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シナリオ詳細

スライムガールテンプル

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●潰れろ流れろ溢れでろ!
 ペインブレナ神殿跡は大きな地下空洞に作られた古代遺跡である。
「この場所は鉱物資源採掘の途中で見つかったそうデス。
 領主貴族は発見の功績をフィッツバルディ様に献上すべく、人を遠ざけてこうしてワタクシを調査に遣わせたのデス」
 エキゾチックな風貌をした老人が、長いあごひげを撫でながら大仰な様子で語った。
「調査、ね」
 護衛についたのは四十代なかばの傭兵だ。力自慢で大きな斧を担いでいる。
 彼は粗末な坑道を先行し、カンテラを掲げて進んだ。
 薄暗い穴を抜ければ、不思議と明るい空間に出るのだ。
 驚くほど高い天井。広いスペース。その大部分を占める、神殿と呼ばれる建物。
 あちこちに火が灯って、不思議な揺らめきを見せていた。
「第一、なんで神殿なんて呼ばれてんだ? 確かにそれっぽい見た目はしてるがよ」
 傭兵の言うように、建物は等間隔に並んだ柱と大きな屋根でできていた。
 柱は大きく、直径は2メートル近い。白く美しい石でつくられているようだ。
 老人が目を見開いて駆け寄った。
「おお、あれが……!」
 勝手に走るなと声をかけるが、老人は足を止めない。神殿の中へ駆け込んでいく。
 傭兵がため息をついたその直後。
「ぎゃああああああああああ!」
 悲鳴。
 傭兵は慌てて走り、神殿の中へ飛び込んだ。
 そこで目にしたのは、三つのものだ。
 腹を貫かれてけいれんする老人。
 腕を剣に変えて老人の腹を貫くゼリー状の女。
 その女の、生気を感じさせぬ表情である。
「くそっ、モンスターが潜んでいやがったか!」
 剣が美しい腕の形に変わり、老人から引き抜かれる。崩れ落ちる老人を見下ろすゼリー状の女めがけ、傭兵は自慢の斧を叩き付けた。
 ずばん、と真っ二つに裂ける。
 が、女は左右に裂けた顔それぞれで端正な笑顔を作って見せた。
 すぐに切断面が接合され、男を抱くように腕を伸ばす。
 逃れる間もなく抱き寄せられ、沈み、包まれ……焼けるような熱に悲鳴をあげた。

「その後のことは覚えていない。俺は仕事に失敗し、顔は酷いことになった。まあ、何日かすれば直るだろうが……失った信用は戻りそうにないな」
 傭兵の男は酒場でビールジョッキを手に、そう語った。
 お話をありがとうございますとコインを手渡す『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。傭兵は帽子を深く被るとテーブルをたった。
「お話の通り地下神殿に現われるモンスター……を、退治するのが今回のお仕事なのです。
 土地を納めてる貴族さんからの依頼が、調査から敵の排除に変わったのですね」
 話をまとめるに、モンスター『スライムガール』はゼリー状の肉体を持ったモンスターだ。
 肉体の変形は勿論のこと、硬度を変えたり内包した酸性物質で焼いたり、それを弾に込めて発射したりといった攻撃を行なうだろう。
 数も5体ほど確認されており、この全ての排除が条件になっている。
「分かってるのはここまでなのです。予想外のことが起きるかも知れませんが、気をつけて戦ってほしいのです」
 ユリーカから前金のコインを受け取り、あなたもまたテーブルをたった。

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:全てのスライムガールの排除

 5体確認されているというスライムガールと戦い、倒すことで最低成功条件が満たされます。
 まだ調査すら行なわれていない場所へ踏み込んで戦うことになるので、地形情報とスライムガールの大雑把なデータしか分かっていません。

【フィールド】
 大きな柱が等間隔に並んでいます。これを遮蔽物にすることで遠距離攻撃を防ぐことができるでしょう。
 ですが逆にこちらからの攻撃がしにくくなったり、味方への支援が届かなかったりするので位置取りにはご注意ください。

【スライムガール】
 スライムの(正確にはゼリー状の)モンスター。
 5体確認されている。
 肉体変形による格闘攻撃と体内の酸を用いた攻撃が予想される。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

【情報精度】
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • スライムガールテンプル完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月19日 20時40分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ラノール・メルカノワ(p3p000045)
夜のとなり
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
シェンシー・ディファイス(p3p000556)
反骨の刃
世界樹(p3p000634)
 
PXC-4=ソフィア(p3p000743)
赫腕の鉄
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
七鳥・天十里(p3p001668)
メルト・ノーグマン(p3p002269)
山岳廃都の自由人
アベル(p3p003719)
失楽園
フォーガ・ブロッサム(p3p005334)
再咲の

リプレイ

●ペインブレナ神殿跡
 超人的な視聴嗅覚で意識を蜘蛛の巣のごとく張り巡らせ、『砂狼の傭兵』ラノール・メルカノワ(p3p000045)は坑道の先へとたどり着いた。
 念のためにと手にした松明を掲げ、坑道とは一変して広大な地下空間に目を向ける。
「確かに明かりはあるようだ」
 傭兵から事前に聞いていた通りの場所だ。
 驚くほど高い天井。広いスペース。その大部分を占める、神殿と呼ばれる建物。あちこちに火が灯って、不思議な揺らめきを見せている。
 ラノールはふと、揺らめく炎は誰がともしたものなのか気になった。
 その考えがまとまらぬうち、『風来樹』世界樹(p3p000634)が顔を出す。
「あそこが地下神殿じゃなー」
「あの神殿にスライムガールちゃんが? あらら、モテる男は辛いね……ってふざけてる場合じゃないか」
 『破片作り』アベル(p3p003719)はいつも通りのガスマスクを念入りに位置直しすると、肩からさげたサブマシンガンのセーフティーロックを外した。

 スライムガール(仮称)の討伐が今回の依頼内容だ。
 『山岳廃都の自由人』メルト・ノーグマン(p3p002269)は使い慣れた剣の柄を握り直すと、この場でおきた事件のことを考えた。
「スライムガール、ね。字面から感じる響きは可愛いけど……こいつぁ敵討ちってやつだ。容赦はしないよ」
 神殿の調査に入った老人は殺され、それを見て攻撃した傭兵も酷い怪我を負って逃げ帰ったという。
「スライムってよく聞くよね」
 七鳥・天十里(p3p001668)が中折れ式のリボルバー拳銃をホルスターから抜くと、ぱちぱちと瞬きをした。
「結構分かれるんだよねー、ザコ敵だったり強敵だったり。まあどっちだろうと倒すんだけどね!」
 弾数を確認して準備を整える天十里。
「…………」
 『任侠』亘理 義弘(p3p000398)は一度神殿の前に立つと、ゆっくりと周りを見回した。
「体内に酸を持つ、体の形状を自在に変えるスライムだ。どんな攻撃方法が出てくるか、どこに潜んでいるか分からない。油断しないようにしねえとな」
「そうですねえ、身体が溶けたり真っ二つになってもくっついたり……」
 『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)はなぜかうっとりとした表情でステッキの表面を撫でた。
「僕もそうできたら、どれほどの数の新しい奇術を考案できるでしょう! 妬ま……羨ましい……」
「しかし、女の姿を象る種ですか……変わった特徴をしていますね」
 『再咲の』フォーガ・ブロッサム(p3p005334)は依頼書を改めて見直した。
 スライムガールという呼称はなされているものの、それは傭兵がそういう名前をつけて呼んだからというだけにすぎない。
 一般モンスター知識はさておいて、スライム的特徴を備えているかどうかも定かでは無いのだ。現にボディはゼリー状だとあった。
「……ゼリー状の物体というのは厄介だな。……なぜ人型、それも女性体なのかは知らないが、油断せず行こう」
 機械の腕を改めて握り直す『赫腕の鉄』PXC-4=ソフィア(p3p000743)。
「獲物を狩るためなら敵の姿を模倣していようが構わない、か?」
 『反骨の刃』シェンシー・ディファイス(p3p000556)はナイフを抜いて、映る刃の表面をにらんだ。
 虫、花、海洋生物に動物。擬態を用いる生物は沢山ある。
「実際がどうだか知らないが、意図したものだとしたら気に食わない。……本当の半端者とどちらが強いか、試してみようか」
 神殿へ近づくと、まるで侵入を拒むかのように五体のスライムガールが柱の影や天井からこぼれるようにして現われた。
「むぅ、全員おでましのようじゃぞ?」
 世界樹たちは武器を構え、対してスライムガールたちも両手を伸ばしてじりじりとにじり寄ってきた。
 端正な笑顔を作り、母が子を優しく抱くかのごとく。
 応じればどうなるかは、かの傭兵の顔が証明している。
 さあ戦闘の始まりだ。

●スライムガール
 最も早く飛び出したのはシェンシーだった。
 射撃の狙いが定まらぬよう等間隔に並ぶ柱をジグザグに駆け抜けると、腕を伸ばしたスライムガールめがけてマントをかぶせるように投げつけた。
 防御の隙を消し、正面から蹴りつける。
「今だ、やれ」
「おぉ、ゼリー状と言うかゼリー嬢と言うか……」
 そこへ世界樹が追い打ちのようにマジックフラワーで攻撃を仕掛けた。
 炎に包まれるスライムガール。
 マントで隠れたシルエットがもごもごと動いている。
 非集中攻撃を避けるべく義弘が別のスライムガールへと飛びついた。
 全力ダッシュからのドロップキックが炸裂し、スライムガールの上半身が消し飛んでいく。
 が、すぐにあちこちから破片が集まり、端正な笑顔を形作った。
「手応えが分かりづらいな」
「たたきつぶせば潰れる筈だ」
 ラノールは整形されたばかりのスライムガールにタイミング良くマトックの一撃を叩き込むと、相手を再び粉砕した。
 タイミングが本当に良かったのか、スライムガールの修復がわずかに遅く感じた。
「ほれみろ」
「なるほど、血が流れなくても死ぬわけか」
「……まずは各個を押さえ込む」
 スライムガールがラノールたちに抱きつこうと迫った所へ、ソフィアがおよそ強引に割り込みをかけた。
 ゼリー状の腕に向け、機械の腕で正面から組み付いていく。人間であれば両手を組み合った状態で力比べになるところだが、スライムガールはソフィアの腕力に負ける形で腕組織がばらばらに崩壊していった。
 床に飛び散ったゼリー状の破片は地をはうように母体と混ざり、質量を取り戻すたびに元の形に戻っていくようだった。
 別のスライムガールが腕を剣のように硬化させ、ソフィアの胸を貫きにかかる。
 機械の腕で掴み取り押し止めたが、異様な力で胸にずぶりと刺さっていく。
「攻撃にも秀でた性質のようですね」
 柱の裏から器用にラインをとった幻が、ハイ・ヒールの魔術を唱えてソフィアの傷から痛みを取り去っていく。
「集中されると覆いきれません。どなたかもう一人マークに入って頂いても?」
「了解。私が入りましょう」
 フォーガは目の高さにボウガンを構えスライムガールへと乱射すると、一気に距離を詰めて剣を抜いた。
 首をはねるかのような豪快なスイングを、対するスライムガールは硬化した腕で受け止める。
 激しい金属音が鳴り響き、それをまるで認識していないかのようにスライムガールの顔は穏やかに笑った。
 が、透けて見える向こう側。
 メルトが剣を構えて鋭く迫っていた。
 彼女独特の剣闘術でスライムガールの背へと攻撃。直撃したのか、スライムガールの身体が大きく裂けて歪んだ。
「おまちかね、集中砲火だ」
 アベルはサブマシンガンの銃口をスライムガールの足下に向けると、フルオートで鉛玉を打ち込みまくった。
 ひとつなぎの射撃音が鳴り響き、ラインの交差する位置に滑り込んだ天十里が拳銃を水平に構えた。
「その綺麗な顔をふきとばしてやる、なんてね!」
 トリガーを引く。銃はその構造から雷管を正しく叩き、正しい爆発と正しい圧力によって弾頭が射出。筒に刻まれた螺旋の溝にそって回転し、その回転を保ったまま空を、そしてスライムガールの顔面を穿った。
 ひとつ遅れて波打つ頭部組織。ゆらぎの許容を超え、中央で爆ぜるように空間が広がる。
 そんなスローな光景を一瞬に納め、スライムガールの頭部は爆発四散した。
 と同時に、アベルから鉛玉をしこたま打ち込まれた下半身もまた泡立つように崩壊し、スライムガールのボディはあちこちへと飛び散り、そして二度と元に戻ることはなかった。
「まずは一体」
 マガジンをその場に落とし、予備のマガジンをはめ込むアベル。
 メルトもまた暗黒剣の構えをとり、新たな目標へと移動していった。

 マトックを横に斜めに振り回し、スライムガールをめちゃくちゃに崩壊させるラノール。
 硬化したボディも、彼の巧みな打撃の前には半分の意味も成さなかった。
 地面に落ちたスライムガールの腕を踏みつけ、念入りに破壊する。
「まだ足りない。焼却してくれ」
 ラノールの要請を受けて世界樹がマジックフラワーで燃やしていった。
「思ったより酸がキッツいのう」
「ご安心を。この程度なら回復もギリギリ……」
 幻がシルクハットからスライムガールのミニチュアを取り出して見せる。
 彼女の奇術を見ているうち、スライムガールの酸で焼かれた痛みは忘却の彼方へ消えた。
 一方でメルトが硬化したスライムガールを剣で破壊し、残る二体へと目をやった。
 びくりと身体をふるわせるスライムガールたち。義弘やソフィアが組み付いていたにもかかわらず、彼らを突き飛ばして一目散に神殿の奥へと逃げ出していった。
「逃げたよ。追いかけよう」
 メルトは仲間を連れて神殿の奥へと走って行く。
 その途中で、ここまでのことを思い返した。
 彼女は事前にスライムガールに関する情報を独自ルートで調べたが、結論としては『undefined』だった。
 持っていたルートがたまたま空振りだったのかは分からないが、スライムガールという単語にピンとくる者はおらず、どんなものを想像するか尋ねてみてもイメージがバラバラだったのだ。
 それほど知られていないもの。もしくは、スライムガールというもの自体が何か間違った名称である可能性があった。
 そして間違っているのだとしたら、一体連中はなんだというのか。
「逃がさねぇ!」
「……回り込む」
 義弘とソフィアは両サイドから挟むようにしてスライムガールの一体を捕まえた。
 振り払おうと腕を硬化させるも、義弘が手刀でもって無理矢理破壊。苦し紛れにソフィアを飲み込んでいくが、アダとなった。
 ソフィアが自慢の耐久力でもってしのぐ間、残る仲間たちの集中砲火が浴びせられたからだ。
 天十里の拳銃とフォーガのクロスボウによる射撃。スライムガールは身体をめりめりと破壊され、なんとか再生しようとした所でアベルが手榴弾のピンを抜いた。
「悪いね、かわい子ちゃん。敵じゃなかったらデートにお誘いするところだったんだけど」
 プレゼント、と言って放り込まれた手榴弾。義弘はここぞとばかりにソフィアを引き抜き、爆発を背に飛び退いた。
「これで最後……いや、もう一体いましたね」
 スライムガールが再生しないことを確認して、フォーガは剣を抜いた。
 ふと見ると、神殿の奥に続く細い通路があった。

●ペインブレナ神殿
 通路の先はいくつにも分岐した通路が続いていた。
 神殿の表にあったように等間隔に炎が灯り、足下にはスライムガールが移動したと思しき粘液の跡がくっきりと残ってる。それゆえ追跡には困らなかった。
 銃を撃てる体勢で構えたまま進む天十里。
「何でこんなとこで変なスライムが湧いてるんだろーね?」
「分かりません。情報屋も伝え残しはないようですし……」
 突然の襲来に備えて前を行くフォーガ。世界樹にも透視で警戒させ、奇襲に備えている。
「ところで……」
 メルトが声を上げた。
「調査員の遺体が見えなかった。誰か見た?」
「いいえ? そういえば血の一滴もありませんでしたね」
 首を振るアベル。
 思えば不自然な話である。(傭兵の話に嘘はないだろうが)調査員の老人はスライムガールに刺されて殺された筈だ。
 それで血の一滴も残っていないとはどういうことだろうか。
 義弘はスライムガールが床の血をすするさまを想像して顔をしかめ、幻は死体消失トリックを想像して口角を上げた。
「止まれ」
 ラノールが小さく手を上げる。ソフィアが万一に備えて防御姿勢で前にでた。
「何か見つけたか?」
 シェンシーが声をかけると、ラノールは指を立てて『静かに』とジェスチャーした。察し、息を潜めるシェンシー。
 一同はできるだけ息を潜めるようにして、通路の先へと至った。

 通路の先で見たものを適切に説明するのは難しかった。
 とても広く薄暗い部屋。
 壁際に並ぶ大きく透明な筒。
 筒の中に満たされた半透明な溶液。
 溶液の中に浮かぶ人型の物体。
 人型物体はゼリー状の物質で構成されており、まるで生きた人間をそのままゼリー状に変換したもののように見えた。
 その一部が、ある特徴に合致した。
 エキゾチックな風貌をした老人。
 長いあごひげ。
 神殿の調査に入り殺されたはずの調査員の特徴にぴったり当てはまる物体が浮かんでいた。
 何とも言えない。しかしあるワードが頭から離れない。
 そして部屋の奥。薄暗闇の中、振り返る物体があった。
 スライムガールだ。フォーガの矢が刺さっている所からして、先程逃がした個体に間違いないだろう。
「やるべきことは?」
「色々あるが、最初の一つは決まってる」
「ですね」
 誰が誰ともなくそう言い合って、十人同時にスライムガールへと襲いかかった。
 対するスライムガールは肉体を硬化させ、全身を小刻みに振動させた。振動がキインという耳鳴りのように響き、びきびきと何かが壊れる音がした。
 が、まずは構わずスライムガールへ攻撃を集中させる。もはや瞬殺。何が原因か分からぬほどの余力をもって粉々に破壊すると、ラノールたちはハッと周囲を見回した。
 部屋にいくつも設置されていた筒の表面にヒビが入り、中の溶液が派手に流れ出た。
 何があるかわからない。その場から飛び退き、通路まで走って戻るイレギュラーたち。
「どうするの」
「『どうもしない』」
「強いて言うなら依頼主に報告だ」
「あと早く出よう! 明らかにヤバいもん!」
「じゃな」
 これがどういうものなのか、どうすべきものなのか、自分たちは何も把握していない。そして依頼条件を達成した今、なにかするべき立場でもなかった。人としての常識や肌感覚は、この際置いておくとしてだ。
「……」
 ソフィアは去り際、ちらりと振り返った。
 溶液ごと飛び出した、調査員の老人――に似たゼリー状物体。それが、むくりと起き上がり、こちらに顔を向けたのだ。その、なんと整った笑顔。
「……急ごう」
 ソフィアは仲間への報告を後回しにして、まずは神殿からの脱出を優先した。

●顛末
 後日談を語ろう。
 イレギュラーズたちは無事に脱出し、依頼主である領治貴族にことの一切を報告した。
 貴族はその報告に恐怖し、ペインブレナ神殿跡とそれに続く坑道を大量の岩石で封鎖する処置をとった。
 今も地下深くには、あの神殿がある。
 誰かがともした炎で照らされて、ゼリー状の何者かが笑っているのだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 true end 1――『神殿の奥にて』

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