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シナリオ詳細

<Liar Break>縦糸を辿れ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●情勢動く
 『シルク・ド・マントゥール』の公演許可取り消し。

 それはばらばらだった王侯貴族を「自己利益の追求」という一本道に追い立てるには十分すぎる報せだった。
 狂気と血と罪科をばらまいたサーカスをこれ以上野放しにしておく訳にはいかない。
 初めて幻想は一つとなり、サーカスという獲物を追いかけ始めた。
 だが、サーカスもただで死んでやるつもりはない。座して死すくらいなら、最後の公演を。そしてどうか最高の喝采を。
 戦いの火蓋は、今にも落とされようとしていた。

●狂気が駆けて来る
 郊外の村では、のどかに暮らす人々がそんな幻想の趨勢を他人事のように見守っていた。
この村には蜂起する物もなく、そもそもサーカスなど夢のまた夢。
 今日も飯の種の為に、畑を耕す。糸をつむぐ。
 ――その筈だった。

 女子どもが悲鳴を上げながら、二人、駆け込んできた。
 「殺される」「助けて」「あいつらが」、と、幾つかの単語を繰り返しては息を切らしている。
 盗賊の類だろうかと、一番傍にいた老爺が声をかけようとした、その瞬間だった。
 ……良い音だ、と思ったのは牛飼いだ。
 牛を捌くとき、一気に肉繊維を引き裂いた時に似た、爽快な音だ。
 しかし、何故その音がしたのか?
「………」
 血溜まりが静かに広がっていく。合わせたように、井戸端で話をしていた主婦たちが、畑にクワを入れていた男たちが、しん、と沈黙した。
 老爺が倒れている。老いた体に不似合いな綺麗な首の断面をさらして、転がっている。
「………はあ…はあ…っ」
 女が子どもを抱きしめるその後ろに、男がいつの間にか立っていた。
 取りつかれたような恐ろしい形相で、片手に持った刃を血で濡らし、立っている。茂みが次々に動くと、10人近くの男たちがそれぞれ武器を持って村に入ってくる。
「ころしてやる」
 何を言ったのか、誰も最初は理解できなかった。そんなおぞましい言葉を口にする者は、今までいなかったから。
「ころしてやる、ころしてやる。男は全員、女子ども赤ん坊、犬も猫もぜんぶぜんぶだ」
 その言葉を人々が呑み込み、理解するのに数秒ほどかかり――その間に女から血が飛沫き――やがて、悲鳴が連鎖し始める。さながら雨が降り出すように、悲鳴は誰かから誰かへと伝播し、村を満たした。同時にどこへともなく駆け出す村人。その悲鳴に惹かれるように男達はバラバラに駆け出し、刃を振り上げ始めた。
 斬り付ける音と、逃げ回る足音。そして悲鳴。それらは足音の方が多かったのに、どうしてか徐々に刃の音の方が大きくなっていって……悲鳴が懇願に変わり、…とうとう全ての音が途絶えるのに、さして時間はかからなかった。
 残ったのは、刃を持った男たちだった。皆が目を見開き、歯を食いしばっている。
 全員殺した。
 殺してやった。
 このまま殺し続けて、武器を振るい続けて――


「幻想が一つになっている今しかないのです!」
 おー!と片腕を上げながら、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は威勢よく声を張り上げる。
「サーカスをやっつけて、『原罪の呼び声』がこれ以上広がるのを防ぐのです! とりあえず、皆さんには団員があちこちで起こしている騒ぎを鎮圧して欲しいのですよ」
 ユリーカが指し示したのは王都から遠い一つの村だ。隣の村らしき印には、赤いバツが付けてある。
「サーカス団員が村を襲ったのです。目的は間違いなく、こっちを混乱させて国外に逃げる人たちを増やす事なのです。距離的に…次に狙うのはこの村で間違いないのです。もうバッテンの村は襲われた後で、生き残った人はいないのです。……でもでも!うまくいけば、こっちの村は被害者を少なく抑えることが出来るはずなのです!」
 とんとん、ユリーカの指が何度も村を叩く。
 煌く瞳がイレギュラーズの面々を見回し、請うような色を見せる。もう傷付く人々は見たくない。傷付ける人も見たくない、そんな眼差しだった。
「団員も『原罪の呼び声』を振りまいていますが、それほどではないのです。それに今、幻想の人々には狂気にちょこっと耐性があるみたいなのです」
 ゆえに村の入り口を塞いだり、村民の避難を徹底しておけば、村人が狂気に侵される事もないだろう。
 だが相手は背水の陣だ。追い詰められたネズミは死を覚悟して牙を向けて来る。くれぐれも油断はしないで欲しいとユリーカは念を押し、イレギュラーズを送り出した。

GMコメント

こんにちは、奇古潭です。
サーカス狩りです。油断せずいきましょう。

●目的
 敵(サーカス団員x10)の撃破

●場所
 OPで襲撃された村の隣村が狙われています。
 団員よりも早く着く事が出来ます。どう行動するかは皆さん次第です。
 避難指示は出せますが、村外に全員を出して確認する事は不可能、くらいの時間がある、と考えて下さい
 村は山を背後にしており、広場を中央にしてまばらに家が建っています。
 村民は20人程度、サーカスに関する一連の事件については「村の外では大変な事が起きていたようだ」という認識で、余り村の外には出たくないという考えの者が多いです。

●敵
 全員が同じような格好をしています。サーカスの準備係のような目立ちにくい服装です(この服装の為に、村に向かうまで気付かれなかったのかもしれません)
 明らかな敵意を持ち、説得の余地はありません。確実に目の前の生き物全てを殺すことしか頭にありません。
 ナイフ持ちが7人、人体切断マジックに使うようなノコギリ持ちが3人です。
 力量は常人程度。遠距離への攻撃手段はありませんが、ノコギリの攻撃力は高めです、ご注意ください。

●『原罪の呼び声』
 相手は全員『原罪の呼び声』のキャリアーですが、幻想の人々には皆さんの活躍により少しだけ狂気耐性がついています。
 サーカス団員の侵入によって村人がパニックに陥れば、狂気の感染も起こり得ます。アフターケアがしっかりしていれば戻ってこれますが、一時的に敵対する者もいるでしょう。
 村人の生死はシナリオの成否に影響しません。
 (これ以外に想定外の事態はありません)

  • <Liar Break>縦糸を辿れ完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月27日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

夢見 ルル家(p3p000016)
離れぬ意思
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
寄り添う星
マリス・テラ(p3p002737)
Schwert-elf
ラクリマ・イース(p3p004247)
守る者
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ライハ・ネーゼス(p3p004933)
トルバドール
アズライール・プルート(p3p005025)
アンタレス
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子

リプレイ

●蜂が網にかかるまでに
「――我々はローレットの者だ。突然の来訪を失礼する。今少しばかり手を休めてどうか聞いて頂きたい。この村は悪しき者らにより狙われている」
「しかし僕達が来たからには安心してほしい!君達を守ると約束しよう!
僕達を信じて、避難指示に従って欲しい!」
 戦場となるまで幾ばくも無い村の入り口。『トルバドール』ライハ・ネーゼス(p3p004933)のスピーカーボムが炸裂し、村中に声が響き渡った。『麗しの王子』クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)の清かな声が続く。
 村人たちは突如の警告に少しの間呆然とし、やや間の後、慌てたように右往左往し始めた。情報を求めて広場に集まる者。畑から慌てて帰り、家人の無事を確認するもの。様々に人々が動く中、『酔興』アーリア・スピリッツ(p3p004400)のファミリアーが空を舞い、避難先となりそうな家を探す。その間、ライハとクリスティアン、『白き歌』ラクリマ・イース(p3p004247)の三人が主として説得に当たった。
「落ち着いて下さい。農具は置いて、慌てて転ばないように……時間はあまりありませんが、不安な方は俺の歌を聞いてください、少しでも助けになれば……」
 怯えて心を震わせるものにと、ラクリマの喉から美しい歌が流れ出す。冬の静けさを思わせるその静謐な歌声に、恐怖に沸き立ちそうな人々の心が凪いでいく。
 彼の歌声と適切な連携により、誘導はうまくいきそうだった。あとは場所だが――アーリアが何回か村を見回って、一軒の家に白羽の矢を立てる。
「あの一番奥なんてよさそうねぇ」
「一番奥というと、集会に使う私の家です。確かに村の全員が入れるようにはなっていますが……」
「では、村人の方には其処に避難して貰っても?」
「ええ、勿論です」
 年の功だろうか、落ち着いた様子の老人が鷹揚に頷く。恐らく村の長だろう。避難場所は決まったと、入口の守りを務める『アンタレス』アズライール・プルート(p3p005025)以外の全員で誘導にあたる。

 奥の家はなるほど集会に使うだけあり、村人全員が入ってもまだ余裕がありそうだった。ここなら、とイレギュラーズが頷き合う中、子どもが親に問う声がする。
「ねえ、村なくなっちゃうの? みんな死んじゃうの?」
「大丈夫よ、死なないようにこの人たちが守ってくれるわ」
「――そうだとも!」
 クリスティアンがはっきりとした声で鼓舞する。
「絶対に君たちを守り通して見せよう。不安ならこれをもっておきたまえ。僕のブロマイドだ!」
「……なにこれ? これ、写ってるのお兄ちゃん? ……お兄ちゃん、おもしろい。ありがとう」
 ブロマイドを渡された子どもは不思議そうにブロマイドとクリスティアンを交互に見て、少し笑った。ありがとうございます、と礼を述べる母親に、『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)が一匹の猫を預ける。
「俺たちが出たらバリケードで入り口を塞いでくれ。全部終わったらこいつを二回鳴かせる、それまでは入り口から離れて固まっていて欲しい」
「……判りました。どうか皆さんもご武運を」
「大丈夫。必ず拙者達がお守りいたします!」
 『ロリ宇宙警察忍者巡査下忍』夢見 ルル家(p3p000016)が力強く言い、頷く。
「この家は男衆が暴れても良いように作られております。勿論戦いとは比ぶべくもないですが……少々なら耐えきりましょう。宜しくお願いします。みな、奥の家具を運ぶぞ」
 恐怖を理性で押さえつけ、冷静さをかきあつめて対処しようとする村人たちの姿に、イレギュラーズは頼もしさと生きる意志を感じながら背を向ける。
 アーリアのファミリアーが数度鳴いて、敵襲を告げていた。


●蜂、かかる
「悪魔じみた行い……というより、悪魔そのものですね」
「まぁ、悪事はいつか露見するものです。隠し通せる訳がない……こういう時、ご愁傷様というのでしたか」
 アズライールの嘆くような呟きに、誘導を終えて合流した『Schwert-elf』マリス・テラ(p3p002737)は淡々と答える。己を兵器だと自称するマリスには、彼らを憐れむ心は一欠片もない。否――彼らを憐れむ心があるのかと問われれば、全員がNOと答えるだろう。彼らはそれだけの事をして、これから更に血に血を塗り重ねようとしているのだ。
 その蛮行を許すわけにはいかない。やがて全員が揃って頷き合う頃、太陽の輝きに何かが煌き始めた。
 そして香る。…生臭い、血の香り。目立たないような衣のはずなのに、その雰囲気はひときわ異様。不揃いに、十人。情報通りの人数が、こちらへ小走りで近付いてくる。彼らは一様に呟いている。同じ言葉を、何度も、何度も。
「ころす」
「ころす」
「全員ころす」
「男はころす」
「女も子どももころす」
「年寄りもころす。全員だ」
 その呟きを聞いているだけでこちらが参ってしまいそうだとラクリマは思う。血走ったまなこ、食いしばった歯、完全に殺す事だけしか考えていない。狂気に呑まれ、狂気を振りまくもの。だが……
「最も短絡的な狂気、と言えるだろうな。――さあ、勝ちに行こう」
 ライハが興味深げに団員の姿を認めながらも言い捨てて、勇壮のマーチを奏でる。集まる時間はあった、レンジは十分だ。更に「赤の熱狂」にて味方を鼓舞する。鼓動が鳴り渡り、血が指先まで沁み奔る。さらに一気に前へ出たライハの掌が、刃物を持った団員を吹き飛ばす。
「さて、私に出来る準備は此処までだ。任せても?」
「承知でござる! ピエロども、夢見ルル家がお相手つかまつる!」
 くるりと飛び出してきた小柄な夜色の影が、目にもとまらぬ速さで踊った……ように見えた。本来なら二人で持つような大のこぎりを持った男に、ルル家が一撃、二撃、三撃、撃ち込んだのだ。伊達に宇宙忍者はやっていない。
「まずは足止めだね! わかるとも!」
 さらに別の刃物持ちにクリスティアンが接近し、両足をどっしりと構えて防御に徹する。最も体力に優れた彼は防御の要、確実に敵を引き付け足止めするのが役目だ。
 相手が物理火力一辺倒なのに対し、イレギュラーズ側は神秘火力に優れる。ロングレンジというアドバンテージに回復の手もあり、防御も厚い。継戦能力だけでいえば確実にこちらの方が上だ。けれども侮れないのはその数と……相手が攻撃一辺倒な事。イレギュラーズの後ろには守るべきものがある――ゆえに、誰一人としてこの戦線を通すわけにはいかなかった。
 ルル家がのこぎり持ちの一人を初動で叩き、結果的に引き付けた。残り二人ののこぎり持ち団員も、それぞれのマーク・ブロックによって迂闊に動けないでいる。
 陣形はやや前のめりがちだが、それもまた作戦通り。全員を足止めする事には成功した。
 ――ここからは修羅場になるだろう。目の前の人間を殺すのだという事実がアーリアの胸の奥に重くのしかかる。今日の酒は苦くなる。そんな確信があった。

「初めまして団員の皆さん。――そして、さようなら」
 マリスのスーサイドアタックが、のこぎりを手にした男の肉を削る。捨て身の攻撃は彼女自身をも傷付けるが、兵器らしく厭う様子はない。そこに音が降りてくる。祈りの歌は生贄を求め、更に男の身を削り、血しぶきと共に踊らせた。――ラクリマの「蒼剣のオスティアス」だ。
 攻撃を一手に受けた男はどうと倒れ伏し、何度か痙攣する。その屍を踏みつけて、前へ前へと出て来るサーカス団員たち。
 まるで殺されに来ているようだ、とライハは蔑みにも似た視線を向ける。栄光のさなかにあったサーカスの者とは思えない、獣に堕ちた表情を見た。もはや芸とも呼べぬ。言うなれば児戯。優しく捕まえ、反撃の間も与えず一思いに殺す。赤子の手をひねるにも似る。
「――当たって!」
 アーリアの魔力放出が、次の団員を狙う。それを皮切りに、全員の矛が一方向に向く。のこぎり所持者からの各個撃破。作戦はうまくいっているように思えた。


●行かせない、生かせない
 二人目のノコギリ持ちが倒れた。先と同じく、数度痙攣して、そのまま静かに身体が弛緩していく。死という決められた道をたどるように。
「なかなか巧く斬れないですね。もっと感覚を取り戻さなければ」
「そのまま動かないで! 傷を癒します!」
「おっと、僕も頼むよ! 少し足がふらついてきたからね!」
 “以前”の自分なら瞬きの間に全員を地に倒せていたのに。マリスが呟く。スーサイドアタックの反動と敵の攻撃で傷付いた身体、そして要請のあったクリスティアンを、ラクリマの「シェルピア」が癒していく。
「この調子なら、村の人も守り通せそうです」
 敵の腕にそっと触れ、その再生能力を逆回しさせて破壊へと変えながら、アズライールが呟く。
 アズライール同様、誰もが心の中に勝機を見出す、その一瞬の事だった。
「わかったぞ。わかったぞ、わかったぞ!かくれてる!かくれてる!かくれぃひあはぁぁぁぁああぁぁぁあぁ!」
 刃物を持った――脅威としてはのこぎりに劣る――サーカス団員が、村の奥めがけて走る。足の筋線維がちぎれる音を立てながら、不気味な姿勢と凄まじい速さで。
「しまっ……」
 刃物を持った男が後衛に走る。正確には後衛すらすり抜けようとしている。ウィリアムとアーリアがいる。アーリアが両手を広げ、立ち塞がって――

「絶対にッ……やらせないわぁ!!」

 肉を断つ音がした。


●骨を断て
「……アーリア殿!?」
「アーリアさん…!! いま回復を、」
「俺がやる! ラクリマ、お前は前衛のフォローを頼む!」
「……っ! わかりました!」
 ぼんやりと、アーリアはそのやりとりを聞いていた。この感覚は酩酊に似ている。あら、私、お酒なんて飲んだかしらねぇ……
 何が起きたのだったっけ。そうだ、たしか敵がすごい勢いで走ってきて……奥に行かせないって、その前に立って……胸からお腹にかけてが熱くなって……咄嗟に、己の中にある光を掴んだような気がして……
「おい……! おい! 返事しろ!」
 ウィリアムがヒールオーダーでアーリアの傷を癒していく。致命傷には至らないが、深い。ウィリアムは反応が遅れた己に、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。
 ――そうだ。此処は戦場で、私は敵に斬られて倒れたのだ。そこまでしか覚えていないが、戦闘の位置は変わっていないようだから、その敵は誰かが何とか――あら……?
 ふと。ウィリアムの後ろに炎が燃えていた。炎は大きくなって、人のかたちをとる。手に持った何かを振り翳すように、燃え崩れながらこちらに近付いてくる。ああ、あれはきっと駄目なものだわ。
 アーリアの腕がゆっくりと持ち上がる。動くな、とか聞こえた気がするけれど、そうはいかない。だって、だってそうしたら、あなたまで――
「…………!」
 ウィリアムの後ろ……彼による咄嗟の焔式で炎を纏っていた団員に、アーリアの手で呪いの花が種蒔かれ、芽吹き、咲き誇った。それは命を奪うには十分すぎる威力。そして美しさ。
 花咲く気配にようやく気が付いたウィリアムだったが、すぐにアーリアに向き直る。
「……こんなでも攻撃って、よくやるよお前……!」
「……うふ、ふ……お姉さんはね、やるときは、やるのよぉ……」

「くっ、僕がいながらアーリア君を……! 同じ轍は踏まないぞ! みんな、あと少しだ!」
「やれやれ、“そういうの”は私の役目なんだが」
 仲間の負傷に動揺した皆を、クリスティアンが鼓舞する。敵は三人が倒れ、アーリアを含めてやっと同数まで減らした。そのうちの二人は脅威だったノコギリ持ちだ。先程のロベリアの花を見るに、彼女は傷を負ってはいるものの、パンドラを使うほどの重傷ではない。仲間を信じ、一同は前を向く。
 同じ轍を踏みたくないのは誰もが同じ。ライハも入念に仲間の位置とマークの状況を確認する。
「成る程。――これが、悔しいというものですか」
 マリスが一歩踏み込み……その希薄な表情に苦みを滲ませながら、最後のノコギリ持ちを切れ味鋭く一刀両断する。
 これが契機となる。クリスティアンが防御の構えを解き、戦線へ攻撃役として加わる。防御に傾けていた力を一気に攻撃に集中させ、今までのお返しとばかりに焔式で相手を火だるまにした。
 ラクリマも怒りに捉われそうな心を抑え、氷の弓を引く。あくまで合理的に――僅かに遠くにいる敵を撃ち抜いた。

「待たせたな、戻ったぜ」
「ウィリアム君! アーリア君は!?」
「平気よぉ。まだ少し痛むし、ちょっとパンドラに頼っちゃったけど……」
「アーリア殿! ご無事ですか!? っとぉ、喧嘩殺法ーッ!!」
 負傷したアーリアを案じながらも、ルル家の凶拳が敵にねじ込まれる。そこにクリスティアンがマジックフラワーを撃ち込み、炎に塗れて敵が倒れた。
「御無事で良かったです。後で念の為、聖水でも使いましょうか?」
「あら~。心配してくれてありがとぉ。でも、大丈夫よぉ」
 アズライールが仄笑む。皆の心配と安堵の言葉に、アーリアは何となくむず痒くなる。
 人間の命を奪うのは怖かった。けれど、自分には仲間がついている。それだけで頑張れる、乗り越えられる気がした。帰ったら飲もう。血のように赤い酒を、贖罪ではなく、今日という日を受け入れるために。
「よし。では、仕上げと行きましょう。今度こそ全員さようならです」
「そうです! もう好きにはさせません……! サーカスは終わりです!」
 常のやや無表情を取り戻したマリスの言葉に、ラクリマが頷く。ここからは狩りの時間。今度はこちらがサーカスに牙をむく番だ。
 皮切りに、ライハの赤の熱狂が再び皆の鼓動を鳴らす。そしてウィリアムとアーリアの術式が、焔を纏った団員たちに呪いの花を咲かせた。


●明日は来る
「…………」
 剣がぶつかる音や、何かが燃える音が微かにする。離れているにも関わらず戦闘音が聞こえるほど、村人たちは決して狭くはない室内で息を殺していた。
 ウィリアムが預けたファミリアーは、クリスティアンのブロマイドを貰った子どもが抱いている。猫を抱いたことがなかったから、抱いてみたいと母に願ったのだ。母は自分の肩を抱いている。少し手が震えているのが判る。
(――みんな怖いんだ)
 村長だって、あんなに心配そうな顔をしてる。扉は厳重に家具で塞がれているし、……いつになったら出られるのだろう。出られないかもしれない。もし出られなかったら……
「みゃあ」
 はっ、と一同の視線がこちらに向いて、子どもは思わず身を竦ませた。すぐに視線の先が自分ではない事に気付いて、腕の中の存在を見下ろす。
「みゃあ」
 二回。猫を預けてくれた人が、終わりの合図だといった通りだ。
 ――終わったのか? 勝ったのだろうか。もしかして、逃げろの合図ではないのか。
 閉所に長居した心が、疑心を産みかけた時――厳重にバリケードで塞いだ扉をノックする音がした。
「皆さん! 大丈夫です、悪党は全員追い払いました!」
 わっ、と村人たちが歓喜の声を上げる。奥で座り込んでいた男衆がぞろぞろと出てきて、バリケードを外す。
 ファミリアーを抱いた子どもは、それを待ち遠しい目で見ていた。やがてバリケードが全て撤去され、扉が開く。――眩しい。

 開いた扉の先にいるのは、迎えられる明日を護ってくれた、八人のイレギュラーズ達。
 十人を排し、二十人を生かす。それは単純な命の数の問題ではない。村人の明日を護ったという栄誉は、何よりも誇らしく、尊いものなのだ。

成否

成功

MVP

アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
初めての戦闘シナリオ、しかも全体依頼という事で、頑張って書かせて頂きました。
何事も小さな積み重ねが大事を動かすものです。
さて、情勢はどう傾くのでしょう。
ご参加ありがとうございました。

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