PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<フィンブルの春>銀麗狼の遺産

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ご主人様……これは一体なんでしょう?」
 リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)はそれをベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)に見せていた。
 鮮やかな輝きを見せるそれは、銀色をしたナイフのような物。
「ナイフだな。これはどこで?」
「あの時、銀狼の寝床にて見つけました」
 リュティスの言葉に、マナガルムは少しだけ考える様子を見せる。
 散発的に魔物達の襲撃が多発した時、リュティスが管理を行っているマナガルム領にも、魔物の襲撃があった。
 偶然か必然か、銀狼はマナガルム領の坑道に寝床を作ってしまい、それをマナガルム達が討伐したのである。
「明らかに高価なものだな」
 照らしてみれば、鮮やかに輝く銀色の刃にはかけた所も、錆びついたような場所もない。
 柄も美しく、誰の眼にも高価だと分かるものだった。
「だが、俺は価値が分からないな……たしか、君に預けている領地に商業ギルドがあったはずだ。
 持ち運んでみればどうだろう?」
「なるほど……そうですね。聞いてみましょう」
 そっと差し出されたナイフを受け取って、リュティスはしまい込んだ。

 それから数日後、リュティスは商業ギルドのギルド長のもとを訪れていた。
「――そのナイフがこちらですか……たしかに、見た限りでは高価そうではあります。
 ですが、どちらかというとこちら、ナイフというより魔術触媒の類のように思えますな」
「魔術触媒ですか?」
「えぇ。綺麗ですが……」
 そういうや否や、ギルド長は手短なまだ白の羊皮紙を取り出し、ナイフで一突きにした。
 しかし、羊皮紙には一切の傷がない。
「……と、このように、切れぬようでございます。
 もちろん、このことはマナガルム卿も一目見ればお分かりでしたでしょう。
 それで……その、こちらはどこから見つけられたのでしょう?」
「先の戦いで銀色の狼たちが寝床としていた場所からですが」
「……なるほど。そうなりますと……もしかするとこれは、よほどのいわくつきの品、やもしれませぬな」
 ギルド長がふぅむ、と考え込んだ様子を見せる。
「あの坑道はずいぶん昔に作業を終わらせた場所にございます。
 それこそ、ベルンシュタイン様が管理されるようになる以前でございますれば」
「……つまり、このナイフが坑道の中にあること自体がおかしいということですか」
「ええ、その通りでございます。ですので、可能性があるとすればその……
 あそこに住み着いていた魔物がどこかから持ち込んだもの、かと。
 こちらで買い取っても構いませんが、この地で保管、あるいは封印しておくほうがよろしいかと」
「……ではそのように致しましょう」
 こくり、頷いたリュティスはそのまま詳細を詰めていく。


 それから数日後、リュティスはマナガルムのいるドゥネーヴ領に訪れていた。
 巷を騒がせるのは、『勇者選挙』の事だ。魔物討伐を勢いづけるために始まった『ブレイブメダリオン』の配布と、それを最も多く集めた者を『勇者』とする。
 幻想国王フォルデルマン三世が『思いつき』で始めたそれは、今やローレットのみならず『勇者候補生』とでも言える者達まで名乗りを上げ始めた。
 それらの勇者候補生の多くはどこぞの貴族に擁立されている。
 擁立する側の思惑など多種多様だろうが、彼ら勇者候補自身はは言うほど敵対的ではなさそうだった。
「ご主人様。少しよろしいでしょうか?」
 返事を聞いて部屋へ入ったリュティスはマナガルムへと声をかける。
「どうかしたのか?」
「はい、数日ほど前に商業ギルドに例のナイフを預けたのですが、この度、場所を移転させることとなりました。
 その際の護衛を行いたいのですが……御主人様のお力を貸してください」
「あぁ、構わないぞ。他には頼む者はだれにするか決めているのか?」
「いえ、ローレットに依頼として提出しようと考えています」
「分かった。それじゃあ、そのつもりで準備しておこう」
 マナガルムが頷いたのを見て、リュティスはその場を後にした。


 整備された街道沿いを抜け、馬車は農道へ入っていた。
 穏やかな景色の中を行く中で、8人は不意に立ち止まる。
 やや向こう、そこには同じく8つの人影がある。
「貴様らが銀狼のナイフを護送中の者達か!」
 8つの影の中から、1人がこちらに向かってくる。
「我が名はディラン! 白き獅子のディラン! ここからは我々が代行する!」
「……そんな話は聞いていませんが」
 訝しむリュティスの視線に、白髪金眼の男が相対する。
「いいや、我々は頼まれたのだ。我々を後見してくださる彼のお方に!」
「……どういうことだ?」
「貴様らを殺してでも、あのナイフを奪って来いとな!
 黒狼などと格好つけおって! 悍ましき異界の騎士め!」
「――なんと言いました? 悍ましい? 御主人様が、悍ましいと?」
 黒弓を構えることに躊躇などなかった。
 武器を構える敵を静かに冷徹に見据えて、リュティスは敵を見る。

GMコメント

 さてそんなわけでこんばんは、春野紅葉です。
 ファンブルは3本おとどけです。
 勇者(ごうとう)をぶちのめしてあげましょう。
 それでは、さっそく詳細をば。

●オーダー
【1】白獅子隊の捕縛もしくは討伐。

 なお捕縛の場合、今後に役に立つ情報をくれるかもしれません。


●フィールド
 マナガルム領を走る農道。横幅の広い畦道です。
 今年の作業がまだ始まってないらしく、両脇の畑が戦場になって問題はさほどありません。

●エネミーデータ
・白獅子隊
 さる貴族により勇者候補として擁立されているようですが、実際には魔物を放ってから魔物を殺したり、
 不正を行っていると弾劾して本物の勇者候補を殺し、自分達の物にしたりする屑どもです。

・『白獅子』ディラン
 白色の獅子の獣種です。白獅子隊の隊長。
 方天戟と呼ばれるハルバードに近い武器を握ります。
 物攻と命中に偏重気味の中距離アタッカーです。
【乱れ】系列、【スプラッシュ2~3】を持ち、レンジは単体、扇、貫通などを持ちます。

<スキル>
ブレイクリオン(A):対象目掛けて真っすぐに突き、あるいは振り下ろします。
物中単 威力中 【崩れ】【体勢不利】【ブレイク】

トライデントブレイク(A):すさまじい速度で三度に渡って刺突を撃ち込みます。
物中貫 威力中 【スプラッシュ3】【崩れ】【体勢不利】

凄烈の崩壁(A):横殴りに斬りつけ、対象を衝撃で吹き飛ばします。
物中扇 威力中 【崩れ】【ショック】【飛】

・『白鳥』アダレード
 白鳥の飛行種です。白獅子隊の副隊長。
 白銀の大弓を持ちます。
 神攻、EXA、命中がやや高めの中~遠距離アタッカーです。
【凍結】系列、【足止め】系列を持ち、レンジは単体、扇、範などを持ちます。

<スキル>
氷刃(A):対象に氷で出来た刃状の矢を撃ちます。
神遠単 威力中 【万能】【凍結】【氷結】【追撃:小】

雹烈刃(A):矢を放って炸裂させ、雹として範囲内を撃ち抜きます。
神遠範 威力中 【万能】【氷結】【足止め】【泥沼】

氷扇(A):扇状に氷の矢をばらまきます。
神遠扇 威力中 【万能】【氷漬け】【停滞】

・白獅子隊士×6
 白獅子隊に属する盗賊です。
 種別は以下。

〔剣〕×3
 軽装備の片手剣使いです。
 反応と命中がやや高めで、【毒】系列と【必殺】属性の攻撃を使ってきます。


〔槍〕×2
 重装備の槍使いです。
 反応と防技がやや高めで、【痺れ】系列と【貫通】属性の攻撃を使ってきます。

〔弓〕×1
 軽装備の弓兵です。
 命中と反応がやや高めで【足止め】系列と【窒息】系列の攻撃、遠範攻撃を使ってきます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

  • <フィンブルの春>銀麗狼の遺産完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)
Legend of Asgar
蘭 彩華(p3p006927)
力いっぱいウォークライ
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
フローリカ(p3p007962)
砕月の傭兵
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
黒き葬牙
節樹 トウカ(p3p008730)
散らぬ桃花
ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)
紅蓮の魔女

リプレイ


(一応は勇者候補の筈ですのにメダリオン狙いですらないとは……
 隠す気さえもありませんので、ただの強盗になっているのです)
 声高に宣告してきた敵を見ながら、『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は思う。
「しかしまあ、運は悪くはないですね。
 マナガルム卿の領邦ですし、正面より組み合って正攻法で行ってあげるのですよ。
 いえ逆に運が悪い、でせうか……」
 馬車より降りて前へ。そのまま挑発するように告げる。
「命が惜しくはないようだな!」
 ディランの言葉を無視して、棒切れを握る。
「正面から負けたのでは言い訳のしようが無くなってしまいますから」
 ぴくりと相手の表情が険しく変わった。
「ほほう! 他人の領内で、私たちを殺すと来たか!」
 悠然と笑い、『オトモダチ』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)は双剣を抜いた。
「この荷物、相当厄介な代物のようね。
 だけど運が悪かったわね? あなた達ごろつきの相手は精鋭よ!」
「ごろつきだとぉ? 吼えたな!」
 再び吼えるディランにシャルロットは笑って返す。
 それが多分に嘲りを含んでいることに、敵も気づいたようだった。
「格好よく白獅子を名乗ってるんだから、当然誇り高く戦ってくれるんでしょうね」
「いや、完全に強盗じゃないですか!」
 ぴょんと飛び降りた『力いっぱいウォークライ』蘭 彩華(p3p006927)の勢い良いツッコミが田園風景に消えていく。
「この催しはそういうものと理解はしていますが今日の連中は度し難いですね。
 白獅子隊だか何だか知りませんがケダモノを斬り捨てるのに躊躇いはありません!」
 双剣を抜き、狐火を生みだす。
「言うに事を欠いて悍ましいと口にするとは。どうやら死にたいようですね?」
 殺意を露わに弓を構えた『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)が冷たく敵を見据える。
「悍ましい、か。確かに異界の者が自分達の領分に入り込んで来たと考えればそう思う者も居よう」
 眼前に構える敵を睨み据え、『曇銀月を継ぐ者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は槍を構えた。
「だが。黒き狼の旗は既に俺だけの代物では無い。
 それに唾棄する事は我が友達を貶め、我が誇りを汚すに等しい──後悔するぞ」
 鋭い言葉の端で、マナガルムは視線をリュティスに向けた。
「どうやら、我々が知らない事を彼らは知って居るようだ。捕えて聞き出すぞ」
「了解致しました」
 視線で良い聞かされた言葉に、リュティスは微かに殺意を抑え、冷静さを保つ。
「後ほど、知っていることは全て喋って頂きましょう」
 改めて、冷たい視線が敵を見る。
「やれやれ……白獅子だかなんだか知らんが、無駄にプライドだけは高そうだな。
 自分たちがやっていることが何なのか、少しは自覚した方がいいぞ」
 ハルバード状のルクス・モルス改を担ぎながら前に進み出る『砕月の傭兵』フローリカ(p3p007962)は無表情のまま微かな呆れを言葉に滲ませる。
「しかし……お前は口が軽すぎるな」
 ディランはその言葉を挑発とでも受け取ったのか、じろりとフロリーカを睨んでくる。
「なんで人っていうもんは不正してでも上を目指したがるのか。
 国が関係してる事でやったらお尻ぺんぺんじゃすまないだろ」
 やれやれと腰を上げる『散らぬ桃花』節樹 トウカ(p3p008730)は、その一方で微かにおもうことがある。
(……家族の病気の治療にお金が必要とかだったら不殺しないと後味が悪いし、頑張って耐えなきゃな)
 心優しくも、事によっては甘いとも判断されかねぬ気持ちを胸に秘めながら、静かに構えを取る。
「後見からの指示ねぇ、ご苦労なことよ本当。
 けどアンタ達みたいな自称勇者を名乗るような連中の、鼻を折った顔を見れるのは悪くないわ」
 ゴーレムを起動しながら『在りし日の片鱗』ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)は敵を見た。
「獅子だなんて言うからには、さぞ良い声で吼えてくれるでしょう?」
 静かな笑みに答えるように、敵が武器を構えている。
 最速で動くはマナガルム。驚異的な反応速度で敵陣に飛び込み、双槍を振り抜いた。
「少々手荒になるが、先に手を出して来たのはそちら側だ。諦めて貰う!」
 前衛となる剣兵、槍兵、ディランを纏めて刺し穿つ乱撃が鮮やかな銀の軌跡を戦場に生み出し、敵の身体に微かな傷口を開く。
 それにやや遅れ、ヘイゼルは糸を飛ばす。
「赤い糸とは参りませんが、私と踊って頂きませうか?」
 練り上げられた青い糸が疾走し、ディランの槍捌きを躱してその身体に絡み付く。
「ぐぅぅ!?」
 よけようとしたディランの動きを俯瞰して見据えたかのような動きがその身を捉えた。
 敵の視線がこちらに向くのを見据えながら、結び付けた魔力糸がその気力を吸い上げていく。
 2人の先制に応じるように2人の槍兵が動かんとした。
 しかし、1人は押し込められたように身動きが取れず、もう1人だけマナガルムの方へ駆けていく。
「行け、狐火!」
 彩華は刀身へ収束させた狐火を投げつけた。
 狐火は前衛の敵を無視して遥かな後ろ、弓兵へと走り抜けた。
 鮮やかに、誘うように揺らめく魔性の炎が散り付き、まとわりついていく。
 乱戦へと動き出す両陣営の中、フローリカは跳躍。
「――墜星」
 大上段へ振り上げ、位置エネルギーをそのままに前衛めがけて振り下ろす。
 真下、震源にいた1人の身に、余波で生み出された傷口が開き、構えられた剣に弾かれ跳ねた刃をもう一度振り下ろした。
 ジュリエットの手に刻まれた燃えるような魔術刻印が輝きを増して浮かび上がる。
 集中して投擲された宝石は、放物線を描きながら敵の方へ飛んでいく。
 それはやがて宝石を核とした小型のゴーレムへと姿を変え、その剣兵へと体当たりをぶちかます。
 アダレードの弓がこちらを向いて――引き絞られた氷の矢が扇状に放たれた。
 それはイレギュラーズも白獅子隊も関係なしに真っすぐ貫いていく。
 雄叫びを上げた白獅子がヘイゼル目掛けて突っ込んで行く。
「これを退けろ、人間!」
 上段からの振り下ろし。それがヘイゼルの身体に撃ち込まれるよりも早く、無数の魔力糸が綿密に張り巡らされ勢いを殺す。
 その隙にヘイゼルは方天戟の軌道上を外れた。
 乱戦の只中、より多くの味方を範囲内に入れる位置へ進んだリュティスは地面へと魔力を通す。
 漆黒の魔力が暗い光を放ち、黒い聖域を描いて仲間たちの傷を癒していく。
 心を落ち着かせる輝きが一時的に落ち着くころ、リュティスは静かに弓を弾いた。
 真っすぐに放たれた矢は黒き蝶へ変じ、剣兵へと舞い、その身体にぴたりと止まり内側を蝕んでいく。
「白獅子隊士たち! 情けは人の為ならずって、知ってるか?
 いや、思い通りにならなければ暴力に訴えるようなお前さん方でも知ってるよな?
 いい行いはいつか自分に返ってくる。悪い行いだって、いつかは自身へ帰ってくるんだと思わないか?」
 トウカの鬼紋、花びらが戦場に浮かび上がる。
 2人の隊士がその視線をトウカに向けた。
 鮮やかな桃の花弁が春の畦道を彩った。
「雑魚よりも大弓こそが厄介、どこの異世界も後衛こそが要よね!」
 戦場を掻い潜り、アダレードの眼前へ飛び込んだシャルロットは双剣に魔力を籠めた。
 紅の魔力が剣身を包み込んでいく。
 踏み込みと同時に斬り上げる。
 食らいつかんとする紅の向こうで、アダレードが致命傷を避けたのが見えた。
 それでもぴしゃりと、微かな血が顔に触れた。
「ええ、そのとおりね。貴女達は戦いの何たるかが良くわかっているみたいで素晴らしいですわ。
 でも……私も、脳の足りないお馬鹿さんを煽るのは良くないと言ったんですのよ」
 呆れ気味気味にアダレードが呟いたのを、微かに耳に入れる。


「――なんてことかしら。なんてことかしら。
 ふふふ。そう、そうなのね。これがイレギュラーズ。これが神に愛された側なのね」
 イレギュラーズの手で剣兵が倒れ、槍兵が残った頃。
 我に返ったらしいアダレードが嫣然と笑いながら、一気に後ろへ跳んでいく。
「――忌々しい。お父様ったら……なんて、いい加減な策だことでしょう。この人達には不足でしょうに」
「お父様? 誰ですか、それは」
 彩華の詰問に、アダレードは笑みを湛えたままだ。
「お先に失礼するわね。そこにいる奴らから聞けばいいんじゃない?」
 その言葉を残し、大きく跳躍して舞い上がる。
 高く、高く。超遠さえ届かぬ高みまで舞い上がり、その姿がどこかへと消えていく。
「待つのです! 逃げるのですか! 恥を知ってください!」
 彩華の狐火は届かず、代わりにイレギュラーズの攻撃で受けた傷により地に濡れた羽が落ちてくるばかりだった。
 自らも空を飛べば追撃はできる――しかし、それではだめだ。
 愕然としたのは、イレギュラーズだけではない。ディランが、未だ健在の隊士たちが愕然とした様子を見せる。
 その致命的な隙を見逃してやるほどイレギュラーズとて愚かではなかった。
 リュティスの黒き聖域が再び仲間たちの傷を癒していく。
 再び引いた弓を、静かに放てば、真っすぐに打ち出された黒き蝶は槍兵の片方へと舞い、その防御性能を無視して不吉を齎す呪いを注入していく。
 桃の花びらが淡く輝き、その身に刻まれた傷を癒していく。
 トウカは不滅たらんと示すように立ち上がる。振り抜かれた槍が、真っすぐに落ちてくる。
 それに対して木刀を合わせ、ぎりぎりで動きを殺し、揺らりと躱してみせる。
 シャルロットはトウカへ向かっていく槍兵の片方へ双剣を叩き込んだ。
 深紅の双剣は鮮やかに舞い、流麗なる奔流となって槍兵へ吸い込まれる。
 予備動作に構えた槍兵の内側を、綺麗に穿てば、ぐらりとその身体が後退した。
 そこ目掛け、マナガルムは疾走する。
 踏み込みと同時、地面に槍を突きたて、軸代わりに放った蹴りは槍兵の首筋へと強かに撃ち込まれ、ぐわりと身体を揺るがし、ぱたりと倒した。
 彩華は槍兵の方へと走り抜けた。
 双剣に狐火が宿り、鮮やかに燃えながら線を引く。
 踏み込みと共に槍兵の懐へ踏み込むと、そのまま双剣を振り抜いた。
 惑わすような剣技は鮮やかに揺れ動き、槍兵に傷を付けていく。
 ジュリエットは術式を展開しながら宝石を取り出すと、槍兵めがけて投擲した。
 くるくると放物線を描きながら飛んだ石が槍兵の頭上で真紅の輝きを放つと同時、術式が起動する。
 輝きを浴びた槍兵の身体が崩れ落ち、ころころと転がった石から吸収した生命力がジュリエットの傷を癒していく。
 フローリカは震える小鹿のようになった槍兵めがけて突貫する。
 踏み込みと同時、跳躍しながらルクス・モルス改をぐるりと振るう。
 生み出された遠心力を勢いに変えて、思いっきり槍兵の顎を蹴り飛ばした。
 その勢いに揺れながら、槍兵が倒れていく。
「この目の付与が有る限りは、我が糸より逃れるなど到底不可能!」
 敢えて瞳に意識を向けるように挑発しなおしながら、ヘイゼルはその実、ディランの背後、既に弓兵のみとなった敵を見ていた。
 深い赤に輝く瞳とタトゥーに魅入られたかのように雄叫びを上げるディランの槍が、高速の三連突きを打ってくる。
 それをなんとか躱して、一つ息をする。
 そのころ、敵が倒れるのが見えた。


「……ふむ、これはいただいておきませうか」
 ヘイゼルはディランが持っていたメダリオンを拾い上げた。
「偽勇者のようなやり方ですが。そもそも、これらのうちの幾つが貴方達が正当な手段で手に入れた物かも怪しいところです」
 聞くところによると、彼ら白獅子隊の持つメダリオンはずいぶんとあくどい方法で集めたもののようだ。
「さて、私たちを悍しいとか言ってたこの世界の騎士の方々? 楽しいお話をしましょうか?」
 シャルロットは笑みを湛え、静かに双剣を抜き白獅子隊へ詰め寄っていく。
「ひぃ……!」
 震えあがったのは何を隠そうディランだ。
 随分と情けないありさまである。
「そんなだから、世界が他所の世界の騎士に頼るのよ? もっとしゃきっとしなさいな」
 呆れも半ば、静かに剣を向ける。
(彼らの後見人が気になりますね。単なる横取りではなくベネディクトさんへの悪意もあったのではないでしょうか)
 彩華もその様子を見ながらちらりとマナガルムの方へ視線を向ける。
「全て白状するなら命だけは見逃してやらなくもないですよ」
 視線を連中の方へ戻して、彩華も告げる。
「で、お前たちは誰かに頼まれてきたんだそうだな? 今のうちに言っておいた方が、後が楽だぞ?」
 フローリカはルクス・モルス改を敢えて見せるように担ぎながら問うた。
「な、なんのことだか!」
 震えながらディランが言い返す。
「お前が『あの方』と言ったんだろ?」
 その言葉を聞いて、ディランが今気づいたと言わんばかりに目を見開いた。
「一番に、勇者になれなかったお前らの飼い主はお前らをどうするんだろうな。
 捨てるか、不正行為がバレるのを恐れて先に告発するか……
 三流悪党はより強い悪党に潰されるんだから今すぐ自首した方がいいと思うぞ」
 トウカの言葉に、白獅子隊の面々が言葉に詰まった様子を見せる。
「今回の件の背景を可能な限り正確に話せ、白獅子隊とやら。
 こうなった以上は、貴様らの後ろ盾とやらも切って捨てるだけだろう」
 ディランへと近づいたマナガルムは、その視線を微かにリュティスに向ける。
 そちらに視線を向けた白獅子隊の面々がごくりと固唾をのんだ。
 実際、アダレードは彼らを斬り捨てている。
 彼女が何者なのかは分からないが。
「俺達に対して印象を良くしておくのが賢明だと思うが?」
 リュティスは、彼らを殺すつもりはないように思えた。
 それがマナガルムの命令であるが故に。
 それさえなければ間違いなく殺すつもりだと分かる殺気が滲んでいる。
「さて、それでは教えてもらいましょうか」
 レッグシースからナイフを抜いて、リュティスはディランへ詰め寄った。
「まずは、此度は誰からの依頼でしょうか?
 ええ、喋らなくてもいいですが、手が滑ってしまうかもしれないですね」
 ――このように、と。
 軽く、けれど強くディランの太腿へナイフを突き立てる。
「くぅぅあぁ」
「喋る気になったのなら、治療してあげますよ?」
「わ、分かった! 分かったから! 許してくれぇ。
 ちくしょう、アダレードの小娘め! もういいさ! なんだって言ってやるよ!」
 徐々に刃を押していけば、直ぐに男が口を割った。
「俺達はオークランド卿に後見してもらってる!
 あの方に頼まれたんだ、銀狼女王のナイフを取り返してこいってな!」
「取り返す? これはオークランド卿の持ち物だということですか?」
「良くは知らねえ! 教えてもらえなかったから!」
 さもあらん、という気持ちはある。
 ちょっと脅してみせただけでここまでぺらぺらと喋り出す奴に重要な秘密は教えられまい。
「オークランド卿って誰かしら?」
「このマナガルム領に近いところに領地を持つ幻想貴族ですね」
 ジュリエットの言葉に答えたのはリュティスだった。
「近隣の貴族、か」
「はい。それに、彼はミーミルンド家と懇意だと聞きます」
 マナガルムにリュティスは頷いて答え、立ち上がった。
 近郊の領地であれば何らかの偶然を装って潜入し、あの炭鉱にナイフを仕込むことも出来なくはないだろう。
「後は……目的や動機なども教えて頂けますか?」
「し、知らねえよ。でも銀麗の狼が倒れた以上はナイフを回収しなくてはならん、ってよ!」
(それほどまでにあのナイフが重要なもの、ということでしょうか?)
 思考しながら、ディランへひとまずは約束通りナイフで突いた傷を癒してやる。
「俺達よりも、アダレードを探して聞けばいい! あいつはオークランド卿の養女だからよ!」
 悔しそうに、ディランはそう言い捨てた。


「ええ、お父様。分かっていますわ」
 白鳥の翼を血で黒く染め、アダレードはファミリアー越しの向こう側へ言葉を交わす。
「ですが、お父様も悪いのです。あんな、脳みその足らないお馬鹿さんを勇者だなんて煽てて。
 どうせ今頃、ぺらぺらとまぁ、全部を答えていることでしょう」
 ファミリアー越し、『お父様』と呼ばれた男の叱責を、アダレードはまるで意に介す様子もない。
「ええ、ですからどうか、御準備を。どうせすぐに始まりますわ。
 私もこの傷が癒えたらすぐに戻りましょう」
 そっと、アダレードが腹部に手を添える。
 イレギュラーズより与えられた傷跡が『ほぼ癒えつつある』傷跡を。
「ええ、私、ようやく分かりましたの。
 ――何って? ふふふ、もちろん、お父様がおっしゃっていた『天啓』のことですわ。
 ですので、今回の屈辱……必ず晴らしてみせます」
 その手に傷痕から零れた渇いた血がパラパラと触れていた。
 その翼が、徐々に黒く染まっていく。
 血などではなく――純粋に闇に呑まれるように。

成否

成功

MVP

リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者

状態異常

なし

あとがき

強奪阻止およびバックにいる人物の名前が判明しました。
1人取り逃がしましたが彼女と直に再会することでしょう。
ひとまずはこれにて。
お疲れさまでした、イレギュラーズ。

PAGETOPPAGEBOTTOM