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シナリオ詳細

<ナグルファルの兆し>金に瀕する奴隷商人

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幻想アーベントロート領。
 ここしばらく、あちらこちらに点在するイレギュラーズ達の管理する領地で多発する騒動。
 主として大奴隷市なるものが開催されていたらしいが、その解決には、イレギュラーズだけではなく勇者候補生を名乗る者達も現れていた。
 彼らが幻想内を奔走して解決に当たっていたのは、勇者の証……ブレイブメダリオンを配布するという御触れが国から出ていたことも大きい。
「面倒なことをしやがる」
 裏路地に身を潜める奴隷商人達が忌々しげに舌打ちする。
 混沌の各地から、奴隷を連れてきていた彼らは、大奴隷市という絶好の機会で売りさばく算段でいた。
「…………」
「うっ、ううっ……」
 そいつらが運ぶ馬車の積み荷……檻の中には、とがった耳の少年少女がいた。
 全身に痣が残る彼らは猿ぐつわをかまされ、手枷足枷をつけられて身動きされぬ状態となっていた。
 彼らは皆、深緑から連れ去られてきた幻想種達である。
 奴隷達を売り物として考えている彼らだが、商品とするには生きている必要がある。
 つまりは最低限の食事を与えねばならず、売りさばくまでの期間は短くしたいのが奴隷商人達の本音。
 だが、イレギュラーズを始めとした勇者達の活躍はその機会をも奪ってしまい、商人達の手元には奴隷が残された状態となっている。
「おお、すまんな」
 そこに馬車で現れたのは、シルクハットを被った燕尾服姿の肥えた中年の男性。そいつへと商人達は一斉に頭を下げる。
「おお、イェルド卿。お待ちしておりました」
「そうかしこまらんでもいいぞ。フフフ」
 イェルド卿と呼ばれた男はにこにこと微笑み、つれていた執事に商人達へと金を渡させる。
「おお、これでしばらくはしのげそうです」
「さすが、イェルド卿は懐が深い……」
「奴隷を売ったら利子付けて返してくれればいい。せいぜい頑張って稼いでいくがいい」
 シルクハットをとって頭を下げたイェルドは再び、馬車に乗って去っていく。
「これでなんとかまだ食いつなげそうだ」
「早くこいつらを売っぱらって、幻想から引き上げるぞ」
 奴隷商人達は馬車に乗って動き出す。
「…………」
 その現場を見ていたクルル・クラッセン(p3p009235)は去り行く馬車を見つめて。
「深緑から幻想種を……見過ごしては置けないね」
 町中ではスピードはあまり出せないはず。
 クルルは馬車を見失わぬよう、追いかけていくのである。


 幻想で起きていた騒動。
 それは、大規模な奴隷市がトリガーとなり、散発していた。
「古廟スラン・ロウや神翼庭園ウィツィロのモンスター……怪しげな動きを見せる貴族達……」
 ローレットでは、アクアベル・カルローネ(p3n000045)が話しているのは、クルル・クラッセンからの情報提供による依頼。
 その目的は奴隷とされた深緑の幻想種4人の解放。そして、できるならば奴隷商人達の動向を探り、全員を捕縛したい。
「すでにクルルさんが奴隷商人達の詰所を抑えてはいますが……。普段は街の宿屋に分かれ、何食わぬ顔で泊っているようです」
 下手に踏み込めば、宿屋の人々や一般客に迷惑をかける上、別所に宿泊する商人を逃がしてしまう。奴隷達も一か所にはいない為、間違いなく保護できない者が出てしまう。
「狙うなら、奴隷市を行う現場を抑えるしかなさそうです」
 そこであれば、奴隷商人も揃うはず。おそらく、お抱えの用心棒や彼らの飼っているモンスターもいるはず。
 まだ、その辺りの情報が不透明だが、その数は多くないと見られる。
「奴隷商人達はさほどお金に余裕がないはずだよ。加えて、事を大きくすれば目を付けられる可能性が高まる……」
 そこで、クルルが推論を語る。その為、いても用心棒とモンスターはそれぞれ1体ないしは2体だろうと考えていたようだ。
 奴隷市が行われるのは、数日後の夜。場所はアーベントロート領の裏通りにある奥まった場所にある広場。
 逃げるのにやや不利な場所だが、ほとんどの場所はローレットに目をつけられており、奴隷商人達はそれでもここを選ばざるを得なかったようである。
「やはり、クルルさんのいう様に奴隷商人達はお金に瀕しているようですね……」
 それに同意するアクアベルはさらに、今回の1件に付随してこんな話も行う。
 なんでも、奴隷商人達がこうした活動を続ける裏には、悪徳貴族の援助もあるはずだ……と。
「彼らは『幻想国内での内乱』を企てているのではと推察されます」
 幻想王国内には、先のメダリオン争奪戦の結果を受けてなお、イレギュラーズが勇者であることに異を唱える貴族達もいる。
 クルルもそれらしき人物を目にしており、貴族の関与の可能性は高い。
「ともあれ、まずは奴隷とされた人々の解放を。……できれば、商人達から情報を引き出していただきますよう願います」
 アクアベルはそう説明を締めくくり、依頼をイレギュラーズ達へと託すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 幻想内部で暗躍している悪徳貴族に奴隷商人……その調査と合わせ、奴隷とされた人々を解放していただきますよう願います。

●目的
 奴隷とされた幻想種達の解放

●敵
○奴隷商人×3体
 屈強な人間種の男達です。素手でも十分戦える力がある上、フリントロック式の拳銃を所持しております。

 また、お抱えの用心棒や家畜としてモンスターを引き連れていると思われますが、不明です。
 ただ、事を荒立てるのは奴隷商人らとしても活動しづらくなる為、数は少数と思われます。

●NPC
○幻想種×4人
 深緑から連れてこられた少年少女達です。
 奴隷とされ、商人達によって全身が傷ついております。
 心身共に弱っており、早急な治療が必要な状態です。

●状況
 幻想、アーベントロート領の裏通りで、クルル・クラッセン(p3p009235)さんが深緑の幻想種と思われる奴隷を引き連れた奴隷商人数名を発見しております。
 それらの動向を見ながら敵戦力を探り、タイミングを見て介入、奴隷の保護と奴隷商人達の確保を願います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <ナグルファルの兆し>金に瀕する奴隷商人完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月19日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
武器商人(p3p001107)
闇之雲
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール

リプレイ


 アーベントロート領。
 表通りから裏路地へと差し掛かったところで、『死神二振』クロバ・フユツキ(p3p000145)は嫌悪感で顔を引きつらせる。
「今だこういう連中が生き残っていやがったか」
「一度楽な方法に流れると、真っ当な道には確かになかなか戻れぬのう」
 全く別の商いの道へと踏み込むのは人としてあるべき行為としながらも、『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)はその行いが己の足元を危うくするものと語る。
「本当、奴隷って言い方、階級が全て悪いんだよなぁ」
 『黒花の希望』天之空・ミーナ(p3p005003)がもう少し言い方、待遇が改善されれば、そこまで反対しないと自らの考えを語る。
「……ああ、まあ今回には関係ねーな」
 悪徳商人に鉄槌を、という柄でもないが……と呟きながら、ミーナはその顔を仮面で覆う。
「……己の為に他人を捕まえ、売り捌くのを生業にするだけでは飽きたらず、暴行もだなんて……」
「人の命というものを金稼ぎの道具としか考えてない連中の末路がどうなるかをその身を以て叩き込んでやる……」
 人買いに思うことがあり、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)が決して許せないと怒りを滲ませると、クロバもそんな恋人を気に掛けていた。
「そして、幻想種の奴隷もなんとか救出してみせよう」
「本当、わたし達幻想種って人気なんだねえー……嬉しくも、なんともないけども!」
 その実状に、『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)はマイペースな意見を口にするも、やはり商人達には呆れていたようで。
「まったくもう。少しでも早く助け出して、元のお家に帰してあげないと!」
「ええ、必ず、助け出しましょう」
「対価は払ってもらうとしようかのう」
 意気込むクルルに、シフォリィ、クラウジアが同意するのである。


 裏通りの奥まった場所にある広場。
 壁を背にする形で作られていた簡素なステージで、奴隷市が始まろうとしていた。
 ざわざわ、ざわざわ……。
 この場で観客となっていたのは、幻想の貴族や悪徳商人達、それらに雇われた警護役だ。
 そこに、客の振りをしたイレギュラーズが紛れ込む。
 例えば、『闇之雲』武器商人(p3p001107)も目立たぬように商人を装って潜みながらも伏兵がどこかに潜んでいないかと透視を働かせて周囲を見回す。
 その視界の中には、左目を隠してスラムの浮浪者を装っていたクロバや、薄汚れたローブを着込むクラウジアの姿もあった。
 シフォリィも客の1人として貴族らしくドレスに身を包む。
 ただ、幻想だととりわけ知名度の高いイレギュラーズのこと。シフォリィは顔と武器を隠し、ステージを注視する。
 まだ、準備中とあって、開催者の登場をじっと待つ。
(奴隷の子を確保、それと奴隷商を逃がさず確保がオーダーだったね)
 クルルはというと仲間のコネを頼りとし、奴隷を買う客に見えるよう見栄えの良い服と仮面を着用する。
「変わった仮面だ? ああ、最近偶然手に入れてね。……それなりに顔が売れているからな。こういう場では詮索無用、だろ?」
 ミーナもまた顔を隠し、身元がばれぬ様に奴隷商人へと近づこうと画策する。
 こうして、事前にメンバーが会場へと潜入できていたのは、強力な伝手を使って招待状まで手配していた『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の手腕によるところが大きい。
「……久々に幻想種の出品があると聞きましてね。最近は特に品薄ですから」
 他メンバー同様に仮面をつけた寛治は競りが始まるまでの間も、他の参加客からさりげなく情報収集まで行っていた。
(イェルド卿……ですか)
 現状の取り締まりを逃れて活動する幻想貴族……。
 寛治はその男に相応のパイプと権力があると睨んでおり、その筋からの調査も可能だと考えていた。
 やがて、寛治は主催である商人との対話にこぎつけ、ステージの袖へと向かう。
「お初にお目にかかります」
「これはほんのお気持ちですの」
 彼の挨拶に続き、シフォリィは競りの前に会ってくれたことを喜び、賄賂を手渡す。
「ようこそ。我々としても早く商談を成立させたい状況でして……」
 金に瀕していた奴隷商人達は大喜びし、シフォリィへと本音をのぞかせる。
 その背後には刃渡り1m程度の2本の刃を下げた細身の剣士。彼が商人らに雇われた用心棒だろう。
 さらに、後方には大きな獣らしき魔物の姿が。巨大な齧歯類のような見た目だが……。
 ともあれ、好機であると同時に細心の注意を払わねばならぬ場面。
 寛治は話の途中で、枷をつけられた複数の人影に気付く。
「失礼、もう少し近くで見せていただいても?」
「おお、商品ですかな?」
 奴隷商人達が商品と呼ぶ幻想種の子供4人。
「「…………」」
 手枷足枷をつけられた彼らは全身に痣がついており、見るのも痛々しい。
 かなり弱っているようで、早急な治療が必要なのは明らかだ。
「どうかしましたかな?」
 訝しむ商人の表情を察した寛治が後ろ手で合図を出すと、客席側で大きな動きが。
「それじゃ、派手に行くぜ」
「ああ、俺達の出番だ」
 『我が身を盾に』グレン・ロジャース(p3p005709)が先頭になり、クロバやクラウジアがステージ側へと向かって強襲を開始する。
(下手に怪我させて敵には回せないもんね)
 突然、暴れ始めるイレギュラーズ……とも把握できぬ奴隷目当ての客は騒然とする。
(お貴族さんとかを下手に怪我させて、敵には回せないもんね)
 同じタイミング、クルルは余計なトラブルを起こさぬようお客の安全にも配慮しながら素早く商人と接触する仲間達の元へと向かうのだった。


 本格化するイレギュラーズと奴隷商人らの戦い。
 強襲班が動き出し、ステージ袖へと突入してきたところで、ついてきていたシフォリィやミーナが武器を取り出す。
「救出する為には護衛を排除して近づかなくては行けませんね」
「だまし討ちして悪いがね、こっちにもこっちの都合があるんだ。さあ、『商品』を返して欲しくばかかってきな!」
 真っ先に名乗りを上げるミーナに、商品の販売ばかりに気をとられていた商人らもさすがに拳銃を抜いて。
「お、お前ら……!」
 応戦の構えをとる商人らより早く、用心棒も2本の剣を抜き放ち、後方の魔物も爛々と目を輝かせて牙を剥く。
 そこに、飛び込む武器商人は先んじて奴隷商人に接触していたミーナや寛治をいつでも守れるようにと身構えて。
「仰ぎ見よ、金の冠……」
 自らへと金環の権能を纏った武器商人は、さらに、銀環の権能も纏うことで、防御を完璧にして壁となる。
 その後ろから、飛び込むクロバが鬼気によって黒炎と殺意を纏う。
「屈強なその見た目……1回くらいは耐えてくれるよな?」
 クロバは紅と黒の太刀「鬼哭・紅葉」を振るう。身構える奴隷商人らは耐えきって見せるが、その後方のステージは激しい音を立てて崩壊していく。
「な、なんだ!?」
「撤収するぞ、急げ!」
 客席からは貴族や別の商人らの声があちらこちらから響くが、グレンはそれらの客が多少交じってようが、邪魔してこない限りは無視して目の前の障害を排除すべく、守護聖剣を握った。
「はああっ……!」
 大きくグレンが空を一閃すれば、その軌道から衝撃波が発生し、用心棒へと飛ぶ。
 それを見ていた客側、手練れの用心棒らが武器を手にかける。
 彼らとて、主の商談を成立させる為、奴隷市に闖入した邪魔者を排除すべきだと判断したのだろうが、グレンは鋭くそちらを睨みつけて。
「邪魔するなら容赦しねぇぜ?」
 グレンの牽制もあり、ここは主を守り、逃がすべきだと客側の用心棒も判断したようで、この場から離れていく。
 それらの客のことも気にならないわけではないだろうが、イレギュラーズ達が優先すべきは弱った幻想種の子供達の救出。
 この場の人々を見回せる程度飛び上がっていたクラウジアはこの場の敵対勢力……主催者である奴隷商人側と確定した敵のみへと神気閃光を浴びせかける。
 とにかく、今は敵を弱らせるべきだと、クラウジアはさらに眼前で光を瞬かせるのである。

 仲間達が奴隷商人を引きつけ、抑えている間に、寛治は幻想種の子供達の救出へと乗り出していた。
 クルルがワイズキーを使って檻のカギを開くと、手足の枷がついたままの子供2人を寛治が抱えて全力で戦場となる奴隷市会場から退避する。
 クルルもまた搬送に当たるが、やはり彼らの傷が気になるところ。彼女は敢えて天使の歌を響かせて怪我の癒しにも手を割いていた。
「ならば、私は救出ルートの確保を行いましょう」
 奴隷商人らが邪魔をしようとすれば、シフォリィは敵の布陣が薄い部分を瞬時に見極め、商人1人を狙って漆黒の片手剣で頭、喉、鳩尾を一突きで貫かんとする。
 さらにシフォリィは邪魔な木箱や崩れ落ちたステージの瓦礫を一気に鉄帝国の武技、鋼覇斬城閃で切り崩す。
 前方の道が切り開かれたところで、寛治とクルルが再び子供達を奪取されぬよう一気にこの場を突破していくのである。


 クルルと寛治が子供達を安全な場所へと搬送するのを、奴隷商人達も見逃しはしない。
「ちっ、逃すかよ!」
 多少、荒事には長けている奴隷商人とはいえ、本格的な実戦は用心棒やペットの魔獣頼り。
 ただ、それらはイレギュラーズによって抑えられている。
「くそがあっ!! 全力で奴らを取り押さえろ!!」
「……了解した」
 チュウウウウウウ!!
 荒ぶる用心棒に魔獣は主の命によって力を高める。
 ミーナがこの場を抑えてはいたが、敵は一気に力を解き放ち、猛然で攻撃を仕掛けてくる。
 魔獣は鋭い爪を振り回し、さらに長い尻尾を叩き付けてくる。
 グレンは躊躇なく高い防御を生かしてそれを食い止め、刃を刻み込んでいたが、死力を尽くす魔獣の喰らいつきでその守りごと噛み砕かれてしまい、運命の力に縋って立ち回り続ける。
 クラウジアは戦いの中、時折客席に視線を巡らす。
 人混みから、今なお感じる敵意、殺意。
 こちらが仮面をしていても、ローレットイレギュラーズだろうと察する者達も少なくないが、手出しが難しいといった形でこちらの戦いを見守る者も居続けたのだ。
 ――神気閃光を放つべきじゃろうか。
 その隙を、クラウジアは突かれ、高く跳びあがった用心棒から刃の連撃を受けてしまう。
 赤いものが飛び散るが、彼女もまたパンドラの力を受けて踏み止まり、用心棒目掛けて魔力の奔流を叩き込む。
 苦痛に顔を歪ませる用心棒がなおも切りかかってくるが、ミーナが名乗りを上げる。
 さらに、そのミーナを庇いに当たっていた武器商人が呼び寄せたのは、歩く破滅。
 ひたり、ひたり……。
 それはどこに逃げようとも追ってくる恐るべき存在。
 目を合わせ、存在を知られ、触れられただけで、運命全てを握られて。
 もはや用心棒に破滅から逃れる術はなく、命運尽き果てて崩れ去ってしまった。
 用心棒の討伐を確認したミーナは、すぐに魔獣へと向き直る。
 チュウウウウウウウウウ!!
 鈍重そうにも見える齧歯の魔獣だが、爪に牙、尻尾を操るその体は思いの他身軽だ。
 主となる奴隷商人らへと忠実なようで、商人らの声によって奮起した魔獣は役に立とうと荒ぶり、ステージを破壊しながらもイレギュラーズへと遅いかかる。
 そんな魔獣の動きを、ミーナは危険視して。
「制御が効かなくなって、暴れられても困るんでな!」
 希望の剣を煌めかせたミーナは万死の一撃を見舞い、魔獣の体に深く刃を突き入れる。
 幻想種の子供達を後方へと避難させた後、寛治は子供達を守りながら敵を狙撃する。
 距離をとったまま、彼は黒い紳士用ステッキ傘のシャフトに仕込んだ銃で、魔獣へと銃弾を撃ち込み続ける。
 次第に動きが鈍くなっていく魔獣だが、最後まで主の為にと抵抗を続けて。
 チュウウウウウウウウウ!!!
 太い腕を振り下ろしてくるそいつの一撃をまたもミーナ、武器商人が裁く間に、クロバが向かってくるなら容赦しないと太刀を構えて。
「――死神の怒りはそう安く済むと思うなよ」
 次の瞬間、内なる力を解き放ったクロバが鬼人の如き焔の一閃が魔獣を地面へと沈めて見せた。
「なん、だと……?」
「だが、我々も負けるわけには……!」
 頼みの護衛が倒された商人達だが、それでも抵抗を続けるのは生きる術に縋りつく故か。
 後々の事を考え、クロバは命を奪わぬ程度に屈強な商人らを痛めつけており、グレンも聖なる術式で商人1人を昏倒させる。
「同胞を、それもこんな小さい子を攫って売るなんて!」
 怒りを露わにするクルルもまた商人の体を神聖なる光に包んで。
「ちょっと怒ってるから、お仕置きはキツめにするからね!」
 激しく光を瞬かせ、クルルは他種族を貶める奴隷商人を成敗して見せたのだった。


 気づけば、裏路地の奴隷市会場からはすっかり客が引き上げてしまい、閑散としていた。
 飼い馴らした魔物や用心棒が倒れたことで、観念した奴隷商人達はイレギュラーズ達に拘束され、捕虜とされていた。
「幻想種をだいぶ『可愛がって』いたようじゃねえか。同じ目に遭っても、構わないだろ?」
 幻想種の代わりに舌だけ残して徹底的に痛めつけると、グレンはたっぷりと脅しを利かせる。
「ひっ」
 悲鳴を上げる商人達は目隠しだけでなく手枷足枷もされており、何をされるかわからないという恐怖があったようだ。
 ただ、グレンは……一行の狙いは彼らから情報を聞き出すことにある。
「けど俺も鬼じゃねぇ。一番俺達に有益な情報をくれた奴は、助けてやるさ」
「言う、言うから枷を解いてくれ!」
「なっ、俺が言う。だから、俺の縄を……」
 仲間割れしかける商人らを個別に隔離し、グレンは仲間と共に知っていることを洗いざらい吐かせようとする。

 1人目にはクロバが情報を引き出そうとしていた。
「どうやら、金を貸している連中もいるようだな?」
 この商人らが捕まることで利子が回収できなくなると察した金貸しが何をしでかすかわからないとクロバは考えていた。
 この際、守秘義務など知ったことじゃない。彼は元締めごと潰す勢いで根掘り葉掘り聞き出す。
 2人目には、武器商人が聴取に当たる。
「キミ、痛いのはお好き? 我(アタシ)はねぇ、こういう役回りの勇者が1人くらいいても良いと思うんだよ」
 武器商人もまたクロバと同様に拷問も辞さないと、相手に圧力をかける。
「…………」
 ただ、思ったより強情な態度をとり続けていたことに、武器商人は小さく頷く。
 わかりやすく過激なのがいれば、この商人らのように喜んで出資しているコは喜んで釣られてくると語る。
「……つまり、ここで痛みに呻きながら口を閉ざしても特に変わらない」
「…………っ」
「さて……もう一度聞こう。痛いのはお好き? それとも、可愛い声で歌うのが好き?」
 武器商人が破滅を近づけさせることで、一文字に口を閉ざしていた商人も脱力して言葉を絞り出す。
「……分かった」
 上手に相手が歌い始めると、武器商人も上機嫌にその男の頭を撫でていた。
 3人目には、ミーナが聴取に当たって。
「下手に嘘をつかない方が身の為だぜ? あの魔物達みたいに肉塊になりたくねーだろ?」
「分かった、イ、イェ……」
「イェルド卿。クローディス・ド・バランツがバックにいるようですね」
「なっ……」
 そこで、寛治が名前を出したところで、商人は大きく動揺していた。
 それぞれの聴取を進める上で、グレンは捕虜殺しなども厭わぬとすら考えていたが、イレギュラーズがこの場で話を聞くのにも限界がある。
 その為、ある程度情報を引き出したところで、メンバーは奴隷商人らを憲兵へと引き渡しを決めた。

 同時並行して、別メンバー達が救出した幻想種の子供達のケアに当たる。
 体の傷は回復スキルに関しては、比較的すぐに癒やせると皆考えている。
「必ず、家へと帰します」
 子供達の精神に刻まれた傷を癒すことは容易ではないが、シフォリィはもうこんなことが起こらないようにと彼らの心のケアにも力を尽くすと約束する。
「なら、一旦自領で引き取ってから、親探しをしようか」
 そのクロバの申し出には子供達も嫌な顔をせず、小さく頷いて了承の意を示して見せたのだった。

成否

成功

MVP

新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

状態異常

クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)[重傷]
宝石の魔女

あとがき

 リプレイ、公開中です。
 MVPは様々な伝手を駆使して会場へと潜入する機会を作り、敵の虚を突いた貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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