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シナリオ詳細

<ナグルファルの兆し>ハイペリオンスカイハイ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●神翼獣ハイペリオン、太陽の翼!
 黒き卵のひびが割れ、砕ける天より、這い出る黒鳥。
 文明破壊の化身にして、天空よりの刺客。
「さあ、大地の子らよ!」
 Y字に翼を掲げ、巨大な雛鳥が叫んだ。\(╹v╹)/
 白くふわふわとしたボディにシンプルで可愛らしい顔のついたこの生物の名はハイペリオン。
 かつて勇者王の翼となり大陸中を旅したという神翼獣だが、力と記憶が散逸したことでこの姿をとるのがやっとであるという。
 けど
「全然ありです! 全然ありよりのありですハイペリオンさまー! スゥーーーーー!」
 おなかにべふっと抱きついて深呼吸する澄恋(p3p009412)。
 その状態のままイレギュラーズたちへ振り返るハイペリオン。
「この国で、新たに『勇者』が選ばれたそうですね」
「スゥーーーーーーーーーーーー!」
「世代と形は違えども、こうして再び勇者たちと冒険ができると想うと、とてもうれしいです」
「スゥーーーーーーーーーーーー!」」
 気付くとカイト・シャルラハ(p3p000684)も抱きついて深呼吸していた。
「私までメダルをもらってしまって、この私まで勇者になれてしまうのは、とてもくすぐったい気持ちですが」
「「スゥーーーーーーーーーーーー!」」
「これからも、一緒に大地を守りましょう」
「「スゥーーーーーーーーーーーー!」」
 ずっと深呼吸してる澄恋。話を聞いてるのか聞いてないのかよくわからないが、なんか要所要所で頷く動作をしているので多分聞いているんだと思う。
 その一方、『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)は国王ようり授与されたという『勇者の証』を手のなかで弄んでいた。
「ハイペリオン、これまでいくつもの古代獣をアタシと仲間達が倒してきたよね」
 ぎゅっと証を握り、顔を上げる。
「完全にとは言わない。けれど、少しは戻ってるんじゃないかな。古代獣に関する記憶が」

 しばらくシンプルな顔でぱちぱちと瞬きをしていたハイペリオンだが、ゆっくりと頷く動作をした。
「「スゥーーーーーーーーー!」」
「分かりました、大地の子らよ……いいえ、神翼の勇者ジェックさん。
 私は確かに、記憶の一部を取り戻しています。
 たとえば浮遊島アーカーシュの一部が欠け落ちた日のこと。私が今以上に雛鳥であった頃、私を守って力尽きた母の姿……。
 その後空島にて再会した親しいひとの姿……。
 そして。
 母をあやめた、『滅びを呼ぶ鴉』――ノワールクロウの完全なる姿を」
「「スゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」

●ノワールクロウ
 幻想に伝わる物語のひとつ。白き翼の物語。
 子供に読み聞かせる絵本にもなったそれは、空から落ちてきた白鳥の神様が、黒鳥の悪魔によって殺められてしまうという残酷なものだった。
 ひとり残された白き雛鳥は勇者と手を取り合い、黒鳥の悪魔へと立ち向かったという。
 見事悪魔を撃ち倒した白鳥ハイペリオンは、その恩から勇者を背に乗せ大陸を飛び回る翼となった。
 ……が、その物語のなかで語られていない部分があった。
「ここです、大地の子らよ」
 ジェックたちを載せたハイペリオンはゆっくりとホバリングしながら、ある海上の島へとやってきていた。
 草原が広がり色とりどりの花がさく無人島……だが、『のどかな』と述べるにはあまりにも、あまりにも破壊されすぎていた。
 想像できようか。
 建物がまるごとひとつ入ってしまいそうなほど巨大な黒い卵が、島の中央に鎮座しているさまを。
 それもどこかから運ばれたのではない。地面をわって現れたかのように、そこにあった。
「ウィツィロに出現した卵と同じだね」
「スゥ――あんな卵がウィツィロにも!?」
 人語を思い出した澄恋が顔を上げると、ジェックはこくこくと頷いた。
「それでハイペリオンハウスが潰れたんだよ」
「なんですって!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「許せねえ! ノワールクロウぶっつぶしてやる!」
 澄恋の人語が再び消えかかった。
 一緒に覚醒したカイトもギョエーと吼えた。
「見てください」
 ハイペリオンに応じて卵を見下ろすと、頂点からぴきぴきとひびがはいり、殻が砕けていく。
 内側から現れたのは巨大な鴉の群れであった。
 全長にして3m近い鴉が、卵の砕けた穴より大量に飛び出しては円を描いて群れを成していく。
「古代獣……」
 カイトや澄恋やジェックの脳裏には、あの古代獣たちが街を滅茶苦茶に滅ぼしていく風景がありありと想像できた。かつて、同じように破壊された街を見たからだ。
「自由に活動させるわけにはいきません。まずはあの鴉たちを倒すのです。話の続きは、そのあとにしましょう!」
 ハイペリオンは聖なる風を纏うと、ジェックたちを載せたまま降下を始めた。

GMコメント

 このシナリオは空中戦が主となります。
 ハイペリオン様の特別な加護により『飛行』『簡易飛行』『媒体飛行』すべてでペナルティなく戦闘が可能になっています。
 どれも持っていない方でもハイペリオンの背から戦闘に参加できるので、自分の好きなスタイルを選択してみてください。

●戦闘パート
・成功条件:ノワールクロウγの大量撃破
 空中へ大量に現れたノワールクロウγの群れと戦闘します。
 基本的に飛行戦闘となり、闇を爪のように纏ったり闇を遠距離魔法にして発射してくるノワールクロウとドッグファイトを繰り広げることになるでしょう。もちろん空中で近接戦闘に持ち込んでもOKです。
 また、この戦闘には【特殊飛行戦闘ルール】が適用されます。

【特殊飛行戦闘ルール】
 ハイペリオン様の加護により『飛行』『簡易飛行』『媒体飛行』のすべてでペナルティなく戦闘が可能になります。
 いずれかのスキルないしは装備をもっていた場合、これを使用して飛行戦闘を行ってください。
 どれも持っていない場合でも、ハイペリオンの背にのって戦うことができます。

 また、ハイペリオンは今回多少力を取り戻しているので皆さんと一緒に戦うことができます。
 ハイペリオンは回避能力とHPが高く、治癒スキルを持ちます。風の魔法を使った攻撃も可能ですが、こっちはあまり得意じゃないようです。

●休憩パート
・オプション:ハイペリオンとたわむれる。話を聞く。
 ハイペリオンは沢山の古代獣を倒したことで力と記憶をそこそこ取り戻しており、自分の母(ははぺりおん)を殺めた怪物『真ノワールクロウ』のことを教えてくれるそうです。
 今回戦ったノワールクロウγはその分裂体であるらしく、全盛期のハイペリオンは同じように小型のハイペリオンを沢山生み出すことができたそうです。

 というわけで、平和になった無人島でハイペリオンと一緒にのんびり休憩しましょう。
 そのなかで思い出を語ってくれるはずです。

 余談ですが散逸した力がそのまま量産型ハイペリオンとして世界中に散ってそのまま闇市に流れたりしたそうです。完全に固体分離してしまったらしくハイペリオン様にぐいぐいおしつけても一緒につぶれるだけで融合したりはしませんが、同じ力でできているのでなんとなーく親近感をおぼえるようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <ナグルファルの兆し>ハイペリオンスカイハイ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月15日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
シラス(p3p004421)
超える者
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼

リプレイ


「初めまして、よろしくだよ!
 このヒトが神翼獣ハイペリオン様かー。クエストで羽根をもらったりはしてたけど、直接会うのは初めて。
 でもみんなハイペリオン様を吸ってるけど、そんなにいいのスゥーーーーーーーーーーーー」
 出吸いであった。
 挨拶もそこそこに、太陽に近くなったほこほこのハイペリオン様のお腹に顔をうめて深呼吸する『空歌う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)。
 空を飛んでいる最中なので基本は背だが、自力で飛べるアクセルならではのしがみつきであった。
 巨大なひな鳥ことハイペリオンも『あらあら』と笑ってそれを流している。
「ハイペリオンさん、様? お久し振り、ですね。背に乗って飛ぶのは初めてです。
 ハンマーランドでお会いしてからですから、そも覚えておられるかどうか、ですが」
 背のうえから声をかけるステラ『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)。
 ハイペリオンはわずかに振り向いて目をぱちくりとさせた。
「もちろん大地の子らのことは覚えていますよ、ステラさん」
「さすがハイペリオン様!」
 『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)もアクセルと同じようにお腹にしがみついて深呼吸すると、バッと顔をあげた。
「このままずっと呼吸していたいが、そろそろ行かなきゃな」
 ハイペリオンママに甘えるひな鳥と化しかけていたが、戦いを前に猛禽類の目に戻ったようである。
「スゥーーーーーーーーーーあ゛~~」
 ハイペリオン様キメてた『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)も顔をあげ、すぐ近くでまあるくなっていた量産型ハイペリオン様へと飛び乗った。
 なんか心がつながったのか、量産型ハイペリオン様からにょきっと澄恋っぽい二本の角がはえる。
「散々ぶっ叩いたはずなのにあンのクソ鴉共まだ諦めてないのですか!
 我らが伝説の白鳥であるハイペリオン様に危害を加えるなど言語道断
 産まれたばかりのところ申し訳ないですが
 全員土にお還りいただきます!」
「白い雲! 青い空! そして大きなハイペリオン様!!
 でかーい! しろーい! もふもふ~~~! そしてめっちゃかわいい!!
 あたしも一緒に吸っちゃう~~~~! スゥーーーーーーーーーーーー!
 ……じゃなかった! バトルだバトル!」
 おひさまの匂いとしろふわの毛皮に埋もれていた『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)ががばっと体を起こし、一緒にのっかっていた『大蛮鳥マジ・ス・ゲートリ』の顔を見た。なんかこっちをじーっと見ていた。
「えっなにゲートリ、そんな目しちゃって。
 おまえにはやらないよ? ハイペリオン様はいい匂いしてるけどおまえは血なまぐさ……え、そうじゃない?」
 ゲートリはクイクイって手招きの動作をすると、舌を出して首をビッて切るみたいな動作をした。
「あ、そうだったそうだった。オッケー飛ぼうぜぃ!」
 ゲートリへまたがると、ハイペリオン様の加護をうけたゲートリが風をまとって豪速で飛び始めた。
 空へと舞い上がるアクセル、カイト、それに並んで翼を羽ばたかせ大声をあげるゲートリ。
「このレベルで飛び回れるようになるとは。なら『Gペリ』殿も……」
 『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)がまたがっていたGハイペリオン様の頭に手をおいた。
「イエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
 なんかゲーミングカラーに光りながら首をめっちゃまわしていた。
「イエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
「…………どうしてこんなことに」
「イエエエエエエエエエエエエエエエエエ!」
 どうかしちゃってるアーマデルの量産型ハイペリオン様。
 『竜剣』シラス(p3p004421)はその様子を、というかその中心を飛ぶ巨大なハイペリオン様の様子を背中の上から眺めていた。
「丸い……これで飛べんのか、すげえな」
 よく考えたらハイペリオン様のこのボディでめっちゃ飛び回ってるのもすごいが、まわりの簡易飛行能力をもつ生物まで一緒に飛べるようにしているあたり、風にまつわる強い加護がハイペリオン様にはあるのかもしれない。
「一応今回のために飛行魔法をアクティブにしてきたが……ヲルト、そっちの準備はいいか?」
「ああ」
 『幻想の勇者』ヲルト・アドバライト(p3p008506)は赤いオーラのようなものを纏うとふわりと浮き上がった。
「空中戦か。経験はないが……まぁ、やってやれない事はないだろう」
 試しにひゅんひゅんと飛び回ってみたが、地上とかわらない程度に動けるようだ。これもまたハイペリオン様の加護というやつだろう。
「勇者王の翼、ハイペリオン様。
 近くで見るのはこれで2度目だな。
 名前を売っておいて損は無いだろう。勇者筆頭には選ばれなかったが、それは済んだことだ。オレの目的はリーモライザの名を売ること。まだオレの戦いは終わってない」
 ある意味それは一生続く戦いだが、それは言い換えれば『使命』である。
 『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)も同じように機敏に空へと飛び出すと、それまでしこたま吸いまくったハイペリオン様の感覚を残しながら呼吸を整えた。
 ばさばさとなびく赤い衣。
「今回の敵は黒いトリさんだね。
 けど、あんなに大きな卵なのに、中身は小さなトリさんだけなの?
 実は大きな子が中に潜んでたりしないのかなぁ」
「確かに、そこは気になるね……」
 『神翼の勇者』ジェック・アーロン(p3p004755)はケースからライフルパーツを取り出すと芸術的な速さで組み立てた。
「けどこの距離まできてアクティブにならないのは不自然だし、『からっぽ』になったと見るのが妥当かも」
 膝をついたハイペリオンの背。片手でそっと体を撫でる。
「ハイペリオン、だいぶ記憶が戻ったみたいかな……良かった。
 お母さんのことは……思い出してよかったのか、分からないけど。
 うん、折角キミを冠した称号を貰ったんだ。
 今はアタシ達が、この地を守るよ」
 ハイペリオンはジェックへ小さく振り返り、ゆっくりと頷いた。
「さあ行きましょう、大地の子らよ。黒き滅びの鴉から、大地を取り戻すのです!」


 黒い雲のごとく密集した巨大な鴉の群れ、ノワールクロウγ。
 集団は大きく広がり、こちらへまとめた敵意を向けてくる。
 プレッシャーは実を伴い、呪いの弾幕となって飛来する。
 ハイペリオンはヒュッと息を吸い込むと風の障壁を作り出し周囲を聖域化。朋子を先頭とした三次元鏃型の編隊飛行をもって弾幕の中を突き抜けていく。
「よっしゃゲートリ、いい飛びっぷりだ! みんなもイイぞ!」
 その真横についたシラスが、ノワールクロウの集団を広く目視した。
「敵の数が多いな。しかもハイペリオンをタゲって広がってるくさい。どうする、正面突破してバックアタックを狙うか?」
「んーいや……連中、空中でクイックターンできそうな気がする。そうなったら突破損だし、いっそ囲まれてやろう」
 朋子は指でくるくると輪を描く動作をした。
 その動きで概ねを理解したシラスは、仲間たちにハンドサインで先に行くことをしめした。
 ハイペリオンの防衛を任せるサインを送る朋子。
「ふたりとも攻撃の仕方がちがうから得意分野で手分けして」
 そこまで指示をすると、朋子はゲートリの脇腹を靴でぽかんと叩いた。
 馬にするような合図だが、どうやらバッチリ通じているらしい。
「いけー突っ込めゲートリ! たーのしー!!」
 ビュンと勢いよく先頭をきって突っ込んでいくゲートリ&朋子。
『朋子、ネアンデルトマホークだ』
「オーケィ!」
 朋子は『原始刃ネアンデルタール』を大きく振りかぶると、オラァといいながらぶん投げた。
 空中をものすごい勢いで回転しながら飛んでいった『原始刃ネアンデルタール』がノワールクロウの一体へ激突。跳ね返ってとんだところを、真横を通過しながら朋子がキャッチしていく。
「どんな無茶な動きも普通に飛ぶ時みたいに一気に飛べるー! すごい! 体が軽い!」
「装備に加え、ハイペリオン様の加護を得た俺に負けはない!」
 そこへ続いて突入するカイトとアクセル。
 ローレットが多々携わってきた空戦ミッションのなかで幾度も活躍してきた二人である。そんな二人でもハイペリオン様の加護をうけての飛行は気持ちがいいらしい。
「さすが鳥の神様だぜ!」
「あー! これからもずっと一緒に飛んでくれないかな!」
 アクセルは錐揉み回転しながらノワールクロウの集団へ突入。弾幕をすり抜けると突如ひらいた翼の衝撃でノワールクロウたちを吹き飛ばしていった。
 その中をジグザグに赤いラインを引きながら飛んでいくカイト。
 カーブのたびに放った爆翼がノワールクロウたちに突き刺さり、追跡して飛んでくるノワールクロウへ翼を畳んだ宙返りひねりによるクイックターンで向き直った。
「来い!」
 魔法の鉤爪をむき出しにして突撃してくるノワールクロウたち。
 しかしカイトは素早いターンで彼らの間をかいくぐり、驚きに振り向いたノワールクロウたちへシラスが全く別の方向から迫った。
「ハッハァーッ、体が軽いぜ!」
 残像すら残す勢いで周囲のノワールクロウたちを蹴散らしてく。
 その姿に、ノワールクロウの一体が目を向いた。
「その冴え、その輝き……貴様、噂に聞く新世代の『勇者』か!」
「ああ、そうだ」
 ノワールクロウを踏みつけ、逆三角形を描くスマートなポーズで腕を組んでみせると顎をあげた。
「勇者アイオンから王位を受け継ぐフォルデルマン三世より直々に新勇者――『竜剣』の称号を拝命した、勇者シラスだ」
 この堂々とした挑発に、ノワールクロウたちが一斉にくらいつく――が、その動きはおそすぎると言わざるを得ない。
 シラスの姿はすでにそこになく、はるか遠くへと離脱していた。
「Я・E・D(レッド)!」
「はい、一号機『Я・E・D』――撃ち抜くよ」
 急速旋回するハイペリオンの中央でビッと指をつきつける動作をしたЯ・E・D。
 吹き出た黒いオーラがマスケット銃の幻影をつくり、無数にブレながら大量の弾幕をはった。
「ハイペリオン。また一緒に戦えて嬉しい」
 直線上に並ぶノワールクロウたちをまとめて撃ち抜くと、旋回飛行によってそちらがわを向いたハイペリオン……の頭上に陣取ったジェックとステラが同時にライフルとバスター砲を構えた。
「これで何度目かな、キミの背は戦いやすいネ」
 ガスマスク越しに笑い、発砲。
 ジェックのはなった特殊弾が空中で炸裂し、ノワールクロウたちを穴らだけにしていく。
 一方のステラもまた両手に構えたバスター砲を乱射。
「ジェックさんみたく狙撃は精密な苦手ですが、砲撃と範囲攻撃で纏めて吹き飛ばすのなら、それなり――得意!」
 打ちまくった後にマガジンを放り出し、バスター砲を範囲砲撃(ランチャー)モードへ連結すると、大きなミサイルを発射した。
 と同時にヲルトが飛び立ち、ミサイルと並行して飛んでいく。
「今だ!」
 ヲルトがノワールクロウたちのヘイトを稼ぐと同時にミサイルの外装がパージされ、内部に大量に詰まっていたペンシルミサイルが全方位に発射されていく。
 激しい爆発の中唯一無事であったヲルトは長い前髪を払い、フウと息をついた。
 すると、ノワールクロウたちは不利を悟ったのかヲルトたちから距離をとりはじめた。
「ハイペリオン。貴様がここまで力を取り戻していたとなは……ならばこちらも、切り札をきるしかあるまい」
「待て」
 アーマデルはゲーミングカラーに光りまくるGペリにまたがって回り込み、ノワールクロウの退路をふさぐ。
 『しまった』とつぶやいたのち『なんだそれは!?』と二度見するノワールクロウに無表情でこたえると、アーマデルは『英霊残響:怨嗟』を発動させた。
 流れる音色がノワールクロウたちに予め浸透した病を内側から爆発させ、彼らをはるか下の海へと墜落させていく。
「ツノペリオン様、バトルゴー!」
 次々と墜落するノワールクロウの間を蛇行して駆け抜けるように、澄恋は角の生えた量産型ハイペリオンのつのを握ってぴょんとまたがり姿勢からかがみ姿勢へとシフトした。
 ちょうどツノペリオンの背でかがむような格好になった澄恋は飛行の勢いにのったまま――。
「じ・ご・く・に・お・ち・ろ・☆」
 ノワールクロウの一体めがけてドロップキックを叩き込んだ。
 そしてあとから飛んできた薙刀をキャッチ。
 ノワールクロウをけって再度飛び上がると、薙刀の刃とこじり双方にエネルギーをわたらせ、ムーンサルトジャンプと同時に横一文字で薙ぎ払った。
 空に描かれた斜めの斬撃が、ノワールクロウたちの翼を切り落としていく。
「くっ、幻想の勇者どもめ……!」
 かろうじて生き残ったノワールクロウは羽ばたきを強めると、澄恋たちから猛スピードで飛び去っていく。
 戻ってきたツノペリオンにすぽんと着地(?)した澄恋は、追いかけようにも遠すぎることを指を立てた三点計測でおおよそ察して肩を落とした。
「ともあれ、ノワールクロウの撃退には成功しました。島へ着陸しましょう」


「ちょっと失礼して……よいしょ。うひゃー、あったかふわふわだぁ」
 はれの日の草原。ぺたんと座ったハイペリオン様の背によりかかると、朋子は二秒で爆睡した。
 すごい速さだ……とつぶやいてから、飲み物を持ってきたヲルトに礼をいってそばに座るシラス。
「そういえばハイペリオン。俺たちのことを『大地の子』って呼ぶよな。あれってなんでだ?」
「母の言い方がうつった……のだと、今ならわかります」
 こっくりと頷くハイペリオン。
「私の生まれた場所は空の上。ふしぎな力で浮遊する島アーカーシュでした。生まれた当時の記憶はあまりありませんが、大地で生まれた人々と自分たちを区別して呼んでいたのだと……おそらくは」
「なるほどね……」
 ハイペリオンを再びもふりながら、Я・E・Dがちらりと横を見た。
 量産型ハイペリオンのGペリとツノペリがてってこ追いかけっこをはじめ、そこへカイトの連れてきていたアカペリオンが加わってじゃれ合っている。
「たしか、あのちっちゃいハイペリオン(?)はハイペリオン様から分裂した個体なんだよね。性格も見た目も違うみたいだけど……ノワールクロウもそういうふうにしてあの群れができたのかな」
「おそらくはそうでしょう。アーカーシュで生まれた悪しき力が、私の母ともいうべき先代ハイペリオンから神性(ちから)を奪って生まれたのが真ノワールクロウです。
 幻想各地に発生したという卵は、その復活を試みたもののはず。
 霊廟スラン・ロウの封印解除とともに私達が目覚めたことにも、おそらくは関係しているはずです」
「スラン・ロウ……ですか」
 ステラはすごい真剣な顔で呟いた。
 訂正する。
 ステラはすごい真剣なかおででっかい大型犬用ブラシをハイペリオンにサーッサーッてかけていた。
 整った毛皮に手を触れ、ほっこりと顔をゆるめる。
「ふかふか……」
「なるほどたしかに……」
 ブラッシングした部分に手を触れてほうほうとうなづくアーマデル。
「Gペリ殿も肌ざわり抜群だが、やはり本家は格別だな。
 三秒で眠るのもわかる。うとうとし始めると光るんだもんなGペリ殿……」
「それは眠れない……」
 ふと見ると、澄恋がGペリやツノペリたちにクッキーを振る舞っていた。
 バスケットをもってハイペリオンのところまでやってくると、口元へとクッキーをのばしてやる。
 ありがとうといってかじり、もぐもぐするハイペリオン。
「美味しいお菓子ですね。ありがとうございます澄恋さん」
「どういたしましスゥーーーーー」
 好きあらばハイペリオンの呼吸。
 同じくアクセルとカイトも頭を埋めて呼吸していたが、むくりと起き上がって量産型ハイペリオンたちへ振り返った。
「あの子達とハイペリオン様は同じだけど違うもの……なのかな?」
「確かに、ハイペリオン様とママペリオン様の関係性とは違いそうだな」
「たしかに」
 ハイペリオンは白くて巨大な卵を想像した。ほわほわと。
「母は次世代のハイペリオンへ力を引き継ぐため、自らの力を使って巨大な卵を作り出し、その中で育った力で私を生み出しました。
 いま地上に現れている黒い卵たちは、そうした力を内部で育てるための機関なのでしょう」
 ジェックは片手でハイペリオンをさわさわしながら同じ卵を想像した。
 ふとみると、島にあった卵が自然と砕けるように消えていく。
「あのように、力が抜けきった卵は消えていきます。しかし力があるまま無理に破壊すれば……」
「力は爆発して、強力なモンスターを生む……か」
 やがて力はひとつに集まり、真ノワールクロウを復活させるだろう。
 怪物たちが列をなし、地上文明の破壊にのりだすのだ。
「そのときは……」
「はい。共に戦いましょう。幻想の勇者たちよ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ハイペリオン様との対話から以下のことがわかりました

・ノワールクロウは大本である『真ノワールクロウ』の分裂体である
・各地にうまれた卵はその力を集積、成長させ『真ノワールクロウ』の再誕を目指すものである
・無理に破壊すれば力が爆発して周囲に甚大な被害を及ぼすが、一点に集まり『真ノワールクロウ』が再誕したその瞬間が逆に安全に『真ノワールクロウ』を倒すチャンスである。
・その時には必ず、ハイペリオン様は全力で一緒に戦ってくれるだろう。

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