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シナリオ詳細

再現性東京2010:散りゆく夜桜と共に

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 練達の一区画に存在する再現性東京。
 希望が浜と呼ばれる地域は異世界『地球』から召喚された者が多く住んでいた。
 彼らは無辜なる混沌という世界を受け入れることができず、この地域で前いた世界と同様の生活を求めたのだ。
 ある地域は西暦2010年代の東京と呼ばれる地域を思わせる街並みをしている。
 コンクリート製の高層建築が多く建てられ、その中での日常を過ごそうと日々を過ごす住民達。
 しかしながら、混沌の理ゆえか、それとも再現性東京の土地柄なのか、続々と現れる怪異は彼らに安息を与えはしないのである。

 再現性東京で過ごすことに決めた人々は、この地域で過ごすべく事業を起こす者も少なくない。
 この地域には日々の糧を得るべく会社の為にと働く商社マンも存在しているのだ。
 異世界に来てまで、そうした仕事を求めた人々。いや、彼らにはそれしかできなかったのだろう。
 とはいえ、仕事である以上、様々な要因でストレスは溜まる。そんな彼らにとって、新入社員が入ってくるこの時期に行われる花見会は日々の鬱憤を発散させる絶好の機会だった。
 陽が沈む頃、桜の名前から染井吉野と名付けられた名所にて、桜の木々の下でスーツ姿の成人男女が集って。
「よーし、我が隊商商事の発展を願って……かんぱーい!」
「「かんばーーーい!!」」
 彼らは主に再現性東京における物資の販売を中心に商業を行う隊商商事の者達。
 その名は、彼らの仕事とは切っても話せぬパサジール・ルメスから来ており、キャラバンの和名から隊商と名付けたそうである。
 基本的には再現性東京を渡り歩くのが彼らの仕事だが、時折、出張として混沌世界各地を巡ることもあるというから、再現性東京にあって嫌でも世界を知らねばならぬというジレンマに陥らねばならぬ社員達。日頃から抱えるストレスは並々ならぬものだろう。
「よし、飲め飲めぇ!!」
 社長は還暦前後と思われる白髪交じりの男性。
 彼の勧めもあって、社員達が飲んでいるのはビールや果実酒がほとんどだが、中には焼酎や遠い豊穣の地で生産された清酒なども振舞われている。
 彼らは語り合い、懐かしき故郷の地で歌われていた歌を口ずさみながらも、遅くまで飲み明かそうとしていたのだが……。

 夜も更けた頃、それは突然姿を現す。
 花見をしていた隊商商事の社員達もほろ酔いになっており、中には酔いつぶれて眠っていた者もちらほら。
 そんな中、いきなり地面から突き出すように何かの腕が現れた。
「ハハハ、あんだぁ、これは」
 顔を真っ赤にした課長が笑いながらその腕に近づいていくと……地面から全身を現したゾンビのごとき怪物が姿を現す。
 アアアァァ、アアッ、アアアアアアっ!!
「う、うぎゃああああっ!!」
 汚れた爪で引っかかれ、牙で噛みつかれた課長は瞬く間に赤い物体となり果ててしまう。
「「ひっ、ひいいいいいいいっ!!」」
 かなり酔っていたはずの社員達の酔いは一気に醒め、その場から一目散に逃げ出していく。
 だが、その行く手には新手の怪物が……。
「「うあああああああああああっ!!」」
 その後、数人の社員が犠牲になりながらも、彼らは命からがら染井吉野を後にしていったのだった。


 この事件については、再現性東京に詰めていたローレットイレギュラーズを通して、幻想ローレットにも伝えられることとなる。
「桜の名所に現れる夜妖の討伐依頼が届いています」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が集まったイレギュラーズ達へと事件について説明する。
 再現性東京某所にある桜の名所「染井吉野」に現れたのは、ゾンビのような姿をした夜妖。
 それが近隣で事業を営む会社員達が花見を行っていた場に現れ、多数の死傷者を出してしまう。
 事件発覚後、その名所は夜妖討伐まで閉鎖されることとなってしまった。
「夜妖を倒せば、この事件は一旦終了すると思いますが……、何せ桜の時期も終わりかけています」
 早く討伐を完了せねば、桜の見頃が終わってしまう。それでは討伐が終わっても意味がない。
 討伐さえできれば、そのまま夜桜を見ながら宴会を行っても構わないとアクアベルは話す。
「資料はこちらです。後のことを考えつつ夜妖の討伐に当たっていただければ幸いです」
 それではよろしくお願いいたしますと頭を下げ、アクアベルは説明を締めくくったのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 桜の名所に現れるという夜妖を討伐していただきますよう願います。

●概要
 全ての夜妖の討伐。

●敵……悪性怪異:夜妖<ヨル>
◎無念の花見客×8体
 桜の名所に埋められた死体と思われる存在が夜妖となってしまい、凶悪な力を得て無関係の花見客を襲うようになった……とされていますが、想像の域を出ません。
 ゾンビを思わせる容姿ですが、思った以上にその動きは俊敏です。
 高く飛び上がって桜の枝の上から相手へと飛び掛かり、汚れた爪を薙ぎ、鋭い牙で喰らいついてくるなど、動きに気を付けて討伐を行う必要があるでしょう。

●状況
 舞台は希望ヶ浜にある桜の名所、染井吉野。桜の名前をそのまま漢字に当てた地名のようです。
 時間は夜、夜半近くになる頃になって夜妖は集団で出現するようですので、討伐を願います。
 また、戦場はそのまま桜の木々の中となります。

 事後は夜桜をお楽しみくださいませ。飲食物の持ち込みはご自由にどうぞ。
 羽目を外すのは結構ですが、公序良俗に外れすぎる行いをすると悪名がつく恐れがありますのでお気をつけくださいませ。
 また、明らかに未成年の方には飲酒、喫煙描写ができませんので、容姿がやや幼めで年齢不詳の方などはプレイングでなんらかのアピールを願います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 再現性東京2010:散りゆく夜桜と共に完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月29日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)
白き寓話
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
陰陽式
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ


 練達再現性東京、「染井吉野」と名付けられた桜の名所。
 今なお桜咲くその場所は事件を受けて封鎖されていて一般人は不在だが、イレギュラーズ達はその内部へと踏み込む。
「今年はゆっくりお花見も出来なかったなーってしょんぼりしてたけど、まだ咲いてる所があったなんて!」
 オレンジのポニーテールを揺らす『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)は一面の桜に紫の瞳を大きく見開くが、すぐに表情を引き締める。
「また桜の名所で悲惨なことが……」
 どうやら、蒼い髪の精悍な鉄騎青年『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は幾度か似た場所で事件に立ち会っているのか、桜が綺麗なだけでなく、地獄、不幸といったモチーフになっていないかと訝しむ。
「美しいものには何かわけがあるってな……」
 それに白スーツ着用の獣種、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が乗っかり、桜の花が綺麗なのは木の下に埋められた死体の養分を吸っているからだという怪談、あるいは事実としてありがちな話と語って。
「桜の下の死体――そんなものは、所詮は怪談の類と流せるからこそだ。現実にして貰っては困るのだよ」
 ただ、白い髪から猫耳を突き出す『流麗花月』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は風情というものが無くなってしまうと即座に否定する。
「夜妖は実際の心霊とは異なるもの……だったかちょっと曖昧だが」
 褐色肌に黒髪ショートの『霊魂使い』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)は事前に記した簡素な敷地内の平面図に一度視線を落として。
「……犠牲者が出たばかりだ。霊魂疎通できる霊はいるだろうか?」
 彼は周囲の霊へと呼びかけ、夜妖を片付けるからその接近、不意打ちを知らせてほしいと頼んでいた。
「……流石に、実情を最悪な形で見せられるのは気分が良くないわよね」
 人形さながらの印象を抱かせる『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)は小さく頭を振る。そんな話が往々に出回る実状を認めるわけにはいかない。
「こういった怪談話は酒の肴にもってこいなんだが……」
 そこで、ジェイクが話を止めて身構える。一行の前に複数の人影が現れたのだ。
 アアアァァ、アアッ……。
 着ている衣服はボロボロ。体も朽ちかけた彼らはかつて花見を楽しんでいた者達。今は何らかの要因によって夜妖となり果ててしまっている。
「お花見の途中で死んじゃうなんて……可哀想だね」
 普段は利己的な自称会長の『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)だが、今回ばかりは相手に同情を見せる。
「花見客さん達、苦しいのかな……。でも、襲われた人たちも痛かったよね」
 ぼんやりとした猫のような少年、『淡き白糖のシュネーバル』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)もまた、さながらゾンビとなった夜妖を気遣いつつも、命を落とした他の花見客のことも気がけて。
「せめて、ゾンビさん達を倒して……ここから解放しよう」
 それぞれが今度は幸せに、怪我もしないでお花見ができるようにと祝音は小さく祈る。
「これは早く成仏させてあげないと!ㅤそして会長達がお花見して供養してあげよう! 会長はだんごが食べたい!」
「さっさとゾンビを退治して、皆で花見を楽しもうぜ」
 状況を見かねる茄子子は本音も吐露しつつ戦闘準備を整えるが、それにジェイクも同意して目の前の敵を倒すべく2丁の銃を抜く。
 アアアァァ、アアアアアアアアッ!!
 こちらが敵意を示す前に、叫び声を上げる夜妖らも大きく口を開いて飛び掛かってくる。
「死んでも動かされるなんて、可哀想に。早く終わらせてあげるとしましょう」
 そんな相手にヴァイスは憐れみを抱きつつ、術式を展開していくのである。


 視認できる夜妖は6体。事前情報よりも少ないこともあり、イレギュラーズは警戒を強める。その動きが見た目以上に素早いこともあって余計だ。
「迷える魂が往くべき処へ逝けるよう、努めよう」
 犠牲者も出ており、放置などできる相手ではない。
 アーマデルが使うは、死神の眷属「捩れた一翼の蛇の吐息」の名を持つ果実酒の香。
 鮮やかに赤いその液体から放たれる芳醇な香りは、死神の加護無き者の喉を焼いてしまう。
 アアアァァ……!
 その叫びは無念によるものか、はたまた恨みのせいか。
「夜妖さん達も、悪性になっちゃう事情があるみたいだけど……皆がびっくりしちゃうから、倒さなきゃ!」
 仲間全体を支援する為、フランはメンバーの中央に位置取って。
「全力で支えるから、思いっきり戦っちゃってー!」
 フランの前向きな一言は、戦う仲間達の力となる。彼女自身もまた力を高め、早速夜妖の攻撃にさらされる仲間達へと鮮やかな緑の葉を降り注がせて祝福を与える。
「会長はヒーラー……とアタッカーをやるよ!」
 仲間達へと宣言する茄子子は移動しつつ仲間の支援に当たり始める。
 初手は仲間達へと福音をもたらし、各自を光り輝かせていたが、彼女が気がけていたのは仲間達の気力や魔力。
「会長が十分に補填するよ、強いスキルいっぱい使って短期決戦で倒しちゃおう!」
 自身の能率の高さもあり、仲間へと手厚くスキルが使えるようにと茄子子はあちらこちらへと立ち回る。
「こっち会長がやるから、フランくんそっちよろしく!」
「わかったよ!」
 2人の息は合っており、仲間達へとこれ以上ない支援の手を差し伸べていく。
「さすが、優秀なヒーラーだ。心配など不要だな」
 ジェイクはそんな支援役の2人へと軽くウインクしながらも、イズマと共にチームのタンク役を請け負って前線へと立つ。
「お前達の無念は全て俺達が引き受けてやるよ! 遠慮しないでかかってこい」
 アアアアァァ……!
 すると、枝の上に潜んでいた1体が群がる敵に交じってジェイクへと襲い掛かってくる。
 汚れた爪は毒に加えて満足に呼吸ができなくなる効果もあり、口を開けたかぶりつく鋭い牙には少量の出血を伴って軽い麻痺の効果もあるようだ。
「とにかく、桜を再び楽しめるようにする為、夜妖は迅速に討伐しないとだな」
 万人のことを考え、殲滅に当たるイズマは片側を抑えるジェイクと共に、名乗りを上げて別方向の敵を引きつける。
 こちらにも枝から飛び降りてきた1体が汚れた爪を横薙ぎに振るってくるが、イズマはそれを受け止めつつ奇襲気味に格闘を混ぜた剣戟を見舞い、夜妖を圧倒しようとしていた。
 時に夜妖は高く跳び上がり、素早い連撃を見舞ってくるが、連携をとるイレギュラーズに死角はほとんどない。
 襲い来る敵はジェイクとイズマが引きつけてくれている。汰磨羈は彼らから気が逸れた敵を優先気味に攻め入る。
 彼女の剣は魔技となり、周囲に霙を発生させる。低温の刃は冷たい骸でさえなおも凍えさせるような一撃を与えていく。
「さて、早く眠りにつけるように、時間はかけないようにしましょう……だって、可哀そうでしょう?」
 体の一部を凍らせた相手へと、もう一人の自分の可能性を纏ったヴァイスが続けて攻撃を行い、桜の木々など周囲に満ちたエネルギーを集約させてから解き放ち、前方へと暴風を巻き起こす。
 それに巻き込まれた1体が耐えきれずに体を崩していたが、まだ敵は多い。
 できるだけ早く夜妖を倒すべく注力をとさらにヴァイスが剣で切りかかる相手へ、祝音が小さく謝る。
「ごめんね、ゾンビさん」
 お花見の場所には合わないとは考える祝音だが、氷の鎖で仲間へと爪や牙を振るう夜妖の体を縛り付ける。
 アアァァ、アァ、ァァ……。
 しばらくもがいていた夜妖だったが、やがて抵抗する力もなくなったのか倒れてしまう。
 祝音はまた小さく謝ってから、次なる敵に攻撃すべく怨霊を呼び寄せるのである。


 残る夜妖……無念の花見客は6体。
 見た目は他でも見かけるゾンビのようではあるが、その動きは非常に素早く、高く跳び上がってから枝からの奇襲を企ててくるなど、油断はならない。
 それらに対し、アーマデルは毒手の一撃を突き入れ、蛇銃剣で斬撃銃撃を捻じ込み、疫病や呪殺とその身を苛む。
 様々な苦しみを抱える夜妖達は、数で一気に押し切ろうと群がってくる。ジェイクやイズマがそれらを抑えるが、さすがに傷が重なると厳しい。
 そこで飛び出したのは祝音だ。彼は一時的に盾役としてカバーに入り、手甲からふわりと溢れる白い光で仲間達を癒す。
 的確な状況判断ができる仲間の存在は非常にありがたいと感じながら、ジェイクはさらに夜妖らに名乗りを上げる。
 目の前の敵へと仲間達の攻撃が集まっていたが、ここぞとジェイクも膨張した黒い顎をけしかけていく。
 それに食われた夜妖は黒い牙を体深くまで突き入れられ、地面へと伏せて動かなくなってしまった。
「……もうあなた達の足元には、今のような苦しみを抱えている人たちは眠っていないのよね?」
 ヴァイスもまたさらに、やや前のめりな体勢で術式を展開する。
 通常攻撃を得意とする彼女は敵から距離をとっての攻撃を繰り返していたが、時に夜妖は高く跳び上がってヴァイスの背後をとろうとしてくる。
 その汚れた爪は彼女の首へと薙ぎ払われる。気を抜くだけで致命傷を受けてしまいかねない。
「あたし達がいれば、戦闘不能も息切れも絶対ない!」
 すぐさまフランの手当てが入ったことで、傷を塞いだヴァイスが再び暴風を起こしてそいつを吹き飛ばすと、イズマがすぐさまカバーに入ろうとする。
(桜を傷つけるのは避けたいからな)
 イズマは近場に気がないことを確認し、そいつ目掛けて膨張した黒い顎をけしかける。
 大きく口を開けたそれは夜妖を噛み砕き、その体を呑み込んでしまった。

 その後もイレギュラーズは夜妖を自由にさせぬよう立ち回りながら、攻撃を手が途切れぬように続けて。
 仲間が万全に立ち回れるよう回復支援を続けるフランだが、時には敵陣へと強烈な光を浴びせかける。
「残念でしたー。ヒーラーだって守られてばっかじゃないんだよ!」
 前線の1体が光に灼かれて崩れ落ちれば、茄子子もまた仲間達の攻撃の合間を縫うように花吹雪を巻き起こす。
「今回は特別だよ! 早く成仏させてあげたいからね!」
 時刻は夜。地面には多数の散った桜。茄子子が起こす嵐は夜に巻き起こる幻想的な舞いにも見えて。
「とりゃ! 成仏してくれー!!」
 やがて燃え上がる複数の炎舞が1体の夜妖に集まり、その身を大きく炎上させる。嵐が収まったとき、燃え尽きた夜妖は完全に灰と化してしまった。
 アアアァァ、アアアァァァァ……。
 数が減った夜妖だが、退く気は全くないらしく、ただただイレギュラーズに飛び掛かってくる。
 後は状況を考えつつ立ち回り、確実に討伐するのみ。
 状態異常で相手を苛んでいたアーマデルも、状況が整ったところで万死の一撃を繰り出す。
 アーマデルが呪王の腕は捉えた夜妖を離さず、確かな滅びを与える。敵もなすすべなくその身を崩してしまっていた。
 そして、残る1体は盾役が抑える間に汰磨羈が多角的な攻めによって連撃を与え、逃げ道を塞ぐ。
 敵の背面へと回りこんだ汰磨羈は敵を翻弄し、相手の噛みつきを避けてから足を薙ぎ払う。
 体勢を崩した敵へと、汰磨羈は縮退させたマナを打ち込む。
「この後は楽しい花見タイムなのでね。早々に散ってくれないか?」
 刹那、歪んだ時空が元に戻ろうとする中、夜妖の体はその復元力によって身体を引き裂かれて。
 桜の花舞い散る中、その体は大きく弾け飛んでしまったのだった。


 全ての夜妖を倒したことで、彼らは皆土へと還っていく。
 それらの敵を排除してなお、汰磨羈は警戒を怠らずに周囲を索敵し、残りがいないことを確認する。
 さらに、彼女は念の為にとイズマらと共に戦闘の跡を片付けながら桜の木々を見て回り、本当に埋められた死体が出てきたのかと確認をする。
 なお、土が掘り返された穴は発見できなかったようである。
「……ほんとは夜妖さん達も、こうやってゆっくりお花見したかっただけなんだよね?」
 フランも精霊疎通で土の精霊に何か埋まっていないかと尋ねたのだが、実際に何らかの要因で亡くなった者がいた様子。
 フランが墓を作り、手厚く埋葬すると、アーマデルは成人だっただろうからと酒や缶つまを、ジェイクも持参した団子と日本酒を供える。
「暴れたくなったらまた相手をしてやっからさ。暫くは大人しくしててくれよ」
 そんなジェイクの言葉に、皆、命を落とした花見客が穏やかな気持ちで眠れることを祈るのである。

「後はお花見ね!」
 ヴァイスの叫びで、皆気持ちを切り替えて花見を楽しむことに。
 汰磨羈が桜の木の下にシートを敷く隣、祝音も笑顔を浮かべてビニールシートを並べて。
「可愛い猫さん柄の買って来たんだ」
 祝音は今夜の為に頑張って作ったとお弁当箱を取り出す。その中には、おかか、昆布の入ったおにぎりや卵焼きにウィンナー、うささんりんごと手間暇かかったおかずが並ぶ。
「皆で食べる用に少し多めに持ってきたから、食べてもらえると嬉しい」
 水筒にはお茶、ペットボトルのジュースと、祝音は仲間達へと準備した飲食物を振舞う。
「お酒は1年後にならなきゃ飲めないから、ジュースもらうね!」
 フランはそう言いつつ、祝音のお弁当やイズマが用意した軽食から焼きそばを拝借して食べ出していた。
「会長だんご食べたい! 三色のやつがいい!」
 茄子子もまた希望通りの団子を口にし始めると、それを持参したイズマはお茶を飲み、頭上に咲く桜を眺める。
「一応、ギルドで取れたお花から作ったリキュールなんかを用意したのだけれど……」
 ヴァイスは庭園に咲くバラやハーブなどをベースにしたものを振舞うが……。
「会長お茶飲みたい! 急須で淹れたやつがいい!」
 茄子子は下戸だからと、仲間の淹れたお茶で喉を潤していたし、イズマも酒はあまり飲まないとのこと。
 アルコール類を口にしていたのはジェイク、汰磨羈くらいのもの。
 ヴァイスはジュースにすべきだったかと少し残念そうな様子だったが、アーマデルに同行する酒蔵の聖女が代わりに飲み始めていた。
 霊である彼女は酒の嗜み方を教授しようとするのだが、全身で酒を堪能するとその身に浴びて。
「……いや、浴びるのは違うんじゃないか?」
 未成年のアーマデルに酒の良し悪しはわからないものの、彼女に思いっきりツッコミを入れる。
 また、「捩れた一翼の蛇の吐息」によって出現させた果実酒は自分以外飲むなと提供しないよう忠告し、アーマデルは適当に買ってきた総菜と持参のお茶のボトルを……。
「……待ってくれこれ、お茶じゃなくてスムージー。いつのまに……」
 これも、アーマデルを取り巻く霊の仕業だろうか。そんな彼に、互いに持ち寄った飲食物を口にする仲間達から笑顔が浮かぶ。
「ゾンビ退治の直後に酒盛り、というのも中々に奇妙だな?」
 酒を嗜む程度に飲み、つまみを楽しむ汰磨羈が桜を仰いで。
「五千年を超える月日の中で、数え切れぬ程に眺めてきたが。いやはや、見飽きぬものだ。この美しさは」
「豊穣で花見をしたことはあるけど、再現性東京の花見もいいね」
「花は……まぁ、うん……綺麗だね! ピンクで!」
 イズマも暗い夜に鮮やかな花を咲かす桜も、昼とは少し違っていいものだと愛でる。直後に茄子子も同意しようとするが、花より団子な彼女の行動にまた笑いが起きていた。
「わいわいするの、楽しいね」
 祝音も嬉しそうに仲間達の様子を眺めていたが、そこに歩み寄ってきたのは一匹の猫。食べ物の匂いを嗅ぎつけてきたのだろうか。
「……ふふ、可愛い」
 祝音は猫でも食べられそうな自作の料理を少し分け与えると、猫はお腹を空かせていたのか勢いよく食べ始めていた。
 一方、お腹を満たした茄子子がうつらうつらと眠気を感じて横になってしまって。
「……寝てもいいかな。花見客のみんな、ちゃんと成仏してるといいな」
 一言残して寝息を立て始めた彼女と共に、祝音の傍にいた猫も満足したのか眠り始める。
「桜の時期も、終わり……。来年も、綺麗なお花が咲いて、お花見する人で賑わうといいな」
 今はイレギュラーズしかいない桜の名所だが、来年はこの染井吉野の地が沢山の人で行き交う場となるよう祝音は願うのだった。

成否

成功

MVP

祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは戦闘での立ち回りと仲間のカバー、加えて仲間の為の弁当作りと見せ場の多かったあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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