それじゃあ、今度は私が」
 と、名乗り出てきたのはドラマ。
 ドラマもここを出てから4年ほど。様々な経験をしてきたルマリアと似た境遇の者だ。
「幻想国と鉄帝国の戦争の話、正義を是とする天義国に巣食う不正義の話、遠く東方の海に住む竜神との戦い、その海を渡った先にある全く文化体系の違った島国での騒乱、直近では幻想国に生まれた勇者の話、様々な経験を積みました」
 ほう、と息を吐いてルマリアはドラマの経験を聞く。どれも聞いたことのない国。隣国ラサともまた違う、様々な国の形や戦争。
 彼女の語る言葉ひとつひとつに重みがあった。――そして、この深緑にも危険があることを語る。
「――夜の森は危険だよ。さっさと眠ってしまいなさい。――そうしないと、眠たい砂が降ってきてザントマンに攫われてしまうよ」
 それはこの深緑では有名な、御伽噺。ルマリアも良く知っていると頷き、けれどそれは御伽噺ではないのかと、首を傾げた。
「しかし……幻想種に害為すそれは、実在しました。その御伽噺に倣って、同族を奴隷として捕らえようと言う悪意もありました」
 ドラマの語る真実に、ルマリアは目を丸くして驚く。本当に自分は何も知らなかったのだと、しょんぼりと頭を垂れて己の無知を恥じ入った。しかし――
「善意もあり、悪意もある。ですから、外の世界に出るのなら多くを学び、悪意に対抗する術を得てからの方が良いと思います」
 ドラマは優しく、そう語り掛けた。
 外へ出るために今からたくさん学べばいいのだと。ルマリアもドラマも同じ幻想種。ドラマは知識を蓄えていたから外に出るきっかけによって飛び出せた。
 ルマリアも、危険を感じ取ることができれば、飛び出せると背中を押して――次の語り部へと繋いだ。
「そうだな……『勇者王の伝説に語られる空島アーカーシュより欠け落ちた神翼庭園ウィツィロ。そこから溢れ出した災いの獣たちとの戦い。太陽の翼ハイペリオンとの共闘』とか、どうだ?」
 ブライアンの口から紡がれた冒険の始まりの物語。
 大規模な奴隷の売買。その奴隷を不埒な輩から救出したりと、ブライアンはどんどん自らの経験を語る。
 予想も出来ない冒険の嵐に、ルマリアは時々顔を歪ませたり、かと思えば花が咲くように笑ったり。ブライアンの冒険譚ガタリが終われば、ぱちぱちと手を叩いて喜ぶ。
「ブライアンさんはとても素敵な冒険をしてきたのですね」
「ハッハー! まぁな!」
 ……とは言ったものの。神翼獣ハイペリオンの姿は力を失った影響で可愛らしい見た目だった、とは伝えなかった。少女の夢を壊すのは些か虫の居所が悪いのだ。
「最後は私だな」
 ゆっくりと立ち上がり、ジョージはルマリアに目線を合わせて語る。
「私が話すのは海洋の話だ」
 ジョージがギフトで姿を変えると、ルマリアはわぁ! と声を上げて驚いた。
 くすりと笑いながら、持っていた魔導手帳を取り出して絵を描きながらジョージは語り始める。
「海洋に伝わるおとぎ話。大食いクジラだ。先ほどウィリアムが言っていた、空のように広く、深く、しょっぱい湖のような場所だ」
 また海の話! とルマリアは目を輝かせる。知らないものの話は、どうやらお気に召したようだ。
「そこには、この家よりも大きいクジラという生き物が泳いでいてな、大食いになると、船を食べてしまうモンスターもいる。そのクジラが暴れるものだから。どうやって退治するか」
 紙芝居の様に手帳に絵を描いてルマリアに見せながら語るジョージ。その仕草はルマリアの目を引き付けて離さない。
「船で近づけば、食べられるんだから、と。そこで、今の俺と同じ姿をしたペンギンが、こういった。『口に飛び込んで、腹から捌いてやる!』とな」
 まるで驚かすように羽をわっと開いて威嚇する仕草をするが、見た目はコウテイペンギン。ルマリアはからからと笑いながら、最後はどうなったのか急かすように期待の瞳で続きを待つ。
「クジラは無事に退治され、美味しく食べられたとさ」
 めでたしめでたし。と締めくくられたジョージの語りにルマリアは手が痛くなるほど叩いて賛辞を送る。
「いつか、海洋に来た時はソイツを見せてやろう。手帳も、プレゼントだ」
 ルマリアは渡された手帳をぎゅうと抱きしめて感謝を伝える。
「皆さん、素敵な冒険譚を届けてくださって、ありがとうございます!」
 満足そうに微笑むルマリア。こっそりと見守っていた従者たちも、嬉しそうなルマリアに頬を緩めて眺めていた。


 これにて依頼は完了。
 ギルドで完了報告を受けた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、嬉しそうに今回の依頼主から手紙が届いていると伝える。
「本当にありがとうございました。とても楽しい時間でした、だそうです! 皆さん、いいお仕事をしてくれたのですね!」
 ユリーカが報酬は後日送られると伝えれば、最後に皆で顔を合わせて別れを告げ、また新たな依頼を求めて散り散りになる。
 ――今回の旅は、これにて終幕。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

素敵なプレイング、ありがとうございました。
未熟者ながら、精一杯みなさまのキャラクターを描かせていただきありがとうございました!
きっと、依頼主の少女にとっても大切な思い出になったでしょう。

皆様の思い出にもなっていれば幸いです。

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